JP2004139846A - 燃料電池電極の製造方法と製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池用の電極を乾式でかつ連続して作り出すことが可能であり、同時に、電解質膜11への電極材料Pの塗布をより確実かつ均質なものとして、長寿命かつ高品質な電極を作る。また、任意の形状の電極や、所定形状中の各部位において濃度等を変えた電極を作ることも可能とする。
【解決手段】粉末状の電極材料Pに電荷を付与し、帯電した電極材料を現像ローラー52を介して、所定パターンに帯電した感光ドラム41上に静電付着させる。静電付着した感光ドラム41上の電極材料Pは連続して送られる電解質膜11の面に転写され、その後、定着装置70により加熱・加圧されて隔膜上に定着する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池、特に、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる電極製造方法と製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池は、イオン交換膜からなる電解質膜とこの電解質膜の一面に配置されたアノードおよび電解質膜の他面に配置されたカソードとからなる膜−電極アセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)と、アノード・カソードに燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための流体流路を形成するセパレータとを複数重ねて構成されるセル積層体を備える。アノード、カソードは電解質膜に面する触媒層を有し、触媒層とセパレータとの間には拡散層が設けられる。固体高分子電解質型燃料電池では、アノード側では、水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜中をカソード側に移動し、カソード側では、酸素と水素イオンおよび電子から水を生成する反応が行われる。
【0003】
電解質膜には、通常、厚さが10μm〜100μm程度のイオン交換膜が用いられる。また、触媒層は1μm〜10μm程度の厚さのものであり、電解質膜の片面あるいは両面に、場合によっては、カーボンペーパやカーボンクロスからなる拡散層の片面に形成される。
【0004】
電解質膜(あるいは拡散層)に電極材料を塗布して燃料電池電極とする方法としては、従来、印刷、ローラーコート、スプレーなどにより電極材料を直接塗布する湿式塗布方法(例えば、特許文献1など参照)、あるいは予めポリテトラフルオロエチレンシート等に電極材料を塗布して形成した触媒層を熱転写で電解質膜に付着させた後にシ−トを除去する転写方法が行われている(例えば、特許文献2など参照)。前記直接塗布方法の場合、溶剤が電解質膜を変質させたり、膨潤・収縮させて、塗布された触媒層にクラックを発生させやすい。また、予め別のシートに塗布しておいてそれを電解質膜に転写する方法は、工程が増加し複雑になり、コストアップを招く。
【0005】
上記のような不都合を解消した塗布方法として、近年、静電気力およびまたは気体(キャリヤーガス)の流れを利用して、電極材料を電解質膜に付着させる、いわゆる乾式方法が提案されている。例えば、特許文献3は、チャンバー内において、電極材料を電解質膜に静電気により付着させる方法を開示している。特許文献4は、やはりチャンバー内において、静電気力と気体(キャリヤーガス)の流れの双方を利用して電解質膜に触媒粉末を塗布する方法を開示している。特許文献5は、微粉化された電極材料をガス流内に供給し、ガス流によって加速された粉体粒子をその質量慣性を利用して、電極材料の出口(噴出口)に対向して送られる電解質膜のような担持面上に、粉体層として析出させるようにしたものを開示している。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−180728号公報
【特許文献2】
特表平10−507305号公報
【特許文献3】
特開平3−295168号公報
【特許文献4】
特開平11−288728号公報
【特許文献5】
欧州特許公開公報第0926753号明細書
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記した特許文献3(特開平3−295168号公報)および特許文献4(特開平11−288728号公報)などに記載される塗布方法は、乾式塗布のため、従来の湿式塗布における溶剤の電解質膜の攻撃、膨潤・収縮による電極のクラック発生などの問題は除去できる。しかし、いずれもチャンバー内に収容された電解質膜に電極材料を塗布するようにしており、連続的に膜−触媒接合体を製造することはできない。また、塗布面全面の同時塗布であるために、部位別の膜厚などの制御をすることはできない。
【0008】
特許文献5(欧州特許公開公報第0926753号明細書)に記載のものは、電極材料の出口(噴出口)に対向した状態で送られる電解質膜に対して、ガス流によって加速された電極材料をその質量慣性を利用して吹き付け塗布するようにしており、連続的に膜−触媒接合体を製造することができる。しかし、質量慣性による塗布方法で充分な付着力を得ることは困難である。また、単一の出口からの塗布であり、塗布面は均一なものとなり、部位別の膜厚などを制御することはできない。
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、乾式で電極を作ることができ、かつ、燃料電池用隔膜への電極材料の塗布をより確実かつ均質なものとして、より長寿命かつ高品質な電極を作ることができる、新規な燃料電池電極の製造方法と製造装置を提供することにある。他の目的は、乾式での電極の製造でありながら、任意の形状の電極や、所定形状中の各部位において濃度等を変えた電極を作ることができる、新規な燃料電池電極の製造方法と製造装置を提供することにある。さらに他の目的は、電極厚さ方向にも組成を変えた電極を作ることができる燃料電池電極の製造方法と製造装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための燃料電池電極の製造方法は、粉末状の電極材料に電荷を付与し、該帯電した電極材料を所定パターンに帯電した感光ドラム上に静電付着させ、該静電付着した感光ドラム上の電極材料を連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に転写し、該転写された電極材料を前記燃料電池用隔膜に定着させる、各工程を少なくとも備えることを特徴とする。
【0011】
本発明による方法は、連続して送られる燃料電池用隔膜の面に電荷を持った電極材料を静電気力により転写(塗布)させる方式であり、電極材料の隔膜への付着は確実になると共に、連続した製造が可能となる。さらに、隔膜への転写は、所定パターンに帯電した感光ドラム上に静電付着した電極材料の転写であり、感光ドラム表面での帯電パターン(帯電域の形状)およびまたは帯電強さを適宜調整することにより、任意のパターンの電極触媒層を、場合によっては濃度を変えながら、隔膜上に形成することができる。最後に、隔膜上に転写された電極材料は、従来知られた定着方法により隔膜に定着されて、長寿命かつ高品質の燃料電池用電極となる。主に、安全性の観点から、これらの工程は、不活性ガス雰囲気中で行うことが推奨される。
【0012】
本発明の方法の他の態様では、帯電した電極材料を、絶縁被覆膜で覆われた導電性の現像ローラーに一旦静電付着させた後、所定パターンに帯電した感光ドラム上に静電付着させるようにされる。この態様では、現像ローラーの表面にほぼ均一な膜厚で静電付着した電極材料が感光ドラム上に静電付着するようになるので、感光ドラム表面に形成される電極触媒層の均一性は一層確実となる。その際に、現像ローラーには、電荷供給電源の粉末状の電極材料に電荷を付与する手段に接続した極性と反対の極性が接続される。
【0013】
現像ローラーとして、表面が平坦面のものを用いてもよいが、好ましくは、表面に微小な凹凸を形成したものが用いられる。それにより、現像ローラーの表面に付着する電極材料の膜厚の均一性を一層高めることができる。微小な凹凸としては、粉末状の電極材料は通常直径0.1μm〜10μmであることから、そのような大きさの球体を保持できるような寸法のものであることが望ましい。
【0014】
本発明の方法において、帯電した電極材料の燃料電池用隔膜上への転写は1回のみであってもよく、帯電パターンの異なる感光ドラムを隔膜の送り方向に複数個並置して、転写を複数回実行するようにしてもよい。後者の場合には、電極の構成を厚さ方向に変化させるなども可能となる。いずれの場合も、隔膜の送り方向は、水平方向であってもよく、上下方向であってもよい。
【0015】
本発明の方法において、粉末状の電極材料がそれを収納する容器内で振動または流動状態におかれることは好ましい態様である。それにより、粉末状の電極材料が容器内で塊状となったり、いわゆる「だま」を形成するのを回避することができ、粒度分布の一定な電極材料による電極触媒層を隔膜上に形成することができる。
【0016】
本発明の方法において、粉末状の電極材料に電荷を付与する方法に制限はないが、付与作業の容易性と確実性を考慮すると、適宜の電荷供給電源の一方の電極に接続した静電印加用電極を電極材料中に配置することは好ましい(その際に、電荷供給電源の他方の電極に前記現像ローラーに接続される)。静電印加用電極は、好ましくは、直径0.1mm以下の細線(導電体)が用いられる。印加電圧は100V〜20kVの範囲が望ましく、直流と交流を重畳した電圧であることは、さらに好ましい。
【0017】
本発明は、上記の製造方法を好適に実施することのできる燃料電池電極の製造装置をも開示する。本発明による製造装置は、粉末状の電極材料を収納する容器と、粉末状の電極材料に電荷を付与する手段と、帯電した電極材料が所定パターンで静電付着する感光ドラムと、感光ドラムを所定のパターンで帯電させる手段と、該感光ドラム上に所定パターンで静電付着した電極材料が転写可能な位置に燃料電池用隔膜を連続的に供給する送り手段と、該転写された電極材料を燃料電池用隔膜に定着させる定着手段、とを少なくとも備えることを特徴とする。
【0018】
上記装置では、容器内に収納されている電極材料は、電極材料に電荷を付与する手段により電荷(例えばプラス)が与えられ、それが、電極材料と逆極性(例えばマイナス)で所定のパターンに帯電した領域を持つ感光ドラムの帯電領域に静電付着する。感光ドラムに所定のパターンの帯電領域を形成する手段は、静電複写機の分野で知られた手段を適宜採用することができ、一例として、感光ドラム表面を帯電させる帯電ローラーと、感光ドラムに投光し前記所定パターン以外の部分を除電する投光装置とから構成することができる。投光装置からの投光パターンを適宜設定することにより、最終的に、電極材料は任意のパターンで感光ドラムの表面に付着される。ローラー方式の帯電に代えてワイヤーによる帯電方式を用いてもよい。
【0019】
感光ドラム上に所定パターンで静電付着した電極材料は、適宜の送り手段によって該電極材料が転写可能な位置に連続的に送られてくる燃料電池用隔膜上に転写され、その後、定着手段により定着される。定着手段に特に制限はないが、相対する2本の加温・加圧したローラー間に隔膜を通し、電極材料を加温・加圧して圧着する手段や、相対する2枚の加温された平板で隔膜を挟み込み、電極材料を加熱・加圧して圧着する手段、などであってよい。その際の加圧力は20kg/cm〜200kg/cm、加熱温度は80℃〜200℃程度である。
【0020】
本発明による装置の他の態様では、帯電した電極材料を感光ドラムに転写する手段として、絶縁被覆膜で覆われた導電性の現像ローラーが備えられる。該現像ローラーには、電荷供給電源の電極材料に電荷を付与する手段に接続した極と反対の極が接続され、帯電した電極材料は、一旦現像ローラーに静電付着した後、前記のように所定パターンに帯電した感光ドラム上に再び静電付着される。この態様では、感光ドラム表面に形成される電極触媒層の均一性を一層高めることができる。
【0021】
現像ローラーは表面に微小な凹凸を有していることが望ましい。ローラー表面に微小な凹凸を形成する方法は任意であるが、ショットブラストによる方法、エッチングによる方法、スクリーンのクロスを貼り付ける方法、微小な金属などの粒子を圧着あるいは接着する方法、カーボン、樹脂などの繊維状物質を植毛方式で接着する方法、シリコンカーバイトなどの粒子を懸濁させためっき液でめっきを施す方法などが有効である。凹凸、特に凹部の大きさは、前記したように、直径が0.1μm〜10μm程度の球体(平均的な電極材料の大きさ)を保持できるものであることが望まれる。
【0022】
現像ローラーは粉末状の電極材料を収納する容器内に、かつ、収納された電極材料に埋設するようにして配置されていてもよく、粉末状の電極材料を収納する容器外であって、容器内に収納された電極材料の出口に近接して配置されていてもよい。後者の場合には、電極材料を容器の出口からクーロン力により飛翔させて、現像ローラーの表面に静電付着させることとなるが、付着は現像ローラーの前記出口に最も近接した部分に多く付着する傾向となるので、現像ローラーへの電荷の供給を断続して行うようにして、均一な層が形成されるようにする。断続する回数は、現像ローラーの回転速度やローラーの径などを参照して適宜定めればよいが、現像ローラーの回転に同期させて、1回転に10〜1000回の範囲が好ましい。なお、いずれにおいても、現像ローラーを用いる場合には、現像ローラーの静電付着力よりも感光ドラムへの静電付着力が大きくなるように、電極材料の電荷量を制御することは必要である。
【0023】
本発明による装置において、容器や感光ドラムなどからなる装置を、連続して送られてくる電極材料の燃料電池用隔膜に対して、1個のみを設置するようにしてもよく、例えば帯電パターンなどの異なる感光ドラムを備えた装置を隔膜の送り方向に複数個並置するようにしてもよい。後者の場合には、電極の構成を厚さ方向に変化させるなども可能となる。隔膜の送り方向に合わせて、水平方向にあるいは上下方向に、複数の装置は配置される。一枚の隔膜を挟持するようにして2つの装置を対向配置して、隔膜の両面に同時に電極触媒層を形成するようにしてもよい。全体を不活性ガス雰囲気にあるケーシング内に設置することは、主に安全性の観点から推奨される。
【0024】
本発明による装置において、容器内に電極材料に振動や流動を付与する手段を備えることは、電極材料が団粒化するのを防止する意味から望まれる。そのための手段としては、容器を外側から加震する手段、超音波による振動を容器内の電極材料に直接付与する手段などが有効である。
【0025】
なお、本発明において、「電極材料」の語は、例えば、触媒物質(例えば、Pt)を担持したカーボン粉末と電解質粉末(フッ素形機能樹脂、パーフルオロスルフォン酸アミドなど)を混合したもの、または触媒物質を担持したカーボン粉末の表面に前記電解質をコーティングしたものなどを主成分とする、従来のこの種の燃料電池電極の製造に用いらる粉末状の電極触媒材料を総称するものとして用いている。通常、直径が0.1μm〜10μm程度の大きさである。また、前記したように「燃料電池用隔膜」は、電解質膜および拡散膜の双方を含むものとして使っている。電解質膜は、パーフルオロスルフォン酸膜、炭化水素系膜ようなものを挙げることができ、拡散膜はカーボンクロスやカーボンペーパのようなものを挙げることができる。拡散膜の場合には、当然に一方の面にのみ電極触媒層は形成される。さらに、本発明による電極を用いた燃料電池は、電気自動車に搭載されてその動力源として有効に用いられるが、用途がこれに限られることはない。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付の図面を参照しながら、いくつかの実施の形態に基づき説明する。最初に、図1により、本発明でいう燃料電池電極を備えた固体高分子電解質型燃料電池10を説明する。燃料電池10は、イオン交換膜からなる電解質膜11と、その一面に積層したアノード(電極)14と、他面に積層したカソード(電極)17とで構成される膜−電極アセンブリを備え、各膜−電極アセンブリは、アノード14、カソード17に燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための燃料ガス流路21、酸化ガス流路22を形成するセパレータ18により挟持されてセル19とされる。セパレータ18には、セルを冷却するための冷媒(通常、冷却水)が流れる冷媒流路23も形成される。複数枚のセル19が重ねられてセル積層体とされ、1つの固体高分子電解質型燃料電池10を形成する。アノード14側では水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜11中をカソード17側に移動し、カソード17側では酸素と水素イオンおよび電子から水を生成する反応が行われる。
【0027】
アノード14、カソード17は電極触媒層12、15を有し、電極触媒層12、15とセパレータ18との間には拡散層13、16が設けられる。電極触媒層12、15は電解質膜11の両面に形成されるか、あるいは拡散層13、16の片面に形成される。電極触媒層12、15を構成する電極触媒材料は、通常、カーボン粉末に触媒貴金属(たとえば、Pt)を担持させたものと、電解質とを含み、導電性を有する。なお、以下では、電解質膜11に電極触媒層を積層する場合を例として、本発明の実施の形態を説明するが、拡散層13、16に電極触媒層を形成する場合も本発明の範囲である。
【0028】
図2は、本発明による燃料電池電極の製造装置Aの一実施の形態を概略的断面図により示している。図で11はパーフルオロスルフォン酸膜のような電解質膜であり、ロール状に巻かれた電解質膜11は、駆動ローラー31と従動ローラー32などで構成される適宜の送り手段30により、図で左から右方向へ向けて、一定速度で連続的に送られる。
【0029】
送られる電解質膜11の上面に接するようにして、かつ軸心を電解質膜11の送り方向に直交させるようにして、感光ドラム41が配置されている。感光ドラム41は適宜の制御装置により電解質膜11の送り速度と同期した周速度で回転している。電解質膜11を挟持するようにして、感光ドラム41と対向する位置には、圧接ローラー42が、電解質膜11の送り速度と同期した周速度で回転するようにして配置してあり、感光ドラム41と圧接ローラー42との間で、電解質膜11には所要の接触圧が与えられる。なお、送り手段30により電解質膜11に積極的な送りを与えないで、感光ドラム41と圧接ローラー42との接触圧のみで、電解質膜11を送るようにしてもよい。
【0030】
電解質膜11の送り方向における感光ドラム41より下流側には、従来知られた定着装置70が配置される。この例において、定着装置70は電解質膜11を挟持するようにして配置された加圧・加熱ローラー71、71で構成される。
【0031】
前記感光ドラム41は、少なくとも表面層がアモルファスシリコン系、アモルファスセレン系のような材料で覆われている。また、感光ドラム41に接触するかあるいはごく近接するようにして帯電ローラー43が設けられており、該帯電ローラー43に好ましくは交流と直流を重畳した電圧をかけることにより、感光ドラム41は帯電する。なお、ここでは、感光ドラム41はマイナスに帯電するものとして説明する。帯電ローラー43よりも感光ドラム41の回転方向下流位置には、感光ドラム41の表面に投光する投光装置44が設けられる。この投光装置44は従来知られた静電複写機におけると同様の構成と機能を有するものであり、感光ドラム41の表面において投光装置44により投光された領域は除電され、投光されなかった領域が所定パターンに帯電された領域として残され、いわゆる静電潜像を形成する。
【0032】
感光ドラム41に接するようにして、粉末状の電極材料を収納する容器50が配置される。容器50は電極材料の出口51を有し、感光ドラム41の投光装置41による投光場所よりも回転方向下流位置が前記出口51に面するようにされている。
【0033】
容器50内における出口51近傍には、現像ローラー52が、感光ドラム41に近接するようにして、かつ軸線を感光ドラム41の軸線方向を同じにして配置されている。現像ローラー52は導電性であるが、表面はポリテトラフルオロエチレン、シリコンのような絶縁被覆膜53で覆われている。現像ローラー52は、図示しない制御装置により、好ましくは感光ドラム41と同じ周速度となるように、回転が与えられる。
【0034】
さらに、容器50内には、金属細線のような導電材料からなる静電印加用電極54が配置されており、該静電印加用電極54は、適宜の電荷供給電源55の一方の電極(ここではプラス極)に接続している。一方、前記現像ローラー52には、電荷供給電源55の他方の電極(ここではマイナス極)が接続している。
【0035】
上記装置Aの作動を説明する。最初に、容器50内に、前記した粉末状の電極材料Pを投入する。また、感光ドラム41と圧接ローラー42との間、および加圧・加熱ローラー71、71の間を通過するようにして、電解質膜11をセットする。この状態で、電荷供給電源55を入れると共に、図示しない装置全体の制御装置も稼働させる。電荷供給電源55が入ることにより、静電印加用電極54を介して電極材料Pはプラスに帯電し、マイナス極に接続した現像ローラー52の表面にほぼ等しい厚みに付着する。
【0036】
容器50の出口51は、現像ローラー52と感光ドラム41とがごく近接した位置にあり、かつ、前記したように、感光ドラム41の表面にはマイナスに帯電した静電潜像が形成されている。そのために、現像ローラー52上のプラスに帯電した電極材料Pはクーロン力により、感光ドラム41(の静電潜像)に向けて飛翔し、付着して、電極材料による所定パターンの像(電極触媒層)が形成される。
【0037】
形成された電極触媒層は、感光ドラム41の回転とともに、送られてくる電解質膜11と接触し、感光ドラム41と圧接ローラー42との間において、電解質膜11上に転写される。転写した電極触媒層Paは、下流に位置する定着装置70を通過するときにローラー71、71による加圧・加熱を受けて定着が行われ、電解質膜11の片面に電極触媒層12が固定された電極80が形成される。なお、他方の面にも電極触媒層を固定する場合には、同じ操作を他方の面に対しても同様にして行う。そのようにして製造された電極80はロール状に巻き込まれ、必要なときに、適宜の裁断とトリミングが行われて、燃料電池10の組み立てに用いられる。
【0038】
図3は、本発明による製造装置の他の形態を示している。なお、図3の装置A1において、図2に示したものと同じ機能を奏する部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。この例においては、現像ローラー52が、粉末状の電極材料Pを収納する容器50の外であって、容器50内に収納された電極材料Pの出口51に近接した位置に配置されており、この点で、図2に示した装置Aと相違している。そして、作動に際しては、電荷供給電源55から現像ローラー52への電荷の供給を断続して行うようにされる。前記したように、断続する回数は現像ローラー52の回転速度やローラーの径などを参照して適宜定められる。
【0039】
このように、現像ローラー52を容器50の外におくことにより、空間を確保し、電極材料への印加電圧の上昇により流動浮遊状態を作ることによって付着量およびその均一化が向上するという固有の効果が得られる。一方、電極材料Pの現像ローラー52への付着は、出口51に近接した部分に多く付着する傾向となるが、上記のように、現像ローラー52への電荷の供給を断続して行うことにより、その不都合は解消され、均一な厚みの層を現像ローラー52上に形成することができる。その他の作動は、図2に示したものとの実質的に同様である。
【0040】
本発明による燃料電池電極の製造方法と製造装置は、他に多くの変形例が存在する。いくつかの例を、図2に示した装置を例として用いて図4〜図7に示す(図3に示す装置でも同様である)。図4に示す例は、製造装置全体を適宜のケーシング100内に収容して、その内部を窒素ガスのような不活性ガス雰囲気とした例である。これは、例えば、定着装置70での定着時に、カーボン粉末を含む電極材料Pが発火するようなことを回避するためである。この例では、さらに、定着装置70を出た後の電極触媒層上に液状バインダーを塗布する装置110を備え、さらにその下流には、バインダーの乾燥装置120を備えている。このような装置を備えることにより、定着後の電極触媒層12を一層安定化することができる。バインダーとしては固体高分子電解質溶液(例えばNafion溶液)のようなものが有効に用いられる。
【0041】
図5に示す例は、感光ドラム41を供えた装置Aを、電解質膜11の移送方向に2基併設した点で、図2に示したものと相違している。もちろん、2基に限らず3基以上併設してもよい。このようにすることにより、より複雑なパターンの電極触媒層を厚みをも変えながら電解質膜11の上に形成することが可能となる。この場合でも、必要な場合には、図4に示したと同様に、不活性ガス雰囲気内に装置全体を配置してもよく、また、バインダー装置110や乾燥装置120を備えることもできる。
【0042】
図6に示す例は、電解質膜11が上下方向に移送される点で、上記した他の装置と相違している。図7に示す例は、やはり電解質膜11は上下方向に移送されるが、電解質膜11の両面に同時に電極触媒層12、15を形成するために、電解質膜11の両側に感光ドラム41を備えた2基の製造装置A、Aを対向して配置させている点で、図6に示すものと相違している。なお、この場合に、図示しないが、上下方向にも複数基の製造装置Aを対向配置させることもでき、その場合には、図5に示した装置によると同様の効果がもたらされる。
【0043】
なお、上記した実施の形態では、感光ドラム41への電極材料の付着を均一化する目的で、すべて現像ローラー52を備えるようにしている。しかし、容器50内で電荷が与えられた電極材料Pが、現像ローラー52を用いることなく、感光ドラム41に向けて所要に飛翔できるような場合には、現像ローラー52を省略することもできる。また、現像ローラー52に代えて、単なる送りロール(不図示)を配置するようにしてもよい。
【0044】
現像ローラー52を用いる場合に、現像ローラー52は、図8に示すように、表面に微小な凹凸Sを有していることが望ましい。それにより、現像ローラー表面での電極材料Pの付着保持が一層確実となり、感光ドラム41への転写が安定する。図9a〜fは、現像ローラー52の表面に形成する微小な凹凸Sのいくつかの例を示している。図9aでは、現像ローラー52の表面をショットブラストすることにより凹凸Sを形成している。ここで、凹部S1の大きさは、直径10μm〜30μm程度であり、深さ5μm〜20μm程度である。図9bでは、現像ローラーの表面をエッチングすることにより凹凸Sを形成している。凹部S1の大きさは図9aのものと同じ程度であってよい。
【0045】
図9cでは、現像ローラー52の表面にスクリーンのクロス61を貼り付けることにより、粉末状の電極材料を保持できる凹凸Sを設けている。空洞S1の大きさは、直径が0.1μm〜10μm程度である球体(粉末状の電極材料の平均的な大きさ)が保持できる程度のメッシュが望ましい。図9dでは、現像ローラー52の表面に、直径10μm〜30μm程度の微小な金属などの粒子62を圧着あるいは接着することにより凹凸S(空洞S1)を設けている。
【0046】
図9eでは、現像ローラーの表面に、長さ10μm〜100μm程度、直径10μm〜30μm程度のカーボン、樹脂などの繊維状物質を植毛方式で接着することにより、粉末状の電極材料を保持できる凹凸S(空洞S1)を形成している。図9fでは、現像ローラーの表面に、直径10μm〜30μm程度のシリコンカーバイトなどの粒子64を懸濁させためっき液でめっき65を施すことにより、粉末状の電極材料を保持できる凹凸S(空洞S1)を形成している。
【0047】
これらの現像ローラー52は、すべて、図2〜図7に例示したような本発明による燃料電池電極の製造装置における現像ローラーとして、選択的に用いうることは説明を要しないであろう。
【0048】
図10は、図2に示した装置において、電源入の状態下で、現像ローラー52への印加電圧を変化させた場合での、当該現像ローラーへの粉末(電極材料)の付着状態を示している。図10aは印加電圧が低い場合の例であり、図10bはより高い電圧を印加した場合の例である。図示のように、印加電圧が高い場合での粉末の付着状態は明らかに良好となっており、良好な電極触媒層が電解質膜11上に形成されることがわかる。また、電源切の場合には、充分な量の粉末の付着が得られず、所期の電極触媒層が形成されないことも充分に推測できる。このことから、本発明の有効性が示される。
【0049】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、燃料電池用の電極を乾式でかつ連続して作り出すことが可能であり、同時に、燃料電池用隔膜への電極材料の塗布をより確実かつ均質なものとして、長寿命かつ高品質な電極を作ることができる。また、乾式での電極の製造でありながら、任意の形状の電極や、所定形状中の各部位において濃度等を変えた電極を作ることができる。電極厚さ方向にも組成を変えた電極を作ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明でいう燃料電池電極を備えた固体高分子電解質型燃料電池の一例を説明する図。
【図2】本発明による燃料電池電極の製造方法を実施するのに好適な製造装置の一実施の形態を説明する図。
【図3】本発明による燃料電池電極の製造方法を実施するのに好適な製造装置の他の実施の形態を説明する図。
【図4】本発明による燃料電池電極の製造装置のさらに他の実施の形態を説明する図。
【図5】本発明による燃料電池電極の製造装置のさらに他の実施の形態を説明する図。
【図6】本発明による燃料電池電極の製造装置のさらに他の実施の形態を説明する図。
【図7】本発明による燃料電池電極の製造装置のさらに他の実施の形態を説明する図。
【図8】現像ローラーの一例を示す斜視図。
【図9】現像ローラーの他の形態における要部を拡大して示す断面図。
【図10】粉末状の電極材料の付着状態を比較する図。
【符号の説明】
A、A1…燃料電池電極の製造装置、P…粉末状の電極材料、11…電解質膜、12、15…電極触媒層、13、16…拡散層、14…アノード、17…カソード、18…セパレータ、19…セル、30…電解質膜の送り手段手段、41…感光ドラム、42…圧接ローラー、43…帯電ローラー、44…投光装置、50…粉末状の電極材料を収納する容器、51…出口、52…現像ローラー、53…絶縁被覆膜、54…静電印加用電極、55…電荷供給電源、70…定着装置、100…製造装置全体を不活性ガス雰囲気とするためのケーシング、110…液状バインダーを塗布する装置、120…バインダーの乾燥装置、S…現像ローラー表面の凹凸、S1…凹部または空洞

Claims (11)

  1. 粉末状の電極材料に電荷を付与し、該帯電した電極材料を所定パターンに帯電した感光ドラム上に静電付着させ、該静電付着した感光ドラム上の電極材料を連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に転写し、該転写された電極材料を前記燃料電池用隔膜に定着させる、各工程を少なくとも備えることを特徴とする燃料電池電極の製造方法。
  2. 粉末状の電極材料に電荷を付与し、該帯電した電極材料を絶縁被覆膜で覆われた導電性の現像ローラーに静電付着させ、該静電付着した現像ローラー上の電極材料を所定パターンに帯電した感光ドラム上に静電付着させ、該静電付着した感光ドラム上の電極材料を連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に転写し、該転写された電極材料を燃料電池用隔膜に定着させる、各工程を少なくとも備えることを特徴とする燃料電池電極の製造方法。
  3. 前記現像ローラーとして表面に微小な凹凸を形成したものを用いることを特徴とする請求項2記載の燃料電池電極の製造方法。
  4. 前記電極材料の燃料電池用隔膜上への転写を複数回実行し、電極の構成を厚さ方向に変化させることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の燃料電池電極の製造方法。
  5. 前記電極材料が電極材料粉末を収納する容器内で振動または流動した状態におかれることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載の燃料電池電極の製造方法。
  6. 粉末状の電極材料を収納する容器と、粉末状の電極材料に電荷を付与する手段と、帯電した電極材料が所定パターンで静電付着する感光ドラムと、感光ドラムを所定のパターンで帯電させる手段と、該感光ドラム上に所定パターンで静電付着した電極材料が転写可能な位置に燃料電池用隔膜を連続的に供給する送り手段と、該転写された電極材料を燃料電池用隔膜に定着させる定着手段、とを少なくとも備えることを特徴とする燃料電池電極の製造装置。
  7. 粉末状の電極材料を収納する容器と、粉末状の電極材料に電荷を付与する手段と、帯電した電極材料が静電付着する絶縁被覆膜で覆われた導電性の現像ローラーと、該静電付着した現像ローラー上の電極材料が所定パターンで静電付着する感光ドラムと、感光ドラムを所定のパターンで帯電させる手段と、該感光ドラム上に所定パターンで静電付着した電極材料が転写可能な位置に燃料電池用隔膜を連続的に供給する送り手段と、該転写された電極材料を燃料電池用隔膜に定着させる定着手段、とを少なくとも備えることを特徴とする燃料電池電極の製造装置。
  8. 前記現像ローラーは表面に微小な凹凸を有していることを特徴とする請求項7記載の燃料電池電極の製造方法。
  9. 前記現像ローラーは粉末状の電極材料を収納する容器内に、かつ、収納された電極材料に埋設するようにして配置されていることを特徴とする請求項7または8記載の燃料電池電極の製造装置。
  10. 前記現像ローラーは粉末状の電極材料を収納する容器外であって、容器内に収納された電極材料の出口に近接して配置されており、かつ、現像ローラーへの電荷の供給が断続して行われるようにされていることを特徴とする請求項7または8記載の燃料電池電極の製造装置。
  11. 前記感光ドラムを所定のパターンで帯電させる手段は、感光ドラム表面を帯電させる帯電ローラーと、感光ドラムに投光し前記所定パターン以外の部分を除電する投光装置と、を備えることを特徴とする請求項6ないし10いずれかに記載の燃料電池電極の製造装置。
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