JP2004130354A - 円筒成型方法 - Google Patents

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Yasutaka Inoue
井上 泰孝
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Abstract

【課題】硬質ロールとこれが食い込む弾性ロールを使用して円筒を得るに際し、小径でしかも長尺の円筒を成型する場合の硬質ロールの撓みを防止する。
【解決手段】回転自在の硬質ロール1と、この硬質ロールに対して相対向して回転する一対の第1弾性ロール2及び第2弾性ロール3Aによりワークを円筒成型するにあたり、硬質ロールに対する第2弾性ロールの圧接位置を、硬質ロールに対する第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの反回転方向に向けて偏倚させると共に、上記第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの回転方向に向けて偏倚させた位置に第3弾性ロールを圧接する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は硬質ロールとこれが食い込む弾性ロール使用した円筒成型方法に関し、特に小径且つ長尺の円筒を成型するのに最適な円筒成型方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板のような可塑性板状素材からなる被成型材(以下、「ワーク」と称する。)を円筒状に曲折成型する方法として、相対向して回転する弾性ロールと硬質ロールとを圧接して設け、被成型材を両ロール間に挿入通過させることにより円筒状に曲折成型する成型方法が公知である(例えば、特公昭41−13974号、実公昭43−11238号、実公昭60−37125号公報等に記載。)。
【0003】
この種の成型方法においては、成型に際しては硬質ロールが弾性ロール表面に食い込むように圧接力を加え、弾性ロール表面に生じる円弧状の窪みによりワークをプレス成型する。そして、この場合、当然のことながら硬質ロールの圧接力は弾性ロール表面に食い込みを生じさせるに足りるものでなくてはならず、一方、弾性ロールの硬度は少なくとも成型される被成型材の復元力に勝るものでなくてはならない。
【0004】
ところで、この種成型方法においては成型される円筒の直径は硬質ロールの外径によって決定され、小径の円筒を成型する場合は当然のことながら硬質ロールは小径のものが使用される。この場合、小径且つ全長が長い円筒を成型しようとすると、硬質ロールの全長に対する直径比が極端に小さくなることより、硬質ロールに対し、それを弾性ロール表面に食い込むように圧接力を加えると硬質ロール自体に撓みが生じる問題が生じた。
【0005】
以上の問題を解消するために、本願出願人は先に回転自在の硬質ロールと、この硬質ロールに対して相対向して回転する一対の第1弾性ロール及び第2弾性ロールを用意し、これらの弾性ロールを硬質ロールを挟んで配すると共に硬質ロールに対し圧接し、第1弾性ロールと硬質ロール間に被成型材の一端を挿入した後、両弾性ロールを硬質ロールと相対向する方向に回転させる円筒成型方法を発明した(特開平8−150417)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記の公知発明によれば、第2弾性ロールの圧接位置を硬質ロールに対する第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所に設定することにより、硬質ロールはその圧接時には必ず反対方向からの圧接力も得るので、成型時の強圧力により硬質ロールが撓む事態が防止される効果を得られる。
【0007】
しかしながら、より長尺の円筒を成型しようとする場合、上下の弾性ロールにより上下方向の撓みは防止できても、第2弾性ロールとの接触面との摩擦力により硬質ロールが弾性ロールの表面を転がろうとして、支えがない中央部が横方向にずれて撓みを生ずる現象が生じた。これを防止するためには第2弾性ロールの直径を大きくするしかないが、それにより装置の巨大化を来す問題を生じた。
【0008】
又、硬質ロールの上方にも弾性ロール(第2弾性ロール)を配する構成を採用しているので、成型中途のワークの先端が第2弾性ロールに突き当たるように接して両者間にスムーズに進行しない問題もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は以上の公知発明の問題を解消するための改良創作に関し、回転自在の硬質ロールと、この硬質ロールに対して相対向して回転する一対の第1弾性ロール及び第2弾性ロールを用意し、これらの弾性ロールはこの硬質ロールを挟んで配すると共に硬質ロールに対し圧接され、第1弾性ロールと硬質ロール間に被成型材の一端を挿入した後、両弾性ロールを硬質ロールと相対向する方向に回転させる円筒成型方法において、硬質ロールに対する第2弾性ロールの圧接位置を、硬質ロールに対する第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの反回転方向に向けて偏倚させると共に、上記第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの回転方向に向けて偏倚させた位置に第3弾性ロールを圧接することを特徴とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
以下、この発明の具体的実施例を添付図面に基づいて説明する。図1乃至図2はこの発明の第1実施例を示す図である。図中符号1は硬質ロールであり、ここでは金属により構成される。図中符号2は上記硬質ロール1に対して相対向して回転する第1弾性ロールであり、成型時に硬質ロール1の下方向から圧接される。又、図中符号3A及び3Bは上記硬質ロール1に対して相対向して回転する第2弾性ロール及び第3弾性ロールであり、成型時に硬質ロール1の上方向から圧接される。ここでは、各弾性ロールは金属の芯に対し弾性素材層を有する構成よりなり、弾性素材層としてウレタンを採用している。
【0011】
硬質ロール1に対する第2弾性ロール3Aの圧接位置は、硬質ロールに対する第1弾性ロール2の圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの反回転方向に向けて偏倚される。又、硬質ロール1に対する第3弾性ロール3Bの圧接位置は、硬質ロールに対する第1弾性ロール2の圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの回転方向に向けて偏倚される。図2においては第2弾性ロール3Aは前記半円周箇所から硬質ロール1の反回転方向に向けて30度偏倚した状態を、同じく第3弾性ロール3Bは前記半円周箇所から硬質ロール1の回転方向に向けて30度偏倚した状態を図示しているが、具体的な数値はこれに限定されないことは勿論である。
【0012】
図中符号Wはワーク(被成型材)であり、ここでは一端を先ず硬質ロール1と第1弾性ロール2間に挿入し、これらのロールの回転に伴い硬質ロール1の外周と、この硬質ロール1が食い込むことにより第1弾性ロール2の表面に生ずる円弧状の窪みによりプレス成型され(図2の状態)、更にワークは硬質ロール1と第2弾性ロール3A間、硬質ロール1と第3弾性ロール3B間に送り込まれる。
【0013】
以上の構成において、第1弾性ロール2は下方に位置するように図示しない基台に軸止され、第2弾性ロール3Aと第3弾性ロール3Bを圧下自在に設け(圧下機構は図示せず)、硬質ロール1を挟んで各ロールが相対向して回転するように第1弾性ロール2は適宜動力機構(図示せず)に連結される。この場合、第2弾性ロール3A及び第3弾性ロール3Bは第1弾性ロール2に対し従動する硬質ロール1に対し摩擦力により従動することにより回転力を与えられるが、この実施例では、第2弾性ロール3Aに関しては、動力機構に接続された第1弾性ロール2に対して従動する従動ロール5を設け、この従動ロール5を介して回転力を与えている。
【0014】
又、この実施例においては第2弾性ロール3Aに対し2本のサポートロール6A、7Aを回転自在に当接すると共に、第3弾性ロール3Bに対し同じく2本のサポートロール6B、7Bを回転自在に当接させることにより、これらの弾性ロールの直径を細く設定した場合の撓みを防止している。
【0015】
尚、図3及び図4に示すように、一本の硬質ロール11に対し小幅に設定した複数本の第2弾性ロール13A及び第3弾性ロール13Bを用意し、これらを互い違いに配してもよい。こうすることにより、第2弾性ロール及び第3弾性ロールの直径を大きくしても互いの外周同士が接触しないので、これらの直径を大きくすることが可能となり前記のようなサポートロールを使用しないでも撓みを防止することが可能となる。尚、図中符号12は第1弾性ロールを指す。
【0016】
次に、図5乃至図7によりこの発明の作用を公知発明との対比において説明する。図7は前記の公知発明の成型方法を示す図である。
(1) 点Bにおける第1弾性ロール52と硬質ロール51との圧接により曲げられたワークWは、点Aで第2弾性ロール53と接触する。点Bから点Aまでのワーク長と同じ長さの硬質ロール51外周長を、点Bから点WAの長さで表す。同様に第2弾性ロール53の点Cから点Aまでの外周長と同じ長さの硬質ロール51の外周長を、点Cから点RAの長さで表す。
(2) ベクトルVRは、ワークWと第2弾性ロール53の接触点Aにおける第2弾性ロール53からの接線であり、同様にベクトルVWは接触点AにおけるワークWからの接線である。
(3) 図に示すように、硬質ロール51に対する第1弾性ロール52の圧接位置Bの半円周箇所Cにおいて、第2弾性ロール53を圧接する場合は、第2弾性ロール53からのベクトルVRと、ワークWからのベクトルVWの成す角度θ1が大きくなることがわかる。その結果、接触点AにあるワークWの先端は、第2弾性ロール53と硬質ロール51との間に挟まれにくく、スムーズな成型の障害となりやすい。又、ワークWの先端が接触点Aから第2弾性ロール53の外周に沿って移動し、再び硬質ロール51の外周に接触する時、これらの間のずれ角度θ2も大きいことがわかる。その結果、スリップやワークの変形を来しやすい。
【0017】
これに対し、図5に示すようにこの発明の成型方法においては、第2弾性ロール3Aの圧接位置を、硬質ロールに対する第1弾性ロール2の圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの反回転方向に向けて偏倚することにより、第2弾性ロール3AからのベクトルVRと、ワークWからのベクトルVWの成す角度θ1が小さくなることがわかる。その結果、接触点AにあるワークWの先端は、第2弾性ロール3Aと硬質ロール1との間に挟まれやすく、スムーズな成型が可能となる。
又、ワークWの先端が接触点Aから第2弾性ロール3Aの外周に沿って移動し、再び硬質ロール1の外周に接触する時のずれ角度θ2が小さくなることもわかる。その結果、スリップやワークの変形が防止される。
【0018】
一方、第2弾性ロール3Aの圧接位置を硬質ロール1の反回転方向に向けて偏倚する場合は、第1弾性ロール2の圧接による硬質ロールの上方向の撓みを受け止める力が偏るおそれがあるが、それを防止するために、この発明においては第1弾性ロール2の圧接位置の半円周箇所から硬質ロール1の回転方向に向けて偏倚させた位置に圧接される第3弾性ロール3Bを設けている。
【0019】
尚、図6に示すように第2弾性ロール3Aの直径を小さくした場合は、ベクトル角度θ1、ズレ角度θ2共大きくなるので、第2弾性ロールの直径は大きい方が望ましい。
【0020】
【発明の効果】
以上の構成よりなるこの発明によれば、第2弾性ロールの他に第3弾性ロールを設けて硬質ロールを三点支持するので、第2弾性ロールを第1弾性ロールに近づけることが可能となる。その結果、硬質ロールとの圧接により曲げられたワークの先端が第2弾性ロールと接触する際のズレ角度とベクトル角度を可及的に小さくすることが可能となるので、硬質ロールを小径化した際の撓みを防止しつつ、ワークの第2弾性ロールの通過の円滑さを確保することができ、撓みの問題から従来成型が困難であった、小径でしかも長尺の円筒の成型の途が開かれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の円筒成型方法の実施例の成型前の状態を示す側面図。
【図2】この発明の円筒成型方法の実施例の成型過程を示す側面図。
【図3】同上、異なる実施例の要部の側面図。
【図4】同上、正面図。
【図5】この発明の円筒成型方法の作用を示す側面図。
【図6】この発明の円筒成型方法の作用を示す側面図。
【図7】従来の円筒成型方法の作用を示す側面図。
【符号の説明】
1    硬質ロール
2    第1弾性ロール
3A   第2弾性ロール
3B   第3弾性ロール

Claims (3)

  1. 回転自在の硬質ロールと、この硬質ロールに対して相対向して回転する一対の第1弾性ロール及び第2弾性ロールを用意し、これらの弾性ロールはこの硬質ロールを挟んで配すると共に硬質ロールに対し圧接され、第1弾性ロールと硬質ロール間に被成型材の一端を挿入した後、両弾性ロールを硬質ロールと相対向する方向に回転させる円筒成型方法において、硬質ロールに対する第2弾性ロールの圧接位置を、硬質ロールに対する第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの反回転方向に向けて偏倚させると共に、上記第1弾性ロールの圧接位置の半円周箇所から硬質ロールの回転方向に向けて偏倚させた位置に第3弾性ロールを圧接することを特徴とする円筒成型方法。
  2. 一本の硬質ロールに対し小幅に設定した複数本の第2弾性ロール及び第3弾性ロールを用意し、これらを互い違いに配した請求項1記載の円筒成型方法。
  3. 第1弾性ロールに回転のための駆動力を与えると共に、従動ロールを介して第2弾性ロールにこの駆動力を伝達する請求項1又は2記載の円筒成型方法。
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