JP2004130580A - 感熱記録材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】サーマルヘッド走行性と白化防止を両立する感熱記録材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布して乾燥する感熱記録材料の製造方法において、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布して乾燥する感熱記録材料の製造方法において、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱記録材料及びその製造方法に関し、サーマル(感熱)ヘッドの走行性が良く、かつ潤滑剤による白化故障が無い感熱記録材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録方法は、(1)現像が不要である、(2)支持体が紙の場合、材質が一般紙に近い、(3)取扱いが容易である、(4)発色濃度が高い、(5)記録装置が小型簡便で信頼性が高く、安価である、(6)記録時の騒音が殆ど無い、(7)メンテナンスが不要である等の利点を有し、近年広汎な分野に使用されており、例えば、ファクシミリ受信やプリンター等の事務処理分野、及びPOSシステム等のラベル貼り分野等に用途が拡大している。
【0003】
このような感熱記録に用いる感熱記録材料としては、電子供与性無色染料と電子受容性化合物との反応を利用したもの、ジアゾ化合物とカプラーとの反応を利用したもの、等が従来から広く知られている。
【0004】
更に近年では、多色化に対応するため、或いは画像等をオーバーヘッドプロジェクターにより投影したり、画像等をライトテーブル上で直接観察したりする等の用途にも拡大され、サーマルヘッドで直接記録することのできる透明な感熱記録材料の開発が望まれている。
【0005】
そこで、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと反応して発色させる実質的に無色の顕色成分Bとをバインダー中に微粒子状に分散して、或いは、上記成分A及びBの一方を熱応答性マイクロカプセルに内包し、他方を乳化物の形態として形成される感熱記録層を合成高分子フィルム等の透明な支持体上に設ける等により作製される感熱記録材料の提案が多数行われている。
【0006】
このような透明な感熱記録材料は、それ自体の透明性は良好であるが、感熱プリンター等の感熱記録装置で印画した場合に、スティッキングや異音が発生し易いという問題があり、その対策として感熱記録材料の感熱記録層の上に、顔料とバインダーを主成分とする保護層を設けるという提案が為されている。
【0007】
しかし、このような透明感熱記録材料を、特に医療用記録媒体のような、高い黒発色濃度が要求される画像記録用メディアとして使用した場合、記録装置のサーマルヘッドに極度な摩耗を生じ、画像記録中に断線や画像抜け或いは画像ボケ等の故障等が発生するといった問題があった。
【0008】
透明な感熱記録材料を医療用の記録媒体として用いた場合、医療用画像は高い黒発色濃度を必要とし、又、画像中の極めて微妙な濃度差を信号として捉え診断に供することから、印画時に発生する濃度ムラや画像ヌケ等の画像故障の発生は極力抑える必要がある。
一般に、サーマルヘッドにより記録を行う場合、ヘッド内の各発熱抵抗体間の僅かな熱伝導の差異等から生ずる濃度ムラ等を抑えるため、飽和透過濃度(DT−max)を得るまでに必要なエネルギー量の幅、即ち、ダイナミックレンジを広く取る設計がなされている。そのため、印画時のサーマルヘッドへの印加時間が長くなり、また高い黒発色濃度を得る必要もあることから、一般のファクシミリやラベルプリンター等に比べ、印画時に付与される熱エネルギーは極めて高く、サーマルヘッドの摩耗の点では非常に不利となる。
【0009】
従来から、サーマルヘッドの摩耗やスティッキングを低減するために、感熱記録材料の保護層中に、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸アミド等の潤滑剤を添加することによって、サーマルヘッドと感熱記録材料との間の摩擦係数を下げ、摩耗を低減する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、潤滑剤を増量すると、印画後、保護層表面に潤滑剤が白く結晶化する白化故障が生ずることがある。更に、潤滑剤自体がサーマルヘッドに付着し、このヘッド汚れが傷や濃度ムラを生ずる原因となり好ましくない。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−67500号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、サーマルヘッドの走行性に優れ潤滑剤の上記問題点がない感熱記録材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
斯かる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布し、乾燥後に、一定条件下、加熱し、冷却すれば、上記問題がなくヘッド走行性に優れた感熱記録材料が得られることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は次の感熱記録材料及びその製造方法を提供するものである。
<1> 支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布して乾燥する感熱記録材料の製造方法において、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
<2> 塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示してから加熱までの時間が120秒以内である<1>記載の感熱記録材料の製造方法。
<3> 感熱記録材料用塗布液の一つが、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、硬化ヒマシ油、シリコーン及びアルキルリン酸エステルから選ばれる一種又は二種以上の潤滑剤を含有する保護層用塗布液である<1>又は<2>記載の感熱記録材料の製造方法。
<4> <1>、<2>又は<3>記載の製造方法により製造された感熱記録材料。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布した後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に少なくとも感熱記録層及び保護層を有する感熱記録材料であって、必要により他の層を設けてもよい。従って、本発明において、感熱記録材料用塗布液は、これらの層に対応した複数の塗布液からなる。
【0014】
(保護層)
本発明の感熱記録層上には保護層が設けられ、該保護層には、潤滑剤が含有され、更に通常は、顔料、水溶性高分子、及び必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、熱可融性物質、添加剤等を含有させることができる。上記保護層は単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
【0015】
ここで用いる潤滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、硬化ヒマシ油、シリコーン及びアルキルリン酸エステルが挙げられ、これらは、1種でも2種以上を混合して用いてもよい。この内、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛が好ましい。各潤滑剤の使用量は、0.02g/m2以上、0.6g/m2以内とすることが好ましい。
【0016】
(顔料)
上記顔料は通常、サーマルヘッドによる記録を好適なものとする、即ち、スティッキングや異音等の発生を抑える目的で用いられ、特に、有機及び/又は無機の顔料が水溶性バインダーと共に用いられる。
【0017】
本発明の感熱記録材料の保護層に用いる顔料は、その平均粒径、詳しくは、レーザ回折法で測定した50%体積平均粒径(レーザー回折粒度分布測定装置、例えば(株)堀場製作所製の「LA700」により測定した、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径であり、以下、単にこれを「平均粒径」ということがある。)が、0.25〜0.40μmの顔料を用いることが好ましい。更に、サーマルヘッドにより記録する際、ヘッドと感熱記録材料との間におけるスティッキングや異音等の発生を一層効果的に抑止する観点から、上記50%体積平均粒径は0.26〜0.39μmの範囲にあることが好ましく、0.27〜0.38μmであることが特に好ましい。
上記顔料の50%体積平均粒径を0.40μm以下とすることにより、サーマルヘッドに対する摩耗を最小限に抑え、画像中の濃度ムラと発色部のドット再現性の低下を防ぐことができる。また、該平均粒径を0.30以上とすることにより、サーマルヘッドと保護層中のバインダーとの間の溶着乃至は粘着を効果的に防止することができ、その結果、印画時にサーマルヘッドと感熱記録材料の保護層とが接着乃至は粘着する、所謂「スティッキング現象」を防止できる。
【0018】
また、本発明の感熱記録材料の保護層に用いる上記顔料としては、上記範囲の平均粒径を有するものが好ましく、更に用いた顔料の粒径分布において、全顔料粒子に占める粒径1.0μm以上の粒子の含有率が3.0質量%より大きく9.0質量%以下であるものが好ましい。上述した様に、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径を本発明に規定する範囲まで微小化すると共に、更に顔料中に存在する大粒径の粒子成分の含有率をも、本発明で規定する含有率の範囲に制御することで、サーマルヘッドの摩耗を低減し、スティッキング特性を改善し、印画時の異音発生を防止し、諸性能のバランスの良い、高画質で透明な感熱記録材料を提供できる。
全顔料粒子に占める粒径1.0μm以上の粒子の上記含有率が3.0質量%以下であると、サーマルヘッドの摩耗の低減効果、及びスティッキング特性の改善効果が不十分であり、一方、該含有率が9.0質量%を超えると、感熱記録材料自体の透明性が低下し、形成した画像の抜けやボケが発生し易く、印画時の異音も大きくなり諸性能が低下する。
【0019】
本発明の感熱記録材料の保護層に使用する顔料としては、特に限定されるものではなく、公知の有機及び無機の顔料を挙げることができる。具体的には、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカ、酸化亜鉛等の無機顔料、尿素ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂等の有機顔料が好ましい例として挙げられる。中でも、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカが好ましく、特に、水酸化アルミニウムが好ましい。
これらの顔料は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
また、これらの顔料の粒子表面に高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又は高級脂肪族炭化水素等で表面処理を施したものも好適に使用でき、特に、高級脂肪酸で表面被覆処理された水酸化アルミニウムが好ましい。
上記表面被覆処理剤としての高級脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられるが、ステアリン酸が特に好ましく挙げられる。また、高級脂肪酸の金属塩における金属としては、Zn、Al、K、Ca、Na等が挙げられるが、Znが特に好ましく挙げられる。
【0021】
顔料は通常、感熱記録ヘッドによる記録を好適なものとする、即ち、スティッキングや異音等の発生を抑える目的で用いられるが、前記高級脂肪酸又はその金属塩により表面処理された水酸化アルミニウムを用いることにより、更に、感熱記録ヘッドとの耐摩擦性、潤滑性を向上させ、感熱記録ヘッド等における粘着、カス付着をなくし、ヘッドマッチング性を向上させることができる。
【0022】
本発明に用いられる顔料は、水溶性バインダー,例えばヘキサメタリン酸ソーダ、部分ケン化又は完全ケン化変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、各種界面活性剤等の分散助剤、好ましくは、部分ケン化又は完全ケン化変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体アンモニウム塩の共存下でディゾルバー、サンドミル、ボールミル等の公知の高速分散機を用いて分散して使用することが好ましい。
【0023】
本発明の感熱記録材料において、前記保護層における上記顔料の含有量は、乾燥後の塗布量で0.3〜2.5g/m2が好ましく、0.4〜1.5g/m2がより好ましい。また、保護層内における顔料の含有率は、乾燥含有率で40〜500質量%が好ましく、60〜250質量%がより好ましい。本発明の上記顔料の含有量が上記の範囲よりも少ないと、ヘッドマッチング特性の改善効果が不十分となることがあり、また、該含有量が上記範囲を超えると、透明性や画像品質が劣化することがある。
【0024】
本発明の保護層に含まれる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコール、澱粉又は酸化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉等の変性澱粉、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルキルエステル化物、スチレン−アクリル酸共重合体等のカルボキシル基含有重合体等が用いられる。中でも、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉が好ましく、特にポリビニルアルコールと酸化澱粉及び/又は尿素リン酸エステル化澱粉とを混合することが好ましい。
【0025】
また、変性ポリビニルアルコールとしては、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール等が好ましく用いられ、この他にも、スルホ変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールなどが用いられる。これらのポリビニルアルコールに反応する架橋剤を組み合わせると更に好ましい結果が得られる。
水溶性高分子の含有量は、保護層用塗布液の固形分に対して10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
【0026】
保護層の透明性を良好なものとする観点からは、特に、完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シリカ変性ポリビニルアルコール等を使用するのが好ましい。保護層には、公知の硬膜剤、金属石鹸等が含有されていてもよい。
【0027】
また、感熱記録層上に均一に保護層を形成させるために、保護層形成用塗布液には界面活性剤を添加することが好ましい。該界面活性剤としては、スルホ琥珀酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等があり、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸、ジ−(n−ヘキシル)スルホ琥珀酸等のナトリウム塩またはアンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
更に、保護層中には感熱記録材料の帯電防止の目的で界面活性剤、金属酸化物微粒子、無機電解質、高分子電解質等を添加してもよい。
保護層の乾燥塗布量は0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。
【0029】
(感熱記録層)
本発明により、支持体上に設けられる感熱記録層は、未処理時には優れた透明性を有し、加熱により呈色する特性を有するものであれば、いかなる組成及び構成のものでもよい。
このような感熱記録層としては、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと反応して発色させる実質的に無色の発色成分Bとを含有する、所謂二成分型の感熱記録層が挙げられ、該発色成分A又は発色成分Bの一方は、通常マイクロカプセルに内包されていることが好ましい。二成分型の感熱記録層を構成する二成分の組合せとしては、下記(a)〜(m)の様なものが挙げられる。
【0030】
(a)電子供与性染料前駆体と、電子受容性化合物との組合せ。
(b)光分解性ジアゾ化合物と、カプラーとの組合せ。
(c)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(d)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪族塩と、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(e)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀等との塩等の有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ土類金属硫化物との組合せ、または、前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
(f)硫化銀、硫化鉛、硫化水銀、硫化ナトリウム等の(重)金属硫酸塩と、Na−テトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(g)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ジヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(h)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機貴金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(i)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(j)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
(k)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪酸重金属塩と、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(l)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成する物。
(m)ホルマザン化合物と還元剤および/または金属塩との組合せ。
【0031】
上記の中でも、本発明の感熱記録材料においては、(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ、又は(c)有機金属塩と還元剤との組合せ、を用いることが好ましく、特に(a)又は(b)の組合せを用いるのが更に好ましい。
【0032】
また、本発明で得られる感熱記録材料において、(拡散透過率/全光透過率)×100(%)から算出されるヘイズ値を、出来るだけ下げる様に感熱記録層を構成することにより、透明性に優れた画像を得ることができる。上記ヘイズ値は記録材料の透明性を示す指数で、一般には、ヘイズメーターを使用して全光透過量や拡散透過光量、平行透過光量を測定して算出される。
本発明において、上記ヘイズ値を下げる方法としては、例えば、感熱記録層に含まれる前記発色成分A、Bの平均粒径を1.0μm以下、好ましくは、0.6μm以下とし、且つバインダーを感熱記録層の全固形分の30〜60質量%の範囲で含有させる方法、或いは、前記発色成分A、Bのいずれか一方をマイクロカプセルに内包し、他方を塗布乾燥後に実質的に連続層を構成する様な、例えば、乳化分散物の態様として使用する方法等が挙げられる。
その他、感熱記録層に使用する各成分の屈折率を出来るだけ同一の値に近づける方法も有効である。
【0033】
次に、本発明の感熱記録層に好ましく使用される、前記の組合せ(a、b、c)について、以下に詳細に説明する。
(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組合せ
本発明において好ましく使用される電子供与性染料前駆体は、実質的に無色のものであれば特に限定されるものではないが、エレクトロンを供与して、或いは、酸等のプロトンを受容して発色する性質を有するものであり、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有しており、電子受容性化合物と接触した場合に、これらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物であることが好ましい。
【0034】
上記電子供与性染料前駆体としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物等が挙げられる。
【0035】
上記フタリド類の具体例としては、米国再発行特許明細書第23,024号、米国特許明細書第3,491,111号、同第3,491,112号、同第3,491,116号、同第3,509,174号等に記載された化合物が挙げられる。
上記フルオラン類の具体例としては、米国特許明細書第3,624,107号、同第3,627,787号、同第3,641,011号、同第3,462,828号、同第3,681,390号、同第3,920,510号、同第3,959,571号等に記載された化合物が挙げられる。
上記スピロピラン類の具体例としては、米国特許明細書第3,971,808号等に記載された化合物が挙げられる。
上記ピリジン系及びピラジン系化合物類としては、米国特許明細書第3,775,424号、同第3,853,869号、同第4,246,318号等に記載された化合物が挙げられる。
上記フルオレン系化合物の具体例としては、特願昭61−240989号公報等に記載された化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に、黒発色の2−アリールアミノ−3−〔水素、ハロゲン、アルキル又はアルコキシ−6−置換アミノフルオラン〕が好ましい。
【0036】
具体的には、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジオクチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−ドデシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−エチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−p−ブチルアニリノフルオラン、2−アニリノ−3−ペンタデシル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−エチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−トルイジノ−3−メチル−6−ジイソプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−イソブチル−N−エチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−メチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−プロポキシプロピルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0037】
上述した電子供与性染料前駆体と反応する電子受容性化合物としては、フェノール化合物、有機酸若しくはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が挙げられ、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
具体的には、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル等のビスフェノール類;
【0038】
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、3−α−α−ジメチルベンジルサリチル酸、4−(β−p−メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸等のサリチル酸誘導体;
【0039】
または、その多価金属塩(特に、亜鉛、アルミニウムが好ましい);p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエルテル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、β−レゾルシン酸−(2−フェノキシエチル)エステル等のオキシ安息香酸エステル類;p−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシ−ジフェニルスルフォン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシ−ジフェニルスルフォン等のフェノール類が挙げられる。
上記の中でも、良好な発色特性を得る観点からビスフェノール類が特に好ましい。また、上記の電子受容性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーの組合せ
前記光分解性ジアゾ化合物とは、後述するカップリング成分であるカプラー化合物とカップリング反応して所望の色相に発色するものであり、該反応前に特定波長域の光を受けると分解し、もはやカップリング成分が存在しても発色能力を持たなくなる光分解性のジアゾ化合物である。
この発色系における色相は、ジアゾ化合物とカプラー化合物とが反応して生成するジアゾ色素により決定される。従って、ジアゾ化合物、或いは、カプラーの化学構造を変えることにより、容易に任意に発色色相を変えることができ、その組み合わせ次第で、多様な発色色相を得ることができる。
【0041】
本発明において好ましく使用される光分解性ジアゾ化合物としては、芳香族系ジアゾ化合物が挙げられ、具体的には、芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルフォネート化合物、ジアゾアミノ化合物等が挙げられる。
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、以下の一般式で表される化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、該芳香族ジアゾニウム塩は、光定着性に優れ、定着後の着色ステインの発生の少なく、発色画像の安定なものが好ましく用いられる。
Ar−N2 +・X−
上式中、Ar−は置換基を有する或いは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、−N2 +はジアゾニウム基を表し、X−は酸アニオンを表す。
【0042】
上記ジアゾスルフォネート化合物としては、近年多数のものが知られており、各々のジアゾニウム塩を亜硫酸塩で処理することにより得られ、本発明の感熱記録材料に好適に用いることができる。
【0043】
上記ジアゾアミノ化合物としては、ジアゾ基を、ジシアンジアミド、サルコシン、メチルタウリン、N−エチルアントラニックアシッド−5−スルフォニックアシッド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、グアニジン等でカップリングさせることにより得ることができ、本発明の感熱記録材料に好適に用いることができる。
これらのジアゾ化合物の詳細については、例えば、特開平2−136286号公報等に詳細に記載されている。
【0044】
一方、上述のジアゾ化合物とカップリング反応するカプラー化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリドの他、レゾルシンをはじめ、特開昭62−146678号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0045】
本発明の感熱記録層において、ジアゾ化合物とカプラーとの組合せによるものを用いる場合、これらのカップリング反応は塩基性雰囲気下で行うことによりその反応をより促進させることができる観点から、増感剤として、塩基性物質を添加してもよい。
上記塩基性物質としては、水不溶性又は難溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質が挙げられ、例えば、無機又は有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素やチオ尿素又はそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルフォリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォリムアジン類又はピリジン類等の含窒素化合物が挙げられる。
これらの具体例としては、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されたものが挙げられる。
【0046】
(c)有機金属塩と還元剤の組合せ
上記有機金属塩としては、具体的には、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、アラキン酸銀またはベヘン酸銀等の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩;ベンゾトリアゾール銀塩、ベンズイミダゾール銀塩、カルバゾール銀塩またはフタラジノン銀塩等のイミノ基を有する有機化合物の銀塩;s−アルキルチオグリコレート等の硫黄含有化合物の銀塩;安息香酸銀、フタル酸銀等の芳香族カルボン酸の銀塩;エタンスルホン酸銀等のスルホン酸の銀塩;o−トルエンスルフィン酸銀等のスルフィン酸の銀塩;フェニルリン酸銀等のリン酸の銀塩;バルビツール酸銀、サッカリン酸銀、サリチルアスドキシムの銀塩またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
これらの内、長鎖脂肪族カルボン酸銀塩が好ましく、中でもベヘン酸銀がより好ましい。また、ベヘン酸をベヘン酸銀と共に使用してもよい。
【0047】
上記還元剤としては、特開昭53−1020号公報第227頁左下欄第14行目〜第229頁右上欄第11行目の記載に基づいて適宜使用することができる。中でも、モノ、ビス、トリスまたはテトラキスフェノール類、モノまたはビスナフトール類、ジまたはポリヒドロキシナフタレン類、ジまたはポリヒドロキシベンゼン類、ヒドロキシモノエーテル類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン類、ピラゾロン類、還元性糖類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、レダクトン類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等を使用することが好ましい。
これらの還元剤の内、ポリフェノール類、スルホンアミドフェノール類又はナフトール類等の芳香族有機還元剤が特に好ましい。
【0048】
本発明において、感熱記録材料の充分な透明性を確保する観点より、感熱記録層に(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、又は(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ、を用いることが好ましい。また、本発明では、発色成分Aと発色成分Bのいずれか一方を、マイクロカプセルに内包化して用いることが好ましく、前記の電子供与性染料前駆体、又は光分解性ジアゾ化合物をマイクロカプセルに内包して使用することが特に好ましい。
【0049】
(マイクロカプセル)
次に、マイクロカプセルの製造方法について詳述する。
マイクロカプセルの製造には、界面重合法、内部重合法、外部重合法等があり、いずれの方法も採用することができる。特に、電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物をカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解または分散させ調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相中と混合し、ホモジナイザー等の手段により乳化分散した後、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法を採用することが好ましい。
【0050】
高分子を形成するリアクタントは、油滴内部および/または油滴外部に添加される。高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアが特に好ましい。上記の高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
【0051】
前記水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0052】
例えば、ポリウレアをカプセル壁材として用いる場合には、ジイソシアナート,トリイソシアナート,テトライソシアナート,ポリイソシアナートプレポリマー等のポリイソシアナートと、ジアミン,トリアミン,テトラアミン等のポリアミン、2以上のアミノ基を有するプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体またはポリオール等と、を上記水相中で界面重合法によって反応させることにより容易にマイクロカプセル壁を形成させることができる。
【0053】
また、例えば、ポリウレアとポリアミドからなる複合壁若しくはポリウレタンとポリアミドからなる複合壁は、例えば、ポリイソシアナートおよびそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、酸クロライド若しくはポリアミン、ポリオール)を水溶性高分子水溶液(水相)またはカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、これらを乳化分散した後、加温することにより調製することができる。これらのポリウレアとポリアミドからなる複合壁の製造方法の詳細については、特開昭58−66948号公報に記載されている。
【0054】
また、本発明で調製するマイクロカプセル壁には、必要に応じて金属含有染料、ニグロシン等の荷電調節剤、或いは、その他任意の添加物質を加えることができる。これらの添加剤は壁形成時または任意の時点でカプセルの壁に含有させることができる。また必要に応じてカプセル壁表面の帯電性を調節するために、ビニルモノマー等のモノマーをグラフト重合させてもよい。
【0055】
さらに、マイクロカプセル壁をより低温な状況下でも物質透過性に優れ、発色性に富む壁質とするため、壁材として用いるポリマーに適合した可塑剤を用いることが好ましい。該可塑剤は、その融点が50℃以上のものが好ましく、さらに該融点が120℃以下にあるものがより好ましい。このうち、常温下で固体状のものを好適に選択して用いることができる。
例えば、壁材がポリウレア、ポリウレタンからなる場合、ヒドロキシ化合物、カルバミン酸エステル化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物等が好適に用いられる。
【0056】
前記の油相の調製に際し、電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物を溶解し、マイクロカプセルの芯を形成するときの疎水性有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、具体的には、エステル類の他、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1−メチル−1−ジメチルフェニル−2−フェニルメタン、1−エチル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、1−プロピル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、トリアリルメタン(例えば、トリトルイルメタン、トルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)、ジフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、エステル類を使用することが乳化分散物の乳化安定性の観点から特に好ましい。
【0057】
エステル類としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ブチル、リン酸オクチル、リン酸クレジルフェニル等のリン酸エステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸エチル、フタル酸オクチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル;テトラヒドロフタル酸ジオクチル;安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル;アビエチン酸エチル、アビエチン酸ベンジル等のアビエチン酸エステル;アジピン酸ジオクチル;コハク酸イソデシル;アゼライン酸ジオクチル;シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル等のシュウ酸エステル;マロン酸ジエチル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル;クエン酸トリブチル;ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、ソルビン酸ブチル等のソルビン酸エステル;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル;ギ酸モノエステル及びジエステル、酪酸モノエステル及びジエステル、ラウリン酸モノエステル及びジエステル、パルミチン酸モノエステル及びジエステル、ステアリン酸モノエステル及びジエステル、オレイン酸モノエステル及びジエステル等のエチレングリコールエステル類;トリアセチン;炭酸ジエチル;炭酸ジフェニル;炭酸エチレン;炭酸プロピレン;ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル等のホウ酸エステル等が挙げられる。
【0058】
中でも、特にリン酸トリクレジルを単独または混合して用いた場合、乳化物の安定性が最も良好となり好ましい。上記のオイル同士または他のオイルとの併用による使用も可能である。
【0059】
カプセル化しようとする電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物の上記溶媒に対する溶解性が劣る場合には、溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもできる。このような補助溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、およびメチレンクロライド等を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0060】
また、上記の電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物を感熱記録材料の感熱記録層に用いる場合、該電子供与性染料前駆体の含有量は、0.1〜5.0g/m2 の範囲であることが好ましく、1.0〜3.5g/m2 の範囲であることがより好ましく、また、光分解性ジアゾ化合物の含有量は、0.02〜5.0g/m2 の範囲であることが好ましく、発色濃度の点から0.10〜4.0g/m2 の範囲であることがより好ましい。
【0061】
前記電子供与性染料前駆体の含有量が0.1g/m2 未満、或いは、前記光分解性ジアゾ化合物の含有量が0.02g/m2 未満の場合には、十分な発色濃度が得られないことがあり、また、両者の含有量が5.0g/m2 を越える場合には感熱記録層の透明性が低下することがある。
【0062】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は分散を均一に、かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は周知の乳化用界面活性剤が使用可能である。また、界面活性剤を添加する場合には、界面活性剤の添加量は、油相の質量に対して0.1%〜5%、特に0.5%〜2%であることが好ましい。
【0063】
上記のように、油相を混合する水相に保護コロイドとして含有せしめる水溶性高分子は、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができ、乳化しようとする温度における水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、その具体例としては、ポリビニルアルコールまたはその変成物、ポリアクリル酸アミドまたはその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース,メチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
中でも、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体が、特に好ましい。
【0064】
これらの水溶性高分子は、イソシアナート化合物との反応性がないか、或いは、低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め変成するなどして反応性をなくしておくことが好ましい。
【0065】
多価イソシアナート化合物としては3官能以上のイソシアナート基を有する化合物が好ましいが、2官能のイソシアナート化合物を併用してもよい。具体的には、キシレンジイソシアナートおよびその水添物、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナートおよびその水添物、イソホロンジイソシアナートなどのジイソシアナートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパンなどのポリオールとキシリレンジイソシアナート等の2官能イソシアナートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパンなどのポリオールとキシリレンジイソシアナート等の2官能イソシアナートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアナートのホルマリン縮合物などが挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号公報等に記載の化合物が好ましい。
【0066】
多価イソシアナートの使用量は、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定される。分散粒子径は0.2〜10μm程度が一般的である。
【0067】
多価イソシアナートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして水相中および/または油相中に添加するポリオールまたは/およびポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。上記反応において、反応温度を高く保ち、あるいは適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
多価イソシアナート、ポリオール、反応触媒、あるいは、壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書に詳しい(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))。
【0068】
また、水相に含有させる界面活性剤は、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤の中から、上記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを好適に選択して使用することができる。
好ましい界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等を挙げることができる。
【0069】
乳化は、上記成分を含有した油相と保護コロイド及び界面活性剤を含有する水相を、高速撹拌、超音波分散等の通常の微粒子乳化に用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミルなど、公知の乳化装置を用いて容易に行うことができる。乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために、乳化物を30〜70℃に加温する。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、充分な攪拌を行う等の必要がある。
【0070】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のジアゾニウム塩内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0071】
電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物を芯物質としてカプセル化した場合、用いる電子受容性化合物、またはカプラーは、例えば、水溶性高分子および有機塩基、その他の発色助剤等とともに、サンドミル等の手段により固体分散して用いることもできるが、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤および/または水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化した乳化分散物として用いることがより好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。
さらに、カプラー、有機塩基は別々に乳化分散することも、混合してから高沸点溶媒に溶解し、乳化分散することも可能である。好ましい乳化分散粒子径は1μm以下である。
【0072】
本発明の感熱記録材料において電子受容性化合物を用いる場合、該電子受容性化合物はジアゾニウム塩1質量部に対して、0.5〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、1.0〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。また、本発明の感熱記録材料においてカプラーを用いる場合、該カプラーはジアゾニウム塩1質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0073】
この場合に使用される有機溶剤は、例えば、特開平2−141279号公報に記載された高沸点オイルの中から適宜選択することができる。
中でもエステル類を使用することが、乳化分散液の乳化安定性の観点がら好ましく、中でも、リン酸トリクレジルが特に好ましい。上記のオイル同士、又は他のオイルとの併用も可能である。
【0074】
また、油相の水相に対する混合比(油相質量/水相質量)は、0.02〜0.6が好ましく、0.1〜0.4がより好ましい。0.02以下では、水相が多すぎて希薄となり製造適性に欠け、0.6以上では逆に液の粘度が高くなり、取扱いの不便さや塗布液安定性の低下を生ずるため好ましくない。
【0075】
本発明の感熱記録材料に設ける感熱記録層は、サーマルヘッドの僅かな熱伝導の差異等から生ずる濃度ムラ等を抑え高画質な画像を得るため、飽和透過濃度(DT−max )を得るのに必要なエネルギー量幅、即ち、ダイナミックレンジが広い感熱記録層であることが好ましい。本発明の感熱記録材料は上記のような感熱記録層を有し、90〜150mJ/mm2 の範囲の熱エネルギー量で、透過濃度DT 3.0を得ることができる特性を有する感熱記録材料層である。
【0076】
上記のように調製した各種感熱記録層塗布液には、バインダーが添加、混合される。
前記バインダーとしては、水溶性のものが一般的であり、ポリビニルアルコ−ル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。
また、これらのバインダーに耐水性を付与する目的で耐水化剤を加えたり、疎水性ポリマーのエマルジョン、具体的には、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル樹脂エマルジョン等を添加することもできる。
【0077】
上記のように調製した各種感熱記録層塗布液を支持体上に塗布する際、水系または有機溶剤系の塗布液に用いる公知の塗布手段が用いられるが、この場合、感熱記録層塗布液を安全かつ均一に塗布するとともに、塗膜の強度を保持するため、本発明の感熱記録材料においては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉類、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはその共重合体、ポリエステルまたはその共重合体、ポリエチレンまたはその共重合体、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂またはその共重合体、メタアクリレート系樹脂またはその共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を使用することができる。
【0078】
感熱記録層は、塗布、乾燥後の乾燥塗布量が1〜25g/m2 になるように塗布されること、および該層の厚みが1〜25μmになるように塗布されることが望ましい。
【0079】
(その他の成分)
以下に、感熱記録層に用いることのできるその他の成分について述べる。
その他の成分としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、公知の熱可融性物質、ワックス、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0080】
前期熱可融性物質は、熱応答性の向上を図る目的で感熱記録層に含有させることができる。
熱可融性物質としては、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル及び又は脂肪族アミド又はウレイドなどがその代表である。
これらの例は、特開昭58−57989号、同58−87094号、同61−58789号、同62−109681号、同62−132674号、同63−151478号、同63−235961号、特開平2−184489号、同2−215585号の各公報などに記載されている。
【0081】
前記ワックスとしては、融点が40℃〜100℃の範囲にあり、且つ、その50%体積平均粒径が0.7μm以下のものであることが好ましく、0.4μm以下のものであることがより好ましい。
該平均粒径が0.7μmを越える場合、感熱記録層の透明性が低下したり、画像のカスレが発生し好ましくない。
また、融点が40℃未満の場合、保護層表面が粘着性を帯びてくるため好ましくなく、100℃を越える場合には、スティッキングが生じ易くなり好ましくない。
【0082】
融点を40℃〜100℃に有するワックスとしては、例えば、パラフィンワックス;マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス;ポリエチレンワックス等の合成ワックス;キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス;ラノリン等の動物系ワックス;モンタンワックス等の鉱物系ワックスが挙げられる。中でも、融点を55℃〜75℃に有するパラフィンワックスが特に好ましい。
ワックスの使用量は、保護層全体の0.5〜40質量%、好ましくは1〜20質量%の割合で添加される。また、これらのワックスと12−ヒドロキシステアリン酸誘導体、高級脂肪酸アミド等を併用して用いてももよい。
【0083】
前記ワックスを上記した50%平均粒径にまで分散する方法としては、ワックスを適当な保護コロイドや界面活性剤の共存下で、ダイノミルやサンドミル等の公知の湿式分散機で分散する方法などが挙げられるが、微粒子化する観点からは、一旦ワックスを加熱して融解した後、この融点以上の温度下で、ワックスが不溶または難溶の溶剤中で高速撹拌、超音波分散等の手段により乳化する方法や、ワックスを適当な溶剤に溶解した後、ワックスが不溶または難溶の溶剤中で乳化する方法等が挙げられる。この際、適当な界面活性剤や保護コロイドを併用してもよい。
【0084】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤などが好適に挙げられる。これらの例は、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号の各公報、米国特許2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号の各明細書などに記載されている。
【0085】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤などが好適に挙げられる。これらの例は、特開昭59−155090号、同60−107383号、同60−107384号、同61−137770号、同61−139481号、同61−160287号の各公報などに記載されている。
【0086】
上記のようなその他の成分の塗布量としては、0.05〜1.0g/m2 程度が好ましく、0.1〜0.4g/m2 がより好ましい。なお、前記その他の成分は、前記マイクロカプセル内に添加してもよいし、前記マイクロカプセル外に添加してもよい。
【0087】
(下塗り層)
本発明の感熱記録材料においては、支持体から感熱記録層が剥がれることを防止する目的で、マイクロカプセル等を含有する感熱記録層や光反射防止層を塗布する前に、支持体上に下塗り層を設けることが望ましい。
下塗り層としては、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、SBR、水性ポリエステル等を用いることができ、膜厚としては0.05〜0.5μmとすることが望ましい。
【0088】
下塗り層上に感熱記録層を塗布する際、感熱記録層塗布液に含まれる水分により下塗り層が膨潤して、感熱記録層に記録された画像が悪化することがあるので、下塗り層にはグルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類およびホウ酸等の硬膜剤を用いて硬膜させることが望ましい。これらの硬膜剤の添加量は、下塗り素材の質量に応じて0.2〜3.0質量%の範囲で、所望の硬化度に合わせて適宜、添加することができる。
【0089】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に下塗り層、感熱記録層、保護層を順次、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法により支持体上に塗布することにより形成することができる。
【0090】
(支持体)
本発明の感熱記録材料では、透明な感熱記録材料を得る関係上、透明支持体を用いる。透明支持体としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルムが挙げられ、これらを単独で、或いは貼り合わせて使用することができる。
上記合成高分子フィルムの厚さは25〜250μmの範囲であることが好ましく、50〜200μmの範囲であることがより好ましい。
【0091】
また、上記の合成高分子フィルムは任意の色相に着色されていてもよい。高分子フィルムを着色する方法としては、樹脂フィルムを成形する前に樹脂に染料を混練してフィルムを成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製し、これを無色透明な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布する方法、等が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルムに成形し、これに耐熱処理、延伸処理、帯電防止処理を施したものが好ましい。
【0092】
特に、本発明の透明の感熱記録材料をシャーカステン上で支持体側から観察した場合、透明な非画像部分を透過するシャーカステン光により幻惑が生じ見ずらい画像になることがある。
これを避けるため、透明支持体としては、JIS−Z8701記載の方法により規定された色度座標上の、A(x=0.2805,y=0.3005)、B(x=0.2820,y=0.2970)、C(x=0.2885,y=0.3015)、D(x=0.2870,y=0.3040)の4点で形成される四角形の領域内に青く着色された合成高分子フィルムを用いることが、特に好ましい。
【0093】
また、感熱記録層の塗布面と反対の支持体表面に平均粒径が1〜20μm、更に好ましくは、1〜10μmの微粒子を含有する光反射防止層を設けてもよい。この光反射防止層の塗設により、入射光角20°で測定した光沢度を50%以下にすることが好ましく、30%以下にすることがより好ましい。
光反射防止層に含有される微粒子としては、大麦、小麦、コーン、米、豆類より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルまたは酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミ、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等を挙げることができる。
これらの微粒子状物質は2種以上併用して用いてもよい。また、感熱記録材料の透明性を良好なものとする観点から、屈折率が1.45〜1.75の微粒子状物質であることが好ましい。
【0094】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、必要に応じて、感熱記録層形成前に下塗り層を塗設した後、前記したような感熱記録層塗布液を塗布、乾燥して感熱記録層を塗設し、更に該記録層上に保護層を塗設すること等により製造することができる。
【0095】
(カーボン被覆サーマルヘッド)
本発明の感熱記録材料は、加熱素子部位の最上層の炭素含有率が90質量%以上であるカーボン被覆サーマルヘッドを用いて、熱エネルギーを供与して印画することも可能である。
ここで用いられるサーマルヘッドは、カーボン被覆サーマルヘッドが好ましく、該サーマルヘッドは、感熱記録材料に接触する加熱素子部位の最上層の炭素含有率が90質量%以上となる様に、公知の製膜装置を用いてグレーズ層上に発熱抵抗体と電極を具備する加熱素子部位の最上層に保護層を設けたものである。このサーマルヘッド保護層は、2層以上で構成されてもよいが、少なくとも最上層の炭素含有率は90%以上であることが必要である。
【0096】
本発明の感熱記録材料は、以下に説明する本発明の感熱記録材料の製造方法によって好適に製造することができる。
本発明の感熱記録材料は、スティクや印加時の騒音が発生しにくく、かつ、耐摩耗性に優れた、炭素比率が90%以上の最上層を有するサーマルヘッドに対しても十分なヘッドマッチング性を有するため、特に、医療用記録媒体等の高画質が要求される分野に好適に用いられる。
【0097】
(感熱記録材料の製造方法)
以下、本発明の感熱記録材料の製造方法について説明する。
本発明の感熱記録材料の製造方法は、支持体上に、感熱記録層形成用塗布液を塗布して感熱記録層を形成し、該感熱記録層上に、保護層形成用塗布液を塗布して保護層を形成し、更に必要に応じて、その他の層を形成してなる。
ここで、前記感熱記録層及び保護層を同時に形成してもよく、その場合、前記感熱記録層形成用塗布液と前記保護層形成用塗布液とを前記支持体上に同時に重層塗布することにより、前記感熱記録層及びその上に前記保護層を同時に形成することができる。
【0098】
ここで使用される支持体は、本発明の感熱記録材料に使用される既に説明した支持体を用いることができる。また、前記感熱記録層形成用塗布液としては、前述した前記感熱記録層用塗布液を用いることができ、更に、前記保護層形成用塗布液も、前述した顔料及びバインダーを含有する保護層用塗布液を用いることができる。
また、前記その他の層としては、前述した中間層や下塗り層等のその他の層が挙げられる。
本発明の感熱記録材料の製造方法では、支持体上に、下塗り層、感熱記録層、中間層、保護層等を順次形成するために、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法が用いられる。
【0099】
本発明では、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面温度50〜100℃で、1〜600秒加熱する。
ここで、「塗布層が減率乾燥速度を示す」とは、通常、該塗布液の塗布後数分間経過した時点より後の乾燥速度を言い、この時点より前では、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥速度」の現象を示す。この「恒率乾燥速度」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0100】
上記の通り、塗布液の塗布後、該塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に常温〜40℃で30秒〜10分間(好ましくは、1〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0101】
塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示してから加熱までの時間は、短い方が好ましく、300秒以内がより好ましい。この時間が長すぎると、塗布層が乾燥しきってしまい、後に加熱しても本発明の効果は少ないものとなる。
【0102】
本発明における加熱は、60〜100℃(最外層(通常保護層)の表面温度)で、行い、好ましくは60〜90℃で行なう。この温度が50℃未満であると、本発明の効果を奏さず、100℃を超えると、カブリを生じ好ましくない。なお、加熱は、乾燥後速やかに50〜100℃の範囲になるように行なうことが好ましい。
加熱時間は、1〜600秒であり、好ましくは1〜300秒である。加熱時間が1秒未満であると、本発明の効果が少なく、600秒を超えると感熱層が発色しだしてしまい好ましくない。加熱手段としては、ヒートロールや熱風吹き出しノズル方式が好ましい。
加熱後は、速やかに、室温まで冷却することが好ましい。このため強制的に冷却する手段、例えばチリングロールを用いることが好ましい。
【0103】
【実施例】
以下に、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明は以下実施例のみに限定されるものではない。文中で使用する濃度は、全て質量%である。また、乳化分散液とは、水中油滴分散型分散物を意味する。
【0104】
≪実施例1≫
<保護層用塗布液の調製>
[保護層用顔料分散液の調製]
水110gに、顔料としてステアリン酸処理水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH42S,昭和電工(株)製)30gを加え3時間撹拌した後、これに分散助剤(商品名:ポイズ532A,花王(株)製)0.8g、10%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA105,(株)クラレ製)30g、2%に調整した下記構造式[100]で表される化合物の水溶液10gを加えサンドミルで分散し、平均粒径0.30μmの保護層用顔料分散液を得た。
尚、「平均粒径」は、用いる顔料を分散助剤共存下で分散し、その分散直後の顔料分散物に水を加えて0.5%に希釈した被検液を、40℃の温水中に投入し光透過率が75±1.0%になるように調整した後、30秒間超音波処理しレーザー回折粒度分布測定装置(商品名:LA700,(株)堀場製作所製)により測定した、全顔料の50体積%に相当する顔料粒子の平均粒径を使用し、以下に記載の「平均粒径」は全て同様の方法により測定した平均粒径を表す。
【0105】
【化1】
【0106】
[保護層用塗布液の調製]
水65gに、
8%ポリビニルアルコール水溶液
(商品名:PVA124C,(株)クラレ製) 90g
20.5%ステアリン酸亜鉛分散物
(商品名:F115,中京油脂(株)製) 5.5g
21.5%ステアリン酸アミド化合物
(商品名:G−270,中京油脂(株)製) 3.8g
18.0%ステアリン酸分散物
(商品名:セロゾール920,中京油脂(株)製) 2.8g
4%ホウ酸水溶液 10g
前記保護層用顔料分散液 70g
35%シリコーンオイル水分散液
(ポリジメチルシロキサン,商品名:BY22−840,
東レ・ダウコーニング(株)製) 4.7g
10%ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩水溶液 6.5g
75%ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸
アンモニウム塩水溶液
(商品名:ニッサンエレクトールSAL1、日本油脂(株)製)3.28g
6%スチレン−マレイン酸共重合体アンモニウム塩
水溶液(商品名:ポリマロン385,荒川化学(株)製)17.5g
20%コロイダルシリカ
(商品名:スノーテックス,日産化学(株)製) 14g
10%サーフロンS131S(旭ガラス(株)製) 16g
プライサーフA217E(第一工業製薬(株)製) 1.1g
2%酢酸 8g
を混合して保護層用塗布液を得た。
【0107】
<中間層用塗布液の調製>
石灰処理ゼラチン1kgに、水7848gを加え、溶解した後に、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸Na塩(商品名:ニッサンラピゾールB90、日本油脂(株)製)の5%溶解液(水/メタノール=1/1体積混合溶媒)を137g加え、中間層塗布液を調製した。
【0108】
<感熱記録層用塗布液の調製>
以下のように、マイクロカプセル塗布液、顕色剤乳化分散物の各液を調製した。
[マイクロカプセル塗布液Aの調製]
発色剤として、
下記構造式[201]で表される化合物 11.7g
下記構造式[202]で表される化合物 1.5g
下記構造式[203]で表される化合物 2.2g
下記構造式[204]で表される化合物 5.65g
下記構造式[205]で表される化合物 1.2g
下記構造式[206]で表される化合物 1.1g
下記構造式[207]で表される化合物 0.57g
を酢酸エチル24.3gに添加して70℃に加熱、溶解した後、45℃まで冷却した。これに、カプセル壁材(商品名:タケネートD140N,三井武田ケミカル(株)製)15.4gを加え、混合した。
【0109】
【化2】
【0110】
【化3】
【0111】
【化4】
【0112】
この溶液を、水16gに8%のポリビニルアルコール水溶液(商品名:MP−103、(株)クラレ製)48gを混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用い回転数15000rpmで5分間乳化を行った。得られた乳化液に、更に水110g及びテトラエチレンペンタミン1.0gを添加した後、60℃で4時間カプセル化反応を行い、平均粒径0.80μmのマイクロカプセル塗布液Aを調製した。
得られたマイクロカプセル液Aのカプセル壁のガラス転移温度(以下Tgという。)をDMTA(Dynamic Mechanical Thermal Analyzer)(ポリマーラボラトリー社製のガラス転移温度測定器の商品名)を用いて測定したところ、193℃であった。
【0113】
[マイクロカプセル塗布液Bの調整]
構造式[201]で表される化合物 12.2g
構造式[202]で表される化合物 1.6g
構造式[203]で表される化合物 2.4g
構造式[204]で表される化合物 3.3g
構造式[205]が表される化合物 1.5g
構造式[206]で表される化合物 0.2g
構造式[207]が表される化合物 0.5g
を酢酸エチル21gに添加し、70℃に加熱、溶解した後、35℃に冷却した。これにカプセル壁材(商品名:タケネートD127N、三井武田ケミカル(株)製)16.6g、を加え、混合した。
【0114】
この溶液を水16.6gに8%のポリビニルアルコール(MP−103、(株)クラレ製)48.1gを混合した水相中に加え、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用い、15000rpmで5分間乳化を行なった。得られた乳化液に更に水112g及びテトラエチレンペンタミン0.9gを添加した後、60℃で4時間カプセル化反応を行ない、平均粒径0.30μmのマイクロカプセル塗布液Bを調製した。
得られたマイクロカプセル液Bのカプセル壁のTgを、マイクロカプセル液Aと同様に測定したところ、153℃であった。
【0115】
[顕色剤微乳化分散液の調製]
顕色剤として
下記構造式[301]で表される化合物 6.7g
下記構造式[302]で表される化合物 8.0g
下記構造式[303]で表される化合物 5.8g
下記構造式[304]で表される化合物 1.5g
下記構造式[305]で表される化合物 2.2g
下記構造式[306]で表される化合物 0.8g
下記構造式[307]で表される化合物 4.3g
をトリクレジルフォスフェート1.0g、マレイン酸ジエチル0.5gと共に、酢酸エチル16.5gに添加し、70℃に加熱して溶解した。
【0116】
【化5】
【0117】
【化6】
【0118】
この溶液を、水70g、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA217C、(株)クラレ製)57g、15%のポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA205C,(株)クラレ製)20g、下記構造式[401]で挙げられる化合物及び下記構造式[402]で表される化合物の2%水溶液11.5gを混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000rpmで平均粒径0.7μmになるように乳化し、顕色剤乳化分散液Cを得た。
【0119】
【化7】
【0120】
[感熱記録層用塗布液Aの調製]
前記マイクロカプセル塗布液A(固形分濃度23%) 12g
マイクロカプセル塗布液B(固形分濃度24%) 2.5g
前記顕色剤乳化分散液C(固形分濃度22%) 50g
下記構造式[403]で表される化合物の50%水溶液 0.7g
コロイダルシリカ(スノーテックス 日産化学(株)製)1.8g
を混合して、感熱記録層用塗布液Aを調製した。
【0121】
【化8】
【0122】
[感熱記録層用塗布液Bの調製]
マイクロカプセル塗布液A(固形分濃度23%) 2.3g
マイクロカプセル塗布液B(固形分濃度24%) 6.6g
顕色剤乳化分散液C(固形分濃度22%) 33g
コロイダルシリカ(スノーテックス、日産科学(株)製) 1.5g
構造式[403]で表される化合物の50%水溶液 0.4g
を混合し、感熱記録層用塗布液Bを調製した。
【0123】
[バック層用塗布液Aの調製]
石灰処理ゼラチンを1kg、平均粒子径5.7μmの球形PMMA粒子12%を含むゼラチン分散物を757g、構造式[501]〜[505]で表わされる化合物を以下の含有率で含む紫外線吸収剤の乳化物を3761g(乳化物1kg当たりの紫外線吸収剤含有量は、
構造式[501]で表される化合物 9.8g
構造式[502]で表される化合物 8.4g
構造式[503]で表される化合物 9.8g
構造式[504]で表される化合物 13.98g
構造式[505]で表される化合物 29.3g
である。)及び、
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン 1.75g
ポリ(p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
(分子量約40万) 64.2g
構造式[506]で表わされる化合物 10.0g
ポリエチルアクリレートのラテックス20%液 3180ml
N,N−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)75.0g
1,3−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)プロパン25.0g
以上に水を加えて全量を62.77リットルとなるよう調製した。
【0124】
【化9】
【0125】
[バック層用塗布液Bの調製]
石灰処理ゼラチンを1kg、平均粒子径0.7μmの球形PMMA粒子12%を含むゼラチン分散物を2000g、メタノールを1268ml、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを1.75g、ポリアクリル酸ナトリウム(分子量約10万)を64.4g、ポリ(p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム)(分子量約40万)を54g、p−tert−オクチルフェノキシポリオキシエチレン−エチレンスルホン酸ナトリウムを25.2g、N−プロピル−N−ポリオキシエチレン−パーフルオロオクタンスルホン酸アミドブチルスルホン酸ナトリウムを5.3g、パールフルオロオクタンスルフォン酸カリウムを7.1gを、苛性ソーダでpH=7.0に調整した後、水を加えて全量を66.79リットルとなるように調製した。
【0126】
上記のバック層用塗布液A及びバック層用塗布液Bを、JIS−Z8701記載の方法により規定された色度座標でx=0.2850、y=0.2995に青色染色した厚み180μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の片面に、支持体に近い側から、バック層塗布液A、バック層塗布液Bの順でそれぞれ塗布量が44.0ml/m2、18.5ml/m2となるようにスライドビード法により同時重層塗布、乾燥した。
塗布乾燥条件は以下の通りである。塗布スピードは160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して200〜1000Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続くチリングゾーンにおいて、乾球温度0〜20℃の風で塗布液を冷却した後、無接触で搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置により、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
【0127】
<感熱記録材料の作製>
上記のバック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥(減率乾燥速度を示した後、以下同じ)60秒後に、膜面温度が80℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱して、実施例1の透明な感熱記録材料を得た。
【0128】
≪実施例2≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が60℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録材料を得た。
【0129】
≪実施例3≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が90℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録材料を得た。
【0130】
≪比較例1≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、その後加熱処理しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の感熱記録材料を得た。
【0131】
≪比較例2≫
実施例1の [保護層用塗布液の調製]を次のように換え、バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、その後加熱処理しない以外は実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録材料を得た。
[保護層用塗布液の調製]
水65gに、
8%ポリビニルアルコール水溶液
(商品名:PVA124C,(株)クラレ製) 90g
20.5%ステアリン酸亜鉛分散物
(商品名:F115,中京油脂(株)製) 11g
21.5%ステアリン酸アミド化合物
(商品名:G−270,中京油脂(株)製) 7.6g
18.0%ステアリン酸分散物
(商品名:セロゾール920,中京油脂(株)製) 5.6g
4%ホウ酸水溶液 10g
前記保護層用顔料分散液 70g
35%シリコーンオイル水分散液
(ポリジメチルシロキサン,商品名:BY22−840,
東レ・ダウコーニング(株)製) 4.7g
10%ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩水溶液 6.5g
75%ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸
アンモニウム塩水溶液
(商品名:ニッサンエレクトールSAL1、日本油脂(株)製)3.28g
6%スチレン−マレイン酸共重合体アンモニウム塩
水溶液(商品名:ポリマロン385,荒川化学(株)製)17.5g
20%コロイダルシリカ
(商品名:スノーテックス,日産化学(株)製) 14g
10%サーフロンS131S(旭ガラス(株)製) 16g
プライサーフA217E(第一工業製薬(株)製) 1.1g
2%酢酸 8g
を混合して保護層用塗布液を得た。
【0132】
≪比較例3≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が45℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録材料を得た。
【0133】
≪比較例4≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が105℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、比較例4の感熱記録材料を得た。
【0134】
(評価試験)
<ヘッドマッチング性(スティッキング)の評価>
上記で得られた感熱記録材料につき、京セラ(株)製のサーマルヘッド(商品名「KGT、260−12MPH8」)の最上層に、厚さ2μmで炭素含有率が98質量%のカーボン層を物理蒸着法により設けたサーマルヘッドを用いて、ヘッド圧が10kg/cm2で記録エネルギーが120mJ/mm2の条件で記録し、その際、印画時に該サーマルヘッドと感熱記録材料の保護層との間で接着乃至は粘着する現象(スティッキング)を起こすか否かを目視により観察し、下記の基準で評価した。
○………スティッキングが発生しなかった
△………スティッキングが少し発生した
×………スティッキングがかなり発生した
【0135】
<白化の評価>
110mJ/mm2のエネルギーで記録を行ない、記録後1時間後の表面を指で擦り、目視で観察し、次の基準で評価した。
○………擦ったあとが見えない
△………擦ったあとが見えるが許容レベル
×………擦ったあとが明瞭に観察され品位が落ちる
【0136】
<カブリの評価>
マクベス濃度計TD−404(マクベス社製)を用いて測定した。
【0137】
以上の評価結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
実施例1〜3のものは、スティック、白化、カブリとも優れていたが、乾燥後の加熱をしない比較例1、2のものは、潤滑剤が少ないものはスティックが生じ、多いものは白化が生じた。また、加熱温度が低いもの(比較例3)はスティックが生じ、高すぎるもの(比較例4)はカブリを生じた。
【0140】
【発明の効果】
本発明に従えば、記録時のスティッキングや異音の発生がなく、透明性に優れると共に、高い熱エネルギーで記録した場合でもサーマルヘッドの摩耗を低減することができる。また、潤滑剤による白化が防止される。その結果、濃度ムラ、画像ヌケ・ボケ等のない、鮮鋭で高画質な画像を長期間安定して得ることができる。
従って、本発明の感熱記録材料は、高画質で、常に安定した画像を要求する医療用記録材料等に用いる記録媒体として好適なものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は感熱記録材料及びその製造方法に関し、サーマル(感熱)ヘッドの走行性が良く、かつ潤滑剤による白化故障が無い感熱記録材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
感熱記録方法は、(1)現像が不要である、(2)支持体が紙の場合、材質が一般紙に近い、(3)取扱いが容易である、(4)発色濃度が高い、(5)記録装置が小型簡便で信頼性が高く、安価である、(6)記録時の騒音が殆ど無い、(7)メンテナンスが不要である等の利点を有し、近年広汎な分野に使用されており、例えば、ファクシミリ受信やプリンター等の事務処理分野、及びPOSシステム等のラベル貼り分野等に用途が拡大している。
【0003】
このような感熱記録に用いる感熱記録材料としては、電子供与性無色染料と電子受容性化合物との反応を利用したもの、ジアゾ化合物とカプラーとの反応を利用したもの、等が従来から広く知られている。
【0004】
更に近年では、多色化に対応するため、或いは画像等をオーバーヘッドプロジェクターにより投影したり、画像等をライトテーブル上で直接観察したりする等の用途にも拡大され、サーマルヘッドで直接記録することのできる透明な感熱記録材料の開発が望まれている。
【0005】
そこで、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと反応して発色させる実質的に無色の顕色成分Bとをバインダー中に微粒子状に分散して、或いは、上記成分A及びBの一方を熱応答性マイクロカプセルに内包し、他方を乳化物の形態として形成される感熱記録層を合成高分子フィルム等の透明な支持体上に設ける等により作製される感熱記録材料の提案が多数行われている。
【0006】
このような透明な感熱記録材料は、それ自体の透明性は良好であるが、感熱プリンター等の感熱記録装置で印画した場合に、スティッキングや異音が発生し易いという問題があり、その対策として感熱記録材料の感熱記録層の上に、顔料とバインダーを主成分とする保護層を設けるという提案が為されている。
【0007】
しかし、このような透明感熱記録材料を、特に医療用記録媒体のような、高い黒発色濃度が要求される画像記録用メディアとして使用した場合、記録装置のサーマルヘッドに極度な摩耗を生じ、画像記録中に断線や画像抜け或いは画像ボケ等の故障等が発生するといった問題があった。
【0008】
透明な感熱記録材料を医療用の記録媒体として用いた場合、医療用画像は高い黒発色濃度を必要とし、又、画像中の極めて微妙な濃度差を信号として捉え診断に供することから、印画時に発生する濃度ムラや画像ヌケ等の画像故障の発生は極力抑える必要がある。
一般に、サーマルヘッドにより記録を行う場合、ヘッド内の各発熱抵抗体間の僅かな熱伝導の差異等から生ずる濃度ムラ等を抑えるため、飽和透過濃度(DT−max)を得るまでに必要なエネルギー量の幅、即ち、ダイナミックレンジを広く取る設計がなされている。そのため、印画時のサーマルヘッドへの印加時間が長くなり、また高い黒発色濃度を得る必要もあることから、一般のファクシミリやラベルプリンター等に比べ、印画時に付与される熱エネルギーは極めて高く、サーマルヘッドの摩耗の点では非常に不利となる。
【0009】
従来から、サーマルヘッドの摩耗やスティッキングを低減するために、感熱記録材料の保護層中に、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸アミド等の潤滑剤を添加することによって、サーマルヘッドと感熱記録材料との間の摩擦係数を下げ、摩耗を低減する試みがなされている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、潤滑剤を増量すると、印画後、保護層表面に潤滑剤が白く結晶化する白化故障が生ずることがある。更に、潤滑剤自体がサーマルヘッドに付着し、このヘッド汚れが傷や濃度ムラを生ずる原因となり好ましくない。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−67500号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、サーマルヘッドの走行性に優れ潤滑剤の上記問題点がない感熱記録材料を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
斯かる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布し、乾燥後に、一定条件下、加熱し、冷却すれば、上記問題がなくヘッド走行性に優れた感熱記録材料が得られることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は次の感熱記録材料及びその製造方法を提供するものである。
<1> 支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布して乾燥する感熱記録材料の製造方法において、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
<2> 塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示してから加熱までの時間が120秒以内である<1>記載の感熱記録材料の製造方法。
<3> 感熱記録材料用塗布液の一つが、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、硬化ヒマシ油、シリコーン及びアルキルリン酸エステルから選ばれる一種又は二種以上の潤滑剤を含有する保護層用塗布液である<1>又は<2>記載の感熱記録材料の製造方法。
<4> <1>、<2>又は<3>記載の製造方法により製造された感熱記録材料。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布した後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする。
本発明の感熱記録材料は、支持体上に少なくとも感熱記録層及び保護層を有する感熱記録材料であって、必要により他の層を設けてもよい。従って、本発明において、感熱記録材料用塗布液は、これらの層に対応した複数の塗布液からなる。
【0014】
(保護層)
本発明の感熱記録層上には保護層が設けられ、該保護層には、潤滑剤が含有され、更に通常は、顔料、水溶性高分子、及び必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、熱可融性物質、添加剤等を含有させることができる。上記保護層は単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
【0015】
ここで用いる潤滑剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、硬化ヒマシ油、シリコーン及びアルキルリン酸エステルが挙げられ、これらは、1種でも2種以上を混合して用いてもよい。この内、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛が好ましい。各潤滑剤の使用量は、0.02g/m2以上、0.6g/m2以内とすることが好ましい。
【0016】
(顔料)
上記顔料は通常、サーマルヘッドによる記録を好適なものとする、即ち、スティッキングや異音等の発生を抑える目的で用いられ、特に、有機及び/又は無機の顔料が水溶性バインダーと共に用いられる。
【0017】
本発明の感熱記録材料の保護層に用いる顔料は、その平均粒径、詳しくは、レーザ回折法で測定した50%体積平均粒径(レーザー回折粒度分布測定装置、例えば(株)堀場製作所製の「LA700」により測定した、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径であり、以下、単にこれを「平均粒径」ということがある。)が、0.25〜0.40μmの顔料を用いることが好ましい。更に、サーマルヘッドにより記録する際、ヘッドと感熱記録材料との間におけるスティッキングや異音等の発生を一層効果的に抑止する観点から、上記50%体積平均粒径は0.26〜0.39μmの範囲にあることが好ましく、0.27〜0.38μmであることが特に好ましい。
上記顔料の50%体積平均粒径を0.40μm以下とすることにより、サーマルヘッドに対する摩耗を最小限に抑え、画像中の濃度ムラと発色部のドット再現性の低下を防ぐことができる。また、該平均粒径を0.30以上とすることにより、サーマルヘッドと保護層中のバインダーとの間の溶着乃至は粘着を効果的に防止することができ、その結果、印画時にサーマルヘッドと感熱記録材料の保護層とが接着乃至は粘着する、所謂「スティッキング現象」を防止できる。
【0018】
また、本発明の感熱記録材料の保護層に用いる上記顔料としては、上記範囲の平均粒径を有するものが好ましく、更に用いた顔料の粒径分布において、全顔料粒子に占める粒径1.0μm以上の粒子の含有率が3.0質量%より大きく9.0質量%以下であるものが好ましい。上述した様に、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径を本発明に規定する範囲まで微小化すると共に、更に顔料中に存在する大粒径の粒子成分の含有率をも、本発明で規定する含有率の範囲に制御することで、サーマルヘッドの摩耗を低減し、スティッキング特性を改善し、印画時の異音発生を防止し、諸性能のバランスの良い、高画質で透明な感熱記録材料を提供できる。
全顔料粒子に占める粒径1.0μm以上の粒子の上記含有率が3.0質量%以下であると、サーマルヘッドの摩耗の低減効果、及びスティッキング特性の改善効果が不十分であり、一方、該含有率が9.0質量%を超えると、感熱記録材料自体の透明性が低下し、形成した画像の抜けやボケが発生し易く、印画時の異音も大きくなり諸性能が低下する。
【0019】
本発明の感熱記録材料の保護層に使用する顔料としては、特に限定されるものではなく、公知の有機及び無機の顔料を挙げることができる。具体的には、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカ、酸化亜鉛等の無機顔料、尿素ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂等の有機顔料が好ましい例として挙げられる。中でも、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカが好ましく、特に、水酸化アルミニウムが好ましい。
これらの顔料は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0020】
また、これらの顔料の粒子表面に高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル又は高級脂肪族炭化水素等で表面処理を施したものも好適に使用でき、特に、高級脂肪酸で表面被覆処理された水酸化アルミニウムが好ましい。
上記表面被覆処理剤としての高級脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられるが、ステアリン酸が特に好ましく挙げられる。また、高級脂肪酸の金属塩における金属としては、Zn、Al、K、Ca、Na等が挙げられるが、Znが特に好ましく挙げられる。
【0021】
顔料は通常、感熱記録ヘッドによる記録を好適なものとする、即ち、スティッキングや異音等の発生を抑える目的で用いられるが、前記高級脂肪酸又はその金属塩により表面処理された水酸化アルミニウムを用いることにより、更に、感熱記録ヘッドとの耐摩擦性、潤滑性を向上させ、感熱記録ヘッド等における粘着、カス付着をなくし、ヘッドマッチング性を向上させることができる。
【0022】
本発明に用いられる顔料は、水溶性バインダー,例えばヘキサメタリン酸ソーダ、部分ケン化又は完全ケン化変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、各種界面活性剤等の分散助剤、好ましくは、部分ケン化又は完全ケン化変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体アンモニウム塩の共存下でディゾルバー、サンドミル、ボールミル等の公知の高速分散機を用いて分散して使用することが好ましい。
【0023】
本発明の感熱記録材料において、前記保護層における上記顔料の含有量は、乾燥後の塗布量で0.3〜2.5g/m2が好ましく、0.4〜1.5g/m2がより好ましい。また、保護層内における顔料の含有率は、乾燥含有率で40〜500質量%が好ましく、60〜250質量%がより好ましい。本発明の上記顔料の含有量が上記の範囲よりも少ないと、ヘッドマッチング特性の改善効果が不十分となることがあり、また、該含有量が上記範囲を超えると、透明性や画像品質が劣化することがある。
【0024】
本発明の保護層に含まれる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコール、澱粉又は酸化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉等の変性澱粉、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルキルエステル化物、スチレン−アクリル酸共重合体等のカルボキシル基含有重合体等が用いられる。中でも、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、尿素リン酸エステル化澱粉が好ましく、特にポリビニルアルコールと酸化澱粉及び/又は尿素リン酸エステル化澱粉とを混合することが好ましい。
【0025】
また、変性ポリビニルアルコールとしては、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、ジアセトン変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール等が好ましく用いられ、この他にも、スルホ変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールなどが用いられる。これらのポリビニルアルコールに反応する架橋剤を組み合わせると更に好ましい結果が得られる。
水溶性高分子の含有量は、保護層用塗布液の固形分に対して10〜90質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
【0026】
保護層の透明性を良好なものとする観点からは、特に、完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シリカ変性ポリビニルアルコール等を使用するのが好ましい。保護層には、公知の硬膜剤、金属石鹸等が含有されていてもよい。
【0027】
また、感熱記録層上に均一に保護層を形成させるために、保護層形成用塗布液には界面活性剤を添加することが好ましい。該界面活性剤としては、スルホ琥珀酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等があり、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルホこはく酸、ジ−(n−ヘキシル)スルホ琥珀酸等のナトリウム塩またはアンモニウム塩が挙げられる。
【0028】
更に、保護層中には感熱記録材料の帯電防止の目的で界面活性剤、金属酸化物微粒子、無機電解質、高分子電解質等を添加してもよい。
保護層の乾燥塗布量は0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。
【0029】
(感熱記録層)
本発明により、支持体上に設けられる感熱記録層は、未処理時には優れた透明性を有し、加熱により呈色する特性を有するものであれば、いかなる組成及び構成のものでもよい。
このような感熱記録層としては、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分Aと反応して発色させる実質的に無色の発色成分Bとを含有する、所謂二成分型の感熱記録層が挙げられ、該発色成分A又は発色成分Bの一方は、通常マイクロカプセルに内包されていることが好ましい。二成分型の感熱記録層を構成する二成分の組合せとしては、下記(a)〜(m)の様なものが挙げられる。
【0030】
(a)電子供与性染料前駆体と、電子受容性化合物との組合せ。
(b)光分解性ジアゾ化合物と、カプラーとの組合せ。
(c)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ。
(d)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪族塩と、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ。
(e)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀等との塩等の有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ土類金属硫化物との組合せ、または、前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ。
(f)硫化銀、硫化鉛、硫化水銀、硫化ナトリウム等の(重)金属硫酸塩と、Na−テトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ。
(g)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ジヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(h)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機貴金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ。
(i)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ。
(j)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ。
(k)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪酸重金属塩と、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ。
(l)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せのようなオキサジン染料を形成する物。
(m)ホルマザン化合物と還元剤および/または金属塩との組合せ。
【0031】
上記の中でも、本発明の感熱記録材料においては、(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ、又は(c)有機金属塩と還元剤との組合せ、を用いることが好ましく、特に(a)又は(b)の組合せを用いるのが更に好ましい。
【0032】
また、本発明で得られる感熱記録材料において、(拡散透過率/全光透過率)×100(%)から算出されるヘイズ値を、出来るだけ下げる様に感熱記録層を構成することにより、透明性に優れた画像を得ることができる。上記ヘイズ値は記録材料の透明性を示す指数で、一般には、ヘイズメーターを使用して全光透過量や拡散透過光量、平行透過光量を測定して算出される。
本発明において、上記ヘイズ値を下げる方法としては、例えば、感熱記録層に含まれる前記発色成分A、Bの平均粒径を1.0μm以下、好ましくは、0.6μm以下とし、且つバインダーを感熱記録層の全固形分の30〜60質量%の範囲で含有させる方法、或いは、前記発色成分A、Bのいずれか一方をマイクロカプセルに内包し、他方を塗布乾燥後に実質的に連続層を構成する様な、例えば、乳化分散物の態様として使用する方法等が挙げられる。
その他、感熱記録層に使用する各成分の屈折率を出来るだけ同一の値に近づける方法も有効である。
【0033】
次に、本発明の感熱記録層に好ましく使用される、前記の組合せ(a、b、c)について、以下に詳細に説明する。
(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物の組合せ
本発明において好ましく使用される電子供与性染料前駆体は、実質的に無色のものであれば特に限定されるものではないが、エレクトロンを供与して、或いは、酸等のプロトンを受容して発色する性質を有するものであり、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有しており、電子受容性化合物と接触した場合に、これらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物であることが好ましい。
【0034】
上記電子供与性染料前駆体としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物等が挙げられる。
【0035】
上記フタリド類の具体例としては、米国再発行特許明細書第23,024号、米国特許明細書第3,491,111号、同第3,491,112号、同第3,491,116号、同第3,509,174号等に記載された化合物が挙げられる。
上記フルオラン類の具体例としては、米国特許明細書第3,624,107号、同第3,627,787号、同第3,641,011号、同第3,462,828号、同第3,681,390号、同第3,920,510号、同第3,959,571号等に記載された化合物が挙げられる。
上記スピロピラン類の具体例としては、米国特許明細書第3,971,808号等に記載された化合物が挙げられる。
上記ピリジン系及びピラジン系化合物類としては、米国特許明細書第3,775,424号、同第3,853,869号、同第4,246,318号等に記載された化合物が挙げられる。
上記フルオレン系化合物の具体例としては、特願昭61−240989号公報等に記載された化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に、黒発色の2−アリールアミノ−3−〔水素、ハロゲン、アルキル又はアルコキシ−6−置換アミノフルオラン〕が好ましい。
【0036】
具体的には、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジオクチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−ドデシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−エチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−p−ブチルアニリノフルオラン、2−アニリノ−3−ペンタデシル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−エチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−トルイジノ−3−メチル−6−ジイソプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−イソブチル−N−エチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−メチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−プロポキシプロピルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0037】
上述した電子供与性染料前駆体と反応する電子受容性化合物としては、フェノール化合物、有機酸若しくはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が挙げられ、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
具体的には、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル等のビスフェノール類;
【0038】
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、3−α−α−ジメチルベンジルサリチル酸、4−(β−p−メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸等のサリチル酸誘導体;
【0039】
または、その多価金属塩(特に、亜鉛、アルミニウムが好ましい);p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエルテル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、β−レゾルシン酸−(2−フェノキシエチル)エステル等のオキシ安息香酸エステル類;p−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシ−ジフェニルスルフォン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシ−ジフェニルスルフォン等のフェノール類が挙げられる。
上記の中でも、良好な発色特性を得る観点からビスフェノール類が特に好ましい。また、上記の電子受容性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーの組合せ
前記光分解性ジアゾ化合物とは、後述するカップリング成分であるカプラー化合物とカップリング反応して所望の色相に発色するものであり、該反応前に特定波長域の光を受けると分解し、もはやカップリング成分が存在しても発色能力を持たなくなる光分解性のジアゾ化合物である。
この発色系における色相は、ジアゾ化合物とカプラー化合物とが反応して生成するジアゾ色素により決定される。従って、ジアゾ化合物、或いは、カプラーの化学構造を変えることにより、容易に任意に発色色相を変えることができ、その組み合わせ次第で、多様な発色色相を得ることができる。
【0041】
本発明において好ましく使用される光分解性ジアゾ化合物としては、芳香族系ジアゾ化合物が挙げられ、具体的には、芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルフォネート化合物、ジアゾアミノ化合物等が挙げられる。
上記芳香族ジアゾニウム塩としては、以下の一般式で表される化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、該芳香族ジアゾニウム塩は、光定着性に優れ、定着後の着色ステインの発生の少なく、発色画像の安定なものが好ましく用いられる。
Ar−N2 +・X−
上式中、Ar−は置換基を有する或いは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、−N2 +はジアゾニウム基を表し、X−は酸アニオンを表す。
【0042】
上記ジアゾスルフォネート化合物としては、近年多数のものが知られており、各々のジアゾニウム塩を亜硫酸塩で処理することにより得られ、本発明の感熱記録材料に好適に用いることができる。
【0043】
上記ジアゾアミノ化合物としては、ジアゾ基を、ジシアンジアミド、サルコシン、メチルタウリン、N−エチルアントラニックアシッド−5−スルフォニックアシッド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、グアニジン等でカップリングさせることにより得ることができ、本発明の感熱記録材料に好適に用いることができる。
これらのジアゾ化合物の詳細については、例えば、特開平2−136286号公報等に詳細に記載されている。
【0044】
一方、上述のジアゾ化合物とカップリング反応するカプラー化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリドの他、レゾルシンをはじめ、特開昭62−146678号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0045】
本発明の感熱記録層において、ジアゾ化合物とカプラーとの組合せによるものを用いる場合、これらのカップリング反応は塩基性雰囲気下で行うことによりその反応をより促進させることができる観点から、増感剤として、塩基性物質を添加してもよい。
上記塩基性物質としては、水不溶性又は難溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質が挙げられ、例えば、無機又は有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素やチオ尿素又はそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルフォリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォリムアジン類又はピリジン類等の含窒素化合物が挙げられる。
これらの具体例としては、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されたものが挙げられる。
【0046】
(c)有機金属塩と還元剤の組合せ
上記有機金属塩としては、具体的には、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、アラキン酸銀またはベヘン酸銀等の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩;ベンゾトリアゾール銀塩、ベンズイミダゾール銀塩、カルバゾール銀塩またはフタラジノン銀塩等のイミノ基を有する有機化合物の銀塩;s−アルキルチオグリコレート等の硫黄含有化合物の銀塩;安息香酸銀、フタル酸銀等の芳香族カルボン酸の銀塩;エタンスルホン酸銀等のスルホン酸の銀塩;o−トルエンスルフィン酸銀等のスルフィン酸の銀塩;フェニルリン酸銀等のリン酸の銀塩;バルビツール酸銀、サッカリン酸銀、サリチルアスドキシムの銀塩またはこれらの任意の混合物が挙げられる。
これらの内、長鎖脂肪族カルボン酸銀塩が好ましく、中でもベヘン酸銀がより好ましい。また、ベヘン酸をベヘン酸銀と共に使用してもよい。
【0047】
上記還元剤としては、特開昭53−1020号公報第227頁左下欄第14行目〜第229頁右上欄第11行目の記載に基づいて適宜使用することができる。中でも、モノ、ビス、トリスまたはテトラキスフェノール類、モノまたはビスナフトール類、ジまたはポリヒドロキシナフタレン類、ジまたはポリヒドロキシベンゼン類、ヒドロキシモノエーテル類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン類、ピラゾロン類、還元性糖類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、レダクトン類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等を使用することが好ましい。
これらの還元剤の内、ポリフェノール類、スルホンアミドフェノール類又はナフトール類等の芳香族有機還元剤が特に好ましい。
【0048】
本発明において、感熱記録材料の充分な透明性を確保する観点より、感熱記録層に(a)電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、又は(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ、を用いることが好ましい。また、本発明では、発色成分Aと発色成分Bのいずれか一方を、マイクロカプセルに内包化して用いることが好ましく、前記の電子供与性染料前駆体、又は光分解性ジアゾ化合物をマイクロカプセルに内包して使用することが特に好ましい。
【0049】
(マイクロカプセル)
次に、マイクロカプセルの製造方法について詳述する。
マイクロカプセルの製造には、界面重合法、内部重合法、外部重合法等があり、いずれの方法も採用することができる。特に、電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物をカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解または分散させ調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相中と混合し、ホモジナイザー等の手段により乳化分散した後、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こし、高分子物質のマイクロカプセル壁を形成させる界面重合法を採用することが好ましい。
【0050】
高分子を形成するリアクタントは、油滴内部および/または油滴外部に添加される。高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、ポリウレタン、ポリウレアが特に好ましい。上記の高分子物質は、2種以上併用して用いることもできる。
【0051】
前記水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0052】
例えば、ポリウレアをカプセル壁材として用いる場合には、ジイソシアナート,トリイソシアナート,テトライソシアナート,ポリイソシアナートプレポリマー等のポリイソシアナートと、ジアミン,トリアミン,テトラアミン等のポリアミン、2以上のアミノ基を有するプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体またはポリオール等と、を上記水相中で界面重合法によって反応させることにより容易にマイクロカプセル壁を形成させることができる。
【0053】
また、例えば、ポリウレアとポリアミドからなる複合壁若しくはポリウレタンとポリアミドからなる複合壁は、例えば、ポリイソシアナートおよびそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、酸クロライド若しくはポリアミン、ポリオール)を水溶性高分子水溶液(水相)またはカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、これらを乳化分散した後、加温することにより調製することができる。これらのポリウレアとポリアミドからなる複合壁の製造方法の詳細については、特開昭58−66948号公報に記載されている。
【0054】
また、本発明で調製するマイクロカプセル壁には、必要に応じて金属含有染料、ニグロシン等の荷電調節剤、或いは、その他任意の添加物質を加えることができる。これらの添加剤は壁形成時または任意の時点でカプセルの壁に含有させることができる。また必要に応じてカプセル壁表面の帯電性を調節するために、ビニルモノマー等のモノマーをグラフト重合させてもよい。
【0055】
さらに、マイクロカプセル壁をより低温な状況下でも物質透過性に優れ、発色性に富む壁質とするため、壁材として用いるポリマーに適合した可塑剤を用いることが好ましい。該可塑剤は、その融点が50℃以上のものが好ましく、さらに該融点が120℃以下にあるものがより好ましい。このうち、常温下で固体状のものを好適に選択して用いることができる。
例えば、壁材がポリウレア、ポリウレタンからなる場合、ヒドロキシ化合物、カルバミン酸エステル化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物等が好適に用いられる。
【0056】
前記の油相の調製に際し、電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物を溶解し、マイクロカプセルの芯を形成するときの疎水性有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、具体的には、エステル類の他、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1−メチル−1−ジメチルフェニル−2−フェニルメタン、1−エチル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、1−プロピル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、トリアリルメタン(例えば、トリトルイルメタン、トルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)、ジフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、エステル類を使用することが乳化分散物の乳化安定性の観点から特に好ましい。
【0057】
エステル類としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ブチル、リン酸オクチル、リン酸クレジルフェニル等のリン酸エステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸エチル、フタル酸オクチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル;テトラヒドロフタル酸ジオクチル;安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル;アビエチン酸エチル、アビエチン酸ベンジル等のアビエチン酸エステル;アジピン酸ジオクチル;コハク酸イソデシル;アゼライン酸ジオクチル;シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル等のシュウ酸エステル;マロン酸ジエチル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル;クエン酸トリブチル;ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、ソルビン酸ブチル等のソルビン酸エステル;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル;ギ酸モノエステル及びジエステル、酪酸モノエステル及びジエステル、ラウリン酸モノエステル及びジエステル、パルミチン酸モノエステル及びジエステル、ステアリン酸モノエステル及びジエステル、オレイン酸モノエステル及びジエステル等のエチレングリコールエステル類;トリアセチン;炭酸ジエチル;炭酸ジフェニル;炭酸エチレン;炭酸プロピレン;ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル等のホウ酸エステル等が挙げられる。
【0058】
中でも、特にリン酸トリクレジルを単独または混合して用いた場合、乳化物の安定性が最も良好となり好ましい。上記のオイル同士または他のオイルとの併用による使用も可能である。
【0059】
カプセル化しようとする電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物の上記溶媒に対する溶解性が劣る場合には、溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもできる。このような補助溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、およびメチレンクロライド等を特に好ましいものとして挙げることができる。
【0060】
また、上記の電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物を感熱記録材料の感熱記録層に用いる場合、該電子供与性染料前駆体の含有量は、0.1〜5.0g/m2 の範囲であることが好ましく、1.0〜3.5g/m2 の範囲であることがより好ましく、また、光分解性ジアゾ化合物の含有量は、0.02〜5.0g/m2 の範囲であることが好ましく、発色濃度の点から0.10〜4.0g/m2 の範囲であることがより好ましい。
【0061】
前記電子供与性染料前駆体の含有量が0.1g/m2 未満、或いは、前記光分解性ジアゾ化合物の含有量が0.02g/m2 未満の場合には、十分な発色濃度が得られないことがあり、また、両者の含有量が5.0g/m2 を越える場合には感熱記録層の透明性が低下することがある。
【0062】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は分散を均一に、かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は周知の乳化用界面活性剤が使用可能である。また、界面活性剤を添加する場合には、界面活性剤の添加量は、油相の質量に対して0.1%〜5%、特に0.5%〜2%であることが好ましい。
【0063】
上記のように、油相を混合する水相に保護コロイドとして含有せしめる水溶性高分子は、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜選択することができ、乳化しようとする温度における水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、その具体例としては、ポリビニルアルコールまたはその変成物、ポリアクリル酸アミドまたはその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース,メチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
中でも、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体が、特に好ましい。
【0064】
これらの水溶性高分子は、イソシアナート化合物との反応性がないか、或いは、低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め変成するなどして反応性をなくしておくことが好ましい。
【0065】
多価イソシアナート化合物としては3官能以上のイソシアナート基を有する化合物が好ましいが、2官能のイソシアナート化合物を併用してもよい。具体的には、キシレンジイソシアナートおよびその水添物、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナートおよびその水添物、イソホロンジイソシアナートなどのジイソシアナートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパンなどのポリオールとキシリレンジイソシアナート等の2官能イソシアナートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパンなどのポリオールとキシリレンジイソシアナート等の2官能イソシアナートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアナートのホルマリン縮合物などが挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号公報等に記載の化合物が好ましい。
【0066】
多価イソシアナートの使用量は、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定される。分散粒子径は0.2〜10μm程度が一般的である。
【0067】
多価イソシアナートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして水相中および/または油相中に添加するポリオールまたは/およびポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。上記反応において、反応温度を高く保ち、あるいは適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
多価イソシアナート、ポリオール、反応触媒、あるいは、壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書に詳しい(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))。
【0068】
また、水相に含有させる界面活性剤は、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤の中から、上記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを好適に選択して使用することができる。
好ましい界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)等を挙げることができる。
【0069】
乳化は、上記成分を含有した油相と保護コロイド及び界面活性剤を含有する水相を、高速撹拌、超音波分散等の通常の微粒子乳化に用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミルなど、公知の乳化装置を用いて容易に行うことができる。乳化後は、カプセル壁形成反応を促進させるために、乳化物を30〜70℃に加温する。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、充分な攪拌を行う等の必要がある。
【0070】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもっておよそのカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のジアゾニウム塩内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0071】
電子供与性染料前駆体、または光分解性ジアゾ化合物を芯物質としてカプセル化した場合、用いる電子受容性化合物、またはカプラーは、例えば、水溶性高分子および有機塩基、その他の発色助剤等とともに、サンドミル等の手段により固体分散して用いることもできるが、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤および/または水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化した乳化分散物として用いることがより好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。
さらに、カプラー、有機塩基は別々に乳化分散することも、混合してから高沸点溶媒に溶解し、乳化分散することも可能である。好ましい乳化分散粒子径は1μm以下である。
【0072】
本発明の感熱記録材料において電子受容性化合物を用いる場合、該電子受容性化合物はジアゾニウム塩1質量部に対して、0.5〜30質量部の範囲で使用することが好ましく、1.0〜10質量部の範囲で使用することがより好ましい。また、本発明の感熱記録材料においてカプラーを用いる場合、該カプラーはジアゾニウム塩1質量部に対して、0.1〜30質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0073】
この場合に使用される有機溶剤は、例えば、特開平2−141279号公報に記載された高沸点オイルの中から適宜選択することができる。
中でもエステル類を使用することが、乳化分散液の乳化安定性の観点がら好ましく、中でも、リン酸トリクレジルが特に好ましい。上記のオイル同士、又は他のオイルとの併用も可能である。
【0074】
また、油相の水相に対する混合比(油相質量/水相質量)は、0.02〜0.6が好ましく、0.1〜0.4がより好ましい。0.02以下では、水相が多すぎて希薄となり製造適性に欠け、0.6以上では逆に液の粘度が高くなり、取扱いの不便さや塗布液安定性の低下を生ずるため好ましくない。
【0075】
本発明の感熱記録材料に設ける感熱記録層は、サーマルヘッドの僅かな熱伝導の差異等から生ずる濃度ムラ等を抑え高画質な画像を得るため、飽和透過濃度(DT−max )を得るのに必要なエネルギー量幅、即ち、ダイナミックレンジが広い感熱記録層であることが好ましい。本発明の感熱記録材料は上記のような感熱記録層を有し、90〜150mJ/mm2 の範囲の熱エネルギー量で、透過濃度DT 3.0を得ることができる特性を有する感熱記録材料層である。
【0076】
上記のように調製した各種感熱記録層塗布液には、バインダーが添加、混合される。
前記バインダーとしては、水溶性のものが一般的であり、ポリビニルアルコ−ル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。
また、これらのバインダーに耐水性を付与する目的で耐水化剤を加えたり、疎水性ポリマーのエマルジョン、具体的には、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリル樹脂エマルジョン等を添加することもできる。
【0077】
上記のように調製した各種感熱記録層塗布液を支持体上に塗布する際、水系または有機溶剤系の塗布液に用いる公知の塗布手段が用いられるが、この場合、感熱記録層塗布液を安全かつ均一に塗布するとともに、塗膜の強度を保持するため、本発明の感熱記録材料においては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉類、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレンまたはその共重合体、ポリエステルまたはその共重合体、ポリエチレンまたはその共重合体、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂またはその共重合体、メタアクリレート系樹脂またはその共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等を使用することができる。
【0078】
感熱記録層は、塗布、乾燥後の乾燥塗布量が1〜25g/m2 になるように塗布されること、および該層の厚みが1〜25μmになるように塗布されることが望ましい。
【0079】
(その他の成分)
以下に、感熱記録層に用いることのできるその他の成分について述べる。
その他の成分としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、公知の熱可融性物質、ワックス、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0080】
前期熱可融性物質は、熱応答性の向上を図る目的で感熱記録層に含有させることができる。
熱可融性物質としては、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル及び又は脂肪族アミド又はウレイドなどがその代表である。
これらの例は、特開昭58−57989号、同58−87094号、同61−58789号、同62−109681号、同62−132674号、同63−151478号、同63−235961号、特開平2−184489号、同2−215585号の各公報などに記載されている。
【0081】
前記ワックスとしては、融点が40℃〜100℃の範囲にあり、且つ、その50%体積平均粒径が0.7μm以下のものであることが好ましく、0.4μm以下のものであることがより好ましい。
該平均粒径が0.7μmを越える場合、感熱記録層の透明性が低下したり、画像のカスレが発生し好ましくない。
また、融点が40℃未満の場合、保護層表面が粘着性を帯びてくるため好ましくなく、100℃を越える場合には、スティッキングが生じ易くなり好ましくない。
【0082】
融点を40℃〜100℃に有するワックスとしては、例えば、パラフィンワックス;マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス;ポリエチレンワックス等の合成ワックス;キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス等の植物系ワックス;ラノリン等の動物系ワックス;モンタンワックス等の鉱物系ワックスが挙げられる。中でも、融点を55℃〜75℃に有するパラフィンワックスが特に好ましい。
ワックスの使用量は、保護層全体の0.5〜40質量%、好ましくは1〜20質量%の割合で添加される。また、これらのワックスと12−ヒドロキシステアリン酸誘導体、高級脂肪酸アミド等を併用して用いてももよい。
【0083】
前記ワックスを上記した50%平均粒径にまで分散する方法としては、ワックスを適当な保護コロイドや界面活性剤の共存下で、ダイノミルやサンドミル等の公知の湿式分散機で分散する方法などが挙げられるが、微粒子化する観点からは、一旦ワックスを加熱して融解した後、この融点以上の温度下で、ワックスが不溶または難溶の溶剤中で高速撹拌、超音波分散等の手段により乳化する方法や、ワックスを適当な溶剤に溶解した後、ワックスが不溶または難溶の溶剤中で乳化する方法等が挙げられる。この際、適当な界面活性剤や保護コロイドを併用してもよい。
【0084】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤などが好適に挙げられる。これらの例は、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号の各公報、米国特許2,719,086号、同3,707,375号、同3,754,919号、同4,220,711号の各明細書などに記載されている。
【0085】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤などが好適に挙げられる。これらの例は、特開昭59−155090号、同60−107383号、同60−107384号、同61−137770号、同61−139481号、同61−160287号の各公報などに記載されている。
【0086】
上記のようなその他の成分の塗布量としては、0.05〜1.0g/m2 程度が好ましく、0.1〜0.4g/m2 がより好ましい。なお、前記その他の成分は、前記マイクロカプセル内に添加してもよいし、前記マイクロカプセル外に添加してもよい。
【0087】
(下塗り層)
本発明の感熱記録材料においては、支持体から感熱記録層が剥がれることを防止する目的で、マイクロカプセル等を含有する感熱記録層や光反射防止層を塗布する前に、支持体上に下塗り層を設けることが望ましい。
下塗り層としては、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、SBR、水性ポリエステル等を用いることができ、膜厚としては0.05〜0.5μmとすることが望ましい。
【0088】
下塗り層上に感熱記録層を塗布する際、感熱記録層塗布液に含まれる水分により下塗り層が膨潤して、感熱記録層に記録された画像が悪化することがあるので、下塗り層にはグルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類およびホウ酸等の硬膜剤を用いて硬膜させることが望ましい。これらの硬膜剤の添加量は、下塗り素材の質量に応じて0.2〜3.0質量%の範囲で、所望の硬化度に合わせて適宜、添加することができる。
【0089】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に下塗り層、感熱記録層、保護層を順次、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法により支持体上に塗布することにより形成することができる。
【0090】
(支持体)
本発明の感熱記録材料では、透明な感熱記録材料を得る関係上、透明支持体を用いる。透明支持体としては、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルムが挙げられ、これらを単独で、或いは貼り合わせて使用することができる。
上記合成高分子フィルムの厚さは25〜250μmの範囲であることが好ましく、50〜200μmの範囲であることがより好ましい。
【0091】
また、上記の合成高分子フィルムは任意の色相に着色されていてもよい。高分子フィルムを着色する方法としては、樹脂フィルムを成形する前に樹脂に染料を混練してフィルムを成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製し、これを無色透明な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布する方法、等が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルムに成形し、これに耐熱処理、延伸処理、帯電防止処理を施したものが好ましい。
【0092】
特に、本発明の透明の感熱記録材料をシャーカステン上で支持体側から観察した場合、透明な非画像部分を透過するシャーカステン光により幻惑が生じ見ずらい画像になることがある。
これを避けるため、透明支持体としては、JIS−Z8701記載の方法により規定された色度座標上の、A(x=0.2805,y=0.3005)、B(x=0.2820,y=0.2970)、C(x=0.2885,y=0.3015)、D(x=0.2870,y=0.3040)の4点で形成される四角形の領域内に青く着色された合成高分子フィルムを用いることが、特に好ましい。
【0093】
また、感熱記録層の塗布面と反対の支持体表面に平均粒径が1〜20μm、更に好ましくは、1〜10μmの微粒子を含有する光反射防止層を設けてもよい。この光反射防止層の塗設により、入射光角20°で測定した光沢度を50%以下にすることが好ましく、30%以下にすることがより好ましい。
光反射防止層に含有される微粒子としては、大麦、小麦、コーン、米、豆類より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルまたは酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミ、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等を挙げることができる。
これらの微粒子状物質は2種以上併用して用いてもよい。また、感熱記録材料の透明性を良好なものとする観点から、屈折率が1.45〜1.75の微粒子状物質であることが好ましい。
【0094】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、必要に応じて、感熱記録層形成前に下塗り層を塗設した後、前記したような感熱記録層塗布液を塗布、乾燥して感熱記録層を塗設し、更に該記録層上に保護層を塗設すること等により製造することができる。
【0095】
(カーボン被覆サーマルヘッド)
本発明の感熱記録材料は、加熱素子部位の最上層の炭素含有率が90質量%以上であるカーボン被覆サーマルヘッドを用いて、熱エネルギーを供与して印画することも可能である。
ここで用いられるサーマルヘッドは、カーボン被覆サーマルヘッドが好ましく、該サーマルヘッドは、感熱記録材料に接触する加熱素子部位の最上層の炭素含有率が90質量%以上となる様に、公知の製膜装置を用いてグレーズ層上に発熱抵抗体と電極を具備する加熱素子部位の最上層に保護層を設けたものである。このサーマルヘッド保護層は、2層以上で構成されてもよいが、少なくとも最上層の炭素含有率は90%以上であることが必要である。
【0096】
本発明の感熱記録材料は、以下に説明する本発明の感熱記録材料の製造方法によって好適に製造することができる。
本発明の感熱記録材料は、スティクや印加時の騒音が発生しにくく、かつ、耐摩耗性に優れた、炭素比率が90%以上の最上層を有するサーマルヘッドに対しても十分なヘッドマッチング性を有するため、特に、医療用記録媒体等の高画質が要求される分野に好適に用いられる。
【0097】
(感熱記録材料の製造方法)
以下、本発明の感熱記録材料の製造方法について説明する。
本発明の感熱記録材料の製造方法は、支持体上に、感熱記録層形成用塗布液を塗布して感熱記録層を形成し、該感熱記録層上に、保護層形成用塗布液を塗布して保護層を形成し、更に必要に応じて、その他の層を形成してなる。
ここで、前記感熱記録層及び保護層を同時に形成してもよく、その場合、前記感熱記録層形成用塗布液と前記保護層形成用塗布液とを前記支持体上に同時に重層塗布することにより、前記感熱記録層及びその上に前記保護層を同時に形成することができる。
【0098】
ここで使用される支持体は、本発明の感熱記録材料に使用される既に説明した支持体を用いることができる。また、前記感熱記録層形成用塗布液としては、前述した前記感熱記録層用塗布液を用いることができ、更に、前記保護層形成用塗布液も、前述した顔料及びバインダーを含有する保護層用塗布液を用いることができる。
また、前記その他の層としては、前述した中間層や下塗り層等のその他の層が挙げられる。
本発明の感熱記録材料の製造方法では、支持体上に、下塗り層、感熱記録層、中間層、保護層等を順次形成するために、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法が用いられる。
【0099】
本発明では、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面温度50〜100℃で、1〜600秒加熱する。
ここで、「塗布層が減率乾燥速度を示す」とは、通常、該塗布液の塗布後数分間経過した時点より後の乾燥速度を言い、この時点より前では、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥速度」の現象を示す。この「恒率乾燥速度」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0100】
上記の通り、塗布液の塗布後、該塗布層が減率乾燥速度を示すようになるまで乾燥されるが、この乾燥は一般に常温〜40℃で30秒〜10分間(好ましくは、1〜5分間)行われる。この乾燥時間としては、当然塗布量により異なるが、通常は上記範囲が適当である。
【0101】
塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示してから加熱までの時間は、短い方が好ましく、300秒以内がより好ましい。この時間が長すぎると、塗布層が乾燥しきってしまい、後に加熱しても本発明の効果は少ないものとなる。
【0102】
本発明における加熱は、60〜100℃(最外層(通常保護層)の表面温度)で、行い、好ましくは60〜90℃で行なう。この温度が50℃未満であると、本発明の効果を奏さず、100℃を超えると、カブリを生じ好ましくない。なお、加熱は、乾燥後速やかに50〜100℃の範囲になるように行なうことが好ましい。
加熱時間は、1〜600秒であり、好ましくは1〜300秒である。加熱時間が1秒未満であると、本発明の効果が少なく、600秒を超えると感熱層が発色しだしてしまい好ましくない。加熱手段としては、ヒートロールや熱風吹き出しノズル方式が好ましい。
加熱後は、速やかに、室温まで冷却することが好ましい。このため強制的に冷却する手段、例えばチリングロールを用いることが好ましい。
【0103】
【実施例】
以下に、実施例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明は以下実施例のみに限定されるものではない。文中で使用する濃度は、全て質量%である。また、乳化分散液とは、水中油滴分散型分散物を意味する。
【0104】
≪実施例1≫
<保護層用塗布液の調製>
[保護層用顔料分散液の調製]
水110gに、顔料としてステアリン酸処理水酸化アルミニウム(商品名:ハイジライトH42S,昭和電工(株)製)30gを加え3時間撹拌した後、これに分散助剤(商品名:ポイズ532A,花王(株)製)0.8g、10%ポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA105,(株)クラレ製)30g、2%に調整した下記構造式[100]で表される化合物の水溶液10gを加えサンドミルで分散し、平均粒径0.30μmの保護層用顔料分散液を得た。
尚、「平均粒径」は、用いる顔料を分散助剤共存下で分散し、その分散直後の顔料分散物に水を加えて0.5%に希釈した被検液を、40℃の温水中に投入し光透過率が75±1.0%になるように調整した後、30秒間超音波処理しレーザー回折粒度分布測定装置(商品名:LA700,(株)堀場製作所製)により測定した、全顔料の50体積%に相当する顔料粒子の平均粒径を使用し、以下に記載の「平均粒径」は全て同様の方法により測定した平均粒径を表す。
【0105】
【化1】
【0106】
[保護層用塗布液の調製]
水65gに、
8%ポリビニルアルコール水溶液
(商品名:PVA124C,(株)クラレ製) 90g
20.5%ステアリン酸亜鉛分散物
(商品名:F115,中京油脂(株)製) 5.5g
21.5%ステアリン酸アミド化合物
(商品名:G−270,中京油脂(株)製) 3.8g
18.0%ステアリン酸分散物
(商品名:セロゾール920,中京油脂(株)製) 2.8g
4%ホウ酸水溶液 10g
前記保護層用顔料分散液 70g
35%シリコーンオイル水分散液
(ポリジメチルシロキサン,商品名:BY22−840,
東レ・ダウコーニング(株)製) 4.7g
10%ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩水溶液 6.5g
75%ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸
アンモニウム塩水溶液
(商品名:ニッサンエレクトールSAL1、日本油脂(株)製)3.28g
6%スチレン−マレイン酸共重合体アンモニウム塩
水溶液(商品名:ポリマロン385,荒川化学(株)製)17.5g
20%コロイダルシリカ
(商品名:スノーテックス,日産化学(株)製) 14g
10%サーフロンS131S(旭ガラス(株)製) 16g
プライサーフA217E(第一工業製薬(株)製) 1.1g
2%酢酸 8g
を混合して保護層用塗布液を得た。
【0107】
<中間層用塗布液の調製>
石灰処理ゼラチン1kgに、水7848gを加え、溶解した後に、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸Na塩(商品名:ニッサンラピゾールB90、日本油脂(株)製)の5%溶解液(水/メタノール=1/1体積混合溶媒)を137g加え、中間層塗布液を調製した。
【0108】
<感熱記録層用塗布液の調製>
以下のように、マイクロカプセル塗布液、顕色剤乳化分散物の各液を調製した。
[マイクロカプセル塗布液Aの調製]
発色剤として、
下記構造式[201]で表される化合物 11.7g
下記構造式[202]で表される化合物 1.5g
下記構造式[203]で表される化合物 2.2g
下記構造式[204]で表される化合物 5.65g
下記構造式[205]で表される化合物 1.2g
下記構造式[206]で表される化合物 1.1g
下記構造式[207]で表される化合物 0.57g
を酢酸エチル24.3gに添加して70℃に加熱、溶解した後、45℃まで冷却した。これに、カプセル壁材(商品名:タケネートD140N,三井武田ケミカル(株)製)15.4gを加え、混合した。
【0109】
【化2】
【0110】
【化3】
【0111】
【化4】
【0112】
この溶液を、水16gに8%のポリビニルアルコール水溶液(商品名:MP−103、(株)クラレ製)48gを混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用い回転数15000rpmで5分間乳化を行った。得られた乳化液に、更に水110g及びテトラエチレンペンタミン1.0gを添加した後、60℃で4時間カプセル化反応を行い、平均粒径0.80μmのマイクロカプセル塗布液Aを調製した。
得られたマイクロカプセル液Aのカプセル壁のガラス転移温度(以下Tgという。)をDMTA(Dynamic Mechanical Thermal Analyzer)(ポリマーラボラトリー社製のガラス転移温度測定器の商品名)を用いて測定したところ、193℃であった。
【0113】
[マイクロカプセル塗布液Bの調整]
構造式[201]で表される化合物 12.2g
構造式[202]で表される化合物 1.6g
構造式[203]で表される化合物 2.4g
構造式[204]で表される化合物 3.3g
構造式[205]が表される化合物 1.5g
構造式[206]で表される化合物 0.2g
構造式[207]が表される化合物 0.5g
を酢酸エチル21gに添加し、70℃に加熱、溶解した後、35℃に冷却した。これにカプセル壁材(商品名:タケネートD127N、三井武田ケミカル(株)製)16.6g、を加え、混合した。
【0114】
この溶液を水16.6gに8%のポリビニルアルコール(MP−103、(株)クラレ製)48.1gを混合した水相中に加え、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用い、15000rpmで5分間乳化を行なった。得られた乳化液に更に水112g及びテトラエチレンペンタミン0.9gを添加した後、60℃で4時間カプセル化反応を行ない、平均粒径0.30μmのマイクロカプセル塗布液Bを調製した。
得られたマイクロカプセル液Bのカプセル壁のTgを、マイクロカプセル液Aと同様に測定したところ、153℃であった。
【0115】
[顕色剤微乳化分散液の調製]
顕色剤として
下記構造式[301]で表される化合物 6.7g
下記構造式[302]で表される化合物 8.0g
下記構造式[303]で表される化合物 5.8g
下記構造式[304]で表される化合物 1.5g
下記構造式[305]で表される化合物 2.2g
下記構造式[306]で表される化合物 0.8g
下記構造式[307]で表される化合物 4.3g
をトリクレジルフォスフェート1.0g、マレイン酸ジエチル0.5gと共に、酢酸エチル16.5gに添加し、70℃に加熱して溶解した。
【0116】
【化5】
【0117】
【化6】
【0118】
この溶液を、水70g、8%ポリビニルアルコール水溶液(PVA217C、(株)クラレ製)57g、15%のポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA205C,(株)クラレ製)20g、下記構造式[401]で挙げられる化合物及び下記構造式[402]で表される化合物の2%水溶液11.5gを混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000rpmで平均粒径0.7μmになるように乳化し、顕色剤乳化分散液Cを得た。
【0119】
【化7】
【0120】
[感熱記録層用塗布液Aの調製]
前記マイクロカプセル塗布液A(固形分濃度23%) 12g
マイクロカプセル塗布液B(固形分濃度24%) 2.5g
前記顕色剤乳化分散液C(固形分濃度22%) 50g
下記構造式[403]で表される化合物の50%水溶液 0.7g
コロイダルシリカ(スノーテックス 日産化学(株)製)1.8g
を混合して、感熱記録層用塗布液Aを調製した。
【0121】
【化8】
【0122】
[感熱記録層用塗布液Bの調製]
マイクロカプセル塗布液A(固形分濃度23%) 2.3g
マイクロカプセル塗布液B(固形分濃度24%) 6.6g
顕色剤乳化分散液C(固形分濃度22%) 33g
コロイダルシリカ(スノーテックス、日産科学(株)製) 1.5g
構造式[403]で表される化合物の50%水溶液 0.4g
を混合し、感熱記録層用塗布液Bを調製した。
【0123】
[バック層用塗布液Aの調製]
石灰処理ゼラチンを1kg、平均粒子径5.7μmの球形PMMA粒子12%を含むゼラチン分散物を757g、構造式[501]〜[505]で表わされる化合物を以下の含有率で含む紫外線吸収剤の乳化物を3761g(乳化物1kg当たりの紫外線吸収剤含有量は、
構造式[501]で表される化合物 9.8g
構造式[502]で表される化合物 8.4g
構造式[503]で表される化合物 9.8g
構造式[504]で表される化合物 13.98g
構造式[505]で表される化合物 29.3g
である。)及び、
1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン 1.75g
ポリ(p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム)
(分子量約40万) 64.2g
構造式[506]で表わされる化合物 10.0g
ポリエチルアクリレートのラテックス20%液 3180ml
N,N−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)75.0g
1,3−ビス(ビニルスルホニルアセトアミド)プロパン25.0g
以上に水を加えて全量を62.77リットルとなるよう調製した。
【0124】
【化9】
【0125】
[バック層用塗布液Bの調製]
石灰処理ゼラチンを1kg、平均粒子径0.7μmの球形PMMA粒子12%を含むゼラチン分散物を2000g、メタノールを1268ml、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを1.75g、ポリアクリル酸ナトリウム(分子量約10万)を64.4g、ポリ(p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム)(分子量約40万)を54g、p−tert−オクチルフェノキシポリオキシエチレン−エチレンスルホン酸ナトリウムを25.2g、N−プロピル−N−ポリオキシエチレン−パーフルオロオクタンスルホン酸アミドブチルスルホン酸ナトリウムを5.3g、パールフルオロオクタンスルフォン酸カリウムを7.1gを、苛性ソーダでpH=7.0に調整した後、水を加えて全量を66.79リットルとなるように調製した。
【0126】
上記のバック層用塗布液A及びバック層用塗布液Bを、JIS−Z8701記載の方法により規定された色度座標でx=0.2850、y=0.2995に青色染色した厚み180μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート支持体の片面に、支持体に近い側から、バック層塗布液A、バック層塗布液Bの順でそれぞれ塗布量が44.0ml/m2、18.5ml/m2となるようにスライドビード法により同時重層塗布、乾燥した。
塗布乾燥条件は以下の通りである。塗布スピードは160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対して200〜1000Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続くチリングゾーンにおいて、乾球温度0〜20℃の風で塗布液を冷却した後、無接触で搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置により、乾球温度23〜45℃、湿球温度15〜21℃の乾燥風で乾燥させた。
【0127】
<感熱記録材料の作製>
上記のバック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥(減率乾燥速度を示した後、以下同じ)60秒後に、膜面温度が80℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱して、実施例1の透明な感熱記録材料を得た。
【0128】
≪実施例2≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が60℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、実施例2の感熱記録材料を得た。
【0129】
≪実施例3≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が90℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、実施例3の感熱記録材料を得た。
【0130】
≪比較例1≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、その後加熱処理しない以外は実施例1と同様にして、比較例1の感熱記録材料を得た。
【0131】
≪比較例2≫
実施例1の [保護層用塗布液の調製]を次のように換え、バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、その後加熱処理しない以外は実施例1と同様にして、比較例2の感熱記録材料を得た。
[保護層用塗布液の調製]
水65gに、
8%ポリビニルアルコール水溶液
(商品名:PVA124C,(株)クラレ製) 90g
20.5%ステアリン酸亜鉛分散物
(商品名:F115,中京油脂(株)製) 11g
21.5%ステアリン酸アミド化合物
(商品名:G−270,中京油脂(株)製) 7.6g
18.0%ステアリン酸分散物
(商品名:セロゾール920,中京油脂(株)製) 5.6g
4%ホウ酸水溶液 10g
前記保護層用顔料分散液 70g
35%シリコーンオイル水分散液
(ポリジメチルシロキサン,商品名:BY22−840,
東レ・ダウコーニング(株)製) 4.7g
10%ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩水溶液 6.5g
75%ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸
アンモニウム塩水溶液
(商品名:ニッサンエレクトールSAL1、日本油脂(株)製)3.28g
6%スチレン−マレイン酸共重合体アンモニウム塩
水溶液(商品名:ポリマロン385,荒川化学(株)製)17.5g
20%コロイダルシリカ
(商品名:スノーテックス,日産化学(株)製) 14g
10%サーフロンS131S(旭ガラス(株)製) 16g
プライサーフA217E(第一工業製薬(株)製) 1.1g
2%酢酸 8g
を混合して保護層用塗布液を得た。
【0132】
≪比較例3≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が45℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、比較例3の感熱記録材料を得た。
【0133】
≪比較例4≫
バック層を塗設した支持体のバック層と反対の面に、支持体に近い側から感熱発色層A液、B液、中間層塗布液、及び保護層塗液の順で、それぞれ塗布量が50ml/m2、20ml/m2、27ml/m2、25ml/m2になるように塗布乾燥し、乾燥60秒後に、膜面温度が105℃になるように加熱ドラムにて1分間加熱した以外は実施例1と同様にして、比較例4の感熱記録材料を得た。
【0134】
(評価試験)
<ヘッドマッチング性(スティッキング)の評価>
上記で得られた感熱記録材料につき、京セラ(株)製のサーマルヘッド(商品名「KGT、260−12MPH8」)の最上層に、厚さ2μmで炭素含有率が98質量%のカーボン層を物理蒸着法により設けたサーマルヘッドを用いて、ヘッド圧が10kg/cm2で記録エネルギーが120mJ/mm2の条件で記録し、その際、印画時に該サーマルヘッドと感熱記録材料の保護層との間で接着乃至は粘着する現象(スティッキング)を起こすか否かを目視により観察し、下記の基準で評価した。
○………スティッキングが発生しなかった
△………スティッキングが少し発生した
×………スティッキングがかなり発生した
【0135】
<白化の評価>
110mJ/mm2のエネルギーで記録を行ない、記録後1時間後の表面を指で擦り、目視で観察し、次の基準で評価した。
○………擦ったあとが見えない
△………擦ったあとが見えるが許容レベル
×………擦ったあとが明瞭に観察され品位が落ちる
【0136】
<カブリの評価>
マクベス濃度計TD−404(マクベス社製)を用いて測定した。
【0137】
以上の評価結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
実施例1〜3のものは、スティック、白化、カブリとも優れていたが、乾燥後の加熱をしない比較例1、2のものは、潤滑剤が少ないものはスティックが生じ、多いものは白化が生じた。また、加熱温度が低いもの(比較例3)はスティックが生じ、高すぎるもの(比較例4)はカブリを生じた。
【0140】
【発明の効果】
本発明に従えば、記録時のスティッキングや異音の発生がなく、透明性に優れると共に、高い熱エネルギーで記録した場合でもサーマルヘッドの摩耗を低減することができる。また、潤滑剤による白化が防止される。その結果、濃度ムラ、画像ヌケ・ボケ等のない、鮮鋭で高画質な画像を長期間安定して得ることができる。
従って、本発明の感熱記録材料は、高画質で、常に安定した画像を要求する医療用記録材料等に用いる記録媒体として好適なものである。
Claims (4)
- 支持体上に、感熱記録材料用塗布液を塗布して乾燥する感熱記録材料の製造方法において、該塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示した後に、該塗布層を表面濃度50〜100℃で、1〜600秒加熱し、次いで冷却することを特徴とする感熱記録材料の製造方法。
- 塗布後の塗布層が減率乾燥速度を示してから加熱までの時間が120秒以内である請求項1記載の感熱記録材料の製造方法。
- 感熱記録材料用塗布液の一つが、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアロアミド、硬化ヒマシ油、シリコーン及びアルキルリン酸エステルから選ばれる一種又は二種以上の潤滑剤を含有する保護層用塗布液である請求項1又は2記載の感熱記録材料の製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の製造方法により製造された感熱記録材料。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002295599A JP2004130580A (ja) | 2002-10-09 | 2002-10-09 | 感熱記録材料及びその製造方法 |
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Cited By (3)
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JP2007076254A (ja) * | 2005-09-15 | 2007-03-29 | Ricoh Co Ltd | 感熱記録媒体 |
JP2009184342A (ja) * | 2008-01-10 | 2009-08-20 | Ricoh Co Ltd | 感熱記録材料の製造方法、及び感熱記録材料 |
JP2013132778A (ja) * | 2011-12-26 | 2013-07-08 | Oji Holdings Corp | 感熱記録体およびその製造方法 |
-
2002
- 2002-10-09 JP JP2002295599A patent/JP2004130580A/ja active Pending
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