JP2004136522A - 中空成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】MFRが0.01〜1g/10分、密度が0.910〜0.940g/cm3、オルゼン曲げ剛性が200〜600MPaのエチレン系重合体(A)からなる最外層とMFRが0.01〜1g/10分、密度が0.940g/cm3を超え0.960g/cm3以下、オルゼン曲げ剛性が600MPaを超え1300MPa以下のエチレン系重合体(B)からなる最内層、バリア層、接着層及びバリ回収層とからなる中空成形品であって、層構成比が最外層10〜30%、最内層30〜50%、バリア層1〜15%、接着層1〜15%、及びバリ回収層30〜50%(ただし、全ての層構成比の合計が100%である。)であることを特徴とする中空成形品。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレン系重合体を用いた中空成形品に関し、さらに詳しくは、バリア層を有する5種6層の積層体からなる中空成形において剛性、耐久性、衝撃性及びガスバリア性に優れた中空成形品である燃料容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車工業分野では、軽量化、省エネルギー化といった目的で各種自動車部品のプラスチック化が活発に押し進められている。プラスチック材料としては、安価、高強度、良耐候性、良薬品性および環境問題といった観点からポリオレフィン樹脂が一般に用いられている。
ポリオレフィン樹脂の中でも、特にポリエチレンは、中空成形用樹脂として好適な樹脂であり、ブロー成形製品向けに、一般に比較的分子量分布が広く、溶融張力が大きく、均一延伸性が良好であり、多用されている。
【0003】
この様な用途に最適な材料として、例えば、成形加工性や耐環境応力亀裂性(以下ESCRという)に優れたエチレン共重合体(例えば、特許文献1参照。)などが提案されている。しかしながら、これらのエチレン共重合体である高密度ポリエチレン等を単独で用いた場合は、剛性は優れるもののESCR性や耐衝撃性といった面で不十分な状況にある。また、座屈強度、ESCR性、光沢、耐衝撃性等に優れた2種以上のポリエチレン系樹脂を最外層と最内層に用いて積層された多層プラスチック容器が開発されてきている(例えば、特許文献2参照。)が、リサイクル性等の環境破壊問題への対応や、バリア性を必要とする燃料容器等においては、未解決の課題が多く残されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平2−53811号公報
【特許文献2】
特開平7−256840号公報
特開平8−91341号公報
特開平9−165476号公報
特開2002−205724号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる用途においてESCR性、耐衝撃性および剛性のバランスに優れ、かつバリア性に優れた中空成形品、特に燃料容器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、最外層と最内層を構成する樹脂として、密度及び剛性の異なる2種類のエチレン系樹脂を用い、最外層、最内層、バリア層、接着層及びバリ回収層の層構成比を特定にすることにより、バリ回収層を設けてもESCR性に優れ、かつ耐衝撃性に優れ、剛性とのバランスが良く、ガスバリア性に優れる中空成形品が得られることを見出し本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記エチレン系重合体(A)からなる最外層、エチレン系重合体(B)からなる最内層、バリア層、接着層及びバリ回収層とからなる中空成形品であって、層構成比が最外層10〜30%、最内層30〜50%、バリア層1〜15%、接着層1〜15%、及びバリ回収層30〜50%(ただし、全ての層構成比の合計が100%である。)であることを特徴とする中空成形品が提供される。
エチレン系重合体(A):下記物性(A1)〜(A3)の特徴を有する、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなり、α−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
物性(A1)MFRが0.01〜1g/10分
物性(A2)密度が0.910〜0.940g/cm3
物性(A3)オルゼン曲げ剛性が200〜600MPa
エチレン系重合体(B):下記物性(B1)〜(B3)の特徴を有する、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなり、α−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
物性(B1)MFRが0.01〜1g/10分
物性(B2)密度が0.940g/cm3を超え0.960g/cm3以下
物性(B3)オルゼン曲げ剛性が600MPaを超え1300MPa以下
(ただし、MFRはJIS−K7210(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値であり、密度はJIS−K7112に準拠して測定する値であり、オルゼン曲げ剛性はJIS−K7106準拠して測定する値である。)
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、バリア層を接着層で挟み、最外層と接着層の間にバリ回収層を設けた5種6層の中空成形品であることを特徴とする中空成形品が提供される。
【0009】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、バリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂からなることを特徴とする中空成形品が提供される。
【0010】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、接着層が、直鎖状低密度ポリエチレンを不飽和カルボン酸またはその誘導体の含有量0.01〜1重量%でグラフト変性したものであることを特徴とする中空成形品が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明における中空成形品から構成される燃料タンクが提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の中空成形品は、最外層、最内層、バリア層、接着層及びバリ回収層とからなる積層中空成形品である。以下に各層の構成、層構成比について詳細に説明する。
【0013】
I.中空成形品の層構成
1.最外層
本発明の中空成形品の最外層は、下記物性(A1)〜(A3)の物性を有するエチレン系重合体(A)からなる。
エチレン系重合体(A)は、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体で、α−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体である。
ここで、エチレン単独重合体とは、モノマー原料としてエチレンのみを反応器に供給することによって製造された重合体をいう。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であるエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、炭素数が3〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜10のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ペンテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等が挙げられ、特に、ブテン−1、ヘキセン−1が好ましい。これらα−オレフィンは、1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。更に、ビニルシクロヘキサンあるいはスチレンおよびその誘導体などのビニル化合物も使用することができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィンの含有量は、10重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。α−オレフィンの含有量がこれより多くなると、エチレン・α−オレフィン共重合体の剛性が低下するなどして好ましくない。
【0014】
物性(A1)MFR
エチレン系重合体(A)のMFRは、0.01〜1g/10分、好ましくは0.01〜0.8g/10分、より好ましくは0.01〜0.5g/10分である。
MFRが0.01g/10分未満であると、パリソンの押出成形時に押出量が不足し、成形不安定な状態となり実用的でなく、1g/10分を超えるとパリソンの押出成形時に中空体を形成するための溶融パリソン形成が溶融粘度及び溶融張力の不足のため不安定となり実用的でない。
MFRは、エチレン系重合体の重合触媒の種類や重合時における重合温度や水素濃度の制御などの方法で調製することができる。
ここで、MFRは、JIS−K7210に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定したものである。
【0015】
物性(A2)密度
エチレン系重合体(A)の密度は、0.910〜0.940g/cm3、好ましくは0.915〜0.935g/cm3、より好ましくは0.920〜0.930g/cm3である。
密度が0.910g/cm3未満であると、中空成形製品の剛性が不足し、0.940g/cm3を超えると中空成形品のESCRなどの耐久性が不足する。
密度は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調製することができる。
ここで、密度は、JIS−K7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/minの速度で降温し厚み2mmtのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ密度を測定するものである。
【0016】
物性(A3)オルゼン曲げ剛性
エチレン系重合体(A)のオルゼン曲げ剛性は、200〜600MPa、好ましくは200〜500MPa、より好ましくは200〜400MPaである。
オルゼン曲げ剛性が200MPa未満であると、中空成形品の剛性が不足し、600MPaを超えると中空成形製品の衝撃性能が不足する。
オルゼン曲げ剛性は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調製することができる。
ここで、オルゼン曲げ剛性は、JIS−K7106に準拠し、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60deg/minで片持ち曲げ応力を測定するものである。
【0017】
このような条件を満たすエチレン系重合体(A)としては、高・中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高圧ラジカル重合による低密度ポリエチレン、などから選択することができ、特に、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
低密度ポリエチレンとして、例えば、日本ポリケム社製ノバテックLD「LF122」、「LF240」などが挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンとして、例えば、日本ポリケム社製ノバテックLL「UE320」、「UR951」並びにノバテックC6「SH510」、「SH520」などが挙げられる。
【0018】
2.最内層
本発明の中空成形品の最内層は、下記物性(B1)〜(B3)の物性を有するエチレン系重合体(B)からなる。
エチレン系重合体(B)は、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体で、α−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体である。
ここで、エチレン単独重合体とは、モノマー原料としてエチレンのみを反応器に供給することによって製造された重合体をいう。また、エチレンとα−オレフィンとの共重合体であるエチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンは、炭素数が3〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜10のα−オレフィンであり、具体的には、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、3−メチルペンテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ペンテン−1、デセン−1、テトラデセン−1、ヘキサデセン−1、オクタデセン−1、エイコセン−1等が挙げられ、特に、ブテン−1、ヘキセン−1が好ましい。これらα−オレフィンは、1種のみでもよく、また2種以上が併用されていてもよい。更に、ビニルシクロヘキサンあるいはスチレンおよびその誘導体などのビニル化合物も使用することができる。
エチレン・α−オレフィン共重合体中におけるα−オレフィンの含有量は、10重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。α−オレフィンの含有量がこれより多くなると、エチレン・α−オレフィン共重合体の剛性が低下するなどして好ましくない。
【0019】
物性(B1)MFR
エチレン系重合体(B)のMFRは、0.01〜1g/10分、好ましくは0.01〜0.8g/10分、より好ましくは0.01〜0.5g/10分である。
MFRが0.01g/10分未満であると、パリソンの押出成形時に押出量が不足し、成形不安定な状態となりブロー成形が困難となり、1g/10分を超えると押出成形時に中空体を形成するための溶融パリソン形成が溶融粘度及び溶融張力の不足のため不安定となり、ブロー成形性が劣り、大型中空成形品を成形し難くなる。中空成形品の衝撃特性が低下する傾向があり実用的でない。
MFRは、エチレン系重合体の重合触媒の種類や重合時における重合温度や水素濃度の制御などの方法で調製することができる。
ここで、MFRは、JIS−K7210に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定したものである。
【0020】
物性(B2)密度
エチレン系重合体(B)の密度は、0.940g/cm3を超え0.960g/cm3以下、好ましくは0.942〜0.958g/cm3、より好ましくは0.945〜0.955g/cm3である。
密度が0.940g/cm3以下であると、中空成形製品の剛性が不足し、さらにガスバリア性やガソリン透過性が低下する傾向があり、0.960g/cm3を超えると中空成形製品の衝撃性能が不足する。
密度は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調製することができる。
ここで、密度は、JIS−K7112に準拠し、ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/minの速度で降温し厚み2mmtのシートを成形し、このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ密度を測定するものである。
【0021】
物性(B3)オルゼン曲げ剛性
エチレン系重合体(B)のオルゼン曲げ剛性は、600MPaを超え1300MPa以下、好ましくは700〜1200MPa、より好ましくは800〜1100MPa、さらに好ましくは900〜1000MPaである。
オルゼン曲げ剛性が600MPa以下であると、中空成形製品の剛性が不足し、1300MPaを超えると中空成形製品の衝撃性能が不足する。
オルゼン曲げ剛性は、エチレン系重合体の重合触媒の種類やα−オレフィンの種類や含有量の制御などの方法で調製することができる。
ここで、オルゼン曲げ剛性は、JIS−K7106に準拠し、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60deg/minで片持ち曲げ応力を測定するものである。
【0022】
このような条件を満たすエチレン系重合体(B)としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、から選択することができ、特に高密度ポリエチレンが好ましい。
具体的には、高密度ポリエチレンとして、日本ポリケム社製ノバテックHD「HB420R」、「HB410R」、「HB321R」、「HB220R」、「HB214R」、「HB214RW」、「HB120R」などが挙げられる。
【0023】
本発明のエチレン系重合体(A)又は(B)の製造法は、前記物性(A1)〜(A3)の条件、又は物性(B1)〜(B3)の条件が満足されれば特に限定されるものではなく、チーグラー系触媒、フィリップス系触媒、メタロセン系触媒等の触媒の存在下、気相重合法、スラリー重合法、溶液重合等で製造される。重合条件は特に限定されない。また、重合温度は通常15〜350℃、好ましくは20〜200℃、さらに好ましくは50〜120℃であり、重合圧力は低・中圧の場合は、通常、常圧〜70KgG/cm2、好ましくは常圧〜50KgG/cm2であり、高圧法の場合は通常1500kg/cm2G以下が望ましい。重合法は特に限定されるものではなく、一段重合はもちろん、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度、触媒等の重合条件が互いに異なる2段以上の多段重合法により調製することができる。また、多成分をブレンドして調製することもできる。
【0024】
本発明では、目的を損なわない範囲で、エチレン系重合体(A)又は(B)に、必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、有機あるいは無機系顔料、充填剤、紫外線防止剤、分散剤、耐候剤、架橋剤、発泡剤、難燃剤などの公知の添加剤を添加することができる。さらに、他のポリオレフイン系樹脂を1〜70重量%まで配合してもよい。
【0025】
3.バリア層
本発明の中空成形品を構成するバリア層は、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等から選ばれるものであるが、特に、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂からなることが好ましい。
エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂は、鹸化度が93%以上、望ましくは96%以上でエチレン含量が25〜50モル%であることがより好ましい。
【0026】
4.接着層
本発明の中空成形品を構成する接着層は、不飽和カルボン酸またはその誘導体によりグラフト変性したエチレン系樹脂である。エチレン系樹脂は、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂等から選ばれるものであるが、特に直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。
不飽和カルボン酸またはその誘導体によりグラフト変性したエチレン系樹脂は、好ましくは不飽和カルボン酸またはその誘導体の含有量0.01〜1重量%、より好ましくは0.05〜0.8重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。グラフト変性量が、0.01重量%未満であると十分な接着性能が発現せず、1重量%を超えると接着性に寄与しない不飽和カルボン酸が過剰となり、接着性に悪影響を与える。
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、ナジック酸、無水ナジック酸等を挙げることができる。また、グラフト変性方法は、不飽和カルボン酸またはその誘導体を有機過酸化物の存在下にエチレン系樹脂にグラフトさせる公知の方法により行うことができる。
【0027】
5.バリ回収層
本発明の中空成形品を構成するバリ回収層は、本発明のエチレン系重合体からなる中空成形品をブロー成形する過程で発生したバリを回収したエチレン系樹脂組成物からなるものであり、中空成形品の層構成比からその主成分は、エチレン系重合体(B)がその主成分となる。
なお、ブロー成形開始時などにおいて、バリ回収したエチレン系樹脂組成物が得られない場合においては、エチレン系重合体(B)を代用することが好ましい。
【0028】
6.中空成形品の層構成
本発明の中空成形品における最外層、最内層、バリア層、接着層及びバリ回収層の構成比は、厚さ構成において全ての層構成の合計を100%として、最外層10〜30%、最内層30〜50%、バリア層1〜15%、接着層1〜15%、及びバリ回収層30〜50%である。
詳細には、最外層の層構成比は、10〜30%、好ましくは10〜25%、より好ましくは10〜20%である。最外層の層構成比が10%未満であると、中空成形製品の衝撃性能が不足し、30%を超えると、中空成形製品の剛性が不足する。
最内層の層構成比は、30〜50%、好ましくは35〜50%、より好ましくは40〜50%である。最内層の層構成比が30%未満であると、中空成形製品の剛性が不足し、50%を超えると、中空成形製品の衝撃性能が不足する。
バリア層の層構成比は、1〜15%、好ましくは1〜10%、より好ましくは1〜5%である。バリア層の層構成比が1%未満であると、バリア性能が不足し、15%を超えると、中空成形製品の衝撃性能が不足する。
接着層の層構成比は、1〜15%、好ましくは1〜10%、より好ましくは1〜5%である。接着層の層構成比が1%未満であると、接着性能に不足する傾向があり、15%を超えると、中空成形製品の剛性が不足する傾向がある。
バリ回収層の層構成比は、30〜50%、好ましくは35〜50%、より好ましくは35〜45%である。バリ回収層の層構成比が30%未満であると、中空成形製品の剛性が不足し、50%を超えると、中空成形製品の衝撃性能が不足する。
【0029】
本発明の中空成形品は、好ましくはバリア層を接着層で挟み、最外層と接着層の間にバリ回収層を有する5種6層の中空成形品である。
バリア層を接着層で挟むことにより、ガスバリア性という特徴が発揮される。また、最外層と接着層の間にバリ回収層を有することにより、原材料費の削減及び中空成形製品の剛性の保持という特徴が発揮される。
【0030】
II.中空成形品の製造及び用途
本発明の中空成形品の製造方法は、特に制限されず、従来からの公知の多層中空成形機を用いて押出ブロー成形法により製造することができる。例えば、複数の押出機で各層の構成樹脂を加熱溶融させた後、多層のダイより溶融パリソンを押出し、次いでこのパリソンを金型で挟み、パリソンの内部に空気を吹き込むことにより、多層の中空成形品が製造される。
【0031】
また、本発明の中空成形品の用途としては、洗剤ボトル、飲料用ボトル、食用油ボトル等の食品用容器、灯油缶、ドラム缶、薬品用ボトル、農薬容器等の容器、各種燃料タンク等、およびスポイラー、バンバー等の各種部品、家電製品、OA機器等のハウジングや簡易トイレ、パレット等を構成するパネル状の構造部品等が挙げられる。特に、燃料タンクとして用いられることが最も好ましい。
本発明の中空成形品から構成される燃料タンクは、高耐久性、高衝撃性、ガスバリア性が高いなどの優れた特徴を有する。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた評価方法及び使用樹脂は、以下の通りである。
【0033】
1.物性評価及び品質評価
(1)MFR:JIS−K7210に準拠してMFR計を用い、温度190℃、荷重21.18Nの条件でMFRを測定した。
(2)密度:ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/minの速度で降温し厚み2mmtのシートを成形した。このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、密度勾配管に入れ密度を測定した。
(3)オルゼン曲げ剛性:ペレットを温度160℃の熱圧縮成形機により溶融後25℃/minの速度で降温し厚み2mmtのシートを成形した。このシートを温度23℃の室内で48時間状態調節した後、長さ85mm、幅15mmになるようにダンベル刃型で打ち抜いて試験片とした。次に、東洋精機(株)製のスティフネスメーターにてJIS−K7106に準拠し、スパン間30mm、つかみ部30mm、全曲げモーメントが6kgf・cmの条件で60deg/minで片持ち曲げ応力を測定した。
【0034】
(4)座屈強度:容器を上部から圧縮試験機にて50mm/minの速度で圧縮し、最大圧縮強度を測定し、下記の基準で判定した。
◎:16g以上
○:13g以上16g未満
×:13g未満
(5)低温落下強度:容器に不凍液を満注した容器をマイナス40℃に冷却し、5本の容器をコンクリート面から1mの高さで10回連続垂直落下させ、容器破損率を次の式で算出し、下記の基準で判定した。
破損率(%)=(10回落下までに破損した数/試験数)×100
◎:0%以上10%未満
○:10%以上30%未満
×:30%以上
(6)ボトルESCR:10%濃度の界面活性剤であるイゲパール水溶液を容器定格容量の10%注入したボトルを密封し、ボトル10本を65℃オーブン中に設置した。なお、ボトル試験内圧は、0.4kg/cm2G一定とした。ボトル10本中、5本に割れが発生した時間を測定し、F50hrとして示し、下記の基準で判定した。
◎:500h以上
○:300h以上500h未満
△:200h以上300h未満
×:200h未満
(7)ガソリンバリア性:シナジーレギュラーガソリンを中空成形容器に入れ、40℃で1週間状態調整実施後、ガソリンを入れ替え重量測定を行い、経時的に減少する量を重量測定し、下記の基準で判断した。
◎:0.01g/day未満
×:0.01g/day以上
【0035】
2.使用樹脂
(1)エチレン系重合体(A)
MDPE−1:エチレン・ヘキセン−1共重合体(日本ポリケム(株)製ノバテックHD HB120R);ヘキセン−1含量 6重量%、MFR 0.2g/10分、密度 0.937g/cm3、オルゼン曲げ剛性 600MPa
MDPE−2:エチレン・ヘキセン−1共重合体(日本ポリケム(株)製ノバテックHD SH510);ヘキセン−1含量 6重量%、MFR 0.3g/10分、密度 0.926g/cm3、オルゼン曲げ剛性 300MPa
(2)エチレン系重合体(B)
HDPE−1:エチレン・ヘキセン−1共重合体(日本ポリケム(株)製ノバテックHD HB214RW);ヘキセン−1含量 2重量%、MFR 0.02g/10分、密度 0.948g/cm3、オルゼン曲げ剛性 900MPa
HDPE−2:エチレン単独重合体(日本ポリケム(株)製ノバテックHD HB410R);MFR 0.02g/10分、密度 0.956g/cm3、オルゼン曲げ剛性 1000MPa
HDPE−3:エチレン・ブテン−1共重合体(日本ポリケム(株)製ノバテックHD HB321R);ブテン−1含量 0.6重量%、MFR 0.2g/10分、密度 0.953g/cm3、オルゼン曲げ剛性 950MPa
(3)バリア層樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)((株)クラレ製エバール EP−F101B)
(4)接着層樹脂:マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(MA−LLDPE)(三菱化学(株)製MODIC−AP HA55−5);マレイン酸含有量
0.3重量%
(5)バリ回収層樹脂:
表1に記載する各々の実施例の層構成において、実験開始時のバリ回収層樹脂として最内層を構成する樹脂と同じ樹脂を使用し、4種6層の多層ボトルをブロー成形し、その多層ボトルを粉砕して、各々の層構成ごとにバリ回収樹脂として用いた。
例えば、実施例1におけるバリ回収層樹脂は、下記の構成の多層ボトルを成形し、粉砕して、バリ回収樹脂として用いた。
最外層:MDPE−1(HB120R)(層構成比10%)
バリ回収層:HDPE−1(HB214RW)(層構成比30%)
接着外層:MA−LLDPE(層構成比10%)
バリア層:EVOH(層構成比10%)
接着内層:MA−LLDPE(層構成比10%)
最内層:HDPE−1(HB214RW)(層構成比30%)
【0036】
実施例1〜4、比較例1〜6
下記の押出機スクリューを有する5種6層の小型ダイレクト多層ブロー成形機を使用して、表1に記載の樹脂を用い、下記成形条件で5種6層の中空成形品(容器)を得、得られた中空成形品の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0037】
使用成形機
最外層(外側から1層目)系40mmφ、L/D22
第2層(外側から2層目)系40mmφ、L/D22
第3層(外側から3層目)系20mmφ、L/D20
第4層(外側から4層目)系20mmφ、L/D20
第5層(外側から5層目)系20mmφ、L/D20
最内層(外側から6層目)系40mmφ、L/D22
【0038】
成形条件
成形温度210℃、ブロー金型冷却温度20℃、冷却時間30秒の条件にてボトル重量100g、容量1500ccの多層ボトルを成形した。なお、層比率は、容器の厚み比率を観察しながら押し出し機のスクリュー回転数を調整し最外層が10%、第2層が30%、第3層が10%、第4層が10%、第5層が10%、最内層が30%となるようにした。
【0039】
【表1】
【0040】
表1から明らかなように、バリ回収層を有し、最外層にMDPEを用い、最内層にHDPEを用いた5種6層の多層ボトルは、低温落下強度、座屈強度、ESCRに優れ、ESCR性、耐衝撃性、および剛性のバランスに優れ、且つバリア性に優れていた(実施例1〜4)。一方、最内層に密度が低く、オルゼン曲げ剛性が小さいポリエチレン系樹脂を用いた多層ボトルは座屈強度に劣り(比較例1、2)、最外層に密度が高く、オルゼン曲げ剛性が大きいポリエチレン系樹脂を用いた多層ボトルはESCR、低温落下強度に劣り(比較例3〜5)、バリア層を用いない多層ボトルはガスバリア性に劣った(比較例6)。
【0041】
【発明の効果】
本発明の中空成形品は、バリ回収層を有してもESCR性、耐衝撃性および剛性のバランスに優れ、かつバリア性に優れ、各種中空成形容器に用いることができ、特に燃料タンクとして好適に用いることができる。
Claims (5)
- 下記エチレン系重合体(A)からなる最外層、下記エチレン系重合体(B)からなる最内層、バリア層、接着層及びバリ回収層とからなる中空成形品であって、層構成比が最外層10〜30%、最内層30〜50%、バリア層1〜15%、接着層1〜15%、及びバリ回収層30〜50%(ただし、全ての層構成比の合計が100%である。)であることを特徴とする中空成形品。エチレン系重合体(A):下記物性(A1)〜(A3)の特徴を有する、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなりα−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
物性(A1)MFRが0.01〜1g/10分
物性(A2)密度が0.910〜0.940g/cm3
物性(A3)オルゼン曲げ剛性が200〜600MPa
エチレン系重合体(B):下記物性(B1)〜(B3)の特徴を有する、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとからなりα−オレフィン含有量が10重量%以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
物性(B1)MFRが0.01〜1g/10分
物性(B2)密度が0.940g/cm3を超え0.960g/cm3以下
物性(B3)オルゼン曲げ剛性が600MPaを超え1300MPa以下
(ただし、MFRはJIS−K7210(190℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値であり、密度はJIS−K7112に準拠して測定する値であり、オルゼン曲げ剛性はJIS−K7106準拠して測定する値である。) - バリア層を接着層で挟み、最外層と接着層の間にバリ回収層を設けた5種6層の中空成形品であることを特徴とする請求項1に記載の中空成形品。
- バリア層が、エチレン・ビニルアルコール共重合体樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空成形品。
- 接着層が、直鎖状低密度ポリエチレンを不飽和カルボン酸またはその誘導体の含有量0.01〜1重量%でグラフト変性したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の中空成形品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の中空成形品から構成される燃料タンク。
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