JP2004137628A - 染色されているパラ系アラミド捲縮糸 - Google Patents

染色されているパラ系アラミド捲縮糸 Download PDF

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Abstract

【課 題】本発明は、優れた伸縮性を有し、多種の色相に染色されているパラ系アラミド捲縮糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】伸縮伸長率が6%以上、伸縮弾性率が40%以上であることを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた伸縮性を有する染色パラ系アラミド捲縮糸およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
パラ系アラミド繊維は耐熱性および難燃性に優れ、それゆえに、例えば炎や高熱に曝される危険の大きい場面での衣料製品、例えば消防服、自動車レース用のレーシングスーツ、製鉄用もしくは溶接用作業服などに好んで用いられている。さらに、パラ系アラミド繊維は高強度特性をも併せ有するため、引裂き強さと耐熱性を要するスポーツ衣料や作業服、ロープ、タイヤコードなどに利用されており、また刃物によって切れにくいことから作業用手袋などにも利用されている。
【0003】
従来、パラ系アラミド繊維を用いて衣料製品などの繊維製品を製造する際には、捲縮のないフィラメント糸や紡績糸などの形態で該繊維が利用されているにすぎなかった。しかし、フィラメント糸や紡績糸などの捲縮のない糸条を布地に加工し、かかる布地を利用して消防服、レーシングスーツまたは作業服等の衣料製品を製造した場合、糸条が十分な伸縮性を有していないため該衣料製品は伸縮性に劣っていた。その結果、該衣料製品を着用した場合に、着心地が悪く、また活動しにくいという難点があった。精密部品を取り扱う航空機産業、情報機器産業または精密機械産業で使用される作業手袋においては、従来の非捲縮糸条からなる作業手袋では、着用時の作業性が悪く、作業効率の低下につながっていた。
【0004】
さらに、紡績糸は一般に38mm前後又は51mm前後の短繊維を紡いで糸条となしており、ゆえに糸条表面に短繊維端がはみ出して毛羽状となっている。パラ系アラミド繊維からなる紡績糸から作られた作業服や手袋などは使用時の摩擦によって毛羽が脱落するので、クリーンルームや塗装工場での作業服や手袋としては問題がある。クリーンルームでは空気中の埃を極力除去しなければならず、また、塗装工場では塗装面へ付着した埃が製品の商品価値を低下させるからである。そこで、このような作業服や手袋などの繊維製品においては、毛羽や埃の発生しにくいことが求められていた。
このように、パラ系アラミド繊維が本来有する耐熱性、難燃性および高強度特性などの優れた性質を失うことなく、良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率と優れた外観とを有し、毛羽や埃の発生しにくい耐熱性捲縮糸が熱望されていた。
【0005】
そこで、本発明者らは、かかる耐熱性捲縮糸を合成すべく鋭意検討した結果、パラ系アラミド繊維糸条に撚りを加えた後、高温高圧水蒸気処理または乾熱処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とするパラ系アラミド捲縮糸の製造方法を開発した(特許文献1)。また、本発明者らは、水分率が高いパラ系アラミド繊維糸条に撚りを加えた後、乾熱処理または湿熱処理により熱セットを行い、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とするパラ系アラミド捲縮糸の製造方法も開発した(特許文献2)。
【0006】
一方、パラ系アラミド繊維の利用分野において、伸縮性の他に、染色性の付与も求められている。一般にフィラメント繊維を形成する製糸工程と、繊維を染色する染色工程は工程が別であり、それぞれの専用の設備と専門の技術者によって実施される。染色した繊維製品の色に対するきびしい顧客の要求を満足させるうえで、繊維を形成したところで工程を一旦打ち切り、繊維を染色工場に運搬して専門の染色技術者によって顧客の要求する色相に染め分けることは重要な意味を持つ。しかし、従来、パラ系アラミド繊維は高い結晶性と分子間結合力が強固で緻密な構造のため、染色することは困難であった。かかる要求に応えるべく、本発明者らは研究を重ね、染色可能なパラ系アラミド繊維を開発した(特許文献3、4)。しかし、特許文献3および4では、伸縮性については全く検討されていない。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−248027号公報
【特許文献2】
特願2001−191972号公報
【特許文献3】
特開平11−217727号公報
【特許文献4】
特開2001−336025号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた伸縮性を有し、多種の色相に染色されているパラ系アラミド捲縮糸およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、パラ系アラミド繊維に伸縮性と染色性の両方を付与するために鋭意検討した結果、原料として水分率の高いパラ系アラミド繊維を用い、前記パラ系アラミド繊維に付与した撚りを約60〜130℃程度の温水で固定すると同時に染色も行えば、優れた伸縮性を有する染色パラ系アラミド捲縮糸を得ることができるという知見を得た。
本発明者らは、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) 伸縮伸長率が6%以上、伸縮弾性率が40%以上であることを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸、
(2) カチオン染料で染色されている前記(1)に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸、
(3) ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維で構成されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸、
(4) 前記(1)〜(3)に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸を含む嵩高で伸縮性のある繊維製品、
(5) 手袋である前記(4)に記載の繊維製品、
(6) 前記(5)に記載の手袋の外面に樹脂を塗布してなる手袋、
に関する。
【0011】
また、本発明は、
(7) 水分率が15重量%以上であり、かつ水分率が15重量%以下に乾燥した履歴をもたないパラ系アラミド繊維に撚りを加えた後、60〜130℃の温水で処理し、前記温水での処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法、
(8) パラ系アラミド繊維に加えられる撚りが、下記式(1)で表される撚り係数K5,000〜11,000を有することを特徴とする前記(7)に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法、
K=t×D1/2・・・・・式(1)
(式中、tは撚り数(回/m)を、Dは水分を含む繊度(tex)を表す。)
に関する。
【0012】
また、本発明は、
(9) 水分率が15重量%以上であり、かつ水分率が15重量%以下に乾燥した履歴を持たないパラ系アラミド繊維で編み地を作成し、この編み地を60〜130℃の温水で処理し、前記温水での処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、次いでこの編み地を解編することを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法、
(10) 温水が100〜130℃であることを特徴とする前記(7)〜(9)に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法、
(11) 撚りを加える前または編み地を作成する前のパラ系アラミド繊維の結晶サイズ(110方向)が30〜47Åであることを特徴とする前記(7)〜(10)に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法、
に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の捲縮糸は、パラ系アラミド繊維から構成されている。パラ系アラミド繊維としては、例えばポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン−3,4−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維、コポリパラフェニレン−3,4’−ジフェニルエーテルテレフタルアミド繊維などが挙げられる。中でも、特に好ましいのは、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維である。ポリパラフェニレンテレフタルアミド(以下、PPTAと略称する)とは、テレフタル酸とパラフェニレンジアミンを重縮合して得られる重合体であるが、少量のジカルボン酸およびジアミンを共重合したものも使用できる。
【0014】
本発明の捲縮糸は、伸縮伸長率が約6%程度以上、好ましくは約7%〜50%程度、最も好ましくは約10〜40%程度であり、伸縮弾性率が少なくとも約40%以上、好ましくは約55〜100%程度、最も好ましくは約60〜100%程度である。なお、パラ系アラミド捲縮糸の伸縮伸長率と伸縮弾性率は、JISL 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.11 伸縮性に従って容易に測定することができる。
【0015】
本発明の捲縮糸は、強度が約0.3N/tex以上、好ましくは約0.5N/tex以上、さらに好ましくは約0.7N/tex以上であることが好適である。なお、パラ系アラミド捲縮糸の強度は、JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.5引っ張り強さおよび伸び率に従って測定し、引っ張り強さを繊度で除することにより、容易に測定することができる。
【0016】
本発明の捲縮糸は染色されており、パラ系アラミド繊維が本来有する色彩とは異なる色彩を有する。色彩は公知の方法に従って、例えばSMカラーコンピューターMODEL−SM4(スガ試験機株式会社製)など公知の測定機を用いて測定することができる。
染色に用いられる染料としては、特に限定されず、例えばカチオン染料または分散染料等の公知染料を用いることができる。カチオン染料とは、水に可溶性で、染料イオンがカチオンである染料をいい、アクリル繊維あるいはカチオン可染型ポリエステル繊維などの染色に用いられているものである。また塩基性基を封鎖することにより分散型にしたカチオン染料も用いることができる。カチオン染料は、共役型カチオン染料と絶縁型カチオン染料とに大別され、より具体的には、例えばジアリルメタン系およびトリアリルメタン系、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)系、キサンテン系、メチン系(ポリメチン、アザメチン)、アゾ系、複素環アゾ系(トリアゾールアゾ、チアゾールアゾ、ベンゾチアゾール)、アントラキノン系が挙げられる。分散染料とは、水に難溶性で水中に分散した系からアセテートやポリエステル繊維などの疎水性繊維の染色に用いられる染料である。分散染料としては、例えばベンゼンアゾ系(モノアゾ、ジスアゾなど)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ、キノリンアゾ、ピリジンアゾ、イミダゾールアゾ、チオフェンアゾなど)、アントラキノン系、縮合系(キノフタリン、スチリル、クマリンなど)などが挙げられる。本発明においては、緻密な構造にも浸透しやすいカチオン染料を用いることが好ましい。
【0017】
本発明の染色パラ系アラミド捲縮糸は、例えば(a)水分率が15重量%以上であり、かつ水分率が15重量%以下に乾燥した履歴をもたないパラ系アラミド繊維に撚りまたは編成などの変形を加えた後、(b)温水処理を行い前記繊維の形状を固定し、(c)前記温水での処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、(d)次いで前記撚りの解撚または編み地の解編を行うことにより、好適に製造することができる。本発明においては、上記工程をバッチ式に行ってもよいし、連続的に行ってもよいが、バッチ式に行うのが好ましい。
以下に、各工程について詳細に述べる。
【0018】
本製造方法においては、水分率が約15重量%以上であり、かつ水分率が約15重量%以下に乾燥した履歴をもたないパラ系アラミド繊維を用いるのが好ましい。すなわち、本製造方法で用いるパラ系アラミド繊維は、第一工程である加撚工程または編成工程までに水分率が常に約15重量%以上に保たれており、乾燥により水分率が約15重量%以下となったことがない。したがって、例えば、乾燥により水分率が約15重量%以下となった後、水分を付与することにより水分率が約15重量%以上となっているパラ系アラミド繊維は、本製造方法の原料から除かれる。
【0019】
本製造方法で用いるパラ系アラミド繊維としては、中でも、その水分率が、好ましくは約15〜100重量%程度、より好ましくは約20〜60重量%程度、最も好ましくは約25〜50重量%程度である繊維が好適である。繊維内部の構造変化が起こりやすく、その結果として形状が固定しやすいことから、パラ系アラミド繊維の水分率は約15重量%程度以上であることが好ましい。また、生産に適した速度でのボビンへの糸条の巻き取りやすさ、加撚もしくは編成などの捲縮加工性の観点から、パラ系アラミド繊維の水分率は約100重量%程度以下であることが好ましい。
ここで、水分率の測定は、JIS L 1013 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.1.1 水分率に従って、次式から容易に算出できる。
水分率(重量%)=(W−W’)×100/W’ (式2)
(式中、Wは試料採取時の質量を示し、W’は試料の絶乾時質量を示す。)
【0020】
本製造方法で用いるパラ系アラミド繊維は、さらに結晶サイズ(110方向)が、約30〜47Å程度、好ましくは約30〜42Å程度、より好ましくは約32〜40Å程度であることが好適である。なお、結晶サイズは、公知の広角X線回析(ディフラクトメーター)法で求められる。また、上記結晶サイズは、パラ系アラミド繊維を加撚または編成する前に測定する。
【0021】
以上述べたパラ系アラミド繊維のうちPPTA繊維は下記のようにして得ることができ、他のパラ系アラミド繊維も下記方法に準じて製造することができる。PPTA繊維は、通常、PPTAを濃硫酸に溶解し、その粘性溶液を紡糸口金から押し出し、わずかな空間を経て水中に紡出することによりフィラメント糸状にした後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、水洗した後、約120〜500℃程度の温度下において乾燥・熱処理をして得られる。乾燥・熱処理前のPPAT繊維は水分率が約15〜200重量%程度、結晶サイズ(110方向)が約48Å未満であり、ホットローラーなどによる乾燥・熱処理後では水分率が約10重量%以下、結晶サイズ(110方向)が約48Å以上になるのが普通である。そこで、本発明においては、ホットローラーなどの熱処理条件などを変更することにより、水分率が約15〜100重量%程度、繊維の結晶サイズ(110方向)が約30〜47Å程度のPPTA繊維を製造することができる。より具体的には、紡糸したPPTA繊維を約100〜150℃程度で約5〜20秒間低温乾燥することが好ましい。
【0022】
本発明においては、上記のようなパラ系アラミド繊維の製糸工程と下記する本発明に係る捲縮加工工程を別々に行ってもよいし、両工程を直結して行っても良い。
例えばパラ系アラミド繊維としてPPTA繊維を用いる場合は、上述のような製糸工程によって得られる水分率が約15〜100重量%程度、繊維の結晶サイズ(110方向)が約30〜47Å程度のPPTA繊維ボビン(筒形の糸巻き)に一旦巻き取って製糸工程を打ち切り、別の工程で下記する捲縮加工を施す方法を採用する方が好ましい。なぜなら、PPTA繊維の製糸速度は1000m/分前後が可能であるのに対し、捲縮加工速度は100m/分前後であるので、製糸工程と捲縮加工工程とを別々に行うほうが効率的だからである。
【0023】
本発明において、パラ系アラミド繊維の製糸工程と下記する本発明に係る捲縮加工工程を別々に行う場合、製糸工程で得られる所定の水分率などを有するパラ系アラミド繊維が、捲縮加工までの間に乾燥しないようにすることが好ましい。具体的には、パラ系アラミド繊維を巻き取ったボビンをポリエチレンフィルムなどの防水フィルムで包装するのが好ましい。
【0024】
本発明において用いるパラ系アラミド繊維の太さは、捲縮加工ができるならばどのような太さであってもよいが、通常は加工のしやすさから約3〜500tex(乾燥時換算)程度が好ましい。繊維の単糸繊度は約0.01〜0.6tex(乾燥時換算)程度が捲縮糸のしなやかさの点から好ましい。
【0025】
本製造方法においては、(a1)上述した水分率が約15重量%以上であるパラ系アラミド繊維に撚りを加えた後、(b1)温水処理を行い前記撚りを固定し、(c1)前記温水処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、(d1)次いで前記撚りの解撚を行うという製造方法が、好ましい態様として挙げられる。該製造方法をバッチ式に行う場合について以下に詳述する。
まず上述した水分率が15重量%以上であるパラ系アラミド繊維に第1の撚りを加える。第1の撚りは、繊維を適度に捲縮させるとともに撚りをかけすぎることにより繊維の切断を防ぐため、撚り係数Kの値が約5,000〜11,000程度、好ましくは約6,000〜9,000程度であるのが好適である。なお、撚り係数Kは次式により算出される。
K=t×D1/2  (式1)
(式中、tは撚り数(回/m)を、Dは水分を含む繊度(tex)を表す。)
【0026】
上記第1の撚りを加える加撚工程では、例えば、リング撚糸機、ダブルツイスターまたはイタリー式撚糸機など自体公知の撚糸機を用いてよい。
得られた撚糸はボビンに巻き上げるのが好ましい。ただし、撚糸時に熱処理に適したボビンに巻き上げた場合は巻き返しの必要はない。ボビンは自体公知のものを用いてよいが、例えばアルミニウムなどの耐熱性素材からなるものが好ましい。
【0027】
ついで、上記第1の撚りを固定する温水処理を行う。温水処理に用いる水の温度は、約60〜130℃程度、好ましくは約100〜130℃程度である。温水処理にかかる時間を実用的なものとするとともに、加水分解などによる強度低下など繊維の劣化を防止するために、上記範囲が好ましい。
また、上記温水処理は、加圧下で行われてもよいし、常圧下で行われてもよい。しかし、当然100℃以上の水を用いる場合は、温水処理を加圧下で行う必要がある。しかし、100〜130℃程度の水を用いた処理のために必要な耐圧装置は、当技術分野で常用されており、特段の設備投資を必要としない。
【0028】
温水処理は、上記温度範囲の温水により上記第1の撚りを固定することができれば、どのような形態をとってもよい。例えば、温水処理としては、上記温度範囲の温水が入っている浴に、加燃されたパラ系アラミド繊維を浸漬するという処理が挙げられる。また、上記温度範囲の温水を、加燃されたパラ系アラミド繊維にスプレーしてもよい。
温水処理の処理時間は、上記第1の撚りが固定される範囲で適宜選択することができるが、例えば約1〜120分、好ましくは約10〜90分程度である。
【0029】
前記温水処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理を行う。染色処理としては特に限定されず、公知の方法を用いてよい。例えば、回転バックかせ染め機、噴射式かせ染め機、オーバーマイヤー型染色機、ビーム染色機またはチーズ染色機などの公知装置を用いて糸の染色をすることができる。染色条件は、用いる染料の種類または染色方法などにより異なるので一概には言えない。例えば、カチオン染料を用いる染色方法においては、染色温度が約60〜130℃程度の常圧染色で十分な染着度が得られる。分散染料を用いる染色方法においては、染色温度が約120〜140℃、好ましくは約125〜135℃程度の高圧染色が好ましい。染色の際には、染料に加えて、さらに染料に応じた助剤またはpHを調節するための酸もしくは塩基を用いてよい。カチオン染料を用いる時は、染色の際に染色物の鮮明性を向上させるために、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を用いてもよい。
【0030】
本製造方法においては、温水処理と染色処理を同時に行うことが好ましい。特に、染料を溶解または分散した水を用いて温水処理を行えば、温水処理と同時に染色処理を行うことができる。温水には、染料のほかに染料に応じた助剤を含有させてもよい。また、前記温水には、pHを調節するために、例えば酢酸、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウムまたは酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液などを含有させてもよい。さらに、前記温水には、染色物の鮮明性を向上させるために、上述のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を含有させてもよい。これら成分の濃度は当技術分野で用いられる通常の濃度でよい。染色の際の浴比は、用いる染料の種類などにより異なるので一概には言えないが、例えば1:100程度以下、好ましくは1:5〜50程度である。本態様における染色条件は、用いる染料の種類または染色方法などにより異なるので、一概には言えない。具体的には、例えば、約5〜90分間、好ましくは約10〜60分間かけて、常温から約60〜130℃程度、好ましくは約100〜130℃程度まで温度を上昇させ、かかる温度を約0〜90分間、好ましくは約0〜60分間保持する。
【0031】
ついで、本製造方法においては、撚り糸に第1の撚りとは逆方向に第2の撚りを与えて、撚り糸を解撚することにより、本発明にかかる染色パラ系アラミド捲縮糸を製造することができる。解撚時も施撚時と同じように自体公知の撚糸機を用いてよい。解撚前には冷風などにより強制冷却してもよいが、空気冷却に任せるのが好ましい。また、解撚前もしくは解撚後、好ましくは解撚前に、脱水処理を行うことが好ましい。脱水処理は、例えば、延伸脱水、真空脱水または温風脱水などいかなる方法を用いてよい。脱水後の水分率は、織り編みなど後工程での加工のしやすさの観点から、約10重量%程度以下、好ましくは約7重量%程度以下であることが望ましい。
【0032】
次に、本製造方法を連続式に行う方法について述べる。本方法では、図1に示したような装置を用いて、いわゆる仮撚り加工方法を応用して行うことができる。送り出しローラー2によって供給糸条チーズ(巻き芯であるボビンに巻き上げられた糸)から引き出された糸1は、巻き取りローラー6を経て巻き取りボビン7に巻き上げられる。送り出しローラー2と巻き取りローラー6の間には、仮撚りスピンドル3が設置されている。糸1を仮撚りスピンドル3のピンに巻いてつかみ、スピンドルを回転させると送り出しローラー2と仮撚りスピンドル3の間の糸は、例えばS撚りが加えられ、これを温水処理装置4内の温水で熱セットされると同時に染色もされ、仮撚りスピンドル3と巻き取りローラー6の間では前記と反対の例えばZの撚りが加えられることによって解撚されて捲縮糸となる。ここで、温水処理装置4は、染料および所望により上述した他の成分を含有した温水を糸1にスプレーする構造になっていてもよいし、染料および所望により上述した他の成分を含有した温水を入れることができる浴であってもよい。また、温水の温度を一定に保つために加熱装置を備えていてもよいし、温水を撹拌するための撹拌装置を備えていてもよい。仮撚りスピンドル3と巻き取りローラー6の間は冷却ゾーンであり、空気冷却に任せるのが好ましい。仮撚りを与える方法には上述の仮撚りスピンドルのほか、糸を高速回転する円筒の内壁や円盤の外周あるいは高速走行するベルトの表面と接触させ、摩擦によって仮撚りを与える方法などが用いられる。
【0033】
上記仮撚りの際の撚りは、糸を適度に捲縮させるとともに撚りをかけすぎることによる繊維の切断を防ぐため、撚り係数Kの値が約5,000〜11,000程度、好ましくは約6,000〜9,000程度となるようにすることが好適である。なお、撚り係数Kは上記式1により容易に算出できる。
本方法において、上記加撚は、例えばスピンドル法、ニップベルト法等のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。スピンドル法で撚りを加える場合には、1本ピン(図2)でも良いが、2本ピン以上、好ましくは4本ピン(図3)のスピナを用いても良い。1本ピンの場合は、糸条をピンに1回巻きつけることによって撚りが与えられる。2本以上のピン、特に上2本と下2本の位置をずらして設置した4本ピンのスピナの場合、図3に示したようにピンとピンの間をジグザグ状に糸を通して、糸が上部中心部から入り、下部中心部から出るようにすれば、より効率よく撚りを加えることが可能となる。この場合、糸条はピンとピンの間で屈曲されるので摩擦抵抗で撚りが付与される。
【0034】
本発明に係る染色パラ系アラミド捲縮糸の他の製造方法としては、(a2)上述した水分率が約15重量%以上のパラ系アラミド繊維で編み地を作成し、(b2)前記編み地を温水処理し、(c2)前記温水処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、(d2)次いで該編み地を解編するという方法が挙げられる。該製造方法について以下に詳述する。
パラ系アラミド繊維で編み地を作成する際の編み方としては、特に限定されず、例えば、天竺編み(plain stitch)のような丸編み、平編み、ゴム編みもしくはパール編みなどの横編み、シングルデンビー編みもしくはシングルデンビー編みなどの縦編み、またはレース編み等など公知の編み方を用いてよい。なかでも、天竺編みは解編しやすいので好ましい。編み地を作成するときの糸条の撚りは糸条を拘束するので少ない方が良く、撚係数は0〜500が望ましく、0に近いほうがより望ましい。また、編み地の作成は、公知の編機を用いて容易に行うことができる。
ついで、前記編み地を温水処理する。温水処理は、前記と同一である。前記温水での処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理する。染色処理は前記と同一である。染色処理においては、例えば、ジッガー、ビーム、ウインス、液流染色機またはパッド染色機などの公知装置を用いることができる。ついで、編み地を解編する。ここで、「解編」とは、編み地をほどくことをいう。
【0035】
上述したような本発明に係る染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法においては、さらに他の工程が含まれていてもよい。
前記他の工程としては、弛緩熱処理が挙げられる。弛緩熱処理としては、例えば得られた捲縮糸をある程度伸長させながら加熱する方法などが挙げられる。弛緩熱処理を行うことにより、糸の嵩高性を損なうことなく、トルクを減少させることができるという利点がある。また、前記他の工程としては、より効果的に染色するための前処理も挙げられる。前記前処理としては、例えば、毛焼き、ウールスケール改質、糊抜き、精練、マーセル化、漂白、リラックス処理、縮充、減量加工、酵素処理、プラズマ処理などが挙げられる。さらに、前記他の工程としては染色後に行う後処理も挙げられる。前記後処理としては、例えばソーピングまたは還元洗浄などが挙げられる。これらの処理は、公知の条件に従って容易に行うことができる。
【0036】
本発明の染色パラ系アラミド捲縮糸は各種用途に有用である。本発明の染色パラ系アラミド捲縮糸は、各色相の縫い糸、ミシン糸、コード、ロープ、織物もしくは編物などの布帛とすることができる。本発明の染色パラ系アラミド捲縮糸を用いた色相豊かな布帛は、作業服、手袋、靴下、消防防火服、炉前服等の防護衣料;スキー、スノーボード、登山、モーターボートなどに用いるスポーツ衣料;建築や工場などの作業着;劇場、映画館、列車、自動車などの座席シート;テント生地などに利用できる。目立たない色相に染色した防弾チョッキ生地は、万一被弾して外皮が破れ、防弾生地としてのパラ系アラミド繊維織物が露出しても、目立たないという利点がある。
上記のような本発明にかかる繊維製品は、本発明の染色パラ系アラミド捲縮糸のみからなっていてもよいし、それ以外の繊維糸条との混織または混編物であってもよい。但し、繊維製品が前記混織または混編物である場合は、繊維成分の約5重量%程度以上、好ましくは約25重量%程度以上、より好ましくは約50重量%程度以上が本発明にかかる染色パラ系アラミド捲縮糸であることが好ましい。パラ系アラミド捲縮糸以外の繊維糸条としては、特に限定されず自体公知のものを用いてよい。
【0037】
上記繊維製品は自体公知の方法にしたがって容易に製造できる。例えば、手袋は、市販のコンピューター手袋編機SFGやSTJ(株式会社島精機製作所製)が便宜に採用される。
上記繊維製品を使用する際は、上記繊維製品を単独で用いてもよいし、他の耐熱性または難燃性等を有する製品と組み合わせて用いてもよい。また、自体公知の処理を行ってもよい。例えば、本発明にかかる手袋は、そのまま種々の作業に使用されてもよいし、手袋の一部、特に手のひら側の外面または手袋の外面全面などに樹脂を塗布してもよい。そのための樹脂としては、例えば塩化ビニル樹脂、ラテックス、ウレタン樹脂、天然ゴムまたは合成ゴム等が挙げられる。そのように樹脂を塗布することによって手袋の強度がより強くなるとともに物をつかんだとき滑りにくくなる。樹脂塗布は自体公知の手段に従って行われてよい。また、該本発明にかかる手袋の上にさらにゴム手袋やエラストマー手袋をはめてもよい。
【0038】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例だけに限定されない。
本実施例において、下記数値は以下のような測定方法で測定した。
(a)水分率;「JIS L 1013:1999」に従って上記式2から算出した。
(b)撚りの方向;「JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法 7.2 よりの表示」に従い、S撚りおよびZ撚りで表した。
(c)繊度表示;「JIS L 0101:1978 テックス方式」によって表した。
(d)繊度;「JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント試験方法 8.3」に従って測定した。ただし、「絶乾繊度」とは水分を含まない状態の繊度を示し、「水分を含む原糸繊度」とは水分を含んだ状態の繊度を示す。
【0039】
(e)伸縮伸長率および伸縮弾性率;[JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.11 伸縮性]に従って測定した。測定前の試料の調整は次のように行った。測定試料をかせ状にしてガーゼに包んだまま、90℃20分間の温水処理を行い、室温で自然乾燥させた。
(f)強度および伸び率;「JIS L 1013:1999 化学繊維フィラメント糸試験方法 8.5引っ張り強さおよび伸び率」に従って測定し、引っ張り強さを繊度で除して強度とした。なお、捲縮糸はフィラメント単糸のゆるみが著しい状態であるので、太繊度糸や高弾性率糸の測定で行われているように、測定時に次式で示す撚りを与えて測定した。
Tm=957/√D
(式中、Tmは撚り数(回/m)を、Dは繊度(tex)を表す。)
【0040】
(g)結晶サイズ;広角X線回折(ディフラクトメーター)法に従い、下記装置を用いて測定した。
X線回折装置 (株)理学電機社製 4036A2型、X線原 CuK α線(Niフィルター使用)、出力35kV、15mA
ゴニオメータ (株)理学電機社製 スリット 2mmφ−1°―1°、検出器 シンチレーションカウンター、
計数記録装置 (株)理学電機社製 RAD−C型
(h)染着性;JIS Z 8726に従い、スガ試験器株式会社製多色光源測色器を用いて測定し、L、a*、b*表色系で示した。
(i)切創抵抗(Cut resistance);「ASTM F1790―97 Standardtest method for measuring cut resistance of material used in protectiveclothing」に従って測定した。一定の移動距離で刃が試験片を貫通する(切る)とき、切れにくい素材ほど重い荷重が必要である。刃に加える荷重Lにおいて、刃の移動距離25.4mm(1インチ)で刃が試験片を貫通する時、荷重Lを切創抵抗値とする。刃はAmerican Safety Razor Co.,品番No.88−0121を使用した。数値が大きいほど切れにくいことを示す。
【0041】
〔実施例1〕
通常の方法で得られたPPTA(ηinh=6.5)を99.9重量%の濃硫酸に溶かし、ポリマー濃度19.0重量%、温度80℃の紡糸ドープとし、孔径0.06mmの細孔数1000個を有する口金から押し出し、6mmの空気間隔を通した後、4℃の水中に導いて凝固させ、ネルソンローラーに導き、500m/分の速度で前進させ、10重量%の水酸化ナトリウム水溶液で中和処理し、水洗後、表面温度110℃のホットローラーでわずかに乾燥して耐水性のボビンに巻き取り、フィラメント数263からなる、水分率40重量%の水分込み繊度64tex(絶乾換算44tex、絶乾換算単糸繊度0.167tex)のPPTA繊維糸条Aを得た。この繊維の結晶サイズ(110方向)は36Åであった。
【0042】
このPPTA繊維糸条Aに、リング撚糸機で撚り係数7857(撚り数982t/m)、撚り方向Sの撚りを加え、ついで直径4mmの穴が多数あいたアルミニウムの巻き芯に糸量1kgを巻き返した。得られた糸条コーンを下記染浴に浸漬し、常温から1℃/分の昇温速度で60℃まで昇温し、ついで3℃/分の昇温速度で130℃まで昇温して、130℃を60分間保持した。この処理により、温水処理と染色処理が同時になされた。
<染浴>
Aizen Cathilon Blue CD−FBLH(保土ヶ谷化学工業株式会社製) 4%owf
(owfは、乾燥した繊維重量に対する染料の重量%を示す。)
酢酸ナトリウム                       5g/L
浴比                            1:10
【0043】
上記処理を付した撚り糸を常法により還元洗浄して染着しなかった染料を除去した。ついで、糸条コーンを遠心脱水、熱風乾燥した後、再び上記リング撚糸機で撚り方向Zの撚りを与えて撚り数0となるよう解撚して、本発明に係る染色PPTA捲縮糸を得た。こうして得られた本発明に係る染色PPTA捲縮糸の捲縮物性は、伸縮伸長率34.5(%)、伸縮弾性率61.5(%)、引張強度1.36(N/tex)であり、防護手袋など伸縮性と嵩高性の必要な織編物素材として好適である。
【0044】
〔比較例1〕
PPTA繊維糸条Aの代わりに、水分率の低い市販のPPTA繊維糸条(商品名KEVLAR(登録商標)東レ・デュポン株式会社製)(以下、PPTA繊維糸条Bという。)を用い、実施例1と全く同様にして染色PPTA捲縮糸を得た。こうして得られた本発明に係る染色PPTA捲縮糸の捲縮物性は、伸縮伸長率3.5(%)、伸縮弾性率56.0(%)、引張強度1.62(N/tex)であり、実施例1の捲縮糸に比べ伸縮性と嵩高性が十分でなく、防護手袋など伸縮性と嵩高性の必要な織編物素材として好適であるとはいえない。
【0045】
〔試験例〕
得られた染色PPTA捲縮糸の染着性を測定した。その結果を下記表に示す。L値は、数値が小さいほど光の反射が少なく、濃い色合いであることを示す。同一色相の場合は、数値が小さいほどよく染色されていることを示す。a*は数値が高いほど赤色系統によく染色されていることを示す。b*は数値が低いほど青色系統によく染色されていることを示す。
【0046】
【表1】
Figure 2004137628
【0047】
〔実施例2〕
実施例1で用いたものと同一のPPTA繊維糸条Aを用いて、編み針150本が直径9.1cmの円周状に配列された、筒編み機で天竺編み(Plain stitch)組織の筒編み地を作成した。ついで、この編み地を実施例1と全く同様に温水処理および染色処理に付した。ついで、編み地を解編し、本発明に係る染色PPTA捲縮糸を得た。こうして得られた本発明に係る染色PPTA捲縮糸の捲縮物性は、伸縮伸長率34.2(%)、伸縮弾性率60.3(%)、引張強度1.32(N/tex)であった。
【0048】
〔実施例3〕
実施例1と全く同様の方法で得られた、それぞれS撚りおよびZ撚りからなるPPTA捲縮糸2本を引き揃えて残留トルクを相殺し、合計88texの捲縮糸条をSFG−13ゲージタイプの手袋編み機(株式会社島精機製作所製)に供給して13ゲージの手袋を編み上げた。この手袋の単位面積あたりの重量は345g/mで、切れ難さを示す切創抵抗(cut resistance)は7.3N(ニュートン)であった。
一方、比較として上記本発明にかかる染色PPTA捲縮糸の代わりに市販のポリエステルフィラメント捲縮糸16.5tex(フィラメント単糸数48本、東レ株式会社製)を6本引き揃えて合計99texとした糸条を前記と全く同様にして手袋に編み上げ、上記と全く同様にして切れ難さを示す切創抵抗(cut resistance)を測定したところ、3.4Nであった。
このように本発明に係る手袋は、切れ難さにおいて優れていることがわかった。また、本発明に係る手袋を自動車の塗装工程において使用したところ、該手袋は伸縮性があり作業がしやすく、かつ毛羽が発生せず、また着色しているので、着用者に好感を与え、自動車の塗装工程で使用する作業手袋として申し分のないものであった。
【0049】
〔実施例4〕
実施例3で得られたPPTA繊維製手袋を手の形をした金型にはめ、これをポリウレタンエマルジョンの槽に浸し、外周に付着させた。これを取り出して加熱し、その後冷却・硬化させ、金型から外して、本発明に係る樹脂加工手袋を得た。このPPTA繊維製樹脂加工手袋をジェットエンジンのタービン組み立て作業に使用したところ、切創抵抗が高く、柔軟で装着感が良く、かかる作業に適したものであった。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係る製造方法により得られる捲縮糸は、パラ系アラミド繊維が本来有する耐熱性、難燃性または高強度特性などの優れた性質とともに、従来のフィラメント糸や紡績糸では得られなかった良好な伸縮伸長率および伸縮弾性率と優れた外観とを有する。また、製造時の熱処理による、例えば、強度の低下、色調の変化、毛羽立ちまたは糸切れなどの品質劣化が実質的に見られない。
【0051】
その結果、上記パラ系アラミド捲縮糸を用いれば、繊維製品に耐熱性、難燃性または高強度特性のみならず優れた伸縮性を与えることができ、例えば繊維製品が手袋や作業服などの衣類製品の場合は手などの身体によくフィットし、該繊維製品を装着したときの作業性や活動性が格段に向上するとともに、装着感にも優れた製品が提供できる。
また、本発明に係る上記パラ系アラミド捲縮糸は毛羽や埃を発生しにくい。したがって、精密機械産業、航空機産業もしくは情報機器産業におけるクリーンルームでの組み立て作業、またはアルミ建材、家庭電化製品もしくは自動車などの製造時の塗装作業の際に着用するのに適した繊維製品、特に作業服や手袋を提供できる。
【0052】
さらに、本発明によれば、パラ系アラミド捲縮糸を任意の色相に染色することができるため、繊維製品にファッション性を与えることができる。このことは、嗜好性の高いスポーツ衣料において有用である。また、食品や医薬などの製造において使用される作業服や作業手袋においては、白色に近い色相に染色することにより清潔感を与えることができるという利点がある。さらに、パラ系アラミド繊維を用いた繊維製品において、着用者に好感を与える色彩にするなど色彩のバリエーションをもたせた商品の展開が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様において使用する装置を示す概略工程図である。
【図2】図1の装置で使用する1本ピンの仮撚りスピンドルを示す概略断面図である。
【図3】図1の装置で使用する4本ピンの仮撚りスピンドルを示す概略断面図である。
【符号の説明】
1  供給糸
2  送り出しローラー
3  仮撚りスピンドル
4  温水処理装置
5  引取りローラー
6  捲取りローラー
7  巻き取りボビン
8〜11  ピン

Claims (11)

  1. 伸縮伸長率が6%以上、伸縮弾性率が40%以上であることを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸。
  2. カチオン染料で染色されている請求項1に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸。
  3. ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸。
  4. 請求項1〜3に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸を含む嵩高で伸縮性のある繊維製品。
  5. 手袋である請求項4に記載の繊維製品。
  6. 請求項5に記載の手袋の外面に樹脂を塗布してなる手袋。
  7. 水分率が15重量%以上であり、かつ水分率が15重量%以下に乾燥した履歴をもたないパラ系アラミド繊維に撚りを加えた後、60〜130℃の温水で処理し、前記温水での処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、次いで前記撚りの解撚を行うことを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法。
  8. パラ系アラミド繊維に加えられる撚りが、下記式(1)で表される撚り係数K5,000〜11,000を有することを特徴とする請求項7に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法。
    K=t×D1/2・・・・・式(1)
    (式中、tは撚り数(回/m)を、Dは水分を含む繊度(tex)を表す。)
  9. 水分率が15重量%以上であり、かつ水分率が15重量%以下に乾燥した履歴を持たないパラ系アラミド繊維で編み地を作成し、この編み地を60〜130℃の温水で処理し、前記温水での処理と同時にまたは処理前もしくは処理後に染色処理し、次いでこの編み地を解編することを特徴とする染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法。
  10. 温水が100〜130℃であることを特徴とする請求項7〜9に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法。
  11. 撚りを加える前または編み地を作成する前のパラ系アラミド繊維の結晶サイズ(110方向)が30〜47Åであることを特徴とする請求項7〜10に記載の染色パラ系アラミド捲縮糸の製造方法。
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