JP2004139688A - 光記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】蛇行溝を設けた透明基板上に、下部保護層、記録層、上部保護層、硫化防止層、反射層、界面層を有し、波長660±10nm、NA0.65のピックアップヘッドを用いてパワー11±1mWの連続光を照射することにより計測した転移線速が8〜11m/sの範囲にあり、かつ、未記録状態の反射率Rbと繰り返し記録10回後のアイパターン上部の反射率Raの差ΔR=|Rb−Ra|が3%以内である光記録媒体。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、相変化型光記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来技術】
DVD−ROMドライブによる再生互換性の高い相変化型光記録媒体としては、特許文献1に開示されているような発明があるが、高速記録や下位互換性(低線速度での互換性)までは考慮されていない。
良好な高速記録を達成する手段としては、特許文献2〜4のように記録層組成を高速記録に適した組成に限定したものや、特許文献5〜9のように主に結晶化促進を目的とした層を記録層に接するように設けたもの、また、特許文献10〜11のように反射層をAg又はAg合金とした発明もある。しかし、これらは何れも記録層の結晶化速度を向上させることにより良好な高速記録を行うものであり、これだけでは、本発明のような、高速記録が可能で、かつ下位互換性を有する光記録媒体を達成することはできない。
特許文献12では、上部保護層を2層化することにより広い線速で良好なオーバーライト特性を示すとしているが、下位互換性までは考慮されていない。
特許文献13には、1.2〜30m/sの各記録線速で記録可能となるような媒体が規定されており、高速記録にも対応できるが、これも下位互換性までは考慮されていない。
【0003】
一方、本出願人は先に、4倍速記録が可能で、かつ、1〜2.4倍速での下位互換性がある媒体について、下記(1)〜(3)の出願を行った。
(1)特願2002−0205538号
「基板上に少なくとも相変化記録層と反射層を有し、少なくともCAV記録によるオーバーライトが可能な記録線速範囲以上の記録線速範囲を有し、反射率低下線速(転移線速)が記録可能な線速範囲内にある光記録媒体。」
(2)特願2002−0203087号
「再結晶化上限速度(転移線速)Vcuが最高記録線速Vmaxと最低記録線速Vminの間にあって、Vcuが
(Vmax+Vmin)/2<Vcu<{(Vmax+Vmin)/2}+3
である光記録媒体。」
(3)特願2002−0206897号
「記録層材料として特定組成比のAgInSbTeGeを用いた光記録媒体。」
【0004】
DVD+RWは相変化型光記録媒体の一種で、DVD−ROMと互換性の高い繰り返し記録可能な媒体であり、「DVD+RW 4.7Gbytes Basic Format Specifications System Description」に規格化され、動画の記録媒体やパーソナルコンピュータの外部記憶媒体として実用化されている。
相変化型光記録媒体は基板上の記録層薄膜にレーザー光を照射して記録層を加熱し、記録層構造を結晶と非晶質間で相変化させることによりディスク反射率を変えて情報を記録・消去するものである。通常は未記録状態を高反射率の結晶相とし、これに低反射率の非晶質相からなるマークと高反射率の結晶相からなるスペースを形成することにより情報を記録する。マークとスペースを繰り返し記録する方法として、DVD+RWで使用されている方式を図1、2に示した。
レーザーパワーをピークパワーPp、消去パワーPe、バイアスパワーPb(Pp>Pe>Pb)の3値に変調した記録パルス波形を用いる。PbとPeからなるパルス列を照射されると記録層は溶融と急冷を繰り返し非晶質マークが形成される。Peが照射されると記録層は徐冷され、スペースが形成される。
DVD+RWでは、図1中に示したdTtop、Ttop、Tmp、dTeraの4つのパラメータにより記録パルス波形が決められる。Tは基準クロックであり、PpとPbからなるパルス列の先頭と後端の間のパルス列は、マルチパルスと呼ばれ、1T周期で設けられている。ここで、dTtopは先頭パルス開始時間、Ttopは先頭パルスの幅、Tmpはマルチパルス部のピ−クパワーパルスの幅、Twは基準クロックの幅、dTeraは消去開始時間である。
【0005】
DVD+RWは、現在、1〜2.4倍速(3.49〜8.44m/s)で記録再生が可能であるが、大容量のデータを扱うことから、より高速で記録再生が可能な媒体が求められている。高速で記録可能な媒体は、前記特許文献2〜9にあるように、一般的には記録層組成の調整や、主に結晶化促進を目的とした層を記録層に接するように設けるなどして、記録層の結晶化速度を速めることにより達成できる。しかし、記録層の結晶化速度を速くした場合には、より高い記録パワーを用いるか、或いは、1T周期のマルチパルスから逸脱した記録パルス波形を用いるかしないと良好な記録はできない。従って、このような媒体に対して現在普及している1〜2.4倍速で記録可能なドライブ(記録パワーの最大値15mW)を用いて記録を行おうとしてもパワー不足で記録が行えないという不具合を生じる。また記録パルス波形の大幅な変更もファームウェアでは対応できない。そこで、DVD−ROMとの互換性が高く、少なくとも4倍速(14m/s)で良好な繰り返し記録が可能であって、かつ、1〜2.4倍速では記録パワー15mW以下で、1T周期のマルチパルスを用いた記録パルス波形で良好な記録が可能な媒体を形成するため、前記先願発明1〜3のように結晶化速度を適当な値に調整する手段を採用すれば下位互換性を確保し易くなる。しかし、本発明者らが更にこれら先願発明の保存安定性について詳細な検討を行ったところ、初期化後、室温で1〜2週間程度放置すると、4倍速記録の記録特性が劣化する場合があることが分った。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−237096号公報
【特許文献2】
特許第3150267号公報
【特許文献3】
特開2001−56958号公報
【特許文献4】
特開2002−96560号公報
【特許文献5】
特開2002−237095号公報
【特許文献6】
特開平6−195747号公報
【特許文献7】
特開平11−339314号公報
【特許文献8】
特開2001−167475号公報
【特許文献9】
特開2002−222543号公報
【特許文献10】
特開2002−100075号公報
【特許文献11】
特開2002−237088号公報
【特許文献12】
特開2002−190138号公報
【特許文献13】
特開2002−245663号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、DVD−ROMとの互換性が高く、保存安定性に優れ、少なくとも4倍速(14m/s)で良好な繰り返し記録が可能であって、かつ、1〜2.4倍速では、記録パワー15mW以下で、1T周期のマルチパルスを用いた記録パルス波形により良好な記録が可能な光記録媒体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、次の1)〜9)の発明によって解決される。
1) トラックピッチ0.74±0.03μm、溝深さ22〜40nm、溝幅0.17〜0.30μmの蛇行溝を設けた透明基板上に、ZnSとSiO2の混合物からなる下部保護層、Ag、In、Sb、Te、Geを含有する記録層、ZnSとSiO2の混合物からなる上部保護層、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料からなる硫化防止層、Ag又はAg合金からなる反射層がこの順に形成され、記録層と下部保護層との間、又は記録層と上部保護層との間のうち何れか一方或いは両方に酸化物からなる界面層が設けられており、波長660±10nm、NA0.65のピックアップヘッドを用いてパワー11±1mWの連続光を照射することにより計測した転移線速が8〜11m/sの範囲にあり、かつ、未記録状態における反射率Rbと繰り返し記録10回後のアイパターン上部の反射率Raの差ΔR=|Rb−Ra|が3%以内であることを特徴とする光記録媒体。
2) 下部保護層の厚さが40〜220nmであることを特徴とする1)記載の光記録媒体。
3) 上部保護層の厚さが2〜20nmであることを特徴とする1)又は2)記載の光記録媒体。
4) 記録層組成は、SbとTeの原子比率Sb/(Sb+Te)が0.74〜0.79、「Ag,In,Ge」の合計含有量が4〜10原子%、かつ各々の含有量(原子%)が、0.1≦Ag≦1、2≦In≦6、2≦Ge≦6であることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の光記録媒体。
5) 記録層の厚さが8〜22nmであることを特徴とする1)〜4)の何れかに記載の光記録媒体。
6) 反射層の厚さが90〜200nmであることを特徴とする1)〜5)の何れかに記載の光記録媒体。
7) 硫化防止層の厚さが3〜22nmであることを特徴とする1)〜6)の何れかに記載の光記録媒体。
8) 酸化物からなる界面層は、ZrO2、TiO2、SiO2、Al2O3、Ta2O5から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含むことを特徴とする1)〜7)の何れかに記載の光記録媒体。
9) 酸化物からなる界面層の厚さが1〜20nmであることを特徴とする1)〜8)の何れかに記載の光記録媒体。
【0009】
以下、上記本発明について詳しく説明する。
記録層が形成される基板には、トラッキングのための案内溝が設けられるが、DVD−ROMとの互換性を有するためには、トラックピッチは0.74±0.03μmとDVD+RW規格に定められている。更に、案内溝は周期的に蛇行しており、蛇行の位相を180°反転することによりアドレスやメディアの情報を組み込めるように、DVD+RW規格に定められている。
蛇行溝から読み出されるウォブル情報のキャリア・ノイズの振幅は、実際の蛇行溝の振幅を15〜40nm、好ましくは20〜40nmにした場合に良好な結果を与える。15nm以下の場合にはキャリアの量が小さくなりすぎ、結果として位相反転により蛇行溝に刻まれたアドレス情報やメディア情報の読み出し誤り率が大きくなってしまう。また、40nmよりも大きい場合には、隣接する蛇行溝からの干渉を受け取ることによって、ノイズ成分が大きくなってきて、結果として情報の読み取り誤り率が高くなってしまう。更に、スタンパの作成時、つまり露光工程において変調素子の負荷が大きくなり、メディア全周に渡って安定した溝が形成できなくなる恐れもある。
【0010】
溝の深さは22〜40nmがよく、好ましくは24〜30nmとする。22nmより小さい場合には、記録装置が案内溝を判定するプッシュプル信号が小さくなりすぎるため、安定したサーボ特性が得られず、トラッキングができなくなってしまう。40nmより大きい場合には反射率が低下し、更に、ジッター、変調度も悪くなってしまう。
溝の幅は0.17〜0.30μmがよく、好ましくは0.20〜0.28μmとする。0.17μmより小さい場合には反射率低下が起り、0.30μmより大きい場合にはデータサーチ時にトラッククロス信号が小さくなりすぎ、サーチがうまくできない不具合を生ずる。
【0011】
上述の形状の蛇行溝を有する透明基板上に、ZnSとSiO2の混合物からなる下部保護層、Ag、In、Sb、Te、Geを含有する記録層、ZnSとSiO2の混合物からなる上部保護層、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料からなる硫化防止層、Ag又はAg合金からなる反射層をこの順に形成し、記録層と下部保護層との間、又は記録層と上部保護層との間のうち何れか一方或いは両方に酸化物からなる界面層を設け、更に各層の構成材料や厚さを選択して、波長660±10nm、NA0.65のピックアップヘッドを用いてパワー11±1mWの連続光を照射することにより計測した転移線速が8〜11m/sの範囲にあり、かつ、未記録状態における反射率Rbと繰り返し記録10回後のアイパターン上部の反射率Raの差ΔR=|Rb−Ra|が3%以内である光記録媒体とすることにより、4倍速で良好な繰り返し記録特性が可能であり、かつ、DVDの1〜2.4倍速を記録できる現行のドライブでの記録、即ち、1〜2.4倍速では、記録パワー15mW以下で、1T周期のマルチパルスを用いた記録パルス波形により良好な記録が可能な光記録媒体を得ることができる。なお、アイパターン上部の反射率は、14Tスペースの反射率と言い換えることもできる。また、図面などでItopと略称することもある。
【0012】
透明基板は、耐熱性、耐衝撃性、低吸水性などの点から、ポリカーボネートが好ましい。屈折率は1.5〜1.65が好ましく、1.65よりも高い場合にはディスク全体の反射率低下が起り、1.5よりも低い場合には反射率の増加により変調度が不足してしまう。
また、透明基板の複屈折に関しては50nm以下が好ましく、これよりも高い場合にはディスク全体の反射率低下が起る。特にディスク半径方向に分布がある場合には、反射率も同様な分布を示すようになるため、なるべく小さい値であることが望ましい。
透明基板の厚さに関しては0.59〜0.62mmが好ましく、0.62mmを超えるとピックアップのフォーカス性能に問題を生じる。また、0.59mmよりも薄いと記録再生装置のクランプの甘さから回転数が不安定になる問題も生じる。更に、円周方向の厚さムラにより上記の範囲を超える厚さの部分が存在する場合には、信号強度が周内で変動してしまうという問題も生じる。
【0013】
高速で繰り返し記録を行う場合には、非晶質マークを高速結晶化する必要があるため、記録層の組成を調整することにより結晶化速度を速くする。
しかし、結晶化速度が速いと高速消去には有利であるが、マルチパルスによって非晶質マークを形成する際に再結晶化が進み易いため十分な大きさのマークが形成できなくなってしまうという問題が生じる。この問題は、記録パワーを照射する時間とボトムパワーを照射する時間の合計を1Tとする1T周期のパルスストラテジではなく、周期を1Tより大きくすることによりボトムパワーを照射する時間を十分長くして再結晶化領域をなるべく小さくすること、又は、高パワーのパルスを短時間照射して冷却時間を十分長くとれるようにすることなどによって回避することができる。
結晶化速度の速い記録層を用いた光記録媒体に低速で記録するに際し、結晶化速度が遅い記録層を用いた光記録媒体に低速で記録する場合と同様のパワーやストラテジを用いると、やはり再結晶化により大きなマークが形成できず変調度が小さくなってしまうため、マルチパルスの周期を変更するか、或いは、記録パワーを高くする等の変更が必要になる。しかし、これらの変更は現在商品化され使用されている1〜2.4倍速記録用のドライブでは対応が不可能であり、下位互換は実現できない。
【0014】
下位互換性を実現するためには結晶化速度に上限が課せられる。そこで、記録層の組成比の調整により結晶化速度を変えて下位互換性を評価した。但し、結晶化速度を直接測定することは困難であるため、代用特性として以下に説明する転移線速と呼ぶ値を用いた。
光記録媒体を一定線速で回転させ、ピックアップでトラッキングしながら連続光を1周に渡って照射した後、反射率を測定する。照射する連続光のパワーを一定とし、回転線速を変えて同じ測定をすると、線速が遅い場合には反射率が高いが、ある線速以上になると反射率が低下し始める。この反射率が低下し始める時の線速を転移線速と呼ぶ。この様子を図3に示した。ここでは、線速に対して反射率がほぼ一定の部分と、線速に対して反射率が低下していく部分に直線を引き、これらの交点を転移線速と決めた。転移線速より遅い線速では、記録層は結晶状態であり、転移線速より速くなると非晶質層が形成され始めることを示している。この転移線速は記録層の結晶化速度の他、照射する連続光のパワー、媒体を形成する各層の膜厚によって決まる。
【0015】
一般的に、同じ記録パルス波形を用いて記録した場合には、転移線速が速くなると変調度は小さくなる傾向にある。その理由を図5により説明すると、パルス列を照射して非晶質マークを形成する際、図5(a)に示すような先頭パルスのPpの照射により記録層が溶融し、Pbに変調されることにより急冷されるので、図5(b)に示すように、溶融領域が非晶質相となる。冷却される際、結晶相と接しているところから一部は結晶化する。次に、図5(b)に示すような2番目のパルスのPpの照射により記録層が溶融するが、このとき、先頭パルスにより既に形成されていた非晶質部分も加熱され、結晶相と接している部分から更に結晶化してしまうため、図5(d)に示すように非晶質部分は小さくなる。このような過程を経てマークが形成されるが、図6(a)、(b)に示すように、再結晶化部分は、転移線速が遅い場合、即ち、結晶化速度が遅い場合に比べて、転移線速が速い場合、即ち、結晶化速度が速い場合の方が大きくなる。従って、同じ記録パルス波形を照射した場合であって、溶融領域や冷却速度が同じであったとしても、転移線速が速い場合には、形成されるマークは小さくなってしまう。このため、転移線速が速い記録層を用いた場合には変調度が小さくなってしまう。
【0016】
また、変調度は、Ppが小さい場合や記録線速が速い場合も小さくなる傾向がある。これは、どちらの場合も記録層の加熱が不十分なため溶融領域が小さく、大きなマークが形成できないためである。DVD+RW規格ver.1.1の規格に則れば、最適化されたPpに0.85を乗じたパワーでも良好な記録(ジッター9%以下、変調度60%以上等)ができなければならない。そこで、下位互換性の評価として、15mWに0.85を乗じた値である12.8mWをPpとして2.4倍速で記録した場合の変調度と転移線速の関係を調べた。結果を図4に示す。この転移線速の値は、波長656nm、対物レンズのNA0.65のピックアップを用いて、盤面でのパワー11mWの連続光を照射することにより測定した値である。図4からは、転移線速が約10m/s以下の場合に、変調度が60%以上になることが分る。従って、下位互換性を確保するためには転移線速を10m/s以下にすることが好ましい。変調度が、転移線速以外に層構成、記録層組成比、記録パルス波形によっても多少変化することを考慮したとしても、上限は11m/s程度と考えられる。
しかし、下位互換性の点から10〜11m/s程度に転移線速の上限が決まると、高速で良好な繰り返し記録を行うのは困難になり、繰り返し記録回数が多くなるにつれてジッターが上昇してしまう。
この問題に対し、本発明では、媒体を構成する各層の材料と膜厚、更に初期化条件を特定し、11mWの連続光の照射で測定した転移線速を、8m/s以上、好ましくは9m/s以上とすることにより、4倍速で良好な記録が可能な媒体を形成することに成功した。
【0017】
下部保護層及び上部保護層としては、耐熱性付与等の保護膜としての機能の他に、屈折率が高いこと、断熱性が高いことから、膜厚の調整により入射光を効率的に利用できるZnSとSiO2の混合物を用いる。特に好ましいのは、ZnS:SiO2=8:2近傍の混合比のものである。
下部保護層の膜厚は、好ましくは40〜220nm、より好ましくは、40〜80nmとする。これは、主として反射率から決定される値である。この範囲内で、十分な反射率と記録感度を両立できる膜厚を選ぶ。40nmよりも薄い場合には耐熱性が悪く、基板へ与えるダメージが大きくなってしまい、繰り返し記録によるジッター上昇が大きくなってしまう。220nmよりも厚いと反射率が高くなり過ぎて記録感度が低下してしまう。
上部保護層の膜厚は、好ましくは2〜20nm、より好ましくは8〜14nmとする。これは主として熱伝導から決定される値である。上部保護層の上に更に反射層が設けられているため、記録層で吸収された熱は上部保護層を通じて反射層へ拡散して冷却される。従って、薄すぎると熱拡散が速すぎて記録層は充分昇温されず記録感度が低下してしまう。厚すぎると冷却速度が不足するため非晶質マークが形成され難くなる。
【0018】
記録層はSb−Teのδ相に相当する組成を母相として、Ag、In、Geを添加した材料を用いることが好ましい。Sb−Te二元系は、平衡状態においてSb:Teが83:17〜63:37の範囲内にδ相と呼ばれる均一相を形成することが知られている〔G.Ghosh,J.Phase Equilibria,15(3),349−360(1994)〕。おおよそこのδ相を形成する範囲内にある組成比のSb−Teは繰り返し記録特性に優れた材料であり、SbとTeの比を変えることにより結晶化速度を制御することができる。δ相を形成できる範囲内にあるSb−Te二元系を母相とし、これに保存耐久性の向上、結晶化速度の調整、変調度の向上等の目的で、Ag、In、Geを添加する。SbとTeの比、及び、添加元素の種類と量により結晶化速度を速くすることができる。これらの組成比により結晶化速度(≒転移線速)、繰り返し記録特性、保存安定性が決まる。
【0019】
本発明者らが、下位互換性を有する4倍速記録に適した記録層を得る目的で種々検討したところ、以下のような組成の範囲が好ましいことが分った。即ち、母相のSb−Teの原子比率Sb/(Sb+Te)は0.74〜0.79が好ましく、0.74より小さいと結晶化速度が遅くて4倍速記録における十分な繰り返し記録が難しくなり、0.79より大きいと保存安定性と良好な記録特性との両立が難しくなる。更に、保存安定性向上のために、Ag、In、Geを合計で4原子%以上、好ましくは6原子%以上添加するとよい。しかし、添加量が多すぎると、初期化が難しくなり、低いジッターでの記録も難しくなるので、添加量は合計で10原子%以下とすることが望ましい。1原子当りの保存安定性への寄与はGeが最も高いが、Geのみで保存安定性の向上を図るよりは、Ag、Inを同時に入れた方がより保存安定性は向上し、かつ、光学特性も変化するため記録感度も向上する。また、Ag、Geの添加は結晶化速度を遅くし、Inの添加は結晶化速度を速くするという作用も持つ。従って、添加物の組成比は結晶化速度も考慮して決める必要がある。保存安定性、初期化の容易性、記録特性、結晶化速度の点から下位互換性を有する4倍速記録に適した添加物の組成範囲は、原子%で、0.1≦Ag≦1、2≦In≦6、2≦Ge≦6とすることが望ましい。何れも少なすぎると効果が現れ難く、多すぎると繰り返し記録特性が悪くなる。記録層の膜厚は、8nmより薄いと変調度が小さく、また、再生光安定性も低下してしまうため8nm以上が好ましく、22nmより厚いと繰り返し記録によるジッターの上昇が大きいため、22nm以下が好ましい。より好ましくは13〜16nmとすることにより、特に繰り返し記録耐久性が向上する。
【0020】
反射層としては従来Alを主成分とした合金が使用されている。Alは反射率が高く、熱伝導率も高いことに加え、ディスク化した場合の経時安定性にも優れている。しかし、記録層材料の結晶化速度が速い場合には、反射層として従来からよく使用されているAl合金を用いると、記録マークが細くなり易く、十分な変調度を有する記録を行うことは困難な場合があった。その理由としては、結晶化速度が速いと記録時に溶融領域の再結晶化領域が大きくなってしまい、形成される非晶質領域が小さくなってしまうことが挙げられる。再結晶化領域を小さくするためには、上部保護層を薄くして急冷構造とすればよいが、単純に上部保護層を薄くしただけでは、記録層が十分に昇温されず、溶融領域が小さくなってしまうため、再結晶化領域を小さくできたとしても、結局、形成される非晶質領域は小さくなってしまう。しかし、波長650〜670nmにおける屈折率(n+ik)のn、kが共にAlより小さい金属を反射層に用いると、記録層の吸収率は向上し、変調度も大きくすることができる。n、kが共にAlより小さい金属としてはAu、Ag、Cu、及びそれらを主成分とした合金が挙げられる。ここで、主成分とするとは、90原子%以上含有することを意味し、好ましくは95原子%以上である。
【0021】
これらの純金属からなるスパッタ膜のλ=660nmにおける屈折率の実測値、及び、熱伝導率の文献値(バルク)の値を表1に示す。
【表1】
【0022】
表1からAu、Ag、Cuは何れもAlよりn、kが小さいだけでなく、熱伝導率が高いことが分る。従って、これらを反射層として用いると、記録層の光吸収率を向上させ、それにより、記録層の温度を上昇させて溶融領域を大きくする効果があるのと同時に、冷却速度も向上させるため冷却時の再結晶化領域が小さくなり、Al合金を用いた場合よりも大きな非晶質領域を形成することが可能になる。記録マークの変調度は光学的な変調度とマークの大きさによって決まり、光学的な変調度が大きく、マークが大きい程大きくなる。従って、記録層として、結晶化速度が速い材料を用いて、高線速記録を行う場合でも上記反射層を用いれば、吸収率が大きく冷却速度が速いことから大きな記録マークが形成でき、また、結晶と非晶質の反射率差も大きいことから変調度の大きい記録が可能になる。
【0023】
Au、Ag、Cu、及びそれらを主成分とする合金の中でも、特に、Ag及びAg合金は比較的安価であり、また、同様に安価なCu及びCu合金に比べて酸化し難いため、経時安定性に優れた媒体を形成することができ、反射層として好ましい。但し、硫化には弱いため、上部保護層にSを含むような材料を用いる場合には、硫化防止層が必要となる。硫化防止層に要求される性質としては、Sを含まないこと、Sを透過しないこと等が挙げられる。
本発明者らは、種々の酸化膜や窒化膜等を硫化防止層として形成し、記録特性や保存信頼性の評価を行ったところ、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料が優れた機能を持つことが分った。ここで、主成分とするとは、材料中にSiC又はSiを90モル%以上含有することを意味し、好ましくは95モル%以上である。
【0024】
硫化防止層の膜厚は3〜22nmとすることが好ましい。3nm以上あれば、スパッタにより形成された膜がほぼ均一になるので硫化防止機能を発揮するが、これよりも薄いと、部分的に欠陥を生じる確率が急に高くなってしまう。また、22nmを超えると膜厚の増加と共に反射率が低下してしまうし、成膜速度は大きく見積もっても記録層と同程度であるため、記録層よりも膜厚が厚いと生産効率が落ちてしまうことから、最大でも記録層の膜厚を超えないようにすることが望ましく、結局好ましい上限は22nmとなる。
反射層の膜厚は、90nm以上であれば透過光が殆どなくなり、光を効率的に利用できるので、90nm以上とすることが望ましい。膜厚は厚い程冷却速度が速くなり、結晶化速度の速い記録層を使用する場合には有利であるが、200nm以下で冷却速度は飽和し、200nmより厚くしても記録特性に変化がなく、成膜に時間がかかるだけなので、200nm以下とすることが好ましい。
【0025】
本発明では前述したように、下位互換性を達成するため、結晶化速度に相当する転移線速に上限を設けている。このため、高線速記録には不利である。しかし、記録層と下部保護層との間、又は記録層と上部保護層との間のうち何れか一方或いは両方に酸化物からなる界面層を設けることにより、転移線速を変えずに高線速記録における繰り返し記録耐久性を向上させることができる。
界面層として用いる酸化物として特に好ましいのは、ZrO2、TiO2、SiO2、Al2O3、Ta2O5を主成分とするもの、或いは、それらの混合物である。ここで、主成分とは、40モル%以上含まれていることを指す。酸化物層の中には、結晶化促進効果が大きく転移線速までも速くしてしまうものもあるが、上に挙げた酸化物層は、転移線速には殆ど影響しない。
【0026】
比較的低転移線速の媒体を高速で繰り返し記録することによりジッターが上昇してしまう場合には、マーク間や短マークの反射率が低下する現象が見られる。これは、繰り返し記録の際、消去、即ち結晶化がうまく行われず、一部初期の結晶状態に戻らない反射率の低い部分が蓄積されていったためと推測される。
しかし、本発明の構成とすることにより、繰り返し記録によってもマーク間や短マークの反射率の低下は見られなくなり、ジッターの上昇が抑えられる。これは、酸化物層に核形成促進効果があり、比較的低温における結晶化を促進するためと推測される。
結晶化は結晶核の生成と結晶成長という2つのプロセスを経て進行するが、δ相近傍のSb−Te二元系を母層とした材料の場合は、記録・消去の際、均一核生成は殆ど起らず、非晶質部は、結晶部との界面からの結晶成長によって結晶化が進行する。図7に非晶質マークにレーザが照射され、結晶部との界面から結晶成長が進行し、結晶化していく様子を模式的に示した。
【0027】
図8には温度と結晶成長速度の関係を示した。図8から分るように結晶成長が高速で進行するのは融点直下の特定の温度範囲である。従って、マークの端が、結晶成長が高速で進行できる温度に達しなかった場合には、結晶成長の進行が遅いために消し残りが生じてしまう。ビームが照射されたとき、結晶成長が高速で進行する温度以上になる領域がマークの幅に対して十分大きければ、マークの端から高速に結晶化が進行するが、マークの幅と同程度であれば、マークの太さが均一でなく一部太くなってしまっている場合や、記録ビームのトラッキングが中心部から少しずれてしまった場合に、マークの端の一部が結晶成長が高速に進行する温度にならないことがあるため、消し残りが生じてしまうことになる。
【0028】
酸化物からなる界面層を用いた場合には、結晶核が生成されるためにマークの端の温度が低めで結晶成長速度が十分速くない場合でもマーク内部に結晶核が生成され、結晶核からの結晶成長により結晶化が進行するため、消し残りが生じ難くなり、繰り返し記録耐久性が向上していると推測される。
なお、界面層を設けた場合には、光学特性や熱特性を調整するために、界面層の膜厚の分だけ、下部保護層又は上部保護層の膜厚を減らして調整する。
転移線速は溶融後再結晶化する過程を調べているので、溶融部が結晶部と接しているところからの結晶成長を調べていることになり、核生成の影響は小さいため転移線速は速くなっていなくても効果を発揮していると考えられる。
酸化物からなる界面層の膜厚は、1nmより薄いと効果が明確ではないため、1nm以上とすることが望ましい。また、酸化物層は一般的に成膜速度が遅いため、厚くとも20nm以下、好ましくは10nm以下にするとよい。
【0029】
上述のような膜を基板上に順次形成した後、反射層上に有機保護膜をスピンコートにより形成する。この状態で、或いは更に貼り合わせ工程を経た後、初期化工程を経て光記録媒体として使用される。
貼り合わせ工程は、有機保護膜を介して基板と同じ大きさで通常は材質も同じである板を接着する工程である。
初期化工程は、1×(数10〜数100)μm程度に成形された1〜2W程度のレーザー光を照射して、成膜直後は非晶質状態である記録層を結晶化する工程である。このとき、照射するレーザー光のパワーや線速、送り速度によって記録層の結晶状態は変化し、反射率も異なる。初期化直後の反射率が異なる場合でも繰り返し記録すると、スペース部、即ち、結晶部の反射率は次第にある値に近付いていく。
【0030】
図9に、初期化条件が異なり未記録部の反射率が異なる光記録媒体に、4倍速で繰り返し記録を行った場合の、アイパターン上部の反射率(Itop)の変化の様子を示した。繰り返し記録10回程度で反射率は飽和する。繰り返し記録回数が少ない場合にはスペース部に初期の結晶相が残っているが、繰り返し記録回数が増えてくるに従い、一度非晶質マークが形成された後に新たに形成された結晶相が増えてくるからである。数100回から1000回程度にかけてやや低下する場合もあるが、これは繰り返し記録による何らかの劣化によるものである。繰り返し記録特性は初期化条件によっても異なり、初期結晶相を比較的低い反射率にした方が繰り返し記録特性が良い場合がある。しかし、本発明者らが検討した結果、反射率の低い結晶相は、初期化後、室温で1〜2週間程度放置すると、4倍速記録の記録特性が劣化し、ジッターが大きくなってしまうことが分った。1倍速、2.4倍速で記録した場合にはこのような経時変化は見られなかった。4倍速記録の場合も比較的高いパワーで記録した場合には劣化が少なかったので、1倍速、2.4倍速の場合の記録では充分なパワーで記録できているためと考えられる。
比較的低パワーで記録した場合の記録特性が劣化する理由は明らかでないが、未記録部の反射率が低い状態は、結晶状態の安定性が悪く状態変化を起し易いと考えられる。なお、未記録部の反射率が充分高い場合でも記録層組成が適切でない場合などには記録特性が劣化する場合もあったが、少なくとも、未記録部の反射率を充分高くしておかないと、劣化を防ぐことはできなかった。
【0031】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。
何れの場合も、直径12cm、厚さ0.6mm、トラックピッチ0.74μm、溝幅0.25μm、溝深さ25nm、約820kHzの周期で蛇行している案内溝付きポリカーボネートディスク基板上に下部保護層、(下部界面層)、記録層、(上部界面層)、上部保護層、硫化防止層、反射層をこの順番にスパッタにより成膜し、更に、反射層上にスピンコートにより形成された有機保護膜を介して直径12cm、厚さ0.6mmのポリカーボネートディスクを接着したものに対し、ビーム径1×75μm、波長810nmの半導体レーザービームを照射して初期化したものを試料として用いた。評価は、基板側から波長656nm、NA0.65のレーザー光を照射し、線密度0.267μm/bit、1T周期のマルチパルスを用いた記録パルス波形によりEFM+変調方式でランダムパターンを繰り返し記録することにより行った。
【0032】
実施例1
下部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ65nm、記録層としてAg0.7In2.6Sb71.5Te20.9Ge4.3を厚さ15nm、上部界面層として記録層と上部保護層との間に(ZrO2−3モル%Y2O3)80モル%(TiO2)20モル%を厚さ2nm、上部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ10nm、硫化防止層としてSiを厚さ4nm、反射層としてAgを厚さ140nm形成したディスクを初期化した。
初期化はパワー1200mW、線速9m/s、送り20μm/rで実施した。このときの、未記録部の反射率は19.9%であった。11mWの連続光を照射して調べた転移線速は9.5m/sであった。
図10(a)〜(c)に4倍速記録特性を示す。図10(a)は、σ/Tw(ジッター)の変化を示す図であり、図10(b)は、mod.(変調度)の変化を示す図であり、図10(c)は、Itopの変化を示す図である。図中のnは記録回数を示している。
図10(a)から分るように、Ppが16〜18mWの範囲で繰り返し記録1000回までジッターがおおよそ9%以下に収まっており、良好な繰り返し記録特性を示している。また、図10(c)から分るように、初回記録から繰り返し記録10回まで反射率の変化は殆どなかった。
図11(a)〜(c)には、2.4倍速記録特性を示す。図11(a)は、σ/Tw(ジッター)の変化を示す図であり、図11(b)は、mod.(変調度)の変化を示す図であり、図11(c)は、Itopの変化を示す図である。図中のnは記録回数を示している。
図11(a)、(b)から分るように、Pbが15mW以下でもジッター、モジュレーションの特性が良好で、下位互換性を有する4倍速光記録媒体を形成することができた。
また、初期化して2週間経過した後、再び4倍速の繰り返し記録特性を評価したが、ジッターの差は0.5%以下であった。80℃85%RH保存試験におけるアーカイバル特性も調べたが、400時間まで殆ど劣化が見られなかった。
【0033】
実施例2
下部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ63nm、下部界面層として記録層と下部保護層との間に(ZrO2−3モル%Y2O3)80モル%(TiO2)20モル%を厚さ2nm、記録層としてAg0.7In2.6Sb71.5Te20.9Ge4.3を厚さ15nm、上部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ12nm、硫化防止層としてSiを厚さ4nm、反射層としてAgを厚さ140nm形成したディスクを初期化した。
初期化はパワー1200mW、線速9m/s、送り20μm/rで実施した。このときの、未記録部の反射率は20.1%であった。11mWの連続光を照射して調べた転移線速は9.5m/sであった。
図12に4倍速記録時のジッターを示すが、ほぼ実施例1と同様の結果が得られた。2.4倍速記録も実施例1とほぼ同様の結果が得られており、下位互換性を有する4倍速光記録媒体を得ることができた。
また、初期化して2週間経過した後、再び4倍速の繰り返し記録特性を評価したが、ジッターの差は0.5%以下であった。80℃85%RH保存試験におけるアーカイバル特性も調べたが、400時間まで殆ど劣化が見られなかった。
【0034】
実施例3
下部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ63nm、下部界面層として記録層と下部保護層との間に(ZrO2−3モル%Y2O3)80モル%(TiO2)20モル%を厚さ2nm、記録層としてAg0.7In2.6Sb71.5Te20.9Ge4.3を厚さ15nm、上部界面層として記録層と上部保護層との間に(ZrO2−3モル%Y2O3)80モル%(TiO2)20モル%を厚さ2nm、上部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ10nm、硫化防止層としてSiを厚さ4nm、反射層としてAgを厚さ140nm形成したディスクを初期化した。
初期化はパワー1200mW、線速9m/s、送り20μm/rで実施した。このときの、未記録部の反射率は20.1%であった。11mWの連続光を照射して調べた転移線速は9.5m/sであった。
図13に4倍速記録時のジッターを示す。繰り返し記録10回まではほぼ実施例1、2と同様の結果であるが、1000回記録においてほぼ初回記録に近い値になっており、実施例1、2よりも良好な記録特性を示している。
更に、2.4倍速記録でも1000回記録において殆どジッターは上昇せず、実施例1、2よりも良好な記録特性を示し、下位互換性を有する4倍速光記録媒体を形成することができた。
また、初期化して2週間経過した後、再び4倍速の繰り返し記録特性を評価したが、ジッターの差は0.5%以下であった。80℃85%RH保存試験におけるアーカイバル特性は、1000回記録後のマークは100時間後に、100回記録後のマークは300時間後にジッターが9%を超えてしまった。1〜10回記録後のマークは400時間まで殆ど劣化が見られなかった。
【0035】
実施例4
下部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ63nm、下部界面層として記録層と下部保護層との間にAl2O3を厚さ2nm、記録層としてAg0.7In2.6Sb71.5Te20.9Ge4.3を厚さ15nm、上部保護層として(ZnS)80モル%(SiO2)20モル%を厚さ12nm、硫化防止層としてSiを厚さ4nm、反射層としてAgを厚さ140nm形成したディスクを初期化した。
初期化はパワー1200mW、線速9m/s、送り20μm/rで実施した。このときの、未記録部の反射率は20.3%であった。11mWの連続光を照射して調べた転移線速は9.6m/sであった。
図14に4倍速記録時のジッターを示すが、ほぼ実施例1、2と同様の結果が得られた。2.4倍速記録についても実施例1とほぼ同様の結果が得られており、下位互換性を有する4倍速光記録媒体を形成することができた。
また、初期化して2週間経過した後、再び4倍速の繰り返し記録特性を評価したが、ジッターの差は0.5%以下であった。80℃85%RH保存試験におけるアーカイバル特性も調べたが、400時間まで殆ど劣化が見られなかった。
【0036】
比較例1
初期化をパワー600mWで行った他は、実施例1と同じ構成の光記録媒体について同様の評価を行ったところ、未記録部の反射率は、16.3%であった。4倍速、Pb=17mWの条件で繰り返し記録を行った時のItopの変化について、実施例1の場合と共に図15に示した。この図から、本比較例の光記録媒体では、繰り返し記録10回でItopの上昇幅が3%を超えていることが分る。
図16には、本比較例の光記録媒体の4倍速記録時のジッターの初期特性と、初期化して2週間経過した後に未記録部に再び4倍速の繰り返し記録を行った場合のジッターを示した。白抜きが2週間経過後に再び記録を行った場合のジッターである。初期特性は実施例1と類似で良好であるが、2週間経過すると、特に、2回記録した場合のジッターが大きくなってしまっていることが分る。
2.4倍速記録でも2週間後に多少の劣化は見られたが、程度は小さかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、DVD−ROMとの互換性が高く、保存安定性に優れ、少なくとも4倍速(14m/s)で良好な繰り返し記録が可能であって、かつ、1〜2.4倍速では記録パワー15mW以下で、1T周期のマルチパルスを用いた記録パルス波形で良好な記録が可能な光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】DVD+RWで使用されている、マークとスペースを繰り返し記録する方式を示す図。
【図2】DVD+RWで使用されている、マークとスペースを繰り返し記録する方式を示す図。
【図3】転移線速を説明するための図。
【図4】12.8mWをPpとして2.4倍速で記録した場合の変調度と転移線速の関係を調べた結果を示す図。
【図5】同じ記録パルス波形を用いて記録した場合には、転移線速が速くなると変調度は小さくなる傾向にあることを説明するための図。
(a) パルス列を照射して非晶質マークを形成する際の先頭パルスを示す図
(b) 記録により非晶質相が形成された状態を示す図
(c) 2番目のパルスを示す図
(d) 非晶質部分は小さくなった状態を示す図
【図6】転移線速が速い場合と遅い場合とで、非晶質マークの大きさが変わることを示す図。
(a) マルチパルスを示す図
(b) 転移線速が速い記録層を用いた場合の非晶質マークを示す図
(c) 転移線速が遅い記録層を用いた場合の非晶質マークを示す図
【図7】非晶質マークにレーザーが照射され、結晶部との界面から結晶成長が進行し、結晶化していく様子を模式的に示す図。
【図8】温度と結晶成長速度の関係を示す図。
【図9】初期化条件が異なり未記録部の反射率が異なる光記録媒体に、4倍速で繰り返し記録を行った場合の、Itopの変化の様子を示す図。
【図10】実施例1の光記録媒体の4倍速記録特性を示す図。
(a) σ/Tw(ジッター)の変化を示す図
(b) mod.(変調度)の変化を示す図
(c) Itopの変化を示す図
【図11】
実施例1の光記録媒体の2.4倍速記録特性を示す図。(a) σ/Tw(ジッター)の変化を示す図
(b) mod.(変調度)の変化を示す図
(c) Itopの変化を示す図
【図12】実施例2の光記録媒体の4倍速記録時のジッターを示す図。
【図13】実施例3の光記録媒体の4倍速記録時のジッターを示す図。
【図14】実施例4の光記録媒体の4倍速記録時のジッターを示す図。
【図15】比較例1及び実施例1の光記録媒体に対し、4倍速、Pb=17mWの条件で繰り返し記録を行った時のItopの変化を示す図。
【図16】比較例1の光記録媒体の、4倍速記録時のジッターの初期特性と、初期化して2週間経過した後に未記録部に再び4倍速の繰り返し記録を行った場合のジッターを示す図。
【符号の説明】
T 基準クロック
Pp ピークパワー
Pb バイアスパワー
Pe 消去パワー
dTtop 先頭パルス開始時間
Ttop 先頭パルスの幅
Tmp マルチパルス部のピークパワーパルスの幅
Tw 基準クロックの幅
dTera 消去開始時間
Itop アイパターン上部の反射率
σ/Tw ジッター
n 記録回数
mod. 変調度
Claims (9)
- トラックピッチ0.74±0.03μm、溝深さ22〜40nm、溝幅0.17〜0.30μmの蛇行溝を設けた透明基板上に、ZnSとSiO2の混合物からなる下部保護層、Ag、In、Sb、Te、Geを含有する記録層、ZnSとSiO2の混合物からなる上部保護層、SiC、Si、又はそれらの何れかを主成分とする材料からなる硫化防止層、Ag又はAg合金からなる反射層がこの順に形成され、記録層と下部保護層との間、又は記録層と上部保護層との間のうち何れか一方或いは両方に酸化物からなる界面層が設けられており、波長660±10nm、NA0.65のピックアップヘッドを用いてパワー11±1mWの連続光を照射することにより計測した転移線速が8〜11m/sの範囲にあり、かつ、未記録状態における反射率Rbと繰り返し記録10回後のアイパターン上部の反射率Raの差ΔR=|Rb−Ra|が3%以内であることを特徴とする光記録媒体。
- 下部保護層の厚さが40〜220nmであることを特徴とする請求項1記載の光記録媒体。
- 上部保護層の厚さが2〜20nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の光記録媒体。
- 記録層組成は、SbとTeの原子比率Sb/(Sb+Te)が0.74〜0.79、「Ag,In,Ge」の合計含有量が4〜10原子%、かつ各々の含有量(原子%)が、0.1≦Ag≦1、2≦In≦6、2≦Ge≦6であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光記録媒体。
- 記録層の厚さが8〜22nmであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光記録媒体。
- 反射層の厚さが90〜200nmであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の光記録媒体。
- 硫化防止層の厚さが3〜22nmであることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光記録媒体。
- 酸化物からなる界面層は、ZrO2、TiO2、SiO2、Al2O3、Ta2O5から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含むことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の光記録媒体。
- 酸化物からなる界面層の厚さが1〜20nmであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の光記録媒体。
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