JP2004131933A - 既設建築物の補強方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】比較的簡易でありながら大きな補強効果を発揮する既設建築物の補強方法を提供すること。
【解決手段】既設建築物における水平及び/又は垂直の主構造体の外周全体を覆う薄板帯材からなる補強材で包囲しつつ所要箇所で補強金具を介して前記主構造体に順次固定し、さらに、これら薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入り口等の開口部を除く壁面に2枚の薄板帯材からなる壁面補強材をX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各構造材に固定する、ように構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】既設建築物における水平及び/又は垂直の主構造体の外周全体を覆う薄板帯材からなる補強材で包囲しつつ所要箇所で補強金具を介して前記主構造体に順次固定し、さらに、これら薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入り口等の開口部を除く壁面に2枚の薄板帯材からなる壁面補強材をX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各構造材に固定する、ように構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設建築物の補強方法に関し、特に既設建築物の外部の補強方法に関する。ここで対象とする建築物は、木造建築物、鉄骨構造建築物、軽量鉄骨構造建築物等であるが、特に木造建築物に対して大きな効果を発揮する。
【0002】
【従来の技術】
多くの建築物にあっては、外部から内側もしくは上側から下側への応力については、内部構造材どうしが強固に組み合わされており、比較的高い抵抗力を示すことは知られている。
【0003】
しかしながら、この逆の応力、すなわち内側から外向きに作用する応力もしくは下側から上向きに作用する応力については脆弱であることも指摘されている。かかる事実は、地震、台風、竜巻などの天災の際に各構造材間の係合が外れることにより建築物が比較的簡単に傾斜、倒壊、屋根がめくれ上がり、極端な場合には屋根全体が吹き飛ばされてしまうなどの被害が多発することからも明らかである。
【0004】
このような原因は、内部構造体から引き離すような応力に抗して外側構造体を引き止める機能が不足する点にあるものと解される。かかる現象は、例えば土台、桁、胴差し等の水平主構造体の組み合わせと、柱に代表される垂直主構造体との結合が材料どうしに形成されたほぞ(臍)及びほぞ穴の嵌合を基本として組立てられている木造建築において特に著しい。
【0005】
近年の木造建築においては、水平主構造体と垂直主構造体との結合部には羽子板ボルト、かすがい(鎹)類などの補強金具が用いられて、耐震性を高める工夫がなされているものも多い。しかし、建築年度の低いものや比較的簡易な仕上げの既設建築物にあってはこのような配慮がなされていないことが多い。
【0006】
大震災、竜巻、台風等の各種天災による被害を減少させるため、各種の建築物補強方法が提案され、実施されているが、あるものは極めて大きな工事を伴い、費用及び工期の点で問題となることが多い。またあるものは簡易に過ぎ、震度、風速等の上限の特定が不可能な天災に対する実効性が問題となるものもある。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術にかかる補強方法の問題点を解消し、比較的簡易でありながら大きな効果を発揮する既設建築物の補強方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、既設建築物における水平及び/又は垂直の主構造体の外周全体を覆う薄板帯材からなる主構造体補強材10、20、30で包囲しつつ所要箇所で補強金具を介して前記主構造体に順次固定する建築物の補強方法によって解決される。
【0009】
さらに本発明の課題は、これら薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入り口等の開口部を除く壁面に2枚の薄板帯材からなる壁面補強材40をX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各構造材に固定する、既設建築物の補強方法によってより有利に解決される。
【0010】
また、この発明の課題は、前記X字状壁面補強材40の中間部を可能な限り間柱32又は同様の構造材に固定する、既設建築物の補強方法によって有利に解決される。なお、前記水平主構造体は、土台、梁、胴差しのいずれかまたは全てである。
【0011】
なお、本発明における前記主構造体補強材10、20、30と壁面補強材40との接合部Jは、各部材が重なり合うように形成する方が各補強材間はより堅固に接合されるが、接合部の形状等によっては、それぞれの部材が重なり合うことなく平坦状に形成され、主構造体補強材20、30又は壁面補強材40に互いに嵌まり合う切り欠き部を形成するように構成してもよい。
【0012】
本発明にかかる既設建築物の補強方法によれば、水平及び/又は垂直の主構造体およびそれらの接合部全体を薄板帯材による補強材で覆いつつ所要箇所で補強金具を介して順次主構造体に固定し、さらにこれら薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入り口等の開口部を除く壁面に薄板帯材からなる壁面補強材でX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各主構造体に固定している。
【0013】
このような薄板帯材によって、土台、桁、多層階にあっては胴差し等の水平主構造体全体を包囲する補強材は、当該建築物の水平主構造体部分を外側から押えつけることから桶の箍(たが)と同様に機能する。また、上下の水平主構造体周りの補強材間をそれぞれ2枚の薄板帯材によって相互に接続するX字状の壁面補強材は、土台−桁間、また2階建てにあっては土台−胴差し間、胴差し−桁間等の間隔を等しく保つような引張り力を発揮する。
【0014】
このような本発明にかかる既設建築物の補強方法によれば、水平主構造体の接合部付近は、それぞれ補強金具によって水平及び垂直の各主構造体に強固に固定されている。したがって、水平主構造体およびそれらの接合部が震災時の縦ゆれ・横揺れ、暴風等による振動や繰り返し応力によって離脱もしくは脱落する事態、さらにはこれに伴って垂直主構造体との接合部が離脱もしくは脱落し、ひいては建築物全体が横倒しもしくは倒壊する危険を防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図を参照しつつ本発明にかかる既設建築物の補強方法の実施の形態について開示する。図1は本発明にかかる1階建て既設建築物の補強方法を施した状態を示す部分正面図である。
【0016】
図1において、基礎Bの上に設置されている水平主構造体である土台の上には薄板帯材による土台補強材10が補強金具12および14によって固着されている。また、屋根Rを支える水平主構造体である桁の上には薄板帯材による桁補強材20が補強金具22および24によって固着されている。桁補強材20の上方に繋がる屋根構造体にも、X字状の壁面補強材40を適宜取り付けることができる。
【0017】
さらに、垂直主構造体である柱の上には薄板帯材による柱補強材30が補強金具12及び22ならびに14及び24によって固着されている。このような補強材によっても耐震性は大幅に改善される。
【0018】
さらに、この実施例では各水平主構造体の補強のための土台補強材10と桁補強材20との間、かつ補強金具12と24との間ならびに14と22との間にはそれぞれ2枚の薄板帯材による壁面補強材40がX字状に固定されている。なお、これらX字状の壁面補強材40の裏側に破線で示した間柱32があればその間柱に固定材42によって固定されている。
【0019】
図1では建築物の正面のみを示しているが、右側面及びその他の面においても土台及び桁等の水平主構造体周りは同様に水平主構造体に補強材が取り付けられている。なお、図1の左側に描かれた柱の左には窓50があるため、上下の水平主構造体である土台補強材と桁補強材との間をX字状に連結する壁面補強材は設けていない。このような窓のほか、出入口、戸袋、縁側等にも当然設けることはできない。しかし、土台回りや桁周り等の水平主構造体には薄板帯材による補強材が固着可能であるため、十分な補強がなされている。
【0020】
図2は、2階建てである既設建築物に本発明にかかる補強方法を適用した状態を示す斜視図であり、図1と同じ部材には同じ参照符号を付している。土台補強材10、桁補強材20に加えて階上と階下との間に存在する水平主構造体である胴差し周りにも上下と同様の胴差し補強材60が固着されている。さらに、窓50、出入口52等の開放部または戸袋、廊下等の存在する開放部位を除き、上下の水平主構造体周りの補強材の間は、それぞれ2枚の壁面補強材40によってX字状に連結されている。
【0021】
このような構成の補強を行った結果、土台周り、桁周り、胴差し周りはそれぞれ全体をつなぎ合わせた薄板帯材によって一体的に包囲して強固な水平主構造体補強材となっている。さらに、上下の水平主構造体間は、垂直主構造体補強材である柱補強材並びにX字状に組み合わされた2枚の壁面補強材により随所で連結されている。
【0022】
したがって、震災や暴風等による繰り返し応力を受けた場合であっても、各々の水平主構造体の臍孔から垂直主構造体である柱の臍が飛び出すことにより建築物が傾斜、倒壊等する事態を回避することができ、耐震性を含む強度を大幅に向上させることができる。
【0023】
図3は、構造体補強材と壁面補強材とが接合する部分の構成を例示するものである。主構造体補強材20、30および壁面補強材40との接合部Jは、それぞれが重なり合うことなく平坦状(直線状)になるように形成されており、主構造体補強材20と30には壁面補強材40の先端部が嵌まり込む切り欠き部201、301を形成している。切り欠き部は互いに嵌まり合うものであればよく、切り欠き部を壁面補強材40に形成して主構造体補強材20、30にこれに嵌まり合う突起部を形成してもよい。これらが組み合わさった接合部Jは、点線で示した補強金具および固定金具により全体が固定される。なお、主構造体補強材と壁面補強材との接合形態は、各部材が重なり合うようなものでもよく、この場合が各補強材間をより堅固に接合できる。
【0024】
図4は、薄板帯材による各補強材を水平及び/又は垂直の主構造体に固定するための補強金具の例を示すものである。外形は、建築物の種類等により様々な形態が有り得るが、図1に示した1/4円形状、円形状又はこれらを折り曲げタイプとした補強金具の他に、凸字形(図(A))、十字形(図(B))、方形の直角折り曲げタイプ(図(C))、半円形(図(D))、方形(図(E))、楕円形(図(F))などいずれでもよく、それぞれ固定金具のための穴が適宜数設けられる。
【0025】
図(C)のような折り曲げタイプの補強金具は、出隅または入り隅用として用いられ、その他金具も必要に応じて中心に描いた破線にしたがって曲げ加工してもよい。また、上述の補強金具によって薄板帯体を水平及び垂直主構造体に固定する固定金具については、補強金具と薄板帯体とを固着するリベットが好適である。なお、木造建築物にあっては所要本数の釘、木ねじを使用することができ、軽量鉄骨や鉄骨構造にあってはタップねじやボルトを用いることもできる。
【0026】
これらのリベット、釘、木ねじ、タップねじ、ボルト等の寸法、本数等は被補強既設建築物の規模、階層数、重要度等によって決定されるべきものである。また、それぞれの工程における手順を害することなく、順次連結してゆく必要がある。このような連結が十分に行われないと、所期の補強強化が期待できないことになる。
【0027】
上述のように補強工事の行われた建築物の外壁については、従来の壁面上に、適宜メッキ等を施した金属薄板帯板材やステンレススチール帯板材等にあっては、そのまま使用することも可能ではあるが、諸般の情勢を考慮してこれら補強材の上に外装を施すことができる。このような外装としては、外観の優れた外装材、例えば合成外壁材やサイディング材を取り付けることにより、断熱、遮音効果を高めることができ、また従来とはまったく異なる色彩及び表面外観を得ることができ、補強工事に併せて既設建築物のイメージチェンジを図ることもできる。
【0028】
なお、ここに示す補強工事にあたって外壁面の素材の劣化や汚損が進行している場合には、予めこれら旧来の外壁面を除去してから主構造体に直接補強工事を施した後、これら補強材全体を包囲するように新たなサイディング材その他の外装材を取り付けることにより化粧仕上げを行っても良い。
【0029】
また、上述のような主構造体を中心とした補強方法に加えて、土台補強材10を基礎Bに固定する工事ならびに桁と屋根Rとの間を固定する補強工事、屋根構造体の補強工事を併用することにより、既設建築物に対してさらに強固な補強を行うことができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明にかかる既設建築物の補強方法によれば、土台、桁、胴差し等の各水平主構造体全体が薄板帯材によって外側から包囲固定される結果、これら水平主構造体どうしが離脱してしまう事態を防止することができる。さらに、上述の水平主構造体に対する補強材に加えて垂直主構造体に沿った薄板帯材の固定により水平主構造体から垂直主構造体(柱)が離脱する事態を防止することができる。
【0031】
これら水平主構造体並びに垂直主構造体に沿った薄板帯材による主構造体補強材に加えて、適宜箇所に2枚の薄板帯材をX字状に組み合わせた壁面補強材を取り付け固定することにより、上下の水平主構造体間の連結がより強固に行われることになり大きな補強効果を発揮する。
【0032】
このような補強工事は外壁材をそのままにして施すことも可能であり、かかる補強工事後適宜外装材の取り付けにより、補強された既設建築物の外観を一新することができると共に、断熱、遮音効果を格段に高めることができる。また、老朽化または劣化した外壁面を除去した上で本発明にかかる補強工事を実施し、その後改めて外壁材やサイディング材を貼り付けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】1階建て既設建築物に補強工事を施した状態を例示する正面図である。
【図2】2階建て既設建築物に補強工事を施した状態を例示する斜視図である。
【図3】本発明にかかる構造体補強材と壁面補強材とが接合する部分の構成例を示す図である。
【図4】補強材固定金具の外形例を示す平面図および斜視図である。
【符号の説明】
10 土台(水平主構造体)補強材
12、14 補強金具
20 桁(水平主構造体)補強材
22、24 補強金具
30 柱(垂直主構造体)補強材
32 間柱
40 壁面(X字状)補強材
42 固定材
50 窓
52 出入口
60 胴差し(水平主構造体)補強材
B 基礎
R 屋根
J 接合部
201 切り欠き部
301 切り欠き部
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設建築物の補強方法に関し、特に既設建築物の外部の補強方法に関する。ここで対象とする建築物は、木造建築物、鉄骨構造建築物、軽量鉄骨構造建築物等であるが、特に木造建築物に対して大きな効果を発揮する。
【0002】
【従来の技術】
多くの建築物にあっては、外部から内側もしくは上側から下側への応力については、内部構造材どうしが強固に組み合わされており、比較的高い抵抗力を示すことは知られている。
【0003】
しかしながら、この逆の応力、すなわち内側から外向きに作用する応力もしくは下側から上向きに作用する応力については脆弱であることも指摘されている。かかる事実は、地震、台風、竜巻などの天災の際に各構造材間の係合が外れることにより建築物が比較的簡単に傾斜、倒壊、屋根がめくれ上がり、極端な場合には屋根全体が吹き飛ばされてしまうなどの被害が多発することからも明らかである。
【0004】
このような原因は、内部構造体から引き離すような応力に抗して外側構造体を引き止める機能が不足する点にあるものと解される。かかる現象は、例えば土台、桁、胴差し等の水平主構造体の組み合わせと、柱に代表される垂直主構造体との結合が材料どうしに形成されたほぞ(臍)及びほぞ穴の嵌合を基本として組立てられている木造建築において特に著しい。
【0005】
近年の木造建築においては、水平主構造体と垂直主構造体との結合部には羽子板ボルト、かすがい(鎹)類などの補強金具が用いられて、耐震性を高める工夫がなされているものも多い。しかし、建築年度の低いものや比較的簡易な仕上げの既設建築物にあってはこのような配慮がなされていないことが多い。
【0006】
大震災、竜巻、台風等の各種天災による被害を減少させるため、各種の建築物補強方法が提案され、実施されているが、あるものは極めて大きな工事を伴い、費用及び工期の点で問題となることが多い。またあるものは簡易に過ぎ、震度、風速等の上限の特定が不可能な天災に対する実効性が問題となるものもある。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような従来技術にかかる補強方法の問題点を解消し、比較的簡易でありながら大きな効果を発揮する既設建築物の補強方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、既設建築物における水平及び/又は垂直の主構造体の外周全体を覆う薄板帯材からなる主構造体補強材10、20、30で包囲しつつ所要箇所で補強金具を介して前記主構造体に順次固定する建築物の補強方法によって解決される。
【0009】
さらに本発明の課題は、これら薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入り口等の開口部を除く壁面に2枚の薄板帯材からなる壁面補強材40をX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各構造材に固定する、既設建築物の補強方法によってより有利に解決される。
【0010】
また、この発明の課題は、前記X字状壁面補強材40の中間部を可能な限り間柱32又は同様の構造材に固定する、既設建築物の補強方法によって有利に解決される。なお、前記水平主構造体は、土台、梁、胴差しのいずれかまたは全てである。
【0011】
なお、本発明における前記主構造体補強材10、20、30と壁面補強材40との接合部Jは、各部材が重なり合うように形成する方が各補強材間はより堅固に接合されるが、接合部の形状等によっては、それぞれの部材が重なり合うことなく平坦状に形成され、主構造体補強材20、30又は壁面補強材40に互いに嵌まり合う切り欠き部を形成するように構成してもよい。
【0012】
本発明にかかる既設建築物の補強方法によれば、水平及び/又は垂直の主構造体およびそれらの接合部全体を薄板帯材による補強材で覆いつつ所要箇所で補強金具を介して順次主構造体に固定し、さらにこれら薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入り口等の開口部を除く壁面に薄板帯材からなる壁面補強材でX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各主構造体に固定している。
【0013】
このような薄板帯材によって、土台、桁、多層階にあっては胴差し等の水平主構造体全体を包囲する補強材は、当該建築物の水平主構造体部分を外側から押えつけることから桶の箍(たが)と同様に機能する。また、上下の水平主構造体周りの補強材間をそれぞれ2枚の薄板帯材によって相互に接続するX字状の壁面補強材は、土台−桁間、また2階建てにあっては土台−胴差し間、胴差し−桁間等の間隔を等しく保つような引張り力を発揮する。
【0014】
このような本発明にかかる既設建築物の補強方法によれば、水平主構造体の接合部付近は、それぞれ補強金具によって水平及び垂直の各主構造体に強固に固定されている。したがって、水平主構造体およびそれらの接合部が震災時の縦ゆれ・横揺れ、暴風等による振動や繰り返し応力によって離脱もしくは脱落する事態、さらにはこれに伴って垂直主構造体との接合部が離脱もしくは脱落し、ひいては建築物全体が横倒しもしくは倒壊する危険を防止することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、添付図を参照しつつ本発明にかかる既設建築物の補強方法の実施の形態について開示する。図1は本発明にかかる1階建て既設建築物の補強方法を施した状態を示す部分正面図である。
【0016】
図1において、基礎Bの上に設置されている水平主構造体である土台の上には薄板帯材による土台補強材10が補強金具12および14によって固着されている。また、屋根Rを支える水平主構造体である桁の上には薄板帯材による桁補強材20が補強金具22および24によって固着されている。桁補強材20の上方に繋がる屋根構造体にも、X字状の壁面補強材40を適宜取り付けることができる。
【0017】
さらに、垂直主構造体である柱の上には薄板帯材による柱補強材30が補強金具12及び22ならびに14及び24によって固着されている。このような補強材によっても耐震性は大幅に改善される。
【0018】
さらに、この実施例では各水平主構造体の補強のための土台補強材10と桁補強材20との間、かつ補強金具12と24との間ならびに14と22との間にはそれぞれ2枚の薄板帯材による壁面補強材40がX字状に固定されている。なお、これらX字状の壁面補強材40の裏側に破線で示した間柱32があればその間柱に固定材42によって固定されている。
【0019】
図1では建築物の正面のみを示しているが、右側面及びその他の面においても土台及び桁等の水平主構造体周りは同様に水平主構造体に補強材が取り付けられている。なお、図1の左側に描かれた柱の左には窓50があるため、上下の水平主構造体である土台補強材と桁補強材との間をX字状に連結する壁面補強材は設けていない。このような窓のほか、出入口、戸袋、縁側等にも当然設けることはできない。しかし、土台回りや桁周り等の水平主構造体には薄板帯材による補強材が固着可能であるため、十分な補強がなされている。
【0020】
図2は、2階建てである既設建築物に本発明にかかる補強方法を適用した状態を示す斜視図であり、図1と同じ部材には同じ参照符号を付している。土台補強材10、桁補強材20に加えて階上と階下との間に存在する水平主構造体である胴差し周りにも上下と同様の胴差し補強材60が固着されている。さらに、窓50、出入口52等の開放部または戸袋、廊下等の存在する開放部位を除き、上下の水平主構造体周りの補強材の間は、それぞれ2枚の壁面補強材40によってX字状に連結されている。
【0021】
このような構成の補強を行った結果、土台周り、桁周り、胴差し周りはそれぞれ全体をつなぎ合わせた薄板帯材によって一体的に包囲して強固な水平主構造体補強材となっている。さらに、上下の水平主構造体間は、垂直主構造体補強材である柱補強材並びにX字状に組み合わされた2枚の壁面補強材により随所で連結されている。
【0022】
したがって、震災や暴風等による繰り返し応力を受けた場合であっても、各々の水平主構造体の臍孔から垂直主構造体である柱の臍が飛び出すことにより建築物が傾斜、倒壊等する事態を回避することができ、耐震性を含む強度を大幅に向上させることができる。
【0023】
図3は、構造体補強材と壁面補強材とが接合する部分の構成を例示するものである。主構造体補強材20、30および壁面補強材40との接合部Jは、それぞれが重なり合うことなく平坦状(直線状)になるように形成されており、主構造体補強材20と30には壁面補強材40の先端部が嵌まり込む切り欠き部201、301を形成している。切り欠き部は互いに嵌まり合うものであればよく、切り欠き部を壁面補強材40に形成して主構造体補強材20、30にこれに嵌まり合う突起部を形成してもよい。これらが組み合わさった接合部Jは、点線で示した補強金具および固定金具により全体が固定される。なお、主構造体補強材と壁面補強材との接合形態は、各部材が重なり合うようなものでもよく、この場合が各補強材間をより堅固に接合できる。
【0024】
図4は、薄板帯材による各補強材を水平及び/又は垂直の主構造体に固定するための補強金具の例を示すものである。外形は、建築物の種類等により様々な形態が有り得るが、図1に示した1/4円形状、円形状又はこれらを折り曲げタイプとした補強金具の他に、凸字形(図(A))、十字形(図(B))、方形の直角折り曲げタイプ(図(C))、半円形(図(D))、方形(図(E))、楕円形(図(F))などいずれでもよく、それぞれ固定金具のための穴が適宜数設けられる。
【0025】
図(C)のような折り曲げタイプの補強金具は、出隅または入り隅用として用いられ、その他金具も必要に応じて中心に描いた破線にしたがって曲げ加工してもよい。また、上述の補強金具によって薄板帯体を水平及び垂直主構造体に固定する固定金具については、補強金具と薄板帯体とを固着するリベットが好適である。なお、木造建築物にあっては所要本数の釘、木ねじを使用することができ、軽量鉄骨や鉄骨構造にあってはタップねじやボルトを用いることもできる。
【0026】
これらのリベット、釘、木ねじ、タップねじ、ボルト等の寸法、本数等は被補強既設建築物の規模、階層数、重要度等によって決定されるべきものである。また、それぞれの工程における手順を害することなく、順次連結してゆく必要がある。このような連結が十分に行われないと、所期の補強強化が期待できないことになる。
【0027】
上述のように補強工事の行われた建築物の外壁については、従来の壁面上に、適宜メッキ等を施した金属薄板帯板材やステンレススチール帯板材等にあっては、そのまま使用することも可能ではあるが、諸般の情勢を考慮してこれら補強材の上に外装を施すことができる。このような外装としては、外観の優れた外装材、例えば合成外壁材やサイディング材を取り付けることにより、断熱、遮音効果を高めることができ、また従来とはまったく異なる色彩及び表面外観を得ることができ、補強工事に併せて既設建築物のイメージチェンジを図ることもできる。
【0028】
なお、ここに示す補強工事にあたって外壁面の素材の劣化や汚損が進行している場合には、予めこれら旧来の外壁面を除去してから主構造体に直接補強工事を施した後、これら補強材全体を包囲するように新たなサイディング材その他の外装材を取り付けることにより化粧仕上げを行っても良い。
【0029】
また、上述のような主構造体を中心とした補強方法に加えて、土台補強材10を基礎Bに固定する工事ならびに桁と屋根Rとの間を固定する補強工事、屋根構造体の補強工事を併用することにより、既設建築物に対してさらに強固な補強を行うことができる。
【0030】
【発明の効果】
本発明にかかる既設建築物の補強方法によれば、土台、桁、胴差し等の各水平主構造体全体が薄板帯材によって外側から包囲固定される結果、これら水平主構造体どうしが離脱してしまう事態を防止することができる。さらに、上述の水平主構造体に対する補強材に加えて垂直主構造体に沿った薄板帯材の固定により水平主構造体から垂直主構造体(柱)が離脱する事態を防止することができる。
【0031】
これら水平主構造体並びに垂直主構造体に沿った薄板帯材による主構造体補強材に加えて、適宜箇所に2枚の薄板帯材をX字状に組み合わせた壁面補強材を取り付け固定することにより、上下の水平主構造体間の連結がより強固に行われることになり大きな補強効果を発揮する。
【0032】
このような補強工事は外壁材をそのままにして施すことも可能であり、かかる補強工事後適宜外装材の取り付けにより、補強された既設建築物の外観を一新することができると共に、断熱、遮音効果を格段に高めることができる。また、老朽化または劣化した外壁面を除去した上で本発明にかかる補強工事を実施し、その後改めて外壁材やサイディング材を貼り付けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】1階建て既設建築物に補強工事を施した状態を例示する正面図である。
【図2】2階建て既設建築物に補強工事を施した状態を例示する斜視図である。
【図3】本発明にかかる構造体補強材と壁面補強材とが接合する部分の構成例を示す図である。
【図4】補強材固定金具の外形例を示す平面図および斜視図である。
【符号の説明】
10 土台(水平主構造体)補強材
12、14 補強金具
20 桁(水平主構造体)補強材
22、24 補強金具
30 柱(垂直主構造体)補強材
32 間柱
40 壁面(X字状)補強材
42 固定材
50 窓
52 出入口
60 胴差し(水平主構造体)補強材
B 基礎
R 屋根
J 接合部
201 切り欠き部
301 切り欠き部
Claims (5)
- 既設建築物における水平及び/又は垂直の主構造体の外周全体を覆う薄板帯材からなる主構造体補強材で包囲しつつ所要箇所毎に補強金具を介して前記主構造体に順次固定することを特徴とする、既設建築物の補強方法。
- 前記薄板帯材により上下に形成された水平主構造体周りの補強材間を窓、出入口等の開口部を除く壁面に、それぞれ2枚の薄板帯材からなる壁面補強材をX字状に連結し、それぞれの接合部を補強金具により各構造材に固定することを特徴とする、請求項1に記載の既設建築物の補強方法。
- 前記X字状壁面補強材の中間部を可能な限り間柱又は同様の構造材に固定することを特徴とする請求項2に記載の既設建築物の補強方法。
- 前記水平主構造体が、当該建築物の土台、梁、胴差し等の主要構造体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の既設建築物の補強方法。
- 前記主構造体補強材と壁面補強材との接合部は、それぞれが重なり合うことなく平坦状に形成され、主構造体補強材又は壁面補強材に互いに嵌まり合う切り欠き部を形成してなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の既設建築物の補強方法。
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---|---|---|---|
JP2002294507A JP2004131933A (ja) | 2002-10-08 | 2002-10-08 | 既設建築物の補強方法 |
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JP (1) | JP2004131933A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN113638620A (zh) * | 2021-08-27 | 2021-11-12 | 西安五和土木工程新材料有限公司 | 一种墙体加固装置及其施工方法 |
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2002
- 2002-10-08 JP JP2002294507A patent/JP2004131933A/ja active Pending
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