JP2004137587A - 水素発生用合金電極およびその製造方法 - Google Patents

水素発生用合金電極およびその製造方法 Download PDF

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【課題】高温の海水の電解やソーダ工業における食塩水の電解に使用したとき、水素発生に対する活性が高く、しかも電解時および電解停止時を通じて耐久性が高い水素発生用合金電極と、その製造方法を提供する。
【解決手段】モリブデン:5〜40原子%および炭素:2〜15原子%を含有し、残部を実質的にコバルトが占める組成の合金を材料とするか、または、モリブデン:5〜40原子%および炭素:2〜15原子%を含有し、残部を実質的に0.1原子%以上のコバルトとその残りのニッケルとが占める組成の合金を材料とする電極。メッキにより合金とすることが有利である。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素発生用合金電極とその製造方法に関する。本発明の電極は、高温の、中性ないし強アルカリ性の液中における電解に使用したとき、水素を高い速度で発生させることができ、電解時および電解停止時における耐久性にすぐれている。
【0002】
【従来の技術】
発明者らは、高温の海水の電解あるいはソーダ工業における食塩水の電解において、水素を発生する電極、すなわち陰極として高性能な電極を求めて研究し、その成果として、高活性で耐久性にすぐれたNi−Mo−C合金電極を見出してすでに開示した(特願2001−297992)。この合金電極は、5〜20原子%のMo、2〜15原子%のCおよび残部を占めるNiからなる。
【0003】
発明者らは、長年にわたって、電解により水素を発生するための電極の材料とする合金の性質を研究し、合金を構成する元素の電気化学的な役割を明らかにしてきた。その過程で、コバルトがニッケルとともに、白金族元素についで電解による水素発生に対し高活性な元素であることと、コバルトにモリブデンを合金化することによって、白金族元素をしのぐ高活性を示すことを見出した。
【0004】
Co−Mo合金電極は、基材金属上に電気メッキを行なうという、きわめて単純な方法によって製造することができ、高温の中性ないしアルカリ性の溶液を電解する場合に使用できる点で、すぐれたものである。しかし、電解を停止したときに、モリブデンがモリブデン酸イオンとなって溶液中に溶解するため、耐久性において劣る。この電極の実用化には、こうした耐久性の向上がキーポイントであった。
【0005】
そこでさらに研究を進めた結果、ニッケルと並んで水素発生に対して高い活性を発揮することが期待されるコバルトをベースとし、これにモリブデンと炭素とを添加してCo−Mo−C合金電極とすることによって、Mo−Co合金電極の弱点であった、電解停止時のモリブデンの溶解が防止できること、しかも、Co−Mo−C合金電極は、前記したニッケルベースの合金電極に匹敵する性能をもつ電極であることを見出した。また、コバルトでニッケルを置換しても、さほど性能に変りはないことを見出した。炭素の添加は、合金中の金属と炭素が結合することによって、金属元素の溶解を防止するものと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した発明者らの知見を活用し、水素発生に対する活性が高く、しかも電解時および電解停止時を通じて耐久性が高い水素発生用合金電極を提供することにある。そのような合金電極を製造する有利な方法を提供することもまた、本発明の目的に包含される。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の水素発生用合金電極の基本的な態様は、モリブデン:5〜40原子%および炭素:2〜15原子%を含有し、残部を実質的にコバルトが占める組成の合金を材料とする電極である。
【0008】
本発明の水素発生用合金電極の変更態様は、モリブデン:5〜40原子%および炭素:2〜15原子%を含有し、残部を実質的に0.1原子%以上のコバルトとその残りのニッケルとが占める組成の合金を材料とする電極である。
【0009】
【発明の実施形態】
上記した基本的な態様の水素発生用合金電極を製造する本発明の方法は、モリブデンの可溶性塩、コバルトの可溶性塩、オキシカルボン酸およびアミノカルボン酸を含有し、アルカリを加えてpH5以上としたメッキ液を使用して電解を行ない、適宜の陰極基材上にMo−Co−C合金を析出させることからなる。
【0010】
変更態様の水素発生用合金電極を製造する本発明の方法は、モリブデンの可溶性塩、コバルトの可溶性塩、ニッケルの可溶性塩、オキシカルボン酸およびアミノカルボン酸を含有し、アルカリを加えてpH5以上としたメッキ液を使用して電解を行ない、適宜の陰極基材上にMo−Co−Ni−C合金を析出させることからなる。
【0011】
上記の製造方法において使用するオキシカルボン酸およびアミノカルボン酸については、前掲の特願2001−297992の明細書に記述したが、好適な具体例を挙げれば、クエン酸:HOOCCHC(OH)(COOH)CHCOOH・HOおよびリシン:HN(CHCH(NH)COOH・HClである。以下に、本発明の電極を構成する合金の成分組成を上記のように限定した理由を説明する。
【0012】
モリブデン:5〜40原子%
モリブデンは、コバルトやニッケルが電気メッキされる際に共同析出し、コバルトおよびニッケル上での水素の放電を加速する作用をもつ元素であって、炭素と共存して水素発生に高活性を付与する。この効果を得るためには、電極とする合金中に、モリブデンが5原子%以上存在する必要がある。しかし、40原子%を超えてモリブデンを存在させても、水素発生の活性を高める効果が飽和する。モリブデンの過剰な存在はまた、電解停止時の高温濃厚アルカリ液中におけるモリブデンの溶解をひき起こし、電極の耐久性を損なう危険がある。
【0013】
炭素:2〜15原子%
炭素は、Co−Mo合金およびCo−Ni−Mo合金中で金属元素と結合し、電荷移動によって水素の放電を加速して、水素発生に対する活性を向上させる。それとともに、電解停止時の金属元素の溶解を防止する作用を有する。合金中の含有量が2原子%以上であるとき、この効果が確保される。一方、多量に炭素を存在させることは、水素発生を担う金属元素の濃度を低下させる結果となり、好ましくない。そこで、15原子%という上限を設けた。
【0014】
コバルト:残部
コバルトは本発明の合金電極の中心的な成分であって、水素発生の活性を主として担う元素である。したがって、モリブデンおよび炭素を除いた部分を、コバルトが占めるようにする。ニッケルを共存させる場合は、この部分のうち0.1原子%に相当する量のコバルトが存在すれば、その残りはニッケルとすることができる。
【0015】
ニッケル:残部のうちコバルトが占める0.1原子%を除く部分
コバルトに対して適量のニッケルを共存させると、水素発生過電圧がいっそう低下した、高活性の電極を得ることができる。
【0016】
本発明の電極を構成する合金において、イオウやリンのような不純物が少量含まれていても、水素発生に対する活性と耐久性には、実質的な影響は認められない。
【0017】
【実施例1】
下記の成分を溶解した水溶液を用意し、
1)硫酸コバルトCoSO・7HO 62g/L
2)クエン酸HOOCCHC(OH)(COOH)CHCOOH・HO 66g/L
3)サッカリン 1g/L
4)ラウリル硫酸ナトリウム 0.08g/L
5)モリブデン酸ナトリウムNaMoO・2HO 5g/L
6)リシンHN(CHCH(NH)COOH・HCl 1.8265g/L
これに4M−NaOHを滴下して、pHを5とした。25℃において、電流密度50A/mでメッキを行なって、
Co−26.4原子%Mo−10.1原子%C
の組成のメッキ合金を得た。
【0018】
この合金を陰極として使用し、90℃の8M−NaOHの電解を行なったところ、125A/mという電流密度においても、水素発生過電圧がわずかに43mVと、高い活性を示した。この電極は、8M−NaOH中に浸漬し、90℃に保って50日間経過した後も、水素発生過電圧はまったく上昇することなく、カソード分極曲線は浸漬前と同じであって、耐久性が高い電極であることが確認された。
【0019】
【実施例2】
実施例1で使用したものと同じ成分からなる溶液において、モリブデン酸ナトリウムおよびクエン酸の濃度を表1に示すように変化させた、pHが5〜6の溶液を使用して、やはり表2に示す組成をもつ合金を製造した。これらの合金を、90℃の8M−NaOHの電解に陰極として使用し、125A/mの電流密度における水素発生過電圧を測定した。その結果を、表1にあわせて掲げる。表1のデータは、各電極が高活性であることを示している。これらの電極を90℃の8M−NaOH中に15〜20日間浸漬した後も、水素発生過電圧には変化がないことが確認された。
【0020】
表1
Figure 2004137587
【0021】
【実施例3】
実施例1で使用したメッキ液の硫酸コバルト62g/Lの一部を硫酸ニッケルNiSO・6HOで置き換え、さらにホウ酸HBOを6g/L添加した溶液において、モリブデン酸ナトリウムおよびクエン酸の濃度を表2に示すように種々変化させたpH5〜6の溶液を使用し、表2に示す合金組成のメッキ金属を得た。それらを陰極として90℃の8M−NaOHを電気分解し、125A/mの電流密度における水素発生過電圧を測定した。その結果を、表2にあわせて掲げる。これらの合金の電極もまた、水素発生過電圧が低い高活性な電極であることが確認され、90℃の8M−NaOH中に15〜20日間浸漬した後も、水素発生過電圧にまったく変化がないことが確認された。
【0022】
表2
Figure 2004137587
【0023】
【発明の効果】
本発明のCo−Mo−C合金またはCo−Ni−Mo−C合金を材料とする水素発生用電極は、高温の中性ないし強アルカリ性の水溶液中における電解に使用したとき、水素発生に対して高活性であって、高い電流密度においても、水素過電圧は低い。またこれらの電極は、高温の濃厚なアルカリ液中に浸漬したまま放置しても安定であって、成分金属が溶出することなく、高い耐久性を示す。

Claims (4)

  1. モリブデン:5〜40原子%および炭素:2〜15原子%を含有し、残部を実質的にコバルトが占める組成の合金を材料とする水素発生用合金電極。
  2. モリブデン:5〜40原子%および炭素:2〜15原子%を含有し、残部を実質的に0.1原子%以上のコバルトとその残りのニッケルとが占める組成の合金を材料とする水素発生用合金電極。
  3. モリブデンの可溶性塩、コバルトの可溶性塩、オキシカルボン酸およびアミノカルボン酸を含有し、アルカリを加えてpH5以上としたメッキ液を使用して電解を行ない、適宜の陰極基材上にMo−Co−C合金を析出させることからなる請求項1に記載の水素発生用合金電極の製造方法。
  4. モリブデンの可溶性塩、コバルトの可溶性塩、ニッケルの可溶性塩、オキシカルボン酸およびアミノカルボン酸を含有し、アルカリを加えてpH5以上としたメッキ液を使用して電解を行ない、適宜の陰極基材上にMo−Co−Ni−C合金を析出させることからなる請求項2に記載の水素発生用合金電極の製造方法。
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