JP2004095292A - 燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法と製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電解質膜への電極触媒材料の塗布をより確実かつ均質なものとすることができ、それにより、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得る。また、未付着の電極触媒材料を効果的に回収して、環境汚染を防止し、電極触媒材料の歩留まりを向上させる。
【解決手段】スリット状のノズル41を備える容器42内に粉末状の電極触媒材料Pを保持する。容器42の内部には電極触媒材料Pの粒径を所定値以下とするための第1のフィルター43と、電極触媒材料Pに電荷を与える電極47を配置する。容器内には不活性ガスGが供給される。帯電した電極触媒材料Pは不活性ガスGの流れにより上昇し、第1のフィルター43により「だま」などが除去され、その後、ノズル41から、連続して送られてくる電解質膜11に向けて噴出し、塗布される。
【選択図】 図2
【解決手段】スリット状のノズル41を備える容器42内に粉末状の電極触媒材料Pを保持する。容器42の内部には電極触媒材料Pの粒径を所定値以下とするための第1のフィルター43と、電極触媒材料Pに電荷を与える電極47を配置する。容器内には不活性ガスGが供給される。帯電した電極触媒材料Pは不活性ガスGの流れにより上昇し、第1のフィルター43により「だま」などが除去され、その後、ノズル41から、連続して送られてくる電解質膜11に向けて噴出し、塗布される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池、特に、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる電極の一部である膜−電極触媒接合体の製造方法と製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池は、イオン交換膜からなる電解質膜とこの電解質膜の一面に配置されたアノードおよび電解質膜の他面に配置されたカソードとからなる膜−電極アセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)と、アノード・カソードに燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための流体流路を形成するセパレータとを複数重ねて構成されるセル積層体を備える。アノード、カソードは電解質膜に面する電極触媒層を有し、電極触媒層とセパレータとの間には拡散層が設けられる。固体高分子電解質型燃料電池では、アノード側では、水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜中をカソード側に移動し、カソード側では、酸素と水素イオンおよび電子から水を生成する反応が行われる。
【0003】
電解質膜には、通常、厚さが10μm〜100μm程度のイオン交換膜が用いられる。また、電解触媒層は1μm〜10μm程度の厚さのものであり、電解質膜の片面あるいは両面に、場合によっては、カーボンペーパーやカーボンクロスからなる拡散層の片面に形成される。
【0004】
電解質膜(あるいは拡散層)に電極触媒材料を塗布する方法、すなわち、燃料電池の膜−電極触媒接合体を製造する方法としては、従来、印刷、ローラーコート、スプレーなどにより直接塗布する湿式塗布方法(例えば、特開平9−180728号公報など参照)あるいは予めポリテトラフルオロエチレンシート等に塗布した電極触媒層を熱転写で電解質膜に付着させシートを除去する方法が行われている(例えば、特開2002−210739号公報など参照)。前記直接塗布方法の場合、溶剤が電解質膜を変質させたり、膨潤・収縮させて、塗布された電極触媒層にクラックを発生させやすい。また、予め別のシートに塗布しておいてそれを電解質膜に転写する方法は、工程が増加し複雑になり、コストアップを招く。
【0005】
上記のような不都合を解消した塗布方法として、近年、静電気力およびまたは気体(キャリヤーガス)の流れを利用して、電極触媒材料を電解質膜に付着させる、いわゆる乾式方法が提案されている。例えば、特開平3−295168号公報は、チャンバー内において、電極触媒材料を電解質膜に静電気により付着させる方法を開示している。特開平11−288728号公報は、やはりチャンバー内において、静電気力と気体(キャリヤーガス)の流れの双方を利用して電解質膜に電極触媒粉末を塗布する方法を開示している。EP926753号公報は、微粉化された電極触媒材料をガス流内に供給し、ガス流によって加速された粉体粒子をその質量慣性を利用して、電極触媒材料の出口(噴出口)に対向して送られる電解質膜のような担持面上に、粉体層として析出させるようにしたものを開示している。具体的には、1つの出口を備える粉末状の電極触媒材料を保持する容器と、容器の内部の電極触媒材料に向かって気体を供給する気体供給手段と、容器の出口に対向配置可能に電解質膜を連続的に供給する送り手段、とを備えており、かつ、容器内には粉砕手段を備えており、粉砕手段により微粉化された電極触媒材料がそのまま気体の流れにより電解質膜面に衝接して、塗布されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した特開平3−295168号公報および特開平11−288728号公報などに記載される塗布方法は、乾式塗布のため、従来の湿式塗布における溶剤の電解質膜の攻撃、膨潤・収縮による電極のクラック発生などの問題は除去できる。しかし、いずれもチャンバー内に収容された電解質膜に電極触媒材料を塗布するようにしており、連続的に膜−電極触媒接合体を製造することはできない。また、塗布面全面の同時塗布であるために、部位別の膜厚などの制御をすることはできない。
【0007】
EP926753号公報に記載のものは、電極触媒材料の出口(噴出口)に対向した状態で送られる電解質膜に対して、ガス流によって加速された電極触媒材料をその質量慣性を利用して吹き付け塗布するようにしており、連続的に膜−電極触媒接合体を製造することができる。しかし、質量慣性による塗布方法で充分な付着力を得ることは困難である。また、単一の出口からの塗布であり、塗布面は均一なものとなり、部位別の膜厚などを制御することはできない。噴出した電極触媒材料の一部は電極膜に塗布されることなく浮遊状態となることは起こり得るが、それに対する対策はなされていない。
【0008】
また、いずれの方法による場合も、電極触媒材料はチャンバー内に送られたそのままの状態で、あるいは、適宜の手段により微粉化された電極触媒材料がそのままの状態で、電解質膜塗布面に塗布されるようになっており、粒度分布に広がりのある粉末状の電極触媒材料の場合でも、また、微粒子化した電極触媒材料が塊状になりいわゆる「だま」となったものが混在しているような場合でも、すべて電解質膜上に等しく付着してしまう。
【0009】
本発明者らの実験では、電極触媒層が粒度分布に広がりのある(すなわち、粒径にばらつきのある)電極触媒材料により形成されている場合には、塗布表面がゆず肌状になり、断面方向から見ても局部的な付着層の厚さが不均一になる。従って、加圧、加熱ローラでの定着時に加圧不足により定着不良が生じる部分や、逆に加圧過多で膜にダメージを与える部分が生じる。また、「だま」となっ粒子径の大きなものが含んでいる場合には、電極触媒層の内部に亀裂が生じ、燃料電池の寿命を短くする現象が生じることを確認している。
【0010】
本発明は、上記した従来の連続して送られる燃料電池用隔膜(電解質膜あるいは拡散膜)の少なくとも一方の面に粉末状の電極触媒材料を気体の流れを利用して付着させる工程を少なくとも備えた燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法および製造装置における上記のような不都合を解消することを目的としており、より具体的には、燃料電池用隔膜への電極触媒材料の塗布をより確実かつ均質なものとして、より長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得ることを目的とする。他の目的は、電極触媒材料が出口近傍で浮遊状態となるのを防止して、電極触媒材料の歩留まりを向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法は、連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に粉末状の電極触媒材料を気体の流れを利用して付着させる工程を少なくとも備える燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法において、粉末状の電極触媒材料を帯電させる工程と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする工程とをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本発明による方法は、基本的に、連続して送られる燃料電池用隔膜の面に電極触媒材料を付着(塗布)させる方式であり、膜−電極触媒接合体の連続した製造が可能となる。そして、移動している隔膜への電極触媒材料の付着(塗布)でありながら、付着は、気体流により加速された電極触媒材料の質量慣性による運動量に加えて、帯電した電極触媒材料の静電気による付着力が加わるので、安定したものとなる。さらに、帯電した電極触媒材料を所定メッシュの第1のフィルターを通過させるなどによる粒径を所定値以下とする工程を備えることから、粒径の大きな「だま」などは排除されることとなり、粒径が所定値以下である電極触媒材料による電極触媒層が隔膜上に形成される。そのために、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得ることができる。
【0013】
本発明の方法において、粉末状の電極触媒材料を帯電させるには、電圧が印加された静電印加用電極を電極触媒材料中に配置することにより行ってもよく、粉末状の電極触媒材料を流動させて相互に摩擦帯電させるようにしてもよい。静電印加用電極には、針金状の金属など従来この種の電極として知られたものを任意に用いればよい。好ましくは、SUS製の直径0.5mm〜2mm程度のものが用いられる。印加電圧は100V〜100kVの範囲であり、50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳する場合に、高い付着力が得られる。摩擦帯電を行う場合には、電極粉末にPTFEのような帯電しやすい材料を加えることが望ましい。電極による印加と摩擦帯電の双方を同時に行ってもよく、移動する隔膜側にも逆極性の電荷を持たせるようにしてもよい。
【0014】
本発明は、上記の製造方法を好適に実施することのできる燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置をも開示する。本発明による製造装置は、少なくとも1つの出口を備える粉末状の電極触媒材料を保持する容器と、容器の内部の電極触媒材料に向かって気体を供給する気体供給手段と、容器の出口に対向配置可能に燃料電池用隔膜を連続的に供給する送り手段、とを少なくとも備える燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置において、前記容器内部には、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
上記装置では、容器内に保持されている電極触媒材料は、気体供給手段により供給される気体(窒素などの不活性ガスが普通であるが、空気であってもよい)によって流動化し、出口に向けて送られて、そこから噴出する。容器の出口には、そこに対向配置するように燃料電池用隔膜が連続的に供給されており、噴出した電極触媒材料は該隔膜の面に衝突して付着する。それにより、膜−電極触媒接合体の連続した製造が可能となる。特に、本発明による装置では、前記容器内部に、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする手段とをさらに備えており、上記製造方法において説明したと同じ理由から、移動している隔膜への電極触媒材料の付着(塗布)でありながら、粒径が所定値以下である電極触媒材料による電極触媒層が隔膜上に安定して形成され、それにより、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得ることができる。
【0016】
本発明による装置において、適宜の制御装置により、隔膜の送り速度や電極触媒材料の噴出量や時間を制御することにより、また、出口の幅や長さを適宜調整することにより、部位別の電極触媒層の厚みや大きさを適宜調整することができる。また、通常、隔膜の送り速度は、50cm/分〜50m/分の範囲である。限定されるものではないが、容器の出口はスリットノズル形状が好ましく、スリット幅は塗布状態に合わせて0.1mm〜10mmの範囲が通常である。出口を複数個設け、それぞれの出口に噴出の範囲や量を調整のためのシャッター手段を取り付けることもできる。該シャッター手段を適宜の制御装置により制御することにより、部位別の膜厚や膜形状の制御が可能となる。
【0017】
本発明による装置において、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とするための手段として、好ましくは、所定粒径以下の電極触媒材料の通過を許容する第1のフィルターが、容器の中央やや上方位置に配置される。このフィルターを流動状態にある電極触媒材料が通過することにより、所定粒径を超える塊や「だま」は除去されるか、あるいは粉砕されて所定粒径以下のものとなる。それにより、フィルター通過後の電極触媒材料はすべて所定粒径以下のものとなる。
【0018】
本発明による装置において、容器の中に電極触媒材料を入れ込むには、大別して2つの態様がある。1つは、塗布工程中、常時、電極触媒材料を容器の中に送り込む態様であり、他の方法は、予め容器内に所要量の電極触媒材料を収容しておく態様である。前者の態様では、気体供給手段により容器内に送給される気体中に電極触媒材料を供給する電極触媒材料供給手段がさらに備えられ、該供給手段により、好ましくは定量供給される電極触媒材料は、気体と共に容器内に送り込まれ、前記第1のフィルターを通過した後、出口から噴出して、隔膜に付着する。
【0019】
後者の場合には、容器内における第1のフィルターよりも気体の流れ上流位置に、気体は通過するが電極触媒材料は通過できない#500〜2000程度の第2のフィルターが備えられ、該第2のフィルターの上に、所要量の電極触媒材料を堆積状態に収容する。第2のフィルターの下方から気体供給手段による気体が容器内に送り込まれ、該気体により流動化した電極触媒材料は、順次気体と共に容器内を上昇し、前記第1のフィルターを通過した後、出口から噴出して、隔膜に付着する。
【0020】
なお、この態様では、堆積状態にある電極触媒材料が、団粒化する場合が起こり得る。そのために、好ましくは、容器内の電極触媒材料に振動を与えて団粒化を阻止する手段がさらに備えられる。阻止手段としては、容器を外側から加震するすることにより内部の電極触媒材料に振動を与え、粒子の分散状態を改善する手段が好ましい。加振は、電磁式、モーター回転式、あるいはエアー振動式、など従来知られた種々の加振機構を用いることができる。複数の加振手段を組み合わせて用いてもよい。振動周波数は10Hz〜1000Hz程度が好適であり、振幅は0.1mm〜10mm程度が好適である。他に、超音波による振動を容器内の電極触媒材料に直接付与するような手段であってもよい。
【0021】
本発明による装置において、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段として、好ましくは、前記したように針金状の静電印加用電極が備えられ、さらに、該静電印加用電極に100V〜100kVの範囲であり、好ましくは50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳した電圧を印加する電荷供給手段が備えられる。場合によっては、気体との接触で流動状態となった電極触媒材料は、その流動によって充分な摩擦帯電を生じる。その場合には、静電印加用電極に電圧を印加することなく、装置の運転が可能となる。この場合には、静電印加用電極を省略することもできる。
【0022】
本発明による装置において、出口から噴出する電極触媒材料のすべてが隔膜に付着することが望ましいが、付着せずに周囲に浮遊状態で散乱することも起こり得る。そのような電極触媒材料は環境を汚染するとともに、歩留まりを悪くする。そのために、本発明による装置では、好ましくは、出口に隣接して、負圧源に接続した吸引ダクトが配置される。未付着の電極触媒材料は、吸引ダクトに吸引され、適宜の固体・気体分離機構を介して回収されるので、環境が汚染するのを回避できると共に、歩留まりも改善される。
【0023】
なお、本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法および製造装置において、送られる隔膜の送り方向に複数個の製造装置を並列に並べて配置するようにしてもよい。そのようにすることにより、部位別に、電極触媒膜(層)の膜厚および膜形状を種々に制御することが一層容易になる。また、装置を隔膜を挟んで両側に配置し、隔膜の一方の面と他方の面に同時に電極触媒材料を塗布するようにしてもよい。いずれの場合も、塗布工程の後には、従来の場合と同様に、電極触媒材料を隔膜に定着させるための定着手段が配置される。通常、定着手段としては、塗布された電極触媒材料をローラーなどで加圧・加熱するものが用いられ、その際の加圧力は20kg/cm2〜200kg/cm2、加熱温度は80℃〜200℃程度である。
【0024】
なお、本発明において、「電極触媒材料」の語は、例えば、触媒物質(例えば、Pt)を担持したカーボン粉末と電解質粉末を混合したもの、または触媒物質を担持したカーボン粉末の表面に電解質をコーティングしたものなどを主成分とする、従来のこの種の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造に用いらる粉末状の電極触媒材料を総称するものとして用いている。また、前記したように「燃料電池用隔膜」は、電解質膜および拡散膜の双方を含むものとして使っている。電解質膜は、パーフルオロ系膜、炭化水素系膜のような固体高分子膜を挙げることができ、拡散膜はカーボンクロスやカーボンペーパーのようなものを挙げることができる。拡散膜の場合には、当然に一方の面にのみ電極触媒材料は塗布される。さらに、本発明による膜−電極触媒接合体を用いた燃料電池は、電気自動車に搭載されてその動力源として有効に用いられるが、用途がこれに限られることはない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付の図面を参照しながら、いくつかの実施の形態に基づき説明する。最初に、図1により、本発明でいう膜−電極触媒接合体を備えた固体高分子電解質型燃料電池10を説明する。燃料電池10は、イオン交換膜からなる電解質膜11と、その一面に積層したアノード(電極)14と、他面に積層したカソード(電極)17とで構成される膜−電極アセンブリを備え、各膜−電極アセンブリは、アノード14、カソード17に燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための燃料ガス流路21、酸化ガス流路22を形成するセパレータ18により挟持されてセル19とされる。セパレータ18には、セルを冷却するための冷媒(通常、冷却水)が流れる冷媒流路23も形成される。複数枚のセル19が重ねられてセル積層体とされ、1つの固体高分子電解質型燃料電池10を形成する。アノード14側では水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜11中をカソード17側に移動し、カソード側17では酸素と水素イオンおよび電子から水を生成する反応が行われる。
【0026】
アノード14、カソード17は電極触媒層12、15を有し、電極触媒層12、15とセパレータ18との間には拡散層13、16が設けられる。電極触媒層12、15は電解質膜11の両面に塗布形成されるか、あるいは拡散層13、16の片面に塗布形成される。電極触媒層12、15を構成する電極触媒材料は、通常、カーボン粉末に触媒貴金属(たとえば、Pt)を担持させたものと、電解質とを含み、導電性を有する。なお、以下では、電解質膜11に電極触媒層を積層する場合を例として、本発明の実施の形態を説明するが、本発明において「膜−電極触媒接合体」というときは、電解質膜11と電極触媒層12、15との積層体に限らず、拡散層13、16と電極触媒層との積層体をも意味するものとして用いている。
【0027】
図2は、本発明による膜−電極触媒接合体の製造装置の一実施の形態を概略的断面図により示している。図で11はパーフルオロ系膜(商品名:ナフィオン(NAFION))、主にフッ素膜のような電解質膜であり、ロール状に巻かれた電解質膜11は、駆動ローラ31と従動ローラ32などで構成される適宜の送り手段30により、図で左から右方向へ向けて、一定速度で連続的に送られる。図示しない制御装置により、電解質膜11の送り速度は適宜調整され、また、送りと停止の切り替えも行われる。
【0028】
送られる電解質膜11の下方には、スリット状のノズル41を電解質膜11に向けた状態で電極触媒材料塗布装置40が配置される。電極触媒材料塗布装置40は、粉末状の電極触媒材料Pを保持する容器42を備える。該容器42は有底状のものであり、その上端に前記スリット状のノズル41が形成されている。容器内部の上方位置には第1のフィルター43が、下方位置には第2のフィルター44が取り付けてあり、第2のフィルター44と容器底部の間の空間Sには、窒素のような不活性ガスGを容器内に送り込むための送気パイプ45の一端が開放している。送気パイプ45の他方端は、図示しない不活性ガス源に接続しており、途中には流量調整弁46が設けてある。
【0029】
第1のフィルター43は、電解質膜11に塗布されるべき電極触媒材料の限界粒径に合わせたメッシュのものとされる。それにより、該限界粒径より大きな粒径を持つ塊状の電極触媒材料や「だま」は、第1のフィルター43を通過できずに容器42内に残されるか、第1のフィルター43に衝突することによって細粉化された後、通過する。第2のフィルター44は不活性ガスGが通過できることを条件にできるだけ小さいメッシュのものとされる。いずれのフィルターもPET樹脂、ナイロンのような材料から作ることができる。また、この例において、いずれのフィルターも交換および脱着可能な状態で容器42内に装着されており、第1のフィルター43をメッシュの異なるものと交換することにより、前記電極触媒材料の限界粒径を変更することができる。第2のフィルター44の脱着については、後述する。
【0030】
第2のフィルター44の近傍には、針金状の静電印加用電極47が配置され、該静電印加用電極47は図示しない電荷供給電源に接続している。そして、静電印加用電極47には電荷供給電源から、100V〜100kVの範囲であり、好ましくは50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳した電圧が印加される。
【0031】
流量調整弁46と容器42との間において、送気パイプ45には、電極触媒材料Pの定量供給装置50の放出側が接続している。定量供給装置50は任意のものでよいが、この例では、ホッパー51と送りローラ52とで構成され、送りローラ52の回転数を図示しない制御装置で制御することにより、所定量の電極触媒材料が送気パイプ45内に送り込まれる。当然に、送りローラ52が回転しない状態では、電極触媒材料Pが送気パイプ45内に送り込まれることはない。
【0032】
容器42のスリット状のノズル41を囲むようにして、ダクト55が取り付けてあり、該ダクト55は図示しない負圧源に接続している。図示しないが、ノズル41の部分にスリットの幅およびまたはスリット長さを調整可能なシャッターを設けてもよい。ノズル41の先端とその上を通過する電解質膜11との間の距離は、状況によって異なるが、通常、0.5mm〜10mm程度となるように、両者の位置関係は保たれる。
【0033】
容器42はその全体が加振装置60の上に載せられている。この例において、加振装置60はモーター回転式のものであり、偏心ローラ61が図示しないモーターにより回転することにより、容器42には所定の振幅と周波数の振動が与えられる。
【0034】
電解質膜11の送り方向における電極触媒材料塗布装置40の下流側には、従来知られた定着装置70が配置される。この例において、定着装置70は電解質膜11を挟持するようにして配置された加圧・加熱ローラ71、71で構成される。必要に応じ、これは多段に配置されることもある。
【0035】
上記装置の作動を説明する。この装置は、第2のフィルター44を容器内に装着するかしないかで、異なった作動態様をとる。最初に、図2に示すように、第2のフィルター44を容器内に装着した場合を説明する。この態様では、作動に先立って、所要量の電極触媒材料Pを第2のフィルター44上に堆積した状態とする。その状態で、静電印加用電極47に電圧をかける。それにより、電極触媒材料Pには静電気が印加される。さらに、加振装置60を作動して、堆積した電極触媒材料Pが団粒化するのを予防する。また、不活性ガス供給源から所要の流速で不活性ガスを送気パイプ45に供給する。ただし、この態様では、定量供給装置50は作動させない。
【0036】
送り手段30を作動して、容器42のノズル41に対向する位置に、電解質膜11の電極触媒材料Pを塗布すべき領域が位置した状態とし、送気パイプ45の流量調整弁46を所要角度に開放する。それにより、不活性ガスGは容器42内に流入し、第2のフィルター44上に堆積した静電気をおびた電極触媒材料Pを流動させながら、その一部をガス流と共に上方に向けて搬送する。電極触媒材料Pは粒度分布に広がりがあったり、塊となったり、「だま」を形成したりしている場合が多いが、第1のフィルター43を通過することにより粒径が所定値以下のものとされ、ガス流(ジェット流)と共にノズル41から噴出して、電解質膜11の面に吹き付けられる。そのときに、静電気力も作用して、電極触媒材料Pの電解質膜11の付着は確実に行われる。噴出した電極触媒材料Pであって、電解質膜11に付着しなかったものは、吸引ダクト55に吸引され、図示しない適宜の固体・気体分離機構を介して回収され、再度、容器42内に投入される。
【0037】
上記のようにして所要の領域にほぼ均一に電極触媒材料Pが塗布された電解質膜11は、送り手段30により図で右方向に送られ、定着装置70による定着が行われ、それにより、電解質膜11の片面に電極触媒層12(15)固定された膜−電極触媒材料接合体90が得られる。他方の面にも電極触媒層15(12)を固定する場合には、同じ操作を他方の面に対しても同様にして行う。そのようにして製造された膜−電極触媒材料接合体90はロール状に巻き込まれ、必要なときに、適宜の裁断とトリミングが行われて、燃料電池10の組み立てに用いられる。
【0038】
なお、前記したように、場合によっては(例えば、電極粉末にPTFEのような帯電しやすい材料を加える場合には)、不活性ガスGとの接触で流動状態となった電極触媒材料Pに、その流動による摩擦によって充分な摩擦帯電が生じる場合がある。その場合には、静電印加用電極47に電圧を印加することなく、装置の運転を行っても、同様な結果が得られる。この場合には、図示しないが、静電印加用電極47を省略した態様の装置とすることもできる。
【0039】
次に、上記装置を第2のフィルター44を装着しないで運転する作動態様について、図3を参照して説明する。なお、図3において、図2に示したものと同じ機能を奏する部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。この態様の場合には、定量供給装置50を作動させる。装置の運転に当たり、定量供給装置50のホッパー51内に電極触媒材料Pを充填する。そして、送りローラ52を作動して、一定量の電極触媒材料Pを送気パイプ45内に連続的に送り込む。送り込まれた電極触媒材料Pは、容器42内に流入して流動化しながら、ノズル41に向けて上昇する。その過程で、電極触媒材料Pには静電印加用電極47から静電気が印加される。
【0040】
以降のロール状の膜−電極触媒材料接合体90が得られるまでの工程は、図2に基づき説明したものと同様である。ただし、この態様では、電極触媒材料Pが団粒化することは通常起こり得ないので、加振装置60を稼働する必要はなく、図3に示すように、加振装置60そのものを省略することもできる。また、この態様でも、場合によっては、不活性ガスGとの接触で流動状態となった電極触媒材料Pは、その送気パイプ45などとの流動摩擦によって充分な摩擦帯電を生じる場合がある。その場合には、静電印加用電極47に電圧を印加することなく、装置の運転を行ってもよく、図示しないが、静電印加用電極47を省略してしまってもよい。
【0041】
なお、上記図2および図3に示した態様では、水平方向に送られる電解質膜11に対して、垂直方向に電極触媒材料Pを吹き付け塗布するようになっているが、これは本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法および製造装置の1つの形態であって、本発明はこれに限らない。例えば、電極触媒材料塗布装置40の向きは図2または図3に示すように上下方向のままとし、電解質膜11の送り方向を上下方向とすることもできる。ただし、その場合には、ノズル41からの電極触媒材料Pの吹き出し方向を電解質膜11の送り方向にほぼ垂直な方向となるように、ノズルの吹き出し口の向きを変えることが必要となる。また、そのような態様とすることにより、電解質膜11の両面に一度に電極触媒材料Pを吹き付け塗布することが可能となる。
【0042】
図4は、電極触媒材料の粒度分布が均一でなく、いわゆる「だま」が混じったままで電解質膜に塗布して電極触媒層を形成し、さらに、拡散層をホットプレスした後での電極断面の一部を示す顕微鏡写真の模式図である。この例では、8μmの「だま」が混じっていることにより、触媒層の内部に亀裂が生じ、また、電解質膜にもダメージが生じていることを表している。
【0043】
図5は、そのような「だま」が混在する電極と、本発明によるようにフィルターを通過させて粒径を所定値以下とした(「だま」を除去した)電極触媒材料により電極触媒層を形成した電極との、連続耐久放電試験の結果を示している。「だまありの電極」は、比較して短い時間で電圧が低下する傾向を示しており、電極の短寿命化を招いている。このことから、本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法と製造装置のように、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする工程を採用する、すなわち、電極触媒材料が通過する第1のフィルターを容器内に配置することの有効性が確認される。
【0044】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、燃料電池用隔膜への電極触媒材料の塗布をより確実かつ均質なものとすることができ、それにより、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体が得られる。結果として、本発明により製造した膜−電極触媒接合体を用いた燃料電池は、安定した高い発電能力を長期間にわたって維持することが可能となる。
また、未付着の電極触媒材料を効果的に回収することができ、環境を汚染しないと共に、電極触媒材料の歩留まりを向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明でいう膜−電極触媒接合体を備えた固体高分子電解質型燃料電池の一例を説明する図。
【図2】本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法を実施するのに好適な製造装置の一実施の形態を説明する図。
【図3】本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法を実施するのに好適な製造装置の他の実施の形態を説明する図。
【図4】電極触媒材料の粒径に大きなばらつきがあり、いわゆる「だま」が混じったままで電解質膜に塗布して電極触媒層を形成した電極の断面の一部を顕微鏡写真の模式図により示す図。
【図5】「だま」が混在する電極と、粒径を所定値以下とした(「だま」を除去した)電極触媒材料により触媒層を形成した電極との、連続耐久放電試験の結果をグラフにより示す図。
【符号の説明】
11…電解質膜、12、15…電極触媒層、13、16…拡散層、14…アノード、17…カソード、18…セパレータ、19…セル、30…電解質膜の送り手段、40…電極触媒材料塗布装置、41…スリット状のノズル、42…粉末状の電極触媒材料を保持する容器、43…第1のフィルター、44…第2のフィルター、45…送気パイプ、46…流量調整弁、47…静電印加用電極、50…定量供給装置、51…ホッパー、52…送りローラ、55…回収用ダクト、60…加振装置、61…偏心ローラ、70…定着装置、71…加圧・加熱ローラ、90…膜−電極触媒材料接合体、G…不活性ガス、P…電極触媒材料
【発明の属する技術分野】
本発明は燃料電池、特に、固体高分子電解質型燃料電池に用いられる電極の一部である膜−電極触媒接合体の製造方法と製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体高分子電解質型燃料電池は、イオン交換膜からなる電解質膜とこの電解質膜の一面に配置されたアノードおよび電解質膜の他面に配置されたカソードとからなる膜−電極アセンブリ(MEA:Membrane−Electrode Assembly)と、アノード・カソードに燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための流体流路を形成するセパレータとを複数重ねて構成されるセル積層体を備える。アノード、カソードは電解質膜に面する電極触媒層を有し、電極触媒層とセパレータとの間には拡散層が設けられる。固体高分子電解質型燃料電池では、アノード側では、水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜中をカソード側に移動し、カソード側では、酸素と水素イオンおよび電子から水を生成する反応が行われる。
【0003】
電解質膜には、通常、厚さが10μm〜100μm程度のイオン交換膜が用いられる。また、電解触媒層は1μm〜10μm程度の厚さのものであり、電解質膜の片面あるいは両面に、場合によっては、カーボンペーパーやカーボンクロスからなる拡散層の片面に形成される。
【0004】
電解質膜(あるいは拡散層)に電極触媒材料を塗布する方法、すなわち、燃料電池の膜−電極触媒接合体を製造する方法としては、従来、印刷、ローラーコート、スプレーなどにより直接塗布する湿式塗布方法(例えば、特開平9−180728号公報など参照)あるいは予めポリテトラフルオロエチレンシート等に塗布した電極触媒層を熱転写で電解質膜に付着させシートを除去する方法が行われている(例えば、特開2002−210739号公報など参照)。前記直接塗布方法の場合、溶剤が電解質膜を変質させたり、膨潤・収縮させて、塗布された電極触媒層にクラックを発生させやすい。また、予め別のシートに塗布しておいてそれを電解質膜に転写する方法は、工程が増加し複雑になり、コストアップを招く。
【0005】
上記のような不都合を解消した塗布方法として、近年、静電気力およびまたは気体(キャリヤーガス)の流れを利用して、電極触媒材料を電解質膜に付着させる、いわゆる乾式方法が提案されている。例えば、特開平3−295168号公報は、チャンバー内において、電極触媒材料を電解質膜に静電気により付着させる方法を開示している。特開平11−288728号公報は、やはりチャンバー内において、静電気力と気体(キャリヤーガス)の流れの双方を利用して電解質膜に電極触媒粉末を塗布する方法を開示している。EP926753号公報は、微粉化された電極触媒材料をガス流内に供給し、ガス流によって加速された粉体粒子をその質量慣性を利用して、電極触媒材料の出口(噴出口)に対向して送られる電解質膜のような担持面上に、粉体層として析出させるようにしたものを開示している。具体的には、1つの出口を備える粉末状の電極触媒材料を保持する容器と、容器の内部の電極触媒材料に向かって気体を供給する気体供給手段と、容器の出口に対向配置可能に電解質膜を連続的に供給する送り手段、とを備えており、かつ、容器内には粉砕手段を備えており、粉砕手段により微粉化された電極触媒材料がそのまま気体の流れにより電解質膜面に衝接して、塗布されるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した特開平3−295168号公報および特開平11−288728号公報などに記載される塗布方法は、乾式塗布のため、従来の湿式塗布における溶剤の電解質膜の攻撃、膨潤・収縮による電極のクラック発生などの問題は除去できる。しかし、いずれもチャンバー内に収容された電解質膜に電極触媒材料を塗布するようにしており、連続的に膜−電極触媒接合体を製造することはできない。また、塗布面全面の同時塗布であるために、部位別の膜厚などの制御をすることはできない。
【0007】
EP926753号公報に記載のものは、電極触媒材料の出口(噴出口)に対向した状態で送られる電解質膜に対して、ガス流によって加速された電極触媒材料をその質量慣性を利用して吹き付け塗布するようにしており、連続的に膜−電極触媒接合体を製造することができる。しかし、質量慣性による塗布方法で充分な付着力を得ることは困難である。また、単一の出口からの塗布であり、塗布面は均一なものとなり、部位別の膜厚などを制御することはできない。噴出した電極触媒材料の一部は電極膜に塗布されることなく浮遊状態となることは起こり得るが、それに対する対策はなされていない。
【0008】
また、いずれの方法による場合も、電極触媒材料はチャンバー内に送られたそのままの状態で、あるいは、適宜の手段により微粉化された電極触媒材料がそのままの状態で、電解質膜塗布面に塗布されるようになっており、粒度分布に広がりのある粉末状の電極触媒材料の場合でも、また、微粒子化した電極触媒材料が塊状になりいわゆる「だま」となったものが混在しているような場合でも、すべて電解質膜上に等しく付着してしまう。
【0009】
本発明者らの実験では、電極触媒層が粒度分布に広がりのある(すなわち、粒径にばらつきのある)電極触媒材料により形成されている場合には、塗布表面がゆず肌状になり、断面方向から見ても局部的な付着層の厚さが不均一になる。従って、加圧、加熱ローラでの定着時に加圧不足により定着不良が生じる部分や、逆に加圧過多で膜にダメージを与える部分が生じる。また、「だま」となっ粒子径の大きなものが含んでいる場合には、電極触媒層の内部に亀裂が生じ、燃料電池の寿命を短くする現象が生じることを確認している。
【0010】
本発明は、上記した従来の連続して送られる燃料電池用隔膜(電解質膜あるいは拡散膜)の少なくとも一方の面に粉末状の電極触媒材料を気体の流れを利用して付着させる工程を少なくとも備えた燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法および製造装置における上記のような不都合を解消することを目的としており、より具体的には、燃料電池用隔膜への電極触媒材料の塗布をより確実かつ均質なものとして、より長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得ることを目的とする。他の目的は、電極触媒材料が出口近傍で浮遊状態となるのを防止して、電極触媒材料の歩留まりを向上させることにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するための本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法は、連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に粉末状の電極触媒材料を気体の流れを利用して付着させる工程を少なくとも備える燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法において、粉末状の電極触媒材料を帯電させる工程と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする工程とをさらに備えることを特徴とする。
【0012】
本発明による方法は、基本的に、連続して送られる燃料電池用隔膜の面に電極触媒材料を付着(塗布)させる方式であり、膜−電極触媒接合体の連続した製造が可能となる。そして、移動している隔膜への電極触媒材料の付着(塗布)でありながら、付着は、気体流により加速された電極触媒材料の質量慣性による運動量に加えて、帯電した電極触媒材料の静電気による付着力が加わるので、安定したものとなる。さらに、帯電した電極触媒材料を所定メッシュの第1のフィルターを通過させるなどによる粒径を所定値以下とする工程を備えることから、粒径の大きな「だま」などは排除されることとなり、粒径が所定値以下である電極触媒材料による電極触媒層が隔膜上に形成される。そのために、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得ることができる。
【0013】
本発明の方法において、粉末状の電極触媒材料を帯電させるには、電圧が印加された静電印加用電極を電極触媒材料中に配置することにより行ってもよく、粉末状の電極触媒材料を流動させて相互に摩擦帯電させるようにしてもよい。静電印加用電極には、針金状の金属など従来この種の電極として知られたものを任意に用いればよい。好ましくは、SUS製の直径0.5mm〜2mm程度のものが用いられる。印加電圧は100V〜100kVの範囲であり、50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳する場合に、高い付着力が得られる。摩擦帯電を行う場合には、電極粉末にPTFEのような帯電しやすい材料を加えることが望ましい。電極による印加と摩擦帯電の双方を同時に行ってもよく、移動する隔膜側にも逆極性の電荷を持たせるようにしてもよい。
【0014】
本発明は、上記の製造方法を好適に実施することのできる燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置をも開示する。本発明による製造装置は、少なくとも1つの出口を備える粉末状の電極触媒材料を保持する容器と、容器の内部の電極触媒材料に向かって気体を供給する気体供給手段と、容器の出口に対向配置可能に燃料電池用隔膜を連続的に供給する送り手段、とを少なくとも備える燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置において、前記容器内部には、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする手段とをさらに備えることを特徴とする。
【0015】
上記装置では、容器内に保持されている電極触媒材料は、気体供給手段により供給される気体(窒素などの不活性ガスが普通であるが、空気であってもよい)によって流動化し、出口に向けて送られて、そこから噴出する。容器の出口には、そこに対向配置するように燃料電池用隔膜が連続的に供給されており、噴出した電極触媒材料は該隔膜の面に衝突して付着する。それにより、膜−電極触媒接合体の連続した製造が可能となる。特に、本発明による装置では、前記容器内部に、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする手段とをさらに備えており、上記製造方法において説明したと同じ理由から、移動している隔膜への電極触媒材料の付着(塗布)でありながら、粒径が所定値以下である電極触媒材料による電極触媒層が隔膜上に安定して形成され、それにより、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体を得ることができる。
【0016】
本発明による装置において、適宜の制御装置により、隔膜の送り速度や電極触媒材料の噴出量や時間を制御することにより、また、出口の幅や長さを適宜調整することにより、部位別の電極触媒層の厚みや大きさを適宜調整することができる。また、通常、隔膜の送り速度は、50cm/分〜50m/分の範囲である。限定されるものではないが、容器の出口はスリットノズル形状が好ましく、スリット幅は塗布状態に合わせて0.1mm〜10mmの範囲が通常である。出口を複数個設け、それぞれの出口に噴出の範囲や量を調整のためのシャッター手段を取り付けることもできる。該シャッター手段を適宜の制御装置により制御することにより、部位別の膜厚や膜形状の制御が可能となる。
【0017】
本発明による装置において、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とするための手段として、好ましくは、所定粒径以下の電極触媒材料の通過を許容する第1のフィルターが、容器の中央やや上方位置に配置される。このフィルターを流動状態にある電極触媒材料が通過することにより、所定粒径を超える塊や「だま」は除去されるか、あるいは粉砕されて所定粒径以下のものとなる。それにより、フィルター通過後の電極触媒材料はすべて所定粒径以下のものとなる。
【0018】
本発明による装置において、容器の中に電極触媒材料を入れ込むには、大別して2つの態様がある。1つは、塗布工程中、常時、電極触媒材料を容器の中に送り込む態様であり、他の方法は、予め容器内に所要量の電極触媒材料を収容しておく態様である。前者の態様では、気体供給手段により容器内に送給される気体中に電極触媒材料を供給する電極触媒材料供給手段がさらに備えられ、該供給手段により、好ましくは定量供給される電極触媒材料は、気体と共に容器内に送り込まれ、前記第1のフィルターを通過した後、出口から噴出して、隔膜に付着する。
【0019】
後者の場合には、容器内における第1のフィルターよりも気体の流れ上流位置に、気体は通過するが電極触媒材料は通過できない#500〜2000程度の第2のフィルターが備えられ、該第2のフィルターの上に、所要量の電極触媒材料を堆積状態に収容する。第2のフィルターの下方から気体供給手段による気体が容器内に送り込まれ、該気体により流動化した電極触媒材料は、順次気体と共に容器内を上昇し、前記第1のフィルターを通過した後、出口から噴出して、隔膜に付着する。
【0020】
なお、この態様では、堆積状態にある電極触媒材料が、団粒化する場合が起こり得る。そのために、好ましくは、容器内の電極触媒材料に振動を与えて団粒化を阻止する手段がさらに備えられる。阻止手段としては、容器を外側から加震するすることにより内部の電極触媒材料に振動を与え、粒子の分散状態を改善する手段が好ましい。加振は、電磁式、モーター回転式、あるいはエアー振動式、など従来知られた種々の加振機構を用いることができる。複数の加振手段を組み合わせて用いてもよい。振動周波数は10Hz〜1000Hz程度が好適であり、振幅は0.1mm〜10mm程度が好適である。他に、超音波による振動を容器内の電極触媒材料に直接付与するような手段であってもよい。
【0021】
本発明による装置において、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段として、好ましくは、前記したように針金状の静電印加用電極が備えられ、さらに、該静電印加用電極に100V〜100kVの範囲であり、好ましくは50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳した電圧を印加する電荷供給手段が備えられる。場合によっては、気体との接触で流動状態となった電極触媒材料は、その流動によって充分な摩擦帯電を生じる。その場合には、静電印加用電極に電圧を印加することなく、装置の運転が可能となる。この場合には、静電印加用電極を省略することもできる。
【0022】
本発明による装置において、出口から噴出する電極触媒材料のすべてが隔膜に付着することが望ましいが、付着せずに周囲に浮遊状態で散乱することも起こり得る。そのような電極触媒材料は環境を汚染するとともに、歩留まりを悪くする。そのために、本発明による装置では、好ましくは、出口に隣接して、負圧源に接続した吸引ダクトが配置される。未付着の電極触媒材料は、吸引ダクトに吸引され、適宜の固体・気体分離機構を介して回収されるので、環境が汚染するのを回避できると共に、歩留まりも改善される。
【0023】
なお、本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法および製造装置において、送られる隔膜の送り方向に複数個の製造装置を並列に並べて配置するようにしてもよい。そのようにすることにより、部位別に、電極触媒膜(層)の膜厚および膜形状を種々に制御することが一層容易になる。また、装置を隔膜を挟んで両側に配置し、隔膜の一方の面と他方の面に同時に電極触媒材料を塗布するようにしてもよい。いずれの場合も、塗布工程の後には、従来の場合と同様に、電極触媒材料を隔膜に定着させるための定着手段が配置される。通常、定着手段としては、塗布された電極触媒材料をローラーなどで加圧・加熱するものが用いられ、その際の加圧力は20kg/cm2〜200kg/cm2、加熱温度は80℃〜200℃程度である。
【0024】
なお、本発明において、「電極触媒材料」の語は、例えば、触媒物質(例えば、Pt)を担持したカーボン粉末と電解質粉末を混合したもの、または触媒物質を担持したカーボン粉末の表面に電解質をコーティングしたものなどを主成分とする、従来のこの種の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造に用いらる粉末状の電極触媒材料を総称するものとして用いている。また、前記したように「燃料電池用隔膜」は、電解質膜および拡散膜の双方を含むものとして使っている。電解質膜は、パーフルオロ系膜、炭化水素系膜のような固体高分子膜を挙げることができ、拡散膜はカーボンクロスやカーボンペーパーのようなものを挙げることができる。拡散膜の場合には、当然に一方の面にのみ電極触媒材料は塗布される。さらに、本発明による膜−電極触媒接合体を用いた燃料電池は、電気自動車に搭載されてその動力源として有効に用いられるが、用途がこれに限られることはない。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付の図面を参照しながら、いくつかの実施の形態に基づき説明する。最初に、図1により、本発明でいう膜−電極触媒接合体を備えた固体高分子電解質型燃料電池10を説明する。燃料電池10は、イオン交換膜からなる電解質膜11と、その一面に積層したアノード(電極)14と、他面に積層したカソード(電極)17とで構成される膜−電極アセンブリを備え、各膜−電極アセンブリは、アノード14、カソード17に燃料ガス(水素)および酸化ガス(酸素、通常は空気)を供給するための燃料ガス流路21、酸化ガス流路22を形成するセパレータ18により挟持されてセル19とされる。セパレータ18には、セルを冷却するための冷媒(通常、冷却水)が流れる冷媒流路23も形成される。複数枚のセル19が重ねられてセル積層体とされ、1つの固体高分子電解質型燃料電池10を形成する。アノード14側では水素を水素イオンと電子にする反応が行われ、水素イオンは電解質膜11中をカソード17側に移動し、カソード側17では酸素と水素イオンおよび電子から水を生成する反応が行われる。
【0026】
アノード14、カソード17は電極触媒層12、15を有し、電極触媒層12、15とセパレータ18との間には拡散層13、16が設けられる。電極触媒層12、15は電解質膜11の両面に塗布形成されるか、あるいは拡散層13、16の片面に塗布形成される。電極触媒層12、15を構成する電極触媒材料は、通常、カーボン粉末に触媒貴金属(たとえば、Pt)を担持させたものと、電解質とを含み、導電性を有する。なお、以下では、電解質膜11に電極触媒層を積層する場合を例として、本発明の実施の形態を説明するが、本発明において「膜−電極触媒接合体」というときは、電解質膜11と電極触媒層12、15との積層体に限らず、拡散層13、16と電極触媒層との積層体をも意味するものとして用いている。
【0027】
図2は、本発明による膜−電極触媒接合体の製造装置の一実施の形態を概略的断面図により示している。図で11はパーフルオロ系膜(商品名:ナフィオン(NAFION))、主にフッ素膜のような電解質膜であり、ロール状に巻かれた電解質膜11は、駆動ローラ31と従動ローラ32などで構成される適宜の送り手段30により、図で左から右方向へ向けて、一定速度で連続的に送られる。図示しない制御装置により、電解質膜11の送り速度は適宜調整され、また、送りと停止の切り替えも行われる。
【0028】
送られる電解質膜11の下方には、スリット状のノズル41を電解質膜11に向けた状態で電極触媒材料塗布装置40が配置される。電極触媒材料塗布装置40は、粉末状の電極触媒材料Pを保持する容器42を備える。該容器42は有底状のものであり、その上端に前記スリット状のノズル41が形成されている。容器内部の上方位置には第1のフィルター43が、下方位置には第2のフィルター44が取り付けてあり、第2のフィルター44と容器底部の間の空間Sには、窒素のような不活性ガスGを容器内に送り込むための送気パイプ45の一端が開放している。送気パイプ45の他方端は、図示しない不活性ガス源に接続しており、途中には流量調整弁46が設けてある。
【0029】
第1のフィルター43は、電解質膜11に塗布されるべき電極触媒材料の限界粒径に合わせたメッシュのものとされる。それにより、該限界粒径より大きな粒径を持つ塊状の電極触媒材料や「だま」は、第1のフィルター43を通過できずに容器42内に残されるか、第1のフィルター43に衝突することによって細粉化された後、通過する。第2のフィルター44は不活性ガスGが通過できることを条件にできるだけ小さいメッシュのものとされる。いずれのフィルターもPET樹脂、ナイロンのような材料から作ることができる。また、この例において、いずれのフィルターも交換および脱着可能な状態で容器42内に装着されており、第1のフィルター43をメッシュの異なるものと交換することにより、前記電極触媒材料の限界粒径を変更することができる。第2のフィルター44の脱着については、後述する。
【0030】
第2のフィルター44の近傍には、針金状の静電印加用電極47が配置され、該静電印加用電極47は図示しない電荷供給電源に接続している。そして、静電印加用電極47には電荷供給電源から、100V〜100kVの範囲であり、好ましくは50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳した電圧が印加される。
【0031】
流量調整弁46と容器42との間において、送気パイプ45には、電極触媒材料Pの定量供給装置50の放出側が接続している。定量供給装置50は任意のものでよいが、この例では、ホッパー51と送りローラ52とで構成され、送りローラ52の回転数を図示しない制御装置で制御することにより、所定量の電極触媒材料が送気パイプ45内に送り込まれる。当然に、送りローラ52が回転しない状態では、電極触媒材料Pが送気パイプ45内に送り込まれることはない。
【0032】
容器42のスリット状のノズル41を囲むようにして、ダクト55が取り付けてあり、該ダクト55は図示しない負圧源に接続している。図示しないが、ノズル41の部分にスリットの幅およびまたはスリット長さを調整可能なシャッターを設けてもよい。ノズル41の先端とその上を通過する電解質膜11との間の距離は、状況によって異なるが、通常、0.5mm〜10mm程度となるように、両者の位置関係は保たれる。
【0033】
容器42はその全体が加振装置60の上に載せられている。この例において、加振装置60はモーター回転式のものであり、偏心ローラ61が図示しないモーターにより回転することにより、容器42には所定の振幅と周波数の振動が与えられる。
【0034】
電解質膜11の送り方向における電極触媒材料塗布装置40の下流側には、従来知られた定着装置70が配置される。この例において、定着装置70は電解質膜11を挟持するようにして配置された加圧・加熱ローラ71、71で構成される。必要に応じ、これは多段に配置されることもある。
【0035】
上記装置の作動を説明する。この装置は、第2のフィルター44を容器内に装着するかしないかで、異なった作動態様をとる。最初に、図2に示すように、第2のフィルター44を容器内に装着した場合を説明する。この態様では、作動に先立って、所要量の電極触媒材料Pを第2のフィルター44上に堆積した状態とする。その状態で、静電印加用電極47に電圧をかける。それにより、電極触媒材料Pには静電気が印加される。さらに、加振装置60を作動して、堆積した電極触媒材料Pが団粒化するのを予防する。また、不活性ガス供給源から所要の流速で不活性ガスを送気パイプ45に供給する。ただし、この態様では、定量供給装置50は作動させない。
【0036】
送り手段30を作動して、容器42のノズル41に対向する位置に、電解質膜11の電極触媒材料Pを塗布すべき領域が位置した状態とし、送気パイプ45の流量調整弁46を所要角度に開放する。それにより、不活性ガスGは容器42内に流入し、第2のフィルター44上に堆積した静電気をおびた電極触媒材料Pを流動させながら、その一部をガス流と共に上方に向けて搬送する。電極触媒材料Pは粒度分布に広がりがあったり、塊となったり、「だま」を形成したりしている場合が多いが、第1のフィルター43を通過することにより粒径が所定値以下のものとされ、ガス流(ジェット流)と共にノズル41から噴出して、電解質膜11の面に吹き付けられる。そのときに、静電気力も作用して、電極触媒材料Pの電解質膜11の付着は確実に行われる。噴出した電極触媒材料Pであって、電解質膜11に付着しなかったものは、吸引ダクト55に吸引され、図示しない適宜の固体・気体分離機構を介して回収され、再度、容器42内に投入される。
【0037】
上記のようにして所要の領域にほぼ均一に電極触媒材料Pが塗布された電解質膜11は、送り手段30により図で右方向に送られ、定着装置70による定着が行われ、それにより、電解質膜11の片面に電極触媒層12(15)固定された膜−電極触媒材料接合体90が得られる。他方の面にも電極触媒層15(12)を固定する場合には、同じ操作を他方の面に対しても同様にして行う。そのようにして製造された膜−電極触媒材料接合体90はロール状に巻き込まれ、必要なときに、適宜の裁断とトリミングが行われて、燃料電池10の組み立てに用いられる。
【0038】
なお、前記したように、場合によっては(例えば、電極粉末にPTFEのような帯電しやすい材料を加える場合には)、不活性ガスGとの接触で流動状態となった電極触媒材料Pに、その流動による摩擦によって充分な摩擦帯電が生じる場合がある。その場合には、静電印加用電極47に電圧を印加することなく、装置の運転を行っても、同様な結果が得られる。この場合には、図示しないが、静電印加用電極47を省略した態様の装置とすることもできる。
【0039】
次に、上記装置を第2のフィルター44を装着しないで運転する作動態様について、図3を参照して説明する。なお、図3において、図2に示したものと同じ機能を奏する部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。この態様の場合には、定量供給装置50を作動させる。装置の運転に当たり、定量供給装置50のホッパー51内に電極触媒材料Pを充填する。そして、送りローラ52を作動して、一定量の電極触媒材料Pを送気パイプ45内に連続的に送り込む。送り込まれた電極触媒材料Pは、容器42内に流入して流動化しながら、ノズル41に向けて上昇する。その過程で、電極触媒材料Pには静電印加用電極47から静電気が印加される。
【0040】
以降のロール状の膜−電極触媒材料接合体90が得られるまでの工程は、図2に基づき説明したものと同様である。ただし、この態様では、電極触媒材料Pが団粒化することは通常起こり得ないので、加振装置60を稼働する必要はなく、図3に示すように、加振装置60そのものを省略することもできる。また、この態様でも、場合によっては、不活性ガスGとの接触で流動状態となった電極触媒材料Pは、その送気パイプ45などとの流動摩擦によって充分な摩擦帯電を生じる場合がある。その場合には、静電印加用電極47に電圧を印加することなく、装置の運転を行ってもよく、図示しないが、静電印加用電極47を省略してしまってもよい。
【0041】
なお、上記図2および図3に示した態様では、水平方向に送られる電解質膜11に対して、垂直方向に電極触媒材料Pを吹き付け塗布するようになっているが、これは本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法および製造装置の1つの形態であって、本発明はこれに限らない。例えば、電極触媒材料塗布装置40の向きは図2または図3に示すように上下方向のままとし、電解質膜11の送り方向を上下方向とすることもできる。ただし、その場合には、ノズル41からの電極触媒材料Pの吹き出し方向を電解質膜11の送り方向にほぼ垂直な方向となるように、ノズルの吹き出し口の向きを変えることが必要となる。また、そのような態様とすることにより、電解質膜11の両面に一度に電極触媒材料Pを吹き付け塗布することが可能となる。
【0042】
図4は、電極触媒材料の粒度分布が均一でなく、いわゆる「だま」が混じったままで電解質膜に塗布して電極触媒層を形成し、さらに、拡散層をホットプレスした後での電極断面の一部を示す顕微鏡写真の模式図である。この例では、8μmの「だま」が混じっていることにより、触媒層の内部に亀裂が生じ、また、電解質膜にもダメージが生じていることを表している。
【0043】
図5は、そのような「だま」が混在する電極と、本発明によるようにフィルターを通過させて粒径を所定値以下とした(「だま」を除去した)電極触媒材料により電極触媒層を形成した電極との、連続耐久放電試験の結果を示している。「だまありの電極」は、比較して短い時間で電圧が低下する傾向を示しており、電極の短寿命化を招いている。このことから、本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法と製造装置のように、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする工程を採用する、すなわち、電極触媒材料が通過する第1のフィルターを容器内に配置することの有効性が確認される。
【0044】
【発明の効果】
上記のように、本発明によれば、燃料電池用隔膜への電極触媒材料の塗布をより確実かつ均質なものとすることができ、それにより、長寿命かつ高品質の膜−電極触媒接合体が得られる。結果として、本発明により製造した膜−電極触媒接合体を用いた燃料電池は、安定した高い発電能力を長期間にわたって維持することが可能となる。
また、未付着の電極触媒材料を効果的に回収することができ、環境を汚染しないと共に、電極触媒材料の歩留まりを向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明でいう膜−電極触媒接合体を備えた固体高分子電解質型燃料電池の一例を説明する図。
【図2】本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法を実施するのに好適な製造装置の一実施の形態を説明する図。
【図3】本発明による燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法を実施するのに好適な製造装置の他の実施の形態を説明する図。
【図4】電極触媒材料の粒径に大きなばらつきがあり、いわゆる「だま」が混じったままで電解質膜に塗布して電極触媒層を形成した電極の断面の一部を顕微鏡写真の模式図により示す図。
【図5】「だま」が混在する電極と、粒径を所定値以下とした(「だま」を除去した)電極触媒材料により触媒層を形成した電極との、連続耐久放電試験の結果をグラフにより示す図。
【符号の説明】
11…電解質膜、12、15…電極触媒層、13、16…拡散層、14…アノード、17…カソード、18…セパレータ、19…セル、30…電解質膜の送り手段、40…電極触媒材料塗布装置、41…スリット状のノズル、42…粉末状の電極触媒材料を保持する容器、43…第1のフィルター、44…第2のフィルター、45…送気パイプ、46…流量調整弁、47…静電印加用電極、50…定量供給装置、51…ホッパー、52…送りローラ、55…回収用ダクト、60…加振装置、61…偏心ローラ、70…定着装置、71…加圧・加熱ローラ、90…膜−電極触媒材料接合体、G…不活性ガス、P…電極触媒材料
Claims (12)
- 連続して送られる燃料電池用隔膜の少なくとも一方の面に粉末状の電極触媒材料を気体の流れを利用して付着させる工程を少なくとも備える燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法において、
粉末状の電極触媒材料を帯電させる工程と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする工程とをさらに備えることを特徴とする燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法。 - 粉末状の電極触媒材料を帯電させる工程が、電圧が印加された静電印加用電極により行われることを特徴とする請求項1記載の料電池用電極の製造方法。
- 印加電圧は100V〜100kVの範囲であり、好ましくは、50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳したものであることを特徴とする請求項2記載の燃料電池用電極の製造方法。
- 粉末状の電極触媒材料を帯電させる工程が、粉末状の電極触媒材料が相互に摩擦流動して帯電することにより行われることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法。
- 帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする工程は、電極触媒材料が所定メッシュのフィルターを通過することにより行われることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造方法。
- 少なくとも1つの出口を備える粉末状の電極触媒材料を保持する容器と、容器の内部の電極触媒材料に向かって気体を供給する気体供給手段と、容器の出口に対向配置可能に燃料電池用隔膜を連続的に供給する送り手段、とを少なくとも備える、燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置であって、
前記容器内部には、粉末状の電極触媒材料を帯電させる手段と、帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする手段とをさらに備えることを特徴とする燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。 - 帯電した電極触媒材料の粒径を所定値以下とする手段は、所定粒径以下の電極触媒材料の通過を許容する第1のフィルターであることを特徴とする請求項6記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。
- 気体供給手段により送給される気体中に電極触媒材料を供給する電極触媒材料供給手段をさらに備えることを特徴とする請求項6または7記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。
- 容器内における第1のフィルターよりも気体の流れ上流位置に、気体は通過するが電極触媒材料は通過できない第2のフィルターをさらに備えることを特徴とする請求項7記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。
- 容器内の電極触媒材料に振動を与えて団粒化を阻止する手段をさらに備えることを特徴とする請求項9記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。
- 静電印加用電極が電極触媒材料へ電荷を付与する手段として備えられ、さらに、該静電印加用電極に100V〜100kVの範囲であり、好ましくは50Hz〜10kHzの高周波電圧を重畳した電圧を印加する電荷供給手段を備えることを特徴とする請求項6ないし10いずれか記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。
- 容器の出口に隣接して、負圧源に接続した吸引ダクトが配置されていることを特徴とする請求項6ないし11いずれか記載の燃料電池の膜−電極触媒接合体の製造装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006318816A (ja) * | 2005-05-13 | 2006-11-24 | Toyota Motor Corp | 燃料電池用接合体の製造方法、燃料電池用接合体の製造装置及び燃料電池 |
JP2008520071A (ja) * | 2004-11-11 | 2008-06-12 | ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト | 膜/電極ユニットを製作するための方法および装置 |
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2002
- 2002-08-30 JP JP2002253581A patent/JP2004095292A/ja active Pending
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