JP2004133121A - 電子写真用感光体の製造方法 - Google Patents

電子写真用感光体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004133121A
JP2004133121A JP2002296323A JP2002296323A JP2004133121A JP 2004133121 A JP2004133121 A JP 2004133121A JP 2002296323 A JP2002296323 A JP 2002296323A JP 2002296323 A JP2002296323 A JP 2002296323A JP 2004133121 A JP2004133121 A JP 2004133121A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
temperature
film
substrate
reaction vessel
annealing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2002296323A
Other languages
English (en)
Inventor
Tetsuya Karaki
唐木 哲也
Kunimasa Kawamura
河村 邦正
Yukihiro Abe
阿部 幸裕
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2002296323A priority Critical patent/JP2004133121A/ja
Publication of JP2004133121A publication Critical patent/JP2004133121A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Photoreceptors In Electrophotography (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

【課題】画像濃度ムラや画像欠陥の少ない電子写真用アモルファスシリコン系感光体ドラムを提供する。
【解決手段】少なくとも減圧可能な反応容器と、前記反応容器内に導電性の基体を収納する手段と、前記反応容器内にガスを導入する手段と、前記反応容器内にプラズマを生成させるための高周波電力を供給する手段と、前記反応容器内から排気配管を介して排気する排気手段を備えた真空処理装置により、該基体上にすくなくとも、シリコンを母体とする非単結晶材料で構成された光導電層と、シリコン原子と炭素原子を少なくとも含有する表面層をこの順に形成した後、アニール処理を施すアモルファスシリコンを母材とする電子写真用感光体の製造方法において、
光導電層形成時の温度をT1(℃)、表面層形成時の温度をT2(℃)、アニール処理時の温度をT3(℃)としたとき、
T1<T3<T2
の関係が満たす。
【選択図】  無し

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマCVD法を用いたa−Si系の電子写真用感光体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体等で使用されているプラズマ処理にはそれぞれの用途に応じて様々な方法がある。例えば、プラズマCVD法を用いた酸化膜、窒化膜及びアモルファスシリコン系の半導体膜等の成膜、またはエッチングによる微細加工技術等、様々にプラズマの特徴を活用した装置、方法が使用されている。特に高周波電力を用いたプラズマプロセスは、放電の安定性や、酸化膜や窒化膜等の誘電性材料にも適用できる等の利点から幅広く使用されている。
【0003】
この方法でシランガス(SiH4)を成膜原料ガスとして形成したアモルファスシリコン(a−Si)膜は、アモルファスシリコンの禁止帯中に存在する欠陥密度が比較的小さく、不純物のドーピングにより価電子制御が可能であり、電子写真用感光体として優れた特性を有するものが得られる。例えば、特公昭60−35059号公報に、水素化アモルファスシリコン(以下a−Si:H)を光導電部に応用した電子写真用光受容部材について開示されている。
【0004】
また、プラズマ処理を実施する際に、処理速度を向上させ、より広い面積に均一に処理を実施することにより、生産性を高める方法が求められている。特開平9−310181号公報には、電極と基体の間にある反応容器の一部を誘電体部材で構成することにより、大面積で均質なプラズマを形成し、大面積な基体へのプラズマ処理を均一且つ高速に行うことを可能とするプラズマ処理装置及び方法が開示されている。
【0005】
図1(a)(b)にプラズマCVD法による電子写真用感光体の製造装置の代表例を示す。図1においては、電子写真用光受容部材作成用のプラズマ処理装置の1例を模式的に示した図である。図1(a)は概略断面図、図1(b)は図1(a)の切断線A−A’に沿う概略断面図である。
【0006】
プラズマ処理装置101には排気配管102(b)が一体的に形成され、排気配管102(b)の他端は不図示の排気装置に接続されている。プラズマ処理装置101には高周波電力を導入するための電極103が設置され、高周波電源104より出力された高周波電力は、マッチングボックス105を経て、電極103よりプラズマ処理空間106内に供給される。
【0007】
107は少なくとも一部が誘電体部材で構成された反応容器の壁面、108は反応容器のベースプレートである。プラズマ処理空間106内には、堆積膜の形成される円筒状の基体109が同一円周上に配置されている。各円筒状基体109は軸110によって保持され、必要に応じて発熱体111によって加熱されるようになっている。モーター112を駆動することにより、減速ギア113を介して基体支持軸110を回転し、円筒状基体109がその母線方向中心軸のまわりを自転するようになる機構を必要に応じて設ける。115(b)は原料ガス導入口であり、プラズマ処理空間106内に所望のプラズマ処理ガスがガス導入管115(a)を介して供給される。
【0008】
基体109は、複数設けたほうが生産効率に優れるが、一般的に、円筒状基体109の数を多くするに伴って、プラズマ処理装置の大型化、必要とする高周波電源容量の増大をもたらすため、これらの点を考慮して円筒状基体109の数を適宜決定される。図1(a)(b)においては、6本の円筒状基体109を配置してある。
【0009】
例えば、この装置を用いて、電子写真用感光体の作成は、以下のように行われる。
【0010】
まず、反応容器の底面108に誘電体部材を積み上げることにより壁面107を構成し、その後円筒状基体109、上蓋114を設置してプラズマ処理空間106を形成し、不図示の排気装置により排気管102(b)を通してプラズマ処理空間106内を排気する。続いて、発熱体111により円筒状基体109を所定の温度に加熱・制御する。基体109を加熱するのは、a−Si:H膜中の水素量や欠陥密度が基体温度によって決定される要因が大きいからである。そこで、a−Si:H膜中の欠陥密度をできるだけ少なくするためには、成膜中の基体温度は、様々な条件(内圧やSiH4流量や導入電力)にもよるが、T.Simizu et al:Pysica,117B/118B(1983)926に記載があるように、200℃から300℃の温度範囲である事が好ましい。
【0011】
円筒状基体109が所定の温度となったところで、ガス供給部115を介して、プラズマ処理に使用するガスをプラズマ処理空間106内に導入する。プラズマ処理ガスの流量が設定流量となり、また、プラズマ処理空間106内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源104よりマッチングボックス105を介して電極103へ所定の高周波電力を供給する。供給された高周波電力によって、プラズマ処理空間106内にグロー放電が生起し、プラズマ処理ガスは励起解離して円筒状基体109上に堆積膜が形成される。所望の膜厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、続いてプラズマ処理ガスの供給を停止して堆積膜の形成を終える。多層構造の堆積膜を形成する場合には、同様の操作を複数回繰り返す。この場合、各層間においては、上述したように1つの層の形成が終了した時点で一旦放電を完全に停止し、次層のガス流量、圧力、そして基体温度に設定が変更された後、再度放電を生起して次層の形成を行なっても良いし、あるいは、1つの層の形成終了後一定時間でガス流量、圧力、基体温度、高周波電力を次層の設定値に徐々に変化させることにより連続的に複数層を形成する方法もある。堆積膜形成中、必要に応じて、基体支持軸110を介して円筒状基体109をモーター112により所定の速度で回転させてる方法も膜の均一性の観点からも良く用いられる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法及び装置により、良好な堆積膜形成、即ち真空処理がなされる。しかしながら、このような真空処理を用いた製品に対する市場の要求レベルは日々高まっており、この要求に応えるべく、より高品質化、低コスト化が実現可能な真空処理方法が求められるようになっている。
【0013】
電子写真装置の場合、コピースピードの向上、高画質化、低価格化の要求は非常に強く、これらを実現するためには感光体特性、具体的には帯電能、感度等の向上、画像上に白点あるいは黒点で現れる感光体中構造欠陥に起因する画像欠陥の抑制、及び感光体生産コストの低下が不可欠となっている。また、近年その普及が目覚しいデジタル電子写真装置、カラー電子写真装置においては、文字原稿のみならず、写真、絵、デザイン画等のコピーも頻繁に為されるため、「画像濃度むらの低減」「画像欠陥の低減」が従来以上に強く求められるようになっている。
【0014】
このような感光体特性の向上、感光体生産コストの低下を目指し、堆積膜積層構成の最適化等も為されているが、同時に、真空処理方法の面での改善も強く望まれている。
このような状況下において、前述従来の真空処理方法においても、真空処理特性の向上、真空処理コストの低下に関して、まだ改善の余地が残されているのが現状である。
【0015】
すでに述べたように、高周波電力を用いてプラズマを生成し真空処理を施すことにより、真空処理速度の向上、真空処理特性の向上が達成可能であり、鋭意研究がなされている。
【0016】
しかしながら、電子写真感光体のような大面積の真空処理において、膜の均一性のために基体温度を出来るだけ均一にすること、そして画像欠陥の原因となるパーティクルの発生を抑えることがより必要とされている。
【0017】
基体温度を全域にわたって均一にするためには、高機能そして高性能なヒーターと高度なヒーター制御方法が必要となり装置コストが非常に高くなってしまう。
【0018】
パーティクルの発生原因としては、プラズマ処理空間における基体以外の部材からの膜剥がれが考えられる。膜剥がれが発生する原因として、プラズマ処理空間内の温度勾配が挙げられ、温度勾配があることで、部材に堆積した膜のストレスが不均一となり膜剥がれが生ずる事が有る。即ち、パーティクルの発生を抑えるためには、プラズマ処理空間の温度、特に基体に近い部分の温度をできるだけ均一にする必要がある。しかしながら感光体の特性を得るために基体温度を上げる必要があり、そのことが、逆にプラズマ処理空間内の温度の不均一を促進する結果なる。この問題に対し、例えば特開平9−111455や特開2000−073173に記載されているように、プラズマに曝される反応容器の内壁を温度制御(加熱)する方法や基体のダミー部の温度差が開示されているが、反応装置の大型化や装置コストのアップ又はメンテナンス性の低下が懸念される。
【0019】
そのような理由から、パーティクルの発生を抑えるために基体温度を低くした状態で、a−Si膜を成膜すると、膜中の欠陥密度の増加によって必要とされる感光体得性が得られないと言った問題が生じる。
【0020】
このような問題を解決するための手段として、a−Si:H膜のアニール処理と言った技術が、例えば、特公昭62−15855などで開示されている。
【0021】
また、最近のa−Si系の電子写真感光体においては、コピースピードの高速化、そしてメンテナンス性の向上の要求により、耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性に優れた表面保護層を必要としており、その一つにa−SiC:Hの表面保護層が用いられる。
【0022】
a−SiC:H膜を表面保護層として用いる場合、例えば透光性、電気抵抗、硬度、滑り性等の多岐に渡る膜特性の最適化が必要である。
【0023】
表面保護層にa−SiC:H膜を有するa−Si系感光体にアニール処理を行うと、アニール処理条件によってはa−SiC:H膜の膜質が変化し、最適な膜特性から変化してしまう場合がある。
【0024】
感光体の高品質化が求められている状況においては、このような膜特性の変化を許容するのは難しくアニール処理の弊害として改善が求められている。
【0025】
例えば、予めアニール処理によるa−SiC:H膜の膜質変化を考慮した膜特性のa−SiC:H膜の成膜を行う方法もあるが、前述したような高品質化を実現するには高度な技術が必要とされ、生産を行う上での容易性、安定性、コスト等をも考慮すると必ずしも十分満足される状況ではなく、生産性の優れた方法が求められていた。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するために、つぎの(1)〜(5)のような電子写真感光体の作成方法を提供するものである。
(1)少なくとも減圧可能な反応容器と、前記反応容器内に導電性の基体を収納する手段と、前記反応容器内にガスを導入する手段と、前記反応容器内にプラズマを生成させるための高周波電力を供給する手段と、前記反応容器内から排気配管を介して排気する排気手段を備えた真空処理装置により、該基体上にすくなくとも、シリコンを母体とする非単結晶材料で構成された光導電層と、シリコン原子と炭素原子を少なくとも含有する表面層をこの順に形成した後、アニール処理を施すアモルファスシリコンを母材とする電子写真用感光体の製造方法において、
光導電層形成時の温度をT1(℃)、表面層形成時の温度をT2(℃)、アニール処理時の温度をT3(℃)としたとき、
T1<T3<T2
の関係が満たされることを特徴とする電子写真用感光体の製造方法。
(2)前記T1、T2の各温度が
150℃≦T1≦200℃
200℃≦T2≦300℃
の関係を満たすことを特徴とする(1)記載の電子写真用感光体の作製方法。
(3)前記高周波電力供給手段は、周波数が50[MHz]以上450[MHz]以下の電力を供給する手段であることを特徴とする(1)及至(2)記載の電子写真用感光体の製造方法。
(4)前記基体が、少なくとも複数の円筒の導電体であり、該基体上に電子写真用感光体としての機能を有する膜を形成する事を特徴とする、(1)及至(3)記載の電子写真用感光体の製造方法。
(5)前記基体温度の制御方法が、ヒーターによる加熱手段によることを特徴とする、(1)及至(4)記載の電子写真用感光体の製造方法。
【0027】
以上の様に、本発明者らは、これらの課題を克服する方法として、光導電層をできるだけ低温で成膜することで、パーティクルの発生を回避し、表面保護層より低い温度でアニール処理を行うことで、表面保護層のa−SiC:Hの膜特性の変化を抑えると共に、光導電層の欠陥密度を減少させることを、成膜中の温度及びアニール処理温度の関係から発明するに至った。
【0028】
また、アニール処理を行う事で、光導電層の欠陥密度の分布がより均一化される効果により、膜特性の均一性の向上も成し遂げられる為、その結果「画像濃度むらの低減」が成し遂げられる。
(作用)
本発明を達成するに至った知見を以下に説明する。
【0029】
a−Si:H堆積膜の光電特性の良し悪しを判断する最も重要な物理量は欠陥密度である。即ち、この欠陥密度を少なくする事が、a−Si:H堆積膜の作成において重要である。
【0030】
a−Si:H膜の成膜時の基体温度は、その欠陥密度を決定する重要なパラメーターである。
【0031】
成膜時の基体温度には上限値及び下限値が存在し、最適な温度範囲は約200℃から350℃の範囲である事が一般的に言われている。
【0032】
図1に示す装置で、基体109の温度を発熱体111を用い、例えば200℃から350℃の範囲でa−Si:H膜を作成した場合、欠陥密度が少ない堆積膜を得る事が可能である。このとき、基体109の全域及び基体109の上下に設置されている基体ダミー部の温度までも温度勾配を少なく制御する事が好ましい。特に基体温度が高い状態では、その温度勾配は更に大きくなる傾向を示した。例えば、基体温度を300℃で成膜を行った場合、ダミー部の温度勾配のために、堆積膜の応力の不均一が発生し、ダミー部の膜が剥がれてしまう場合があった。このような、基体付近での膜剥がれは、基体に対するパ−ティクルとなり、基体に付着し、画像欠陥の原因となる。この問題を回避するには、ダミー部の温度制御を精度良く行う事が可能な装置構成を用いる事で可能であるが、装置コストが増大する等を考慮すると容易に導入できる物ではない。
【0033】
そこで、基体温度を下げる事で温度勾配を小さくした場合には、膜剥がれが抑制されパ−ティクルが減少した。特に200℃未満の基体温度においては、ダミー部と基体の温度勾配が容易に小さくする事ができ、画像欠陥が減少した。即ち、このような装置構成において、基体温度200℃未満での成膜が画像欠陥の低減に有効であることが確認できた。
【0034】
しかし、200℃未満の基体温度でa−Si膜を作成した場合、欠陥密度の増加により、近年要求されている高画質な電子写真用感光体として必要とされる光電特性を得るには必ずしも十分とはいえず、特性の改善が必要とされる。
【0035】
a−Si:H膜中の欠陥は、アニール処理によって減少させることが可能である。
【0036】
そこで、200℃未満の基体温度で作成した膜をアニール処理する事で、電子写真用感光体としての光導電特性を充分に有する膜に改善可能である事を確認した。しかしながら、あまりにも低温(150℃未満)の膜においては、欠陥密度が大きすぎる為、アニールによっても充分な欠陥密度の減少を達成する事が難しく、a−Si:H堆積膜の成膜中の基体温度として、150℃以上200℃未満である事が、アニール処理による欠陥改善及び膜剥がれによるパーティクルの防止に有効である事がわかった。また、アニール処理の雰囲気は、大気中でも減圧雰囲気中においても、その効果は同等であり、またアニール処理時間は1時間以上が望ましい。
【0037】
また、アニール温度に関しては、a−Si:H膜の成膜温度以上であるならば、充分な欠陥密度の改善が可能である事がわかった。
【0038】
次に、表面保護層として用いるa−SiC:Hについて説明する。a−SiC:Hの表面保護層は、耐久性に優れ、繰り返しの使用に対して高い耐久性を示す。また、Eg(opt)が広い為、電子写真感光体の表面保護層として用いた場合、潜像書き込み等に用いる光(レーザー光やLED光、又はハロゲン光)が吸収されにくく大変に適している。膜厚としては、その耐久性能から0.01μm以上あれば十分でり、成膜も非常に短時間で行う事ができる。
【0039】
a−SiC:H膜において、C原子は殆どSi原子と同じネットワークを構成し、即ち、Si−SiネットワークにC元素が置き換わるような構造を有している。また、a−Si:H膜と同様にアニールにより膜特性が変化する場合があるが、a−SiC:H膜の成膜中の温度よりも低い温度でのアニール処理であるならば、アニール前後における膜特性の変化が殆ど認められず、即ち、表面保護層のa−SiC:H膜がアニール処理をうけることを考慮すると、「感光体のアニール処理温度をa−SiC:H膜の成膜温度よりも低くする事」が必要であることがわかった。
【0040】
又、a−SiC:H膜の成膜中の基体温度を200℃以上に上げて温度勾配が生じた場合においても、a−SiC:H膜の膜剥がれは発生せず、パーティクルが発生する事はなかった。
【0041】
これは、前述したようにa−SiC:H膜が薄いため膜の応力が小さく、温度勾配があったとしても膜剥がれが発生しにくい為であると考えられる。即ち、a−SiC:H膜の成膜温度に関しては、膜剥がれによるパーティクルの発生を殆ど考慮しなくても良いため、光導電層であるa−Si:H膜の成膜時よりも高い温度での成膜においても問題は生じないことがわかった。
【0042】
以上の知見より、表面保護層a−SiC:Hの成膜温度としては、200℃を超えることが望ましいことがわかった。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態の詳細ついて述べる。
【0044】
本発明において使用される基体の形状は平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状であることができ、その厚さは、所望通りの電子写真用感光体を形成し得るように適宜決定するが、電子写真用感光体としての可撓性が要求される場合には、基体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。
本発明において使用されるSi供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4、Si2H6、SiH8、Si4H10等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に堆積膜形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2H6が好ましいものとして挙げられる。そして、形成される堆積膜中に水素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるようにはかり、本発明の目的を達成する膜特性を得るために、これらのガスに更にH2および/またはHeあるいは水素原子を含む珪素化合物のガスも所望量混合して層形成を行ってもよい。また、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えないものである。
【0045】
本発明において使用されるハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、たとえばハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状のまたはガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状のまたはガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も有効なものとして挙げることができる。本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF4、Si2F6等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
【0046】
本発明においては、堆積膜には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、堆積膜中に万偏なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
【0047】
前記伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期律表第13族に属する原子(以後「第13族原子」と略記する)またはn型伝導特性を与える周期律表第Vb族に属する原子(以後「第Vb族原子」と略記する)を使用することができる。第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第Vb族原子としては、具体的には燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、Asが好適である。堆積膜に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、好ましくは1×10−2〜1×10 [原子ppm]、より好ましくは5×10−2〜5×10[原子ppm]、最適には1×10−1〜1×10[原子ppm]とされるのが望ましい。
【0048】
伝導性を制御する原子、たとえば、第13族原子あるいは第Vb族原子を構造的に導入するには、層形成の際に、第13族原子導入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に、堆積膜を形成するための他のガスとともに導入すればよい。第13族原子導入用の原料物質あるいは第Vb族原子導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状のまたは、少なくとも層形成条件下で容易にガス化し得るものが採用されるのが望ましい。
【0049】
そのような第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B2H6、B4H10、B5H9、B5H11、B6H10、B6H12、B6H14等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。第Vb族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH3、P2H4等の水素化燐、PH4I、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PBr5、PI3等のハロゲン化燐が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF5、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl15iH3、BiCl3、BiBr3等も第Vb族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げることができる。 またこれらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH2および/またはHeにより希釈して使用してもよい。
【0050】
本発明においては、形成される堆積膜の表面には、耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性に優れたアモルファスシリコン系の表面層を形成することが好ましい。表面層はアモルファスシリコンカーバイト系の材料であればいずれの材質でも可能であるが、例えば、水素原子(H)及び/またはハロゲンアモルファスシリコン、等の材料が好適に用いられる。Si供給用ガスとなり得る物質としては、SiH4原子(X)を含有し、さらに炭素原子を含有する、Si2H6、SiH8、Si4H10等のガス状態の、またはガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、更に堆積膜形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si2H6が好ましいものとして挙げられる。また、これらのSi供給用の原料ガスを必要に応じてH2および/またはHe等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0051】
また、C供給用ガスとなり得る物質としては、CH4、C2H2、C2H6、C3H8、C4H10等のガス状態の、またはガス化し得る炭化水素が有効にしようされるものとして挙げられ、さらに堆積膜形成時の取り扱い易さ、C供給率の良さ等の点でCH4、C2H2、C2H6が好ましいものとして挙げられる。また、これらのC供給用の原料ガスを必要に応じてH2および/またはHe等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0052】
【実験例】
以下、本発明の真空処理方法について、実験例より更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0053】
【実験例1】
図1に示すプラズマ処理装置を用い、表1に示す条件でa−Si:H堆積膜を形成した。円筒状基体109は直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダーであり、その表面には堆積膜特性評価用として幅2.5cm、長さ3.8cmの研磨ガラス(コーニング社製、#7059)を円筒状基体109の周方向1箇所に母線方向に9枚並べて設置した。円筒状基体109上の研磨ガラス設置個所は円筒状基体109と研磨ガラスが密着するように平面化した。尚、円筒状基体109は同一円周上に等間隔で6本配置した。
【0054】
このような装置を用いた、堆積膜形成は概略以下の通りとした。
まず、表面に堆積膜特性評価用の研磨ガラスが設置された円筒状基体109をプラズマ処理空間106内の基体支持軸110上に設置した。その後、不図示の排気装置により排気口102(a)を通してプラズマ処理空間106内を排気した。続いて、基体支持軸110を介して円筒状基体109をモータ112により10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス導入手段115(a)(b)よりプラズマ処理空間106に500ml/min(normal)のAr を供給しながら発熱体111により円筒状基体109を表1に示す温度に加熱制御し、その状態を2時間維持した。
【0055】
次いで、Arの供給を停止し、プラズマ処理空間106を不図示の排気装置により排気管102(b)を通して排気した後、原料ガス導入手段115(a)(b)を介して、表1に示した堆積膜形成条件で原料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量となり、また、プラズマ処理空間106内の圧力が安定したのを確認した後、ヒーターの設定を、表1に示す基体温度になるように調整した。高周波電源104の出力を所定の値に設定し、マッチングボックス105を介して高周波電極103へ高周波電力を供給した。高周波電極103よりプラズマ処理空間内に放射された高周波電力によって、原料ガスを励起解離することにより、円筒状基体109上にa−Si:H堆積膜を1μm堆積させた。尚、高周波周波数は100MHzを用いた。
【0056】
堆積膜形成後、プラズマ処理空間106内をArにてパージした後、N2ガスでリークして堆積膜が形成された堆積膜特性評価用の研磨ガラスを取り出した。
【0057】
【表1】成膜条件
Figure 2004133121
このようにして形成した堆積膜の欠陥密度を以下の方法で評価した。
*欠陥密度評価
CPM(Constant  Photocurrent  Method)法により、価電子帯端から価電子帯端上(伝導帯側)0.8eV  までの、欠陥密度を測定した。
【0058】
欠陥密度の評価後、これらのサンプルを大気雰囲気中で表2に示す条件でアニール処理を行い、アニール処理後に再び欠陥密度の評価を行った。
【0059】
アニール処理前の欠陥密度を表3に、アニール処理前後で欠陥密度を比較した結果を表4に、アニール処理後の欠陥密度をアニール処理前の250℃で作製した膜(Ex1−7)の欠陥密度に対する相対評価で表した結果を表5に示す。表3から表4の結果は、母線方向で9枚並べたガラス基板の中央のもの(基体母線方向で中央)を評価した結果である。表3の結果は、EX1−7の結果を基準とし、欠陥が少ない場合を「〇」、欠陥が多いものを「×」、殆ど同じ場合を「△」としてある。表4の結果は、それぞれのサンプルにおいてアニール後に欠陥密度が減少したものを「〇」、殆ど変わらないものを「△」、欠陥が増加したものを「△」で示してある。また、表5の結果は、アニール処理前の250℃で作成した堆積膜の欠陥密度に対して、欠陥が少ない場合を「〇」、欠陥が多いものを「×」、殆ど同じ場合を「△」として示した。
【0060】
【表2】アニール条件
Figure 2004133121
【0061】
【表3】成膜後の欠陥密度
Figure 2004133121
【0062】
【表4】アニール前後での欠陥密度の変化
Figure 2004133121
【0063】
【表5】a−Si:Hサンプルのアニール処理後の欠陥密度の評価結果
Figure 2004133121
表3に示すようにアニール処理前において、成膜した膜の欠陥密度は基体温度が高いほど少ない傾向を示す。そして、表4に示すように、アニール処理を行う事で欠陥密度は減少する。このとき、成膜温度を超えるのアニール温度である事が有効である。また、アニール処理によって欠陥密度を、成膜温度250℃のサンプル(EX1−7)並にする為には、成膜温度が150℃以上が必要であることが確認できる。また、欠陥密度を減少させるためには、成膜する際の基体温度(T1)とアニール処理温度(T3)には、「T1<T3」であることが必要である。
【0064】
記体温度150℃以上で作成した堆積膜の欠陥密度がアニール処理によって、良好な欠陥密度にする事が可能であることが確認できたので、次に、母線方向に9枚並べた堆積膜の母線方向の欠陥密度の分布(ムラ)について、アニール処理前後において、EX1−3のアニール処理温度に230℃関して評価した。欠陥密度の測定方法は、前記の通りである。ムラに関してはアニール前のEx1−3の9枚の欠陥密度の最大値−最小値を1.0とし、アニール処理前後における比較を行った。結果を表5に示す。 表5に示すように、アニール処理を施す事で欠陥密度が減少すると共に、欠陥密度のムラが減少することが確認できる。
【0065】
【表6】PCLサンプルのアニール前後での欠陥密度ムラ評価
Figure 2004133121
【0066】
【実験例2】
図1に示すプラズマ処理装置を用い、表7に示す条件でa−SiC:H堆積膜を形成した。円筒状基体109は直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダーであり、その表面には堆積膜特性評価用として幅2.5cm、長さ3.8cmの研磨ガラス(コーニング社製、#7059)を円筒状基体109の周方向1箇所に母線方向中央に1枚設置した。円筒状基体109上の研磨ガラス設置個所は円筒状基体109と研磨ガラスが密着するように平面化した。尚、円筒状基体109は同一円周上に等間隔で6本配置した。
【0067】
このような装置を用いた、堆積膜形成は概略実験例1と同様に行った。
【0068】
【表7】:a−SiC:Hサンプルの成膜条件
Figure 2004133121
【表8】
Figure 2004133121
このようにして形成した堆積膜を以下の方法で評価した。
*光学的エネルギーバンドギャップ(Egopt)評価
測定には分光光度計(日本分光製、V−570)を用い、Egopt はTaucプロット(hνと(αhν)1/2との関係を求め、hν軸の切片の値をEgoptと定義する)によりEgoptを決定した。
【0069】
次いで、これらのサンプルを表8に示す条件でアニール処理を行い、アニール処理後に再び光学的エネルギーバンドギャップ(Egopt)評価を行った。アニール前後での、a−SiC:H膜のEgoptをアニール前後で比較した結果を表9に示す。表9においては、アニール処理前後でのEgoptの値が、変化しなかったものを「△」、増加したものを「×」、減少したものを「〇」として評価してある。
【0070】
【表9】a−SiC:Hのアニール処理後のEgopt評価結果
Figure 2004133121
表9に示すように、成膜中の基体温度温度よりも低い温度でアニール処理を施した場合は、アニール前後におけるEgoptの変化は殆どないことがわかる。
【0071】
【実験例3】
図1に示す真空処理装置を用い、表5に示す条件で図2に示す層構成を有するa−Si:H堆積型の電子写真感光体を形成した。円筒状基体109は直径80mm、長さ358mmのアルミニウムシリンダーである。尚、円筒状基体109は同一円周上に等間隔で6本配置した。
【0072】
このような装置を用いた、堆積膜形成は概略以下の通りとした。
まず、円筒状基体109をプラズマ処理空間106内の基体支持軸110上に設置した。その後、不図示の排気装置により排気口102(b)を通してプラズマ処理空間106内を排気した。続いて、回転軸110を介して円筒状基体109をモータ112により10rpmの速度で回転させ、更に原料ガス導入手段115(a)(b)よりプラズマ処理空間106中に500ml/min(normal)のAr を供給しながら発熱体111により円筒状基体109を表11にしめす温度(電荷注入阻止層&光導電層の温度)に加熱・制御し、その状態を2時間維持した。
【0073】
次いで、Arの供給を停止し、反応容器101を不図示の排気装置により排気管111を通して排気した後、原料ガス供給手段112を介して、表10に示した堆積膜形成条件で原料ガスを導入した。原料ガスの流量が設定流量となり、また、プラズマ処理空間106内の圧力が安定したのを確認した後、ヒーターの設定を、表11に示す基体温度になるように調整した。高周波電源104の出力を所定の値に設定し、マッチングボックス105を介して高周波電極103へ高周波電力を供給した。高周波電極103よりプラズマ処理空間106内に放射された高周波電力によって、原料ガスを励起解離することにより、円筒状基体105上に図2に示す電荷注入阻止層202及び光導電層203を積層した。
【0074】
所望の膜厚が得られたところで、高周波電源104をからの高周波の供給を止めて、表5に示す、表面保護層204を成膜する温度にヒーター111を設定し、温度が安定した後、表5に示す表面保護層の成膜条件に成るように原料ガス供給手段115(a)(b)ガス量を調整した。原料ガスの流量が設定流量となり、また、プラズマ処理空間106内の圧力が安定したのを確認した後、高周波電源104の出力を所定の値に設定し、マッチングボックス105を介して高周波電極103へ高周波電力を供給した。高周波電極103よりプラズマ処理空間106内に放射された高周波電力によって、原料ガスを励起解離することにより、円筒状基体105上に図2に示す表面保護層204積層し、a−Si:H堆積型の電子写真感光体を形成した。尚、高周波周波数は100MHzを用いた。
【0075】
堆積膜形成後、プラズマ処理空間106内をArにてパージした後、N2ガスでリークして堆積膜が形成された円筒状基体109を取り出した。
【0076】
【表10】電子写真感光体の製造条件
Figure 2004133121
*シリコン原子に対する含有量
【0077】
【表11】成膜条件その2:各層の成膜時の基体温度
Figure 2004133121
作成した電子写真感光体を図3に示す構成のキヤノン製IR5000を改造した電子写真装置に設置し、以下の方法で評価した。尚、電位ムラ以外の評価は、感光体の母線方向の中央位置で行った。
▲1▼帯電能評価
帯電器の電流値1000[μA]の条件にて、電子写真用感光体の現像器位置での暗部表面電位を表面電位計により測定する。実験例3の感光体Ex3−6の帯電能を基準とした相対評価を行った。暗部電位が大きいほど帯電能か良い(光導電的特性)が良い事になる。
【0078】
表12の結果は、感光体Ex3−6の帯電能と同等の場合を「△」、感光体Ex3−6の帯電能よりも低い場合を「×」、感光体Ex3−6の帯電能よりも高い場合を「〇」として示している。
▲2▼感度評価
電子写真装置の現像位置での暗部表面電位を400[v]に帯電させる。そして潜像書き込み用レーザーを照射し、電子写真用感光体の現像位置での明部表面電位が所定の値になるように光量を調整する。このときの光量により感度の測定を行う。実験例3の感光体Ex3−6の光量を基準とした相対評価を行った。光量が小さいほど感度が良い(光導電的特性)事を示す。
【0079】
表12の結果は、感光体Ex3−6の光量と同等の場合を「△」、感光体Ex3−6の光量よりも大きい場合を「×」、感光体Ex3−6の帯電能よりも小さい場合を「〇」として示している。▲3▼電位ムラ評価
帯電能評価を母線方向の9ポイントで行いその最大値と最小値の差を電位ムラとして評価した。実験例3の感光体Ex3−6の電位ムラを基準とした相対評価を行った。
【0080】
表12の結果は、感光体Ex3−6の電位ムラと同等の場合を「△」、感光体Ex3−6の電位ムラよりも大きい場合を「×」、感光体Ex3−6の電位ムラよりも小さい場合を「〇」として示している。
▲4▼画像欠陥評価
キヤノン製全面黒チャート(部品番号:FY9−9073)を用いてベタ黒画像を形成し、得られた画像の一定面積内にある直径0.2[mm]以上の白ポチの個数について評価した。実験例3の感光体Ex3−6の白ポチ数を基準とした相対評価を行った。
【0081】
表12の結果は、感光体Ex3−6の白ポチ数と同等の場合を「△」、感光体Ex3−6の白ポチ数よりも多い場合を「×」、感光体Ex3−6の白ポチ数よりも少ない場合を「〇」として示している。
【0082】
【表12】a−Si:H系感光体のアニール処理前の評価結果
Figure 2004133121
表12に示すように、感光体の特性としては、230℃以上で良好になるものの、電荷注入阻止層&光導電層の成膜温度が200℃をこえると、画像欠陥が増加している。
【0083】
即ち、画像欠陥及びクリーニング性を確保するには、電荷注入阻止層&光導電層の成膜温度が200℃未満である事が望ましいことがわかる。
【0084】
次に、画像欠陥の良好であった、感光体EX3−1〜3の感光体を、表13に示す条件でアニール処理を行った。
【0085】
【表13】:感光体のアニール条件
Figure 2004133121
アニール処理後、再び表12と同様の評価を行った。帯電能の評価結果を表14に、感度の評価結果を表15に示す。尚、画像欠陥、クリーニング性に関しては、アニール処理前後で変化がなく、アニール処理前と同様に良好であった。
尚、表14及び表15の結果は、アニール前にEx3−6の帯電能及び感度を基準とした相対評価である。
【0086】
【表14】:帯電能
Figure 2004133121
【0087】
【表15】:感度
Figure 2004133121
表14及び表15に示すように、電荷注入阻止層&光導電層の成膜温度以上のアニール温度で処理をする事で、電位特性が230〜250℃での堆積膜並に改善するのもの、表面保護層の成膜温度以上(250℃)においては、逆に感度が悪化する結果となった。これは、表面保護層のa−SiC:H膜が、アニールにより膜質が変化し抵抗値や光の透過度等が変化した為であると考えられる。
【0088】
次に、Ex3−3の感光ドラムのアニール前後における電位ムラの評価結果を表16に示す。表16の数値は、アニール処理前の帯電能の最大値−最小値を「1.0」とした相対値である。表16に示すように、アニールにより電位ムラが低下している事が確認できた。
【0089】
【表16】
Figure 2004133121
以上の実験例より、a−Si:H膜の欠陥密度をアニール処理によって改善可能であるが、高温(230℃から250℃)での温度における堆積膜の欠陥密度レベルを達成するには、150℃以上の温度での成膜が必要である。この温度以上の堆積膜であるならば、アニール処理温度を成膜中の温度以上にすることで、高温積層膜の欠陥密度レベルまで膜質の改善が可能となることが見出された。
【0090】
また、a−SiC:Hの表面保護層において、少なくともアニール処理以上の温度で成膜することで、アニール処理におけるEgの変動が抑えられる。更には、表面保護層成膜温度以下のアニール処理においては、表面保護層の熱的構造変化がほとんど発生せず、アニール処理による特性変化を設計段階で考える必要がなくなる。
【0091】
即ち、a−Si:H光導電層形成時の基体の温度をT1(℃)、a−SiC:H表面層形成時の基体温度をT2(℃)、アニール処理時の基体温度をT3(℃)としたとき、
T1<T3<T2
の関係を満たすことで、アニール処理による欠陥密度の改善が弊害無く行われることが分かる。
【0092】
更には、a−Si:H成膜時の基体温度を200℃未満にすることで、画像欠陥の原因となるパーティクルの発生が抑えられる。そして、アニール処理を行うことで、欠陥密度の減少と均一化が行われ、特性の均一化が図られ、画像濃度むらが減少する。
【0093】
【実施例】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0094】
【実施例1】
表10の条件で、図1に示す概要のプラズマCVD装置を用い、図2にしめす層構成の電子写真用感光体を作成した。成膜中の基体温度は、電荷注入阻止層&光導電層においては、170〜180℃に保ち、表面保護層においては、約230℃とした。
【0095】
感光体作成後、反応容器内真空引きし、図1に示す発熱体111により、基体を250℃に加熱しアニール処理を1時間行った。アニール処理終了後、感光体を反応容器から取り出し、実験例3と同様に帯電能評価、感度評価、画像欠陥評価を行った。その後、感光体をキヤノン製IR5000に設置し、潜像密度6%画像で、A4横連続100万枚の耐久評価を行った。
【0096】
耐久後、感光体を取り出し、実験例3と同様に帯電能評価、感度評価、電位ムラ評価、画像欠陥評価を行ない、初期特性と耐久後特性を確認した。耐久前後における特性差は発生せす、又、電位特性及び画像欠陥は良好であった。
【0097】
【実施例2】
実験例3の表10の条件で、図1に示す概要のプラズマCVD装置を用い、図2に示す層構成の電子写真用感光体を作成した。成膜中の基体温度は、電荷注入阻止層&光導電層においては、170〜180℃に保ち、表面保護層においては、約230℃とした。感光体作成後、反応容器から感光体を取り出し、大気雰囲気中でオーブンで250℃に加熱しアニール処理を行った。
【0098】
アニール処理終了後、感光体を反応容器から取り出し、実験例3と同様に、帯電能評価、感度評価、電位ムラ評価、画像欠陥評価を行った。その後、感光体をキヤノン製IR5000に設置し、潜像密度6%画像で、A4横連続100万枚の耐久評価を行った。
【0099】
耐久後、感光体を取り出し、実験例3と同様に帯電能評価、感度評価、電位ムラ評価、画像欠陥評価を行ない、初期特性と耐久後特性を確認した。耐久前後における特性差は発生せす、又、電位特性及び画像欠陥は良好であった。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、膜はがれなどによるパーティクルの発生を抑制し、極めて優れた品質の堆積膜を、生産性良く形成することを可能にする電子写真用感光体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】真空処理装置の一例で、プラズマCVD法による電子写真用感光体の製造装置の模式的説明図である。(a)は装置を横から見た断面図であり、(b)は図1(a)のA−A‘断面図である。
【図2】電子写真用感光体の好適な層構成の一例を説明する模式的断面図である。
【図3】電子写真装置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
101,201,501  プラズマ処理装置
102(a),202(a),502(a)  排気口
102(b)  排気管
103  電極
104  高周波電源
105  マッチングボックス
106  プラズマ処理空間
107  反応容器の壁面
108  反応容器のベースプレート
109  円筒状基体
110  軸
111  発熱体
112  モーター
113  減速ギア
114  反応容器のふた
115(a) ガス導入口
115(b) ガス導入
200  感光体
201  導電性基体
202  電荷注入阻止層
203  光導電層
204  表面保護層
301  感光体
302  主帯電器
303  静電潜像形成部位
304  現像器
305  記録紙搬送ガイド
306(a)転写帯電器
306(b)分離帯電器
307  クリーニング装置
308  記録紙搬送系
309  前露光光源
310 クリーニングブレード
311 クリーニングローラー

Claims (5)

  1. 少なくとも減圧可能な反応容器と、前記反応容器内に導電性の基体を収納する手段と、前記反応容器内にガスを導入する手段と、前記反応容器内にプラズマを生成させるための高周波電力を供給する手段と、前記反応容器内から排気配管を介して排気する排気手段を備えた真空処理装置により、該基体上にすくなくとも、シリコンを母体とする非単結晶材料で構成された光導電層と、シリコン原子と炭素原子を少なくとも含有する表面層をこの順に形成した後、アニール処理を施すアモルファスシリコンを母材とする電子写真用感光体の製造方法において、
    光導電層形成時の温度をT1(℃)、表面層形成時の温度をT2(℃)、アニール処理時の温度をT3(℃)としたとき、
    T1<T3<T2
    の関係が満たされることを特徴とする電子写真用感光体の製造方法。
  2. 前記T1、T2の各温度が
    150℃≦T1≦200℃
    200℃≦T2≦300℃
    の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の電子写真用感光体の作製方法。
  3. 前記高周波電力供給手段は、周波数が50[MHz]以上450[MHz]以下の電力を供給する手段であることを特徴とする請求項1及至2記載の電子写真用感光体の製造方法。
  4. 前記基体が、少なくとも複数の円筒の導電体であり、該基体上に電子写真用感光体としての機能を有する膜を形成する事を特徴とする、請求項1及至3記載の電子写真用感光体の製造方法。
  5. 前記基体温度の制御方法が、ヒーターによる加熱手段によることを特徴とする、請求項1及至4記載の電子写真用感光体の製造方法。
JP2002296323A 2002-10-09 2002-10-09 電子写真用感光体の製造方法 Withdrawn JP2004133121A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002296323A JP2004133121A (ja) 2002-10-09 2002-10-09 電子写真用感光体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002296323A JP2004133121A (ja) 2002-10-09 2002-10-09 電子写真用感光体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004133121A true JP2004133121A (ja) 2004-04-30

Family

ID=32286341

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002296323A Withdrawn JP2004133121A (ja) 2002-10-09 2002-10-09 電子写真用感光体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004133121A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JPH11193470A (ja) 堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法
JP3696983B2 (ja) プラズマ処理方法およびプラズマ処理装置
JP2003337437A (ja) 負帯電用電子写真感光体およびそれを用いた電子写真装置
US7338738B2 (en) Electrophotographic photosensitive member and process for producing the same
JP3559655B2 (ja) 電子写真用光受容部材
JP4298369B2 (ja) 堆積膜形成方法
JP2002091040A (ja) 電子写真感光体及び電子写真装置
JP2004133121A (ja) 電子写真用感光体の製造方法
JP4110053B2 (ja) 電子写真用感光体製造方法、及び電子写真感光体、並びにそれを用いた電子写真装置
JPH1073982A (ja) 帯電器及びこれを用いた電子写真装置
JP3466745B2 (ja) 電子写真装置
JP2004206090A (ja) 電子写真用感光体及びその製造方法
JP3630765B2 (ja) 堆積膜の製造装置およびその製造方法
US20030049556A1 (en) Electrophotographic process and apparatus
JP3658100B2 (ja) 非晶質シリコン系感光体製造装置および製造方法
JP3412957B2 (ja) 光受容部材の製造方法
JP4143491B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法
JP3323681B2 (ja) 電子写真感光体の製造方法
JP2001324828A (ja) 電子写真感光体とその作製方法及び装置
JPH10298766A (ja) 非晶質シリコン系感光体の形成装置及び形成方法
JP2002287391A (ja) 電子写真装置
JPH10183354A (ja) 堆積膜形成装置及び堆積膜形成方法
JP2003107769A (ja) 電子写真感光体の製造方法および電子写真感光体
JP2006023453A (ja) 電子写真感光体の製造方法
JPH08179531A (ja) 画像形成方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20050721

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20060110