JP2004129795A - 補助機能を備えたシート - Google Patents

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河合 範昌
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Abstract

【課題】シートクッションが着座位置の近くまで回動した時点から着座荷重を受け持つための緩衝機構を、シートクッション下部の僅かなスペースに配置できるようにする。
【解決手段】シートクッション12がスプリング力により、ほぼ水平な着座位置から後方部が押し上げられた前傾位置に回動する形式の補助機能を備えたシートであって、前記シートクッション12下部に緩衝機構30が配置されている。この緩衝機構30は、ベース部材10側に固定されたシリンダ30aと、このシリンダ30aの一端部から突出する方向の弾発力を常に受けているピストン軸30bと、このピストン軸30bの端部側に配置された動力伝達部材32とによって構成されている。前記シートクッション12が着座荷重を受けて着座位置の近くまで回動した時点から、このシートクッション12の回動動作により、前記動力伝達部材32を通じて前記ピストン軸30bを弾発力に抗して前記シリンダ30a内に押し込むように設定されている。
【選択図】  図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として車両用のシートに関し、特に自力による着座や起立が困難な人を対象とした補助機能を備えたシートに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のシートとしては、例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、シートクッションの前端部がシートフレームに対して回動可能に支持されている。そして、シートクッションは、その後方部が持ち上がる回動方向へ油圧式ダンパーの付勢力を受けており、それによって着座動作や起立動作を補助するようになっている。また、着座荷重によってシートクッションの後方部が急激に下降したり、起立時にシートクッションの後方部が急速に持ち上がるのを阻止するための補助ダンパーが設けられている。
【0003】
【特許文献1】
実用新案登録第3070372号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示された技術では、シートクッション下部に、このシートクッションを押し上げるための油圧式ダンパーと、補助ダンパーとがそれぞれ設けられている。そして、これらのダンパーは、それぞれのシリンダ端部とピストンロッド端部とが、シートフレーム側とシートクッション側とに対して回動可能に結合され、シートクッションの回動に対応できるようになっている。このような構成のダンパーを設置するには、それなりの大きなスペースが必要となる。このため、車両用シートのようにシートクッション下部におけるスペースの制約が厳しい場合には、補助ダンパーの類を追加することが困難である。
【0005】
本発明は前記課題を解決しようとするもので、その目的は、シートクッションが着座位置の近くまで回動した時点から着座荷重を受け持つための緩衝機構を、例えばシートクッション下部の僅かなスペースに配置可能にすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するためのもので、請求項1に記載の発明は、シートクッションの前方部がベース部材側に対して回動可能に支持されているとともに、このシートクッションがスプリング力により、ほぼ水平な着座位置から後方部が押し上げられた前傾位置に回動する形式の補助機能を備えたシートであって、前記シートクッション下部に緩衝機構が配置されている。この緩衝機構は、前記ベース部材側に固定されたシリンダと、このシリンダの一端部から突出する方向の弾発力を常に受けているピストン軸と、このピストン軸の端部側に配置された動力伝達部材とによって構成されている。前記シートクッションが着座荷重を受けて着座位置の近くまで回動した時点から、このシートクッションの回動動作により、前記動力伝達部材を通じて前記ピストン軸を弾発力に抗して前記シリンダ内に押し込むように設定されている。
【0007】
この構成によれば、スプリング力に基づいてシートクッションに作用している押し上げ力が、着座位置の近くで小さくなっても、その時点からは緩衝機構におけるピストン軸の反力によって着座荷重を受け持つことができる。これにより、起立動作の補助力を必要以上に増大させることなく、着座位置近くからの着座荷重に対する減衰力を高め、シートクッションの急激な沈み込みを防止することができる。
そして、緩衝機構は、そのシリンダがベース部材側に固定され、可動部材であるピストン軸とシートクッションとの間は動力伝達部材によって相互の作動力を伝達している。このため、シートクッションの回動に対応できるようにシリンダの端部を回転軸で支持するといった構造を必要とせず、緩衝機構の設置スペースをコンパクトに収めることが可能となる。したがって、緩衝機構をシートクッション下部の僅かなスペースに配置することができ、特にシートクッション下部のスペース上の制約が厳しい車両用シートにおいて有利である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された補助機能を備えたシートであって、緩衝機構の動力伝達部材は、シートクッションの下面と、ピストン軸の端面とに対して個別に接触するアーム端部をそれぞれ備えている。これらの両アーム端部のほぼ中間部がベース部材側に回動可能に支持されている。前記動力伝達部材は、前記シートクッションが着座荷重を受けて着座位置の近くまで回動した時点から、前記アーム端部の一方がシートクッションの下面に接触して回動し始め、前記アーム端部の他方によって前記緩衝機構のピストン軸をシリンダ内に押し込むように構成されている。
これにより、動力伝達部材におけるアーム端部の一方がシートクッションの下面に接触するタイミングを任意の設計的な変更で調整すれば、シートクッションからの着座荷重を緩衝機構によって受け持つタイミングを容易に設定できる。また動力伝達部材の構成については、一般的なリンク機構などと比較して簡単、かつコンパクトとなり、緩衝機構のためのスペース確保がより容易となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載された補助機能を備えたシートであって、緩衝機構のピストン軸に作用している弾発力は、このピストン軸をシリンダ内から突出させる力よりも該ピストン軸がシリンダ内に押し込まれるときの反力が大きくなる特性に設定されている。
これにより、緩衝機構がシートクッションを前傾位置に向けて回動させる押し上げ力にはほとんど関与せず、着座者の起立動作を補助するための力が必要以上に増大するのを確実に避けることが可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1はアシスト機能(補助機能)付き車両用シートの着座状態を表した側面図である。図2は同じ車両用シートの起立状態を表した側面図である。これらの図面で示されているシートのシートクッション12は、車体フロアF上に構成されたボックス部F1のほぼ水平な上面に対し、ベース部材10を介して設けられている。また、シートのシートバック16は、車体側壁Pの車室内側に設けられている。
【0011】
図3は図1の一部を拡大して表した側面図、図4は図3の平面図である。図3から明らかなように、ベース部材10はボックス部F1の上面に固定されているとともに、シートクッション12の前方部においては、そのクッションフレーム14とベース部材10とがヒンジ20によって結合されている。これにより、シートクッション12がベース部材10に対して図1および図2で示す状態の間を往復回動することができる。
【0012】
つまり、シートクッション12は、図1で示すように着座荷重を受けている状態では、ほぼ水平な着座位置に保持されている。そして、着座荷重が減少もしくはゼロになれば、つぎに説明するスプリング機構24のスプリング力により、シートクッション12の後方部が押し上げられて、図2で示す前傾位置に保持される。なお、シートクッション12の後方部から両サイドにわたる範囲には、クッションフレーム14とベース部材10との間を被うためのブーツ22が設けられている。
【0013】
図3,4で示すようにスプリング機構24は、ベース部材10とクッションフレーム14との間の空間において、シートクッション12の前後向きに配置されている。スプリング機構24は、シリンダ24aに対してピストン(図示外)がピストン軸24cと共に軸線に沿って移動するように組み付けられた構造である。また、このスプリング機構24は、例えば“ガススプリング”と称されている形式であって、シリンダ24a内のピストン背面側にガスが封入されている。したがってスプリング機構24は、ガス圧によってピストン軸24cをシリンダ24aの一端部(シートクッション12の後方側端部)から常に突出させる方向のスプリング力を発揮する。
【0014】
シリンダ24aは、ピストン軸24cが突出している端部と反対側の端部において結合部24bを備え、ピストン軸24cは、その先端部に結合部24dを備えている。シリンダ24aの結合部24bは、ベース部材10の上面に固定されたブラケット10aに連結軸26によって結合されている。一方、ピストン軸24cの結合部24dは、クッションフレーム14の後方寄り下面に固定されたブラケット14aに連結軸28によって結合されている。
【0015】
これにより、スプリング機構24のスプリング力には、シートクッション12の後方部を押し上げる方向の分力が生じ、着座荷重を受けていないときのシートクッション12は、図2で示す前傾位置に回動する。なお、スプリング機構24は、“ガススプリング”などの特定形式に限る理由はなく、要はシートクッション12の後方部を押し上げる方向のスプリング力を発揮する構造のものであればよい。
【0016】
ベース部材10とクッションフレーム14との間の空間には、スプリング機構24と隣接して緩衝機構30が、シートクッション12の前後向きに配置されている。緩衝機構30の形式についても、スプリング機構24とほとんど同様に、そのシリンダ30aに対してピストン(図示外)がピストン軸30bと共に軸線に沿って移動するように組み付けられている。シリンダ30aは、ベース部材10の上面に固定された支持板10bに対し、ピストン軸30bをシートクッション12の前方側に向け、かつ、ほぼ水平な姿勢で固定されている。
【0017】
シリンダ30a内のピストン背面側には、ガスが封入され、あるいはその他の弾性体が組み込まれている。したがって緩衝機構30は、そのピストン軸30bをシリンダ30a内から常に突出させる方向の弾発力を発揮する。つまり、緩衝機構30のピストン軸30bは、シリンダ30aに対してほぼ水平な姿勢で出入りし、常時はシートクッション12の前方側に向けて突出する方向の弾発力を受けている。また、この弾発力は、ピストン軸30bを突出させる力が弱く、ピストン軸30bがシリンダ30a内に押し込まれるときの反力(減衰力)が強いといった特性を有する。この特性は、圧縮時と伸長時との履歴が異なるヒステリシス特性の顕著な弾性体を選定することで設定できる。
【0018】
緩衝機構30におけるピストン軸30bの先端側には、動力伝達部材32が配置されている。動力伝達部材32は、ほぼ直角の二方向に延びた部分の先端に位置するアーム端部32a,32bを備え、これらのほぼ中間部が支持板10bに対して回転軸34によって支持されている。両アーム端部32a,32bは、それぞれ円弧状に形成された面を有する。一方のアーム端部32aの円弧面は、シートクッション12のクッションフレーム14下面に固定された接触ブロック14bに接することが可能であり、他方のアーム端部32bの円弧面はピストン軸30bの端面に接することが可能である。シートクッション12が図1,3で示す着座位置にあるとき、両アーム端部32a,32bは接触ブロック14bおよびピストン軸30bの端面に接している。なお、このときのピストン軸30bはシリンダ30a内に最も押し込まれている。
【0019】
つづいて、シートのアシスト機能について説明する。
図1のマネキン40で示されているように、シートに着座者がいる状態では、シートクッション12は着座加重を受けて着座位置に保持されている。着座者が図2のマネキン40で示す姿勢に起立しようとすると、スプリング機構24におけるスプリング力の分力によってシートクッション12の後方部が押し上げられ、着座者の起立動作を補助する。そして、シートクッション12はスプリング機構24によって図2の前傾位置に保持される。
【0020】
シートに着座する場合は、シートクッション12が着座荷重を受けて前傾位置から着座位置に向けてスプリング機構24のスプリング力に抗して回動する。つまり、このときのスプリング力は着座荷重の減衰力として機能し、着座動作を補助する。そして、シートクッション12は着座荷重によって着座位置に保持される。
【0021】
シートクッション12が着座荷重を受けて回動する際、着座位置に近づくに連れて、着座荷重の減衰力として作用しているスプリング機構24のスプリング分力が低下する。これは、シートクッション12下方の限られた空間にスプリング機構24が配置され、シートクッション12が着座位置にきたときのスプリング機構24の軸線が水平に近づくためである。この結果、シートクッション12が着座位置に近い回動位置から急激に沈み込み、着座時のフィーリングがわるくなる。
【0022】
この対策としては、スプリング機構24のスプリング力を高めることが考えられるが、そうするとシートクッション12の後方部を押し上げる力が必要以上に大きくなる。この押し上げ力が過大になると、着座者の体重が軽い場合、あるいはシートクッション12の前側寄りに座った場合に、正規の状態に着座できず、また車両の上下振動によってシートクッション12の後方部が浮き上がる。
【0023】
この実施の形態においては、シートクッション12が着座荷重を受けて図5の実線で示す位置に回動してきたとき、クッションフレーム14の接触ブロック14bが動力伝達部材32のアーム端部32bに接触する。この後は、シートクッション12が着座位置まで回動することに連動して、動力伝達部材32が回転軸34の軸線回りに図面で反時計回り方向へ回動する。この結果、動力伝達部材32のアーム端部32bにより、緩衝機構30のピストン軸30bがシリンダ30a内に押し込まれ、その反力によって着座荷重を受け持つ。したがって、シートクッション12が図5の実線で示す位置から着座位置まで回動する間における着座荷重に対する減衰力が大きくなり、シートクッション12の急激な沈み込みを防止できる。
【0024】
シートクッション12が着座位置から前傾位置に向けて回動するときは、図5の実線で示す位置において、緩衝機構30のピストン軸30bが押し出し方向に関してフルストロークとなる。そこで、シートクッション12が図5の実線位置を超えて回動すると、図5の仮想線で示すように動力伝達部材32のアーム端部32aから接触ブロック14bが離れる。このため、シートクッション12の後方部を押し上げる力が、緩衝機構30を用いることによって必要以上に大きくなることが防止される。
【0025】
緩衝機構30の配置(レイアウト)については、そのシリンダ30aが車体のボックス部F1側に設けられたベース部材10の支持板10bに固定されており、かつピストン軸30bの作動軸線がほぼ水平になっている。また、シートクッション12側とピストン軸30bとの間は、リンク機構などの大きな作動スペースを要するものを避け、接触カムのような機能を果たす動力伝達部材32によって相互間の動力伝達を行っている。これにより、緩衝機構30をシートクッション12下部の僅かなスペースに配置することが可能となる。
【0026】
緩衝機構30がシートクッション12からの着座荷重を受け持つタイミングについては、動力伝達部材32のアーム端部32aに接触ブロック14bが接触するタイミング次第で任意に設定できる。この接触のタイミングは、動力伝達部材32の形状、あるいは接触ブロック14bの厚みといった設計事項を変更することで調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アシスト機能付き車両用シートの着座状態を表した側面図
【図2】アシスト機能付き車両用シートの起立状態を表した側面図
【図3】図1の一部を拡大して表した側面図
【図4】図3の平面図
【図5】シートクッションが回動途中にある状態を図3と対応させて表した側面図
【符号の説明】
10  ベース部材
12  シートクッション
24  スプリング機構
30  緩衝機構
30a      シリンダ
30b      ピストン軸
32  動力伝達部材
32a      アーム端部
32b      アーム端部

Claims (3)

  1. シートクッションの前方部がベース部材側に対して回動可能に支持されているとともに、このシートクッションがスプリング力により、ほぼ水平な着座位置から後方部が押し上げられた前傾位置に回動する形式の補助機能を備えたシートであって、
    前記シートクッション下部に緩衝機構が配置され、この緩衝機構は、前記ベース部材側に固定されたシリンダと、このシリンダの一端部から突出する方向の弾発力を常に受けているピストン軸と、このピストン軸の端部側に配置された動力伝達部材とによって構成され、前記シートクッションが着座荷重を受けて着座位置の近くまで回動した時点から、このシートクッションの回動動作により、前記動力伝達部材を通じて前記ピストン軸を弾発力に抗して前記シリンダ内に押し込むように設定されている補助機能を備えたシート。
  2. 請求項1に記載された補助機能を備えたシートであって、
    緩衝機構の動力伝達部材は、シートクッションの下面と、ピストン軸の端面とに対して個別に接触するアーム端部をそれぞれ備え、これらの両アーム端部のほぼ中間部がベース部材側に回動可能に支持され、前記動力伝達部材は、前記シートクッションが着座荷重を受けて着座位置の近くまで回動した時点から、前記アーム端部の一方がシートクッションの下面に接触して回動し始め、前記アーム端部の他方によって前記緩衝機構のピストン軸をシリンダ内に押し込むように構成されている補助機能を備えたシート。
  3. 請求項1または2に記載された補助機能を備えたシートであって、
    緩衝機構のピストン軸に作用している弾発力は、このピストン軸をシリンダ内から突出させる力よりも該ピストン軸がシリンダ内に押し込まれるときの反力が大きくなる特性に設定されている補助機能を備えたシート。
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