JP2004143107A - 低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物 - Google Patents

低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症治療用医薬組成物、及び該疾病の治療方法を提供する。
【解決手段】副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドの活性部位を構成するアミノ酸配列、若しくは該アミノ酸配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物である。
【効果】前記医薬組成物、及び治療方法により、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の治癒、症状改善ができるようになった。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症治療用医薬組成物に関するものである。さらに本発明は、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の治療方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、慢性腎不全、特に血液透析に伴う骨病変は、腎性骨異栄養症(ROD)として知られており、二次性副甲状腺機能亢進症(2 HPT)に起因する繊維性骨炎、アルミニウム蓄積に起因する骨軟化症などの骨形成、骨吸収が盛んに起こる高代謝回転骨に起因する病態として認識され、その治療用薬剤、治療法及び予防法が開発されてきた。
しかしながら、最近、慢性腎不全、特に血液透析に伴う骨異栄養症に関して、むしろ低代謝回転に起因する症例の増加が報告されるようになり、さらにこの病態が進展すると無形成骨症に移行することも明らかにされている(緒方らの論文999〜1004頁CLINICAL CALCIUM Vol.11, NO.8. 2001, 横山らの論文1005〜1013頁CLINICAL CALCIUM Vol.11, NO.8. 2001)。
一方、このような低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、及び無形成骨症の病態生理は未だ不明な点が多く、その治療薬、治療法及び予防法の研究、開発が待たれていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症治療用医薬組成物を提供することを目的とする。さらに本発明は、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の治療方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため研究を行なった結果、副甲状腺を摘出、又は機能喪失させ、副甲状腺ホルモンの血中濃度を生理量又はそれ以下にして、二次性副甲状腺機能亢進症を避けて、かつ腎臓不全を起こすことにより低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症の病態を動物で発現できるという知見を得た。そして、当該知見に基づき、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症の病態モデル動物、すなわち副甲状腺が摘出、又は機能喪失され、かつ投与により血液中の副甲状腺ホルモンが生理量以下に維持され、かつ腎臓の一部が切除され、又は腎動脈分枝結紮されていることを特徴とする、病態モデル動物を得た。本発明者らは、該病態モデル動物を用いてスクリーニングを行なった結果、副甲状腺ホルモン活性を有する物質、特にポリペプチドを用いることにより前記課題を解決できるという知見を得ることができた。
【0005】
したがって、本発明は、有効量の副甲状腺ホルモン活性を有する物質、特にポリペプチドを含む、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物を提供する。なお、該医薬組成物は、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、及び無形成骨症の治療だけでなく、慢性腎不全の治療及び透析治療において投与することにより該病状の予防を行なうことができる。
さらに本発明は、副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドの活性部位を構成するアミノ酸配列(配列番号1又は7)、若しくは該アミノ酸配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物を提供する。
【0006】
さらに、本発明は、ヒト副甲状腺ホルモンの全長アミノ酸配列(配列番号6)を有するポリペプチドを含む腎性骨異栄養症治療用医薬組成物を提供する。
さらに本発明は、高カルシウム食、及び/又はカルシウム剤、並びに前記腎性骨異栄養症治療用医薬組成物を投与することを特徴とする、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症の治療方法を提供する。
なお、本発明において、無形成骨症とは、慢性腎不全の進行に伴い骨の代謝(骨代謝回転)が阻害され、腎不全の程度に依存して骨形成が極端に阻害されている状態をいう。なお、無形成骨症という場合、骨形成が全く起きていない状態と、骨形成が相当程度阻害されている状態の双方を含む。
また、副甲状腺ホルモンの有効量とは、有効量は所望の治療効果及び/又は予防効果を達成することができる量をいう。例えば、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の発生、又は進行を防止し、又は各病状を軽減、又は治癒できる副甲状腺ホルモンの量をいう。次に、本発明の実施の形態を説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の医薬組成物の有効成分をスクリーニングするために使用した病態モデル動物の作成方法は次のとおりである。
該病態モデル動物は、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、及び無形成骨症の発症の成因や機序の解析が可能で、該腎性骨異栄養症に対する薬物作用の確認を行えるものであれば特に限定されない。例を挙げると、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ミニブタなどがあり、特にラットが好ましい。なお、ラットを用いる場合、3〜20週齢、特に8〜12週齢のラットを用いるのが好ましい。
【0008】
病態モデル動物の作成における甲状腺及び副甲状腺の摘出は、該動物の頚部顎下腺の部分を中心に正中線を切開し、気管に貼りついている甲状腺(副甲状腺は甲状腺上にあり、一体化している)を剥ぎ取ることにより行なう。なお、該切除の代わりに電気メス、レーザなどで焼切し、又はアルコール、ホルマリンなどによる蛋白質変性により機能を喪失させてもよい。なお、可能ならば甲状腺は残し、副甲状腺のみを摘出、又は機能喪失させるのが好ましい。甲状腺及び副甲状腺の摘出を行なった動物を、TPTxと表記した。例えば、ラットを用いた場合、TPTxラットのように記載した。
【0009】
前記病態モデル動物における、甲状腺ホルモンの血液中における正常な生理量は、ラットを例に取ると甲状腺ホルモンで、トリヨードサイロニン(T3)で0.1〜1ng/mL、サイロキシン(T4)で 1〜100ng/dL、好ましくはT3で0.3〜0.8ng/mL、 T4 で10〜30ng/dLであり、副甲状腺ホルモンで生理量とは、0.1〜1000pg/mL、好ましくは0.1〜150pg/mL、特に好ましくは50〜120pg/mL(ELIZA法による)である。*T3 T4とはどういうことでしょうか。説明をお願いします。
また、甲状腺ホルモンは、緩衝液、生理食塩水の水溶液などの形態で、副甲状腺ホルモンも緩衝液、生理食塩水の水溶液などの形態で投与することができる。なお、病態モデル動物作成後、血中濃度が甲状腺ホルモンで、T3で0.1〜1ng/mL、 T4で1〜100ng/dL、好ましくはT3で0.3〜0.8ng/mL、T4で 10〜30ng/dLであり、副甲状腺ホルモンで、生理量またはそれ以下で、0.1〜1000pg/mL、好ましくは0.1〜150pg/mL、特に好ましくは50〜120pg/mL(ELIZA法による)に維持する。
【0010】
本発明の腎臓の一部切除は次のように行なうことができる。ラットを背位に保定し、右下腹部に麻酔薬、例えばペントバルビタール酸ナトリウム(ネンブタール:大日本製薬(株))を50mg/Kg.BW投与する。次いで、麻酔下、右腎摘出部及び切除を行なう左腎側の体毛を剃り、右腎摘出のため、右側面を術者に向けて保定し、切開部位を消毒の後胸部肋骨端約10mm脇の腹壁を肋骨に沿って約15mm切開する。右腎と腎周囲の脂肪及び副腎とを分離し、失血による腎重量の変化を防ぐ目的で腎血管及び尿管を二重結紮し、右腎を摘出する。右腎の湿重量を測定し、左腎を切除する際の基本重量とする。切開した腹壁及び皮膚を縫合する。
【0011】
ラットの左側面を術者に向けて保定し、切開部位を消毒の後胸部肋骨端約10mm脇の腹壁を肋骨に沿って約15mm切開する。左腎と腎周囲の脂肪及び副腎とを分離し、止血の目的で腎動脈及び腎静脈を5−0の縫合糸を用いて挟み、腎切除用の型に入れ型に沿って腎臓を切除する。切除の割合は、右腎重量と左腎重量が等しいと仮定し、摘出した右腎重量を基に算出する。腎切除後、切除面にトロンビン(SIGMA社製)2500Unit/mlを滴下し止血を行なう。
【0012】
左腎を腹腔内に戻し、ペニシリン(GIBUCO社製)を一、二滴注入し腹壁と皮膚を縫合する。左右の縫合部分には希ヨウドチンキ(吉田製薬(株))を塗り、消毒を施す。モデル動物作成後2日目に体重、Cr、BUNを測定し、バラツキの大きいものを除外する。モデル動物作製後2〜6週目に体重、Cr、BUN、Cr排泄量、Ccr、蛋白排泄量、血圧及び腎切除率を基に、群間で偏りの無いように仕分けを行なう。
【0013】
次に、腎動脈分枝結紮法について説明する。左腎動脈分枝結紮の手順は次のとおりである。ラットを背位に保定し、右下腹部にペントバルビタール酸ナトリウム(ネンブタール:大日本製薬(株))を50mg/Kg.BW投与し麻酔をかける。麻酔下、左腎側の体毛をバリカンで剃る。左側面を術者に向けて保定し、切開部位を消毒の後胸部肋骨端約10mm脇の腹壁を肋骨に沿って約15mm切開する。リングピンセットで切開部右側の腹筋層を持ち、左手で腎を軽く抑えながら体外に出す。小ハサミで腎周辺の脂肪を剥離する。マイクロサージャリーピンセットで血流を止め、残存させる腎動脈分枝を決定する。マイクロサージャリーピンセットを腎動脈と静脈の境界に挿入し、剥離する。残存させる腎動脈以外の動脈を7−0の縫合糸を用いて結紮する。剥離した腎臓周囲の脂肪組織を取り除き、腎臓を腹腔内に戻す。ペニシリン(GIBUCO社製)を一、二滴注入し腹壁と皮膚を縫合する。左側面の縫合部分に希ヨウドチンキ(吉田製薬(株))を塗り、消毒を施す。
【0014】
右腎門部結紮の手順は次のとおりである。腎門部結紮は、左腎分枝結紮から1週経過後に行う。ラットを背位に保定し、右下腹部にペントバルビタール酸ナトリウム(ネンブタール:大日本製薬(株))を50mg/Kg.BW投与し麻酔をかける。麻酔下、右腎側の体毛をバリカンで剃る。右側面を術者に向けて保定し、切開部位を消毒の後胸部肋骨端約10mm脇の腹壁を肋骨に沿って約15mm切開する。リングピンセットで切開部右側の腹筋層を持ち、左手で腎を軽く抑えながら体外に出す。右手人差し指と親指で皮膜の一部を破り、腎臓を皮膜から出す。鉗子で腎門部を止め、その下を1−0の縫合糸を用いて縛る。鉗子を外した後右腎を腹腔内に戻し、ペニシリン(GIBUCO社製)を一、二滴注入し腹壁と皮膚を縫合する。右側面の縫合部分に希ヨウドチンキ(吉田製薬(株))を塗り、消毒を施す。
【0015】
モデル作製後2日目に体重、Cr、BUNを測定し、バラツキの大きいものを除外する。モデル作製後2〜6週目に体重、Cr、BUN、Cr排泄量、Ccr、蛋白排泄量、血圧を基に群間で偏りの無いように仕分けを行なう。
なお、切除する腎臓の大きさは必要に応じて適宜決めることができるが、ラットを用いて病態モデル動物を作成する場合、例えば、左腎臓2/3及び右腎臓全部(5/6Nxと表記する。)、左腎臓1/2及び右腎臓全部(3/4Nx)、又は右腎臓全部(1/2Nx)となるように切除するのが好ましい。
【0016】
本発明の医薬組成物の有効成分スクリーニング方法は次のように行なった。
まず、作成した病態モデル動物を、骨形成率の有意な低下が起きるまで飼育する。病態モデル動物としてラットを使用する場合、腎臓の一部切除、又は腎動脈分枝結紮から2〜8週間、特に4〜6週間経過後にスクリーニングを開始するのが好ましい。なお、対照群として、腎臓をそのままにして、副甲状腺のみを摘出、又は甲状腺・副甲状腺を摘出した(TPTx)、又は摘出していない動物を用いることができるが、TPTxで、腎臓切除と同じ開腹処置を行った、TPTx−sham群を用いるのが好ましい。
【0017】
スクリーニング対象の化合物、又は生理活性物質は、例えば、各種安全性試験より得られた最大無影響量から段階的に投与量を減量していき、投与量を定め、継続的又は間歇的に一定期間投与する。また、該投与は、経口的投与、静脈注射、皮下注射、筋肉内投与などで行なうことができる。
なお、該スクリーニング方法では、対照群及び病態モデル動物に高カルシウム食を与える。通常、飼料中のカルシウム含有量が0.4〜2.0% 、好ましくは1〜2%なるようにする。
次に、本発明の有効成分である、副甲状腺ホルモン活性を有する物質、特にポリペプチドについて説明する。本発明では、ヒトを含む哺乳動物の治療対象において、副甲状腺ホルモン活性を有する物質であれば、許容できない副作用がない限り、特に制限なく、用いることができる。
【0018】
次に、本発明の副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドの例を挙げる。なお、本明細書においては、副甲状腺ホルモン(Parathyroid Hormone)をPTHと、副甲状腺ホルモン関連ポリペプチド(Parathyroid Hormone−related polypeptide)をPTHrPと略す。
(1)ヒト副甲状腺ホルモンのN−末端の第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列(配列番号1)、若しくは該アミノ酸配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列(配列番号2〜5)を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチド;
(2)ヒト副甲状腺ホルモンの全長アミノ酸配列(84アミノ酸残基)を有するポリペプチド(配列番号6);
【0019】
(3)ヒト副甲状腺ホルモン関連ポリペプチドのN−末端第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列(配列番号7)、若しくは該アミノ酸配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列(配列番号8〜10)を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチド;
(4)ヒト副甲状腺ホルモン関連ポリペプチドの全長アミノ酸配列(139、141又は173アミノ酸残基)を有するポリペプチド(配列番号11〜13);及び
(5)副甲状腺ホルモン活性を有する、前記(1)〜(4)のポリペプチドのエステル体、及び該ポリペプチドの塩である。
【0020】
ここで副甲状腺ホルモン関連ポリペプチドとは、副甲状腺だけでなく、多くの臓器で産生、分泌される副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドをいい、PTHと同じ受容体に結合し、同様の作用を発揮することが知られている。
これら副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチド、及び副甲状腺ホルモン関連ポリペプチドに関しては、次の文献で説明されている。
1.  G. N. Hendy et. al (Proc.Natl. Acad.Sci. USA, 78,7365 (1981).(Original; cDNA Sequence))
2.  T. Kimura et. al,(Biochem. Biophys. Res. Commun., 114,493(1983). (Chem. Synthesis))
3.  H. Takasu et. al (Endocrinolgy, 137,5537 (1996). (Pharmacol.))
本発明で用いるポリペプチドは、C末端が通常カルボキシル基(−COOH)又はカルボキシレート(−COO−)であるが、必要に応じてC末端がアミド(−CONH)又はエステル(−COOR)としてもよい。
【0021】
前記(1)〜(4)のポリペプチドのエステル体におけるC末端の側鎖Rの例を挙げると、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル又はn−ブチルなどのC1−6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、フェニル、α―ナフチルなどのC6−12アリール基、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基、若しくはα―ナフチルメチルなどのα―ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基などがある。
【0022】
また、本発明で用いるポリペプチドがC末端以外にカルボキシル基を有している場合、該カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものが含まれる。さらに、本発明で用いるポリペプチドには、N末端のメチオニン残基のアミノ基ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基などの保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が、適当な保護基(ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、又は糖鎖が結合した、いわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質も含まれる。
【0023】
ここで前記(1)〜(4)のポリペプチドの塩としては、酸又は塩基との生理学的に許容し得る塩があり、特に生理学的に許容し得る酸付加塩が好ましい。この様な塩の例を挙げると、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸との塩、又は酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩がある。
【0024】
次に、各配列番号のアミノ酸配列について説明する。なお、本発明で用いるポリペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。
〔配列番号1〕 ヒトPTHのN−末端の第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号2〕 ウシPTHのN−末端の第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号3〕 ブタPTHのN−末端の第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
【0025】
〔配列番号4〕 ラットPTHのN−末端の第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号5〕 ニワトリPTHのN−末端の第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号6〕 ヒトPTHの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号7〕 ヒトPTHrPのN−末端第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号8〕 ラットPTHrPのN−末端第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
【0026】
〔配列番号9〕 マウスPTHrPのN−末端第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号10〕 ニワトリPTHrPのN−末端第1アミノ酸残基から第34アミノ酸残基までのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号11〕 139アミノ酸残基を有するヒトPTHrPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号12〕 141アミノ酸残基を有するヒトPTHrPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号13〕 173アミノ酸残基を有するヒトPTHrPの全長アミノ酸配列を示す。
【0027】
(本発明で用いるポリペプチドの製造)
本発明で用いるポリペプチドは、ヒト、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなどの哺乳動物、これらの哺乳動物から得た細胞、哺乳動物、微生物、植物などの形質転換した細胞を用いて製造できる。
本発明で用いるポリペプチドは、前記哺乳動物の組織、又は細胞から常法による精製で、又は該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)で形質転換した形質転換体を培養して、又は常法によるポリペプチド合成により製造することができる。
【0028】
哺乳動物の臓器、又は細胞から製造する場合、該組織又は細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることで精製単離する。
本発明で用いるポリペプチドをアミド体で合成する場合は、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いる。該樹脂の例を挙げると、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などがある。
【0029】
これらの樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするポリペプチドの配列通りに、常法による各種縮合により、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からポリペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施して、目的のポリペプチド又はそのアミド体を得る。
前記保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類の例を挙げると、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどがある。該カルボジイミド類の活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、又は対称酸無水物、HOBtエステル、又はHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0030】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用できる溶媒から適宜選択できる。その例を挙げると、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、又はこれらの混合物などある。
【0031】
反応温度はタンパク質結合形成反応に適した範囲、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択する。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸、又はアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0032】
該ポリペプチド合成原料のアミノ基の保護基の例を挙げると、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどある。該カルボキシル基保護の例を挙げると、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などがある。
【0033】
アミノ酸・セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基の例を挙げると、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などがある。また、エーテル化に適する基の例を挙げると、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などがある。チロシンのフェノール性水酸基の保護基の例を挙げると、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどある。ヒスチジンのイミダゾールの保護基の例を挙げると、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどある。原料のカルボキシル基の活性化されたもの例を挙げると、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。
【0034】
保護基の除去(脱離)方法の例を挙げると、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、又は液体アンモニア中ナトリウムによる還元などがある。
【0035】
上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下における酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理で除去される。さらに原料の反応に関与すべきでない官能基の保護に用いる保護基、及びその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは従来技術から適宜選択できる。
【0036】
本発明で用いるポリペプチドのアミド体を得る別の方法には、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にポリペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばし、該ポリペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたポリペプチドと、C末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したポリペプチドとを製造し、この両ポリペプチドを前記混合溶媒中で縮合させる方法がある。
【0037】
該縮合反応の詳細は先の記載と同様である。縮合により得られた保護ポリペプチドを精製した後、前記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは公知の精製手段により精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチドのアミド体を得ることができる。
前記ポリペプチドのエステル体の製造は、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ポリペプチドのアミド体製造と同様に処理することで行なうことができる。
本発明で用いるポリペプチドの製造は、常法、例えば、固相合成法、又は液相合成法のいずれによっても行なうことができる。すなわち、該ポリペプチドを構成し得る部分ペプチド、又はアミノ酸と残余部分とを縮合させ、必要に応じ保護基を脱離することにより目的のポリペプチドを製造することができる。
【0038】
ここで用いる方法は、M. Bodanszky及びM.A. Ondettのペプチド シンセシス (Peptide Synthesis)(Interscience Publishers, New York, 1966)、Schroeder及びLuebkeのザ ペプチド(The Peptide)(Academic Press, New York, 1965)、泉屋信夫他のペプチド合成の基礎と実験(丸善(株)、1975年)、矢島治明及び榊原俊平の生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV(205,1977年)、矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成(広川書店)などに記載されている。
【0039】
なお、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて精製、単離することができる。当該方法で得られたポリペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。なお、本発明の医薬組成物で用いるためには、前記ポリペプチドを、少なくとも90%以上、特に95%以上、さらに99%以上に精製するのが好ましい。
【0040】
本発明の医薬組成物は非経口的に投与する。非経口的な方法には、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射などがある。
本発明の医薬組成物の非経口的な投与形態の例を挙げると、水溶液、懸濁液などの注射液がある。該注射液は、通常の製剤実施に従って処方することができる。該注射用の水性液の例を挙げると、生理食塩水、ブドウ糖、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなどの補助薬を含む等張液があり、さらに適当な溶解補助剤、例えば、エタノールなどのアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのポリアルコール、ポリソルベート80TM、HCO−50などの非イオン性界面活性剤などと併用してもよい。
【0041】
懸濁液の調製に用いるのは、例えば、ゴマ油、大豆油などがあり、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、これら注射液には、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液などの緩衝剤、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなどの無痛化剤、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなどの安定剤、ベンジルアルコール、フェノールなどの保存剤、酸化防止剤などを配合してもよい。
【0042】
本発明の医薬組成物を非経口的に投与する場合、副甲状腺ホルモン活性を有する物質、特に前記ポリプチドの薬剤中の配合量は、治療対象、年齢、性別、症状の程度、病歴等を考慮して決めるのが好ましいが、一般に0.1〜20%、好ましくは0.5〜15%、特に好ましくは1〜10%とする。
このように調製した本発明の医薬組成物は、ヒトのみならず、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなどの温血動物に対して投与することができる。
【0043】
本発明の医薬組成物の投与量は、治療対象、年齢、性別、症状の程度、病歴等を考慮して決めるのが好ましく、副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドが治療対象において有効量となるように投与する。この有効量とは所望の治療効果及び/又は予防効果を達成することができる量をいう。例えば、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の発生、又は進行を防止し、又は各病状を軽減、又は治癒できる副甲状腺ホルモンの量をいう。一般にヒトを含む哺乳動物においては、一日当たり体重1kgにつき、該ポリペプチドを約0.001〜1000μg、好ましくは約0.005〜100μg、より好ましくは約0.01〜10μgとする。
【0044】
なお、本発明の医薬組成物は、高カルシウム食の給与、及び/又はカルシウム剤とともに投与することでより大きな効果を発揮する。この場合、投与するカルシウム量は、1日当たり500mg/Kg〜3000mg/Kg、特に1000mg/Kg〜2000mg/Kgとするのが好ましい。
【0045】
【実施例】
(参考例1) 慢性腎不全における無形成骨症病態モデル動物の作成
10週齢SD雄ラットに甲状腺・副甲状腺摘出術(TPTx)を行い、血中濃度が正常濃度に保たれる量(生理量)の甲状腺ホルモン(T4:1〜10 ・/Kg、週3回、皮下投与)と副甲状腺ホルモン(0.1・/kg/hr、浸透圧ポンプによる持続的皮下投与)を投与した。その後に次のような方法で腎臓を切除し、腎不全病態モデル動物を作製した。
【0046】
5/6Nx:左腎臓2/3および右腎臓全部を摘除
3/4Nx:左腎臓1/2および右腎臓全部を摘除
1/2Nx:右腎臓全部を摘除
実験は、正常ラット、TPTxラット(甲状腺・副甲状腺摘除のみ)、及び前記5/6Nx,3/4Nx,1/2Nxのそれぞれのラットでの骨形成について検討した。各群は、それぞれ10匹ずつとした。手術後、6週間飼育した後、骨形成の変化を、骨の石灰化部を蛍光標識する試薬カルセインを投与量8〜15mg/kgで中1週間おいて2回、皮下、又は腹腔内投与し、屠殺後摘出した脛骨の非脱灰薄切標本により、画像処理による骨形態計測を実施し、骨形成率およびを計測することにより評価した。
下記の血清生化学検査から、作成した病態モデルラットの手術後6週目における腎機能は、5/6Nxが最も重篤で、次に3/4Nx、1/2Nxが最も軽度であった。
【0047】
【表1】
Figure 2004143107
* p<0.05 vs Intact, # p<0.05 vs TPTX
Cre:血清中のクレアチニン BUN:血清中の尿素窒素
【0048】
次いで、この手術後6週目の動物の脛骨における骨形成を比較した。その結果、図1に示すとおり、病態モデル動物の腎不全の程度が重篤になるにつれて、骨形成率が有意に低下していくことが明らかになった。したがって、慢性腎不全の進行に伴い骨代謝回転が阻害されて低下し、無形成骨症を発病することは明らかであり、本参考例で低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の病態モデル動物が作成できたことが判る。
【0049】
(実施例1) 病態モデル動物を用いた生理活性物質の有効性評価
参考例1の無形成骨症の病態モデル動物を使用して副甲状腺ホルモンの治療効果を検討した。
実験は、参考例1で作成したTPTx−5/6Nxのラットを用い、骨形成率が有意に低下することが認められる施術後6週目から、ラット副甲状腺ホルモンアナログを10μg/kg(低投与量)、30μg/kg(中度投与量)、及び90μg/kg(高投与量)ずつ、週3回の皮下投与を4週間行なった。各実験群は、それぞれ10匹ずつとした。投与4週目の骨形成について、参考例1と同様な方法により評価検討した。
なお、PTHとスクリーニングする生理活性物質は、小型の浸透圧ポンプを動物の皮下に入れ、体液がこのポンプを濡らすと、ポンプから薬液が押し出されるという様式(Infusion Pump法)で、時間あたりの一定の流出量となるように投与した。したがって、1日当たりの投与量は、1日あたりの流出量中の薬剤の量として計算し、薬液の濃度を決めた。
【0050】
その結果、図2に示すとおり、骨形成率は対照群(ベヒクル投与群)に比べ、[1−34]PTHの投与量の増加に伴い改善することが明らかとなり、週3回、4週間の間歇投与群で、30μg/kgでほぼ正常レベルに、90μg/kgではそれ以上に症状が改善された。
以上、この実施例から明らかなように、TPTx−Nx群は、TPTx−sham群と比較して全て低回転骨に移行しており、類骨量、骨形成率は腎機能低下に伴い低下していた。また、血清カルシウム、リン、ビタミンD濃度に有意な差はなかった。この類骨量、骨形成率の低下は、PTHの間隙投与によって、用量に依存して改善された。
【0051】
(実施例2)
実験には9週齢SD系雄ラットを用い、1週間の予備飼育をした後、2群に分け甲状腺・副甲状腺摘出術(TPTx)、又は偽手術を行った。TPTx施行後5日目に血清Caを測定し、TPTxが効果を発揮していることを確認した。
副甲状腺摘除(TPTx)を行ったラットに、さらに部分腎切除、又は偽手術を行った。図3にも記載したように、腎切除は左腎臓2/3及び右腎臓全部(5/6Nxと表記する。)、左腎臓1/2及び右腎臓全部(3/4Nx)、又は右腎臓全部(1/2Nx)となるように行なった。TPTx単独、及びTPTxに部分腎切除を行ったラットには、0.1・/kg/hrのPTHをInfusion pump法により持続注入しながら飼育した。また、L−サイロキシン(T4)を皮下投与した。
【0052】
TPTx単独群、TPTxに部分腎切除を行った群、及び正常群にはすべて2%の高Ca食で6週間で飼育した。解剖前に2回のカルセイン投与を行い骨標識を行い、解剖前に24時間採尿を行い、解剖時には採血ならびに脛骨を採取した。血清生化学検査ではCa,iP,1.25(OH),PTH,Creを、摘出脛骨については骨形態計測法を用いて検討を行った。
図3には、この血清生化学検査の結果が示されている。血清Cre、BUNは腎機能の低下に伴い値が上昇したが、TPTx−5/6Nx群では血清P値が正常群に比べて有意な高値を示した。血清Ca,1.25(OH)、PTHについては各群間で有意な差は認められなかった。
【0053】
図4には、摘出脛骨を用いて計測した骨形態計測の結果が示されている。左側のグラフは骨芽細胞面、右側のグラフは類骨面を示す。骨芽細胞面、類骨面ともに腎機能の低下に伴って減少し、5/6Nx群では正常群に比べて有意な低下を示している。
図5には、骨形成のパラメータが示されている。左側のグラフに示す石灰化面ではTPTx−5/6Nx群が正常群に比べ有意な低下を生じており、右側のグラフに示されるように骨形成率では、腎機能の低下に伴い有意な低下が認められる。
図6には、摘出脛骨を用いて計測した骨形態計測の結果が示されている。左側のグラフは骨芽細胞面、右側のグラフは類骨面を示す。TPTx−5/6Nx群と正常群と比べると、腎機能の低下に伴い骨芽細胞面、類骨面ともに減少し、PTH投与により無処置群の正常レベルに改善した。
【0054】
図7には、骨形成のパラメータが示されている。左側のグラフによると石灰化面ではTPTx−5/6Nx群が正常群に比べ有意な低下し、PTH投与で改善することを示す。また右側のグラフに示した骨形成率も同様に、腎機能の低下に伴い有意な低下が認められ、PTH投与で改善したことを示している。
【0055】
【発明の効果】
本発明により、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症治療用医薬組成物が提供された。さらに本発明により、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症、特に無形成骨症の治療方法が提供された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、病態モデル動物の腎不全の程度と、骨形成率の低下の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、骨形成率を対照群と実験群と比較して、副甲状腺ホルモンの投与量の増加と症状の改善を示すグラフである。
【図3】図3は、TPTx単独群、TPTxに部分腎切除を行った群、及び正常群の血清生化学検査の結果を示す表である。
【図4】図4は、摘出脛骨を用いて計測した骨形態計測の結果を示すグラフである。
【図5】図5は、対照群と実験群と比較した骨形成のパラメータを示すグラフである。
【図6】図6は、摘出脛骨を用いて計測した骨形態計測の結果を示すグラフである。
【図7】図7は、骨形成のパラメータを示すグラフである。
【符号の説明】
図1〜7で用いられる略語の意味は下記のとおりである。
Cre:血清中のクレアチニン濃度
Bun:血清中の尿素窒素濃度
iP:血清中の無機リン濃度
Alb:血清中のアルブミン濃度
1.25(OH):血清中の活性型ビタミンD3の濃度
Ob.S/BS(%):骨形態計測のパラメータで、骨芽細胞面の活性を示す。
ES./BS(%):骨形態計測のパラメータで、骨吸収面(破骨細胞が骨を溶かした部分)を示す。
MS/.BS(%):骨形態計測のパラメータで、石灰化面を示す。
BFR/BS(mcm3/mcm2/day):骨形態計測のパラメータで、骨形成率を示す。
【配列表】
Figure 2004143107
Figure 2004143107
Figure 2004143107
Figure 2004143107
Figure 2004143107
Figure 2004143107
Figure 2004143107
Figure 2004143107

Claims (13)

  1. 有効量の副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物。
  2. 配列番号1又は7のアミノ酸配列、若しくは配列番号1又は7の配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症治療用医薬組成物。
  3. 配列番号1のアミノ酸配列、又は配列番号1の配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、請求項2記載の医薬組成物。
  4. 配列番号1のアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、請求項2記載の医薬組成物。
  5. 配列番号6のアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、請求項2記載の該医薬組成物。
  6. 配列番号7のアミノ酸配列、又は配列番号7の配列に少なくとも1のアミノ酸が挿入され、付加され、欠失し、又は置換したアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、請求項2記載の医薬組成物。
  7. 配列番号7のアミノ酸配列を有し、副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、請求項2記載の医薬組成物。
  8. 配列番号11〜13のいずれか1のアミノ酸配列を有し、かつ副甲状腺ホルモン活性を有するポリペプチドを含む、請求項2記載の該医薬組成物。
  9. 有効量の前記ポリペプチド、及び担体を含む、請求項2〜8のいずれか1項記載の医薬組成物。
  10. 低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症が、骨無形成症である、請求項1〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
  11. 高カルシウム食、及び/又はカルシウム剤、並びに請求項1〜10のいずれか1項記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症の治療方法。
  12. 投与するカルシウム量が、1日当たり500mg/Kg〜3,000mg/Kgである、請求項11記載の治療方法。
  13. 低代謝回転骨に起因する腎性骨異栄養症が、骨無形成症である、請求項10又は11のいずれか1項記載の治療方法。
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