JP2004132546A - カートリッジ型液圧テンショナ - Google Patents

Abstract

【課題】　外部から操作可能な保持装置および逆止装置を有するカートリッジ型液圧テンショナを提供する。
【解決手段】　カートリッジ型液圧テンショナ１０は、ボディ１２と、中空のピストン１４と、ロッド部材１６とを備えている。ボディ１２は、最縮退位置および伸長位置の間で軸方向スライド可能にピストン１４を受け入れるシリンダチャンバ２４が形成されたシリンダ部１８を有している。ピストン１４は、プレッシャースプリング５４によって伸長位置に向かって付勢されている。ロッド部材１６は、軸部４３および頭部４４を一体に有している。頭部４４は、流体を駆動するための通路４８，４９を有しており、軸方向移動のためにピストン１４と協働するとともにボディ１２のシリンダ部１８に密接している。軸部４３は、ボディ１２内を軸方向に延びており、軸部４３をボディ１２内で縮退位置に機械的にロックするためのロック手段６０を有している。
【選択図】　図２

Description

　本発明は、チェーンやベルトのような可撓性を有する動力伝達手段に張力を作用させてこれを維持するための装置の分野に関する。

　とくに、車両エンジンによって駆動される第１の駆動スプロケットから、カムシャフトを駆動する第２の従動スプロケットに動力を伝達するのに使用されるような、車両用の駆動チェーンが参照されるべきである。

　調整、材料の摩耗および遊びの除去のために、チェーンの弛みを補償することがしばしば必要になり、この弛みの除去は、シューが調整可能な力でチェーン側に付勢されるテンショナによって行われている。

　シューへの押付力を得るために、当該分野で知られたテンショナの多くは、シリンダ・ピストン組立体を有している。シリンダ・ピストン組立体においては、固定部材（一般にシリンダ）がエンジンブロック上に据え付けられており、可動部材（一般にピストン）がスプリングおよび作動流体（一般にオイル）の作用下でシューに作用している。

　いくつかのテンショナにおいては、ピストンは中空である。すなわち、ピストンは、ベントディスクを軸方向スライド自在に受け入れるピストンチャンバを有している。ベントディスクは、ピストン底部と対向する面に細長い螺旋状の溝を有しており、ピストン底部は貫通孔を有している。

　ベントディスクおよびピストン底部間のクリアランスは、エアの解放を許容しており、さらにもし必要であれば、潤滑目的によりオイルの排出を許容してテンショナの弾性減衰特性を制御可能にしている。スプリングによるばね力は、シリンダおよびディスク間に作用しており、さらにディスクを介してピストンに作用している。

　テンショナの中には、偶発的な理由で油圧が低下したときにスプリング力がピストンを正規の位置に維持するのに十分でない場合に、ピストンがシリンダ内に戻るのを防止するためのいわゆる「逆止」装置を備えたものがある。

　逆止装置は、一般に、ピストンと一体の歯付部または縦方向のラックを有しており、ラックは、スプリング付勢のラチェットに係合している。

　欧州特許出願第00830616.9号明細書は、エンジンを開けることなくエンジンブロックまたはエンジンヘッドの外側から据付可能ないわゆる「カートリッジ型」のテンショナについて記述している。

　このテンショナにおいては、ラック部がピストンスカートに形成されており、ラチェットがピストンスカートの開口に軸方向スライド可能に受け入れられるとともに、環状のピストンリングによってピストン側に付勢されている。

　保管および輸送目的のために、テンショナ据付前には、ピストンリングがシリンダの環状キャビティおよびピストンの環状キャビティに係合することによって、ピストンのほんの一部がシリンダから突出する位置にピストンが保持されるようになっている。

　テンショナの据付けのためには、シリンダの広い環状キャビティ内にリテーニングリングを移動させるのに十分な距離だけピストンをシリンダ内部に縮退させる力をピストンにまず作用させる必要があり、これにより、リテーニングリングがピストンを解放する。

　上述の出願で提供された解決法は、多くのアプリケーションにおいて満足のいくものではあるが、ピストンヘッドを縮退させる力を作用させることが困難であるかまたは容易でない場合には上記方法は依然として適切なものではない。

　同一の出願人による欧州特許出願第02425131.6号は、まだ発行されていないが、ピストンスカートに逆止歯を有しないカートリッジ型テンショナについて記述している。このテンショナにおいては、ピストン内をスライド可能なベント装置の軸部に最初係合するねじ手段によって、ピストンが縮退状態に保持されている。

　この出願は、ピストンの初期保持の問題を解決している。しかしながら、保持ねじは、一旦緩められると、ピストンヘッドに作用する場合を除き、ベント装置の軸部に再び係合させることができない。
欧州特許出願第00830616.9号明細書 欧州特許出願第02425131.6号明細書

　本発明が解決しようとする課題は、外部から操作可能な保持装置および逆止装置を有するカートリッジ型テンショナを提供することにある。上記目的は、特許請求の範囲の請求項１で説明されたテンショナにより達成されており、新規かつ有用なその他の特徴部分は、請求項１に続く他の請求項に記述されている。

　請求項１の発明に係る動力伝達チェーン用またはベルト用のカートリッジ型液圧テンショナは、ボディ、中空のピストンおよびロッド部材を備えている。ボディは、最縮退位置および伸長位置の間で軸方向スライド可能にピストンを受け入れるシリンダチャンバが形成されたシリンダ部を有している。ピストンは、プレッシャースプリングにより伸長位置に向かって付勢されている。ロッド部材は、頭部および軸部を一体に有している。頭部は、流体を駆動するための通路を有しており、軸方向移動のためにピストンと協働するとともにボディのシリンダ部に密接している。軸部は、ボディ内を軸方向に延びており、軸部をボディ内で縮退位置に機械的にロックするためのロック手段を有する。

　請求項２の発明では、ボディがシリンダ部と同軸の筒状部を有しており、ロッド部材の軸部が筒状部にスライド可能に受け入れられている。また、逆止機能を有するチェック歯が形成された歯付部が、軸部の長さおよび外周の一部に形成されており、逆止機能を有するポールが、ボディ内にスライド自在に受け入れられるとともに、軸部の一方向のみのスライド移動を許容するように歯付部に係合してボディスプリングにより歯付部の側に付勢されている。

　請求項３の発明では、軸部が、ロック手段とロック係合するための周溝を頭部の逆側に有している。

　請求項４の発明では、ロッド部材の頭部がカップ状部分を有しており、スリーブの突起部は、ロッド部材およびピストンの制限された相互の軸方向移動を許容するように、ピストンの協働する突起部または肩部と係合し得るようになっており、付勢スプリングがピストンおよびロッド部材の間に配設されている。

　請求項５の発明では、ロッド部材の頭部が、作動流体のための通路とチェックバルブとを有している。

　請求項６の発明では、ロッド部材が、その軸線回りを回転可能になっており、チェック歯が作動状態にあってポールと係合する位置と、チェック歯が非作動状態にあってポールとの係合が外れる位置とをとり得るようになっている。

　本発明によるカートリッジ型液圧テンショナは、ボディと、ボディ内をスライド可能なピストンと、ピストンと係合しかつピストンに対して或る距離だけボディ内を縦方向にスライド可能なロッド部材と、ピストンおよびロッド間に配設された付勢スプリングと、ロッド部材に設けられた保持・逆止用のチェック歯と、ボディ内で付勢されて歯部に係合するとともにロッド部材の戻りに対してロッド部材をロックするポールとを備えている。

　本発明のテンショナはさらに、スプリングを受け入れるとともにチェックバルブによって閉じられるピストンチャンバ内に開口する作動流体用の流路を有している。ロッド部材の一端は、ボディから突出しており、ロッド部材を縮退位置に保持するように、ロック手段としてのクリップに係合可能になっている。

　この新規なテンショナは、シリンダホディから突出する歯付ロッドの端部をリテーニングクリップなどの係止手段で係止することによって、ピストンがシリンダボディ内に縮退状態で保持されるのを許容する。さらに、本テンショナによれば、使用が簡単になり、初期状態に容易に復帰できるようになる。

　本発明に係るカートリッジ型液圧テンショナによれば、ロッド部材の軸部を介してピストンを縮退位置にロックするロック手段を設けるようにしたので、ピストンのロックおよびロック解除をテンショナ外部から操作可能なカートリッジ型液圧テンショナを実現できる。

以下、本発明の実施態様を添付図面に基づいて説明する。
　図１および図２において、本発明によるカートリッジ型液圧テンショナが参照符号１０で示されており、この液圧テンショナ１０は、シリンダを構成するボディ１２と、中空のピストン１４と、ロッド部材１６とから構成されている。

　ボディ１２は、細長い形状をしており、外側にねじ部１９を備えたシリンダ部１８と、それ自体よく知られた方法でエンジンブロックにねじ止めできるようなナット部２０と、筒状部２２とを有している。

　ボディ１２の内部には、ボディ１２の一端に開口しかつ軸方向に延びるシリンダチャンバ２４が形成されるとともに、ボディ１２の他端に開口しかつシリンダチャンバ２４と整列してこれと連絡する、軸方向に延びる筒状チャンバ２６が形成されている。ボディ１２の側部開孔２８は、取り外し可能なカバー３０によって閉塞されている。また、別の側部開孔が参照符号３２で示されている。

　中空のピストン１４は、底部３４および円筒状スリーブ３５を有している。底部３４は、好ましくは外方に突出する凸面形状を有しており、軸方向の貫通孔３６を有している。この貫通孔３６は、エアベントを制御するようにディスク３７と協働するが、このことはそれ自体よく知られた方法であるので、ここではそれ以上の記述を省略する。

　スリーブ３５の内側には、ピストンチャンバ３８が形成されている。ピストンチャンバ３８は、軸方向に対向する肩部４０，４１を限定するように、端部の歯または突起部３９により限定された拡径部分つまり大径部分をしている。ピストン１４は、シリンダチャンバ２４内を軸方向にスライド可能になっている。

　ロッド部材１６は、軸部４３および頭部４４を一体に有しており、ボディ１２内に同軸に配置されている。頭部４４は、シリンダチャンバ２４内に受け入れられるとともに、好ましくはＯリングであるガスケット５５によってシリンダチャンバ２４の壁面に支持されている。

　また頭部４４は、外方に突出する歯部または突起部４６を有する円筒状スリーブ４５を備えたカップ状部を有しており、チャンバ４７を限定している。

　ロッド頭部における横方向の連絡通路４８および軸方向の通路４９は、ロッド頭部のチャンバ４７をスペース５０に接続している。スペース５０は、ロッド頭部の外表面とシリンダチャンバ一端部の対向面との間で限定されている。

　チェックバルブ５３が、底部のガスケット５１およびワッシャー５２を介して、通路４９の出口に設けられている。プレッシャースプリング５４は、シリンダチャンバ２４および頭部チャンバ４７内に受け入れられており、ワッシャー５２およびディスク３７間に作用している。

　ロッド部材１６の軸部４３は、ロッド頭部に向かう側の勾配が緩やかでかつロッド逆側端部に向かう側の勾配が急な歯を備えた縦方向に延びる歯付部（つまりラックまたはチェック歯）５６を有している。

　歯付部５６は、軸部４３において縦方向のかなりの長さと周方向のほんの一部の長さを占めている。頭部と逆側の軸部端部には、筒状チャンバ２６の壁面に密接させるための、好ましくはＯリングであるシール５７が装着されるとともに、リテーニングクリップ（ロック手段）６０を受け入れるための周溝５８が形成されているのが好ましい。軸部先端の切欠き６１は、ドライバー（ねじ回し）先端との係合のために設けられている。

　歯部が形成された逆止シューつまりポール６２は、ボディスプリング６４によって歯付部５６の側に付勢されている。ボディスプリング６４は、カバー３０の逆側に収容されている。

　すでに述べたように、保存または輸送状態である静止時においては、ロッド部材１６は、クリップ６０によって、図１および図２に示す縮退位置にロックされている。シリンダ側突起部３９およびロッド部材側突起部４６による相互の係合が、スプリング５４により作用する力に抗して、ピストン１４をシリンダ内の縮退位置に維持している。

　クリップ６０が取り除かれて、開孔３２がエンジンのオイル回路に接続されると、空間５０内に作用する圧力が、スプリング５４により与えられる弾性的な戻りの可能性の下で、ロッド部材１６およびピストン組立体を右方に移動させて、ピストン１４をシリンダ部１８から突出させる。

　ピストン１４の位置は、スプリング５４、加圧流体およびチェーン（図示せず）からピストン１４に作用する力の釣り合い状態に応じて決定される。突出するピストン１４はロッド部材１６を図右方に引っ張るが、ロッド部材１６は、ピストン１４が再び後退するとき、ポール６２に係合する歯付部５６により、ロック作用つまり逆止作用を提供する。

　初期位置に戻すためには、切欠き６１にドライバ先端を係合させて軸部４３を回転させ、軸部４３の円筒状部分をポール６２と接触させる。その後、軸部４３をポール６２に沿ってスライドさせて初期位置に戻すようにすればよい。

本発明が関連する分野の当業者は、上述の教示内容を考慮するとき、本発明の精神および本質的な特徴部分から外れることなく、本発明の原理を採用する種々の変形例やその他の実施態様を構築し得る。上述の実施態様はあらゆる点で単なる例示としてのみみなされるべきものであり、限定的なものではない。

　それゆえ、本発明の範囲は、上記記述内容よりもむしろ添付の請求の範囲に示されている。したがって、本発明が個々の実施態様に関連して説明されてきたものの、構造、順序、材料その他の変更は、本発明の範囲内においてではあるが、当該技術分野の当業者にとって明らかであろう。

本発明によるカートリッジ型液圧テンショナの側面図であって、縮退された保管・輸送状態を示している。 図１の２−２線断面図である。

符号の説明

　１０：　カートリッジ型液圧テンショナ
　１２：　ボディ
　１４：　ピストン
　１６：　ロッド部材
　１８：　シリンダ部
　２４：　シリンダチャンバ
　４３：　軸部
　４４：　頭部
　６０：　ロック手段
　６４：　ボディスプリング

Claims (6)

1. 　動力伝達用チェーンまたはベルトのためのカートリッジ型液圧テンショナであって、
   　ボディ（１２）およびピストン（１４）を備え、
   　ボディ（１２）が、最縮退位置および伸長位置の間で軸方向スライド可能にピストン（１４）を受け入れるシリンダチャンバ（２４）が形成されたシリンダ部（１８）を有しており、ピストン（１４）が中空であり、スプリングが伸長位置に向かってピストン（１４）を付勢しており、
   　ロッド部材（１６）をさらに備え、
   　ロッド部材（１６）が、頭部（４４）および軸部（４３）を一体に有し、頭部（４４）が流体を駆動するための通路（４８，４９）を有しており、頭部（４４）が軸方向移動のためにピストン（１４）と協働するとともにボディ（１２）のシリンダ部（１８）に密接しており、軸部（４３）がボディ（１２）内を軸方向に延びており、軸部（４３）をボディ（１２）内で縮退位置に機械的にロックするためのロック手段（６０）が設けられている、
   ことを特徴とするカートリッジ型液圧テンショナ。
2. 　請求項１において、
   　ボディ（１２）がシリンダ部（１８）と同軸の筒状部（２２）を有しており、ロッド部材（１６）の軸部（４３）が筒状部（２２）にスライド可能に受け入れられており、逆止機能を有するチェック歯（５６）が形成された歯付部が軸部（４３）の長さおよび外周の一部に形成されており、逆止機能を有するポール（６２）が、ボディ（１２）内にスライド自在に受け入れられるとともに、軸部（４３）の一方向のみのスライド移動を許容するように歯付部に係合するとともにボディスプリング（６４）により歯付部の側に付勢されている、
   ことを特徴とするカートリッジ型液圧テンショナ。
3. 　請求項１において、
   　軸部（４３）が、ロック手段（６０）とロック係合するための周溝（５８）を頭部の逆側に有している、
   ことを特徴とするカートリッジ型液圧テンショナ。
4. 　請求項１において、
   　ロッド部材（１６）の頭部（４４）は、スリーブ（４５）がその突起部（４６）を形成しているところのカップ状部分を有しており、突起部（４６）は、ロッド部材（１６）およびピストン（１４）の制限された相互の軸方向移動を許容するように、ピストン（１４）の協働する突起部（３９）または肩部（４０，４１）と係合し得るようになっており、プレッシャースプリング（５４）がピストン（１４）およびロッド部材（１６）の間に配設されている、
   ことを特徴とするカートリッジ型液圧テンショナ。
5. 　請求項１において、
   　ロッド部材（１６）の頭部（４４）が、作動流体のための通路（４８，４９）とチェックバルブ（５３）とを有している、
   ことを特徴とするカートリッジ型液圧テンショナ。
6. 　請求項２において、
   　ロッド部材（１６）がその軸線回りを回転可能になっており、逆止機能を有するチェック歯（５６）が作動状態にあってポール（６２）と係合する位置と、チェック歯（５６）が非作動状態にあってポール（６２）との係合が外れる位置とをとり得るようになっている、
   ことを特徴とするカートリッジ型液圧テンショナ。

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