JP2004130429A - コア・シェル構造体とこのコア・シェル構造体から誘導されてなる中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】均一な球形粒子サイズ、nmレンジで均一に制御されたシェル厚みを有するコア・シェル構造体とこのコア・シェル構造体の形状とシェル厚みを保持したままに誘導されてなる中空酸化物シェル構造体とその製造方法を提供しようというものである。
【解決手段】層状酸化物を層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(ナノシート)とカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、次いで、この構造体をポリマー除去手段を適用して処理し、ポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを分解・除去するプロセスによって、酸化物ナノシートの累積多層薄膜から成る中空酸化物シェル構造体を破壊するすることなく残存させることによって中空酸化物シェル構造体を生成する。
【選択図】 図3
【解決手段】層状酸化物を層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(ナノシート)とカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、次いで、この構造体をポリマー除去手段を適用して処理し、ポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを分解・除去するプロセスによって、酸化物ナノシートの累積多層薄膜から成る中空酸化物シェル構造体を破壊するすることなく残存させることによって中空酸化物シェル構造体を生成する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、コア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法に関する。
さらに詳しくは、化粧料、塗料、複合材料用フィラー、触媒などとしての利用が期待される、またさらに、医薬品、化粧料、色素、インクなどの徐放用カプセルおよび流体計測システム用トレーサーなどとしても有望な、コア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマー球をナノ薄膜でコーティングしたり、コーティング後ポリマーを除去して中空シェルを合成することは、電子材料、光学材料、複合材料、触媒、医薬品などとして幅広い応用が期待できることから昨今盛んな研究が開始されている。例えば、ポリマー球を鋳型としてその表面をナノ粒子などでコーティングしてコア・シェル構造体を合成することおよびコアを除去して中空シェル材料を誘導することが、報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、本発明者グループにおいても、ナノシートが分散したコロイド溶液を噴霧乾燥して直接中空粒子を得ることに成功し、これについて既に報告をしている(例えば、特許文献1、非特許文献2参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
F.Caruso,R.A.Caruso、H.Mohwald共著、“Science”,vol.282,p.1111、(1998年)。
【非特許文献2】
M.Iida,T.Sasaki、M.Watanabe共著、“Chem.Mater.”vol.10,p.3780、(1998年)。
【特許文献1】
PCT国際出願W099/11574。
【0004】
前記第1の合成方法においては、コーティング材料としてナノ粒子や重合を起こす前駆体分子などが用いられ、これによってミクロンサイズのポリマーコアに数十〜数百nmの厚みのコーティングが可能となり、コア・シェル構造体が合成されるとともに、その中空シェル化にも成功してきている。しかしながら量子サイズ効果などに関連したより高度な機能性を発現させるためには、さらに精細なレンジでの厚みコントロールすることが求められている。前記第1の方法ではシェルの厚みの制御可能なレンジが大きく、コアを加熱除去する際に、シェル成分の焼結が進むため中空粒子の大幅な収縮、前記第2の方法では粒子サイズおよびシェルの厚みのバラツキ、などの問題があった。
【0005】
【発明の課題】
本発明は、以上述べた従来技術、先行技術を念頭に置いてなされたもので、均一な球形粒子サイズ、シェルの厚みを有するコア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする均一球形粒子サイズ、均一シェル厚みを有する中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法を提供しようというものである。
【0006】
そのため、鋭意研究した結果、層状物質を単層剥離して得たナノシートをポリマー球上に自己組織化累積することにより、シェルのサイズおよび厚みを極めて精密に制御することができることを見いだした。すなわち、本発明者らは以前より様々な層状物質を化学的に剥離することで、ホスト層1枚に相当するナノシートを合成してきた。このナノシートは厚みが約1nmと極めて薄いうえに、横サイズが数百nm〜数十μmと非常に大きな2次元異方性を有していること、極めて柔軟で固体表面に吸着させると下地の形状をそのまま保持した形で被覆する性質があることから、これをナノレンジの厚みのコーティング材料として利用し、ポリマー球に適用することを発想した。その結果、任意の径のポリマー球を鋳型材料として選定し、厚みを制御して被覆することによって、所望の粒子径と平滑でnmレンジで制御された厚みの被覆層を有してなるコア・シェル構造体を得ることに成功した。また、その得られたコア・シェル構造体から、コアとなるポリマー球に対して、ポリマーのみを選択的に分解・除去する手段を選定し、適用することによって、被覆層すなわちポリマー球の外側に被覆されたシェル層を破壊することなく、ポリマー層のみを選択的に分解・除去し、従来では達成できなかった10nm以下の厚みを持つ中空シェル構造体を得ることに成功したものである。本発明は、これらの一連の知見、成功に基づいてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、層状物質を単層剥離して得たナノシートをポリマー球上に自己組織化累積することが出来、この作用によって、シェルのサイズおよび厚みが極めて精密に制御されて成るコア・シェル構造体あるいはこれを前駆体とする中空シェル構造体とこれらの製造方法を提供することを可能としたもので、以下(1)〜(20)に記載する手段を講じて成るものである。
【0008】
(1) 層状酸化物を層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(以下ナノシートと言う)とカチオン性ポリマーとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球面体上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積させて均一な球形、膜厚のコア・シェル構造体としたことを特徴とする、コア・シェル構造体。
(2) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシート、より成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(1)記載のコア・シェル構造体。
【0009】
(3) 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積させてコア・シェル構造体とし、これをポリマー除去手段により処理することによりポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを除去して、酸化物ナノシート累積多層薄膜によって構成されて成る均一な球形、膜厚の中空酸化物シェル構造体としたことを特徴とする、中空酸化物シェル構造体。
(4) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(3)記載の中空酸化物シェル構造体。
(5) 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを熱分解させる熱処理手段であることを特徴とする、前記(3)又は(4)記載の中空酸化物シェル構造体。
(6) 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを分解させる紫外線照射手段であることを特徴とする、前記(3)又は(4)記載の中空酸化物シェル構造体。(7) 前記酸化物ナノシートとして酸化チタンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がルチルないしはアナターゼ構造の均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(3)ないし(6)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
(8) 前記酸化物ナノシートとして酸化マンガンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体が、酸化マンガンの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(3)ないし(6)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
(9) 前記酸化物ナノシートとしてアルミノシリケートナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がアルミノシリケートの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(3)ないし(6)の何れか1項に記載の中空酸化物構造体。
【0010】
(10) 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積して均一な球形、膜厚のコア・シェル構造体を生成することを特徴とする、コア・シェル構造体の製造方法。
(11) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシートより成る群からなる1種又は2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(10)記載のコア・シェル構造体の製造方法。
【0011】
(12) 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、これをポリマー除去手段により処理することによりポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを除去して、酸化物ナノシート累積多層薄膜によって構成されて成る均一な球形、膜厚の中空酸化物シェル構造体を生成することを特徴とする、中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(13) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシート、より成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(12)記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(14) 前記ポリマー除去手段が、ポリマーを熱分解させる熱処理手段であることを特徴とする、前記(12)記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(15) 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを分解させる紫外線照射手段であることを特徴とする、前記(12)記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(16) 前記酸化物ナノシートとして酸化チタンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がルチルないしはアナターゼ構造の均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(12)ないし(15)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(17) 前記酸化物ナノシートとして酸化マンガンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体が酸化マンガンの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(12)ないし(15)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(18) 前記酸化物ナノシートとしてアルミノシリケートナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がアルミノシリケートの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(12)ないし(15)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
【0012】
(19) シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(10)又は(11)項記載のコア・シェル構造体の製造方法。
(20) シェルの厚みを1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(12)ないし(18)の何れか1項に記載の中空酸化物シェルの製造方法。
【0013】
ここに、コーティング材料となるナノシートは、層状化合物を単層剥離することで簡単に入手することができる。出発層状物質は酸化チタンナノシートの場合は、四チタン酸塩K2Ti4O9、五チタン酸塩Cs2Ti5O11、レピドクロサイト型チタン酸塩Cs0.7Ti1.825O4、K0.8Ti1.73Li0.27O4など、酸化マンガンナノシートの場合はP3型マンガン酸塩K0.45MnO2 、バーネサイト型マンガン酸塩NaxMnO2・nH2Oなど、酸化ニオブナノシートの場合は層状ペロブスカイトKCa2Nb3O10などを用いることができる。
【0014】
これらの化合物の剥離ナノシート化についてはいろいろな手法が報告されているが、酸処理して層間のアルカリ金属イオンを水素イオンに置き換えた水素型物質を一旦合成し、次にかさ高いアミンもしくはアンモニウムイオンを反応させるのが一般的である。反応条件を適切に制御することで、これらの化合物はホスト層1枚1枚にまでばらばらになってナノシートとして液媒体中に分散してコロイド溶液を形成する。またスメクタイト族の粘土鉱物は水中で撹拌するだけで単層剥離し、アルミノシリケートナノシートが得られる。
【0015】
これらのナノシートの厚みは母結晶のホスト層のそれに相当し、酸化チタンナノシートの場合で0.75nm、酸化マンガンナノシートは0.5nm、酸化ニオブナノシートは1.4nm、アルミノシリケートナノシートは1nmである。一方横サイズは、剥離前の層状結晶の大きさに基本的に依存する。一般的には200nmから100μmであるが、ミクロンサイズのポリマー球への吸着、積層を行う目的のためには1μm以下のナノシートの使用が適当である。
【0016】
一方コアとなるポリマー球については材質、サイズに大きな制限はない。代表的なポリマーとしてはポリスチレン(以下PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、サイズは0.2μm〜10μmが一般的である。
【0017】
本発明では交互吸着法を活用してポリマー球上にナノシートを累積してシェルを構築する。交互吸着法とは自己組織化法の一つで、反対電荷をもつ2種類の物質をそれぞれその静電相互作用を介して固体表面にモノレヤーで吸着させる操作を反復することで多層超薄膜を形成する技術である。シェルの素材として用いる上記のナノシートはいずれも負電荷を帯びているので、積層のもう一つの成分には正電荷を持つ物質が必要となる。積層の制御性の観点から、水溶性のカチオン性ポリマーであるポリエチレンイミン(以下PEI)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)等が適当である。
【0018】
コアとなるポリマー球上へのシェル累積は図1に示すように、▲1▼カチオン性ポリマーのモノレヤー吸着、▲2▼ナノシートの吸着の操作を1サイクルとして必要回数繰り返して行う。▲1▼はポリマー球をカチオン性ポリマー溶液中で超音波照射もしくはスターラーにより撹拌することで行う。
いったんカチオン性ポリマーがコア表面を被覆すると、過剰に溶液中に存在するカチオン性ポリマーは静電反発でそれ以上吸着できずモノレヤー被覆が達成される。しかしこのモノレヤー被覆を確実に進行させるためには、吸着時間、カチオン性ポリマーの濃度を適切に選択する必要がある。
吸着時間が短すぎると、また濃度が低すぎるとポリマー球表面をカチオン性ポリマーが完全に被覆できなくなる。一方逆の場合には、カチオン性ポリマーがモノレヤー以上に吸着してしまう。最適な吸着条件はカチオン性ポリマーの種類に依存するが、PEI、PDDAの場合、濃度は1〜30gdm−3、吸着時間は5〜30分間でモノレヤー吸着が達成できる。
【0019】
このカチオン性ポリマーで被覆されたポリマー球を遠心分離などにより分離して洗浄した後、▲2▼の操作としてナノシートが分散したコロイド溶液中に超音波照射もしくはスターラーにより分散させて反応を行う。ナノシートは負電荷を帯びているため、カチオン性ポリマーで覆われたポリマー球表面に吸着する。このとき上記の自己組織化原理が働きナノシートがモノレヤーで吸着することとなる。ただし吸着時間、濃度、pHなどの条件の適切な設定は必要である。典型的には吸着時間10〜30分間、濃度 0.01〜 1 gdm−3、pHは7以上が適当である。ナノシートがコア表面を被覆すると表面電荷は負となるため、▲1▼のカチオン性ポリマーの吸着が可能となり、これを順番に繰り返すことで積層を続行することができる。ナノシートの厚みは上記のようにその種類に依存するが0.5〜1.5nm、カチオン性ポリマーのモノレヤー層の厚みは一般的に0.3〜1nmであるので、これらの値を単位としたシェルの厚み制御が可能となる。
【0020】
典型例としてPS球(サイズ:1.3μm)、PMMA球(0.4μm)に酸化チタンナノシートとPEIを交互積層した場合、図2に示すようなX線回折(XRD)データが得られる。積層前においてはポリマーに特有な無定形パターンが2θ=10〜30°の範囲に見られるが、積層処理後はそのピーク強度が低減し、表面が無機ナノシートで被覆されたことがわかる。この変化に加えて、面間距離1.6nmを示すブラッグピークが2θ=5.4°付近に出現する。これはシェルに相当するナノシート/PEI多層膜からのシグナルでナノシートとPEIが1.6nmで繰り返していることを示している。酸化チタンナノシートの厚みは0.75nm、PEIのモノレヤー層の厚みは約0.8nmであることが知られており、その和は観測された1.6nmの繰り返し周期と一致する。すなわちこのようなnmレンジでのシェルの厚み制御が可能であることを示している。
【0021】
一方2θ=48°、62°付近の回折線はナノシート内の2次元原子配列に由来するものであり、ナノシートの構造がシェル形成後もそのまま保持されていることを示している。
コア・シェル構造体を走査型電子顕微鏡(SEM)で形態観察すると、もとのポリマー球の形状をそのまま保持していることがわかる〔図3(b)〕。
これはナノシートが柔軟性に富み、鋳型のポリマー球にぴったり貼り付いたことを示しており、ナノシートのコーティング材料としての有効性を示している。ナノ粒子などを吸着させた試料では凹凸が表面に生じ、本発明との大きな違いになっている。
【0022】
次に、前示処理によって形成されたコア・シェル構造体からコアを除去して酸化物の中空シェルを誘導することができる。コアの除去には加熱処理、紫外線照射を用いることができる。加熱の場合代表的には500℃で1時間保持することにより、コアを完全に熱分解して除去することができる。コアの除去後もシェルは基本的に球状を保ち(一部に急激な反応のための破裂、破損が認められる)、中空粒子が得られる〔図3(c)〕。得られる粒子サイズは鋳型として用いたポリマー球の大きさにほぼ一致しており、コア除去にともなう熱処理で収縮はほとんどないことがわかる。
【0023】
これはナノ粒子などをシェル構築物質に用いた場合に10〜30%の収縮が見られるのと対照的であり、ナノシートをシェル構築に用いる利点の一つとしてあげることができる。すなわち本発明の製造方法は寸法精度が要求されるシェルの場合に適している。透過型電子顕微鏡(TEM)観察も中空シェルの形成を支持し、外縁部に高いコントラストを持つ球形物体が観察される〔図3(d)〕。
高いコントラストを与えるシェルの厚みは積層サイクル数×ナノシートの厚みにほぼ一致し、厚みをナノメーターレンジでコントロールできることを示している〔図3(e)〕。
【0024】
また加熱に伴い、ナノシートの2次元構造は失われ熱力学的に安定な酸化物相に転移する。たとえば酸化チタンナノシート由来のシェルはアナターゼTiO2に〔図3(f)、図4〕、酸化マンガンナノシートではMn2O3となる。
紫外線照射によるコアの除去の場合、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀ランプなどが適当である。コアの除去は加熱処理の場合と比べて穏やかに進行し、中空シェルの破損の割合が少ない。特に厚みの薄い中空シェルの合成に有効である。例えば酸化チタンナノシート/PEIを5サイクル積層したPMMA−シェル構造体からのコアの除去により極めて薄い約5nmの厚みを持つ中空シェルが得られる〔図5(a)、(b)〕。また室温でコアの除去が行えるため、ナノシート構造は保持され〔図5(c)〕ナノシートそのものからなる中空シェルを合成できることも特徴である。
【0025】
以上説明した合成手順により製造されるコア・シェル構造体および中空シェルは幅広い応用展開が期待できる。コア・シェル多孔体の場合はポリマーの保護被覆効果のほかに、用いるシェルの材質によりポリマー球に様々な特性を付加することができる。たとえば酸化チタンナノシートを用いた場合はその高い屈折率から光学的応用が、また酸化マンガンナノシートでは電池材料その他への応用が可能になると期待される。中空シェル材料はまずそのカプセル状の形態を活かして、医薬品などの徐放効果が期待できる。またnmレンジの極めて薄いシェルからなっていることから、非常に軽い粉体が得られる。この特徴を活かして風洞実験や水流実験の流体の動きを計測するためのトレーサーとしての利用が考えられる。
【0026】
また中空シェルは押し付けてのばすと、薄片状に変化して様々な物体の表面に薄く、均一に延ばすことができる。このような特性を利用すれば化粧料、塗料、複合材料用フィラー等としての利用も有望である。その他触媒、吸着剤など多様な応用が期待できる。
【0027】
【発明の実施態様】
次に本発明を、図面、実施例に基づいて具体的に説明する。但し、これらの実施例等は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、本発明をこれによって限定する趣旨ではない。
【0028】
まず、図1は、本発明のコア・シェル構造体および中空シェルの合成プロセスを示す概念図である。図2は、本発明の実施例である酸化チタンナノシートを用いたコア・シェル構造体のXRDパターンを示す図である。図2において、(a)はPS球、(b)はPS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したもの、(c)はPS球上に20層累積、(d)はPMMA球、(e)はPMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(5層)累積したもの、(f)はPMMA球上に10層累積したものである。
【0029】
図3は、本発明のコア・シェル構造体および中空シェルの形態をSEM、TEMにより観察した像を示す図である。同図中、(a)は、PS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積(SEM像)、(b)は、PS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(20層)累積(SEM像)、(c)は、bの試料を500℃、1時間加熱して合成した酸化チタン中空シェル(SEM像)、(d)は、bの試料を500℃で1時間加熱して合成した酸化チタン中空シェル(TEM像)、(e)は、dのシェル部分の拡大像、(f)は、中空シェルの電子回折パターンであり、リング1〜6の反射指数と面間隔は以下の通り、アナターゼに対応している。すなわち、▲1▼101(0.353nm)、▲2▼004(0.236nm)、▲3▼200(0.189nm)、▲4▼105+211(0.167nm)、▲5▼204 (0.151nm)、▲6▼116(0.134nm)。
【0030】
図4は、本発明実施例の酸化チタン中空シェルのXRDデータを示す図であり、
PS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積後、500℃で1時間加熱して合成したもので、反射指数はアナターゼに対応している。
図5は、コアポリマーの分解を紫外線照射により行って得られた酸化チタン中空シェルであり、同図中、(a)は、PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(5層)累積後、酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射したであり、(b)は、シェル部分の拡大像、(c)は、中空シェルの電子回折パターンであり、リング1〜5の2次元hl指数と面間隔は以下の通り、酸化チタンナノシートの2次元周期配列0.38nm×0.30nmに対応している。▲1▼10(0.377nm)、▲2▼11(0.235nm),▲3▼20(0.189nm)、▲4▼02(0.151nm)、▲5▼22(0.118nm)
【0031】
図6は、紫外線照射前後のXRDパターンを示す。図中、(a)は、PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したコア・シェル構造体、(b)は、酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射した試料である。
図7は、酸化マンガンナノシートおよび酸化マンガンナノシート/酸化チタンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体の合成過程のXRDパターンであり、図中、(a)は、PMMA球、(b)は、PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(5層)累積したもの、(c)は、PMMA球上に10層累積、(d)は、PMMA球上に20層累積、(e)は、PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI/酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したものである。
最後に、図8は、酸化マンガンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体および中空シェルの形態を観察したSEM像であり、図中、(a)は、PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(20層)累積したSEM像、(b)は、(a)の試料を500℃で1時間加熱して合成した酸化マンガン中空シェルのSEM像である。以下、実施例を記載する。
【0032】
実施例1;
炭酸セシウム(Cs2CO3)と二酸化チタン(TiO2)を1:5.5のモル比に混合し、これを800℃で30分間加熱して炭酸塩を分解した。この焼成物を再び摩砕して800℃で40時間焼成することにより斜方晶のチタン酸セシウム(Cs0.7Ti1.825O4)を得た。次に1規定の塩酸溶液100cm3に対して上記の手順で得られたチタン酸セシウム(Cs0.7Ti1.825O4)の粉末を1gの割合で反応させ、組成式H0.7Ti1.825O4・nH2Oで示される層状チタン酸を合成した。このチタン酸0.5gを水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液100cm3(濃度:0.1moldm−3)に加えて振盪し、チタン酸を剥離させ、酸化チタンナノシートが分散したコロイド溶液を得た。
0.6gのポリスチレン(PS)球(粒径:1.3μm)を0.02gのポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液100cm3中に投入し、10分間超音波洗浄バス中で処理した。その後さらに15分間撹拌を行い、PEIを完全にPS球表面に吸着させ、正電荷を導入した。次にPS球を遠心分離、水洗を2回繰り返して過剰のPEIを除去した。
このようにして得たPEIで表面コートしたPS球サンプルを150cm3の水に加え、超音波処理により分散させた後、上記の酸化チタンナノシートコロイド溶液を8mgcm−3の濃度に希釈した溶液5cm3を加え、スターラーで撹拌しながら20分間反応させた。その後遠心分離、水洗によりサンプルを回収した。 以上のPEI吸着処理、ナノシート吸着処理を1サイクルとして、必要回数分だけ繰り返した。得られたサンプルのXRDパターンにはナノシート/PEIの多層構造を持つシェルの形成を示す回折線が出現した〔図2(a)〜(c)〕。 また、SEM観察からもPS球の形状をほぼ忠実に保持する形でコア・シェル構造体が得られたことが確認された〔図3(a)、(b)〕。
【0033】
実施例2;
0.6gのポリメチルメタクリレート(PMMA)球(粒径:0.4μm)を実施例1と同様な手順でPEIで処理した。次にこれを150cm3の水に加え、超音波処理により分散させた後、8mgcm−3の濃度の酸化チタンナノシートコロイド溶液20cm3を加え、スターラーで撹拌しながら20分間反応させた。 その後遠心分離、水洗によりサンプルを回収した。以上のPEI吸着処理、ナノシート吸着処理を1サイクルとして、必要回数分だけ繰り返し、PEI/ナノシート多層膜がシェルとなるコア・シェル構造体の合成を行った。合成物のXRD、SEM測定からPSの場合と同様なデータが得られ、コア・シェル構造体の生成が確認された〔図2(d)〜(f)〕。
【0034】
実施例3;
実施例1、2で得られたコア・シェル構造体を白金パンにとり、室温から1℃min−1で昇温し、500℃で1時間保持した後、放冷した。得られたサンプルのSEM像観察から、球状の形態はほぼ保たれていること、一部は穴が開いたり、破裂しており内部のコアは分解されて中空になっていることが確認できた〔図3(c)〕。TEM観察では外周部のコントラストが高い球状物体が確認され中空シェルの生成が確認できた〔図3(d)〕。
高いコントラストを示す外縁部の拡大像から積層を20サイクル繰り返したサンプルから得られたシェルの厚みは15〜20nmであった〔図3(e)〕。
ナノシート1枚の厚みは約0.75nmであり、その20枚分の厚みとよく一致した。またX線および電子回折パターンはシェルが高結晶性のアナターゼで形成されていることを示した〔図3(f)、図4〕。
【0035】
実施例4;
実施例1、2で合成したコア・シェル試料をシャーレにとり薄く拡げた後、酸素雰囲気中でキセノンランプ光で照射した。照射強度は5mJcm−2であった。1週間照射後サンプルを回収し、その熱分析より残存ポリマー分を調べた結果、PS−シェルコンポジットでは約30%、PMMAの場合は80%近くが分解除去されていることが判明した。照射時間を2週間とするとほぼすべてが除去できた。XRDデータ(図6)からはPMMAからのハロパターンが大幅に低減し、コアの除去が裏付けられた。一方シェルの内部構造を示す回折線からはナノシート間に存在するPEIが光触媒分解されたため、面間隔が1.6nmから0.96nmに縮小したほかは、変化がなくナノシートの2次元構造がそのまま保持されていることがわかった。TEM像からはより直接的に中空シェルの生成が証明された。5サイクル積層サンプルの殻の厚みは5nm前後であることがわかり、1nm単位でシェルの厚みを制御できることが示された(図5)。
【0036】
実施例5;
炭酸カリウム(K2CO3)と酸化マンガン(Mn2O3)を0.45:1のモル比に混合し、これを酸素気流中800℃で40時間焼成することにより菱面体晶のマンガン酸カリウム(K0.45MnO2)を得た。次に1規定の塩酸溶液100cm3に対してマンガン酸カリウム(K0.45MnO2)の粉末を1gの割合で接触させ、室温で10日間反応させ組成式H0.13MnO2・0.7H2Oで示される層状マンガン酸を得た。このマンガン酸0.4gを水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液100cm3(濃度:0.13moldm−3)に加えシェーカーで200rpm程度の振盪を数日間行ない、層状マンガン酸化物を剥離させて酸化マンガンナノシートが分散したコロイド溶液を調製した。
得られた酸化マンガンナノシート溶液の濃度を8mgcm−3、pHを8に調整し、実施例1もしくは2と同様の手順でコア・シェル構造体を合成した。XRDデータからはポリマー球由来の散乱ピークが低減すること、さらにナノシート/PEIの周期構造に基づく回折線(1.2nm)が現れることからシェルの形成が確認された〔図7(a)〜(d)〕。さらにナノシートの2次元原子配列に由来するピークが2θ=37°、62°に現れナノシート構造がシェル形成後も保持されることが確認できた。また、SEM像〔図8(a)〕よりナノシートはポリマー球表面を忠実に被覆していることが分かった。さらにまた、酸化チタンナノシートと酸化マンガンナノシートをPEIでサンドイッチして吸着させるとPMMA球由来のハロパターン強度が低減、面間隔1.5nmの回折ピークの出現が見られ異種の酸化物ナノシートからなるシェルを構築可能なことも確認された。
【0037】
実施例6;
実施例5と同様の手順で合成したコア・シェル構造体を白金パンにとり、室温から1℃min−1で昇温し、500℃で1時間保持した後、放冷した。得られたサンプルのSEM像観察から、球状の形態はほぼ保たれていること、一部は穴が開いたり、破裂しており内部のコアは分解されて中空になっていることが確認できた〔図8(b)〕。またXRDパターンはシェルがMn2O3で形成されていることを示した。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、層状物質を単層分離して得たナノシートをポリマー球状に自己組織化することにより多重累積するものであり、シェルのサイズ及び厚みを極めて精密に制御でき、従前の同種材料に比し、その材料設計は、そのシェル材料とするナノシートが単層にまで分離したものを使用することにより、その生成するシェル構造体の粒子特性は、均一且つ精密な厚み設定が可能であり、平滑性、柔軟性に富み、鋳型の形状を忠実に再現して成る等、諸点において優れた特性を有して成るものを提供することが可能となり、その意義は、大である。シェル構造体は、近年注目されている形態材料の一つであり、電子材料、光学材料、複合材料、触媒、医薬等、各種分野において期待され、その動向に注目が集まっている。
本発明によって、材料特性の精度が、任意且つ極めて高精度に設定できるようになったことにより、各種分野の材料設計において、今後大いに寄与し、その技術進歩に役立つものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコア・シェル構造体および中空シェルの合成プロセスを概念的に説明する図。
【図2】本発明の実施例である酸化チタンナノシートを用いたコア・シェル構造体のXRDパターンを示す図。
【図3】本発明のコア・シェル構造体および中空シェルをSEM、TEMによって観察した図。
【図4】本発明の実施例である酸化チタン中空シェルのX線回折像。
【図5】紫外線照射により得られた本発明の実施例の酸化チタン中空シェルの観察説明図。
(a)PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(5層)累積後、酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射。
(b)シェル部分の拡大像。
(c)中空シェルの電子回折パターン。
【図6】本発明の実施例である酸化チタンナノシートを用いたコア・シェル構造体の紫外線照射前後のXRDパターンを示す図。
(a)PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したコア・シェル構造体。
(b)酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射した試料。
【図7】本発明の実施例である、酸化マンガンナノシートおよび酸化マンガンナノシート/酸化チタンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体の合成過程を観察したX線回折図。
(a) PMMA球X線回折図。
(b) PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(5層)累積X線回折図。
(c) PMMA球上に10層累積X線回折図。
(d) PMMA球上に20層累積X線回折図。
(e) PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI/酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(10層)累積X線回折図。
【図8】本発明の酸化マンガンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体および中空シェルを観察したSEM像。
(a) PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(20層)累積SEM像。
(b) 試料(a)を500℃で1時間加熱して合成した酸化マンガン中空シェルSEM像。
【産業上の利用分野】
本発明は、コア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法に関する。
さらに詳しくは、化粧料、塗料、複合材料用フィラー、触媒などとしての利用が期待される、またさらに、医薬品、化粧料、色素、インクなどの徐放用カプセルおよび流体計測システム用トレーサーなどとしても有望な、コア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリマー球をナノ薄膜でコーティングしたり、コーティング後ポリマーを除去して中空シェルを合成することは、電子材料、光学材料、複合材料、触媒、医薬品などとして幅広い応用が期待できることから昨今盛んな研究が開始されている。例えば、ポリマー球を鋳型としてその表面をナノ粒子などでコーティングしてコア・シェル構造体を合成することおよびコアを除去して中空シェル材料を誘導することが、報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。また、本発明者グループにおいても、ナノシートが分散したコロイド溶液を噴霧乾燥して直接中空粒子を得ることに成功し、これについて既に報告をしている(例えば、特許文献1、非特許文献2参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
F.Caruso,R.A.Caruso、H.Mohwald共著、“Science”,vol.282,p.1111、(1998年)。
【非特許文献2】
M.Iida,T.Sasaki、M.Watanabe共著、“Chem.Mater.”vol.10,p.3780、(1998年)。
【特許文献1】
PCT国際出願W099/11574。
【0004】
前記第1の合成方法においては、コーティング材料としてナノ粒子や重合を起こす前駆体分子などが用いられ、これによってミクロンサイズのポリマーコアに数十〜数百nmの厚みのコーティングが可能となり、コア・シェル構造体が合成されるとともに、その中空シェル化にも成功してきている。しかしながら量子サイズ効果などに関連したより高度な機能性を発現させるためには、さらに精細なレンジでの厚みコントロールすることが求められている。前記第1の方法ではシェルの厚みの制御可能なレンジが大きく、コアを加熱除去する際に、シェル成分の焼結が進むため中空粒子の大幅な収縮、前記第2の方法では粒子サイズおよびシェルの厚みのバラツキ、などの問題があった。
【0005】
【発明の課題】
本発明は、以上述べた従来技術、先行技術を念頭に置いてなされたもので、均一な球形粒子サイズ、シェルの厚みを有するコア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする均一球形粒子サイズ、均一シェル厚みを有する中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法を提供しようというものである。
【0006】
そのため、鋭意研究した結果、層状物質を単層剥離して得たナノシートをポリマー球上に自己組織化累積することにより、シェルのサイズおよび厚みを極めて精密に制御することができることを見いだした。すなわち、本発明者らは以前より様々な層状物質を化学的に剥離することで、ホスト層1枚に相当するナノシートを合成してきた。このナノシートは厚みが約1nmと極めて薄いうえに、横サイズが数百nm〜数十μmと非常に大きな2次元異方性を有していること、極めて柔軟で固体表面に吸着させると下地の形状をそのまま保持した形で被覆する性質があることから、これをナノレンジの厚みのコーティング材料として利用し、ポリマー球に適用することを発想した。その結果、任意の径のポリマー球を鋳型材料として選定し、厚みを制御して被覆することによって、所望の粒子径と平滑でnmレンジで制御された厚みの被覆層を有してなるコア・シェル構造体を得ることに成功した。また、その得られたコア・シェル構造体から、コアとなるポリマー球に対して、ポリマーのみを選択的に分解・除去する手段を選定し、適用することによって、被覆層すなわちポリマー球の外側に被覆されたシェル層を破壊することなく、ポリマー層のみを選択的に分解・除去し、従来では達成できなかった10nm以下の厚みを持つ中空シェル構造体を得ることに成功したものである。本発明は、これらの一連の知見、成功に基づいてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、層状物質を単層剥離して得たナノシートをポリマー球上に自己組織化累積することが出来、この作用によって、シェルのサイズおよび厚みが極めて精密に制御されて成るコア・シェル構造体あるいはこれを前駆体とする中空シェル構造体とこれらの製造方法を提供することを可能としたもので、以下(1)〜(20)に記載する手段を講じて成るものである。
【0008】
(1) 層状酸化物を層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(以下ナノシートと言う)とカチオン性ポリマーとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球面体上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積させて均一な球形、膜厚のコア・シェル構造体としたことを特徴とする、コア・シェル構造体。
(2) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシート、より成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(1)記載のコア・シェル構造体。
【0009】
(3) 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積させてコア・シェル構造体とし、これをポリマー除去手段により処理することによりポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを除去して、酸化物ナノシート累積多層薄膜によって構成されて成る均一な球形、膜厚の中空酸化物シェル構造体としたことを特徴とする、中空酸化物シェル構造体。
(4) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(3)記載の中空酸化物シェル構造体。
(5) 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを熱分解させる熱処理手段であることを特徴とする、前記(3)又は(4)記載の中空酸化物シェル構造体。
(6) 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを分解させる紫外線照射手段であることを特徴とする、前記(3)又は(4)記載の中空酸化物シェル構造体。(7) 前記酸化物ナノシートとして酸化チタンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がルチルないしはアナターゼ構造の均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(3)ないし(6)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
(8) 前記酸化物ナノシートとして酸化マンガンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体が、酸化マンガンの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(3)ないし(6)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
(9) 前記酸化物ナノシートとしてアルミノシリケートナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がアルミノシリケートの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(3)ないし(6)の何れか1項に記載の中空酸化物構造体。
【0010】
(10) 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積して均一な球形、膜厚のコア・シェル構造体を生成することを特徴とする、コア・シェル構造体の製造方法。
(11) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシートより成る群からなる1種又は2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(10)記載のコア・シェル構造体の製造方法。
【0011】
(12) 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、これをポリマー除去手段により処理することによりポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを除去して、酸化物ナノシート累積多層薄膜によって構成されて成る均一な球形、膜厚の中空酸化物シェル構造体を生成することを特徴とする、中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(13) 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシート、より成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(12)記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(14) 前記ポリマー除去手段が、ポリマーを熱分解させる熱処理手段であることを特徴とする、前記(12)記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(15) 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを分解させる紫外線照射手段であることを特徴とする、前記(12)記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(16) 前記酸化物ナノシートとして酸化チタンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がルチルないしはアナターゼ構造の均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(12)ないし(15)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(17) 前記酸化物ナノシートとして酸化マンガンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体が酸化マンガンの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(12)ないし(15)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(18) 前記酸化物ナノシートとしてアルミノシリケートナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がアルミノシリケートの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、前記(12)ないし(15)の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
【0012】
(19) シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(10)又は(11)項記載のコア・シェル構造体の製造方法。
(20) シェルの厚みを1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(12)ないし(18)の何れか1項に記載の中空酸化物シェルの製造方法。
【0013】
ここに、コーティング材料となるナノシートは、層状化合物を単層剥離することで簡単に入手することができる。出発層状物質は酸化チタンナノシートの場合は、四チタン酸塩K2Ti4O9、五チタン酸塩Cs2Ti5O11、レピドクロサイト型チタン酸塩Cs0.7Ti1.825O4、K0.8Ti1.73Li0.27O4など、酸化マンガンナノシートの場合はP3型マンガン酸塩K0.45MnO2 、バーネサイト型マンガン酸塩NaxMnO2・nH2Oなど、酸化ニオブナノシートの場合は層状ペロブスカイトKCa2Nb3O10などを用いることができる。
【0014】
これらの化合物の剥離ナノシート化についてはいろいろな手法が報告されているが、酸処理して層間のアルカリ金属イオンを水素イオンに置き換えた水素型物質を一旦合成し、次にかさ高いアミンもしくはアンモニウムイオンを反応させるのが一般的である。反応条件を適切に制御することで、これらの化合物はホスト層1枚1枚にまでばらばらになってナノシートとして液媒体中に分散してコロイド溶液を形成する。またスメクタイト族の粘土鉱物は水中で撹拌するだけで単層剥離し、アルミノシリケートナノシートが得られる。
【0015】
これらのナノシートの厚みは母結晶のホスト層のそれに相当し、酸化チタンナノシートの場合で0.75nm、酸化マンガンナノシートは0.5nm、酸化ニオブナノシートは1.4nm、アルミノシリケートナノシートは1nmである。一方横サイズは、剥離前の層状結晶の大きさに基本的に依存する。一般的には200nmから100μmであるが、ミクロンサイズのポリマー球への吸着、積層を行う目的のためには1μm以下のナノシートの使用が適当である。
【0016】
一方コアとなるポリマー球については材質、サイズに大きな制限はない。代表的なポリマーとしてはポリスチレン(以下PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、サイズは0.2μm〜10μmが一般的である。
【0017】
本発明では交互吸着法を活用してポリマー球上にナノシートを累積してシェルを構築する。交互吸着法とは自己組織化法の一つで、反対電荷をもつ2種類の物質をそれぞれその静電相互作用を介して固体表面にモノレヤーで吸着させる操作を反復することで多層超薄膜を形成する技術である。シェルの素材として用いる上記のナノシートはいずれも負電荷を帯びているので、積層のもう一つの成分には正電荷を持つ物質が必要となる。積層の制御性の観点から、水溶性のカチオン性ポリマーであるポリエチレンイミン(以下PEI)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)等が適当である。
【0018】
コアとなるポリマー球上へのシェル累積は図1に示すように、▲1▼カチオン性ポリマーのモノレヤー吸着、▲2▼ナノシートの吸着の操作を1サイクルとして必要回数繰り返して行う。▲1▼はポリマー球をカチオン性ポリマー溶液中で超音波照射もしくはスターラーにより撹拌することで行う。
いったんカチオン性ポリマーがコア表面を被覆すると、過剰に溶液中に存在するカチオン性ポリマーは静電反発でそれ以上吸着できずモノレヤー被覆が達成される。しかしこのモノレヤー被覆を確実に進行させるためには、吸着時間、カチオン性ポリマーの濃度を適切に選択する必要がある。
吸着時間が短すぎると、また濃度が低すぎるとポリマー球表面をカチオン性ポリマーが完全に被覆できなくなる。一方逆の場合には、カチオン性ポリマーがモノレヤー以上に吸着してしまう。最適な吸着条件はカチオン性ポリマーの種類に依存するが、PEI、PDDAの場合、濃度は1〜30gdm−3、吸着時間は5〜30分間でモノレヤー吸着が達成できる。
【0019】
このカチオン性ポリマーで被覆されたポリマー球を遠心分離などにより分離して洗浄した後、▲2▼の操作としてナノシートが分散したコロイド溶液中に超音波照射もしくはスターラーにより分散させて反応を行う。ナノシートは負電荷を帯びているため、カチオン性ポリマーで覆われたポリマー球表面に吸着する。このとき上記の自己組織化原理が働きナノシートがモノレヤーで吸着することとなる。ただし吸着時間、濃度、pHなどの条件の適切な設定は必要である。典型的には吸着時間10〜30分間、濃度 0.01〜 1 gdm−3、pHは7以上が適当である。ナノシートがコア表面を被覆すると表面電荷は負となるため、▲1▼のカチオン性ポリマーの吸着が可能となり、これを順番に繰り返すことで積層を続行することができる。ナノシートの厚みは上記のようにその種類に依存するが0.5〜1.5nm、カチオン性ポリマーのモノレヤー層の厚みは一般的に0.3〜1nmであるので、これらの値を単位としたシェルの厚み制御が可能となる。
【0020】
典型例としてPS球(サイズ:1.3μm)、PMMA球(0.4μm)に酸化チタンナノシートとPEIを交互積層した場合、図2に示すようなX線回折(XRD)データが得られる。積層前においてはポリマーに特有な無定形パターンが2θ=10〜30°の範囲に見られるが、積層処理後はそのピーク強度が低減し、表面が無機ナノシートで被覆されたことがわかる。この変化に加えて、面間距離1.6nmを示すブラッグピークが2θ=5.4°付近に出現する。これはシェルに相当するナノシート/PEI多層膜からのシグナルでナノシートとPEIが1.6nmで繰り返していることを示している。酸化チタンナノシートの厚みは0.75nm、PEIのモノレヤー層の厚みは約0.8nmであることが知られており、その和は観測された1.6nmの繰り返し周期と一致する。すなわちこのようなnmレンジでのシェルの厚み制御が可能であることを示している。
【0021】
一方2θ=48°、62°付近の回折線はナノシート内の2次元原子配列に由来するものであり、ナノシートの構造がシェル形成後もそのまま保持されていることを示している。
コア・シェル構造体を走査型電子顕微鏡(SEM)で形態観察すると、もとのポリマー球の形状をそのまま保持していることがわかる〔図3(b)〕。
これはナノシートが柔軟性に富み、鋳型のポリマー球にぴったり貼り付いたことを示しており、ナノシートのコーティング材料としての有効性を示している。ナノ粒子などを吸着させた試料では凹凸が表面に生じ、本発明との大きな違いになっている。
【0022】
次に、前示処理によって形成されたコア・シェル構造体からコアを除去して酸化物の中空シェルを誘導することができる。コアの除去には加熱処理、紫外線照射を用いることができる。加熱の場合代表的には500℃で1時間保持することにより、コアを完全に熱分解して除去することができる。コアの除去後もシェルは基本的に球状を保ち(一部に急激な反応のための破裂、破損が認められる)、中空粒子が得られる〔図3(c)〕。得られる粒子サイズは鋳型として用いたポリマー球の大きさにほぼ一致しており、コア除去にともなう熱処理で収縮はほとんどないことがわかる。
【0023】
これはナノ粒子などをシェル構築物質に用いた場合に10〜30%の収縮が見られるのと対照的であり、ナノシートをシェル構築に用いる利点の一つとしてあげることができる。すなわち本発明の製造方法は寸法精度が要求されるシェルの場合に適している。透過型電子顕微鏡(TEM)観察も中空シェルの形成を支持し、外縁部に高いコントラストを持つ球形物体が観察される〔図3(d)〕。
高いコントラストを与えるシェルの厚みは積層サイクル数×ナノシートの厚みにほぼ一致し、厚みをナノメーターレンジでコントロールできることを示している〔図3(e)〕。
【0024】
また加熱に伴い、ナノシートの2次元構造は失われ熱力学的に安定な酸化物相に転移する。たとえば酸化チタンナノシート由来のシェルはアナターゼTiO2に〔図3(f)、図4〕、酸化マンガンナノシートではMn2O3となる。
紫外線照射によるコアの除去の場合、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀ランプなどが適当である。コアの除去は加熱処理の場合と比べて穏やかに進行し、中空シェルの破損の割合が少ない。特に厚みの薄い中空シェルの合成に有効である。例えば酸化チタンナノシート/PEIを5サイクル積層したPMMA−シェル構造体からのコアの除去により極めて薄い約5nmの厚みを持つ中空シェルが得られる〔図5(a)、(b)〕。また室温でコアの除去が行えるため、ナノシート構造は保持され〔図5(c)〕ナノシートそのものからなる中空シェルを合成できることも特徴である。
【0025】
以上説明した合成手順により製造されるコア・シェル構造体および中空シェルは幅広い応用展開が期待できる。コア・シェル多孔体の場合はポリマーの保護被覆効果のほかに、用いるシェルの材質によりポリマー球に様々な特性を付加することができる。たとえば酸化チタンナノシートを用いた場合はその高い屈折率から光学的応用が、また酸化マンガンナノシートでは電池材料その他への応用が可能になると期待される。中空シェル材料はまずそのカプセル状の形態を活かして、医薬品などの徐放効果が期待できる。またnmレンジの極めて薄いシェルからなっていることから、非常に軽い粉体が得られる。この特徴を活かして風洞実験や水流実験の流体の動きを計測するためのトレーサーとしての利用が考えられる。
【0026】
また中空シェルは押し付けてのばすと、薄片状に変化して様々な物体の表面に薄く、均一に延ばすことができる。このような特性を利用すれば化粧料、塗料、複合材料用フィラー等としての利用も有望である。その他触媒、吸着剤など多様な応用が期待できる。
【0027】
【発明の実施態様】
次に本発明を、図面、実施例に基づいて具体的に説明する。但し、これらの実施例等は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、本発明をこれによって限定する趣旨ではない。
【0028】
まず、図1は、本発明のコア・シェル構造体および中空シェルの合成プロセスを示す概念図である。図2は、本発明の実施例である酸化チタンナノシートを用いたコア・シェル構造体のXRDパターンを示す図である。図2において、(a)はPS球、(b)はPS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したもの、(c)はPS球上に20層累積、(d)はPMMA球、(e)はPMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(5層)累積したもの、(f)はPMMA球上に10層累積したものである。
【0029】
図3は、本発明のコア・シェル構造体および中空シェルの形態をSEM、TEMにより観察した像を示す図である。同図中、(a)は、PS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積(SEM像)、(b)は、PS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(20層)累積(SEM像)、(c)は、bの試料を500℃、1時間加熱して合成した酸化チタン中空シェル(SEM像)、(d)は、bの試料を500℃で1時間加熱して合成した酸化チタン中空シェル(TEM像)、(e)は、dのシェル部分の拡大像、(f)は、中空シェルの電子回折パターンであり、リング1〜6の反射指数と面間隔は以下の通り、アナターゼに対応している。すなわち、▲1▼101(0.353nm)、▲2▼004(0.236nm)、▲3▼200(0.189nm)、▲4▼105+211(0.167nm)、▲5▼204 (0.151nm)、▲6▼116(0.134nm)。
【0030】
図4は、本発明実施例の酸化チタン中空シェルのXRDデータを示す図であり、
PS球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積後、500℃で1時間加熱して合成したもので、反射指数はアナターゼに対応している。
図5は、コアポリマーの分解を紫外線照射により行って得られた酸化チタン中空シェルであり、同図中、(a)は、PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(5層)累積後、酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射したであり、(b)は、シェル部分の拡大像、(c)は、中空シェルの電子回折パターンであり、リング1〜5の2次元hl指数と面間隔は以下の通り、酸化チタンナノシートの2次元周期配列0.38nm×0.30nmに対応している。▲1▼10(0.377nm)、▲2▼11(0.235nm),▲3▼20(0.189nm)、▲4▼02(0.151nm)、▲5▼22(0.118nm)
【0031】
図6は、紫外線照射前後のXRDパターンを示す。図中、(a)は、PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したコア・シェル構造体、(b)は、酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射した試料である。
図7は、酸化マンガンナノシートおよび酸化マンガンナノシート/酸化チタンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体の合成過程のXRDパターンであり、図中、(a)は、PMMA球、(b)は、PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(5層)累積したもの、(c)は、PMMA球上に10層累積、(d)は、PMMA球上に20層累積、(e)は、PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI/酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したものである。
最後に、図8は、酸化マンガンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体および中空シェルの形態を観察したSEM像であり、図中、(a)は、PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(20層)累積したSEM像、(b)は、(a)の試料を500℃で1時間加熱して合成した酸化マンガン中空シェルのSEM像である。以下、実施例を記載する。
【0032】
実施例1;
炭酸セシウム(Cs2CO3)と二酸化チタン(TiO2)を1:5.5のモル比に混合し、これを800℃で30分間加熱して炭酸塩を分解した。この焼成物を再び摩砕して800℃で40時間焼成することにより斜方晶のチタン酸セシウム(Cs0.7Ti1.825O4)を得た。次に1規定の塩酸溶液100cm3に対して上記の手順で得られたチタン酸セシウム(Cs0.7Ti1.825O4)の粉末を1gの割合で反応させ、組成式H0.7Ti1.825O4・nH2Oで示される層状チタン酸を合成した。このチタン酸0.5gを水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液100cm3(濃度:0.1moldm−3)に加えて振盪し、チタン酸を剥離させ、酸化チタンナノシートが分散したコロイド溶液を得た。
0.6gのポリスチレン(PS)球(粒径:1.3μm)を0.02gのポリエチレンイミン(PEI)を含む溶液100cm3中に投入し、10分間超音波洗浄バス中で処理した。その後さらに15分間撹拌を行い、PEIを完全にPS球表面に吸着させ、正電荷を導入した。次にPS球を遠心分離、水洗を2回繰り返して過剰のPEIを除去した。
このようにして得たPEIで表面コートしたPS球サンプルを150cm3の水に加え、超音波処理により分散させた後、上記の酸化チタンナノシートコロイド溶液を8mgcm−3の濃度に希釈した溶液5cm3を加え、スターラーで撹拌しながら20分間反応させた。その後遠心分離、水洗によりサンプルを回収した。 以上のPEI吸着処理、ナノシート吸着処理を1サイクルとして、必要回数分だけ繰り返した。得られたサンプルのXRDパターンにはナノシート/PEIの多層構造を持つシェルの形成を示す回折線が出現した〔図2(a)〜(c)〕。 また、SEM観察からもPS球の形状をほぼ忠実に保持する形でコア・シェル構造体が得られたことが確認された〔図3(a)、(b)〕。
【0033】
実施例2;
0.6gのポリメチルメタクリレート(PMMA)球(粒径:0.4μm)を実施例1と同様な手順でPEIで処理した。次にこれを150cm3の水に加え、超音波処理により分散させた後、8mgcm−3の濃度の酸化チタンナノシートコロイド溶液20cm3を加え、スターラーで撹拌しながら20分間反応させた。 その後遠心分離、水洗によりサンプルを回収した。以上のPEI吸着処理、ナノシート吸着処理を1サイクルとして、必要回数分だけ繰り返し、PEI/ナノシート多層膜がシェルとなるコア・シェル構造体の合成を行った。合成物のXRD、SEM測定からPSの場合と同様なデータが得られ、コア・シェル構造体の生成が確認された〔図2(d)〜(f)〕。
【0034】
実施例3;
実施例1、2で得られたコア・シェル構造体を白金パンにとり、室温から1℃min−1で昇温し、500℃で1時間保持した後、放冷した。得られたサンプルのSEM像観察から、球状の形態はほぼ保たれていること、一部は穴が開いたり、破裂しており内部のコアは分解されて中空になっていることが確認できた〔図3(c)〕。TEM観察では外周部のコントラストが高い球状物体が確認され中空シェルの生成が確認できた〔図3(d)〕。
高いコントラストを示す外縁部の拡大像から積層を20サイクル繰り返したサンプルから得られたシェルの厚みは15〜20nmであった〔図3(e)〕。
ナノシート1枚の厚みは約0.75nmであり、その20枚分の厚みとよく一致した。またX線および電子回折パターンはシェルが高結晶性のアナターゼで形成されていることを示した〔図3(f)、図4〕。
【0035】
実施例4;
実施例1、2で合成したコア・シェル試料をシャーレにとり薄く拡げた後、酸素雰囲気中でキセノンランプ光で照射した。照射強度は5mJcm−2であった。1週間照射後サンプルを回収し、その熱分析より残存ポリマー分を調べた結果、PS−シェルコンポジットでは約30%、PMMAの場合は80%近くが分解除去されていることが判明した。照射時間を2週間とするとほぼすべてが除去できた。XRDデータ(図6)からはPMMAからのハロパターンが大幅に低減し、コアの除去が裏付けられた。一方シェルの内部構造を示す回折線からはナノシート間に存在するPEIが光触媒分解されたため、面間隔が1.6nmから0.96nmに縮小したほかは、変化がなくナノシートの2次元構造がそのまま保持されていることがわかった。TEM像からはより直接的に中空シェルの生成が証明された。5サイクル積層サンプルの殻の厚みは5nm前後であることがわかり、1nm単位でシェルの厚みを制御できることが示された(図5)。
【0036】
実施例5;
炭酸カリウム(K2CO3)と酸化マンガン(Mn2O3)を0.45:1のモル比に混合し、これを酸素気流中800℃で40時間焼成することにより菱面体晶のマンガン酸カリウム(K0.45MnO2)を得た。次に1規定の塩酸溶液100cm3に対してマンガン酸カリウム(K0.45MnO2)の粉末を1gの割合で接触させ、室温で10日間反応させ組成式H0.13MnO2・0.7H2Oで示される層状マンガン酸を得た。このマンガン酸0.4gを水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液100cm3(濃度:0.13moldm−3)に加えシェーカーで200rpm程度の振盪を数日間行ない、層状マンガン酸化物を剥離させて酸化マンガンナノシートが分散したコロイド溶液を調製した。
得られた酸化マンガンナノシート溶液の濃度を8mgcm−3、pHを8に調整し、実施例1もしくは2と同様の手順でコア・シェル構造体を合成した。XRDデータからはポリマー球由来の散乱ピークが低減すること、さらにナノシート/PEIの周期構造に基づく回折線(1.2nm)が現れることからシェルの形成が確認された〔図7(a)〜(d)〕。さらにナノシートの2次元原子配列に由来するピークが2θ=37°、62°に現れナノシート構造がシェル形成後も保持されることが確認できた。また、SEM像〔図8(a)〕よりナノシートはポリマー球表面を忠実に被覆していることが分かった。さらにまた、酸化チタンナノシートと酸化マンガンナノシートをPEIでサンドイッチして吸着させるとPMMA球由来のハロパターン強度が低減、面間隔1.5nmの回折ピークの出現が見られ異種の酸化物ナノシートからなるシェルを構築可能なことも確認された。
【0037】
実施例6;
実施例5と同様の手順で合成したコア・シェル構造体を白金パンにとり、室温から1℃min−1で昇温し、500℃で1時間保持した後、放冷した。得られたサンプルのSEM像観察から、球状の形態はほぼ保たれていること、一部は穴が開いたり、破裂しており内部のコアは分解されて中空になっていることが確認できた〔図8(b)〕。またXRDパターンはシェルがMn2O3で形成されていることを示した。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、層状物質を単層分離して得たナノシートをポリマー球状に自己組織化することにより多重累積するものであり、シェルのサイズ及び厚みを極めて精密に制御でき、従前の同種材料に比し、その材料設計は、そのシェル材料とするナノシートが単層にまで分離したものを使用することにより、その生成するシェル構造体の粒子特性は、均一且つ精密な厚み設定が可能であり、平滑性、柔軟性に富み、鋳型の形状を忠実に再現して成る等、諸点において優れた特性を有して成るものを提供することが可能となり、その意義は、大である。シェル構造体は、近年注目されている形態材料の一つであり、電子材料、光学材料、複合材料、触媒、医薬等、各種分野において期待され、その動向に注目が集まっている。
本発明によって、材料特性の精度が、任意且つ極めて高精度に設定できるようになったことにより、各種分野の材料設計において、今後大いに寄与し、その技術進歩に役立つものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコア・シェル構造体および中空シェルの合成プロセスを概念的に説明する図。
【図2】本発明の実施例である酸化チタンナノシートを用いたコア・シェル構造体のXRDパターンを示す図。
【図3】本発明のコア・シェル構造体および中空シェルをSEM、TEMによって観察した図。
【図4】本発明の実施例である酸化チタン中空シェルのX線回折像。
【図5】紫外線照射により得られた本発明の実施例の酸化チタン中空シェルの観察説明図。
(a)PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(5層)累積後、酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射。
(b)シェル部分の拡大像。
(c)中空シェルの電子回折パターン。
【図6】本発明の実施例である酸化チタンナノシートを用いたコア・シェル構造体の紫外線照射前後のXRDパターンを示す図。
(a)PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI多層膜(10層)累積したコア・シェル構造体。
(b)酸素雰囲気中でキセノンランプ光を1週間照射した試料。
【図7】本発明の実施例である、酸化マンガンナノシートおよび酸化マンガンナノシート/酸化チタンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体の合成過程を観察したX線回折図。
(a) PMMA球X線回折図。
(b) PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(5層)累積X線回折図。
(c) PMMA球上に10層累積X線回折図。
(d) PMMA球上に20層累積X線回折図。
(e) PMMA球上に酸化チタンナノシート/PEI/酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(10層)累積X線回折図。
【図8】本発明の酸化マンガンナノシートをシェルとするコア・シェル構造体および中空シェルを観察したSEM像。
(a) PMMA球上に酸化マンガンナノシート/PEI多層膜(20層)累積SEM像。
(b) 試料(a)を500℃で1時間加熱して合成した酸化マンガン中空シェルSEM像。
Claims (20)
- 層状酸化物を層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(以下ナノシートと言う)とカチオン性ポリマーとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球面体上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積させて均一な球形、膜厚のコア・シェル構造体としたことを特徴とする、コア・シェル構造体。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシート、より成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項1記載のコア・シェル構造体。
- 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積させてコア・シェル構造体とし、これをポリマー除去手段により処理することによりポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを除去して、酸化物ナノシート累積多層薄膜によって構成されて成る均一な球形、膜厚の中空酸化物シェル構造体としたことを特徴とする、中空酸化物シェル構造体。
- 前記酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項3記載の中空酸化物シェル構造体。
- 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを熱分解させる熱処理手段であることを特徴とする、請求項3又は4記載の中空酸化物シェル構造体。
- 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを分解させる紫外線照射手段であることを特徴とする、請求項3又は4記載の中空酸化物シェル構造体。
- 前記酸化物ナノシートとして酸化チタンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がルチルないしはアナターゼ構造の均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、請求項3ないし6の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
- 前記酸化物ナノシートとして酸化マンガンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体が、酸化マンガンの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、請求項3ないし6の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
- 前記酸化物ナノシートとしてアルミノシリケートナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がアルミノシリケートの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、請求項3ないし6の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体。
- 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積して均一な球形、膜厚のコア・シェル構造体を生成することを特徴とする、コア・シェル構造体の製造方法。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシートより成る群からなる1種又は2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項10記載のコア・シェル構造体の製造方法。
- 酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーを液相からポリマー球上に交互に吸着させることによりポリマー球上に酸化物ナノシート/カチオン性ポリマーからなる多層薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、これをポリマー除去手段により処理することによりポリマー球のコア部分およびシェル部分のカチオン性ポリマーを除去して、酸化物ナノシート累積多層薄膜によって構成されて成る均一な球形、膜厚の中空酸化物シェル構造体を生成することを特徴とする、中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノシリケートナノシート、より成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項12記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 前記ポリマー除去手段が、ポリマーを熱分解させる熱処理手段であることを特徴とする、請求項12記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 前記ポリマーの除去手段が、ポリマーを分解させる紫外線照射手段であることを特徴とする、請求項3又は4記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 前記酸化物ナノシートとして酸化チタンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がルチルないしはアナターゼ構造の均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、請求項12ないし15の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 前記酸化物ナノシートとして酸化マンガンナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体が酸化マンガンの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、請求項12ないし15の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 前記酸化物ナノシートとしてアルミノシリケートナノシートが用いられ、その生成する中空酸化物シェル構造体がアルミノシリケートの均一な球形、膜厚の中空シェル構造体である、請求項12ないし15の何れか1項に記載の中空酸化物構造体の製造方法。
- シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項10又は11項記載のコア・シェル構造体の製造方法。
- シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項12ないし18の何れか1項に記載の中空酸化物シェル構造体の製造方法。
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