JP2004137424A - 水系液体接触ゴム部品 - Google Patents
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Abstract
【目的】冷却液輸送ホース自身及び燃料電池システムに不具合の生じない冷却液輸送ホースを提供すること。
【構成】水系液体との接触部位を有するゴム部品。ゴム部品の水系液体との接触部位を、体積抵抗率が約1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成する。ゴム加硫物は、ゴム加硫物を比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が50μS/cm以下となる。
【選択図】 なし
【構成】水系液体との接触部位を有するゴム部品。ゴム部品の水系液体との接触部位を、体積抵抗率が約1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成する。ゴム加硫物は、ゴム加硫物を比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が50μS/cm以下となる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系液体との接触部位に適用できるゴム加硫物を使用したゴム部品に関する。以下、本明細書においては、水系液体接触ゴム部品として燃料電池電気自動車の冷却液輸送ホースを例に採り説明を行うが、本発明は、ダイヤフラム、パッキン、その他の各種水系液体接触ゴム部品にも適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品として使用される冷却液輸送ホースは、水系液体である冷却液が内部を流通する構造とされているため、少なくとも冷却液との接触部位(内層)が耐水性の高い材料で形成されている。現在は、EPDM等のエチレン−αオレフィン系共重合体を主体とするゴム組成物を加硫して得られるゴム加硫物が汎用されている。
【0003】
ゴム加硫物には、通常、補強用充填剤であるカーボンブラックが多く含有されるが、カーボンブラックは導電性充填剤であるため、材料の導電性を上昇させてしまうという問題がある。導電性が高い冷却液輸送ホースは電流が流れやすく、電気系統部材を多く使用する自動車内に組み付けした場合、迷走電流(漏電)が発生する。この迷走電流は、ホースと冷却液中の化合物の電気化学的反応を起こし、ホース自身を劣化させることがわかっている。
【0004】
上記迷走電流の発生を防止するため、体積抵抗率が104Ωcm以上の特性を有する導電性の低いゴム加硫物を使用した冷却液輸送ホースが提案されている。体積抵抗率が104Ωcm以上なら耐電気劣化性に優れ、冷却液輸送ホースの電気劣化は起こらないとされているからである。
【0005】
従来技術としては、よう素吸着量10〜30mg/g、DBP吸油量110cm3/100g以上のカーボンブラック30〜35質量%含有する加硫ゴム(体積抵抗率:104Ωcm以上)で形成した冷却液輸送ホースがある(特許文献1参照)。
また、よう素吸着量10〜30mg/g、DBP吸油量110cm3/100g以上のカーボンブラックを36〜41質量%含有し、ZnO無配合の過酸化物加硫系ゴム(体積抵抗率:104Ωcm以上)で形成した冷却液輸送ホースがある(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−317956号公報
【特許文献2】
特開平10−19173号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、注目・研究されつつある燃料電池電気自動車は、従来のガソリン車と比較して格段に電気が流れ易く、迷走電流(漏電)が発生しやすい環境にある。そのため、従来の冷却液輸送ホース(体積抵抗率104Ωcm以上のホース)を燃料電池電気自動車に適用すると、迷走電流によりホースと冷却液中の化合物が電気化学的反応を起こし、ホース自身に亀裂等が発生するという問題があった。
【0008】
また、上記従来の冷却液輸送ホースでは、ホースを構成するゴム加硫物の内に存在する電解質成分(イオン等)が冷却液中に徐々に溶出するため、冷却液の導電性が徐々に上昇することがわかっている。そのため、冷却液に電気が流れ易くなり、ホース内面の電気劣化を促進したり、燃料電池システムの制御に不具合を生じたりという問題もあった。
【0009】
本発明は上記にかんがみて、部品自体に電流が流れにくく、接触する水系液体の導電率を上昇させないゴム部品を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究・開発に努力する過程で、下記構成の水系液体接触ゴム部品に想到した。
【0011】
本発明は、水系液体との接触部位を有するゴム部品において、
前記ゴム部品が、少なくとも水系液体との接触部位の体積抵抗値が1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成されており、
前記ゴム加硫物は、前記ゴム加硫物を比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が50μS/cm以下となることを特徴とする。
【0012】
体積抵抗率が約1010Ωcm以上のゴム加硫物を使用して水系液体接触ゴム部品を製造することで、従来に比して電流が格段に流れにくい水系液体接触ゴム部品とすることができる。また、上記水系液体接触ゴム部品は水系液体が接触していても、当該水系液体の比導電率を常に低い状態に維持可能であるため、水系液体接触ゴム部品自身の劣化の防止が可能で、さらにはシステム系統の不具合の発生も防止できる。
【0013】
そして、上記本発明の水系液体接触ゴム部品の好ましい態様は下記構成のものとなる。
【0014】
水系液体との接触部位を有するゴム部品において、
前記ゴム部品が、少なくとも水系液体との接触部位の体積抵抗率が1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成されており、
前記ゴム加硫物が、エチレン−αオレフィン系共重合体を原料ゴムとするゴム配合物に二次加硫を施した加硫物であり、
カーボンブラックの配合割合が22〜33質量%であり、前記カーボンブラックの、よう素吸着量が約10〜30mg/g、DBP吸油量が110〜140cm3/100gであることを特徴とする。
【0015】
上記構成とすることにより、従来品に比して格段に電流が流れにくく、接触液体への電解質成分の溶出が少ない水系液体接触ゴム部品を得ることがより確実となる。
【0016】
上記構成において、ゴム配合物の補強性充填剤がカーボンブラックと白色充填剤とからなり、カーボンブラックの配合割合を22〜33質量%、前記白色充填剤の配合割合を20質量%以下とし、さらに白色充填剤を表面処理クレーと表面処理炭酸カルシウムの併用系とすることが望ましい。表面処理クレーで押出し加工性を、表面処理炭酸カルシウムと表面処理クレーでカーボンブラックの配合量を少なくしたことによる引張強さ等の強度の低下を補完するものである。
【0017】
上記構成において、水系液体接触ゴム部品が燃料電池自動車用の冷却液輸送ホースであり、水系液体が冷却液であると、本発明の効果がより顕著となる。すなわち、自動車内における漏電(迷走電流)の発生を防止可能となり、水系液体の比導電率上昇による冷却液輸送ホースの劣化や、燃料電池システムの不具合の発生を従来に比して抑制できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水系液体接触ゴム部品及び当該水系液体接触ゴム部品を製造するためのゴム配合物に関して詳細な説明を行う。なお、本明細書において配合量を示す「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0019】
図1に、本発明の水系液体接触ゴム部品の一実施形態である燃料電池自動車用の冷却液輸送ホース11の部分断面図を示す。
【0020】
図1における冷却液輸送用ホース11は、冷却液(水系液体)との接触部位である内管層12と、当該内管層12の外周面に直接的に形成される外管層13とを有している。また、内管層12と外管層13との間には、通常、補強層14が形成されている。
【0021】
当該冷却液輸送用ホース11は、燃料電池自動車において、その燃料電池とラジエーターとを接続するホースとして用いられ、内管層12の内側である内部空間15に冷却液が流通する構成とされている。
【0022】
上記冷却液は、水を主成分とする水系液体であり、通常、水にエチレングリコール及び防錆剤等を混合した冷却液(ロング・ライフ・クーラント=LLC)が使用される。その冷却液の比導電率(25℃で測定)は約2μS/cm前後である。当該冷却液の比導電率を低く抑えてあるのは、冷却液に電気が流れてホース内面の電気劣化を促進したり、燃料電池システムの制御に不具合を生じたりという問題を起こさないためである。なお、参考までに水道水の比導電率(25℃で測定)は、約70〜90μS/cm、イオン交換水の比導電率(25℃で測定)は1μS/cm以下とされている。よって、水道水は脱イオン化して使用することが必要である。
【0023】そして、上記冷却液輸送用ホース11の内管層12及び外管層13は、体積抵抗率(体積固有抵抗率:JIS K 6911)が約1010Ωcm以上、望ましくは約1012Ωcm以上、さらに望ましくは約1013Ωcm以上のゴム加硫物で形成する。体積抵抗率が約1010Ωcm以上のゴム加硫物を使用して内管層12及び外管層13を製造することで、従来に比して電流が格段に流れにくい冷却液輸送用ホースとすることができる。
【0024】
また、上記内管層12を形成するゴム加硫物は、該ゴム加硫物からなる試験片(20mm×20mm×2mmt)を、比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が約50μS/cm以下となるものとする。
【0025】
上記ゴム加硫物で内管層12を形成することにより、冷却液が接触していても、当該冷却液の比導電率を常に低い状態(即ち、約50μS/cm以下)に維持可能である。このようなゴム加硫物は、一次加硫後に二次加硫を施すことにより得られる。尚、加硫系としては、イオウ加硫系、過酸化物加硫系のどちらでもよいが、イオウ加硫系ゴム配合物の方が成形性、コストの点から適している。
二次加硫条件としては150℃×1時間以上の熱履歴、より望ましく150℃×2時間以上の熱履歴を施すのがよい。(温度と時間の組合わせとしては、アレニウス型温度則[10度半減則]基づく熱履歴を施せばよい)
この二次加硫を施すことにより、一次加硫によって生じた残存加硫剤の分解生成物を除去できる。これによりホース内面の電気劣化の防止、及び燃料電池システム系統の不具合防止ができる。
【0026】
なお、前記補強層14は、例えば糸状体を内管層12の外周面に対してブレード編み又はスパイラル編み等することにより形成する。糸状体としては、補強層を有する通常のホースにおいて用いられる糸状体、例えばポリアミド繊維、セルロース再生繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等を使用することができる。なお、この補強層14は、内管層12の内部を冷却液が流通する際に生じる圧力によって、ホース11が放射方向に膨張することを抑制するものである。
【0027】
ここで内管層12を形成するゴム加硫物は、エチレン−αオレフィン系共重合体(EOR)を全部又は主体とする原料ゴムのイオウ加硫系ゴム配合物、あるいは過酸化物加硫系ゴム配合物である。
【0028】
ここで、EORを原料ゴムとするのは、実質的に主鎖に不飽和結合を有せず耐候性が良好なためである。
【0029】
上記EORとしては、エチレン成分とプロピレン成分との二成分共重合体であるEPMや、さらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボーネン等のジエン化合物を第三成分とするEPDMが汎用されている。なお、αオレフィンが1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の他のαオレフィンを単独で又はプロピレンとともにエチレンと共重合させたものも使用可能である。
【0030】
なお、原料ゴムにおいてEORと組み合わせる他の原料ゴム(ポリマー成分)としては、例えば10質量%以下の天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム共重合体(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリスルフィドゴム(T)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO、GCO、ECO、GECO)、ふっ素ゴム(FKM)等のゴムを挙げることができる。
【0031】
上記イオウ加硫系の加硫剤としては、粉末イオウ、有機加硫剤等の汎用の物が使用できる。
【0032】
上記過酸化物系の加硫剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3M)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(25B)、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が使用できる。
【0033】
なお、過酸化物加硫剤の架橋助剤として、硫黄、トリアリルイソシアヌレート等を配合してもよい。硫黄を配合すると、引裂強さ、伸び等の物性を改善することができる。
【0034】
ゴム配合物における補強性充填剤はカーボンブラックを使用し、望ましくは白色充填剤との併用系とする。
【0035】
カーボンブラック以外の補強性充填剤である白色充填剤(導電性がカーボンブラックに比して格段に低い。)を配合するのは、相対的にカーボンブラックの配合比率を低下させてゴム加硫物の体積抵抗率を増大しやすくするとともに、配向性充填剤を配合することによりカーボンブラックの配合比率の低下に伴う混練加工性及び成形加工性(特に押出し加工性)さらには引張強さ等の強度を確保するためである。
【0036】
ここで、カーボンブラックとしては、よう素吸着量が約10〜30mg/g(望ましくは約18〜22mg/g)、DBP吸油量が約110〜140cm3/100g(望ましくは約120〜130cm3/100g)の特性を有するものを使用する。なお、よう素吸着量及びDBP吸油量は、JIS K 6217に示される、ゴム用カーボンブラックの基本性能を表す指標である。
【0037】
カーボンブラックの、よう素吸着量が過小では粒子径が大きく、ゴム加硫物の引張強さが小さい。逆に過大では粒子径が小さく、ゴム配合物の混練り・押出し加工性に問題が発生し易い。
【0038】
DBP吸収量が過小では引張強さが小さく、逆にDBP吸収量が過大ではゴム加硫物の体積抵抗率が小さくなる。
【0039】
そして、カーボンブラックの配合割合を約22〜33%(望ましくは23〜29%)とするとともに、前記白色充填剤の配合割合を22%以下(望ましくは20〜12%)となるように調節する。
【0040】
カーボンブラックの配合割合が過小では引張強さが小さく、逆に過大ではゴム加硫物の体積抵抗率が小さくなる。
白色充填剤の配合割合が過小ではゴム加硫物の加工性が低下し、逆に過大では引張強さが小さくなる。
【0041】
上記白色充填剤としては、表面処理クレー(シラン処理クレー)、表面処理炭酸カルシウム(極微細活性化炭酸カルシウム)、合成けい酸(ホワイトカーボン)、けい酸アルミニウム(ハードクレー、焼成クレー、)、微粉タルク、セリサイト等を使用できる。これらのうちで、練り加工性と補強性を考慮した場合に下記組み合わせとすることが望ましい。なお、ホワイトカーボンは押出し加工性に若干劣る。
【0042】
補強性が高いが混練り性に若干劣るシラン処理クレーと混練り性が良好で補強性もある程度有する表面処理炭酸カルシウム(脂肪酸処理等)を併用することが望ましい。両者の配合比は、前者/後者=1/1.5〜1.5/1(望ましくは1/1.2〜1.2/1)とする。
【0043】
プロセスオイル(軟化剤)としては、原料ゴムがEORを全部または主体とするため、通常パラフィン系を使用する。
【0044】
本ゴム配合物には上記配合剤のほかに、加工助剤としてステアリン酸、長期耐熱性のために活性亜鉛華を適宜配合する。
【0045】
上記ゴム配合物を用いて冷却液輸送ホースを押出して加硫することにより、後述の実施例/比較例で示す如く、従来品に比して格段に電流が流れにくく、接触液体への電解質成分の溶出が少ない冷却液輸送ホースを得ることが可能となる。
【0046】
以上、図1における実施形態の冷却液輸送用ホースを例に採り説明を行ったが、本発明の水系液体接触ゴム部品は、図示の冷却液輸送用ホースに限定されるものではない。例えばホース11は必ずしも三層構造を有する必要はなく、例えば単層、二層、四層…等であってもよい。また、補強層は必須要件ではない。
【0047】
さらに、本発明の水系液体接触ゴム部品は、冷却液用のリザーバータンク等の水系液体との接触部位を有するパッキン等の水系液体接触ゴム部品であれば適応可能である。
【0048】
なお、本発明の発明性に影響を与えるものではないが、本発明の関連技術として下記に関連公報を列挙する。
【0049】
▲1▼特開平3−194281号:耐熱ウォーターホース
▲2▼特開平6−262728号:車両用冷却輸送ホース
▲3▼特開平11−315967号:水系媒体輸送ホース
▲4▼特開平11−12408号:ラジエーターホース
▲5▼特開2001−106848:ゴム配合物及びホース
【0050】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について、比較例とともに詳細に説明を行う。
【0051】
本実施例/比較例において使用した薬品及び商品名を以下に列挙する。
【0052】
カーボンブラック
▲1▼カーボンブラック1:
(よう素吸着量:20mg/g、DBP吸油量:124cm3/100g)
▲2▼カーボンブラック2:
(よう素吸着量:24mg/g、DBP吸油量:152cm3/100g)
加硫剤
▲1▼粉末イオウ
▲2▼有機加硫剤
▲3▼過酸化物加硫剤:ジクミルパーオキサイド(40%濃度)
加硫促進剤
▲1▼チアゾール系
▲2▼ジチオカルバミン酸塩系
【0053】
表1に示す配合で、各実施例、比較例のゴム配合物を調製し、加硫条件:一次加硫 150℃×30分、二次加硫 150℃×2H、4H、6Hで試験片を作成した。
【0054】
抽出液比導電率の測定
20×20×2mmtサイズの加硫物10枚を試験片(10g)とした。
【0055】
上記試験片を、エチレングリコールを主成分とした冷却液/イオン交換水=1/1の水系液体100mL(試験片10gに対する水系液体100mLの割合を10倍量と定義する)に80℃×168時間浸漬後、試験片を取り出し、浸漬後の冷却液の比導電率を80℃にて測定した。
【0056】
なお、比導電率は、電気化学器株式会社「導電率計 HEC−110型」を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0057】
表2より以下の事が判る。二次加硫を行った場合は比導電率が32μS/cm以下であり、二次加硫を行わなかった場合は84μS/cm以上になる。二次加硫時間が長いほど比導電率は低くなる傾向にある。さらに、過酸化物加硫系の方が、イオウ加硫系より比導電率が低くなる。なお、過酸化物加硫系の場合は、二次加硫を行わなくても比導電率は低い(実施例(10))
【0058】
上記結果より、二次加硫を行う事により、比導電率を大幅に低下させることが可能である。すなわち試験片から溶出するイオン等の電解質成分を少なくすることができる。よって、冷却液中での比導電率が従来のように上昇することがなく、ホースの電気劣化が防止され、かつ燃料電池システムに不具合が起こらないことが推測できる。
【0059】
体積抵抗率(JIS K 6911)の測定
表1に示す配合内容で各ゴム配合物を調製し、各ゴム配合物から試験片(2mmtシート状)を切り出し、加硫を行った。
一時加硫はプレス加硫で行ない(加硫条件:150℃×30分)、二次加硫は恒温槽内(温度:150℃)に所定時間放置した。
【0060】
上記各試験片を用い、JIS K 6911の抵抗率測定法に準じてそれぞれ体積抵抗率を測定し、カーボンブラック量及びカーボンブラック種の変化が体積抵抗率の値に与える影響について評価した。
【0061】
表1、表2より以下の事が判る。よう素吸着量が20mg/g、DBP吸油量が124cm3/gの特性を有するカーボンブラックを配合し、配合割合が約32.8%より少ない試験片は、本発明における体積抵抗値1010Ωcm以上を満足している。一方、カーボンブラック配合割合が35.5%のものは体積抵抗値が低い(比較例(11))。
【0062】
一方、よう素吸着量が24mg/g、DBP吸油量が152cm3/gの特性を有するカーボンブラックを配合し、配合割合が約25.7%の試験片は、カーボンブラック配合割合が少ないにもかかわらず、体積抵抗値が低く本発明の範囲を満たしていない。(比較例(12))
【0063】
常態物性の影響を見てみると、表2より以下の事が判る。
カーボンブラック配合割合が25.7%、白色充填剤配合割合が19.3%の実施例(1) (2) (3) (5)と、カーボンブラック配合割合が約35.5%、白色充填剤の配合割合が5.0%の比較例(11)の引張り強さを比べてみると、カーボンブラック配合割合の少ない分を、白色充填剤の増量で補完しているのが判る。実施例(9)も同様である。
【0064】
よって上記実施例から、体積抵抗率が1010Ωcm以上で、ホースから溶出するイオン等の電解質成分が少ない冷却液輸送ホースを提供できることが確認できた。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】
従来に比して電流が格段に流れにくい水系液体接触ゴム部品とすることができる。また、水系液体接触ゴム部品は水系液体が接触していても、水系液体の比導電率を常に低い状態に維持できるため、水系液体接触ゴム部品自身の劣化防止が可能で、さらにはシステム系統の不具合の発生も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水系液体接触ゴム部品の一実施形態である燃料電池自動車用の冷却液輸送ホースの部分断面図である。
【符号の説明】
11:冷却液輸送用ホース
12:内管層
13:外管層
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系液体との接触部位に適用できるゴム加硫物を使用したゴム部品に関する。以下、本明細書においては、水系液体接触ゴム部品として燃料電池電気自動車の冷却液輸送ホースを例に採り説明を行うが、本発明は、ダイヤフラム、パッキン、その他の各種水系液体接触ゴム部品にも適用可能である。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品として使用される冷却液輸送ホースは、水系液体である冷却液が内部を流通する構造とされているため、少なくとも冷却液との接触部位(内層)が耐水性の高い材料で形成されている。現在は、EPDM等のエチレン−αオレフィン系共重合体を主体とするゴム組成物を加硫して得られるゴム加硫物が汎用されている。
【0003】
ゴム加硫物には、通常、補強用充填剤であるカーボンブラックが多く含有されるが、カーボンブラックは導電性充填剤であるため、材料の導電性を上昇させてしまうという問題がある。導電性が高い冷却液輸送ホースは電流が流れやすく、電気系統部材を多く使用する自動車内に組み付けした場合、迷走電流(漏電)が発生する。この迷走電流は、ホースと冷却液中の化合物の電気化学的反応を起こし、ホース自身を劣化させることがわかっている。
【0004】
上記迷走電流の発生を防止するため、体積抵抗率が104Ωcm以上の特性を有する導電性の低いゴム加硫物を使用した冷却液輸送ホースが提案されている。体積抵抗率が104Ωcm以上なら耐電気劣化性に優れ、冷却液輸送ホースの電気劣化は起こらないとされているからである。
【0005】
従来技術としては、よう素吸着量10〜30mg/g、DBP吸油量110cm3/100g以上のカーボンブラック30〜35質量%含有する加硫ゴム(体積抵抗率:104Ωcm以上)で形成した冷却液輸送ホースがある(特許文献1参照)。
また、よう素吸着量10〜30mg/g、DBP吸油量110cm3/100g以上のカーボンブラックを36〜41質量%含有し、ZnO無配合の過酸化物加硫系ゴム(体積抵抗率:104Ωcm以上)で形成した冷却液輸送ホースがある(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−317956号公報
【特許文献2】
特開平10−19173号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年、注目・研究されつつある燃料電池電気自動車は、従来のガソリン車と比較して格段に電気が流れ易く、迷走電流(漏電)が発生しやすい環境にある。そのため、従来の冷却液輸送ホース(体積抵抗率104Ωcm以上のホース)を燃料電池電気自動車に適用すると、迷走電流によりホースと冷却液中の化合物が電気化学的反応を起こし、ホース自身に亀裂等が発生するという問題があった。
【0008】
また、上記従来の冷却液輸送ホースでは、ホースを構成するゴム加硫物の内に存在する電解質成分(イオン等)が冷却液中に徐々に溶出するため、冷却液の導電性が徐々に上昇することがわかっている。そのため、冷却液に電気が流れ易くなり、ホース内面の電気劣化を促進したり、燃料電池システムの制御に不具合を生じたりという問題もあった。
【0009】
本発明は上記にかんがみて、部品自体に電流が流れにくく、接触する水系液体の導電率を上昇させないゴム部品を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究・開発に努力する過程で、下記構成の水系液体接触ゴム部品に想到した。
【0011】
本発明は、水系液体との接触部位を有するゴム部品において、
前記ゴム部品が、少なくとも水系液体との接触部位の体積抵抗値が1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成されており、
前記ゴム加硫物は、前記ゴム加硫物を比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が50μS/cm以下となることを特徴とする。
【0012】
体積抵抗率が約1010Ωcm以上のゴム加硫物を使用して水系液体接触ゴム部品を製造することで、従来に比して電流が格段に流れにくい水系液体接触ゴム部品とすることができる。また、上記水系液体接触ゴム部品は水系液体が接触していても、当該水系液体の比導電率を常に低い状態に維持可能であるため、水系液体接触ゴム部品自身の劣化の防止が可能で、さらにはシステム系統の不具合の発生も防止できる。
【0013】
そして、上記本発明の水系液体接触ゴム部品の好ましい態様は下記構成のものとなる。
【0014】
水系液体との接触部位を有するゴム部品において、
前記ゴム部品が、少なくとも水系液体との接触部位の体積抵抗率が1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成されており、
前記ゴム加硫物が、エチレン−αオレフィン系共重合体を原料ゴムとするゴム配合物に二次加硫を施した加硫物であり、
カーボンブラックの配合割合が22〜33質量%であり、前記カーボンブラックの、よう素吸着量が約10〜30mg/g、DBP吸油量が110〜140cm3/100gであることを特徴とする。
【0015】
上記構成とすることにより、従来品に比して格段に電流が流れにくく、接触液体への電解質成分の溶出が少ない水系液体接触ゴム部品を得ることがより確実となる。
【0016】
上記構成において、ゴム配合物の補強性充填剤がカーボンブラックと白色充填剤とからなり、カーボンブラックの配合割合を22〜33質量%、前記白色充填剤の配合割合を20質量%以下とし、さらに白色充填剤を表面処理クレーと表面処理炭酸カルシウムの併用系とすることが望ましい。表面処理クレーで押出し加工性を、表面処理炭酸カルシウムと表面処理クレーでカーボンブラックの配合量を少なくしたことによる引張強さ等の強度の低下を補完するものである。
【0017】
上記構成において、水系液体接触ゴム部品が燃料電池自動車用の冷却液輸送ホースであり、水系液体が冷却液であると、本発明の効果がより顕著となる。すなわち、自動車内における漏電(迷走電流)の発生を防止可能となり、水系液体の比導電率上昇による冷却液輸送ホースの劣化や、燃料電池システムの不具合の発生を従来に比して抑制できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の水系液体接触ゴム部品及び当該水系液体接触ゴム部品を製造するためのゴム配合物に関して詳細な説明を行う。なお、本明細書において配合量を示す「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0019】
図1に、本発明の水系液体接触ゴム部品の一実施形態である燃料電池自動車用の冷却液輸送ホース11の部分断面図を示す。
【0020】
図1における冷却液輸送用ホース11は、冷却液(水系液体)との接触部位である内管層12と、当該内管層12の外周面に直接的に形成される外管層13とを有している。また、内管層12と外管層13との間には、通常、補強層14が形成されている。
【0021】
当該冷却液輸送用ホース11は、燃料電池自動車において、その燃料電池とラジエーターとを接続するホースとして用いられ、内管層12の内側である内部空間15に冷却液が流通する構成とされている。
【0022】
上記冷却液は、水を主成分とする水系液体であり、通常、水にエチレングリコール及び防錆剤等を混合した冷却液(ロング・ライフ・クーラント=LLC)が使用される。その冷却液の比導電率(25℃で測定)は約2μS/cm前後である。当該冷却液の比導電率を低く抑えてあるのは、冷却液に電気が流れてホース内面の電気劣化を促進したり、燃料電池システムの制御に不具合を生じたりという問題を起こさないためである。なお、参考までに水道水の比導電率(25℃で測定)は、約70〜90μS/cm、イオン交換水の比導電率(25℃で測定)は1μS/cm以下とされている。よって、水道水は脱イオン化して使用することが必要である。
【0023】そして、上記冷却液輸送用ホース11の内管層12及び外管層13は、体積抵抗率(体積固有抵抗率:JIS K 6911)が約1010Ωcm以上、望ましくは約1012Ωcm以上、さらに望ましくは約1013Ωcm以上のゴム加硫物で形成する。体積抵抗率が約1010Ωcm以上のゴム加硫物を使用して内管層12及び外管層13を製造することで、従来に比して電流が格段に流れにくい冷却液輸送用ホースとすることができる。
【0024】
また、上記内管層12を形成するゴム加硫物は、該ゴム加硫物からなる試験片(20mm×20mm×2mmt)を、比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が約50μS/cm以下となるものとする。
【0025】
上記ゴム加硫物で内管層12を形成することにより、冷却液が接触していても、当該冷却液の比導電率を常に低い状態(即ち、約50μS/cm以下)に維持可能である。このようなゴム加硫物は、一次加硫後に二次加硫を施すことにより得られる。尚、加硫系としては、イオウ加硫系、過酸化物加硫系のどちらでもよいが、イオウ加硫系ゴム配合物の方が成形性、コストの点から適している。
二次加硫条件としては150℃×1時間以上の熱履歴、より望ましく150℃×2時間以上の熱履歴を施すのがよい。(温度と時間の組合わせとしては、アレニウス型温度則[10度半減則]基づく熱履歴を施せばよい)
この二次加硫を施すことにより、一次加硫によって生じた残存加硫剤の分解生成物を除去できる。これによりホース内面の電気劣化の防止、及び燃料電池システム系統の不具合防止ができる。
【0026】
なお、前記補強層14は、例えば糸状体を内管層12の外周面に対してブレード編み又はスパイラル編み等することにより形成する。糸状体としては、補強層を有する通常のホースにおいて用いられる糸状体、例えばポリアミド繊維、セルロース再生繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等を使用することができる。なお、この補強層14は、内管層12の内部を冷却液が流通する際に生じる圧力によって、ホース11が放射方向に膨張することを抑制するものである。
【0027】
ここで内管層12を形成するゴム加硫物は、エチレン−αオレフィン系共重合体(EOR)を全部又は主体とする原料ゴムのイオウ加硫系ゴム配合物、あるいは過酸化物加硫系ゴム配合物である。
【0028】
ここで、EORを原料ゴムとするのは、実質的に主鎖に不飽和結合を有せず耐候性が良好なためである。
【0029】
上記EORとしては、エチレン成分とプロピレン成分との二成分共重合体であるEPMや、さらに1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボーネン等のジエン化合物を第三成分とするEPDMが汎用されている。なお、αオレフィンが1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の他のαオレフィンを単独で又はプロピレンとともにエチレンと共重合させたものも使用可能である。
【0030】
なお、原料ゴムにおいてEORと組み合わせる他の原料ゴム(ポリマー成分)としては、例えば10質量%以下の天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム共重合体(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ポリスルフィドゴム(T)、水素添加ニトリルゴム(H−NBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO、GCO、ECO、GECO)、ふっ素ゴム(FKM)等のゴムを挙げることができる。
【0031】
上記イオウ加硫系の加硫剤としては、粉末イオウ、有機加硫剤等の汎用の物が使用できる。
【0032】
上記過酸化物系の加硫剤としては、ジクミルパーオキサイド(DCP)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(3M)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(25B)、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が使用できる。
【0033】
なお、過酸化物加硫剤の架橋助剤として、硫黄、トリアリルイソシアヌレート等を配合してもよい。硫黄を配合すると、引裂強さ、伸び等の物性を改善することができる。
【0034】
ゴム配合物における補強性充填剤はカーボンブラックを使用し、望ましくは白色充填剤との併用系とする。
【0035】
カーボンブラック以外の補強性充填剤である白色充填剤(導電性がカーボンブラックに比して格段に低い。)を配合するのは、相対的にカーボンブラックの配合比率を低下させてゴム加硫物の体積抵抗率を増大しやすくするとともに、配向性充填剤を配合することによりカーボンブラックの配合比率の低下に伴う混練加工性及び成形加工性(特に押出し加工性)さらには引張強さ等の強度を確保するためである。
【0036】
ここで、カーボンブラックとしては、よう素吸着量が約10〜30mg/g(望ましくは約18〜22mg/g)、DBP吸油量が約110〜140cm3/100g(望ましくは約120〜130cm3/100g)の特性を有するものを使用する。なお、よう素吸着量及びDBP吸油量は、JIS K 6217に示される、ゴム用カーボンブラックの基本性能を表す指標である。
【0037】
カーボンブラックの、よう素吸着量が過小では粒子径が大きく、ゴム加硫物の引張強さが小さい。逆に過大では粒子径が小さく、ゴム配合物の混練り・押出し加工性に問題が発生し易い。
【0038】
DBP吸収量が過小では引張強さが小さく、逆にDBP吸収量が過大ではゴム加硫物の体積抵抗率が小さくなる。
【0039】
そして、カーボンブラックの配合割合を約22〜33%(望ましくは23〜29%)とするとともに、前記白色充填剤の配合割合を22%以下(望ましくは20〜12%)となるように調節する。
【0040】
カーボンブラックの配合割合が過小では引張強さが小さく、逆に過大ではゴム加硫物の体積抵抗率が小さくなる。
白色充填剤の配合割合が過小ではゴム加硫物の加工性が低下し、逆に過大では引張強さが小さくなる。
【0041】
上記白色充填剤としては、表面処理クレー(シラン処理クレー)、表面処理炭酸カルシウム(極微細活性化炭酸カルシウム)、合成けい酸(ホワイトカーボン)、けい酸アルミニウム(ハードクレー、焼成クレー、)、微粉タルク、セリサイト等を使用できる。これらのうちで、練り加工性と補強性を考慮した場合に下記組み合わせとすることが望ましい。なお、ホワイトカーボンは押出し加工性に若干劣る。
【0042】
補強性が高いが混練り性に若干劣るシラン処理クレーと混練り性が良好で補強性もある程度有する表面処理炭酸カルシウム(脂肪酸処理等)を併用することが望ましい。両者の配合比は、前者/後者=1/1.5〜1.5/1(望ましくは1/1.2〜1.2/1)とする。
【0043】
プロセスオイル(軟化剤)としては、原料ゴムがEORを全部または主体とするため、通常パラフィン系を使用する。
【0044】
本ゴム配合物には上記配合剤のほかに、加工助剤としてステアリン酸、長期耐熱性のために活性亜鉛華を適宜配合する。
【0045】
上記ゴム配合物を用いて冷却液輸送ホースを押出して加硫することにより、後述の実施例/比較例で示す如く、従来品に比して格段に電流が流れにくく、接触液体への電解質成分の溶出が少ない冷却液輸送ホースを得ることが可能となる。
【0046】
以上、図1における実施形態の冷却液輸送用ホースを例に採り説明を行ったが、本発明の水系液体接触ゴム部品は、図示の冷却液輸送用ホースに限定されるものではない。例えばホース11は必ずしも三層構造を有する必要はなく、例えば単層、二層、四層…等であってもよい。また、補強層は必須要件ではない。
【0047】
さらに、本発明の水系液体接触ゴム部品は、冷却液用のリザーバータンク等の水系液体との接触部位を有するパッキン等の水系液体接触ゴム部品であれば適応可能である。
【0048】
なお、本発明の発明性に影響を与えるものではないが、本発明の関連技術として下記に関連公報を列挙する。
【0049】
▲1▼特開平3−194281号:耐熱ウォーターホース
▲2▼特開平6−262728号:車両用冷却輸送ホース
▲3▼特開平11−315967号:水系媒体輸送ホース
▲4▼特開平11−12408号:ラジエーターホース
▲5▼特開2001−106848:ゴム配合物及びホース
【0050】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例について、比較例とともに詳細に説明を行う。
【0051】
本実施例/比較例において使用した薬品及び商品名を以下に列挙する。
【0052】
カーボンブラック
▲1▼カーボンブラック1:
(よう素吸着量:20mg/g、DBP吸油量:124cm3/100g)
▲2▼カーボンブラック2:
(よう素吸着量:24mg/g、DBP吸油量:152cm3/100g)
加硫剤
▲1▼粉末イオウ
▲2▼有機加硫剤
▲3▼過酸化物加硫剤:ジクミルパーオキサイド(40%濃度)
加硫促進剤
▲1▼チアゾール系
▲2▼ジチオカルバミン酸塩系
【0053】
表1に示す配合で、各実施例、比較例のゴム配合物を調製し、加硫条件:一次加硫 150℃×30分、二次加硫 150℃×2H、4H、6Hで試験片を作成した。
【0054】
抽出液比導電率の測定
20×20×2mmtサイズの加硫物10枚を試験片(10g)とした。
【0055】
上記試験片を、エチレングリコールを主成分とした冷却液/イオン交換水=1/1の水系液体100mL(試験片10gに対する水系液体100mLの割合を10倍量と定義する)に80℃×168時間浸漬後、試験片を取り出し、浸漬後の冷却液の比導電率を80℃にて測定した。
【0056】
なお、比導電率は、電気化学器株式会社「導電率計 HEC−110型」を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0057】
表2より以下の事が判る。二次加硫を行った場合は比導電率が32μS/cm以下であり、二次加硫を行わなかった場合は84μS/cm以上になる。二次加硫時間が長いほど比導電率は低くなる傾向にある。さらに、過酸化物加硫系の方が、イオウ加硫系より比導電率が低くなる。なお、過酸化物加硫系の場合は、二次加硫を行わなくても比導電率は低い(実施例(10))
【0058】
上記結果より、二次加硫を行う事により、比導電率を大幅に低下させることが可能である。すなわち試験片から溶出するイオン等の電解質成分を少なくすることができる。よって、冷却液中での比導電率が従来のように上昇することがなく、ホースの電気劣化が防止され、かつ燃料電池システムに不具合が起こらないことが推測できる。
【0059】
体積抵抗率(JIS K 6911)の測定
表1に示す配合内容で各ゴム配合物を調製し、各ゴム配合物から試験片(2mmtシート状)を切り出し、加硫を行った。
一時加硫はプレス加硫で行ない(加硫条件:150℃×30分)、二次加硫は恒温槽内(温度:150℃)に所定時間放置した。
【0060】
上記各試験片を用い、JIS K 6911の抵抗率測定法に準じてそれぞれ体積抵抗率を測定し、カーボンブラック量及びカーボンブラック種の変化が体積抵抗率の値に与える影響について評価した。
【0061】
表1、表2より以下の事が判る。よう素吸着量が20mg/g、DBP吸油量が124cm3/gの特性を有するカーボンブラックを配合し、配合割合が約32.8%より少ない試験片は、本発明における体積抵抗値1010Ωcm以上を満足している。一方、カーボンブラック配合割合が35.5%のものは体積抵抗値が低い(比較例(11))。
【0062】
一方、よう素吸着量が24mg/g、DBP吸油量が152cm3/gの特性を有するカーボンブラックを配合し、配合割合が約25.7%の試験片は、カーボンブラック配合割合が少ないにもかかわらず、体積抵抗値が低く本発明の範囲を満たしていない。(比較例(12))
【0063】
常態物性の影響を見てみると、表2より以下の事が判る。
カーボンブラック配合割合が25.7%、白色充填剤配合割合が19.3%の実施例(1) (2) (3) (5)と、カーボンブラック配合割合が約35.5%、白色充填剤の配合割合が5.0%の比較例(11)の引張り強さを比べてみると、カーボンブラック配合割合の少ない分を、白色充填剤の増量で補完しているのが判る。実施例(9)も同様である。
【0064】
よって上記実施例から、体積抵抗率が1010Ωcm以上で、ホースから溶出するイオン等の電解質成分が少ない冷却液輸送ホースを提供できることが確認できた。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】
従来に比して電流が格段に流れにくい水系液体接触ゴム部品とすることができる。また、水系液体接触ゴム部品は水系液体が接触していても、水系液体の比導電率を常に低い状態に維持できるため、水系液体接触ゴム部品自身の劣化防止が可能で、さらにはシステム系統の不具合の発生も防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水系液体接触ゴム部品の一実施形態である燃料電池自動車用の冷却液輸送ホースの部分断面図である。
【符号の説明】
11:冷却液輸送用ホース
12:内管層
13:外管層
Claims (5)
- 水系液体との接触部位を有するゴム部品において、
前記ゴム部品が、少なくとも水系液体との接触部位の体積抵抗値が1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成されており、
前記ゴム加硫物は、前記ゴム加硫物を比導電率(25℃で測定)が3μS/cm以下の10倍量の水系液体に80℃×168時間浸漬した場合、水系液体の比導電率(80℃で測定)が50μS/cm以下となることを特徴とする水系液体接触ゴム部品。 - 水系液体との接触部位を有するゴム部品において、
前記ゴム部品が、少なくとも水系液体との接触部位の体積抵抗率が1010Ωcm以上のゴム加硫物で形成されており、
前記ゴム加硫物が、エチレン−αオレフィン系共重合体を原料ゴムとするゴム配合物に二次加硫を施した加硫物であり、
カーボンブラックの配合割合が22〜33質量%であり、前記カーボンブラックの、よう素吸着量が約10〜30mg/g、DBP吸油量が110〜140cm3/100gであることを特徴とする水系液体接触ゴム部品。 - 前記ゴム配合物の補強性充填剤が前記カーボンブラックと白色充填剤とからなり、
前記カーボンブラックの配合割合が22〜33質量%、前記白色充填剤の配合割合が22質量%以下であることを特徴とする請求項2記載の水系液体接触ゴム部品。 - 前記白色充填剤を表面処理クレーと表面処理炭酸カルシウムの併用系とすることを特徴とする請求項3記載の水系液体接触ゴム部品。
- 前記ゴム部品が燃料電池自動車用の冷却液輸送ホースであり、前記水系液体が水とエチレングリコールの混合物であることを特徴とする請求項1〜請求項4記載の水系液体接触ゴム部品。
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JP2005149997A (ja) * | 2003-11-19 | 2005-06-09 | Teito Rubber Ltd | 燃料電池のホース用熱可塑性エラストマー組成物および燃料電池用ホース |
JP2006032106A (ja) * | 2004-07-15 | 2006-02-02 | Tokai Rubber Ind Ltd | 燃料電池用ホース |
JP2014228043A (ja) * | 2013-05-21 | 2014-12-08 | 株式会社ブリヂストン | ホース用ゴム組成物及びホース |
-
2002
- 2002-10-21 JP JP2002305629A patent/JP2004137424A/ja not_active Withdrawn
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