JP3772217B2 - 多孔質酸化物超薄膜および該超薄膜をシェル、ポリマーをコアとするコア・シェル粒子と該コア・シェル粒子から誘導されてなる多孔質中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法 - Google Patents
多孔質酸化物超薄膜および該超薄膜をシェル、ポリマーをコアとするコア・シェル粒子と該コア・シェル粒子から誘導されてなる多孔質中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、多孔質酸化物超薄膜および該多孔質酸化物超薄膜がポリマー球表面を被覆したコア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする多孔質酸化物シェル中空構造体およびこれらの製造方法に関する。
さらに詳しくは、触媒、光触媒、光誘起親水化コーティング材、吸着材、化粧料、などとしての利用が期待される、またさらに、医薬品、色素、インクなどの徐放性カプセルなどとしても有望な、多孔質酸化物超薄膜および該多孔質酸化物超薄膜がポリマー球表面を被覆したコア・シェル構造体とこの構造体を前駆体とする多孔質酸化物シェル中空構造体およびこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学的、化学的、光化学的、耐腐食性などへの応用を目指して酸化物ナノコーティング技術が昨今盛んに研究されている。本発明者らは酸化物ナノシートとカチオン性ポリマーをそれぞれの溶液からモノレイヤーで基板上に吸着させ、これを反復することでナノシート/ポリマーからなる多層ナノ薄膜の合成について報告している(特許文献1参照。)。また酸化物ナノ薄膜でポリマー球をコーティングしたり、コーティング後ポリマーを除去して中空シェルを合成したりすることも、電気、電子、医薬、触媒などの各種技術分野で幅広い応用が期待されその技術の開発が競われている。
本発明者らにおいても、その一環としていち早くこれらの研究に取り組み、上記手法を発展させ、ナノシート/ポリマーからなる多層ナノ薄膜をポリマー球表面に被覆してコア・シェル粒子が得られること、さらにこの状態からコアを除去して中空シェル構造体とすることが可能であることを報告した(特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
「チタニア超薄膜およびその製造方法」 特願2000-083654号(出願日 平成12年3月24日)。
【特許文献2】
「コア・シェル構造体および中空酸化物シェルの製造方法」 特願2002-296859号(出願日 平成14年10月10日)
【0004】
しかしながら従来の材料設計は、ナノ薄膜あるいはコア・シェル粒子を構成するナノ薄膜は、その何れもナノシートとポリマーとが交互に積層したコンポジット膜であり、その内部に細孔構造を含んでおらず多孔質といえる状態のものではなかった。また、コア・シェル粒子の加熱によって得られるコア除去後の中空シェルについても、加熱前のシェルを構成していたナノシート/ポリマー積層構造からポリマー部分が消失して酸化物単身となるが、その状態は細孔を含むものではなかった。
【0005】
【発明の課題】
前記従来技術に対して、ナノレベルで形態が制御された各構造体、すなわちナノ薄膜、コア・シェル粒子、中空酸化物シェル等の構造体を、発達した細孔構造を有する状態へと設計することができれば、その性状は比表面積が増大し、吸着性能、触媒特性の向上等さらなる性質が発現することが期待され、その結果、これらの要件を備えていない従前のものに比し、新たな価値を備えてなるものを提供することができるものと期待される。
すなわち、本発明は、細孔構造とすることについて特段言及のなかった従来技術、先行技術を前提技術としてなされたものであって、前記期待に応え内部に発達した細孔構造を有する多孔質ナノ薄膜、この多孔質ナノ薄膜を含んでなるコア・シェル粒子ないしは中空酸化物シェルおよびこれらの製造方法を提供しようというものであり、これによって比表面積の大きな、表面活性に富んだ特有な性質、作用効果の期待できる新しい材料を提供しようというものである。
【0006】
そのため、鋭意研究した結果、層状物質を単層剥離して得たナノシートをアルミニウムを加水分解することによって得られるアルミニウム多核水酸化物イオン、すなわち、AlO4Al12(OH)24(H2O)12 7+と組み合わせてフラットな基板上又はポリマー球上に自己組織化累積することにより、ナノレベルで両成分が積層した多層ナノ薄膜、該薄膜によりポリマー球表面が被覆されたコア・シェル粒子を製造できることを見いだした。さらに該コア・シェル粒子を加熱してコア部分を構成するポリマーを熱分解することで中空酸化物シェルが得られることもわかった。これらの構造体においてはナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオン、もしくは加熱した場合においてはこれから変化したアルミナナノ粒子が積み重なった構造を持っているが、アルミニウム多核水酸化物イオンあるいはアルミナナノ粒子の間に多くの間隙が存在する、すなわち細孔構造が発達していることを見いだし、これらの構造体がいずれも高比表面積を有する多孔質材料であることを明らかにした。本発明は、これらの一連の知見、成功に基づいてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、層状酸化物を単層剥離して得たナノシートをアルミニウム多核水酸化物イオンと組み合わせて基板上もしくはポリマー球上に自己組織化累積してナノシートと多核水酸化物イオンが積層した多層ナノ薄膜および該薄膜がポリマー球上を被覆したコア・シェル粒子を合成できること、さらにはこれらを加熱することでナノシートとアルミナナノ粒子からなる多層ナノ薄膜およびコア・シェル粒子からコア部分を除去した中空シェル構造体が製造できることが骨子となる。この作用によって、内部に細孔構造が発達したナノ薄膜、該薄膜がポリマー球上を被覆してなるコア・シェル粒子、さらには多孔質酸化物中空シェル構造体とこれらの製造方法を提供することを可能としたもので、以下(1)〜(21)に記載する手段を講じて成るものである。
【0008】
(1) 層状酸化物をナノレベルないしはサブナノレベルの基本単位厚みを有するホスト層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(以下ナノシートと言う)とアルミニウム多核水酸化物イオンとが交互に積層されてなる酸化物ナノシート/多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜。
(2) 酸化物ナノシートとアルミナナノ粒子が交互に積層されてなる酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜。
【0009】
(3) 前記(1)項に記載の多孔質酸化物超薄膜がポリマー球の表面に被覆されてなるコア・シェル粒子。
(4) 前記(2)項に記載の多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体。
(5) 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜を累積させてコア・シェル粒子とし、これを加熱処理することによりコア部分のポリマー球を除去、かつ多核水酸化物イオンを脱水してアルミナナノ粒子とし、多孔質酸化物超薄膜によって構成されて成る中空酸化物シェル構造体としたことを特徴とする、多孔質中空酸化物シェル構造体。
(6) 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(1)項又は(2)項に記載の多孔質酸化物超薄膜。
(7) 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(3)項に記載のコア・シェル粒子。
(8) 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(4)項又は(5)項に記載の中空酸化物シェル構造体。
(9) 膜厚が1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(1)又は(2)項に記載の多孔質酸化物超薄膜。
【0010】
(10) シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(3)項に記載のコア・シェル粒子。
(11) シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(4)又は(5)項に記載の多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体。
【0011】
(12) 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相から基板上に交互に吸着させる操作を反復することにより基板上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積することを特徴とする、多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
(13) 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相から基板上に交互に吸着させる操作を反復することにより基板上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積し、次にこれを300℃〜600℃の温度で加熱することによりアルミニウム多核水酸化物イオンをアルミナナノ粒子に変換して酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜を合成することを特徴とする、多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
(14) 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相からポリマー球上に交互に吸着させる操作を反復することによりポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、該多孔質酸化物超薄膜がポリマー球の表面に被覆されてなるコア・シェル粒子を合成することを特徴とするコア・シェル粒子の製造方法。
(15) 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相からポリマー球上に交互に吸着させる操作を反復することによりポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、次にこれを300℃〜600℃の温度で加熱することによりポリマーからなるコアを除去するとともにアルミニウム多核水酸化物イオンをアルミナナノ粒子に変換して、酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体を合成することを特徴とする、酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体の製造方法。
(16) 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(12)又は(13)項に記載の多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
(17) 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(14)記載のコア・シェル粒子の製造方法。
(18) 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、前記(15)項に記載の酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体の製造方法。
【0012】
(19) 膜厚が1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(12)又は(13)項に記載の多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
(20) シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(14)項に記載のコア・シェル粒子の製造方法。
(21) シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、前記(15)項に記載の酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体の製造方法。
【0013】
ここに、コーティング材料となるナノシートは、層状酸化物を単層剥離することで容易に入手することができる。出発層状物質は酸化チタンナノシートの場合は、四チタン酸塩K2Ti4O9、五チタン酸塩Cs2Ti5O11、レピドクロサイト型チタン酸塩Cs0.7Ti1.825O4、K0.8Ti1.73Li0.27O4など、酸化マンガンナノシートの場合はα−NaFeO2型関連構造を持つマンガン酸塩K0.45MnO2、バーネサイト型マンガン酸塩NaxMnO2・nH2Oなど、酸化ニオブナノシートの場合は層状ペロブスカイトKCa2Nb3O10などを用いることができる。
【0014】
これらの化合物の剥離ナノシート化についてはいろいろな手法が報告されているが、酸処理して層間のアルカリ金属イオンを水素イオンに置き換えた水素型物質を一旦合成し、次にかさ高いアミンもしくはアンモニウムイオンを反応させるのが一般的である。反応条件を適切に制御することで、これらの化合物はホスト層1枚1枚にまでばらばらになってナノシートとして液媒体中に分散してコロイド溶液を形成する。またスメクタイト族の粘土鉱物は水中で撹拌するだけで単層剥離し、アルミノシリケートナノシートが得られる。
【0015】
これらのナノシートの厚みは母結晶のホスト層の厚みに相当し、酸化チタンナノシートの場合で0.75nm、酸化マンガンナノシートは0.5nm、酸化ニオブナノシートは1.4nm、アルミノシリケートナノシートは1nmである。
一方横サイズは、剥離前の層状結晶の大きさに基本的に依存する。一般的には200nmから100μmであるが、ミクロンサイズのポリマー球への吸着、積層を行う目的のためには1μm以下のナノシートの使用が適当である。
【0016】
アルミニウム多核水酸化物イオンは適当なアルミニウム塩の水溶液を最終pHが5前後になるように適当な水酸化物の溶液を加えることで簡単に合成することができる。代表的にはAlO4Al12(OH)24(H2O)12 7+の組成を持ち、13個のアルミニウムからなるKeggin構造と呼ばれるクラスターで、その大きさは球体であると仮定すると直径0.86nmである。
【0017】
基板は溶液に浸漬した際に、また加熱する場合には600℃程度までの温度範囲で安定であればよく、石英ガラス、シリコンウエハー、ポリマー板をはじめとして様々な素材を使用することが可能であり、そのサイズにも基本的に制限はない。一方コアとなるポリマー球についても材質、サイズに大きな制限はない。代表的なポリマーとしてはポリスチレン(以下PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、サイズは0.2μm〜10μmが一般的である。
【0018】
本発明では交互吸着法を活用して基板もしくはポリマー球上にナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを累積して両成分がナノレベルで繰り返して積層した多層酸化物超薄膜または該シェルを構築する。交互吸着法とは自己組織化法の一つで、反対電荷をもつ2種類の物質を静電相互作用を介して固体表面にそれぞれモノレイヤーで吸着させる操作を反復することで多層超薄膜を形成する技術である。シェルの素材として用いる上記のナノシートはいずれも負電荷を帯びているのに対してアルミニウム多核水酸化物イオンは正電荷を持っているため上記の動作原理に基づく累積が可能となる。
【0019】
基板上もしくはポリマー球面上への具体的な累積操作は図1に示すように、▲1▼アルミニウム多核水酸化物イオン吸着、▲2▼水洗、▲3▼ナノシートの吸着、▲4▼水洗の操作を1サイクルとして必要回数繰り返して行う。基板の場合は溶液中に浸漬するだけでよいが、ポリマー球の場合は超音波照射もしくはスターラーにより分散させて反応を行う。
アルミニウム多核水酸化物イオンは+7価であり、基板もしくはポリマー球表面に強く結合する。いったん該水酸化物イオンが表面を被覆すると、過剰のイオンは静電反発でそれ以上吸着できずモノレイヤー被覆が達成される。ただしモノレイヤー被覆を確実に進行させるためには、吸着時間、濃度、pH条件を適切に選択する必要がある。
吸着時間が短すぎると、また濃度が低すぎると表面の完全被覆ができなくなる。一方逆の場合には、モノレイヤー以上の吸着が起こってしまうことがある。またアルミニウム多核水酸化物イオンはpHが4〜6の領域で安定であり、pHが低すぎると多核水酸化物イオンが形成されないし、一方高すぎると加水分解が進みすぎて水酸化アルミニウムの沈殿が生成してしまう。最適な吸着条件は、濃度が1〜30gdm−3、pH5付近、吸着時間5〜30分間であり、モノレイヤー吸着が達成できる。
【0020】
このアルミニウム多核水酸化物イオンで被覆された基板もしくはポリマー球を純水で充分に洗浄した(▲2▼の操作)後、ナノシートが分散したコロイド溶液中に接触させる。ナノシートは負電荷を帯びているため、上記の静電的自己組織化原理が働きナノシートがモノレイヤーで吸着することとなる。ただし吸着時間、濃度、pHなどの条件の適切な設定は必要である。典型的には吸着時間10〜30分間、濃度 0.01〜 1 gdm−3、pHは7以上が適当である。ナノシートが基板もしくはポリマー球表面を被覆すると表面電荷は負となるため、▲1▼のアルミニウム多核水酸化物イオンの吸着が可能となり、これを順番に繰り返すことで積層を続行することができる。ナノシートの厚みは上記のようにその種類に依存するが0.5〜1.5nm、アルミニウム多核水酸化物イオンの大きさは0.86nmであるので、これらの値を単位としたシェルの厚み制御が可能となる。
【0021】
具体例として石英ガラス基板上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを交互積層した場合、図2に示すような紫外・可視吸収スペクトルが得られる。260nm付近にピークを持つ吸収は酸化チタンナノシートによるものである。一方アルミニウム多核水酸化物イオンはこの波長域に吸収を持たない。累積操作を繰り返すと260nmの吸光度がほぼリニアーに増大することから、一定量の酸化チタンナノシートが1回毎に吸着していること、すなわち多層超薄膜が規則的に成長していることを示している。またX線回折測定を行うと、面間隔1.6nmを与えるブラッグピークが2θ=5.4°付近に現れ、累積操作数とともにその強度が増大することがわかる(図3)。この面間隔は酸化チタンナノシートの厚み0.75nm、アルミニウム多核水酸化物イオンの大きさ0.86nmの和にほぼ一致し、ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンの積層ナノ構造が構築できていること、またその厚みを1.6nmというレンジで制御可能であることを示している。さらに得られた薄膜のX線光電子スペクトル測定からはTi、Al、Oが主成分として検出された(図4)。以上のデータはいずれも上記説明した手法によって酸化チタンナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多層超薄膜が構築できることを支持している。
【0022】
さらに前記X線光電子スペクトルデータの解析によりTi/Al=2.1のモル比を持つことが確認された。ここで酸化チタンナノシートの2次元単位胞の面積は0.114nm2(=0.38nm×0.30nm)であり、ここに2分子量(Ti0.91O2×2)を含む。一方アルミニウム多核水酸化物イオンAlO4Al12(OH)24(H2O)12 7+は直径0.86nmの球形クラスターとして近似することができ、その体積は0.333nm3〔=4/3・π・(0.43)3〕と見積もることができる。酸化チタンナノシートの2次元単位胞は−0.7の電荷を持つことから、電荷的バランスを考慮するとアルミニウム多核水酸化物イオン1個あたり10個の酸化チタンナノシート単位胞が必要となる。ここでナノシート面間隔が1.6nmであるので、ナノシートの厚み0.75nmを考慮すると純粋な層間隙の大きさは0.85nmとなる。以上により0.855nm3(=0.114×10×0.75)に1個のアルミニウム多核水酸化物イオンが存在することとなり、その占有する割合は39%と計算できる。このような低い占有割合はナノシートとナノシートの間に存在するアルミニウム多核水酸化物イオンの周りに多くのフリースペースがあることを意味し、本積層ナノ構造体が細孔を多く含む多孔体であることを示している。同様な多孔質超薄膜は別の種類のナノシート、すなわち酸化マンガン系、酸化ニオブ系、アルミノシリケート系のシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを用いても構築することができる。
【0023】
ポリマー球上への累積によるコア・シェル粒子合成の典型例としてポリメチルメタクリレート(PMMA)球(直径:0.4μm)に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを交互積層した場合、図5に示すようなX線回折(XRD)データが得られる。積層前においてはポリマーに特有な無定形パターンが2θ=10〜30°の範囲に見られるが、積層処理後はそのピーク強度が大きく低減し、表面が無機ナノシートで被覆されたことがわかる。この変化に加えて、面間隔1.6nmを示すブラッグピークが2θ=5.4°付近に出現する。これはフラットな基板上への累積において見られた回折ピークと同等なシグナルであり、シェルに相当するナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンの繰り返しナノ構造に起因している。
【0024】
一方2θ=48°、62°付近にも回折線が検出される。これらはナノシート内で構成原子が0.38nm×0.30nmの単位で2次元方向に周期的に配列していることを示しており、ナノシートの構造がポリマー球上を被覆した後においてもそのまま保持されていることがわかる。
コア・シェル構造体を走査型電子顕微鏡で形態観察すると、もとのポリマー球の形状をそのまま保持していることが確認される。これはナノシートが柔軟性に富み、鋳型のポリマー球にぴったり貼り付いたことを示しており、ナノシートのコーティング材料としての有効性を示している。
【0025】
次に、前示処理によって形成された多層超薄膜もしくはコア・シェル粒子を400〜600℃に加熱することによりアルミニウム多核水酸化物イオンが脱水縮合してアルミナ粒子に変化した多孔体を合成することができる。特に後者ではコアに相当する有機ポリマーも同時に除去され、特異な酸化物の多孔質中空シェルを誘導することができる(図6)。得られる粒子サイズは鋳型として用いたポリマー球の大きさにほぼ一致しており、コア除去にともなう熱処理で収縮はほとんどないことがわかる。シェルの厚みは透過型電子顕微鏡像の高いコントラストを持つ外縁の厚みから評価できる。これが積層サイクル数×(ナノシートの厚み+アルミナナノ粒子サイズ)の厚みにほぼ一致し、厚みをナノメーターレンジでコントロールできることを示している。
【0026】
またX線回折データ(図7、図8)によると、ナノシート/アルミナナノ粒子の積層構造は保持されており、面間隔1.3〜1.5nm前後の底面反射系列が400〜600℃に加熱後も見られる。またナノシートの面内回折ピークも存在し、ナノシート構造がそのまま保持されていることが確認できる。このような加熱処理により得られた超薄膜もしくは中空シェルは、アルミナナノ粒子が柱としてナノシートの間に存在した構造を持っていることから、多孔質の状態を保持していると考えられる。中空シェルについて窒素ガス吸着等温線を測定した結果を図9に示す。吸着等温線はH3型のヒステリシスを示すIV型の特徴を示しており、このサンプル内にスリット状の細孔を有することを示唆する。これはナノシート/アルミナナノ粒子が積層した構造であることと一致する。またその解析によりミクロ孔、メソ孔、マクロ孔と広い細孔分布を持つこと、この細孔構造により260m2g?Pにおよぶ大きな比表面積値が示された。
【0027】
以上説明した合成手順により製造される多孔質の酸化物超薄膜、コア・シェル粒子および中空シェルは幅広い応用展開が期待できる。ナノシート素材には半導体、絶縁体、レドックス活性など多様な電気的特性を示すだけでなく、光学的、化学的にもバラエティーに富んでいる。これらをアルミニウム多核水酸化物イオンと組み合わせることで多孔体的特性を持たせたナノ構造体(酸化物超薄膜、コア・シェル粒子、中空シェル)を得ることができ様々な付加価値を持たせることができる。酸化チタンまたは酸化ニオブ超薄膜の場合には光触媒的特性を活かした、有害物質捕捉・分解膜やセルフクリーニング膜、さらには超親水性コーティング膜などへの応用が期待される。また酸化マンガンナノシートを用いれば高性能電極膜としての展開も期待できる。またコア・シェル多孔体の場合は無機多孔質酸化物シェルによる保護被覆効果のほかに、用いるシェルの材質によりポリマー球に様々な特性を付加することができる。たとえば酸化チタンナノシートを用いた場合はその高い屈折率から光学的応用などが期待される。中空シェル材料はまずそのカプセル状の形態およびミクロ孔、メソ孔、マクロ孔におよぶ幅広い細孔構造を活かして、医薬品などの徐放効果が期待できる。上記の超薄膜の場合と同様、触媒、特に光触媒、電極材料などとしての応用の期待も高い。
【0028】
【実施例】
次に本発明を、図面、実施例に基づいて具体的に説明する。但し、これらの実施例等は、あくまでも本発明を容易に理解するための一助として開示するものであって、本発明をこれによって限定する趣旨ではない。
【0029】
まず、図1は、本発明の多孔質酸化物超薄膜、コア・シェル粒子および中空シェルの合成プロセスを示す概念図である。
図2は、本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜の形成過程での紫外・可視吸収スペクトルを示す図である。基板には石英ガラスを使用した。図2中の挿入図は酸化チタンナノシートの吸収ピーク(260nm)の吸光度と累積操作数との関係を示すグラフである。
【0030】
図3は、本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜の形成過程でのX線回折パターンを示している。同図中、(a)、(b)、(c)、(d)はそれぞれ累積操作数が1回、3回、5回、10回のデータを表している。
図4は、本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜(10回積層)のX線光電子スペクトルを示す図である。(a)、(b)はそれぞれTi2p、Al2pに帰属されるピークである。
図5は、PMMA球上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを累積してコア・シェル粒子を合成する過程のX線回折パターンの変化を示している。(a)、(b)、(c)はそれぞれシェルを累積する前のPMMA球、累積操作数5回、10回の試料のパターンである。
【0031】
図6は、PMMA球上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを10回累積して合成したコア・シェル粒子を400℃で1時間加熱することにより得られた多孔質中空シェルの透過型電子顕微鏡像である。
図7は、本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜(10回積層)を加熱した際のX線回折パターンを示し、その中、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)はそれぞれ100℃、200℃、400℃、500℃、600℃、800℃、1000℃の各温度で1時間加熱処理した試料である。
図8は、PMMA球面上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを10回累積して合成したコア・シェル粒子を400℃で1時間加熱することにより得られた多孔質中空シェルのX線回折パターンを示し、図中○印で示したのは酸化チタンナノシート/アルミナナノ粒子が積層構造をとっていることによる底面反射ピークである。また2θ=48°、62°付近のピークはナノシート内の2次元原子配列に基づく回折ピーク(2次元指数が20と02)である。
図9は、PMMA球上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを10回累積して合成したコア・シェル粒子を400℃で1時間加熱することにより得られた多孔質中空シェルの窒素ガス吸脱着等温線であり、挿入図は細孔径分布を示す図である。
【0032】
図10は、本発明の実施例である酸化マンガンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜の形成過程での紫外・可視吸収スペクトルを示す図であり、挿入図は酸化マンガンナノシートの吸収ピーク(380nm)の吸光度と累積操作数との関係を示すグラフである。
以下、実施例を記載する。
【0033】
実施例1;
炭酸セシウム(Cs2CO3)と二酸化チタン(TiO2)を1:5.5のモル比に混合し、これを800℃で30分間加熱して炭酸塩を分解した。この焼成物を再び摩砕して800℃で40時間焼成することにより斜方晶のチタン酸セシウム(Cs0.7Ti1.825O4)を得た。次に1規定の塩酸溶液100cm3に対して上記の手順で得られたチタン酸セシウム(Cs0.7Ti1.825O4)の粉末を1gの割合で反応させ、組成式H0.7Ti1.825O4・nH2Oで示される層状チタン酸を合成した。このチタン酸0.4gを水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液100cm3(濃度:0.1moldm−3)に加えて振盪し、チタン酸を剥離させ、酸化チタンナノシートが分散したコロイド溶液を得た。このコロイド溶液を50倍に希釈し、希塩酸水溶液を添加してpHを7に調整した。
硝酸アルミニウム所定量を純水120cm3に溶解して0.2 mol dm?Rの濃度の溶液とした。この溶液をスターラーで撹拌しながら0.2 mol dm?Rの水酸化ナトリウム水溶液300cm3を1cm3min?Pの速度で滴下した。得られた溶液を一晩撹拌しながら熟成し、アルミニウム多核水酸化物イオンの水溶液を調製した。この溶液を純水で5倍に希釈して以下の製膜に用いた。
1×5cm2程度の石英ガラス板、シリコンウエハー板をメルク製EXTRAN MA02 2%液にて洗浄した後、メタノール/塩酸の1:1溶液、続いて濃硫酸に浸漬した。30分後溶液より取り出し、Milli-Q純水で充分に洗浄した。このようにして洗浄・前処理を行った基板を(1)上記のアルミニウム多核水酸化物イオンを含む水溶液に浸漬した。(2)20分経過後、Milli-Q純水で充分に洗浄し、アルゴン気流を吹きつけて水分を飛ばした。(3)次にこの基板を酸化チタンナノシートが分散したコロイド溶液に20分間浸漬し、(4)続いてMilli-Q純水で充分に洗浄した。以上の(1)〜(4)の操作を反復することにより、酸化チタンナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる超薄膜の合成を行った。
その結果紫外・可視吸収スペクトルでは酸化チタンナノシートの260nm付近吸収ピークのリニアーな増大が認められた(図2)。得られたサンプルのX線回折データにはナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンの積層構造を示す回折線が出現し、その強度が増大した(図3)。さらにX線光電子分光スペクトルからはTi、Al、Oから薄膜が構成されていること、Ti/Al=2.1であることが判明した(図4)。この組成比および構造パラメータから本薄膜は酸化チタンナノシートの間にアルミニウム多核水酸化物イオンがサンドイッチされた構造を有するが、多核水酸化物イオンの周りに多くのフリースペースを含む多孔体構造を持つことが確認された。
【0034】
実施例2;
実施例1で得られた酸化チタンナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる超薄膜をアルミニウム多核水酸化物イオンが脱水してアルミナナノ粒子に変換される温度400℃で加熱処理した。温度は室温から毎分1℃の速度で昇温し、400℃に到達後1時間保持し、その後室温に放冷した。
X線回折データからナノシート/アルミナナノ粒子の積層構造を示す面間隔1.3nmを与える底面反射系列が確認され(図7)、該多孔質薄膜が得られたことがわかった。
【0035】
実施例3;
実施例1と同じ手順で酸化チタンナノシートコロイド溶液とアルミニウム多核水酸化物イオン溶液を合成した。0.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)球(粒径:0.4μm)をアルミニウム多核水酸化物イオン溶液150cm3中に投入し、10分間超音波洗浄バス中で処理した。その後さらに15分間撹拌を行った。次にPMMA球を遠心分離、水洗する操作を2回繰り返して過剰のアルミニウム多核水酸化物イオンを除去した。
次にこのサンプルを150cm3の純水に加え、超音波処理を10分間行って分散させた後、上記の酸化チタンナノシートコロイド溶液を0.04gdm−3の濃度に希釈した溶液5cm3を加え、スターラーで撹拌しながら20分間反応させた。その後遠心分離、水洗によりサンプルを回収した。以上のアルミニウム多核水酸化物イオン吸着処理、ナノシート吸着処理を1サイクルとして、必要回数分だけ繰り返した。得られたサンプルのXRDパターンにはPMMAに起因するハロの低減が認められるとともにナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンの多層構造を持つシェルの形成を示す回折線が出現し(図5)、多孔質の酸化物超薄膜をシェル、PMMA球をコアとするコア・シェル粒子の形成が確認された。
【0036】
実施例4;
実施例3で作成したコア・シェル粒子を400℃に加熱し、アルミニウム多核水酸化物イオンのアルミナナノ粒子への変換、PMMA球コアの除去を行った。サンプルを室温から毎分1℃の速度で昇温し、400℃に到達後1時間保持し、その後室温に放冷した。生成物のX線回折データはナノシート/アルミナナノ粒子からなるピラー構造の形成を示すパターンを与えた(図8)。また透過型電子顕微鏡観察では球状の形態を保ったままコアが除去されて中空シェルが形成されていることがわかった(図6)。本サンプルの窒素ガス吸着挙動を測定した結果、H3型のヒステリシスを示すIV型の吸脱着等温曲線が得られ(図9)、スリット型の細孔構造が発達していることが確認された。この細孔により260m2g?Pにおよぶ高いBET表面積を持つことも確かめられた。
【0037】
実施例5;
炭酸カリウム(K2CO3)と酸化マンガン(Mn2O3)を0.225:1のモル比に混合し、これを酸素気流中800℃で40時間焼成することにより三方晶のマンガン酸カリウム(K0.45MnO2)を得た。次に1規定の塩酸溶液100cm3に対してマンガン酸カリウム(K0.45MnO2)の粉末を1gの割合で接触させ、室温で10日間反応させ組成式H0.13MnO2・0.7H2Oで示される層状マンガン酸を得た。このマンガン酸0.4gを水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液100cm3(濃度:0.13moldm−3)に加えシェーカーで200rpm程度の振盪を数日間行ない、層状マンガン酸化物を剥離させて酸化マンガンナノシートが分散したコロイド溶液を調製した。
得られた酸化マンガンナノシート溶液の濃度を0.08 g dm−3、pHを7に調整し、実施例1と同様の手順でコア・シェル構造体を合成した。紫外・可視吸収スペクトルには酸化マンガンナノシートに特有な吸収が累積操作数に比例して増大すること(図10)、XRD測定からはナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンの周期構造に基づく回折線が現れることから、アルミニウム多核水酸化物イオンが酸化マンガンナノシート間にサンドイッチされたピラー構造をもつ多孔質超薄膜の形成が確認された。
【0038】
【発明の効果】
本発明は、内部に細孔構造を有する多孔質酸化物超薄膜(ナノ薄膜)と、該多孔質酸化物超薄膜がポリマー球(コア)の表面を被覆してシェルを形成したコア・シェル粒子、酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜を累積させてコア・シェル粒子とし、これを加熱処理することによりコア部分のポリマー球を除去し、かつ多核水酸化物イオンを脱水してアルミナナノ粒子としたことを特徴とした、多孔質中空酸化物シェル構造体およびこれらの製造方法を提供するのに成功したものであって、従前のコア・シェル構造体、あるいは中空酸化物シェル構造体には存在していなかった多孔質化を実現することができたものである。これによってこれまでのもの比し、比表面積の大きな物理的性状の際だったものが得られ、例えば吸着性能、担持性能、さらには触媒活性等に優れたもの、あるいはまた徐放性が要求される医薬用を始めとする各種マイクロカプセル技術への適用に優れたものを提供することに成功したものであって、触媒、光触媒、コーティング材料、吸着材、化粧料、医薬、インキ等々各種技術分野において大いに使用され、これらの技術分野は勿論、産業の発展に大いに寄与するものと期待され、その意義は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の多孔質酸化物超薄膜、コア・シェル粒子および中空シェル構造体の合成プロセスを概念的に説明する図
【図2】 本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンとからなる多孔質超薄膜の紫外・可視吸収スペクトルを示す図
【図3】 本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜のXRDパターンを示す図
【図4】 本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜のX線光電子スペクトルを示す図
【図5】 PMMA球上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを累積してコア・シェル粒子を合成する過程のX線パターン変化を示す図
【図6】 PMMA球上に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを累積して合成したコア・シェル粒子を400℃で加熱して得られた多孔質中空シェルの透過型電子顕微鏡像
【図7】 本発明の実施例である酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜(10回積層)を加熱した際のX線回折パターンを示す図
【図8】 PMMA球状に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを10回累積して合成したコア・シェル粒子を400℃で1時間加熱することにより得られた多孔質中空シェルのX線パターンを示す図
【図9】 PMMA球状に酸化チタンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質シェルを10回累積して合成したコア・シェル粒子を400℃で1時間加熱することにより得られた多孔質中空シェルの窒素ガス吸脱着等温線を示す図
【図10】 本発明の実施例である酸化マンガンナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜の紫外・可視吸収スペクトルを示す図
Claims (21)
- 層状酸化物をナノレベルないしはサブナノレベルの基本単位厚みを有するホスト層1枚にまで剥離して得られる2次元結晶子(以下ナノシートと言う)とアルミニウム多核水酸化物イオンとが交互に積層されてなる酸化物ナノシート/多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜。
- 酸化物ナノシートとアルミナナノ粒子とが交互に積層されてなる酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜。
- 請求項第1項記載の多孔質酸化物超薄膜がポリマー球の表面に被覆されてなるコア・シェル粒子。
- 請求項第2項記載の多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体。
- 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンとを、ポリマー球上に液相にて交互に吸着させ、ポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質超薄膜を累積させてコア・シェル粒子とし、これを加熱処理することによりコア部分のポリマー球を除去、かつ多核水酸化物イオンを脱水してアルミナナノ粒子とし、多孔質酸化物超薄膜によって構成されて成る中空酸化物シェル構造体としたことを特徴とする、多孔質中空酸化物シェル構造体。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項第1項又は第2項記載の多孔質酸化物超薄膜。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項第3項記載のコア・シェル粒子。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項第4項又は第5項記載の中空酸化物シェル構造体。
- 膜厚が1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項1又は2項記載の多孔質酸化物超薄膜。
- シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項3項記載のコア・シェル粒子。
- シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項4又は5項記載の多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体。
- 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相から基板上に交互に吸着させる操作を反復することにより基板上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積することを特徴とする、多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
- 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相から基板上に交互に吸着させる操作を反復することにより基板上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積し、次にこれを300℃〜600℃の温度で加熱することによりアルミニウム多核水酸化物イオンをアルミナナノ粒子に変換して酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜を合成することを特徴とする、多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
- 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相からポリマー球上に交互に吸着させる操作を反復することによりポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、該多孔質酸化物超薄膜がポリマー球の表面に被覆されてなるコア・シェル粒子を合成することを特徴とするコア・シェル粒子の製造方法。
- 酸化物ナノシートとアルミニウム多核水酸化物イオンを液相からポリマー球上に交互に吸着させる操作を反復することによりポリマー球上に酸化物ナノシート/アルミニウム多核水酸化物イオンからなる多孔質酸化物超薄膜を累積してコア・シェル構造体を製造し、次にこれを300℃〜600℃の温度で加熱することによりポリマーからなるコアを除去するとともにアルミニウム多核水酸化物イオンをアルミナナノ粒子に変換して、酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体を合成することを特徴とする、酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項12又は13記載の多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項14記載のコア・シェル粒子の製造方法。
- 酸化物ナノシートが、酸化チタンナノシート、酸化マンガンナノシート、酸化ニオブナノシート、アルミノケイ酸ナノシートより成る群から選ばれた1種または2種以上の酸化物ナノシートであることを特徴とする、請求項15記載の酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体の製造方法。
- 膜厚が1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項12又は13項記載の多孔質酸化物超薄膜の製造方法。
- シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項14項に記載のコア・シェル粒子の製造方法。
- シェルの厚みが1nm単位で制御可能とされることを特徴とする、請求項15項に記載の酸化物ナノシート/アルミナナノ粒子からなる多孔質酸化物超薄膜がシェルを構成してなる中空酸化物シェル構造体の製造方法。
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