JP2004140982A - ハイブリッド自動車およびその制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前輪用モータ40を発電機として駆動して二次電池44を充電している最中にアクセルペダル82が踏み込まれて要求動力が増加したときには、要求動力の増加が二次電池44の充電に用いられる充電用動力の範囲内であるときには、要求動力の増加分を前輪用モータ40からの電力を用いて後輪用モータ90から出力する。二次電池44は充電電力は小さくなるものの充電は継続されるから、充放電の頻繁な切り替えを少なくして二次電池44の温度上昇を抑制することができる。この結果、二次電池44の充放電の効率を向上させることができると共にその寿命を長くすることができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド自動車およびその制御方法に関し、詳しくは、第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、この第1の車軸と動力の入出力が可能な第1電動機と、第2の車軸に動力の出力が可能な第2電動機と、第1電動機および第2電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段とを備えるハイブリッド自動車およびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、内燃機関からの動力の一部を前輪用の駆動軸に伝達しながら残部を電力に変換したり内燃機関の動力のすべてを前輪用の駆動軸に伝達しながらこの駆動軸に動力を出力する第1電動機と、後輪用の駆動軸に動力を出力する第2電動機と、第1電動機および第2電動機と電力のやり取りを行なう二次電池とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、任意な運転ポイント(回転数とトルク)で運転された内燃機関からの動力を変換して前輪用の駆動軸に出力できると共に二次電池の充放電による電力により両駆動軸に任意の動力を入出力することができることから、アクセル操作に基づいて設定される要求動力を、効率のよい運転ポイントで運転された内燃機関からの動力と二次電池の充放電によって得られる二つの電動機からの動力とによって両駆動軸に出力している。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−175203号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前述の特許文献1記載のハイブリッド自動車に限らず、あらゆる装置や機器において、その耐久性の向上やエネルギ効率の向上は重大な課題として考えるべきものであることは言うまでもない。こうした課題は、装置や機器だけでなく、装置や機器を構成する部品についても同様である。特に、ハイブリッド自動車における二次電池の耐久性(劣化の抑制による寿命の程度)や充放電の効率は、自動車全体の動特性やエネルギ効率に影響を与えるため、ハイブリッド自動車にとっては重要な課題となる。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、ハイブリッド自動車が備える蓄電手段の寿命を長くすることを目的の一つとする。また、本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、蓄電手段における充放電の効率を向上させることを目的の一つとする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、該第1の車軸と動力の入出力が可能な第1電動機と、第2の車軸に動力の出力が可能な第2電動機と、前記第1電動機および前記第2電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
アクセル操作に基づいて要求動力を設定する要求動力設定手段と、
該設定された要求動力が前記第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記蓄電手段の充電の最中における前記要求動力の増加に対する充電中動力増加制御として、該蓄電手段を少なくとも充電した状態で該増加した要求動力を前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力可能なときには該蓄電手段を充電した状態を維持しながら該要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する充電継続制御を実行し、該蓄電手段を充電した状態では該増加した要求動力を前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力不能なときには該蓄電手段の充電を中止して該要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する充電中止制御を実行する手段である
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、蓄電手段の充電の最中における要求動力の増加に対する充電中動力増加制御として、蓄電手段を少なくとも充電した状態で要求動力を第1の車軸および第2の車軸に出力可能か否かを判断し、出力可能なときには蓄電手段を充電した状態を維持しながら要求動力が第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう内燃機関と第1電動機と第2電動機とを制御し、出力不能なときには蓄電手段の充電を中止して要求動力が第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう内燃機関と第1電動機と第2電動機とを制御する。したがって、蓄電手段を充電した状態で要求動力を第1の車軸および第2の車軸に出力可能か否かを判断しないものに比して、蓄電手段の充放電の回数を低減することができる。この結果、蓄電手段の充放電が頻繁に繰り返されることによる蓄電手段の劣化を抑制することができ、蓄電手段の寿命を長くすることができる。また、蓄電手段の充放電の繰り返しによる発熱を抑制することができるから、蓄電手段の発熱によるエネルギ損失を低減することができる。即ち、蓄電手段の充放電の効率を向上させることができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記蓄電手段の充電の最中における前記要求動力の増加は、前記第1電動機によって発電された電力を用いて前記蓄電手段を充電している最中の前記要求動力の増加であるものとすることもできる。この態様の本発明のハイブリッド自動車において、前記充電継続制御は、前記第1電動機によって発電された電力の一部を用いて前記第2電動機を駆動する制御であるものとすることもできる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記蓄電手段の温度を検出する温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された蓄電手段の温度が所定温度以上のときに前記充電中動力増加制御を実行する手段であるものとすることもできる。こうすれば、蓄電手段の温度が所定温度以上のときに充電中動力増加制御を実行するから、蓄電手段の充放電の切り替え頻度を低くして蓄電手段の温度の上昇を抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明のハイブリッド自動車において、前記内燃機関からの動力および前記第1電動機からの動力を変速して前記第1の車軸に伝達可能な変速機を備え、前記制御手段は前記設定された要求動力が前記第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう前記変速機も制御する手段であるものとすることもできる。ここで、変速機は無段変速機であるものとすることもできる。
【0012】
本発明のハイブリッド自動車の制御方法は、
第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、該第1の車軸と動力の入出力が可能な第1電動機と、第2の車軸に動力の出力が可能な第2電動機と、前記第1電動機および前記第2電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド自動車の制御方法であって、
前記蓄電手段の充電の最中にアクセル操作に基づいて設定される要求動力が増加したとき、前記蓄電手段を少なくとも充電した状態で前記増加した要求動力を前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力可能か否かを判定し、出力可能と判定されたときには前記蓄電手段を充電した状態を維持しながら前記要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御し、出力不能と判定されたときには前記蓄電手段の充電を中止して前記要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明のハイブリッド自動車の制御方法によれば、蓄電手段の充電の最中にアクセル操作に基づいて設定される要求動力が増加したときには蓄電手段を少なくとも充電した状態で前記増加した要求動力を第1の車軸および第2の車軸に出力可能か否かを判定し、出力可能と判定されたときには蓄電手段を充電した状態を維持しながら要求動力が第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう内燃機関と第1電動機と第2電動機とを制御し、出力不能と判定されたときには蓄電手段の充電を中止して要求動力が第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう内燃機関と第1電動機と第2電動機とを制御するから、蓄電手段を充電した状態で要求動力を第1の車軸および第2の車軸に出力可能か否かを判断しないものに比して、蓄電手段の充放電の回数を低減することができる。この結果、蓄電手段の充放電が頻繁に繰り返されることによる蓄電手段の劣化を抑制することができ、蓄電手段の寿命を長くすることができる。また、蓄電手段の充放電の繰り返しによる発熱を抑制することができるから、蓄電手段の発熱によるエネルギ損失を低減することができる。即ち、蓄電手段の充放電の効率を向上させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト24に接続されたプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30に接続された発電可能な前輪用モータ40と、プラネタリギヤ30に接続されると共にディファレンシャルギヤ64などのギヤを介して前輪66a,66bに接続された無段変速機としてのCVT50と、デファレンシャルギヤ94などのギヤを介して後輪96a,96bに接続された後輪用モータ90と、装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0015】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22のクランクシャフト24には、図示しない補機に供給する電力を発電すると共にエンジン22を始動するスタータモータ26がベルト28により取り付けられている。エンジン22の運転制御、例えば燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などは、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)29により行なわれている。エンジンECU29は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0016】
プラネタリギヤ30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合する第1ピニオンギヤ33と、この第1ピニオンギヤ33とリングギヤ32と噛合する第2ピニオンギヤ34と、第1ピニオンギヤ33と第2ピニオンギヤ34とを自転かつ公転自在に保持するキャリア35と備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35とを回転要素として差動作用を行なう。プラネタリギヤ30のサンギヤ31にはエンジン22のクランクシャフト24が、キャリア35には前輪用モータ40の回転軸41がそれぞれ連結されており、エンジン22の出力をサンギヤ31から入力すると共にキャリア35を介して前輪用モータ40と出力のやりとりを行なうことができる。キャリア35はクラッチC1により、リングギヤ32はクラッチC2によりCVT50のインプットシャフト51に接続できるようになっており、クラッチC1およびクラッチC2を接続状態とすることにより、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア35の3つの回転要素による差動を禁止して一体の回転体、即ちエンジン22のクランクシャフト24と前輪用モータ40の回転軸41とCVT50のインプットシャフト51とを一体の回転体とする。なお、プラネタリギヤ30には、リングギヤ32をケース39に固定してその回転を禁止するブレーキB1も設けられている。
【0017】
前輪用モータ40は、例えば発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ43を介して二次電池44と電力のやりとりを行なう。また、後輪用モータ90も例えば発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ91を介して二次電池44と電力のやりとりを行なう。前輪用モータ40および後輪用モータ90は、モータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)49により駆動制御されており、モータECU49には、前輪用モータ40や後輪用モータ90を駆動制御するために必要な信号や二次電池44を管理するのに必要な信号、例えば前輪用モータ40の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ45からの信号や後輪用モータ90の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ93からの信号,図示しない電流センサにより検出される前輪用モータ40や後輪用モータ90に印加される相電流,二次電池44の端子間に設置された電圧センサ46からの端子間電圧,二次電池44からの電力ラインに取り付けられた電流センサ47からの充放電電流,二次電池44に取り付けられた温度センサ48からの電池温度などが入力されており、モータECU49からはインバータ43やインバータ91へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU49では、二次電池44を管理するために電流センサ47により検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算している。なお、モータECU49は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によって前輪用モータ40を駆動制御すると共に必要に応じて前輪用モータ40の運転状態や二次電池44の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0018】
CVT50は、溝幅が変更可能でインプットシャフト51に接続されたプライマリープーリー53と、同じく溝幅が変更可能で駆動軸としてのアウトプットシャフト52に接続されたセカンダリープーリー54と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝に架けられベルト55と、プライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更する第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57とを備え、第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57によりプライマリープーリー53およびセカンダリープーリー54の溝幅を変更することによりインプットシャフト51の動力を無段階に変速してアウトプットシャフト52に出力する。CVT50の変速比の制御は、CVT用電子制御ユニット(以下、CVTECUという)59により行なわれている。このCVTECU59には、インプットシャフト51に取り付けられた回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数やアウトプットシャフト52に取り付けられた回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数が入力されており、CVTECU59からは第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57への駆動信号が出力されている。また、CVTECU59は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってCVT50の変速比を制御すると共に必要に応じてCVT50の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0019】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数Niや回転数センサ62からのアウトプットシャフト52の回転数No,シフトレバー80の操作位置を検出するシフトポジションセンサ81からのシフトポジションSP,アクセルペダル82の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ83からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル84の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ85からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ86からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、クラッチC1やクラッチC2への駆動信号やブレーキB1への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU29やモータECU49,CVTECU59と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU29やモータECU49,CVTECU59と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0020】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、ブレーキB1をオフ,クラッチC1をオン,クラッチC2をオフの状態でエンジン22を運転せずに二次電池44からの電力を用いて前輪用モータ40や後輪用モータ90からの動力によって走行するモータ走行モードや、ブレーキB1をオフ,クラッチC1およびクラッチC2をオンの状態でエンジン22からの動力と二次電池44の従放電を伴って入出力される前輪用モータ40,後輪用モータ90からの動力によって走行する通常走行モードなどにより走行する。実施例では、モータ走行モードは主として発進時に用いられ、通常走行モードは発進してから所定車速(例えば、10km/hなど)に至った以降に用いられる。なお、実施例では、通常走行モードで二次電池44を充電する際には、エンジン22からの動力の一部を用いて前輪用モータ40を発電機として駆動させて行なう。
【0021】
次に、通常走行モードで走行している実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、前輪用モータ40を発電機として駆動制御して得られる電力によって二次電池44を充電している最中の動作について説明する。図2は、通常走行モードで走行している最中にハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
【0022】
この駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ83からのアクセル開度Accや車速センサ86からの車速V,回転数センサ61からのインプットシャフト51の回転数Ni,回転数センサ62からのアウトプットシャフト52からの回転数Noなど制御に必要な情報を読み込み(ステップS100)、読み込んだアクセル開度Accと車速Vとに基づいて運転者が要求する要求動力P*を設定する(ステップS110)。ここで、要求動力P*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクとの関係を予め設定して要求トルク設定マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられるとROM74に記憶された要求トルク設定マップから対応する要求トルクを導出し、これに車速Vと換算係数kpを乗じて求めるものとした。要求トルク設定マップの一例を図3に示す。
【0023】
続いて、現在、二次電池44の充電中か否かを判定する(ステップS120)。充電中か否かは電流センサ47により検出される電流iによっても判定できる。二次電池44が充電中でないときや充電中であっても後述する処理によりステップS125の処理が実行されるときには、二次電池44の充電要求の有無や要求動力P*に基づいて二次電池44を充電するのに用いる目標充電用動力Pb*を設定する(ステップS125)。ここで、目標充電用動力Pb*には、要求動力P*が比較的小さくエンジン22からの動力で十分な充電用の動力を得ることができるときには二次電池44を充電するのに最適な電力を得ることができる動力が設定され、要求動力P*が大きくエンジン22からの動力では十分な充電用の動力を得ることができないときには二次電池44を充電するのに最適な電力を得ることができる動力より小さな動力や値0が設定される。即ち、要求動力P*の出力を優先し、要求動力P*の出力に余裕のあるときに余裕の動力の範囲内で目標充電用動力Pb*を設定するのである。
【0024】
目標充電用動力Pb*を設定すると、要求動力P*と回転数Niとに基づいて定まる値に設定した目標充電用動力Pb*を加えてエンジン要求動力Pe*を設定すると共に要求動力P*から設定したエンジン要求動力Pe*を減じてアシスト動力Pas*を設定する(ステップS130)。いま、二次電池44の充電要求がないとき、即ち目標充電用動力Pb*が値0のときを考える。この場合、実施例では、エンジン22を回転数Niで効率よく運転できる範囲内に要求動力P*があるときには、要求動力P*をエンジン22からの動力が走行に用いられる際の効率で割った値をエンジン要求動力Pe*に設定し、エンジン22を回転数Niで効率よく運転できる範囲内に要求動力P*がないときには、エンジン22を回転数Niで効率よく運転できる範囲内で要求動力P*に近い値をエンジン要求動力Pe*に設定する。二次電池44の充電要求があるときには、こうして設定されるエンジン要求動力Pe*に目標充電用動力Pb*を加えることによりエンジン要求動力Pe*を設定する。二次電池44の充電要求がなく、エンジン22を回転数Niで効率よく運転できる範囲内に要求動力P*があるときには、アシスト動力Pas*には要求動力P*とエンジン要求動力Pe*との偏差か値0が設定されることになり、二次電池44の充電要求があり、エンジン22を回転数Niで効率よく運転できる範囲内に要求動力P*があるときには、アシスト動力Pas*には負の値の目標充電用動力Pb*が設定されることになる。
【0025】
こうしてエンジン要求動力Pe*が設定されると、エンジン22からエンジン要求動力Pe*を出力できる運転ポイントのうち最も効率のよい運転ポイントのトルクと回転数とを目標トルクTe*と目標回転数Ni*として設定し(ステップS140)、アシスト動力Pas*を前輪用モータ40から出力すべき要求パワーPm1*と後輪用モータ90から出力すべき要求パワーPm2*とに分配する(ステップS150)。ここで、目標充電用動力Pb*が値0でないときには後輪用モータ90から出力すべき要求パワーPm1*には負の値の目標充電用動力Pb*が分配される。こうした分配により、二次電池44の充電電力を前輪用モータ40によって得ることができる。なお、目標充電用動力Pb*が値0のときでアシスト動力Pas*に値が設定されているときには、効率よく動力が出力されるようにアシスト動力Pas*を要求パワーPm1*と要求パワーPm2*とに分配する。続いて、配分した要求パワーPm1*,Pm2*を各軸の回転数(目標回転数Ni*,車速Vに換算係数kvを乗じた値)で割って前輪用モータ40および後輪用モータ90のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する(ステップS160)。なお、二次電池44の充電要求がなくて要求動力P*がエンジン要求動力Pe*で賄われるときには、アシスト動力Pas*には値0が設定されるから、このときにはトルク指令Tm1*,Tm2*には共に値0が設定される。
【0026】
そして、設定した目標トルクTe*や目標回転数Ni*,トルク指令Tm1*,Tm2*でエンジン22やCVT50,前輪用モータ40,後輪用モータ90が運転されるように目標トルクTe*と回転数NiとをエンジンECU29に、目標回転数Ni*をCVTECU59に、トルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU49に出力して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。なお、目標回転数Ni*を受信したCVTECU59は、インプットシャフト51の回転数Niが受信した目標回転数Ni*となるように第1アクチュエータ56および第2アクチュエータ57を駆動制御し、目標トルクTe*と目標回転数Ni*とを受信したエンジンECU29はエンジン22が目標トルクTe*と目標回転数Ni*とによる運転ポイントで運転されるよう燃料噴射制御や点火制御などを行ない、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU49は前輪用モータ40からトルク指令Tm1*のトルクが出力されると共に後輪用モータ90からトルク指令Tm2*のトルクが出力されるよう前輪用モータ40および後輪用モータ90を駆動制御する。
【0027】
一方、ステップS120で二次電池44が充電中でないと判定されたときには、要求動力P*から前回の要求動力P*を減じて要求動力偏差ΔPを計算し(ステップS170)、要求動力偏差ΔPが値0以上で充電用動力Pb以下の範囲内にあるか否かを判定する(ステップS180)。ここで、充電用動力Pbは、現在、二次電池44を充電するために用いている動力であり、充電電力から換算して求めることができる。要求動力偏差ΔPが値0以上で充電用動力Pb以下の範囲内にあるときには、目標トルクTe*や目標回転数Ni*,トルク指令Tm1*に対しては今までの値をそのまま用い、後輪用モータ90のトルク指令Tm2*に対しては今までの値に要求動力偏差ΔPをその回転数(車速Vに換算係数kvを乗じたもの)で割ったものを加える(ステップS190)。そして、求めたトルク指令Tm2*が定格最大値Tmax以下であることを確認して(ステップS200)、設定した目標トルクTe*や目標回転数Ni*,トルク指令Tm1*,Tm2*をエンジンECU29やCVTECU59,モータECU49に出力して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。この処理では、要求動力偏差ΔPは充電用動力Pbを用いて後輪用モータ90から出力されるから、充電電力は小さくなるものの二次電池44の充電は継続されることになる。このとき、後輪用モータ90に供給される電力は、前輪用モータ40を発電機として駆動して得られる電力により賄われる。即ち、前輪用モータ40からの電力により後輪用モータ90を駆動すると共に二次電池44の充電を継続するのである。
【0028】
ステップS180で要求動力偏差ΔPが値0より小さいときには、二次電池44を過大電力により充電する可能性があると判断してエンジン22の運転ポイントやCVT50の変速比γなどを変更するステップS130以降の処理を実行し、要求動力偏差ΔPが充電用動力Pbより大きいときには、エンジン22やCVT50,前輪用モータ40の運転の変更なしに二次電池44の充電を継続できないと判断してエンジン22の運転ポイントやCVT50の変速比γなどを変更するステップS130以降の処理を実行する。また、ステップS200で後輪用モータ90のトルク指令Tm2*が定格最大値Tmaxより大きいときには、エンジン22やCVT50,前輪用モータ40の運転の変更なしに要求動力P*を出力することができないと判断し、同様にエンジン22の運転ポイントやCVT50の変速比γなどを変更するステップS130以降の処理を実行する。
【0029】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、充電中にアクセルペダル82が踏み込まれて要求動力P*が増加しても、二次電池44の充電に用いられている充電用動力Pbを用いて増加した要求動力を賄うことができるときには、エンジン22やCVT50,前輪用モータ40の運転を変更せずに増加した要求動力を後輪用モータ90から出力するから、充電電力が小さくなるものの二次電池44の充電を継続することができる。したがって、要求動力P*の増加に際に二次電池44の充電を中止して二次電池44からの放電により増加分を賄うものに比して二次電池44の充放電の切り替えの頻度を少なくすることができる。この結果、二次電池44の温度上昇を抑制することができると共に二次電池44の充放電の効率を向上させることができ、二次電池44の寿命を長くすることができる。しかも、要求動力偏差ΔPが値0より小さいときや要求動力偏差ΔPが充電用動力Pbより大きいとき、あるいは、後輪用モータ90のトルク指令Tm2*が定格最大値Tmaxより大きいときには、エンジン22の運転ポイントやCVT50の変速比γ,前輪用モータ40や後輪用モータ90のトルク指令Tm1*,Tm2*を変更するから、要求動力P*をより確実に出力することができると共に二次電池44の充電を継続することもできる。
【0030】
実施例のハイブリッド自動車20では、要求動力P*から前回の要求動力P*を減じた要求動力偏差ΔPが値0以上で充電用動力Pb以下の範囲内にあるときにエンジン22やCVT50,前輪用モータ40の運転を変更せずに要求動力偏差ΔPを後輪用モータ90から出力することにより、二次電池44の充電を継続するものとしたが、設定された要求動力P*が二次電池44の充電を継続した状態で出力可能であるか否かを判定し、肯定的な判定であるときには二次電池44の充電が継続できるようにエンジン22の運転ポイントを変更やCVT50の変速比γの変更,前輪用モータ40および後輪用モータ90の運転の変更を伴ってして要求動力P*を出力するものとしてもよい。
【0031】
実施例のハイブリッド自動車20では、二次電池44の充電中の要求動力P*の増加に対して、エンジン22やCVT50,前輪用モータ40の運転を変更せずに二次電池44の充電に用いられている充電用動力Pbを用いて増加した要求動力を後輪用モータ90から出力するものとしたが、二次電池44の温度を検出し、二次電池44の温度が所定温度以上のときには、実施例と同様な制御を行ない、二次電池44の温度が所定温度未満のときには、増加した要求動力に基づいてエンジン22やCVT50,前輪用モータ40の運転を変更して要求動力を出力するものとしてもよい。こうすれば、二次電池44の温度が所定温度未満のときには二次電池44の充放電の切り替えを考慮することなく対応することができ、二次電池44の温度が所定温度以上のときには、二次電池44の充放電の切り替え頻度を少なくして、その温度の上昇を抑制することができる。
【0032】
また、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22や前輪用モータ40は、プラネタリギヤ30を介してCVT50のインプットシャフト51に接続されているものとしたが、エンジン22や前輪用モータ40はプラネタリギヤ30を介さずにCVT50のインプットシャフト51に接続されているものとしてもよい。
【0033】
実施例のハイブリッド自動車20では、無段変速機としてベルト式のCVT50を用いたが、トロイダル式の無段変速機としてもよい。また、変速機は、無段変速機に限られるものではなく、有段変速機であっても構わない。また、二次電池44に代えてキャパシタなどの他の蓄電手段を用いるものとしてもよい。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22と前輪用モータ40とをCVT50を介して前輪66a,66bの車軸に接続すると共に後輪用モータ90を後輪96a,96bの車軸に接続した構成としたが、エンジンとモータとをCVTを介して後輪の車軸に接続すると共にモータ90を前輪の車軸に接続するものとしてもよい。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】要求トルク設定マップの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 クランクシャフト、26スタータモータ、28 ベルト、29 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、33第1ピニオンギヤ、34 第2ピニオンギヤ、35 キャリア、39 ケース、40 前輪用モータ、41 回転軸、43 インバータ、44 二次電池、45 回転位置検出センサ、46 電圧センサ、47 電流センサ、48 温度センサ、49 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、50 CVT、51インプットシャフト、52 アウトプットシャフト、53 プライマリープーリー、54 セカンダリープーリー、55 ベルト、56 第1アクチュエータ、57 第2アクチュエータ、59 CVT用電子制御ユニット(CVTECU)、61 回転数センサ、62 回転数センサ、64 ディファレンシャルギヤ、66a,66b 前輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 シフトレバー、81 シフトポジションセンサ、82 アクセルペダル、83 アクセルペダルポジションセンサ、84 ブレーキペダル、85 ブレーキペダルポジションセンサ、86 車速センサ、90 後輪用モータ、91 インバータ、93 回転位置検出センサ、94デファレンシャルギヤ、96a,96b 後輪、B1 ブレーキ、C1,C2クラッチ。
Claims (7)
- 第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、該第1の車軸と動力の入出力が可能な第1電動機と、第2の車軸に動力の出力が可能な第2電動機と、前記第1電動機および前記第2電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド自動車であって、
アクセル操作に基づいて要求動力を設定する要求動力設定手段と、
該設定された要求動力が前記第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記蓄電手段の充電の最中における前記要求動力の増加に対する充電中動力増加制御として、該蓄電手段を少なくとも充電した状態で該増加した要求動力を前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力可能なときには該蓄電手段を充電した状態を維持しながら該要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する充電継続制御を実行し、該蓄電手段を充電した状態では該増加した要求動力を前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力不能なときには該蓄電手段の充電を中止して該要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する充電中止制御を実行する手段である
ハイブリッド自動車。 - 前記蓄電手段の充電の最中における前記要求動力の増加は、前記第1電動機によって発電された電力を用いて前記蓄電手段を充電している最中の前記要求動力の増加である請求項1記載のハイブリッド自動車。
- 前記充電継続制御は、前記第1電動機によって発電された電力の一部を用いて前記第2電動機を駆動する制御である請求項2記載のハイブリッド自動車。
- 請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記蓄電手段の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記温度検出手段により検出された蓄電手段の温度が所定温度以上のときに前記充電中動力増加制御を実行する手段である
ハイブリッド自動車。 - 請求項1ないし4いずれか記載のハイブリッド自動車であって、
前記内燃機関からの動力および前記第1電動機からの動力を変速して前記第1の車軸に伝達可能な変速機を備え、
前記制御手段は、前記設定された要求動力が前記第1の車軸および第2の車軸に出力されるよう前記変速機も制御する手段である
ハイブリッド自動車。 - 前記変速機は無段変速機である請求項5記載のハイブリッド自動車。
- 第1の車軸に動力を出力可能な内燃機関と、該第1の車軸と動力の入出力が可能な第1電動機と、第2の車軸に動力の出力が可能な第2電動機と、前記第1電動機および前記第2電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、を備えるハイブリッド自動車の制御方法であって、
前記蓄電手段の充電の最中にアクセル操作に基づいて設定される要求動力が増加したとき、前記蓄電手段を少なくとも充電した状態で前記増加した要求動力を前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力可能か否かを判定し、出力可能と判定されたときには前記蓄電手段を充電した状態を維持しながら前記要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御し、出力不能と判定されたときには前記蓄電手段の充電を中止して前記要求動力が前記第1の車軸および前記第2の車軸に出力されるよう前記内燃機関と前記第1電動機と前記第2電動機とを制御する
ハイブリッド自動車の制御方法。
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CN100422895C (zh) * | 2006-02-16 | 2008-10-01 | 北京航空航天大学 | 一种轻度混合动力汽车用的动力电池管理系统控制器总成 |
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