JP2004141070A - 植生土壌のマルチング材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】家畜糞堆肥と土壌との混合物からなる植生土壌のマルチング材であり、特に牛舎の敷き藁又は敷き木屑と牛糞尿混合物からなる排泄物の発酵処理物である牛糞堆肥を始めとする家畜糞堆肥と土壌、とりわけ、大量に供給でき、比較的組成の均一であるまさ土との混合物からなる植生土壌のマルチング材であり、牛糞堆肥30〜70%容量とまさ土70〜30%容量との混合物からなる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、畑地の農作物、家庭や公園、あるいは道路の緑地帯等の草花、植木の植生地に生える雑草を抑制するマルチング材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
植生土壌のマルチングは、古くから稲藁、麦藁等の敷き藁、枯れ草等自然物のほかプラスチックフィルムやシートが用いられている。また、これら天然物に家畜糞尿を混合発酵させて得られる堆肥のマルチ施用についても非特許文献1に提案されている。これには堆肥のマルチ施用に関して、作物を植え付けた土の上に半熟堆肥をマルチして使用する方法では、肥料的な効果より、水分の保持や天敵の住みかを提供して害虫を駆除する効果が期待できるとの記載がある。
【0003】
マルチング堆肥についても、本発明と同様に雑草の成長抑制を目的とするものに特許文献1がある。これには、繊維質多孔質体と炭素率(C/N比)が3〜20である有機質肥料とを有するマルチング材で、マット状やシート状ではなく粒状のマルチング材を地表面に被覆撒布するものである。ここでは、有機質肥料のC/N比が5未満であると、たとえばオガクズ原料のものは、雑草の発芽抑制効果を有する微生物が繁殖しにくいため、マルチング材として好ましくないことが記載されている。
【0004】
また、家畜糞尿を原料として発酵堆肥とすることも多く提案されている。本発明で対象とする原料の牛糞については、たとえば、特許文献2に記載があり、その内容は、有機質資材の上に家畜の生排泄物と植物肥料の三要素の一つとを混ぜたものを屋根付き堆積場に山積みし、最終的に含水比20%以下になるまで発酵熟成すると共に、一時的に発酵を強制停止させた粒状物として、これを土壌改良材に利用するものである。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−95398号公報(第2頁、第3頁、図1)
【特許文献2】
特開2000−185988号公報(第1頁、図1)
【非特許文献1】
日本有機農業研究会、有機農業ハンドブック、1999年1月10日発行、第26頁
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
最近になって、国土緑化の促進に伴って、道路中央分離帯や公園に植えられた植栽物や街路樹等の根元の雑草排除に多大な労力と費用を要するようになり、土壌表面に飛来した種子の発芽も抑制することができるマルチング材の使用が注目されてきている。一方において、家畜糞尿の処理や、林業分野における間伐材の処理や建築木工資材の加工場、建築現場等から排出される木チップやオガクズ等の処理が公害防止上、社会問題となっている。これらの問題を一挙に解決する手段として、畜舎の敷き藁に代えて、又は敷き藁と共にオガクズを使用する際の糞尿混合排出物を有効活用すること、これを雑草防止効果のあるマルチング材として有効に活用すること、最終的には植栽物の肥料となり、かつ、土壌改良材にもなることを課題として、検討を加えた。
【0007】
また、従来のマルチング材は、地表面にある種子や株からの雑草の生育を抑制するにはかなりの厚さに大量のマルチング材を敷設しなければ十分な効果が期待できないものであった。大量使用は費用の増大をもたらすうえ、植物の根腐れを招いたり、余分のマルチング材が飛散して周囲を汚染する弊害を招くことも考えられる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のようなマルチング材の欠点を解決し、かつ、処理に困っている家畜糞尿やオガクズの有効活用による新規なマルチング材を開発したもので、その手段として家畜糞堆肥と土壌との混合物からなる植生土壌のマルチング材とした。
【0009】
家畜糞堆肥と土壌との混合比率は、容積比で、家畜糞堆肥30〜70%容量と、土壌70〜30%容量との範囲であって、より好ましい範囲は家畜糞堆肥40〜60%容量と、土壌60〜40%容量との範囲である。家畜糞堆肥30%容量以下であると、土壌が多すぎて、雑草の生殖を防止する効果が十分でなくなるし、逆に60%容量以上の混合物になると、植物が吸水阻害による、いわゆる肥料負けを起こし、生育が停滞するので、好ましくない。もっとも、バランス良く好ましいのは、家畜糞堆肥と土壌の種類にもよるが、容量で等量に近い混合物である。バランスのよい混合比にすると、本来地表面にある種子からの雑草の成長を抑制するだけでなく、外部から飛来する雑草の種子の発芽も抑制する効果が得られる。
【0010】
ここで用いる家畜堆肥は、牛糞堆肥、豚糞堆肥、鶏糞堆肥等通常のものが利用できるが、特に牛糞堆肥が好ましい。牛糞堆肥は、牛舎の敷き藁又は敷き木屑、特に木チップやオガクズ等の単独又はこれらの混合物であり、牛舎から排出された生牛糞を大量に含む木チップやオガクズと共に発酵させて、少なくとも、半発酵状態とする。通常は堆積切り返しを複数回実施して30時間以上の発酵により得られた、木チップやオガクズ等牛糞尿混合物からなる排泄物の発酵処理物である植生土壌のマルチング材とする。豚糞や鶏糞の場合は新たに木チップやオガクズ等を添加混合して、上記の牛糞堆肥に近い組成にして発酵処理をする。豚糞や鶏糞の含有量が多すぎると最終製品の肥料成分が過剰となって、肥料焼けを起こしたり、雑草の繁殖防止効果が十分でなくなる。
【0011】
牛糞の発酵処理物に混合する土壌は、種々の土壌としてシラス等の火山砂、珪藻土、珪砂等が利用できるが、製品の品質を一定にするためには、いわゆる、まさ土と称される花崗岩の風化土砂が好ましい。まさ土は比較的大量に供給でき、有機物が少なく、かつ土壌微生物も少ない点で配合には好ましい材料である。
【0012】
マルチング材に添加する肥料は、マルチング効果に加えて、植物生育を促すもので、必要により用いる。肥料成分は牛糞から供給されるので、特に加える必要はないが、加えるとしたら牛糞以外の有機肥料成分の米糠、油粕、ふすま、鶏糞、等、あるいは、無機の化学肥料等である。このような肥料を併用することにより、窒素、リン、カリ等の肥料成分のバランスが改善され、マルチング効果に影響されずに植物生育を良好にすることができる。
【0013】
本発明のマルチング材の施用量は、季節、植物の種類、雑草種の飛来程度等環境条件にもよるが、通常、植栽物の根元周辺の地表面に、0.5〜15kg/m2、好ましくは、1〜10kg/m2、更に好ましくは、2〜10kg/m2の密度で露出した土壌表面を被覆するとよい。マルチング材の被覆層の面密度が、0.5kg/m2未満ではマルチング層が薄すぎて土壌表面の雑草新芽を枯死したり、飛来した雑草の種子の発芽を抑制することができず、15kg/m2を超えるとマルチング効果は十分であるが、費用や労力がかかりすぎるし、植物に対して肥料負け、通気性の悪化等で、植生に弊害が生じるので好ましくない。
【0014】
このように、マルチング材で土壌表面を被って、地温保持や水分蒸散防止効果のほか、本発明に係るマルチング材は、地表面にある種子からの雑草の成長を抑制する効果が得られる。また、マルチング施用後のマルチング材表面に飛来した雑草の種子等の発芽も抑制される。
【0015】
本発明の植生土壌のマルチング材によって、マルチングされた土壌表面の小さな発芽済みの雑草の生長抑制や、飛来した雑草の種子の発芽が抑制されるメカニズムについてはいまだ明瞭ではないが、現在のところ、マルチング材下面の土壌表面の小さな雑草の発芽物は黄変して枯死するし、堆積したマルチング材の表面に人工的に散布した雑草や野菜の種子からは発芽しない現象だけは、明確に確認されている。このことから、以下のように雑草防止作用が推測される。すなわち、家畜糞堆肥中には多くのオガクズや木チップ等がまだ未発酵の状態にあるため、これらの樹皮粉末に含まれるタンニンやリグニン成分が雑草の発芽や繁茂を防止すると考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下具体的に、本発明の牛糞堆肥と土壌との混合物からなる植生土壌のマルチング材につき説明する。図1はその製造フローチャートである。図1から明らかなように、牛舎からの排出物は、牛の飼育場の床に敷く藁やオガクズ、木チップ等に飼育牛の排泄する糞尿が混じって定期的に清掃して取り出される廃棄物である。通常は堆積して自然発酵を待つ方法も採用されるが、効率よく処理する際には、発酵装置を用いる。発酵を早めるためには、水分調整をするが、マルチング材とするためには、水分調整材として、オガクズ、木チップ等を用いる。発酵糟には、撹拌切り返し用の撹拌羽根があって、常に、最適発酵条件を維持する。場合により発酵菌を追加してもよい。発酵層の形状によっては、撹拌羽根の代わりにパワーシャベル等の作業機による切り返しが有効である。
【0017】
飼育場の床敷き材や水分調整材として、オガクズ、木チップ等を用いるのは、これらが、樹皮を多く含み、タンニンやリグニン成分が雑草の繁茂を防止するのを利用するのである。したがって、有機肥料のように完全に発酵熟成させる必要がなく、マルチング材として用いる場合は、むしろ、未熟堆肥のほうが完熟堆肥より好ましい場合がある。
【0018】
このように作成したタンニンやリグニン成分含量の多い家畜糞堆肥はこれ自体でもマルチング材となりうるが、土壌と混合して用いると散布時の取扱性が向上するし、用済み後の鋤込み時には土壌改良効果が期待できる。土壌としては、植生に有効な無機成分を含み、かつ土壌微生物の少ないまさ土が好ましく、容積比で1:1近傍で使用する。更に、必要により肥料成分として、化学肥料を2%程度添加混合してマルチング材とするのである。
【0019】
【実施例】
以下実施例によって、本発明の植生土壌のマルチング材の構成と作用効果につき、具体的実施例によって説明する。
【0020】
実施例1
家畜糞として牛糞を用いた場合につき述べる。和牛を約100頭の飼育場の1区画5頭分の床約20m2にオガクズ約2m3を敷き、飼育牛の排泄する糞尿が混じって汚染してくるので、約1週間毎に約0.4m3のオガクズを4回にわたって、全量約2m3を追加した、1ヶ月後に堆積した全量約5m3を排出した。このような、区画が20区画ある規模の飼育場からの排泄物約100m3を処理した。堆肥原料の概略組成は表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
この牛舎からの排泄物約100m3を巾4m、長さ15m、深さ2mの醗酵槽に堆積して床面から圧縮空気を噴出させ、好気性醗酵させた。温度が80℃に上り、下りはじめたころに切り返しながら、次の醗酵槽へ10〜20日毎に移した。これを12回移動して60〜70%の熟度の牛糞堆肥とした。
【0023】
得られた牛糞堆肥220kg(約0.6m3)と粒度12mm下のまさ土1m3(約1800kg)の混合物で、雑草の種の代わりに野菜の二十日大根の種で発芽テストをした。ここで、同時に牛糞堆肥とまさ土との混合割合を変えて実施した。施用量はそれぞれ、10L/m2=約1cm厚みである。約25〜17℃の温度範囲で毎日1回潅水して、播種15日後の発芽結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
表2の結果から、本発明の植生土壌のマルチング材は、牛糞堆肥と土壌との混合比率が容積比で牛糞堆肥30〜70%容量と土壌70〜30%容量との範囲で良好な発芽抑制効果が得られることがわかる。すなわち、裸地の約1/3〜1/5の発芽に抑えられたことががわかる。
【0026】
実施例2
豚舎から排出される豚糞は敷き藁が30%程度混合した濃厚な糞尿排泄物である。これの約1000m3に対してオガクズをほぼ等容積加えて混合し、発酵糟へ仕込み、牛糞堆肥と同様にして、熟度約75%の豚糞堆肥とした。これを、実施例1と同様の条件で二十日大根の発芽試験を行った。結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
表3の結果から明らかなように、本発明の植生土壌のマルチング材は、牛糞堆肥までは及ばないにしても良好な発芽抑制効果が得られることがわかる。すなわち、裸地の約1/2〜1/3の発芽に抑えられたことががわかる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の家畜糞堆肥と土壌との混合物、これらの混合比を調整することにより、植物の生長促進はもとより、優れた雑草の生育防止効果が得られる植生土壌のマルチング材となる。加えて、牛糞をはじめとする家畜糞や植物廃棄物、特に、木チップやオガクズ等の有効処理に貢献して、除草の労力と費用の節減に寄与すると共に公害防止にも役立つこととなったのである。
【0030】
植物が一年草の収穫後であったり、移植その他で植物が撤去されて裸地になった際には、本発明のマルチング材を土壌中に鋤込めば、土壌有機物の増大とまさ土による土質改良効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る植生土壌のマルチング材の製造フローチャートである。
Claims (7)
- 家畜糞堆肥と土壌との混合物からなる植生土壌のマルチング材。
- 家畜糞堆肥30〜70%容量と、土壌70〜30%容量との混合物からなる請求項1記載の植生土壌のマルチング材。
- 家畜糞堆肥がオガクズ又は木チップを含む請求項1又は2記載の植生土壌のマルチング材。
- 家畜堆肥が牛糞堆肥であり、該牛糞堆肥が牛舎の敷き藁又は敷きオガクズ、木チップ等の木屑と牛糞尿混合物からなる排泄物の発酵処理物である請求項3記載の植生土壌のマルチング材。
- 家畜堆肥が牛糞堆肥であり、土壌がまさ土である混合物からなる植生土壌のマルチング材。
- 牛糞堆肥30〜70%容量と、まさ土70〜30%容量との混合物からなる請求項5記載の植生土壌のマルチング材。
- 牛糞堆肥が牛舎の敷き藁又は敷き木屑と牛糞尿混合物からなる排泄物の発酵処理物である請求項5又は6記載の植生土壌のマルチング材。
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