JP2004132496A - ベルト式自動変速機 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ベルト式自動変速機に関し、非走行レンジから走行レンジへの操作時おいて燃費を損なうことなく確実にベルトスリップを防止できるようにする。
【解決手段】駆動プーリ20及び従動プーリ22の溝幅を変更することにより変速比を変更するベルト式自動変速機において、非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、最低変速比を保持するクランプ力と、駆動プーリと無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が駆動プーリに対するクランプ力の目標値として設定されるように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】駆動プーリ20及び従動プーリ22の溝幅を変更することにより変速比を変更するベルト式自動変速機において、非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、最低変速比を保持するクランプ力と、駆動プーリと無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が駆動プーリに対するクランプ力の目標値として設定されるように構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プーリの溝幅を変更することにより無段階で変速比の変更を行なう、ベルト式自動変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車等の車両に搭載される変速機として無段階で変速を行なう無段自動変速機が開発されている。そして、このような無段自動変速機としては、溝幅を変更可能に構成された一対のプーリ間に無端ベルトを掛け渡したベルト式自動変速機、いわゆるCVT(=Continuously Variable Transmission)が広く知られている。
【0003】
このようなCVTでは、エンジンの出力軸に接続されたプライマリシャフト及び、上記プライマリシャフトに平行に配設されたセカンダリシャフトを備えており、プライマリシャフト上にドライブプーリ(駆動プーリ)が、また、セカンダリシャフト上には、ドリブンプーリ(従動プーリ)が設けられている。
ドライブプーリは、プライマリシャフトと一体に形成された固定シーブと、プライマリシャフト上に設けられて軸方向に移動可能な可動シーブとからなっており、これらのシーブ間にはV字状の溝が形成されている。また、ドリブンプーリも上記ドライブプーリと同様に、セカンダリシャフトと一体に構成された固定シーブと軸方向に移動可能な可動シーブをそなえており、各シーブ間には、やはりV字状の溝が形成されている。
【0004】
そして、これらのドライブプーリとドリブンプーリとの間に無端ベルト(スチールベルト)が掛け渡されており、このベルトを介してドライブプーリの回転駆動力がドリブンプーリに伝達されるようになっている。
つまり、ドライブプーリ側においては、ベルトとドライブプーリとの間の摩擦力によりドライブプーリの回転駆動力がベルトに伝達され、ドリブンプーリ側においては、ベルトとドリブンプーリとの間の摩擦力によりドリブンプーリが回転駆動される。そして、ドライブプーリ及びドリブンプーリにそれぞれ設けられた固定シーブと可動シーブとの間の距離、すなわち溝幅を変更することにより、変速比が変更される。
【0005】
このため、ドライブプーリ側及びドリブンプーリ側には、それぞれ可動シーブを駆動してドライブプーリの溝幅を変更するための油圧ピストン機構が付設されており、油圧ピストン機構にはオイルポンプにより作動油が供給されるようになっている。
なお、ドライブプーリとドリブンプーリとではドライブプーリ側の方が溝幅を狭くするときには大きな力を必要とする(ベルトを介してドリブンプーリの溝幅を拡幅する力が加わるため)。このため、ドライブプーリ側の油圧ピストン機構の方が、ドリブンプーリ側よりも作動油の受圧面積が大きく設定(通常2倍前後)されており、小さい油圧でも大きなベルトクランプ力を発揮できるようになっている。
【0006】
このように構成されたCVTの変速制御では、一般には、車速及びアクセル開度からプライマリシャフトの目標回転速度が設定され、この目標回転速度となるようにフィードバック制御(回転フィードバック制御)が実行される。
また、車速センサによる車速検出が困難となる極低速時(例えば5km/h以下、停車中も含む)には、実ライン圧とのバランスからフルLOW〔変速比がもっとも低速側となる状態(最低変速比)、即ち、ドライブプーリの溝幅が最大となっている状態〕を保持するプライマリ油圧(ドライブプーリ側の油圧)の目標値を設定し、この目標油圧となるようにフィードバック制御(油圧フィードバック制御)が行なわれる。なお、目標プライマリ圧は下式により設定される。
【0007】
目標プライマリ圧=K×実ライン圧(K:フルLOWを保持するプライマリ圧算出係数)
また、目標ライン圧は、プライマリ及びセカンダリ側のベルトスリップを防止する油圧として設定される。
ところで、エンジンの高負荷,高回転運転時等には油温が上昇するが、このような高油温時においては、オイル粘性が低下して各油圧機器の隙間からオイルが漏れ、実ライン圧が低下する場合がある。この場合、実ライン圧に基づいて設定された目標プライマリ圧がベルトをクランプするのに必要な油圧を下回り、ベルトスリップが生じるおそれがある。
【0008】
特に、非走行レンジ(例えばニュートラルレンジ)から走行レンジ(ドライブレンジ又はリバースレンジ)へのシフト(以下、N−D/Rシフトという)時はそれまでライン圧が供給されていなかったクラッチアクチュエータにもライン圧が供給されるため、油圧回路内の油圧が一時的に低下し、ベルトがスリップするおそれがあった。
【0009】
これに対して、従来は、N−D/Rシフト時にはライン圧自体を高めることによりベルトスリップを防止するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−304388号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術では、N−D/Rシフト操作時に常に目標ライン圧を増圧補正するものであるため、実際にベルトを十分にクランプできる油圧が確保されている場合にも必要以上に目標ライン圧を高めてしまうため、燃費が悪化するという課題がある。
【0012】
また、通常、N−D/Rシフト操作時はエンジン回転数が低くオイルポンプの油圧発生能力が低い上に、高油温時では上記オイルの漏れもあり、目標ライン圧を高くしても実ライン圧が目標ライン圧に達しないおそれもある。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、非走行レンジから走行レンジへの操作時おいて燃費を損なうことなく確実にベルトスリップを防止できるようにした、ベルト式自動変速機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明のベルト式自動変速機は、エンジンの回転駆動力が入力される駆動プーリと、該駆動プーリから掛け渡された無端ベルトを介して該駆動プーリからの回転駆動力が伝達される従動プーリとを有し、該駆動プーリ及び該従動プーリの溝幅を変更することにより変速比を変更するベルト式自動変速機において、非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、該駆動プーリに対するクランプ力の目標値として、最低変速比を保持するクランプ力と、該駆動プーリと該無端ベルトとの間ですべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が設定されることを特徴としている。
また、請求項2記載の本発明のベルト式自動変速機は、上記請求項1記載の構成において、該駆動プーリと該無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力は、該駆動プーリと該無端ベルトとの間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に所定のクランプ力を加えた値として設定されることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機について説明すると、図1において、車両に搭載されるエンジン2に連結された変速機ケース4内には、ベルト式自動変速機を構成する変速機構5、同変速機構5とエンジン2との間に介装されたトルクコンバータ6とクラッチ/ブレーキユニット(油圧式係合手段)18、デファレンシャル30等が配設されており、トルクコンバータ6のポンプインペラ8はエンジン2のクランク軸10に接続され、一方、トルクコンバータ6のタービンランナ12はクラッチ/ブレーキユニット18を介してプライマリシャフト14に接続されている。
【0015】
また、プライマリシャフト14及びセカンダリシャフト16上には、それぞれプライマリプーリ(ドライブプーリ又は駆動プーリともいう)20及びセカンダリプーリ(ドリブンプーリ又は従動プーリともいう)22が設けられており、これらプーリ20,22間に無端状の駆動ベルト24が掛け回されている。
また、セカンダリシャフト16はトランスファドライブギヤ26を有し、このトランスファドライブギヤ26からトランスファ軸28及びそのギヤ列を通じてデファレンシャル30に接続されている。駆動軸32はデファレンシャル30に接続されてトランスミッションケース4から延び、車両の駆動輪Wに接続されている。
【0016】
上記変速機構5は、プライマリプーリ20,セカンダリプーリ22及び駆動ベルト24等から構成され、プーリ20,22は、それぞれ可動シーブ34,36及びこれらの可動シーブ34,36に対向する固定シーブ38,39を有しており、互いに対向する固定シーブ38,39と可動シーブ34,36との間にはV字状の溝が形成されている。
【0017】
そして、可動シーブ34,36を軸方向に移動させてV字溝の溝幅を変更することにより、変速比が変更されるようになっている。
また、上述したクラッチ/ブレーキユニット18は、例えばプラネタリギヤユニットを含む前後進切換機構を構成しており、前進用クラッチ又は後進用ブレーキ(何れも図示省略)の係合により、タービンランナ12とプライマリシャフト14との間で回転の伝達方向を正逆のいづれかの方向に切り換えることができるようになっている。また、クラッチ/ブレーキユニット18は、その前進用クラッチ及び後進用ブレーキのいずれの係合をも解除して非走行状態(ニュートラルやパーキング)とする一方、これら前進用クラッチ又は後進用ブレーキを係合させることにより、非走行状態から走行状態(ドライブやリバース)への切り換えを達成することができるようになっている。
【0018】
また、ベルト式自動変速機は、変速機構5及びクラッチ/ブレーキユニット18を作動させるための油圧制御システムを備えている。具体的には、油圧制御システムは油圧ポンプ40を有し、油圧ポンプ40から変速制御回路42及び係合制御回路44を通じてそれぞれ、上述した変速機構5及びクラッチ/ブレーキユニット18に油圧を供給するようになっている。
【0019】
変速制御回路42は、例えば図2に示すように、ライン圧調整バルブ62及び変速制御バルブ64や図示しないソレノイドバルブ等を有して構成されている。ライン圧調整バルブ62は、油圧ポンプ40から供給される作動油の圧力を調整するものであって、このライン圧調整バルブ62により制御された油圧がライン圧としてセカンダリプーリ22の可動シーブ36に供給されるようになっている。また、変速制御バルブ64は、ライン圧をさらに調圧してプライマリプーリ20の可動シーブ34に油圧を供給するようになっている。なお、変速制御バルブ64で調圧された油圧を以降、プライマリ圧という。
【0020】
また、各プーリ20,22は変速制御回路42からのプライマリ圧及びライン圧の供給を受け、それぞれ駆動ベルト24に対する適切な挟持力を発揮するようになっている。そして、各プーリ20,22に供給された圧油により可動シーブ34,36を軸線方向に移動させることで、プライマリ及びセカンダリプーリ20,22における駆動ベルト24の巻き掛け径比を変更し、変速を行なうようになっている。
【0021】
一方、図1に示す係合制御回路44は、例えば複数のソレノイドバルブや油圧制御バルブを組み合わせて構成され、これらのバルブの作動状態を切り換えることにより、クラッチ/ブレーキユニット18に対する油圧の供給状態が制御されるようになっている。
また、係合制御回路44は運転者によるシフトレバー46の切り換え操作に連動するマニュアルバルブ(図示省略)を有しており、マニュアルバルブはその切り換え位置に対応した油路を開き、前進用クラッチ及び後進用ブレーキに対する供給経路の開閉及びその切り換えを行なうようになっている。具体的には、運転者がセレクタレバー46の操作によりニュートラルレンジ(Nレンジ)やパーキングレンジ(Pレンジ)等の非走行レンジを選択すると、マニュアルバルブにより係合制御回路44からクラッチ/ブレーキユニット18への供給経路を閉じた状態となる。この状態で、クラッチ/ブレーキユニット18の前進用クラッチ及び後進用ブレーキは何れも解放されている。
【0022】
そして、運転者がセレクタレバー46を操作してドライブレンジ(Dレンジ)やリバースレンジ(Rレンジ)を選択すると、マニュアルバルブの位置が切り替わり、前進用クラッチ又は後進用ブレーキに対する供給経路が開くようになっている。
また、上述した変速制御回路42及び係合制御回路44における各制御バルブの作動制御は、コントローラ(電子制御ユニット:ECU)50からの制御信号に基づいて行われるようになっている。すなわち、ECU50は変速制御回路42における変速制御バルブ64の作動を制御して変速比を変更する一方、ライン圧調整バルブ62の作動を制御することにより、ライン圧を適切に制御するようになっている。
【0023】
また、ECU50は係合制御回路44における各バルブの作動を制御することにより、前進用クラッチ及び後進用ブレーキをそれぞれ解放状態又は係合状態に切り換えるようになっている。ここで、ECU50はインヒビタスイッチ52に接続されており、このインヒビタスイッチ52からのスイッチ信号に基づいて変速機に対する非走行レンジ(Nレンジ,Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ,Rレンジ)への切り換え操作を検出することができるようになっている。
【0024】
また、変速機ケース4内には、図1及び図2に示すように、タービンランナ12及びプライマリシャフト14の回転速度Nin,Nout を検出する回転速度センサ54,56がそれぞれ設けられており、ECU50には、回転速度センサ54,56で検出された回転速度Nin,Nout がそれぞれ入力されるようになっている。
【0025】
また、図2に示すように、ライン圧調整バルブ62とセカンダリプーリ22との間の油圧供給経路上には実ライン圧PL を検出する圧力センサ(以下、実ライン圧センサという)66が設けられ、また、変速制御バルブ64とプライマリプーリ20との間の油圧供給経路には、プライマリ圧PP を検出する圧力センサ(以下、プライマリ圧センサという)68が設けられている。
【0026】
次に、本発明の要部について説明すると、本発明は非走行レンジ(Nレンジ,Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ,Rレンジ)への切り換え時の制御に特徴がある。つまり、上述の従来の技術の欄でも述べたように、非走行レンジから走行レンジへのシフト(以下、N−D/Rシフトという)は、一般には車両が停車しているときに実行されるが、このような停車時や極低速時は、車速センサにより車速検出が困難となるので、プライマリシャフトの回転数フィードバック制御が実行できない。このため、従来N−D/Rシフト操作時は下式により設定される目標プライマリ圧となるように油圧フィードバック制御が実行されていた。
【0027】
目標プライマリ圧=フルLOWとなる油圧=K×実ライン圧(KはフルLOWを保持する係数)
しかしながら、上述のようなN−D/Rシフト操作時に、それまでライン圧が供給されていなかったクラッチ/ブレーキユニット18にもライン圧が供給されるため、油圧回路内の油圧が一時的に低下し、これにより目標プライマリ圧も低下してベルト24がスリップするおそれがあった。
【0028】
そこで、本発明のベルト式自動変速機では、インヒビタスイッチ52からの検出情報に基づいて、ドライバがN−D/Rシフトを実行したことが検出されると、ECU50に設けられた目標プライマリ圧設定手段501により、下式により目標プライマリ圧が設定されるようになっている。
目標プライマリ圧=max(フルLOWとなる油圧,すべり限界油圧+α):ただし、αはN−D/Rシフト操作時の油圧落ち込みに備えたマージン(所定のクランプ力)である。
【0029】
つまり、本装置では、N−D/R操作時には、フルLOWを保持する油圧と、すべり限界油圧+αとのうち大きい方を目標プライマリ圧として設定するようになっているのである。ここで、フルLOWとは、変速比がもっとも低速側となる状態であって、最低変速比ともいう。また、フルLOWとなる油圧とは、従来通りK×実ライン圧(KはフルLOWを保持する係数)として算出される値であって、最低変速比を保持するクランプ力に相当している。
【0030】
また、すべり限界油圧は、ベルト24が滑らずにクランプできる最低限必要な油圧であって、プライマリプーリ20とベルト24との間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に相当する。なお、すべり限界油圧は、ECU50に設けられたすべり限界油圧算出手段502により算出されるようになっており、エンジン2の推定トルクから算出されるようになっている。ここで、すべり限界油圧の具体的な算出手法については、公知の技術であるので説明を省略する。
【0031】
また、αはN−D/R操作時における油圧低下に備えた余裕代(マージン)であって、予め設定された固定値である。そして、すべり限界油圧+αが、プライマリプーリ20とベルト24との間のすべりを防止するクランプ力に相当している。
また、通常走行時(例えばDレンジ)においては、車速及びアクセル開度からプライマリシャフト14の目標回転速度が設定され、この目標回転速度となるようにフィードバック制御(回転フィードバック制御)が実行されるが、車速センサによる車速検出が困難となる極低速時(例えば5km/h以下、停車中も含む)には、下式によりプライマリ油圧(ドライブプーリ側の油圧)の目標値を設定し、この目標油圧となるようにフィードバック制御(油圧フィードバック制御)が実行されるようになっている。
【0032】
目標プライマリ圧=max(フルLOWとなる油圧,すべり限界油圧)
そして、上述のようにプライマリ圧を設定することにより、ライン圧が十分高いときは目標プライマリ圧をフルLOWを保持する油圧に、ライン圧低下時は必要なクランプ力を発生する油圧に制御することができる。また、N−D/Rシフト時は目標プライマリ圧を油圧の落ち込みに備えた値に設定することができ、オイルポンプ40の油圧性能低下時や、油圧機器から作動油が漏れるような高油温時でもベルト24を確実にクランプできベルトスリップを回避することができる。
なお、N−D/Rシフト時は通常停車しており、プライマリ圧を高くしてもOD側へ変速することはない。
【0033】
本発明の一実施形態に係るベルト式自動変速機は上述のように構成されているので、例えば図3に示すフローチャートに基づいてライン圧制御が実行される。すなわち、ステップS1において、インヒビタスイッチ52からの情報に基づいて非走行レンジから走行レンジへの切り換え(N−D/Rシフト)が実行されたか否かが判定される。
【0034】
そして、N−D/Rシフトの実行が判定されるとステップS2以降に進み、そうでない場合にはリターンする。ステップS2に進んだ場合には、まず変速比がフルLOWとなる状態を保持する油圧P1 が算出される。なお、この油圧P1 は定数Kに実ライン圧PL を乗じることにより算出される。次に、ステップS3に進み、エンジン2の推定トルクからベルト24がスリップしないすべり限界油圧Psを算出するとともに、このすべり限界油圧Psに所定値αを加算して、プライマリプーリ20とベルト24との間のすべりを防止する油圧P2 を算出する。
【0035】
その後、ステップS4において、P1 とP2 を比べて、P1 が大きければステップS5において、この油圧P1 が目標プライマリ圧として設定される。また、P2 が大きければステップS6において、この油圧P2 が目標プライマリ圧として設定される。
そして、ステップS7において、上記ステップS5又はステップS6で設定された目標プライマリ圧を出力するとともに、この目標プライマリ圧となるように変速制御バルブ64がデューティ制御され、ステップS8でN−D/Rシフト終了が判定されると一連の制御が終了する。なお、ステップS8でN−D/Rシフト終了が判定されない場合には、上記ステップS2に戻り、再びステップS2以降のルーチンを実行する。また、ステップS8におけるN−D/Rシフト終了は、ステップS1におけるN−D/Rシフト開始から所定時間経過したか否かにより判定される。
【0036】
以上のように、本発明の一実施形態に係るベルト式自動変速機によれば、非走行レンジから走行レンジへの切り換え(N−D/Rシフト)時には、最低変速比を保持するクランプ力(フルLOWとなる油圧、即ちK×実ライン圧に相当)と、プライマリプーリ20とベルト24との間のすべりを防止するクランプ力(すべり限界油圧+αに相当)とを比較し、このうち大きい方の値がプライマリプーリ20に対するクランプ力の目標値として設定されるので、実ライン圧がベルト24をクランプする圧力よりも低下した場合のみ、目標プライマリ圧がベルト24を確実にクランプできる油圧(すべり限界油圧+α)に変更されることになる。したがって、N−D/Rシフト時にライン圧が低下しない場合には、目標プライマリ圧としてフルLOWとなる油圧が設定されるので、N−D/Rシフト時に常に目標ライン圧を増加させるような従来の技術に対して、必要以上に目標ライン圧を高めるようなことがなくなり、燃費の向上を図ることができるという利点があるほか、N−D/Rシフト時にライン圧が低下しても、ベルト24のスリップを確実に防止することができるという利点がある。
【0037】
なお、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明のベルト式自動変速機によれば、非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、最低変速比を保持するクランプ力と、該駆動プーリと無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が駆動プーリに対するクランプ力の目標値として設定されるので、簡素な構成で燃費を悪化させることなくベルトのスリップを確実に防止することができるという利点がある。
【0039】
また、請求項2記載の本発明のベルト式自動変速機によれば、上記の駆動プーリと無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力は、駆動プーリと無端ベルトとの間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に所定のクランプ力を加えた値として設定されるので、この所定のクランプ力分がスリップを防止する余裕代として作用して、確実にベルトのスリップを防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機の要部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機の作用を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
2 エンジン
20 プライマリプーリ(駆動プーリ)
22 セカンダリプーリ(従動プーリ)
24 ベルト(無端ベルト)
50 ECU(制御手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、プーリの溝幅を変更することにより無段階で変速比の変更を行なう、ベルト式自動変速機に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車等の車両に搭載される変速機として無段階で変速を行なう無段自動変速機が開発されている。そして、このような無段自動変速機としては、溝幅を変更可能に構成された一対のプーリ間に無端ベルトを掛け渡したベルト式自動変速機、いわゆるCVT(=Continuously Variable Transmission)が広く知られている。
【0003】
このようなCVTでは、エンジンの出力軸に接続されたプライマリシャフト及び、上記プライマリシャフトに平行に配設されたセカンダリシャフトを備えており、プライマリシャフト上にドライブプーリ(駆動プーリ)が、また、セカンダリシャフト上には、ドリブンプーリ(従動プーリ)が設けられている。
ドライブプーリは、プライマリシャフトと一体に形成された固定シーブと、プライマリシャフト上に設けられて軸方向に移動可能な可動シーブとからなっており、これらのシーブ間にはV字状の溝が形成されている。また、ドリブンプーリも上記ドライブプーリと同様に、セカンダリシャフトと一体に構成された固定シーブと軸方向に移動可能な可動シーブをそなえており、各シーブ間には、やはりV字状の溝が形成されている。
【0004】
そして、これらのドライブプーリとドリブンプーリとの間に無端ベルト(スチールベルト)が掛け渡されており、このベルトを介してドライブプーリの回転駆動力がドリブンプーリに伝達されるようになっている。
つまり、ドライブプーリ側においては、ベルトとドライブプーリとの間の摩擦力によりドライブプーリの回転駆動力がベルトに伝達され、ドリブンプーリ側においては、ベルトとドリブンプーリとの間の摩擦力によりドリブンプーリが回転駆動される。そして、ドライブプーリ及びドリブンプーリにそれぞれ設けられた固定シーブと可動シーブとの間の距離、すなわち溝幅を変更することにより、変速比が変更される。
【0005】
このため、ドライブプーリ側及びドリブンプーリ側には、それぞれ可動シーブを駆動してドライブプーリの溝幅を変更するための油圧ピストン機構が付設されており、油圧ピストン機構にはオイルポンプにより作動油が供給されるようになっている。
なお、ドライブプーリとドリブンプーリとではドライブプーリ側の方が溝幅を狭くするときには大きな力を必要とする(ベルトを介してドリブンプーリの溝幅を拡幅する力が加わるため)。このため、ドライブプーリ側の油圧ピストン機構の方が、ドリブンプーリ側よりも作動油の受圧面積が大きく設定(通常2倍前後)されており、小さい油圧でも大きなベルトクランプ力を発揮できるようになっている。
【0006】
このように構成されたCVTの変速制御では、一般には、車速及びアクセル開度からプライマリシャフトの目標回転速度が設定され、この目標回転速度となるようにフィードバック制御(回転フィードバック制御)が実行される。
また、車速センサによる車速検出が困難となる極低速時(例えば5km/h以下、停車中も含む)には、実ライン圧とのバランスからフルLOW〔変速比がもっとも低速側となる状態(最低変速比)、即ち、ドライブプーリの溝幅が最大となっている状態〕を保持するプライマリ油圧(ドライブプーリ側の油圧)の目標値を設定し、この目標油圧となるようにフィードバック制御(油圧フィードバック制御)が行なわれる。なお、目標プライマリ圧は下式により設定される。
【0007】
目標プライマリ圧=K×実ライン圧(K:フルLOWを保持するプライマリ圧算出係数)
また、目標ライン圧は、プライマリ及びセカンダリ側のベルトスリップを防止する油圧として設定される。
ところで、エンジンの高負荷,高回転運転時等には油温が上昇するが、このような高油温時においては、オイル粘性が低下して各油圧機器の隙間からオイルが漏れ、実ライン圧が低下する場合がある。この場合、実ライン圧に基づいて設定された目標プライマリ圧がベルトをクランプするのに必要な油圧を下回り、ベルトスリップが生じるおそれがある。
【0008】
特に、非走行レンジ(例えばニュートラルレンジ)から走行レンジ(ドライブレンジ又はリバースレンジ)へのシフト(以下、N−D/Rシフトという)時はそれまでライン圧が供給されていなかったクラッチアクチュエータにもライン圧が供給されるため、油圧回路内の油圧が一時的に低下し、ベルトがスリップするおそれがあった。
【0009】
これに対して、従来は、N−D/Rシフト時にはライン圧自体を高めることによりベルトスリップを防止するようにした技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−304388号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術では、N−D/Rシフト操作時に常に目標ライン圧を増圧補正するものであるため、実際にベルトを十分にクランプできる油圧が確保されている場合にも必要以上に目標ライン圧を高めてしまうため、燃費が悪化するという課題がある。
【0012】
また、通常、N−D/Rシフト操作時はエンジン回転数が低くオイルポンプの油圧発生能力が低い上に、高油温時では上記オイルの漏れもあり、目標ライン圧を高くしても実ライン圧が目標ライン圧に達しないおそれもある。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、非走行レンジから走行レンジへの操作時おいて燃費を損なうことなく確実にベルトスリップを防止できるようにした、ベルト式自動変速機を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明のベルト式自動変速機は、エンジンの回転駆動力が入力される駆動プーリと、該駆動プーリから掛け渡された無端ベルトを介して該駆動プーリからの回転駆動力が伝達される従動プーリとを有し、該駆動プーリ及び該従動プーリの溝幅を変更することにより変速比を変更するベルト式自動変速機において、非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、該駆動プーリに対するクランプ力の目標値として、最低変速比を保持するクランプ力と、該駆動プーリと該無端ベルトとの間ですべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が設定されることを特徴としている。
また、請求項2記載の本発明のベルト式自動変速機は、上記請求項1記載の構成において、該駆動プーリと該無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力は、該駆動プーリと該無端ベルトとの間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に所定のクランプ力を加えた値として設定されることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機について説明すると、図1において、車両に搭載されるエンジン2に連結された変速機ケース4内には、ベルト式自動変速機を構成する変速機構5、同変速機構5とエンジン2との間に介装されたトルクコンバータ6とクラッチ/ブレーキユニット(油圧式係合手段)18、デファレンシャル30等が配設されており、トルクコンバータ6のポンプインペラ8はエンジン2のクランク軸10に接続され、一方、トルクコンバータ6のタービンランナ12はクラッチ/ブレーキユニット18を介してプライマリシャフト14に接続されている。
【0015】
また、プライマリシャフト14及びセカンダリシャフト16上には、それぞれプライマリプーリ(ドライブプーリ又は駆動プーリともいう)20及びセカンダリプーリ(ドリブンプーリ又は従動プーリともいう)22が設けられており、これらプーリ20,22間に無端状の駆動ベルト24が掛け回されている。
また、セカンダリシャフト16はトランスファドライブギヤ26を有し、このトランスファドライブギヤ26からトランスファ軸28及びそのギヤ列を通じてデファレンシャル30に接続されている。駆動軸32はデファレンシャル30に接続されてトランスミッションケース4から延び、車両の駆動輪Wに接続されている。
【0016】
上記変速機構5は、プライマリプーリ20,セカンダリプーリ22及び駆動ベルト24等から構成され、プーリ20,22は、それぞれ可動シーブ34,36及びこれらの可動シーブ34,36に対向する固定シーブ38,39を有しており、互いに対向する固定シーブ38,39と可動シーブ34,36との間にはV字状の溝が形成されている。
【0017】
そして、可動シーブ34,36を軸方向に移動させてV字溝の溝幅を変更することにより、変速比が変更されるようになっている。
また、上述したクラッチ/ブレーキユニット18は、例えばプラネタリギヤユニットを含む前後進切換機構を構成しており、前進用クラッチ又は後進用ブレーキ(何れも図示省略)の係合により、タービンランナ12とプライマリシャフト14との間で回転の伝達方向を正逆のいづれかの方向に切り換えることができるようになっている。また、クラッチ/ブレーキユニット18は、その前進用クラッチ及び後進用ブレーキのいずれの係合をも解除して非走行状態(ニュートラルやパーキング)とする一方、これら前進用クラッチ又は後進用ブレーキを係合させることにより、非走行状態から走行状態(ドライブやリバース)への切り換えを達成することができるようになっている。
【0018】
また、ベルト式自動変速機は、変速機構5及びクラッチ/ブレーキユニット18を作動させるための油圧制御システムを備えている。具体的には、油圧制御システムは油圧ポンプ40を有し、油圧ポンプ40から変速制御回路42及び係合制御回路44を通じてそれぞれ、上述した変速機構5及びクラッチ/ブレーキユニット18に油圧を供給するようになっている。
【0019】
変速制御回路42は、例えば図2に示すように、ライン圧調整バルブ62及び変速制御バルブ64や図示しないソレノイドバルブ等を有して構成されている。ライン圧調整バルブ62は、油圧ポンプ40から供給される作動油の圧力を調整するものであって、このライン圧調整バルブ62により制御された油圧がライン圧としてセカンダリプーリ22の可動シーブ36に供給されるようになっている。また、変速制御バルブ64は、ライン圧をさらに調圧してプライマリプーリ20の可動シーブ34に油圧を供給するようになっている。なお、変速制御バルブ64で調圧された油圧を以降、プライマリ圧という。
【0020】
また、各プーリ20,22は変速制御回路42からのプライマリ圧及びライン圧の供給を受け、それぞれ駆動ベルト24に対する適切な挟持力を発揮するようになっている。そして、各プーリ20,22に供給された圧油により可動シーブ34,36を軸線方向に移動させることで、プライマリ及びセカンダリプーリ20,22における駆動ベルト24の巻き掛け径比を変更し、変速を行なうようになっている。
【0021】
一方、図1に示す係合制御回路44は、例えば複数のソレノイドバルブや油圧制御バルブを組み合わせて構成され、これらのバルブの作動状態を切り換えることにより、クラッチ/ブレーキユニット18に対する油圧の供給状態が制御されるようになっている。
また、係合制御回路44は運転者によるシフトレバー46の切り換え操作に連動するマニュアルバルブ(図示省略)を有しており、マニュアルバルブはその切り換え位置に対応した油路を開き、前進用クラッチ及び後進用ブレーキに対する供給経路の開閉及びその切り換えを行なうようになっている。具体的には、運転者がセレクタレバー46の操作によりニュートラルレンジ(Nレンジ)やパーキングレンジ(Pレンジ)等の非走行レンジを選択すると、マニュアルバルブにより係合制御回路44からクラッチ/ブレーキユニット18への供給経路を閉じた状態となる。この状態で、クラッチ/ブレーキユニット18の前進用クラッチ及び後進用ブレーキは何れも解放されている。
【0022】
そして、運転者がセレクタレバー46を操作してドライブレンジ(Dレンジ)やリバースレンジ(Rレンジ)を選択すると、マニュアルバルブの位置が切り替わり、前進用クラッチ又は後進用ブレーキに対する供給経路が開くようになっている。
また、上述した変速制御回路42及び係合制御回路44における各制御バルブの作動制御は、コントローラ(電子制御ユニット:ECU)50からの制御信号に基づいて行われるようになっている。すなわち、ECU50は変速制御回路42における変速制御バルブ64の作動を制御して変速比を変更する一方、ライン圧調整バルブ62の作動を制御することにより、ライン圧を適切に制御するようになっている。
【0023】
また、ECU50は係合制御回路44における各バルブの作動を制御することにより、前進用クラッチ及び後進用ブレーキをそれぞれ解放状態又は係合状態に切り換えるようになっている。ここで、ECU50はインヒビタスイッチ52に接続されており、このインヒビタスイッチ52からのスイッチ信号に基づいて変速機に対する非走行レンジ(Nレンジ,Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ,Rレンジ)への切り換え操作を検出することができるようになっている。
【0024】
また、変速機ケース4内には、図1及び図2に示すように、タービンランナ12及びプライマリシャフト14の回転速度Nin,Nout を検出する回転速度センサ54,56がそれぞれ設けられており、ECU50には、回転速度センサ54,56で検出された回転速度Nin,Nout がそれぞれ入力されるようになっている。
【0025】
また、図2に示すように、ライン圧調整バルブ62とセカンダリプーリ22との間の油圧供給経路上には実ライン圧PL を検出する圧力センサ(以下、実ライン圧センサという)66が設けられ、また、変速制御バルブ64とプライマリプーリ20との間の油圧供給経路には、プライマリ圧PP を検出する圧力センサ(以下、プライマリ圧センサという)68が設けられている。
【0026】
次に、本発明の要部について説明すると、本発明は非走行レンジ(Nレンジ,Pレンジ)から走行レンジ(Dレンジ,Rレンジ)への切り換え時の制御に特徴がある。つまり、上述の従来の技術の欄でも述べたように、非走行レンジから走行レンジへのシフト(以下、N−D/Rシフトという)は、一般には車両が停車しているときに実行されるが、このような停車時や極低速時は、車速センサにより車速検出が困難となるので、プライマリシャフトの回転数フィードバック制御が実行できない。このため、従来N−D/Rシフト操作時は下式により設定される目標プライマリ圧となるように油圧フィードバック制御が実行されていた。
【0027】
目標プライマリ圧=フルLOWとなる油圧=K×実ライン圧(KはフルLOWを保持する係数)
しかしながら、上述のようなN−D/Rシフト操作時に、それまでライン圧が供給されていなかったクラッチ/ブレーキユニット18にもライン圧が供給されるため、油圧回路内の油圧が一時的に低下し、これにより目標プライマリ圧も低下してベルト24がスリップするおそれがあった。
【0028】
そこで、本発明のベルト式自動変速機では、インヒビタスイッチ52からの検出情報に基づいて、ドライバがN−D/Rシフトを実行したことが検出されると、ECU50に設けられた目標プライマリ圧設定手段501により、下式により目標プライマリ圧が設定されるようになっている。
目標プライマリ圧=max(フルLOWとなる油圧,すべり限界油圧+α):ただし、αはN−D/Rシフト操作時の油圧落ち込みに備えたマージン(所定のクランプ力)である。
【0029】
つまり、本装置では、N−D/R操作時には、フルLOWを保持する油圧と、すべり限界油圧+αとのうち大きい方を目標プライマリ圧として設定するようになっているのである。ここで、フルLOWとは、変速比がもっとも低速側となる状態であって、最低変速比ともいう。また、フルLOWとなる油圧とは、従来通りK×実ライン圧(KはフルLOWを保持する係数)として算出される値であって、最低変速比を保持するクランプ力に相当している。
【0030】
また、すべり限界油圧は、ベルト24が滑らずにクランプできる最低限必要な油圧であって、プライマリプーリ20とベルト24との間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に相当する。なお、すべり限界油圧は、ECU50に設けられたすべり限界油圧算出手段502により算出されるようになっており、エンジン2の推定トルクから算出されるようになっている。ここで、すべり限界油圧の具体的な算出手法については、公知の技術であるので説明を省略する。
【0031】
また、αはN−D/R操作時における油圧低下に備えた余裕代(マージン)であって、予め設定された固定値である。そして、すべり限界油圧+αが、プライマリプーリ20とベルト24との間のすべりを防止するクランプ力に相当している。
また、通常走行時(例えばDレンジ)においては、車速及びアクセル開度からプライマリシャフト14の目標回転速度が設定され、この目標回転速度となるようにフィードバック制御(回転フィードバック制御)が実行されるが、車速センサによる車速検出が困難となる極低速時(例えば5km/h以下、停車中も含む)には、下式によりプライマリ油圧(ドライブプーリ側の油圧)の目標値を設定し、この目標油圧となるようにフィードバック制御(油圧フィードバック制御)が実行されるようになっている。
【0032】
目標プライマリ圧=max(フルLOWとなる油圧,すべり限界油圧)
そして、上述のようにプライマリ圧を設定することにより、ライン圧が十分高いときは目標プライマリ圧をフルLOWを保持する油圧に、ライン圧低下時は必要なクランプ力を発生する油圧に制御することができる。また、N−D/Rシフト時は目標プライマリ圧を油圧の落ち込みに備えた値に設定することができ、オイルポンプ40の油圧性能低下時や、油圧機器から作動油が漏れるような高油温時でもベルト24を確実にクランプできベルトスリップを回避することができる。
なお、N−D/Rシフト時は通常停車しており、プライマリ圧を高くしてもOD側へ変速することはない。
【0033】
本発明の一実施形態に係るベルト式自動変速機は上述のように構成されているので、例えば図3に示すフローチャートに基づいてライン圧制御が実行される。すなわち、ステップS1において、インヒビタスイッチ52からの情報に基づいて非走行レンジから走行レンジへの切り換え(N−D/Rシフト)が実行されたか否かが判定される。
【0034】
そして、N−D/Rシフトの実行が判定されるとステップS2以降に進み、そうでない場合にはリターンする。ステップS2に進んだ場合には、まず変速比がフルLOWとなる状態を保持する油圧P1 が算出される。なお、この油圧P1 は定数Kに実ライン圧PL を乗じることにより算出される。次に、ステップS3に進み、エンジン2の推定トルクからベルト24がスリップしないすべり限界油圧Psを算出するとともに、このすべり限界油圧Psに所定値αを加算して、プライマリプーリ20とベルト24との間のすべりを防止する油圧P2 を算出する。
【0035】
その後、ステップS4において、P1 とP2 を比べて、P1 が大きければステップS5において、この油圧P1 が目標プライマリ圧として設定される。また、P2 が大きければステップS6において、この油圧P2 が目標プライマリ圧として設定される。
そして、ステップS7において、上記ステップS5又はステップS6で設定された目標プライマリ圧を出力するとともに、この目標プライマリ圧となるように変速制御バルブ64がデューティ制御され、ステップS8でN−D/Rシフト終了が判定されると一連の制御が終了する。なお、ステップS8でN−D/Rシフト終了が判定されない場合には、上記ステップS2に戻り、再びステップS2以降のルーチンを実行する。また、ステップS8におけるN−D/Rシフト終了は、ステップS1におけるN−D/Rシフト開始から所定時間経過したか否かにより判定される。
【0036】
以上のように、本発明の一実施形態に係るベルト式自動変速機によれば、非走行レンジから走行レンジへの切り換え(N−D/Rシフト)時には、最低変速比を保持するクランプ力(フルLOWとなる油圧、即ちK×実ライン圧に相当)と、プライマリプーリ20とベルト24との間のすべりを防止するクランプ力(すべり限界油圧+αに相当)とを比較し、このうち大きい方の値がプライマリプーリ20に対するクランプ力の目標値として設定されるので、実ライン圧がベルト24をクランプする圧力よりも低下した場合のみ、目標プライマリ圧がベルト24を確実にクランプできる油圧(すべり限界油圧+α)に変更されることになる。したがって、N−D/Rシフト時にライン圧が低下しない場合には、目標プライマリ圧としてフルLOWとなる油圧が設定されるので、N−D/Rシフト時に常に目標ライン圧を増加させるような従来の技術に対して、必要以上に目標ライン圧を高めるようなことがなくなり、燃費の向上を図ることができるという利点があるほか、N−D/Rシフト時にライン圧が低下しても、ベルト24のスリップを確実に防止することができるという利点がある。
【0037】
なお、本願発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明のベルト式自動変速機によれば、非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、最低変速比を保持するクランプ力と、該駆動プーリと無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が駆動プーリに対するクランプ力の目標値として設定されるので、簡素な構成で燃費を悪化させることなくベルトのスリップを確実に防止することができるという利点がある。
【0039】
また、請求項2記載の本発明のベルト式自動変速機によれば、上記の駆動プーリと無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力は、駆動プーリと無端ベルトとの間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に所定のクランプ力を加えた値として設定されるので、この所定のクランプ力分がスリップを防止する余裕代として作用して、確実にベルトのスリップを防止することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機の要部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるベルト式自動変速機の作用を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
2 エンジン
20 プライマリプーリ(駆動プーリ)
22 セカンダリプーリ(従動プーリ)
24 ベルト(無端ベルト)
50 ECU(制御手段)
Claims (2)
- エンジンの回転駆動力が入力される駆動プーリと、該駆動プーリから掛け渡された無端ベルトを介して該駆動プーリからの回転駆動力が伝達される従動プーリとを有し、
該駆動プーリ及び該従動プーリの溝幅を変更することにより変速比を変更するベルト式自動変速機において、
非走行レンジから走行レンジへの切り換え時には、最低変速比を保持するクランプ力と、該駆動プーリと該無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力とのうち、大きい方の値が該駆動プーリに対するクランプ力の目標値として設定されることを特徴とする、ベルト式自動変速機。 - 該駆動プーリと該無端ベルトとの間のすべりを防止するクランプ力は、該駆動プーリと該無端ベルトとの間においてすべりが発生しない最低限のクランプ力に所定のクランプ力を加えた値として設定される
ことを特徴とする、請求項1記載のベルト式自動変速機。
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JP2008039027A (ja) * | 2006-08-04 | 2008-02-21 | Toyota Motor Corp | 車両用ベルト式無段変速機の制御装置 |
-
2002
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