JP2004137901A - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バルブタイミング制御の制御性を更に向上することのできる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供する。
【解決手段】高圧燃料ポンプ40は、カムシャフト11の回転により駆動される。電子制御装置は、そのカムシャフト11の回転位相を可変とする位相可変機構20の制御指令値である制御デューティを調整することで、そのカムシャフト11により開閉駆動される吸気バルブ17のバルブタイミングを可変制御する。電子制御装置は、機関回転速度及び燃料噴射量に基づき高圧燃料ポンプ40の負荷トルクに応じた補正値を算出し、それを用いて制御デューティを補正することで、高圧燃料ポンプ40の作動状況の変化がバルブタイミング制御に与える影響を低減する。
【選択図】 図1
【解決手段】高圧燃料ポンプ40は、カムシャフト11の回転により駆動される。電子制御装置は、そのカムシャフト11の回転位相を可変とする位相可変機構20の制御指令値である制御デューティを調整することで、そのカムシャフト11により開閉駆動される吸気バルブ17のバルブタイミングを可変制御する。電子制御装置は、機関回転速度及び燃料噴射量に基づき高圧燃料ポンプ40の負荷トルクに応じた補正値を算出し、それを用いて制御デューティを補正することで、高圧燃料ポンプ40の作動状況の変化がバルブタイミング制御に与える影響を低減する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような内燃機関のバルブタイミング制御装置として、油圧駆動式の位相可変機構を備えるものが広く用いられている。位相可変機構は、機関出力軸であるクランクシャフトとカムシャフトとの間に設けられ、その内部に形成された油室内の油圧制御に基づき動作されるようになっている。そしてその動作により、クランクシャフトの回転位相に対するカムシャフトの回転位相を変更して、機関バルブのバルブタイミングを可変としている。そして開度調節により油圧室に供給される油圧を調整可能な油圧制御弁により上記油室内の油圧を調整することで、カムシャフトの回転位相を変更させたり、保持させたりしてバルブタイミングの制御が行われている。
【0003】
なお、位相可変機構やその油圧制御弁の出力特性には、公差や経時変化による個体差がある。またそれらの出力特性は、内燃機関の暖機状態や機関回転速度などの機関運転状態によっても変化する。そしてそうした出力特性のばらつきが、バルブタイミング制御の制御性の確保を困難なものとしている。
【0004】
そこで、カムシャフトの回転位相が保持されているときの油圧制御弁の制御指令値、すなわち保持制御指令値を学習値として記憶更新する学習制御を行うことで、上記出力特性のばらつきの影響を補償してその制御性を確保することがなされている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
更に、そうした学習制御を行うバルブタイミング制御装置でのバルブタイミング制御の制御性の向上に関する次のような技術も提案されている。
機関始動から暖機完了までの期間は、機関温度の上昇と共に油圧制御に用いられるオイルの粘度が低下して、位相可変機構や油圧制御弁の出力特性を大きく変化させる。そこで、機関温度状態により区分けされた領域毎にそれぞれ個別に保持制御指令値の学習を行うことで、機関温度の変化への学習制御の適合を図る技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
また、機関停止時にカムシャフトの回転位相を位相制御範囲内の所定の位相に保持しておくための付勢力を発生するばねが内部に設けられた位相可変機構が知られている。この種の位相可変機構では、カムシャフトの回転位相に応じてばねの付勢力が変化して、回転位相の変更や保持に必要な油圧が変化してしまう。そこでカムシャフトの回転位相の変化に対するばねの付勢力の変化に応じて上記学習値の補正を行うことで、そうした位相可変機構への学習制御の適合を図る技術が提案されてもいる(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−284699号公報
【特許文献2】
特開2000−230437号公報
【特許文献3】
特開2001−317382号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような学習制御の適用により、バルブタイミング制御の制御性は確かに向上される。しかし、内燃機関の暖機状態や上記ばねの付勢力の他にも、位相可変機構本体やその油圧制御弁の出力特性を変化させる因子が存在しており、そうした因子の影響に対するバルブタイミング制御の適合は十分にはなされていなかった。このように上記のような学習制御を行うバルブタイミング制御装置にも、制御性の向上に未だ改善の余地は残されている。
【0009】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することのできる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
〔請求項1〕
請求項1に記載の発明は、カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出し、前記位相可変機構の制御指令値をその補正値を用いて補正する補正手段を備えるものである。
【0011】
カムシャフトの回転により駆動される、例えば燃料ポンプなどの補機類を備える内燃機関では、その補機類の作動に伴いカムシャフトに作用する負荷トルクが、その作動状況に応じて変化して、その回転位相の変更や保持に必要な位相可変機構の発生トルクの大きさが変化してしまう。その点、上記構成では、そうした補機類の作動状況に基づき算出された補正値を用いて位相可変機構の制御指令値が補正される。これにより、補機類の作動状況に応じた負荷トルクの変化分を補償するように、位相可変機構の発生トルクが適宜調整される。そのため、補機類の作動状況に応じたカムシャフトの回転トルクの変化に拘わらず、カムシャフトの回転位相の変更や保持が適宜に行われるようになる。したがって上記構成によれば、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することができる。
【0012】
〔請求項2〕
請求項2に記載の発明は、カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出して、前記カムシャフトの回転位相の保持に際して前記位相可変機構に指令される保持制御指令値をその補正値を用いて補正する補正手段を備えるものである。
【0013】
上記構成では、補機類の作動状況に基づき算出された補正値を用いて、位相可変機構の保持制御指令値が補正される。これにより、補機類の作動状況に応じた負荷トルクの変化分を補償するように、回転位相保持時の位相可変機構の発生トルクが適宜調整される。そのため、補機類の作動状況に応じたカムシャフトの回転トルクの変化に拘わらず、カムシャフトの回転位相の保持が適宜に行われるようになる。したがって上記構成によれば、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することができる。
【0014】
〔請求項3〕
請求項3に記載の発明は、カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの回転位相が保持されているときに前記位相可変機構に指令される制御指令値を学習値として記憶更新する保持制御値学習手段と、前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出し、前記学習値の記憶更新に際してその補正値を用いて前記学習値を補正する補正手段と、を備えるものである。
【0015】
上記構成では、カムシャフトの回転位相が保持されているときに位相可変機構に指令される制御指令値を学習値として記憶更新する保持制御値の学習制御が行われる。ここで回転位相保持時の制御指令値をそのまま学習値として記憶更新してしまえば、そのときの補機類の作動状況に応じた負荷トルクの影響が学習値に反映されてしまい、補機類の作動状況が変化すれば、その学習値の値が不適切となってしまう。
【0016】
その点、上記構成では、学習値の記憶更新に際して、補機類の作動状況に基づき算出された補正値を用いて学習値が補正される。これにより、記憶更新される学習値から補機類の作動状況の影響が排除されることとなり、補機類の作動状況の変化に拘わらず、その学習値を用いて好適にバルブタイミング制御を行うことができる。したがって上記構成によれば、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することができる。
【0017】
〔請求項4〕
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記バルブタイミングの可変制御を、前記カムシャフトの回転位相の検出値とその目標値との偏差に基づき制御指令値を算出して前記位相可変機構を駆動制御することで行うようにしたものである。
【0018】
上記構成では、カムシャフトの回転位相の検出値とその目標値との偏差に基づき制御指令値を算出して位相可変機構を駆動制御することで、バルブタイミングの可変制御が行われる。すなわち、カムシャフトの回転位相の検出値に基づくバルブタイミングのフィードバック制御が行われる。上記のような補機類の作動状況の変化は、応答性を低下させるなどのフィードバック制御の制御性に好ましくない影響を与えるが、上記補正手段による補正を行うことで、そうした影響を好適に抑制することができる。
【0019】
〔請求項5〕
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動状況を反映する機関制御量に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0020】
補機類の作動状況を直接検出することができなくても、例えば機関回転速度などの機関制御量からその作動状況を概ね把握できることがある。そのような場合、そうした補機類の作動状況を反映する機関制御量に基づき補正値を算出することで、その作動状況に応じた適宜な補正を行うことができる。
【0021】
〔請求項6〕
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動制御のために指令される補機制御指令値に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0022】
補機類の作動を直接制御する場合、その作動制御のために指令される補機制御指令値からその作動状況を的確に把握することができる。よってそうした場合、そうした補機制御指令値に基づき補正値を算出することで、補機類の作動状況に応じた適宜な補正を行うことができる。
【0023】
〔請求項7〕
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、当該内燃機関に供される燃料を加圧吐出する燃料ポンプを、前記補機類として備えるものである。
【0024】
カムシャフトの回転により駆動される燃料ポンプを備える内燃機関では、例えば燃料噴射量などの機関運転状態により燃料ポンプの作動状況が変化すると、その負荷トルクが変化してカムシャフトの回転トルクが変化する。そして、そうした回転トルクの変化により、位相可変機構の出力特性にも変化が生じる。上記構成では、そうした燃料ポンプの作動状況に基づき補正値を算出し、それを用いてバルブタイミング制御に係る制御量の補正が行われる。そのため、燃料ポンプの作動状況の変化による影響分を補正値にて吸収して、良好にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0025】
〔請求項8〕
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、燃料噴射量、及び機関回転速度の少なくとも一方に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0026】
燃料ポンプの作動状況は、その燃料ポンプにより加圧吐出された燃料を用いて行われる燃料噴射の量や機関回転速度に依存して変化する。そのため、上記構成では、燃料ポンプの作動状況に応じた補正値を容易且つ的確に求め、好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0027】
〔請求項9〕
請求項9に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、油を加圧吐出するオイルポンプを前記補機類として備えるものである。
【0028】
カムシャフトの回転により駆動されるオイルポンプを備える内燃機関では、機関運転状態によりそのオイルポンプの作動状況が変化すると、その負荷トルクが変化してカムシャフトの回転トルクが変化する。そして、そうした回転トルクの変化により、位相可変機構の出力特性にも変化が生じる。上記構成では、そうしたオイルポンプの作動状況に基づき補正値を算出し、それを用いてバルブタイミング制御に係る制御量の補正が行われる。そのため、オイルポンプの作動状況の変化による影響分を補正値にて吸収して、良好にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0029】
〔請求項10〕
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記オイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力、及び機関回転速度の少なくとも一つに基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0030】
オイルポンプの作動状況は、そのオイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度や、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力、機関回転速度に依存して変化する。そのため、上記構成では、オイルポンプの作動状況に応じた補正値を容易且つ的確に求め、好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0031】
〔請求項11〕
請求項11に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、負圧を発生する負圧ポンプを前記補機類として備えるものである。
【0032】
カムシャフトの回転により駆動される負圧ポンプを備える内燃機関では、機関運転状態によりその負圧ポンプの作動状況が変化すると、その負荷トルクが変化してカムシャフトの回転トルクが変化する。そして、そうした回転トルクの変化により、位相可変機構の出力特性にも変化が生じる。上記構成では、そうした負圧ポンプの作動状況に基づき補正値を算出し、それを用いてバルブタイミング制御に係る制御量の補正が行われる。そのため、負圧ポンプの作動状況の変化による影響分を補正値にて吸収して、良好にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0033】
〔請求項12〕
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記負圧ポンプの発生負圧、及び機関回転速度の少なくとも一方に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0034】
負圧ポンプの作動状況は、その負圧ポンプの発生負圧や機関回転速度に依存して変化する。そのため、上記構成では、負圧ポンプの作動状況に応じた補正値を容易且つ的確に求め、好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、本発明の内燃機関のバルブタイミング制御装置を具体化した実施形態1を、図1〜図15を参照して説明する。
【0036】
図1は、本実施形態の適用される内燃機関の動弁系の構成を示している。
同図1に示されるように、吸気側及び排気側の2本のカムシャフト11,12は、スプロケット13,14及びチェーン15を介して、機関出力軸であるクランクシャフト16にそれぞれ駆動連結され、クランクシャフト16が2回転される毎に1回転される。そして両カムシャフト11,12の回転に応じて、機関バルブである吸気バルブ17及び排気バルブ18が開閉駆動される(同図1では、1気筒分の機関バルブのみを表示)。なお、クランクシャフト16及び吸気側のカムシャフト11の近傍には、それらの回転位相をそれぞれ検出するセンサ、すなわちクランクセンサ51、及びカムセンサ52がそれぞれ設けられている。
【0037】
吸気側のカムシャフト11の近傍には、内燃機関に供される燃料を加圧吐出する高圧燃料ポンプ40が配設されている。高圧燃料ポンプ40は、カムシャフト11に設けられたポンプ駆動用のカム41を通じて、カムシャフト11の回転により駆動される。本実施形態では、この高圧燃料ポンプ40が、上記「補機類」、「燃料ポンプ」に対応する構成となっている。
【0038】
更にこの内燃機関では、油圧駆動式の位相可変機構20が、吸気側のカムシャフト11に設けられている。位相可変機構20は、チェーン15の巻掛けられたスプロケット13とカムシャフト11とを相対回転させることで、クランクシャフト16の回転位相に対する相対的なカムシャフト11の回転位相を可変とする。そしてそうしたカムシャフト11の回転位相の変更に応じ、吸気バルブ17の開閉弁時期、すなわちバルブタイミングが変更されるようになっている。
【0039】
次に、この位相可変機構20の構造を、その正面断面構造を示す図2を参照して説明する。
同図2に示すように位相可変機構20は、大きくはベーンロータ21とケース22とを有して構成されている。ケース22はスプロケット13に一体回転可能に固定されている。ベーンロータ21は、ケース22対して相対回動可能な状態で同ケース22の内部に収容されており、カムシャフト11に一体回転可能に固定されている。
【0040】
ベーンロータ21の外周には、複数の(ここでは4つの)ベーン23が径方向に突出形成されている。各ベーン23は、ケース22の内周に形成された周方向に延びる溝24内にそれぞれ収容されている。そしてベーン23により溝24の内部を区画することで、各ベーン23の周方向両側にそれぞれ油室が形成されている。ここでは、これらの油室のうち、ベーン23に対してカムシャフト11の回転方向側のものを「遅角油室25」と云い、反回転方向側のものを「進角油室26」と云う。
【0041】
これら遅角油室25及び進角油室26には、加圧された作動油が供給されるようになっている。そして遅角油室25と進角油室26と間の油圧差を変化させることで、ベーン23の両側に作用する力のバランスが変化して、ベーンロータ21をケース22に対して相対回動させる駆動トルクが発生する。この駆動トルクにより、ベーンロータ21の固定されたカムシャフト11とケース22の固定されたスプロケット13とが相対回動される。
【0042】
例えば、遅角油室25の油圧を進角油室26の油圧よりも十分に大きくすれば、ベーンロータ21はケース22に対して、カムシャフト11の反回転方向に回動する。これにより、カムシャフト11の回転位相はクランクシャフト16の回転位相に対して遅角されるようになる。また、進角油室26の油圧を遅角油室25の油圧よりも十分に大きくすれば、ベーンロータ21はケース22に対して、カムシャフト11の回転方向に回動し、その結果、カムシャフト11の回転位相はクランクシャフト16の回転位相に対して進角されるようになる。
【0043】
こうしてカムシャフト11の回転位相を変更することで、同カムシャフト11により開閉駆動される吸気バルブ17のバルブタイミングを変更することができる。なお、遅角油室25及び進角油室26の油圧を適度に調整して、ベーンロータ21に作用するトルクをバランスさせれば、クランクシャフト16の回転位相に対するカムシャフト11の回転位相を現状に保持することができる。
【0044】
続いて、この位相可変機構20の油圧制御系の構成を、図3を参照して説明する。
同図3に示されるオイルポンプ30は、内燃機関のクランクシャフト16の回転に応じて駆動され、内燃機関のオイルパン31内の作動油を吸引し、加圧吐出する。オイルポンプ30より吐出された作動油は、給油路L1を通じて油圧制御弁32に送られる。
【0045】
ここでは油圧制御弁32として、5ポート式の電磁駆動弁が採用されている。油圧制御弁32の各ポートには、上記給油路L1、作動油をオイルパン31に還流するドレイン油路L2、位相可変機構20の遅角油室25に接続される遅角油路L3、及び進角油室26に接続される進角油路L4が連結されている。
【0046】
油圧制御弁32の内部には、往復摺動可能に配設されたスプール33と、そのスプール33を付勢するスプリング34とが配設されている。更に油圧制御弁32には、電圧の印加に応じ、スプリング34の付勢力に抗してスプール33を吸引する電磁力を発生する電磁ソレノイド35が設けられている。そして、油圧制御弁32内部でのスプール33の位置は、スプリング34の付勢力と電磁ソレノイド35の発生する電磁力との釣り合いに応じて決められる。なお、電磁ソレノイド35に印加される電圧は、デューティ制御されている。こうしたスプール33の変位により、油圧制御弁32内部での各ポート間の接続状態、すなわち上記各油路の接続状態が変化する。
【0047】
位相可変機構20の遅角油室25に接続された遅角油路L3は、スプール33の変位に応じて給油路L1及びドレイン油路L2のいずれかに接続される。遅角油路L3と給油路L1とが接続されると、遅角油室25に作動油が供給されてその内部の油圧が上昇し、遅角油路L3とドレイン油路L2とが接続されると、遅角油室25から作動油が排出されてその内部の油圧が低下する。
【0048】
また位相可変機構20の進角油室26に接続された進角油路L4は、スプール33の変位に応じて給油路L1及びドレイン油路L2のいずれかに接続される。進角油路L4と給油路L1とが接続されると、進角油室26に作動油が供給されてその内部の油圧が上昇し、遅角油路L3とドレイン油路L2とが接続されると、遅角油室25から作動油が排出されてその内部の油圧が低下する。
【0049】
更にスプール33の位置によっては、接続された油路間の連通量(流路面積)が変化され、遅角油室25及び進角油室26の作動油の供給流量や排出流量が調整される。なお、本実施形態では、電磁ソレノイド35に印加される電圧のデューティ比が小さくなるほど、進角油室26の油圧に対する遅角油室25の油圧の比が大きくなるように、上記流量が調整されるようになっている。よって、電磁ソレノイド35に印加する電圧のデューティ比の調整により、位相可変機構20を駆動して吸気バルブ17のバルブタイミングを任意に調整可能となる。
【0050】
したがって本実施形態では、電磁ソレノイド35に印加する電圧のデューティ比が上記「位相可変機構の制御指令値」に相当する。なお、以下では、電磁ソレノイド35に印加する電圧のデューティ比を指示する制御指令値を「制御デューティDVT」という。またここでは、作動油が下記の「位相可変機構に供される作動流体」に、油圧制御弁32がその作動流体(作動油)の供給圧を制御する下記の「流体圧制御弁」に、それぞれ対応する構成となっている。
【0051】
次に、本実施形態の適用される内燃機関の燃料供給系の構成を、図4を併せ参照して説明する。
同図4に示されるように、上記高圧燃料ポンプ40内にはシリンダ42が形成されており、その内部にはプランジャ43が配設されている。プランジャ43は、上記吸気側のカムシャフト11に設けられたカム41に当接され、カムシャフト11の回転に応じてシリンダ42内を往復摺動されるようになっている。
【0052】
また高圧燃料ポンプ40の内部には、シリンダ42の内周面とプランジャ43の上端面とにより囲繞された加圧室44が形成されている。この加圧室44には、電動式のフィードポンプ45により、燃料タンク46内の燃料が導入される。加圧室44に導入された燃料は、カム41によるプランジャ43の押し上げに応じて加圧吐出され、デリバリパイプ47に圧送される。こうしてデリバリパイプ47内に貯圧された高圧燃料は、内燃機関の気筒毎に設けられたインジェクタ48に分配供給される。また、デリバリパイプ47には、その内部に蓄圧された燃料の圧力(燃圧)を検知する燃圧センサ54が配設されている。
【0053】
更に高圧燃料ポンプ40の内部には電磁弁49が設けられ、その開弁期間Tpによって、デリバリパイプ47へと圧送される燃料の流量、すなわち高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が調整されるようになっている。
【0054】
次に、本実施形態の適用される内燃機関の制御系の構成を、図5を併せ参照して説明する。
同図5に示される電子制御装置50は、内燃機関の制御に係る各種演算処理を実施する中央演算装置(CPU)、そのCPUの実行するプログラムやその演算結果を記憶するメモリ等を備えて構成されている。電子制御装置50には、上記クランクセンサ51、カムセンサ52に加え、アクセルペダルの踏込み量を検知するアクセルセンサ53、上記デリバリパイプ47内の燃料の圧力(燃圧)を検知する燃圧センサ54などの機関運転状態を検出する各種センサ類の検出信号が入力されている。
【0055】
電子制御装置50は、それらセンサ類からの検出信号に基づき、内燃機関の各種制御を実行する。例えばインジェクタ48からの燃料噴射量制御や、高圧燃料ポンプ40からデリバリパイプ47への燃料吐出量制御、油圧制御弁32の駆動制御に基づく吸気バルブ17のバルブタイミング制御などが、この電子制御装置50により行われる。
【0056】
電子制御装置50による高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量制御は、次のように行われる。まず電子制御装置50は、各種センサ類の検出結果に基づき、例えば機関負荷LDや燃焼方式などの機関運転状態に応じたデリバリパイプ47内の燃圧の目標値を算出する。そして電子制御装置50は、燃圧センサ54による燃圧の検出値がその算出された目標値に近づくよう、電磁弁49の開弁期間Tpを調整して高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量をフィードバック制御する。したがって、この内燃機関では、高圧燃料ポンプ40の作動量、すなわちその作動状況は、機関運転状態に応じて変化する。
【0057】
さて本実施形態では、上述したように、位相可変機構20の設けられた吸気側のカムシャフト11の回転により高圧燃料ポンプ40を駆動する構成となっているため、その作動状況の変化が、吸気バルブ17のバルブタイミング制御に影響を与えてしまっている。次に、その理由を説明する。
【0058】
図6は、所定の機関運転状態での位相可変機構20の出力特性、すなわち位相可変機構20の上記制御デューティDVTに対する変位速度の変化特性の一例を示している。なお、同図5では、ケース22に対するベーンロータ21の変位速度(回動速度)を、カムシャフト11の回転方向を正として示している。
【0059】
同図5に実線で示されるように、制御デューティDVTが所定値よりも大きいときには、位相可変機構20の変位速度は正となり、ベーンロータ21がケース22に対してカムシャフト11の回転方向、すなわち吸気バルブ17のバルブタイミングを進角させる方向に回動する。
【0060】
一方、制御デューティDVTがその所定値よりも小さいときには、位相可変機構20の変位速度は負となり、ベーンロータ21がケース22に対してカムシャフト11の反回転方向、すなわち吸気バルブ17のバルブタイミングを遅角させる方向に回動する。また位相可変機構20の変位速度は、制御デューティDVTが上記所定値から離れるに従って、その絶対値が大きくなる。
【0061】
更に、制御デューティDVTが上記所定値にあるときには、位相可変機構20の変位速度は「0」となり、カムシャフト11の回転位相が現状に保持される。このときの制御デューティDVTを「保持デューティ」という。
【0062】
ところで、機関運転中の位相可変機構20のベーンロータ21には、カムシャフト11の回転トルクが作用するため、その回転トルクの大きさに応じて位相可変機構20の出力特性に変化が生じる。一方、この内燃機関では、そのカムシャフト11によって高圧燃料ポンプ40を駆動させているため、高圧燃料ポンプ40の作動状況に応じてカムシャフト11の回転トルクの大きさが変化する。これにより、ベーンロータ21に作用するトルクは、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の変化に応じて変化する。
【0063】
図7には、遅角油室25の油圧、進角油室26の油圧、及び機関回転速度NEを一定としたときの、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の変化に応じたベーンロータ21に作用するトルクの推移の例が示されている。高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大してその作動量が大きくなるほど、高圧燃料ポンプ40の作動に要する負荷トルクが増大し、反回転方向へのカムシャフト11の回転トルクが増大する。そのため、同図7に示されるように、ベーンロータ21に作用する遅角方向のトルクは、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大するほど大きくなる。よってこの位相可変機構20では、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の増大、すなわちその作動量の増大に応じて、位相可変機構20の出力特性が、図6に二点鎖線で示されるように上記保持デューティの値が大きくなる側へと変化する。
【0064】
こうした出力特性の変化は、バルブタイミング制御に好ましくない影響を与える。そこで本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの変化分に相当する補正値Cを算出し、バルブタイミング制御に係る各種制御指令値をその補正値Cにより補正することで、負荷トルクの変化分を補償して、バルブタイミング制御の制御性を好適に保持するようにしている。
【0065】
以下にそうした本実施形態のバルブタイミング制御の詳細を、図8〜図14を併せ参照して説明する。
本実施形態でのバルブタイミング制御は、大きくは図8に示される各処理、すなわち目標位相算出処理、補正値算出処理、制御デューティ算出処理、及び学習値更新処理を通じて行われる。これらの処理は、所定クランク角毎の定角割り込み処理として、電子制御装置50により周期的に実行されている。
【0066】
「目標位相算出処理」では、クランクセンサ51の検出信号より算出された機関回転速度NEやアクセルセンサ53の検出信号などより算出された機関負荷LDなどに基づき、位相可変機構20の目標位相VTTの算出が行われる。この目標位相VTTの算出は、図9に例示されるような目標位相算出マップM01を参照して行われる。
【0067】
「補正値算出処理」では、上記のような高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの変化分に相当する制御指令値の補正値Cの算出が行われる。
「制御デューティ算出処理」では、油圧制御弁32に指令される制御デューティDVTの算出が行われる。この制御デューティDVTの算出に際しては、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cによる補正が行われる。
【0068】
「学習値更新処理」では、上記保持デューティの学習値である保持デューティ学習値GDVTHが、上記制御デューティ算出処理にて算出された制御デューティDVTに基づくバルブタイミング制御の結果に基づき記憶更新される。ここでの保持デューティ学習値GDVTHの更新に際しても、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cによる補正が行われる。
【0069】
次に、上記補正値算出処理の詳細を説明する。
図10は、補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS101にて、機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qを読み込む。ここでの燃料噴射量Qは、内燃機関の燃料噴射制御に係る電子制御装置50の別途の処理にて、機関回転速度NEや機関負荷LDなどに基づき算出されている。そして続くステップS102において、その読み込まれた機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qに基づき、図11に例示されるような補正値算出マップM02を参照して、補正値Cの算出が行われる。ここでの補正値Cは、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほど、その値が大きくなるように設定されるようになっている。
【0070】
なお上述したように、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量は、デリバリパイプ47内の燃圧が目標燃圧に保持されるようにフィードバック制御されている。そのため、燃料噴射量Qが増大すれば、噴射された燃料をデリバリパイプ47に補充して目標燃圧を保持すべく、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量も増大されることとなる。また高圧燃料ポンプ40の出力特性は、それを駆動するカムシャフト11の回転速度、ひいてはそれを決める機関回転速度NEに依存性を有している。
【0071】
したがって、機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qからは、現状における高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの大きさを、概算的に求めることができる。すなわち、機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qは、補機類である高圧燃料ポンプ40の作動状況を反映する機関制御量となっている。そのため、上記のように、それら機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qに基づき、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの影響分に相当する制御指令値の補正値Cを算出することができる。
【0072】
なお、機関回転速度NE及び燃料噴射量Qと高圧燃料ポンプ40の負荷トルクとの対応関係は、予め実験などにより求めることができる。上記補正値算出マップM02は、そうした実験の結果などに基づき適宜に設定されている。
【0073】
続いて、上記制御デューティ算出処理の詳細を説明する。
図12は、制御デューティ算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は本処理に移行すると、まずステップS121において、上記目標位相算出処理にて求められた目標位相VTT、及び位相可変機構20の実位相VTを読み込む。ここでの実位相VTは、クランクセンサ51及びカムセンサ52の検出信号より求められている。
【0074】
続くステップS122では、目標位相VTTと実位相VTとの偏差に基づき制御デューティDVTを算出する。ここでは制御デューティDVTは、目標位相VTTと実位相VTとの差Δ(=VTT−VT)、保持デューティ学習値GDVTH、及び補正値Cに基づき、次の数式(1)より算出されている。
【0075】
【数1】
DVT←KP・Δ+KD・dΔ/dt+GDVTH+C …(1)
ここで「dΔ/dt」は上記差Δの微分値を示している。また「KP」はフィードバック比例ゲインを、「KD」はフィードバック微分ゲインをそれぞれ示している。
【0076】
電子制御装置50は、こうして算出された制御デューティDVTを用いて油圧制御弁32を制御する。これにより位相可変機構20は、その実位相VTが目標位相VTTに近づくようフィードバック制御される。
【0077】
このように、この制御デューティ算出処理では、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cを用いて制御デューティDVTが補正されている。ここでは補正値Cによって制御デューティDVTは、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほどその値が大きくなる側に、すなわち進角側に補正される。この補正値Cにより高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの影響分が吸収されるため、負荷トルクの変化が生じても、制御の乱れを生じることなく良好に位相可変機構20の位相フィードバック制御を行うことができる。
【0078】
次に、上記学習値更新処理の詳細を説明する。
図13は、上記学習値更新処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS131において、実位相VT、目標位相VTT、補正値C、及び制御デューティDVTを読み込む。そして、続くステップS132において、目標位相VTTと実位相VTとの偏差(|VTT−VT|)が上記所定値α以下であるか否かを判断する。そしてここで上記偏差が所定値αを超えていれば(S132:YES)、電子制御装置50はそのまま本処理を終了する。
【0079】
なお、ここでの所定値αは、位相保持時におけるカムシャフト11の回転位相の許容誤差に相当する値が設定されている。この許容誤差は、カムシャフト11のカム駆動トルクの変動に伴う位相の微変動も考慮して決められている。ここでは、そうした所定値αとして「3°CA」が設定されている。
【0080】
よって、上記偏差が所定値α以下であれば(S132:YES)、実位相VTが目標位相VTTにほぼ合致した状態にあると判断できる。このとき、電子制御装置50は、ステップS133において、バルブタイミング制御が安定した定常状態にあるか否かを判断する。ここでは、実位相VT及び制御デューティDVTの変化量がそれぞれ、一定期間、所定値以下に保持されていたことをもって、定常状態にあると判断している。ここで定常状態になければ(S133:)、電子制御装置50はそのまま本処理を終了する。
【0081】
一方、定常状態にあれば(S134:YES)、位相可変機構20は、その実位相VTが目標位相VTTにほぼ合致した状態で安定している。そこで電子制御装置50は、ステップS134において、そのときの制御デューティDVTから上記補正値Cを減算して新たな保持デューティ学習値GDVTHを算出し、メモリ内に記憶更新する。
【0082】
このようにこの学習値更新処理では、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cを用いて記憶更新される保持デューティ学習値GDVTHが補正されている。そのため、本実施形態では、記憶更新される保持デューティ学習値GDVTHには、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの影響分が加味されないようになる。
【0083】
図14は、以上説明した本実施形態でのバルブタイミング制御の制御態様の一例を示している。ここでは、保持デューティ学習値GDVTHは適正に学習されており、目標位相VTTは一定に保持された状態にあるときの制御態様が示されている。
【0084】
同図14の時刻t1に、位相可変機構20の実位相VTと目標位相VTTとが合致すると、制御デューティDVTの比例項(KP・Δ)及びフィードバック微分項(KD・dΔ/dt)の値は共に「0」となり、保持デューティ学習値GDVTHに補正値Cを加算したものがその値に設定される。そしてその時刻t1以降、位相可変機構20の実位相VTは、目標位相VTTにほぼ合致した状態に保持されている。
【0085】
ここで、そうした状態の保持された時刻t2において、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大されたものとする。このときには、燃料吐出量の増大により高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが増大し、その分、反回転方向へのカムシャフト11の回転トルクが増大する。そしてその結果、位相可変機構20では、そのベーンロータ21に作用する遅角側へのトルクが増大し、位相の保持に要する制御デューティDVT、すなわち保持デューティも増加することとなる。
【0086】
このとき、本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが増大に応じて補正値Cが増大され、それにより制御デューティDVTの不足分が補償される。そのため、負荷トルクの変化に拘わらず、制御の乱れを生じさせずに位相可変機構20の位相を保持した状態が継続されるようになる。
【0087】
なお、こうした本実施形態では、電子制御装置50が、上記補正手段、保持制御値学習手段に相当する構成となっている。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られるようになる。
【0088】
(1)本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の作動状況に基づき補正値Cを算出し、制御デューティDVTをその補正値Cを用いて補正している。そのため、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの変化に応じたカムシャフト11の回転トルクの変化に拘わらず、バルブタイミング制御の制御性を好適に保持することができる。また上記補正により、位相可変機構20の位相を保持する際に指令される制御デューティDVT、すなわち保持デューティも、結果として上記補正値Cにより補正されることとなるため、回転トルクの変化に拘わらず、カムシャフト11の回転位相の保持を適宜に行うことができるようにもなる。したがって、高圧燃料ポンプ40の作動状況が変化しても、応答性の低下などを招くことなく好適に位相可変機構20の位相フィードバック制御を行える。
【0089】
(2)本実施形態では、保持デューティ学習値GDVTHの記憶更新に際し、上記補正値Cを用いてその保持デューティ学習値GDVTHを補正している。そのため、記憶更新された保持デューティ学習値GDVTHから高圧燃料ポンプ40の作動状況の影響が排除され、その作動状況の変化に拘わらず、その保持デューティ学習値GDVTHを用いて好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0090】
(3)本実施形態では、機関回転速度NEと燃料噴射量Qとに基づき、補正値Cを求めている。これにより、制御デューティDVTの高圧燃料ポンプ40の負荷トルク分に相当する補正値Cを、容易且つ適切に求めることができる。
【0091】
(実施形態2)
以下、本発明を具体化した実施形態2を、実施形態1との相違点を中心に、図15〜図17を併せ参照して説明する。
【0092】
ここでは、内燃機関のカムシャフト11に、図15に示されるタイプの位相可変機構120の配設された構成について説明する。
図15に示される位相可変機構120は、ベーンロータ121と、スプロケット13に一体回転可能に固定されたケース122とを備えて構成されている。ベーンロータ121に形成された複数の(同図15では3つの)ベーン123は、ケース122の内周に形成された溝124内にそれぞれ収容されている。なお、同図15には、ケース122に対してベーンロータ121がカムシャフト11の回転方向に最大限回動されたときの状態が、すなわち吸気バルブ17のバルブタイミングを最も進角させたときの状態が示されている。
【0093】
この位相可変機構120では、各ベーン123のカムシャフト11の回転方向には、ベーンロータ121をカムシャフト11の反回転方向に、すなわちバルブタイミングを遅角させる方向に回動させる油圧が導入される遅角油室125が形成されている。一方、各ベーン123は、溝124内に配設されたスプリング127によって、カムシャフト11の回転方向に、すなわちバルブタイミングを進角させる方向にそれぞれ付勢されている。
【0094】
よって、この位相可変機構120では、各ベーン123に対する遅角油室125内の油圧に基づく力とスプリング127の付勢力との釣り合いに応じて、ケース122に対してベーンロータ121が回動され、カムシャフト11の回転位相が変更される構成となっている。すなわち、この位相可変機構120では、遅角油室125内の油圧制御により、カムシャフト11の回転位相が調整されている。
【0095】
そうした遅角油室125の油圧制御は、図3の油圧制御弁32に準じた構成の油圧制御弁により行われる。ただし、この位相可変機構120には進角油室が存在しないため、油圧制御弁を3ポート式の電磁駆動弁で構成することができる。
【0096】
なお、本実施形態においても、ベーンロータ121の固定されたカムシャフト11の回転に応じて、高圧燃料ポンプ40(図1、図4等参照)を駆動するようにしている。そのため、この位相可変機構120でも、高圧燃料ポンプ40の作動状況に応じてベーンロータ121に作用するトルクが変化する。
【0097】
図16は、遅角油室125内の油圧を「0」とし、機関回転速度NEを一定としたときの、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の変化に応じたベーンロータ121に作用するトルクの推移の例を示している。この位相可変機構120のベーンロータ121は、カムシャフト11の回転トルクに加え、スプリング127の付勢力の作用を受けており、遅角油室125内の油圧が無ければ、進角側、すなわちカムシャフト11の反回転方向に常時付勢されている。一方、高圧燃料ポンプ40の作動に伴う負荷トルクは、遅角側、すなわちカムシャフト11の回転方向に作用する。そのため、この位相可変機構120では、同図16に示されるように、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大するほど、ベーンロータ21に作用する遅角方向のトルクが小さくなるようになる。したがって、この位相可変機構120では、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の増大、すなわちその作動量の増大に応じて、位相可変機構20の出力特性が、図18に二点鎖線で示されるように上記保持デューティの値が小さくなる側へと変化する。
【0098】
こうした位相可変機構120に実施形態1のバルブタイミング制御を適用する場合には、補正値Cの設定態様を次のように変更すれば良い。すなわち、補正値Cを負の値とするとともに、その値の絶対値が高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほど大きくなるように設定すれば良い。この場合に制御デューティDVTは、補正値Cによって、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほどその値が小さくなる側に、すなわち遅角側に補正される。このように補正を行えば、上記のような位相可変機構120においても実施形態1と同様のバルブタイミング制御を行うことができる。
【0099】
(実施形態3)
以下、本発明を具体化した実施形態3を、上記各実施形態との相違点を中心に、図18を併せ参照して説明する。
【0100】
上述したように高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量制御は、その電磁弁49の開弁期間Tpを制御指令値として行われている。すなわち、この開弁期間Tpが、補機類である高圧燃料ポンプ40の作動制御のために指令される補機制御指令値となっている。よってそうした電磁弁49の開弁期間Tpに基づけば、より的確に高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量を、すなわちその作動量を把握することができる。そこで本実施形態では、上記補正値Cの算出に用いる制御パラメータとして、高圧燃料ポンプ40の電磁弁49の開弁期間Tpを使用するようにしている。
【0101】
図18は、本実施形態での補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS181において、高圧燃料ポンプ40の電磁弁49の開弁期間Tp、及び機関回転速度NEを読み込む。そして続くステップS182において、それら開弁期間Tp及び機関回転速度NEに基づき補正値Cを算出する。こうした補正値Cの算出は、例えばそれら開弁期間Tp及び機関回転速度NEと高圧燃料ポンプ40の負荷トルクに応じた補正値Cとの対応関係を予め記憶した補正値算出マップM03を用いることで行える。
【0102】
こうした本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の作動を直接指示する補機制御指令値である電磁弁49の開弁期間Tpに基づき補正値Cを算出しているため、高圧燃料ポンプ40の作動状況に応じた補正を、より的確に行うことができる。
【0103】
なお、実施形態1〜3は以下のように変更して実施することもできる。
・高圧燃料ポンプ40の作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータの一部を省くようにしても良い。すなわち、機関回転速度NEのみ、燃料噴射量Qのみ、あるいは開弁期間Tpのみに基づき補正値Cを求めるようにしても良い。
【0104】
・高圧燃料ポンプ40の作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、機関回転速度NE、燃料噴射量Q及び開弁期間Tp以外の制御パラメータを、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータの一部、若しくはそのすべてに代えて補正値Cを求めるようにしても良い。
【0105】
(実施形態4)
以下、本発明を具体化した実施形態4を、上記各実施形態との相違点を中心に、図19を併せ参照して説明する。
【0106】
内燃機関によっては、位相可変機構の作動油を発生するオイルポンプを、カムシャフトの回転により駆動するようにしたものがある。このようなオイルポンプを位相可変機構の設けられたカムシャフトにより駆動させる場合、そのオイルポンプの作動状況に応じて位相可変機構の出力特性が変化されてしまう。こうしたカムシャフトの回転により駆動される補機類としてオイルポンプを備える構成においても、次のように補正値Cを算出することで、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御が可能となる。
【0107】
図19は、本実施形態における本実施形態での補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS191において、オイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度(油温Tho)、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力(油圧Po)、及び機関回転速度NEを読み込む。油温Thoは、作動油の循環系路内、又は作動油の貯留されたオイルパン内の作動油の温度を検出する温度センサの検出信号より求めることができる。また油圧Poは、オイルポンプ下流側の作動油循環系路の内圧を検出する圧力センサの検出信号より求めることができる。
【0108】
そして続くステップS192において、それら油温Tho、油圧Po及び機関回転速度NEに基づき補正値Cを算出する。こうした補正値Cの算出は、例えば油温Tho、油圧Po及び機関回転速度NEとオイルポンプの負荷トルクに応じた補正値Cとの対応関係を予め記憶した補正値算出マップM04を用いることで行える。
【0109】
なお、油温Thoが低いほど、加圧吐出する作動油の粘度が増加するため、オイルポンプの負荷トルクは大きくなる。また発生する油圧Poが大きくなるほど、オイルポンプの負荷トルクは大きくなる。更に、上記高圧燃料ポンプ40の場合と同様に、オイルポンプの負荷トルクの大きさは、それを駆動するカムシャフトの回転速度に、ひいては機関回転速度NEに依存性を有している。よって補正値算出マップM04は、そうした傾向を反映するように適宜に設定すれば良い。
【0110】
こうした本実施形態でも、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御を行える。ちなみに、オイルポンプの作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータから、油温Tho、油圧Po及び機関回転速度NEの一部を省いても良い。またそうした把握が可能であれば、それらの一部、若しくはそれらのすべてに代えて、その他の制御パラメータを用いるようにしても良い。
【0111】
(実施形態5)
以下、本発明を具体化した実施形態5を、上記各実施形態との相違点を中心に、図20を併せ参照して説明する。
【0112】
内燃機関やその内燃機関の搭載された車両の多くでは、スロットルバルブでの絞りにより、吸気通路内に発生する負圧、すなわち大気圧未満の気圧を用いて駆動するアクチュエータ類を備えている。一方、ディーゼル機関や成層燃焼を実施する内燃機関などでは、機関運転中にスロットルバルブの絞り量を大きくする機会が比較的少なく、吸気通路内で発生する負圧だけでは、必要な負圧の確保が困難となることがある。
【0113】
そこで、そうした内燃機関では、負圧を発生する負圧ポンプをカムシャフトの回転により駆動して、必要な負圧を確保することがある。そのような構成では、その負圧ポンプの作動状況に応じて位相可変機構の出力特性が変化されてしまう。こうしたカムシャフトの回転により駆動される補機類として負圧ポンプを備える構成においても、次のように補正値Cを算出することで、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御が可能となる。
【0114】
図20は、本実施形態における本実施形態での補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS201において、機関回転速度NEと、負圧ポンプにより発生された負圧(発生負圧Pn)を読み込む。発生負圧Pnは、負圧ポンプにより発生された負圧をその負圧により作動するアクチュエータ類に導く負圧管の内圧を検出する圧力センサの検出信号より求めることができる。
【0115】
続くステップS202では、それら機関回転速度NE及び発生負圧Pnに基づき補正値Cを算出する。こうした補正値Cの算出は、例えば発生負圧Pn及び機関回転速度NEと負圧ポンプの負荷トルクに応じた補正値Cとの対応関係を予め記憶した補正値算出マップM05を用いることで行える。
【0116】
なお、発生負圧Pnが大きくなるほど、オイルポンプの負荷トルクは大きくなる。また負圧ポンプの負荷トルクの大きさは、それを駆動するカムシャフトの回転速度に、ひいては機関回転速度NEに依存性を有している。よって補正値算出マップM05は、そうした傾向を反映するように適宜に設定すれば良い。
【0117】
こうした本実施形態でも、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御を行える。ちなみに、負圧ポンプの作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータから、発生負圧Pn及び機関回転速度NEのいずれかを省いても良い。またそうした把握が可能であれば、それらのいずれか、若しくはその双方に代えて、その他の制御パラメータを用いるようにしても良い。
【0118】
なお、以上説明した各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・目標位相算出処理、制御デューティ算出処理、及び学習値更新処理の各処理の詳細は、適宜変更しても良い。例えば目標位相VTTや制御デューティDVTの算出態様、あるいは保持デューティ学習値GDVTHの更新態様などを適宜に変更しても良い。いずれにせよ、制御デューティDVTや保持デューティ学習値GDVTHを補正値Cにより補正すれば、補機類の作動状況の変化に拘わらず、好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0119】
・保持デューティ学習値GDVTHの学習を行わずにバルブタイミング制御を行う構成にも、本発明は適用可能である。その場合にも、補正値Cを用いて位相可変機構の制御デューティDVTを補正すれば、補機類の作動状況の変化に左右されない好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0120】
・油圧制御弁の作動をデューティ制御以外の制御で行う構成にも、本発明は適用可能である。その場合にも、そうした油圧制御弁の作動制御に係る制御指令値を、補機類の作動状況に応じた補正値を用いて補正すれば、やはり補機類の作動状況の変化に左右されない好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0121】
・カムシャフトの回転により駆動される補機類として、上記高圧燃料ポンプ40、オイルポンプ、及び負圧ポンプ以外の補記類を備える構成にも、本発明は適用可能である。そうした場合にも、その補機類の作動状況(負荷トルク)に応じて補正値を算出し、それを用いて油圧制御弁の制御指令値の補正を行えば、同様に好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0122】
・例えば、ヘリカルギア式などのその他のタイプの油圧駆動式位相可変機構を備える構成にも、本発明は適用可能である。また電動式などの油圧以外の駆動方式を採用する位相可変機構を備える構成にも、本発明は適用できる。そうした構成においても、カムシャフトの回転位相の変更や保持に要するその位相可変機構の発生トルクを決定する制御指令値を上記のような補正値を用いて補正すれば、上記実施形態と同様の好適なバルブタイミング制御が可能となる。
【0123】
以上説明した各実施形態から把握される技術思想を以下に記載する。
(イ)前記位相可変機構は、同位相可変機構に供される作動流体の供給圧の制御に応じて駆動制御される流体圧駆動式の位相可変機構である請求項1〜12のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0124】
(ロ)前記位相可変機構の駆動制御は、前記作動流体の供給圧を制御する流体圧制御弁の制御を通じて行われる上記(イ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0125】
(ハ)前記流体圧制御弁の制御は、当該流体圧制御弁の駆動電力のデューティ制御を通じて行われる上記(ロ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0126】
(ニ)前記補機類の作動状況とは、同補機類の作動に伴い前記カムシャフトに作用する負荷トルクの大きさである請求項1〜12、及び上記(イ)〜(ハ)のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の適用される内燃機関の動弁系の斜視図。
【図2】同実施形態1における位相可変機構の正面断面構造を示す断面図。
【図3】同位相可変機構の油圧制御系の模式図。
【図4】同内燃機関の燃料供給系の模式図。
【図5】同内燃機関の電気的構成のブロック図。
【図6】実施形態1の位相可変機構の出力特性の一例を示すグラフ。
【図7】同位相可変機構の負荷トルクの変化態様の一例を示すグラフ。
【図8】実施形態1におけるバルブタイミング制御の制御ブロック図。
【図9】同制御に用いられる目標位相算出マップの設定例を示す模式図。
【図10】実施形態1における補正値算出処理のフローチャート。
【図11】同処理に用いられる補正値算出マップの設定例を示す模式図。
【図12】実施形態1における制御デューティ算出処理のフローチャート。
【図13】実施形態1における保持デューティ学習処理のフローチャート。
【図14】実施形態1での制御態様の一例を示すタイムチャート。
【図15】実施形態2における位相可変機構の正面断面構造を示す断面図。
【図16】同位相可変機構の負荷トルクの変化態様例を示すグラフ。
【図17】実施形態2の位相可変機構の出力特性の一例を示すグラフ。
【図18】実施形態3における補正値算出処理のフローチャート。
【図19】実施形態4における補正値算出処理のフローチャート。
【図20】実施形態5における補正値算出処理のフローチャート。
【符号の説明】
11…カムシャフト(吸気側)、12…カムシャフト(排気側)、13,14…スプロケット、15…チェーン、16…クランクシャフト、17…吸気バルブ、18…排気バルブ、20,120…位相可変機構、21,121…ベーンロータ、22,122…ケース、23,123…ベーン、24,124…溝、25,125…遅角油室、26…進角油室、30…オイルポンプ、31…オイルパン、32…油圧制御弁32…スプール、34…スプリング、35…電磁ソレノイド、40…高圧燃料ポンプ、41…カム、42…シリンダ、43…プランジャ、44…加圧室、45…フィードポンプ、46…燃料タンク、47…デリバリパイプ、48…インジェクタ、50…電子制御装置、51…クランクセンサ、52…カムセンサ、53…アクセルセンサ、54…燃圧センサ、L1…給油路、L2…ドレイン油路、L3…遅角油路、L4…進角油路。
【発明の属する技術分野】
この発明は、カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記のような内燃機関のバルブタイミング制御装置として、油圧駆動式の位相可変機構を備えるものが広く用いられている。位相可変機構は、機関出力軸であるクランクシャフトとカムシャフトとの間に設けられ、その内部に形成された油室内の油圧制御に基づき動作されるようになっている。そしてその動作により、クランクシャフトの回転位相に対するカムシャフトの回転位相を変更して、機関バルブのバルブタイミングを可変としている。そして開度調節により油圧室に供給される油圧を調整可能な油圧制御弁により上記油室内の油圧を調整することで、カムシャフトの回転位相を変更させたり、保持させたりしてバルブタイミングの制御が行われている。
【0003】
なお、位相可変機構やその油圧制御弁の出力特性には、公差や経時変化による個体差がある。またそれらの出力特性は、内燃機関の暖機状態や機関回転速度などの機関運転状態によっても変化する。そしてそうした出力特性のばらつきが、バルブタイミング制御の制御性の確保を困難なものとしている。
【0004】
そこで、カムシャフトの回転位相が保持されているときの油圧制御弁の制御指令値、すなわち保持制御指令値を学習値として記憶更新する学習制御を行うことで、上記出力特性のばらつきの影響を補償してその制御性を確保することがなされている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
更に、そうした学習制御を行うバルブタイミング制御装置でのバルブタイミング制御の制御性の向上に関する次のような技術も提案されている。
機関始動から暖機完了までの期間は、機関温度の上昇と共に油圧制御に用いられるオイルの粘度が低下して、位相可変機構や油圧制御弁の出力特性を大きく変化させる。そこで、機関温度状態により区分けされた領域毎にそれぞれ個別に保持制御指令値の学習を行うことで、機関温度の変化への学習制御の適合を図る技術が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
また、機関停止時にカムシャフトの回転位相を位相制御範囲内の所定の位相に保持しておくための付勢力を発生するばねが内部に設けられた位相可変機構が知られている。この種の位相可変機構では、カムシャフトの回転位相に応じてばねの付勢力が変化して、回転位相の変更や保持に必要な油圧が変化してしまう。そこでカムシャフトの回転位相の変化に対するばねの付勢力の変化に応じて上記学習値の補正を行うことで、そうした位相可変機構への学習制御の適合を図る技術が提案されてもいる(例えば特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−284699号公報
【特許文献2】
特開2000−230437号公報
【特許文献3】
特開2001−317382号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような学習制御の適用により、バルブタイミング制御の制御性は確かに向上される。しかし、内燃機関の暖機状態や上記ばねの付勢力の他にも、位相可変機構本体やその油圧制御弁の出力特性を変化させる因子が存在しており、そうした因子の影響に対するバルブタイミング制御の適合は十分にはなされていなかった。このように上記のような学習制御を行うバルブタイミング制御装置にも、制御性の向上に未だ改善の余地は残されている。
【0009】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することのできる内燃機関のバルブタイミング制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段及びその作用効果について以下に記載する。
〔請求項1〕
請求項1に記載の発明は、カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出し、前記位相可変機構の制御指令値をその補正値を用いて補正する補正手段を備えるものである。
【0011】
カムシャフトの回転により駆動される、例えば燃料ポンプなどの補機類を備える内燃機関では、その補機類の作動に伴いカムシャフトに作用する負荷トルクが、その作動状況に応じて変化して、その回転位相の変更や保持に必要な位相可変機構の発生トルクの大きさが変化してしまう。その点、上記構成では、そうした補機類の作動状況に基づき算出された補正値を用いて位相可変機構の制御指令値が補正される。これにより、補機類の作動状況に応じた負荷トルクの変化分を補償するように、位相可変機構の発生トルクが適宜調整される。そのため、補機類の作動状況に応じたカムシャフトの回転トルクの変化に拘わらず、カムシャフトの回転位相の変更や保持が適宜に行われるようになる。したがって上記構成によれば、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することができる。
【0012】
〔請求項2〕
請求項2に記載の発明は、カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出して、前記カムシャフトの回転位相の保持に際して前記位相可変機構に指令される保持制御指令値をその補正値を用いて補正する補正手段を備えるものである。
【0013】
上記構成では、補機類の作動状況に基づき算出された補正値を用いて、位相可変機構の保持制御指令値が補正される。これにより、補機類の作動状況に応じた負荷トルクの変化分を補償するように、回転位相保持時の位相可変機構の発生トルクが適宜調整される。そのため、補機類の作動状況に応じたカムシャフトの回転トルクの変化に拘わらず、カムシャフトの回転位相の保持が適宜に行われるようになる。したがって上記構成によれば、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することができる。
【0014】
〔請求項3〕
請求項3に記載の発明は、カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記カムシャフトの回転位相が保持されているときに前記位相可変機構に指令される制御指令値を学習値として記憶更新する保持制御値学習手段と、前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出し、前記学習値の記憶更新に際してその補正値を用いて前記学習値を補正する補正手段と、を備えるものである。
【0015】
上記構成では、カムシャフトの回転位相が保持されているときに位相可変機構に指令される制御指令値を学習値として記憶更新する保持制御値の学習制御が行われる。ここで回転位相保持時の制御指令値をそのまま学習値として記憶更新してしまえば、そのときの補機類の作動状況に応じた負荷トルクの影響が学習値に反映されてしまい、補機類の作動状況が変化すれば、その学習値の値が不適切となってしまう。
【0016】
その点、上記構成では、学習値の記憶更新に際して、補機類の作動状況に基づき算出された補正値を用いて学習値が補正される。これにより、記憶更新される学習値から補機類の作動状況の影響が排除されることとなり、補機類の作動状況の変化に拘わらず、その学習値を用いて好適にバルブタイミング制御を行うことができる。したがって上記構成によれば、バルブタイミング制御の制御性を更に向上することができる。
【0017】
〔請求項4〕
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記バルブタイミングの可変制御を、前記カムシャフトの回転位相の検出値とその目標値との偏差に基づき制御指令値を算出して前記位相可変機構を駆動制御することで行うようにしたものである。
【0018】
上記構成では、カムシャフトの回転位相の検出値とその目標値との偏差に基づき制御指令値を算出して位相可変機構を駆動制御することで、バルブタイミングの可変制御が行われる。すなわち、カムシャフトの回転位相の検出値に基づくバルブタイミングのフィードバック制御が行われる。上記のような補機類の作動状況の変化は、応答性を低下させるなどのフィードバック制御の制御性に好ましくない影響を与えるが、上記補正手段による補正を行うことで、そうした影響を好適に抑制することができる。
【0019】
〔請求項5〕
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動状況を反映する機関制御量に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0020】
補機類の作動状況を直接検出することができなくても、例えば機関回転速度などの機関制御量からその作動状況を概ね把握できることがある。そのような場合、そうした補機類の作動状況を反映する機関制御量に基づき補正値を算出することで、その作動状況に応じた適宜な補正を行うことができる。
【0021】
〔請求項6〕
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記補機類の作動制御のために指令される補機制御指令値に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0022】
補機類の作動を直接制御する場合、その作動制御のために指令される補機制御指令値からその作動状況を的確に把握することができる。よってそうした場合、そうした補機制御指令値に基づき補正値を算出することで、補機類の作動状況に応じた適宜な補正を行うことができる。
【0023】
〔請求項7〕
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、当該内燃機関に供される燃料を加圧吐出する燃料ポンプを、前記補機類として備えるものである。
【0024】
カムシャフトの回転により駆動される燃料ポンプを備える内燃機関では、例えば燃料噴射量などの機関運転状態により燃料ポンプの作動状況が変化すると、その負荷トルクが変化してカムシャフトの回転トルクが変化する。そして、そうした回転トルクの変化により、位相可変機構の出力特性にも変化が生じる。上記構成では、そうした燃料ポンプの作動状況に基づき補正値を算出し、それを用いてバルブタイミング制御に係る制御量の補正が行われる。そのため、燃料ポンプの作動状況の変化による影響分を補正値にて吸収して、良好にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0025】
〔請求項8〕
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、燃料噴射量、及び機関回転速度の少なくとも一方に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0026】
燃料ポンプの作動状況は、その燃料ポンプにより加圧吐出された燃料を用いて行われる燃料噴射の量や機関回転速度に依存して変化する。そのため、上記構成では、燃料ポンプの作動状況に応じた補正値を容易且つ的確に求め、好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0027】
〔請求項9〕
請求項9に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、油を加圧吐出するオイルポンプを前記補機類として備えるものである。
【0028】
カムシャフトの回転により駆動されるオイルポンプを備える内燃機関では、機関運転状態によりそのオイルポンプの作動状況が変化すると、その負荷トルクが変化してカムシャフトの回転トルクが変化する。そして、そうした回転トルクの変化により、位相可変機構の出力特性にも変化が生じる。上記構成では、そうしたオイルポンプの作動状況に基づき補正値を算出し、それを用いてバルブタイミング制御に係る制御量の補正が行われる。そのため、オイルポンプの作動状況の変化による影響分を補正値にて吸収して、良好にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0029】
〔請求項10〕
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記オイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力、及び機関回転速度の少なくとも一つに基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0030】
オイルポンプの作動状況は、そのオイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度や、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力、機関回転速度に依存して変化する。そのため、上記構成では、オイルポンプの作動状況に応じた補正値を容易且つ的確に求め、好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0031】
〔請求項11〕
請求項11に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、負圧を発生する負圧ポンプを前記補機類として備えるものである。
【0032】
カムシャフトの回転により駆動される負圧ポンプを備える内燃機関では、機関運転状態によりその負圧ポンプの作動状況が変化すると、その負荷トルクが変化してカムシャフトの回転トルクが変化する。そして、そうした回転トルクの変化により、位相可変機構の出力特性にも変化が生じる。上記構成では、そうした負圧ポンプの作動状況に基づき補正値を算出し、それを用いてバルブタイミング制御に係る制御量の補正が行われる。そのため、負圧ポンプの作動状況の変化による影響分を補正値にて吸収して、良好にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0033】
〔請求項12〕
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、前記負圧ポンプの発生負圧、及び機関回転速度の少なくとも一方に基づき前記補正値を算出するように前記補正手段を構成したものである。
【0034】
負圧ポンプの作動状況は、その負圧ポンプの発生負圧や機関回転速度に依存して変化する。そのため、上記構成では、負圧ポンプの作動状況に応じた補正値を容易且つ的確に求め、好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
以下、本発明の内燃機関のバルブタイミング制御装置を具体化した実施形態1を、図1〜図15を参照して説明する。
【0036】
図1は、本実施形態の適用される内燃機関の動弁系の構成を示している。
同図1に示されるように、吸気側及び排気側の2本のカムシャフト11,12は、スプロケット13,14及びチェーン15を介して、機関出力軸であるクランクシャフト16にそれぞれ駆動連結され、クランクシャフト16が2回転される毎に1回転される。そして両カムシャフト11,12の回転に応じて、機関バルブである吸気バルブ17及び排気バルブ18が開閉駆動される(同図1では、1気筒分の機関バルブのみを表示)。なお、クランクシャフト16及び吸気側のカムシャフト11の近傍には、それらの回転位相をそれぞれ検出するセンサ、すなわちクランクセンサ51、及びカムセンサ52がそれぞれ設けられている。
【0037】
吸気側のカムシャフト11の近傍には、内燃機関に供される燃料を加圧吐出する高圧燃料ポンプ40が配設されている。高圧燃料ポンプ40は、カムシャフト11に設けられたポンプ駆動用のカム41を通じて、カムシャフト11の回転により駆動される。本実施形態では、この高圧燃料ポンプ40が、上記「補機類」、「燃料ポンプ」に対応する構成となっている。
【0038】
更にこの内燃機関では、油圧駆動式の位相可変機構20が、吸気側のカムシャフト11に設けられている。位相可変機構20は、チェーン15の巻掛けられたスプロケット13とカムシャフト11とを相対回転させることで、クランクシャフト16の回転位相に対する相対的なカムシャフト11の回転位相を可変とする。そしてそうしたカムシャフト11の回転位相の変更に応じ、吸気バルブ17の開閉弁時期、すなわちバルブタイミングが変更されるようになっている。
【0039】
次に、この位相可変機構20の構造を、その正面断面構造を示す図2を参照して説明する。
同図2に示すように位相可変機構20は、大きくはベーンロータ21とケース22とを有して構成されている。ケース22はスプロケット13に一体回転可能に固定されている。ベーンロータ21は、ケース22対して相対回動可能な状態で同ケース22の内部に収容されており、カムシャフト11に一体回転可能に固定されている。
【0040】
ベーンロータ21の外周には、複数の(ここでは4つの)ベーン23が径方向に突出形成されている。各ベーン23は、ケース22の内周に形成された周方向に延びる溝24内にそれぞれ収容されている。そしてベーン23により溝24の内部を区画することで、各ベーン23の周方向両側にそれぞれ油室が形成されている。ここでは、これらの油室のうち、ベーン23に対してカムシャフト11の回転方向側のものを「遅角油室25」と云い、反回転方向側のものを「進角油室26」と云う。
【0041】
これら遅角油室25及び進角油室26には、加圧された作動油が供給されるようになっている。そして遅角油室25と進角油室26と間の油圧差を変化させることで、ベーン23の両側に作用する力のバランスが変化して、ベーンロータ21をケース22に対して相対回動させる駆動トルクが発生する。この駆動トルクにより、ベーンロータ21の固定されたカムシャフト11とケース22の固定されたスプロケット13とが相対回動される。
【0042】
例えば、遅角油室25の油圧を進角油室26の油圧よりも十分に大きくすれば、ベーンロータ21はケース22に対して、カムシャフト11の反回転方向に回動する。これにより、カムシャフト11の回転位相はクランクシャフト16の回転位相に対して遅角されるようになる。また、進角油室26の油圧を遅角油室25の油圧よりも十分に大きくすれば、ベーンロータ21はケース22に対して、カムシャフト11の回転方向に回動し、その結果、カムシャフト11の回転位相はクランクシャフト16の回転位相に対して進角されるようになる。
【0043】
こうしてカムシャフト11の回転位相を変更することで、同カムシャフト11により開閉駆動される吸気バルブ17のバルブタイミングを変更することができる。なお、遅角油室25及び進角油室26の油圧を適度に調整して、ベーンロータ21に作用するトルクをバランスさせれば、クランクシャフト16の回転位相に対するカムシャフト11の回転位相を現状に保持することができる。
【0044】
続いて、この位相可変機構20の油圧制御系の構成を、図3を参照して説明する。
同図3に示されるオイルポンプ30は、内燃機関のクランクシャフト16の回転に応じて駆動され、内燃機関のオイルパン31内の作動油を吸引し、加圧吐出する。オイルポンプ30より吐出された作動油は、給油路L1を通じて油圧制御弁32に送られる。
【0045】
ここでは油圧制御弁32として、5ポート式の電磁駆動弁が採用されている。油圧制御弁32の各ポートには、上記給油路L1、作動油をオイルパン31に還流するドレイン油路L2、位相可変機構20の遅角油室25に接続される遅角油路L3、及び進角油室26に接続される進角油路L4が連結されている。
【0046】
油圧制御弁32の内部には、往復摺動可能に配設されたスプール33と、そのスプール33を付勢するスプリング34とが配設されている。更に油圧制御弁32には、電圧の印加に応じ、スプリング34の付勢力に抗してスプール33を吸引する電磁力を発生する電磁ソレノイド35が設けられている。そして、油圧制御弁32内部でのスプール33の位置は、スプリング34の付勢力と電磁ソレノイド35の発生する電磁力との釣り合いに応じて決められる。なお、電磁ソレノイド35に印加される電圧は、デューティ制御されている。こうしたスプール33の変位により、油圧制御弁32内部での各ポート間の接続状態、すなわち上記各油路の接続状態が変化する。
【0047】
位相可変機構20の遅角油室25に接続された遅角油路L3は、スプール33の変位に応じて給油路L1及びドレイン油路L2のいずれかに接続される。遅角油路L3と給油路L1とが接続されると、遅角油室25に作動油が供給されてその内部の油圧が上昇し、遅角油路L3とドレイン油路L2とが接続されると、遅角油室25から作動油が排出されてその内部の油圧が低下する。
【0048】
また位相可変機構20の進角油室26に接続された進角油路L4は、スプール33の変位に応じて給油路L1及びドレイン油路L2のいずれかに接続される。進角油路L4と給油路L1とが接続されると、進角油室26に作動油が供給されてその内部の油圧が上昇し、遅角油路L3とドレイン油路L2とが接続されると、遅角油室25から作動油が排出されてその内部の油圧が低下する。
【0049】
更にスプール33の位置によっては、接続された油路間の連通量(流路面積)が変化され、遅角油室25及び進角油室26の作動油の供給流量や排出流量が調整される。なお、本実施形態では、電磁ソレノイド35に印加される電圧のデューティ比が小さくなるほど、進角油室26の油圧に対する遅角油室25の油圧の比が大きくなるように、上記流量が調整されるようになっている。よって、電磁ソレノイド35に印加する電圧のデューティ比の調整により、位相可変機構20を駆動して吸気バルブ17のバルブタイミングを任意に調整可能となる。
【0050】
したがって本実施形態では、電磁ソレノイド35に印加する電圧のデューティ比が上記「位相可変機構の制御指令値」に相当する。なお、以下では、電磁ソレノイド35に印加する電圧のデューティ比を指示する制御指令値を「制御デューティDVT」という。またここでは、作動油が下記の「位相可変機構に供される作動流体」に、油圧制御弁32がその作動流体(作動油)の供給圧を制御する下記の「流体圧制御弁」に、それぞれ対応する構成となっている。
【0051】
次に、本実施形態の適用される内燃機関の燃料供給系の構成を、図4を併せ参照して説明する。
同図4に示されるように、上記高圧燃料ポンプ40内にはシリンダ42が形成されており、その内部にはプランジャ43が配設されている。プランジャ43は、上記吸気側のカムシャフト11に設けられたカム41に当接され、カムシャフト11の回転に応じてシリンダ42内を往復摺動されるようになっている。
【0052】
また高圧燃料ポンプ40の内部には、シリンダ42の内周面とプランジャ43の上端面とにより囲繞された加圧室44が形成されている。この加圧室44には、電動式のフィードポンプ45により、燃料タンク46内の燃料が導入される。加圧室44に導入された燃料は、カム41によるプランジャ43の押し上げに応じて加圧吐出され、デリバリパイプ47に圧送される。こうしてデリバリパイプ47内に貯圧された高圧燃料は、内燃機関の気筒毎に設けられたインジェクタ48に分配供給される。また、デリバリパイプ47には、その内部に蓄圧された燃料の圧力(燃圧)を検知する燃圧センサ54が配設されている。
【0053】
更に高圧燃料ポンプ40の内部には電磁弁49が設けられ、その開弁期間Tpによって、デリバリパイプ47へと圧送される燃料の流量、すなわち高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が調整されるようになっている。
【0054】
次に、本実施形態の適用される内燃機関の制御系の構成を、図5を併せ参照して説明する。
同図5に示される電子制御装置50は、内燃機関の制御に係る各種演算処理を実施する中央演算装置(CPU)、そのCPUの実行するプログラムやその演算結果を記憶するメモリ等を備えて構成されている。電子制御装置50には、上記クランクセンサ51、カムセンサ52に加え、アクセルペダルの踏込み量を検知するアクセルセンサ53、上記デリバリパイプ47内の燃料の圧力(燃圧)を検知する燃圧センサ54などの機関運転状態を検出する各種センサ類の検出信号が入力されている。
【0055】
電子制御装置50は、それらセンサ類からの検出信号に基づき、内燃機関の各種制御を実行する。例えばインジェクタ48からの燃料噴射量制御や、高圧燃料ポンプ40からデリバリパイプ47への燃料吐出量制御、油圧制御弁32の駆動制御に基づく吸気バルブ17のバルブタイミング制御などが、この電子制御装置50により行われる。
【0056】
電子制御装置50による高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量制御は、次のように行われる。まず電子制御装置50は、各種センサ類の検出結果に基づき、例えば機関負荷LDや燃焼方式などの機関運転状態に応じたデリバリパイプ47内の燃圧の目標値を算出する。そして電子制御装置50は、燃圧センサ54による燃圧の検出値がその算出された目標値に近づくよう、電磁弁49の開弁期間Tpを調整して高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量をフィードバック制御する。したがって、この内燃機関では、高圧燃料ポンプ40の作動量、すなわちその作動状況は、機関運転状態に応じて変化する。
【0057】
さて本実施形態では、上述したように、位相可変機構20の設けられた吸気側のカムシャフト11の回転により高圧燃料ポンプ40を駆動する構成となっているため、その作動状況の変化が、吸気バルブ17のバルブタイミング制御に影響を与えてしまっている。次に、その理由を説明する。
【0058】
図6は、所定の機関運転状態での位相可変機構20の出力特性、すなわち位相可変機構20の上記制御デューティDVTに対する変位速度の変化特性の一例を示している。なお、同図5では、ケース22に対するベーンロータ21の変位速度(回動速度)を、カムシャフト11の回転方向を正として示している。
【0059】
同図5に実線で示されるように、制御デューティDVTが所定値よりも大きいときには、位相可変機構20の変位速度は正となり、ベーンロータ21がケース22に対してカムシャフト11の回転方向、すなわち吸気バルブ17のバルブタイミングを進角させる方向に回動する。
【0060】
一方、制御デューティDVTがその所定値よりも小さいときには、位相可変機構20の変位速度は負となり、ベーンロータ21がケース22に対してカムシャフト11の反回転方向、すなわち吸気バルブ17のバルブタイミングを遅角させる方向に回動する。また位相可変機構20の変位速度は、制御デューティDVTが上記所定値から離れるに従って、その絶対値が大きくなる。
【0061】
更に、制御デューティDVTが上記所定値にあるときには、位相可変機構20の変位速度は「0」となり、カムシャフト11の回転位相が現状に保持される。このときの制御デューティDVTを「保持デューティ」という。
【0062】
ところで、機関運転中の位相可変機構20のベーンロータ21には、カムシャフト11の回転トルクが作用するため、その回転トルクの大きさに応じて位相可変機構20の出力特性に変化が生じる。一方、この内燃機関では、そのカムシャフト11によって高圧燃料ポンプ40を駆動させているため、高圧燃料ポンプ40の作動状況に応じてカムシャフト11の回転トルクの大きさが変化する。これにより、ベーンロータ21に作用するトルクは、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の変化に応じて変化する。
【0063】
図7には、遅角油室25の油圧、進角油室26の油圧、及び機関回転速度NEを一定としたときの、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の変化に応じたベーンロータ21に作用するトルクの推移の例が示されている。高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大してその作動量が大きくなるほど、高圧燃料ポンプ40の作動に要する負荷トルクが増大し、反回転方向へのカムシャフト11の回転トルクが増大する。そのため、同図7に示されるように、ベーンロータ21に作用する遅角方向のトルクは、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大するほど大きくなる。よってこの位相可変機構20では、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の増大、すなわちその作動量の増大に応じて、位相可変機構20の出力特性が、図6に二点鎖線で示されるように上記保持デューティの値が大きくなる側へと変化する。
【0064】
こうした出力特性の変化は、バルブタイミング制御に好ましくない影響を与える。そこで本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの変化分に相当する補正値Cを算出し、バルブタイミング制御に係る各種制御指令値をその補正値Cにより補正することで、負荷トルクの変化分を補償して、バルブタイミング制御の制御性を好適に保持するようにしている。
【0065】
以下にそうした本実施形態のバルブタイミング制御の詳細を、図8〜図14を併せ参照して説明する。
本実施形態でのバルブタイミング制御は、大きくは図8に示される各処理、すなわち目標位相算出処理、補正値算出処理、制御デューティ算出処理、及び学習値更新処理を通じて行われる。これらの処理は、所定クランク角毎の定角割り込み処理として、電子制御装置50により周期的に実行されている。
【0066】
「目標位相算出処理」では、クランクセンサ51の検出信号より算出された機関回転速度NEやアクセルセンサ53の検出信号などより算出された機関負荷LDなどに基づき、位相可変機構20の目標位相VTTの算出が行われる。この目標位相VTTの算出は、図9に例示されるような目標位相算出マップM01を参照して行われる。
【0067】
「補正値算出処理」では、上記のような高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの変化分に相当する制御指令値の補正値Cの算出が行われる。
「制御デューティ算出処理」では、油圧制御弁32に指令される制御デューティDVTの算出が行われる。この制御デューティDVTの算出に際しては、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cによる補正が行われる。
【0068】
「学習値更新処理」では、上記保持デューティの学習値である保持デューティ学習値GDVTHが、上記制御デューティ算出処理にて算出された制御デューティDVTに基づくバルブタイミング制御の結果に基づき記憶更新される。ここでの保持デューティ学習値GDVTHの更新に際しても、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cによる補正が行われる。
【0069】
次に、上記補正値算出処理の詳細を説明する。
図10は、補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS101にて、機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qを読み込む。ここでの燃料噴射量Qは、内燃機関の燃料噴射制御に係る電子制御装置50の別途の処理にて、機関回転速度NEや機関負荷LDなどに基づき算出されている。そして続くステップS102において、その読み込まれた機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qに基づき、図11に例示されるような補正値算出マップM02を参照して、補正値Cの算出が行われる。ここでの補正値Cは、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほど、その値が大きくなるように設定されるようになっている。
【0070】
なお上述したように、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量は、デリバリパイプ47内の燃圧が目標燃圧に保持されるようにフィードバック制御されている。そのため、燃料噴射量Qが増大すれば、噴射された燃料をデリバリパイプ47に補充して目標燃圧を保持すべく、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量も増大されることとなる。また高圧燃料ポンプ40の出力特性は、それを駆動するカムシャフト11の回転速度、ひいてはそれを決める機関回転速度NEに依存性を有している。
【0071】
したがって、機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qからは、現状における高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの大きさを、概算的に求めることができる。すなわち、機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qは、補機類である高圧燃料ポンプ40の作動状況を反映する機関制御量となっている。そのため、上記のように、それら機関回転速度NE、及び燃料噴射量Qに基づき、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの影響分に相当する制御指令値の補正値Cを算出することができる。
【0072】
なお、機関回転速度NE及び燃料噴射量Qと高圧燃料ポンプ40の負荷トルクとの対応関係は、予め実験などにより求めることができる。上記補正値算出マップM02は、そうした実験の結果などに基づき適宜に設定されている。
【0073】
続いて、上記制御デューティ算出処理の詳細を説明する。
図12は、制御デューティ算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は本処理に移行すると、まずステップS121において、上記目標位相算出処理にて求められた目標位相VTT、及び位相可変機構20の実位相VTを読み込む。ここでの実位相VTは、クランクセンサ51及びカムセンサ52の検出信号より求められている。
【0074】
続くステップS122では、目標位相VTTと実位相VTとの偏差に基づき制御デューティDVTを算出する。ここでは制御デューティDVTは、目標位相VTTと実位相VTとの差Δ(=VTT−VT)、保持デューティ学習値GDVTH、及び補正値Cに基づき、次の数式(1)より算出されている。
【0075】
【数1】
DVT←KP・Δ+KD・dΔ/dt+GDVTH+C …(1)
ここで「dΔ/dt」は上記差Δの微分値を示している。また「KP」はフィードバック比例ゲインを、「KD」はフィードバック微分ゲインをそれぞれ示している。
【0076】
電子制御装置50は、こうして算出された制御デューティDVTを用いて油圧制御弁32を制御する。これにより位相可変機構20は、その実位相VTが目標位相VTTに近づくようフィードバック制御される。
【0077】
このように、この制御デューティ算出処理では、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cを用いて制御デューティDVTが補正されている。ここでは補正値Cによって制御デューティDVTは、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほどその値が大きくなる側に、すなわち進角側に補正される。この補正値Cにより高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの影響分が吸収されるため、負荷トルクの変化が生じても、制御の乱れを生じることなく良好に位相可変機構20の位相フィードバック制御を行うことができる。
【0078】
次に、上記学習値更新処理の詳細を説明する。
図13は、上記学習値更新処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS131において、実位相VT、目標位相VTT、補正値C、及び制御デューティDVTを読み込む。そして、続くステップS132において、目標位相VTTと実位相VTとの偏差(|VTT−VT|)が上記所定値α以下であるか否かを判断する。そしてここで上記偏差が所定値αを超えていれば(S132:YES)、電子制御装置50はそのまま本処理を終了する。
【0079】
なお、ここでの所定値αは、位相保持時におけるカムシャフト11の回転位相の許容誤差に相当する値が設定されている。この許容誤差は、カムシャフト11のカム駆動トルクの変動に伴う位相の微変動も考慮して決められている。ここでは、そうした所定値αとして「3°CA」が設定されている。
【0080】
よって、上記偏差が所定値α以下であれば(S132:YES)、実位相VTが目標位相VTTにほぼ合致した状態にあると判断できる。このとき、電子制御装置50は、ステップS133において、バルブタイミング制御が安定した定常状態にあるか否かを判断する。ここでは、実位相VT及び制御デューティDVTの変化量がそれぞれ、一定期間、所定値以下に保持されていたことをもって、定常状態にあると判断している。ここで定常状態になければ(S133:)、電子制御装置50はそのまま本処理を終了する。
【0081】
一方、定常状態にあれば(S134:YES)、位相可変機構20は、その実位相VTが目標位相VTTにほぼ合致した状態で安定している。そこで電子制御装置50は、ステップS134において、そのときの制御デューティDVTから上記補正値Cを減算して新たな保持デューティ学習値GDVTHを算出し、メモリ内に記憶更新する。
【0082】
このようにこの学習値更新処理では、上記補正値算出処理にて算出された補正値Cを用いて記憶更新される保持デューティ学習値GDVTHが補正されている。そのため、本実施形態では、記憶更新される保持デューティ学習値GDVTHには、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの影響分が加味されないようになる。
【0083】
図14は、以上説明した本実施形態でのバルブタイミング制御の制御態様の一例を示している。ここでは、保持デューティ学習値GDVTHは適正に学習されており、目標位相VTTは一定に保持された状態にあるときの制御態様が示されている。
【0084】
同図14の時刻t1に、位相可変機構20の実位相VTと目標位相VTTとが合致すると、制御デューティDVTの比例項(KP・Δ)及びフィードバック微分項(KD・dΔ/dt)の値は共に「0」となり、保持デューティ学習値GDVTHに補正値Cを加算したものがその値に設定される。そしてその時刻t1以降、位相可変機構20の実位相VTは、目標位相VTTにほぼ合致した状態に保持されている。
【0085】
ここで、そうした状態の保持された時刻t2において、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大されたものとする。このときには、燃料吐出量の増大により高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが増大し、その分、反回転方向へのカムシャフト11の回転トルクが増大する。そしてその結果、位相可変機構20では、そのベーンロータ21に作用する遅角側へのトルクが増大し、位相の保持に要する制御デューティDVT、すなわち保持デューティも増加することとなる。
【0086】
このとき、本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが増大に応じて補正値Cが増大され、それにより制御デューティDVTの不足分が補償される。そのため、負荷トルクの変化に拘わらず、制御の乱れを生じさせずに位相可変機構20の位相を保持した状態が継続されるようになる。
【0087】
なお、こうした本実施形態では、電子制御装置50が、上記補正手段、保持制御値学習手段に相当する構成となっている。
以上説明した本実施形態によれば、次のような効果が得られるようになる。
【0088】
(1)本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の作動状況に基づき補正値Cを算出し、制御デューティDVTをその補正値Cを用いて補正している。そのため、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクの変化に応じたカムシャフト11の回転トルクの変化に拘わらず、バルブタイミング制御の制御性を好適に保持することができる。また上記補正により、位相可変機構20の位相を保持する際に指令される制御デューティDVT、すなわち保持デューティも、結果として上記補正値Cにより補正されることとなるため、回転トルクの変化に拘わらず、カムシャフト11の回転位相の保持を適宜に行うことができるようにもなる。したがって、高圧燃料ポンプ40の作動状況が変化しても、応答性の低下などを招くことなく好適に位相可変機構20の位相フィードバック制御を行える。
【0089】
(2)本実施形態では、保持デューティ学習値GDVTHの記憶更新に際し、上記補正値Cを用いてその保持デューティ学習値GDVTHを補正している。そのため、記憶更新された保持デューティ学習値GDVTHから高圧燃料ポンプ40の作動状況の影響が排除され、その作動状況の変化に拘わらず、その保持デューティ学習値GDVTHを用いて好適にバルブタイミング制御を行うことができる。
【0090】
(3)本実施形態では、機関回転速度NEと燃料噴射量Qとに基づき、補正値Cを求めている。これにより、制御デューティDVTの高圧燃料ポンプ40の負荷トルク分に相当する補正値Cを、容易且つ適切に求めることができる。
【0091】
(実施形態2)
以下、本発明を具体化した実施形態2を、実施形態1との相違点を中心に、図15〜図17を併せ参照して説明する。
【0092】
ここでは、内燃機関のカムシャフト11に、図15に示されるタイプの位相可変機構120の配設された構成について説明する。
図15に示される位相可変機構120は、ベーンロータ121と、スプロケット13に一体回転可能に固定されたケース122とを備えて構成されている。ベーンロータ121に形成された複数の(同図15では3つの)ベーン123は、ケース122の内周に形成された溝124内にそれぞれ収容されている。なお、同図15には、ケース122に対してベーンロータ121がカムシャフト11の回転方向に最大限回動されたときの状態が、すなわち吸気バルブ17のバルブタイミングを最も進角させたときの状態が示されている。
【0093】
この位相可変機構120では、各ベーン123のカムシャフト11の回転方向には、ベーンロータ121をカムシャフト11の反回転方向に、すなわちバルブタイミングを遅角させる方向に回動させる油圧が導入される遅角油室125が形成されている。一方、各ベーン123は、溝124内に配設されたスプリング127によって、カムシャフト11の回転方向に、すなわちバルブタイミングを進角させる方向にそれぞれ付勢されている。
【0094】
よって、この位相可変機構120では、各ベーン123に対する遅角油室125内の油圧に基づく力とスプリング127の付勢力との釣り合いに応じて、ケース122に対してベーンロータ121が回動され、カムシャフト11の回転位相が変更される構成となっている。すなわち、この位相可変機構120では、遅角油室125内の油圧制御により、カムシャフト11の回転位相が調整されている。
【0095】
そうした遅角油室125の油圧制御は、図3の油圧制御弁32に準じた構成の油圧制御弁により行われる。ただし、この位相可変機構120には進角油室が存在しないため、油圧制御弁を3ポート式の電磁駆動弁で構成することができる。
【0096】
なお、本実施形態においても、ベーンロータ121の固定されたカムシャフト11の回転に応じて、高圧燃料ポンプ40(図1、図4等参照)を駆動するようにしている。そのため、この位相可変機構120でも、高圧燃料ポンプ40の作動状況に応じてベーンロータ121に作用するトルクが変化する。
【0097】
図16は、遅角油室125内の油圧を「0」とし、機関回転速度NEを一定としたときの、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の変化に応じたベーンロータ121に作用するトルクの推移の例を示している。この位相可変機構120のベーンロータ121は、カムシャフト11の回転トルクに加え、スプリング127の付勢力の作用を受けており、遅角油室125内の油圧が無ければ、進角側、すなわちカムシャフト11の反回転方向に常時付勢されている。一方、高圧燃料ポンプ40の作動に伴う負荷トルクは、遅角側、すなわちカムシャフト11の回転方向に作用する。そのため、この位相可変機構120では、同図16に示されるように、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量が増大するほど、ベーンロータ21に作用する遅角方向のトルクが小さくなるようになる。したがって、この位相可変機構120では、高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量の増大、すなわちその作動量の増大に応じて、位相可変機構20の出力特性が、図18に二点鎖線で示されるように上記保持デューティの値が小さくなる側へと変化する。
【0098】
こうした位相可変機構120に実施形態1のバルブタイミング制御を適用する場合には、補正値Cの設定態様を次のように変更すれば良い。すなわち、補正値Cを負の値とするとともに、その値の絶対値が高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほど大きくなるように設定すれば良い。この場合に制御デューティDVTは、補正値Cによって、高圧燃料ポンプ40の負荷トルクが大きくなるほどその値が小さくなる側に、すなわち遅角側に補正される。このように補正を行えば、上記のような位相可変機構120においても実施形態1と同様のバルブタイミング制御を行うことができる。
【0099】
(実施形態3)
以下、本発明を具体化した実施形態3を、上記各実施形態との相違点を中心に、図18を併せ参照して説明する。
【0100】
上述したように高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量制御は、その電磁弁49の開弁期間Tpを制御指令値として行われている。すなわち、この開弁期間Tpが、補機類である高圧燃料ポンプ40の作動制御のために指令される補機制御指令値となっている。よってそうした電磁弁49の開弁期間Tpに基づけば、より的確に高圧燃料ポンプ40の燃料吐出量を、すなわちその作動量を把握することができる。そこで本実施形態では、上記補正値Cの算出に用いる制御パラメータとして、高圧燃料ポンプ40の電磁弁49の開弁期間Tpを使用するようにしている。
【0101】
図18は、本実施形態での補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS181において、高圧燃料ポンプ40の電磁弁49の開弁期間Tp、及び機関回転速度NEを読み込む。そして続くステップS182において、それら開弁期間Tp及び機関回転速度NEに基づき補正値Cを算出する。こうした補正値Cの算出は、例えばそれら開弁期間Tp及び機関回転速度NEと高圧燃料ポンプ40の負荷トルクに応じた補正値Cとの対応関係を予め記憶した補正値算出マップM03を用いることで行える。
【0102】
こうした本実施形態では、高圧燃料ポンプ40の作動を直接指示する補機制御指令値である電磁弁49の開弁期間Tpに基づき補正値Cを算出しているため、高圧燃料ポンプ40の作動状況に応じた補正を、より的確に行うことができる。
【0103】
なお、実施形態1〜3は以下のように変更して実施することもできる。
・高圧燃料ポンプ40の作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータの一部を省くようにしても良い。すなわち、機関回転速度NEのみ、燃料噴射量Qのみ、あるいは開弁期間Tpのみに基づき補正値Cを求めるようにしても良い。
【0104】
・高圧燃料ポンプ40の作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、機関回転速度NE、燃料噴射量Q及び開弁期間Tp以外の制御パラメータを、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータの一部、若しくはそのすべてに代えて補正値Cを求めるようにしても良い。
【0105】
(実施形態4)
以下、本発明を具体化した実施形態4を、上記各実施形態との相違点を中心に、図19を併せ参照して説明する。
【0106】
内燃機関によっては、位相可変機構の作動油を発生するオイルポンプを、カムシャフトの回転により駆動するようにしたものがある。このようなオイルポンプを位相可変機構の設けられたカムシャフトにより駆動させる場合、そのオイルポンプの作動状況に応じて位相可変機構の出力特性が変化されてしまう。こうしたカムシャフトの回転により駆動される補機類としてオイルポンプを備える構成においても、次のように補正値Cを算出することで、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御が可能となる。
【0107】
図19は、本実施形態における本実施形態での補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS191において、オイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度(油温Tho)、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力(油圧Po)、及び機関回転速度NEを読み込む。油温Thoは、作動油の循環系路内、又は作動油の貯留されたオイルパン内の作動油の温度を検出する温度センサの検出信号より求めることができる。また油圧Poは、オイルポンプ下流側の作動油循環系路の内圧を検出する圧力センサの検出信号より求めることができる。
【0108】
そして続くステップS192において、それら油温Tho、油圧Po及び機関回転速度NEに基づき補正値Cを算出する。こうした補正値Cの算出は、例えば油温Tho、油圧Po及び機関回転速度NEとオイルポンプの負荷トルクに応じた補正値Cとの対応関係を予め記憶した補正値算出マップM04を用いることで行える。
【0109】
なお、油温Thoが低いほど、加圧吐出する作動油の粘度が増加するため、オイルポンプの負荷トルクは大きくなる。また発生する油圧Poが大きくなるほど、オイルポンプの負荷トルクは大きくなる。更に、上記高圧燃料ポンプ40の場合と同様に、オイルポンプの負荷トルクの大きさは、それを駆動するカムシャフトの回転速度に、ひいては機関回転速度NEに依存性を有している。よって補正値算出マップM04は、そうした傾向を反映するように適宜に設定すれば良い。
【0110】
こうした本実施形態でも、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御を行える。ちなみに、オイルポンプの作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータから、油温Tho、油圧Po及び機関回転速度NEの一部を省いても良い。またそうした把握が可能であれば、それらの一部、若しくはそれらのすべてに代えて、その他の制御パラメータを用いるようにしても良い。
【0111】
(実施形態5)
以下、本発明を具体化した実施形態5を、上記各実施形態との相違点を中心に、図20を併せ参照して説明する。
【0112】
内燃機関やその内燃機関の搭載された車両の多くでは、スロットルバルブでの絞りにより、吸気通路内に発生する負圧、すなわち大気圧未満の気圧を用いて駆動するアクチュエータ類を備えている。一方、ディーゼル機関や成層燃焼を実施する内燃機関などでは、機関運転中にスロットルバルブの絞り量を大きくする機会が比較的少なく、吸気通路内で発生する負圧だけでは、必要な負圧の確保が困難となることがある。
【0113】
そこで、そうした内燃機関では、負圧を発生する負圧ポンプをカムシャフトの回転により駆動して、必要な負圧を確保することがある。そのような構成では、その負圧ポンプの作動状況に応じて位相可変機構の出力特性が変化されてしまう。こうしたカムシャフトの回転により駆動される補機類として負圧ポンプを備える構成においても、次のように補正値Cを算出することで、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御が可能となる。
【0114】
図20は、本実施形態における本実施形態での補正値算出処理における電子制御装置50の処理手順を示すフローチャートである。電子制御装置50は、本処理に移行すると、まずステップS201において、機関回転速度NEと、負圧ポンプにより発生された負圧(発生負圧Pn)を読み込む。発生負圧Pnは、負圧ポンプにより発生された負圧をその負圧により作動するアクチュエータ類に導く負圧管の内圧を検出する圧力センサの検出信号より求めることができる。
【0115】
続くステップS202では、それら機関回転速度NE及び発生負圧Pnに基づき補正値Cを算出する。こうした補正値Cの算出は、例えば発生負圧Pn及び機関回転速度NEと負圧ポンプの負荷トルクに応じた補正値Cとの対応関係を予め記憶した補正値算出マップM05を用いることで行える。
【0116】
なお、発生負圧Pnが大きくなるほど、オイルポンプの負荷トルクは大きくなる。また負圧ポンプの負荷トルクの大きさは、それを駆動するカムシャフトの回転速度に、ひいては機関回転速度NEに依存性を有している。よって補正値算出マップM05は、そうした傾向を反映するように適宜に設定すれば良い。
【0117】
こうした本実施形態でも、上記各実施形態と同様のバルブタイミング制御を行える。ちなみに、負圧ポンプの作動状況、すなわちその負荷トルクの大きさを十分に把握可能であれば、補正値Cの算出に用いられる制御パラメータから、発生負圧Pn及び機関回転速度NEのいずれかを省いても良い。またそうした把握が可能であれば、それらのいずれか、若しくはその双方に代えて、その他の制御パラメータを用いるようにしても良い。
【0118】
なお、以上説明した各実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・目標位相算出処理、制御デューティ算出処理、及び学習値更新処理の各処理の詳細は、適宜変更しても良い。例えば目標位相VTTや制御デューティDVTの算出態様、あるいは保持デューティ学習値GDVTHの更新態様などを適宜に変更しても良い。いずれにせよ、制御デューティDVTや保持デューティ学習値GDVTHを補正値Cにより補正すれば、補機類の作動状況の変化に拘わらず、好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0119】
・保持デューティ学習値GDVTHの学習を行わずにバルブタイミング制御を行う構成にも、本発明は適用可能である。その場合にも、補正値Cを用いて位相可変機構の制御デューティDVTを補正すれば、補機類の作動状況の変化に左右されない好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0120】
・油圧制御弁の作動をデューティ制御以外の制御で行う構成にも、本発明は適用可能である。その場合にも、そうした油圧制御弁の作動制御に係る制御指令値を、補機類の作動状況に応じた補正値を用いて補正すれば、やはり補機類の作動状況の変化に左右されない好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0121】
・カムシャフトの回転により駆動される補機類として、上記高圧燃料ポンプ40、オイルポンプ、及び負圧ポンプ以外の補記類を備える構成にも、本発明は適用可能である。そうした場合にも、その補機類の作動状況(負荷トルク)に応じて補正値を算出し、それを用いて油圧制御弁の制御指令値の補正を行えば、同様に好適なバルブタイミング制御を行うことができる。
【0122】
・例えば、ヘリカルギア式などのその他のタイプの油圧駆動式位相可変機構を備える構成にも、本発明は適用可能である。また電動式などの油圧以外の駆動方式を採用する位相可変機構を備える構成にも、本発明は適用できる。そうした構成においても、カムシャフトの回転位相の変更や保持に要するその位相可変機構の発生トルクを決定する制御指令値を上記のような補正値を用いて補正すれば、上記実施形態と同様の好適なバルブタイミング制御が可能となる。
【0123】
以上説明した各実施形態から把握される技術思想を以下に記載する。
(イ)前記位相可変機構は、同位相可変機構に供される作動流体の供給圧の制御に応じて駆動制御される流体圧駆動式の位相可変機構である請求項1〜12のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0124】
(ロ)前記位相可変機構の駆動制御は、前記作動流体の供給圧を制御する流体圧制御弁の制御を通じて行われる上記(イ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0125】
(ハ)前記流体圧制御弁の制御は、当該流体圧制御弁の駆動電力のデューティ制御を通じて行われる上記(ロ)に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【0126】
(ニ)前記補機類の作動状況とは、同補機類の作動に伴い前記カムシャフトに作用する負荷トルクの大きさである請求項1〜12、及び上記(イ)〜(ハ)のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の適用される内燃機関の動弁系の斜視図。
【図2】同実施形態1における位相可変機構の正面断面構造を示す断面図。
【図3】同位相可変機構の油圧制御系の模式図。
【図4】同内燃機関の燃料供給系の模式図。
【図5】同内燃機関の電気的構成のブロック図。
【図6】実施形態1の位相可変機構の出力特性の一例を示すグラフ。
【図7】同位相可変機構の負荷トルクの変化態様の一例を示すグラフ。
【図8】実施形態1におけるバルブタイミング制御の制御ブロック図。
【図9】同制御に用いられる目標位相算出マップの設定例を示す模式図。
【図10】実施形態1における補正値算出処理のフローチャート。
【図11】同処理に用いられる補正値算出マップの設定例を示す模式図。
【図12】実施形態1における制御デューティ算出処理のフローチャート。
【図13】実施形態1における保持デューティ学習処理のフローチャート。
【図14】実施形態1での制御態様の一例を示すタイムチャート。
【図15】実施形態2における位相可変機構の正面断面構造を示す断面図。
【図16】同位相可変機構の負荷トルクの変化態様例を示すグラフ。
【図17】実施形態2の位相可変機構の出力特性の一例を示すグラフ。
【図18】実施形態3における補正値算出処理のフローチャート。
【図19】実施形態4における補正値算出処理のフローチャート。
【図20】実施形態5における補正値算出処理のフローチャート。
【符号の説明】
11…カムシャフト(吸気側)、12…カムシャフト(排気側)、13,14…スプロケット、15…チェーン、16…クランクシャフト、17…吸気バルブ、18…排気バルブ、20,120…位相可変機構、21,121…ベーンロータ、22,122…ケース、23,123…ベーン、24,124…溝、25,125…遅角油室、26…進角油室、30…オイルポンプ、31…オイルパン、32…油圧制御弁32…スプール、34…スプリング、35…電磁ソレノイド、40…高圧燃料ポンプ、41…カム、42…シリンダ、43…プランジャ、44…加圧室、45…フィードポンプ、46…燃料タンク、47…デリバリパイプ、48…インジェクタ、50…電子制御装置、51…クランクセンサ、52…カムセンサ、53…アクセルセンサ、54…燃圧センサ、L1…給油路、L2…ドレイン油路、L3…遅角油路、L4…進角油路。
Claims (12)
- カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出し、前記位相可変機構の制御指令値をその補正値を用いて補正する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出して、前記カムシャフトの回転位相の保持に際して前記位相可変機構に指令される保持制御指令値をその補正値を用いて補正する補正手段を備える
ことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - カムシャフトの回転により駆動されるとともに機関運転状態に応じて作動状況の変化する補機類を備える内燃機関に適用され、前記カムシャフトの回転位相を可変とする位相可変機構を備えて機関バルブのバルブタイミングを可変制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
前記カムシャフトの回転位相が保持されているときに前記位相可変機構に指令される制御指令値を学習値として記憶更新する保持制御値学習手段と、
前記補機類の作動状況に基づき補正値を算出し、前記学習値の記憶更新に際してその補正値を用いて前記学習値を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。 - 前記バルブタイミングの可変制御は、前記カムシャフトの回転位相の検出値とその目標値との偏差に基づき制御指令値を算出して前記位相可変機構を駆動制御することで行われる請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補正手段は、前記補機類の作動状況を反映する機関制御量に基づき前記補正値を算出する請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補正手段は、前記補機類の作動制御のために指令される補機制御指令値に基づき前記補正値を算出する請求項1〜5のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補機類は、当該内燃機関に供される燃料を加圧吐出する燃料ポンプである請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補正手段は、燃料噴射量、及び機関回転速度の少なくとも一方に基づき前記補正値を算出する請求項7に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補機類は、油を加圧吐出するオイルポンプである請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補正手段は、前記オイルポンプにより加圧吐出されるオイルの温度、同オイルポンプにより加圧吐出されたオイルの圧力、及び機関回転速度の少なくとも一つに基づき前記補正値を算出する請求項9に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補機類は、負圧を発生する負圧ポンプである請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
- 前記補正手段は、前記負圧ポンプの発生負圧、及び機関回転速度の少なくとも一方に基づき前記補正値を算出する請求項11に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置。
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