JP2004127711A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】表・裏面に貴金属の皮膜を有する複数の金属セパレータを含み、隣接する金属セパレータ間に耐食性に優れた連結流路を有する燃料電池を提供する。
【解決手段】両面に燃料電極膜6と酸化剤電極膜8を個別に積層した高分子電解質膜4の両側に一対の金属セパレータ10を配置した単セル2を複数備え、係る金属セパレータ10は、表・裏面に貴金属の皮膜m被覆した金属薄板で、上記表面11にジグザグ状の凹溝からなる流路12とこれと裏腹の位置の裏面11bに凸条19とが形成され、各単セル2の隣接する金属セパレータ10,10において平面視で同じ位置に互いに接近する筒部20を形成し、係る一対の筒部22の先端部24をそれぞれ外向きに折り曲げると共に、係る一対の先端部24の対向する表面および裏面間にシール材28を挟持することにより、一対の筒部22の内側に連結流路20が形成されている、燃料電池1。
【選択図】 図2
【解決手段】両面に燃料電極膜6と酸化剤電極膜8を個別に積層した高分子電解質膜4の両側に一対の金属セパレータ10を配置した単セル2を複数備え、係る金属セパレータ10は、表・裏面に貴金属の皮膜m被覆した金属薄板で、上記表面11にジグザグ状の凹溝からなる流路12とこれと裏腹の位置の裏面11bに凸条19とが形成され、各単セル2の隣接する金属セパレータ10,10において平面視で同じ位置に互いに接近する筒部20を形成し、係る一対の筒部22の先端部24をそれぞれ外向きに折り曲げると共に、係る一対の先端部24の対向する表面および裏面間にシール材28を挟持することにより、一対の筒部22の内側に連結流路20が形成されている、燃料電池1。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の金属セパレータを含む燃料電池に関する。尚、本明細書において、燃料電池とは固体高分子電解質形燃料電池を指す。
【0002】
【従来の技術】
一般に、燃料電池は、高分子電解質膜の両面に白金からなる触媒層をそれぞれ固定し、その両側に複数の凹溝からなる流路を有するカーボン製の燃料電極と酸化剤電極とが個別に積層され、これらの外側に平らなカーボン板からなるセパレータをそれぞれ固定した単セルを複数厚み保意向に積層して形成されている。
近年、小型および軽量化の要請に応じて、図8(A)に示すような燃料電池60が提案されている。係る燃料電池60は、複数の単セル61を積み上げたもので、各単セル61は、高分子電解質膜62の両面に燃料電極膜(アノード)63および酸化剤電極膜(カソード)64を個別に積層すると共に、これらの外側に波板状の金属セパレータ65,66を配置している。
【0003】
金属セパレータ65,66は、図8(A)に示すように、高分子電解質膜62側に複数の流路67,68を有し、燃料ガスまたは酸化性ガスが流される。
また、隣接する金属セパレータ65,66間には、図8(B)に示すように、それらの流路67,68の端部に設けた浅溝部67a,68a間を連通する連結流路72が形成され、上記燃料ガスまたは酸化性ガスを隣接する単セル61における同じ流路67,68に移送可能としている。上記連結流路72は、セパレータ65,66の浅溝部67a,68aから延びた円筒部69,70を同心で嵌合することにより形成されている。尚、浅溝部67a,68aには、異なるガスとの接触を阻止する図示しない隔壁が適宜配置される。
【0004】
【特許文献1】
上記金属セパレータ65,66は、例えばSUS304などのステンレス鋼の薄板をプレス加工することにより形成されるが、燃料電池60の通電(発電)状態では、約80℃の硫酸雰囲気に曝されるため、高い耐食性が求められる。このため、上記薄板の表面および裏面には、Auなどの貴金属の被膜を被覆することも検討されている(特開2001−68129号公報参照)。
ところで、金属セパレータ65,66にAuなどの貴金属の被膜74を被覆した場合、図8(C)に拡大して示すように、上側の円筒部70は、連結流路72に対して被膜74により被覆されているが、下側の円筒部69の端面は、連結流路72に露出している。このため、係る端面は、加湿された前記ガスから凝集した水分や反応によって得られた水分、あるいは冷却水による腐食を受ける、という問題があった。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
本発明は、以上に説明した従来の技術での問題点を解決し、表・裏面に貴金属の皮膜を有する複数の金属セパレータを含み、隣接する一対の金属セパレータ間に耐食性に優れた連結流路を有する燃料電池を提供する、ことを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、表・裏面に貴金属の皮膜を有し且つ隣接する一対の金属セパレータ間に形成する連結流路の内周面を、上記皮膜によって覆うことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の燃料電池(請求項1)は、両面に燃料電極膜と酸化剤電極膜とを個別に積層した高分子電解質膜の両側に一対の金属セパレータを配置した単セルを複数備え、上記金属セパレータは、表面および裏面に貴金属の皮膜を被覆した金属薄板からなり、上記表面にジグザグ状または複数の平行な凹溝からなる流路を有し且つ係る流路と裏腹の位置における裏面に凸条が形成され、上記複数の単セルにおける隣接する一対の金属セパレータにおいて、平面視で同じ位置に互いに接近する筒部をそれぞれ形成し、係る一対の筒部の先端部の少なくとも一方を外向きに折り曲げると共に、係る一対の先端部の対向する表面および裏面を直に接触させ、あるいは係る一対の先端部の対向する表面および裏面間にシール材を挟持することにより、上記一対の筒部の内側に連結流路が形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、複数の単セル間において、隣接する一対の金属セパレータにおける流路およびこれらを連通する連結流路の内周面を貴金属の被膜により、確実に覆うことができる。この結果、燃料ガスや酸化性ガスを、一方の金属セパレータの流路から上記連結流路を経て他方の金属セパレータの流路に移送しても、上記ガスは貴金属の被膜に覆われた流路を通過するため、これらの金属セパレータの腐食を確実に防ぎ、安定した発電状態を得ることが可能となる。
尚、上記流路には、ジグザグ状の形態のほか、対向する一対の辺に沿った一対のヘッダ部間に平行に配置した複数の凹溝からなる形態も含まれる。また、上記「外向き」は、一対の筒部の端面を含む先端部を連結流路の軸方向と直角に向ける形態の他、各筒部の先端付近を断面ほぼU字形に曲げ且つこれらを互いに嵌合する形態や、各筒部の先端付近を同じ斜め方向に沿って折り曲げた形態が含まれる。更に、これら筒部の加工には、バーリング加工や絞り加工などが用いられる。加えて、金属セパレータや先端部の前記表面および裏面は、相対的な呼称である。
【0008】
また、本発明には、前記筒部は、前記金属セパレータにおける凹溝の端部の浅溝部、浅凹部、または隔壁により仕切られた区画部に形成されている、燃料電池(請求項2)も含まれる。
これによれば、燃料電池を形成する複数の単セル間において、隣接する一対の金属セパレータにおける流路の背面同士を接触させたコンパクトな寸法にできると共に、上記各金属セパレータの流路およびこれらを連通する連結流路における腐食を確実に防ぐことができる。
尚、上記浅溝部は前記流路の端部に位置し、上記浅凹部は前記流路と離隔して位置し、上記区画部は凹溝の一部を隔壁により区画された部分を指す。
【0009】
更に、本発明には、前記連結流路は、隣接する各単セルにおける前記燃料電極膜と酸化剤電極膜とを積層した高分子電解質膜の外側に位置している、燃料電池(請求項3)も含まれる。
これによれば、連結流路は、各単セルの高分子電解質膜などの外側に位置し且つそれらの厚みに相当した軸方向のサイズとなるため、複数の単セルの厚み方向におけるサイズをコンパクトにした燃料電池とすることできる。
【0010】
加えて、本発明には、前記金属セパレータにおける貴金属の皮膜は、厚みが1〜40nmのAu、Ag、Pt、Pd、Rh、またはIr、あるいはこれらの1種以上を含む合金からなる、燃料電池(請求項4)も含まれる。
これによれば、予め貴金属を表・裏面に被覆した前記一対の金属セパレータの流路の端部や係る端部の浅溝部などから、一対の筒部同士を突出させた際にも、それらの表面および裏面の全面も極薄くして上記皮膜により覆うことができる。尚、上記皮膜の厚みが1nm未満では、耐食性が不十分になり、一方、40nmを越えるとコスト高になるので、上記範囲としたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1(A)は、本発明の燃料電池に用いる金属セパレータ10を示す平面図、図1(B),(C)は、(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図である。金属セパレータ10は、厚みが約0.2mmのSUS304などのステンレス鋼の薄板からなり、図1(A)に示すように、その表面11には、複数のUターン部分13を有するジグザグ状の流路12が形成されている。互いに平行な流路12,12間には、半島状の凸条14が位置している。係る流路12の左上隅と右下隅との端部には浅溝部15が形成され、それらの中央付近には、後述する連結流路20の上端である開口16が位置している。
【0012】
また、図1(A)に示すように、表面11の左下隅と右上隅の平坦部11aには、独立した浅凹部17と、その中心部に開口する別の連結流路の上端の開口18とが形成されている。上記浅凹部17は、前記浅溝部15と同じ深さである。
図1(B),(C)に示すように、金属セパレータ10の流路12は、断面ほぼ台形を呈する凹溝で、金属セパレータ10の裏面11bには、係る流路12の裏側に突出するジグザグ状の凸条19が突出している。
更に、図1(C)に示すように、開口16,18の裏面11b側には、後述する連結流路を形成する筒部22などが突出している。前記開口16,16間のジグザグ状の流路12には例えば燃料ガスが流れ、浅凹部17の開口18には金属セパレータ10の厚み方向に沿って酸化剤ガスが流れる。
以上のような金属セパレータ10は、その表面11および裏面11bの全面に、後述するAu(貴金属)の皮膜が1〜40nmの厚みで予め被覆された前記ステンレス鋼板を、プレス成形などの塑性加工によって形成したものである。
【0013】
図2(A)乃至(C)は、前記金属セパレータ10を用いた燃料電池1,1aの断面を示す。
燃料電池1は、図2(A),(B)に示すように、複数の単セル2を積層して形成され、各単セル2は、高分子電解質膜4と、その両面に個別に配置した燃料電極膜(アノード)6および酸化剤電極膜(カソード)8と、これらの上下(両側)に対称に積層した金属セパレータ10,10とを備えている。尚、図2(A)は前記図1(B)の、図2(B)は図1(C)の位置での金属セパレータ10を含む断面を示す。
【0014】
各金属セパレータ10は、その流路12を燃料電極膜6または酸化剤電極膜8側に位置させると共に、互いの流路12を平行とし且つ裏面(背面)11b同士で面接触している。図2(B)の左右両側に示すように、互いに積層された単セル2,2の隣接する金属セパレータ10,10の浅溝部15と浅凹部17との間には、後述する連絡流路20が形成されている。
金属セパレータ10は、図2(A)〜(C)に示すように、前記ステンレス鋼の薄板10aの表面11および裏面11bに、後述するAu(貴金属)などの皮膜mが厚み1〜40nmにして予め被覆され、プレス加工などにより、前記流路12、半島部14、浅溝部15、浅凹部17、および凸条19が成形されている。
【0015】
係る燃料電池1の作用について、以下に説明する。
各単セル2の上側に位置する金属セパレータ10の流路12には、図2(B)中の実線の矢印で示す燃料ガスの一部が、一方の浅溝部15の開口16から流され且つ他方の浅溝部15の開口16から図示しない排出孔に排出される。
負極活物質である燃料ガスは、流路12内を流通する間に隣接する高分子電解質膜4の燃料電極膜(アノード)6側の触媒電極と接触し、当該燃料ガスに含まれている水素が水素イオンと電子とに分かれる。係る水素イオンは、高分子電解質膜4中の電解質(液)を貫通し、上記電子は、図示しない外部回路を経て、それぞれ酸化剤電極膜(カソード)8側の触媒電極へ送られ、係る電子が移動する電流による発電が生じる。
尚、図2(B)中の実線の矢印で示すように、上記燃料ガスの一部は、高分子電解質膜4などを貫通し且つ内周面が絶縁された絶縁孔hを介して各単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の浅凹部17に送られ、後述する連結流路20を経て、下層の単セル2の上側に位置する金属セパレータ10の浅溝部15からその流路12に流れる。
【0016】
また、各単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の流路12には、図2(B)中の一点鎖線の矢印で示す正極活物質である酸化剤ガスの一部が、上記と同様に流され、当該流路12内を流通する間に、隣接する高分子電解質膜4の正極側の酸化剤電極膜(カソード)8の触媒電極と接触し、酸素と水素イオンと電子とが反応して水を生成する。
尚、図2(B)中の一点鎖線の矢印で示すように、上記酸化剤ガスは、各単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の浅溝部15から後述する連結流路20を介して、隣接する下層の単セル2の上側に位置する金属セパレータ10の浅凹部17に流され、係る単セル2の高分子電解質膜4などを貫通する絶縁孔hを介して、当該単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の流路12に流れる。
【0017】
図2(C)は、変形形態の燃料電池1aの断面を示し、その複数の単セル2aは、両面に燃料電極膜6および酸化剤電極膜8を配置した高分子電解質膜4の上下両側に、平面視において流路12,12が互いに直交するように金属セパレータ10,10を配置している。図2(C)の左右に示すように、単セル2a,2aの隣接する金属セパレータ10,10の浅溝15と浅凹部17との間には、連結流路20が形成されている。
尚、図2(C)中の各単セル2aにおいて、上側の金属セパレータ10は、前記図1(A)における左端の流路12、浅溝部15、および浅凹部17に沿った断面を示し、下側の金属セパレータ10は、前記図1(C)の位置での断面を示す。
【0018】
図2(C)中の実線の矢印で示すように、前記燃料ガスの一部は、各単セル2aの上側に位置する金属セパレータ10の流路12に流され、残りの燃料ガスは、高分子電解質膜4などを貫通する絶縁孔hを介して、各単セル2aの下側に位置する金属セパレータ10の浅凹部17に送られ且つ次述する連結流路20を経て当該単セル2aよりも下層の単セル2aの上側に位置する金属セパレータ10の流路12に流される。
また、図2(C)中の一点鎖線の矢印で示すように、前記酸化剤ガスは、各単セル2aの下側に位置する金属セパレータ10の浅溝部15を経てその流路12に流される。残りの酸化剤ガスは、単セル2aの高分子電解質膜4などを貫通する絶縁孔hを介して、当該単セル2aの下側に位置する金属セパレータ10の流路12に流される。
【0019】
前記図2(B),(C)中のD部分を図2(D)に拡大して示す。
図2(D)に示すように、燃料電池1,1aの隣接する金属セパレータ10同士の前記浅溝部15と浅凹部17との中央付近には、バーリング加工(穴フランジ加工)によって穴明けされた連絡流路20と、その周囲に円筒形の筒部22とが形成されている。各筒部22の先端部24は、浅溝部15または浅凹部17とほぼ平行になるよう外向きに折り曲げられると共に、これらの間には、Siゴムを含む合成ゴムなどからなるリング形のシール材28が挟持されている。
【0020】
図2(E)で更に拡大して示すように、シール材28を挟んだ上下の筒部22の先端部24,24は、その表面と裏面にAuなどの貴金属の皮膜mが前記厚みで被覆され、係る皮膜mのない端面を連結流路20と反対の外向きにしている。
これにより、浅溝部15と浅凹部17との間の連結流路20を例えば燃料ガスが流動し、あるいは、浅凹部17と浅溝部15との間の連結流路20を例えば酸化剤ガスが流動しても、これらのガスは内周面が皮膜mに覆われた上記連結流路20を流れ、且つシール材28の内側29を通過する。
この結果、筒部22を含む金属セパレータ10は、上記各ガスに直に曝されないため、高い耐食性を発揮することが可能となる。従って、上記連結流路20を含む燃料電池1,1aは、優れた耐久性を発揮することができる。
【0021】
ここで、前記連結流路20の形成方法について、図3,4により説明する。
尚、図3乃至図5において、金属セパレータ10や金属薄板10aにおける上側の面を表面と称し、下側の面を裏面と称する。
図3(A),(B)に示すように、金属セパレータ10となるSUS304などのステンレス鋼からなる金属薄板10aの表面および裏面には、予めメッキまたは蒸着により、厚みが1〜40nmの貴金属の被膜mが全面に被覆されている。係る金属薄板10aをプレスすることで、前記流路12、半島部14、浅溝部15、浅凹部17、および凸条19が成形された金属セパレータ10が成形される。次に、金属セパレータ10の浅溝部15(浅凹部17)の中央付近に小径の下穴を穿孔した後、係る下穴内に同軸心で図示しないポンチを圧入するバーリング加工を行う。その結果、図3(C)に示すように、浅溝部15(浅凹部17)の中央付近には、厚み方向に突出した円筒形の筒部22が形成される。尚、上記下孔を穿孔した後にポンチを圧入すると、上記筒部22の先端を平坦にし易くなる。
更に、上記筒部22の先端寄りの部分に、ほぼ円錐形で且つ大径のポンチ(図示せず)を下側から押圧する。その結果、図3(D)に示すように、上記筒部22の先端部24は、浅溝部15等とほぼ平行になるよう外向きに折り曲げられる。
【0022】
そして、図4(A)に示すように、隣接する金属セパレータ10,10の浅溝部15と浅凹部17とから延びた筒部22,22を同軸心にして先端部24,24の表面および裏面を面接触し、これらの間に例えば抵抗溶接などによるリング状の溶着部26を形成して、内側を貫通する連結流路20を密閉する。
あるいは、図4(B)に示すように、互いに接近する筒部22,22を同軸心にして先端部24,24の間に、リング状のシール材28を挟み込み且つその内側29を連結流路20の中央付近に位置させる。
従って、前記各ガスの何れか一方は、隣接する金属セパレータ10,10の間を、前記皮膜mに覆われた連結流路20、あるいは係る皮膜mとシール材28とに囲まれた連結流路20を介して流動するため、前記金属セパレータ10が腐食する事態を確実に防ぐことができる。
【0023】
図5(A)は、異なる形態の連結流路20aを示す。
図5(A)に示すように、上側の金属セパレータ10の浅溝部15(浅凹部17)から下向きに延びた小径の筒部22aの途中に、外向きに断面ほぼU字形の曲げ部23を形成することにより、その先端部24aを上向きに形成している。
一方、下側の金属セパレータ10の浅凹部17(浅溝部15)から上向きに延びた大径の筒部22の先端寄りに、図5(A)に示すように、上記先端部24aをカシメつつ包囲する断面U字形の曲げ部25を形成し、且つその先端部24bの裏面を上記先端部24aの内側面(裏面)に面接触させている。
図5(A)に示すように、互いに同軸心で径の異なる筒部22aおよび筒部22bを貫通して連結流路20aが形成され、その内周面は前記皮膜mに覆われている。従って、隣接する金属セパレータ10,10間を流れる前記各ガスの何れかに腐食する事態を防止することができる。
【0024】
図5(B)は、更に異なる形態の連結流路20bを示す。
図5(B)に示すように、上側の金属セパレータ10の浅溝部15(浅凹部17)から下向きに延びた筒部22cの途中に、外向きに断面V字形の曲げ部25を形成し、その先端部24cを斜め外向きで且つ上向きに形成している。
一方、下側の金属セパレータ10の浅凹部17(浅溝部15)から円錐形状の筒部22dが斜め外向きで且つ上向きに延び、その先端部24dの裏面を上記先端部24cの外側面(表面)に面接触させている。
図5(B)に示すように、互いに同軸心で形が異なる筒部22cおよび筒部22dを貫通して連結流路20cが形成され、その内周面も前記皮膜mに覆われている。従って、隣接する金属セパレータ10,10間を流れる前記各ガスの何れかに腐食する事態を防止することができる。
【0025】
図6(A)は、異なる形態の金属セパレータ30を示す平面図、図6(B),(C)は、(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図である。
金属セパレータ30は、前記同様の貴金属の皮膜mを表面および裏面の全体に被覆したステンレス鋼板をプレス成形したもので、図6(A)乃至(C)に示すように、平面視が正方形の表面31における各辺に沿った矩形の凹溝32と、その内側で且つ裏面33側に位置するジグザグ状の流路34と、を含む。係る流路34は、Uターン部36を図6(A)の左右両側に交互に有する。
また、図6(A),(B)に示すように、表面31における上記凹溝32の左上隅と左下隅には、例えば燃料ガスを上記流路34に供給し、または流路34から排出させ且つ隣接する金属セパレータ30に流す連結流路20の一端における開口40,41が位置する。係る開口40,41を囲むように、上記凹溝32の左上隅および左下隅には、Siからなる一対ずつの隔壁38が直角に配置されて仕切られ、独立した区画部46,47が形成されている。
【0026】
更に、図6(A),(C)に示すように、表面31における上記凹溝32の右上隅および右下隅には、例えば酸化剤ガスを上記流路34に供給し、または流路34から排出させ且つ隣接する金属セパレータ30に流す連結流路20の一端における開口42,43が位置している。係る開口42,43を囲むように、上記凹溝32の右上隅および右下隅には、上記同様の隔壁39,39が配置され、独立した区画部48,49が形成されている。
図6(B),(C)に示すように、上記開口40〜43の裏面33側には、追って連結流路20の一部となる前記筒部22および先端部24が突出している。
図6(A),(B)に示すように、ジグザグ状の流路34の両端の出隅部には、表面31および凹溝32の角部に跨って、ほぼ正三角形の切除部45とその中央に位置する相似形の貫通孔44とが形成される。係る貫通孔44,44は、上記流路34への燃料ガスの入口および出口を構成する。貫通孔44を含む切除部45は、前記プレス成形の後で切り欠かれ且つ部分的に追加の金メッキが施される。
【0027】
図7(A),(B)は、前記金属セパレータ30を用いた燃料電池50の概略を示し、図7(A)は、前記図6(B)の位置における金属セパレータ30を複数の単セル52の両側に配置した断面を示す。また、図7(B)は、前記図6(C)の位置における金属セパレータ30を複数の単セル52の両側に配置した断面を示す。
即ち、燃料電池40は、図7(A)に示すように、複数の単セル52を積層して形成され、各単セル52は、高分子電解質膜54と、その両面に個別に配置した燃料電極膜(アノード)56および酸化剤電極膜(カソード)58と、これらの上下(両側)に対称に積層した金属セパレータ30,30と、を備えている。
【0028】
各金属セパレータ30は、その流路34を燃料電極膜56または酸化剤電極膜58側に位置させ、互いの流路34を平行とし且つ裏面(背面)33同士で接触している。また、上記高分子電解質膜54、燃料電極膜56、および酸化剤電極膜58は、図7(A)に示すように、これらの両面に配置される金属セパレータ30,30における平面視で前記ジグザグ状の流路34とほぼ同じ面積とされている。即ち、各金属セパレータ30の区画部46〜49を含む凹溝32は、上記高分子電解質膜54などの外側に位置し、厚み方向に隣接する区画部46〜49同士の間に前記シール材28を含む連結流路20が配置されている。
尚、図7(A)に示すように、隣接する金属セパレータ30,30間で対向する一対の凹溝32,32の各コーナーに付近に配置する隔壁38(39)は、係る一対の凹溝32,32の断面全体を塞ぐ単一のSi材が用いられる。
【0029】
図7(A)中の実線の矢印で示すように、例えば燃料ガスは、各単セル52の上側の金属セパレータ30における左側の区画部46から、その一部が左側の貫通孔44を経て流路34をジグザク状に流れた後、右側の貫通孔44から右側の区画部47を経て開口41側に流れ、図7(A)中の一点鎖線の矢印で示すように、開口41を経て下層側に排出される。また、上記燃料ガスの残りは、上記区画部46内の開口40から、前記同様の連結流路20を経て、当該単セル52の下側の金属セパレータ30における凹部46の開口40、および下層に位置する単セル52の上側の金属セパレータ30における区画部46の開口40に流される。この間において、上記流路34を流れた燃料ガスは、隣接する高分子電解質膜54の燃料電極膜56側の触媒電極と接触し、当該燃料ガスに含まれている水素が水素イオンと電子とに分かれる。係る水素イオンは、高分子電解質膜54中の電解質(液)を貫通し、上記電子は、図示しない外部回路を経て、それぞれ酸化剤電極膜58側の触媒電極へ送られ、係る電子の移動による発電が行われる。
【0030】
一方、酸化剤ガスは、図7(B)の示すように、各単セル52の下側の金属セパレータ30における左側の隔壁39の奥側に位置する前記区画部48から、その一部が左側の貫通孔44を経て流路34をジグザク状に流れた後、右側の貫通孔44から右側の区画部49に流れ、そこに位置する前記開口43を経て下層側に排出される。また、上記酸化剤ガスの残りは、上記各区画部48の開口42から前記同様の連結流路20を経て、下側の金属セパレータ30における区画部48の開口42、および下層に位置する単セル52の下側の金属セパレータ30における区画部48の開口42に流される。
この間において、上記流路34を流れた酸化剤ガスは、隣接する高分子電解質膜54の正極側の酸化剤電極膜(カソード)58の触媒電極と接触し、酸素と水素イオンと電子とが反応して水を生成する。
【0031】
以上のような燃料電池50においても、複数の単セル52,52の金属セパレータ30は、全面にAuなどの貴金属の皮膜mが被覆され、且つ隣接する金属セパレータ30,30間を連通する連結流路20の内周面にも上記皮膜mが被覆されているため、高い耐食性を発揮することが可能となる。しかも、連結流路20は、各単セル52の高分子電解質膜54などの外側に位置し且つそれらの厚みに相当した軸方向のサイズとなるため、複数の単セル52,52の厚み方向におけるサイズをコンパクトにすることも可能となる。
従って、上記連結流路20を含む燃料電池50は、コンパクトで優れた耐久性を発揮することができる。
尚、隣接する金属セパレータ30,30間には、前記連結流路20a,20bを配置することも可能である。
【0032】
本発明は、以上に説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記金属セパレータ10,30に形成する流路は、前記ジグザグ状の凹溝からなる流路12,34に限らず、対向する一対の辺に沿った一対のヘッダ部間に平行に配置した複数の凹溝からなる形態も含まれる。
また、前記金属セパレータ10,30は、前記ステンレス鋼板に限らず、Fe基合金、Ni基合金、Fe−Ni系合金、Ti、またはTi基合金からなる金属薄板の表・裏面に前記貴金属の皮膜を被覆したものを用いることも可能である。更に、前記金属セパレータに被覆する貴金属の皮膜には、前記Auに限らず、Ag、Pt、Pd、Rh、またはIr、あるいはこれらの1種以上を含む合金を用いることもできる。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明した本発明の燃料電池(請求項1)によれば、複数の単セル間で隣接する一対の金属セパレータにおける流路およびこれらを連通する連結流路の内周面は、貴金属の被膜によって確実に覆われる。このため、燃料ガスや酸化剤ガスを、一方の金属セパレータの流路から上記連結流路を経て他方の金属セパレータの流路に送るに際し、上記ガスは貴金属の被膜に覆われた流路を通るため、これらの金属セパレータの腐食を確実に防げ、安定した発電状態が得られる。
また、請求項2の燃料電池によれば、燃料電池を形成する複数の単セル間において、隣接する一対の金属セパレータの流路における背面同士を接触させたコンパクトな寸法にできると共に、上記各金属セパレータの流路およびこれらを連通する連結流路における腐食を確実に防ぐことができる。
【0034】
更に、請求項3の燃料電池によれば、連結流路は、各単セルの高分子電解質膜などの外側に位置し且つそれらの厚みに相当した軸方向のサイズとなるため、複数の単セルの厚み方向におけるサイズをコンパクトにした燃料電池となる。
加えて、請求項4の燃料電池によれば、貴金属を全面に被覆した前記金属セパレータの流路の端部の浅溝部などから、一対の筒部同士を突出させた際にも、それらの表面および裏面の全面も極薄くして上記皮膜により覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の燃料電池に用いる金属セパレータの平面図、(B),(C)は(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図。
【図2】(A),(B)は図1の金属セパレータを用いた燃料電池を示す異なる位置における断面図、(C)は上記燃料電池の変形形態を示す断面図、(D)は(B),(C)中の矢印部分Dの拡大図、(E)は(D)中の一点鎖線部分Eの拡大図。
【図3】(A)は金属セパレータとなる金属薄板を示す断面図、(B)は(A)中の一点鎖線部分Bの拡大図、(C),(D)は連結流路の形成工程を示す概略図。
【図4】(A),(B)は本発明の燃料電池における連結流路を示す断面図。
【図5】(A),(B)は異なる形態の連結流路を示す断面図。
【図6】(A)は異なる形態の金属セパレータを示す平面図、(B),(C)は(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図。
【図7】(A),(B)は図6の金属セパレータを用いた異なる形態の燃料電池を示す異なる位置における断面図。
【図8】(A)は従来の燃料電池を示す概略図、(B)は(A)中の一点鎖線部分Bの拡大図、(C)は(B)中の一点鎖線部分Cの拡大図。
【符号の説明】
1,1a,50…………燃料電池
2,2a,52…………単セル
4,54…………………高分子電解質膜
6,56…………………燃料電極膜
8,58…………………酸化剤電極膜
10,30………………金属セパレータ
11,31………………表面
11b,33……………裏面
12,34………………流路
15………………………浅溝部
17………………………浅凹部
20,20a,20b……連結流路
22,22a〜22d…筒部
24,24a〜24d…先端部
28………………………シール材
38,39………………隔壁
46〜49………………区画部
m…………………………貴金属の被膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の金属セパレータを含む燃料電池に関する。尚、本明細書において、燃料電池とは固体高分子電解質形燃料電池を指す。
【0002】
【従来の技術】
一般に、燃料電池は、高分子電解質膜の両面に白金からなる触媒層をそれぞれ固定し、その両側に複数の凹溝からなる流路を有するカーボン製の燃料電極と酸化剤電極とが個別に積層され、これらの外側に平らなカーボン板からなるセパレータをそれぞれ固定した単セルを複数厚み保意向に積層して形成されている。
近年、小型および軽量化の要請に応じて、図8(A)に示すような燃料電池60が提案されている。係る燃料電池60は、複数の単セル61を積み上げたもので、各単セル61は、高分子電解質膜62の両面に燃料電極膜(アノード)63および酸化剤電極膜(カソード)64を個別に積層すると共に、これらの外側に波板状の金属セパレータ65,66を配置している。
【0003】
金属セパレータ65,66は、図8(A)に示すように、高分子電解質膜62側に複数の流路67,68を有し、燃料ガスまたは酸化性ガスが流される。
また、隣接する金属セパレータ65,66間には、図8(B)に示すように、それらの流路67,68の端部に設けた浅溝部67a,68a間を連通する連結流路72が形成され、上記燃料ガスまたは酸化性ガスを隣接する単セル61における同じ流路67,68に移送可能としている。上記連結流路72は、セパレータ65,66の浅溝部67a,68aから延びた円筒部69,70を同心で嵌合することにより形成されている。尚、浅溝部67a,68aには、異なるガスとの接触を阻止する図示しない隔壁が適宜配置される。
【0004】
【特許文献1】
上記金属セパレータ65,66は、例えばSUS304などのステンレス鋼の薄板をプレス加工することにより形成されるが、燃料電池60の通電(発電)状態では、約80℃の硫酸雰囲気に曝されるため、高い耐食性が求められる。このため、上記薄板の表面および裏面には、Auなどの貴金属の被膜を被覆することも検討されている(特開2001−68129号公報参照)。
ところで、金属セパレータ65,66にAuなどの貴金属の被膜74を被覆した場合、図8(C)に拡大して示すように、上側の円筒部70は、連結流路72に対して被膜74により被覆されているが、下側の円筒部69の端面は、連結流路72に露出している。このため、係る端面は、加湿された前記ガスから凝集した水分や反応によって得られた水分、あるいは冷却水による腐食を受ける、という問題があった。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
本発明は、以上に説明した従来の技術での問題点を解決し、表・裏面に貴金属の皮膜を有する複数の金属セパレータを含み、隣接する一対の金属セパレータ間に耐食性に優れた連結流路を有する燃料電池を提供する、ことを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、表・裏面に貴金属の皮膜を有し且つ隣接する一対の金属セパレータ間に形成する連結流路の内周面を、上記皮膜によって覆うことに着想して成されたものである。
即ち、本発明の燃料電池(請求項1)は、両面に燃料電極膜と酸化剤電極膜とを個別に積層した高分子電解質膜の両側に一対の金属セパレータを配置した単セルを複数備え、上記金属セパレータは、表面および裏面に貴金属の皮膜を被覆した金属薄板からなり、上記表面にジグザグ状または複数の平行な凹溝からなる流路を有し且つ係る流路と裏腹の位置における裏面に凸条が形成され、上記複数の単セルにおける隣接する一対の金属セパレータにおいて、平面視で同じ位置に互いに接近する筒部をそれぞれ形成し、係る一対の筒部の先端部の少なくとも一方を外向きに折り曲げると共に、係る一対の先端部の対向する表面および裏面を直に接触させ、あるいは係る一対の先端部の対向する表面および裏面間にシール材を挟持することにより、上記一対の筒部の内側に連結流路が形成されている、ことを特徴とする。
【0007】
これによれば、複数の単セル間において、隣接する一対の金属セパレータにおける流路およびこれらを連通する連結流路の内周面を貴金属の被膜により、確実に覆うことができる。この結果、燃料ガスや酸化性ガスを、一方の金属セパレータの流路から上記連結流路を経て他方の金属セパレータの流路に移送しても、上記ガスは貴金属の被膜に覆われた流路を通過するため、これらの金属セパレータの腐食を確実に防ぎ、安定した発電状態を得ることが可能となる。
尚、上記流路には、ジグザグ状の形態のほか、対向する一対の辺に沿った一対のヘッダ部間に平行に配置した複数の凹溝からなる形態も含まれる。また、上記「外向き」は、一対の筒部の端面を含む先端部を連結流路の軸方向と直角に向ける形態の他、各筒部の先端付近を断面ほぼU字形に曲げ且つこれらを互いに嵌合する形態や、各筒部の先端付近を同じ斜め方向に沿って折り曲げた形態が含まれる。更に、これら筒部の加工には、バーリング加工や絞り加工などが用いられる。加えて、金属セパレータや先端部の前記表面および裏面は、相対的な呼称である。
【0008】
また、本発明には、前記筒部は、前記金属セパレータにおける凹溝の端部の浅溝部、浅凹部、または隔壁により仕切られた区画部に形成されている、燃料電池(請求項2)も含まれる。
これによれば、燃料電池を形成する複数の単セル間において、隣接する一対の金属セパレータにおける流路の背面同士を接触させたコンパクトな寸法にできると共に、上記各金属セパレータの流路およびこれらを連通する連結流路における腐食を確実に防ぐことができる。
尚、上記浅溝部は前記流路の端部に位置し、上記浅凹部は前記流路と離隔して位置し、上記区画部は凹溝の一部を隔壁により区画された部分を指す。
【0009】
更に、本発明には、前記連結流路は、隣接する各単セルにおける前記燃料電極膜と酸化剤電極膜とを積層した高分子電解質膜の外側に位置している、燃料電池(請求項3)も含まれる。
これによれば、連結流路は、各単セルの高分子電解質膜などの外側に位置し且つそれらの厚みに相当した軸方向のサイズとなるため、複数の単セルの厚み方向におけるサイズをコンパクトにした燃料電池とすることできる。
【0010】
加えて、本発明には、前記金属セパレータにおける貴金属の皮膜は、厚みが1〜40nmのAu、Ag、Pt、Pd、Rh、またはIr、あるいはこれらの1種以上を含む合金からなる、燃料電池(請求項4)も含まれる。
これによれば、予め貴金属を表・裏面に被覆した前記一対の金属セパレータの流路の端部や係る端部の浅溝部などから、一対の筒部同士を突出させた際にも、それらの表面および裏面の全面も極薄くして上記皮膜により覆うことができる。尚、上記皮膜の厚みが1nm未満では、耐食性が不十分になり、一方、40nmを越えるとコスト高になるので、上記範囲としたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1(A)は、本発明の燃料電池に用いる金属セパレータ10を示す平面図、図1(B),(C)は、(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図である。金属セパレータ10は、厚みが約0.2mmのSUS304などのステンレス鋼の薄板からなり、図1(A)に示すように、その表面11には、複数のUターン部分13を有するジグザグ状の流路12が形成されている。互いに平行な流路12,12間には、半島状の凸条14が位置している。係る流路12の左上隅と右下隅との端部には浅溝部15が形成され、それらの中央付近には、後述する連結流路20の上端である開口16が位置している。
【0012】
また、図1(A)に示すように、表面11の左下隅と右上隅の平坦部11aには、独立した浅凹部17と、その中心部に開口する別の連結流路の上端の開口18とが形成されている。上記浅凹部17は、前記浅溝部15と同じ深さである。
図1(B),(C)に示すように、金属セパレータ10の流路12は、断面ほぼ台形を呈する凹溝で、金属セパレータ10の裏面11bには、係る流路12の裏側に突出するジグザグ状の凸条19が突出している。
更に、図1(C)に示すように、開口16,18の裏面11b側には、後述する連結流路を形成する筒部22などが突出している。前記開口16,16間のジグザグ状の流路12には例えば燃料ガスが流れ、浅凹部17の開口18には金属セパレータ10の厚み方向に沿って酸化剤ガスが流れる。
以上のような金属セパレータ10は、その表面11および裏面11bの全面に、後述するAu(貴金属)の皮膜が1〜40nmの厚みで予め被覆された前記ステンレス鋼板を、プレス成形などの塑性加工によって形成したものである。
【0013】
図2(A)乃至(C)は、前記金属セパレータ10を用いた燃料電池1,1aの断面を示す。
燃料電池1は、図2(A),(B)に示すように、複数の単セル2を積層して形成され、各単セル2は、高分子電解質膜4と、その両面に個別に配置した燃料電極膜(アノード)6および酸化剤電極膜(カソード)8と、これらの上下(両側)に対称に積層した金属セパレータ10,10とを備えている。尚、図2(A)は前記図1(B)の、図2(B)は図1(C)の位置での金属セパレータ10を含む断面を示す。
【0014】
各金属セパレータ10は、その流路12を燃料電極膜6または酸化剤電極膜8側に位置させると共に、互いの流路12を平行とし且つ裏面(背面)11b同士で面接触している。図2(B)の左右両側に示すように、互いに積層された単セル2,2の隣接する金属セパレータ10,10の浅溝部15と浅凹部17との間には、後述する連絡流路20が形成されている。
金属セパレータ10は、図2(A)〜(C)に示すように、前記ステンレス鋼の薄板10aの表面11および裏面11bに、後述するAu(貴金属)などの皮膜mが厚み1〜40nmにして予め被覆され、プレス加工などにより、前記流路12、半島部14、浅溝部15、浅凹部17、および凸条19が成形されている。
【0015】
係る燃料電池1の作用について、以下に説明する。
各単セル2の上側に位置する金属セパレータ10の流路12には、図2(B)中の実線の矢印で示す燃料ガスの一部が、一方の浅溝部15の開口16から流され且つ他方の浅溝部15の開口16から図示しない排出孔に排出される。
負極活物質である燃料ガスは、流路12内を流通する間に隣接する高分子電解質膜4の燃料電極膜(アノード)6側の触媒電極と接触し、当該燃料ガスに含まれている水素が水素イオンと電子とに分かれる。係る水素イオンは、高分子電解質膜4中の電解質(液)を貫通し、上記電子は、図示しない外部回路を経て、それぞれ酸化剤電極膜(カソード)8側の触媒電極へ送られ、係る電子が移動する電流による発電が生じる。
尚、図2(B)中の実線の矢印で示すように、上記燃料ガスの一部は、高分子電解質膜4などを貫通し且つ内周面が絶縁された絶縁孔hを介して各単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の浅凹部17に送られ、後述する連結流路20を経て、下層の単セル2の上側に位置する金属セパレータ10の浅溝部15からその流路12に流れる。
【0016】
また、各単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の流路12には、図2(B)中の一点鎖線の矢印で示す正極活物質である酸化剤ガスの一部が、上記と同様に流され、当該流路12内を流通する間に、隣接する高分子電解質膜4の正極側の酸化剤電極膜(カソード)8の触媒電極と接触し、酸素と水素イオンと電子とが反応して水を生成する。
尚、図2(B)中の一点鎖線の矢印で示すように、上記酸化剤ガスは、各単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の浅溝部15から後述する連結流路20を介して、隣接する下層の単セル2の上側に位置する金属セパレータ10の浅凹部17に流され、係る単セル2の高分子電解質膜4などを貫通する絶縁孔hを介して、当該単セル2の下側に位置する金属セパレータ10の流路12に流れる。
【0017】
図2(C)は、変形形態の燃料電池1aの断面を示し、その複数の単セル2aは、両面に燃料電極膜6および酸化剤電極膜8を配置した高分子電解質膜4の上下両側に、平面視において流路12,12が互いに直交するように金属セパレータ10,10を配置している。図2(C)の左右に示すように、単セル2a,2aの隣接する金属セパレータ10,10の浅溝15と浅凹部17との間には、連結流路20が形成されている。
尚、図2(C)中の各単セル2aにおいて、上側の金属セパレータ10は、前記図1(A)における左端の流路12、浅溝部15、および浅凹部17に沿った断面を示し、下側の金属セパレータ10は、前記図1(C)の位置での断面を示す。
【0018】
図2(C)中の実線の矢印で示すように、前記燃料ガスの一部は、各単セル2aの上側に位置する金属セパレータ10の流路12に流され、残りの燃料ガスは、高分子電解質膜4などを貫通する絶縁孔hを介して、各単セル2aの下側に位置する金属セパレータ10の浅凹部17に送られ且つ次述する連結流路20を経て当該単セル2aよりも下層の単セル2aの上側に位置する金属セパレータ10の流路12に流される。
また、図2(C)中の一点鎖線の矢印で示すように、前記酸化剤ガスは、各単セル2aの下側に位置する金属セパレータ10の浅溝部15を経てその流路12に流される。残りの酸化剤ガスは、単セル2aの高分子電解質膜4などを貫通する絶縁孔hを介して、当該単セル2aの下側に位置する金属セパレータ10の流路12に流される。
【0019】
前記図2(B),(C)中のD部分を図2(D)に拡大して示す。
図2(D)に示すように、燃料電池1,1aの隣接する金属セパレータ10同士の前記浅溝部15と浅凹部17との中央付近には、バーリング加工(穴フランジ加工)によって穴明けされた連絡流路20と、その周囲に円筒形の筒部22とが形成されている。各筒部22の先端部24は、浅溝部15または浅凹部17とほぼ平行になるよう外向きに折り曲げられると共に、これらの間には、Siゴムを含む合成ゴムなどからなるリング形のシール材28が挟持されている。
【0020】
図2(E)で更に拡大して示すように、シール材28を挟んだ上下の筒部22の先端部24,24は、その表面と裏面にAuなどの貴金属の皮膜mが前記厚みで被覆され、係る皮膜mのない端面を連結流路20と反対の外向きにしている。
これにより、浅溝部15と浅凹部17との間の連結流路20を例えば燃料ガスが流動し、あるいは、浅凹部17と浅溝部15との間の連結流路20を例えば酸化剤ガスが流動しても、これらのガスは内周面が皮膜mに覆われた上記連結流路20を流れ、且つシール材28の内側29を通過する。
この結果、筒部22を含む金属セパレータ10は、上記各ガスに直に曝されないため、高い耐食性を発揮することが可能となる。従って、上記連結流路20を含む燃料電池1,1aは、優れた耐久性を発揮することができる。
【0021】
ここで、前記連結流路20の形成方法について、図3,4により説明する。
尚、図3乃至図5において、金属セパレータ10や金属薄板10aにおける上側の面を表面と称し、下側の面を裏面と称する。
図3(A),(B)に示すように、金属セパレータ10となるSUS304などのステンレス鋼からなる金属薄板10aの表面および裏面には、予めメッキまたは蒸着により、厚みが1〜40nmの貴金属の被膜mが全面に被覆されている。係る金属薄板10aをプレスすることで、前記流路12、半島部14、浅溝部15、浅凹部17、および凸条19が成形された金属セパレータ10が成形される。次に、金属セパレータ10の浅溝部15(浅凹部17)の中央付近に小径の下穴を穿孔した後、係る下穴内に同軸心で図示しないポンチを圧入するバーリング加工を行う。その結果、図3(C)に示すように、浅溝部15(浅凹部17)の中央付近には、厚み方向に突出した円筒形の筒部22が形成される。尚、上記下孔を穿孔した後にポンチを圧入すると、上記筒部22の先端を平坦にし易くなる。
更に、上記筒部22の先端寄りの部分に、ほぼ円錐形で且つ大径のポンチ(図示せず)を下側から押圧する。その結果、図3(D)に示すように、上記筒部22の先端部24は、浅溝部15等とほぼ平行になるよう外向きに折り曲げられる。
【0022】
そして、図4(A)に示すように、隣接する金属セパレータ10,10の浅溝部15と浅凹部17とから延びた筒部22,22を同軸心にして先端部24,24の表面および裏面を面接触し、これらの間に例えば抵抗溶接などによるリング状の溶着部26を形成して、内側を貫通する連結流路20を密閉する。
あるいは、図4(B)に示すように、互いに接近する筒部22,22を同軸心にして先端部24,24の間に、リング状のシール材28を挟み込み且つその内側29を連結流路20の中央付近に位置させる。
従って、前記各ガスの何れか一方は、隣接する金属セパレータ10,10の間を、前記皮膜mに覆われた連結流路20、あるいは係る皮膜mとシール材28とに囲まれた連結流路20を介して流動するため、前記金属セパレータ10が腐食する事態を確実に防ぐことができる。
【0023】
図5(A)は、異なる形態の連結流路20aを示す。
図5(A)に示すように、上側の金属セパレータ10の浅溝部15(浅凹部17)から下向きに延びた小径の筒部22aの途中に、外向きに断面ほぼU字形の曲げ部23を形成することにより、その先端部24aを上向きに形成している。
一方、下側の金属セパレータ10の浅凹部17(浅溝部15)から上向きに延びた大径の筒部22の先端寄りに、図5(A)に示すように、上記先端部24aをカシメつつ包囲する断面U字形の曲げ部25を形成し、且つその先端部24bの裏面を上記先端部24aの内側面(裏面)に面接触させている。
図5(A)に示すように、互いに同軸心で径の異なる筒部22aおよび筒部22bを貫通して連結流路20aが形成され、その内周面は前記皮膜mに覆われている。従って、隣接する金属セパレータ10,10間を流れる前記各ガスの何れかに腐食する事態を防止することができる。
【0024】
図5(B)は、更に異なる形態の連結流路20bを示す。
図5(B)に示すように、上側の金属セパレータ10の浅溝部15(浅凹部17)から下向きに延びた筒部22cの途中に、外向きに断面V字形の曲げ部25を形成し、その先端部24cを斜め外向きで且つ上向きに形成している。
一方、下側の金属セパレータ10の浅凹部17(浅溝部15)から円錐形状の筒部22dが斜め外向きで且つ上向きに延び、その先端部24dの裏面を上記先端部24cの外側面(表面)に面接触させている。
図5(B)に示すように、互いに同軸心で形が異なる筒部22cおよび筒部22dを貫通して連結流路20cが形成され、その内周面も前記皮膜mに覆われている。従って、隣接する金属セパレータ10,10間を流れる前記各ガスの何れかに腐食する事態を防止することができる。
【0025】
図6(A)は、異なる形態の金属セパレータ30を示す平面図、図6(B),(C)は、(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図である。
金属セパレータ30は、前記同様の貴金属の皮膜mを表面および裏面の全体に被覆したステンレス鋼板をプレス成形したもので、図6(A)乃至(C)に示すように、平面視が正方形の表面31における各辺に沿った矩形の凹溝32と、その内側で且つ裏面33側に位置するジグザグ状の流路34と、を含む。係る流路34は、Uターン部36を図6(A)の左右両側に交互に有する。
また、図6(A),(B)に示すように、表面31における上記凹溝32の左上隅と左下隅には、例えば燃料ガスを上記流路34に供給し、または流路34から排出させ且つ隣接する金属セパレータ30に流す連結流路20の一端における開口40,41が位置する。係る開口40,41を囲むように、上記凹溝32の左上隅および左下隅には、Siからなる一対ずつの隔壁38が直角に配置されて仕切られ、独立した区画部46,47が形成されている。
【0026】
更に、図6(A),(C)に示すように、表面31における上記凹溝32の右上隅および右下隅には、例えば酸化剤ガスを上記流路34に供給し、または流路34から排出させ且つ隣接する金属セパレータ30に流す連結流路20の一端における開口42,43が位置している。係る開口42,43を囲むように、上記凹溝32の右上隅および右下隅には、上記同様の隔壁39,39が配置され、独立した区画部48,49が形成されている。
図6(B),(C)に示すように、上記開口40〜43の裏面33側には、追って連結流路20の一部となる前記筒部22および先端部24が突出している。
図6(A),(B)に示すように、ジグザグ状の流路34の両端の出隅部には、表面31および凹溝32の角部に跨って、ほぼ正三角形の切除部45とその中央に位置する相似形の貫通孔44とが形成される。係る貫通孔44,44は、上記流路34への燃料ガスの入口および出口を構成する。貫通孔44を含む切除部45は、前記プレス成形の後で切り欠かれ且つ部分的に追加の金メッキが施される。
【0027】
図7(A),(B)は、前記金属セパレータ30を用いた燃料電池50の概略を示し、図7(A)は、前記図6(B)の位置における金属セパレータ30を複数の単セル52の両側に配置した断面を示す。また、図7(B)は、前記図6(C)の位置における金属セパレータ30を複数の単セル52の両側に配置した断面を示す。
即ち、燃料電池40は、図7(A)に示すように、複数の単セル52を積層して形成され、各単セル52は、高分子電解質膜54と、その両面に個別に配置した燃料電極膜(アノード)56および酸化剤電極膜(カソード)58と、これらの上下(両側)に対称に積層した金属セパレータ30,30と、を備えている。
【0028】
各金属セパレータ30は、その流路34を燃料電極膜56または酸化剤電極膜58側に位置させ、互いの流路34を平行とし且つ裏面(背面)33同士で接触している。また、上記高分子電解質膜54、燃料電極膜56、および酸化剤電極膜58は、図7(A)に示すように、これらの両面に配置される金属セパレータ30,30における平面視で前記ジグザグ状の流路34とほぼ同じ面積とされている。即ち、各金属セパレータ30の区画部46〜49を含む凹溝32は、上記高分子電解質膜54などの外側に位置し、厚み方向に隣接する区画部46〜49同士の間に前記シール材28を含む連結流路20が配置されている。
尚、図7(A)に示すように、隣接する金属セパレータ30,30間で対向する一対の凹溝32,32の各コーナーに付近に配置する隔壁38(39)は、係る一対の凹溝32,32の断面全体を塞ぐ単一のSi材が用いられる。
【0029】
図7(A)中の実線の矢印で示すように、例えば燃料ガスは、各単セル52の上側の金属セパレータ30における左側の区画部46から、その一部が左側の貫通孔44を経て流路34をジグザク状に流れた後、右側の貫通孔44から右側の区画部47を経て開口41側に流れ、図7(A)中の一点鎖線の矢印で示すように、開口41を経て下層側に排出される。また、上記燃料ガスの残りは、上記区画部46内の開口40から、前記同様の連結流路20を経て、当該単セル52の下側の金属セパレータ30における凹部46の開口40、および下層に位置する単セル52の上側の金属セパレータ30における区画部46の開口40に流される。この間において、上記流路34を流れた燃料ガスは、隣接する高分子電解質膜54の燃料電極膜56側の触媒電極と接触し、当該燃料ガスに含まれている水素が水素イオンと電子とに分かれる。係る水素イオンは、高分子電解質膜54中の電解質(液)を貫通し、上記電子は、図示しない外部回路を経て、それぞれ酸化剤電極膜58側の触媒電極へ送られ、係る電子の移動による発電が行われる。
【0030】
一方、酸化剤ガスは、図7(B)の示すように、各単セル52の下側の金属セパレータ30における左側の隔壁39の奥側に位置する前記区画部48から、その一部が左側の貫通孔44を経て流路34をジグザク状に流れた後、右側の貫通孔44から右側の区画部49に流れ、そこに位置する前記開口43を経て下層側に排出される。また、上記酸化剤ガスの残りは、上記各区画部48の開口42から前記同様の連結流路20を経て、下側の金属セパレータ30における区画部48の開口42、および下層に位置する単セル52の下側の金属セパレータ30における区画部48の開口42に流される。
この間において、上記流路34を流れた酸化剤ガスは、隣接する高分子電解質膜54の正極側の酸化剤電極膜(カソード)58の触媒電極と接触し、酸素と水素イオンと電子とが反応して水を生成する。
【0031】
以上のような燃料電池50においても、複数の単セル52,52の金属セパレータ30は、全面にAuなどの貴金属の皮膜mが被覆され、且つ隣接する金属セパレータ30,30間を連通する連結流路20の内周面にも上記皮膜mが被覆されているため、高い耐食性を発揮することが可能となる。しかも、連結流路20は、各単セル52の高分子電解質膜54などの外側に位置し且つそれらの厚みに相当した軸方向のサイズとなるため、複数の単セル52,52の厚み方向におけるサイズをコンパクトにすることも可能となる。
従って、上記連結流路20を含む燃料電池50は、コンパクトで優れた耐久性を発揮することができる。
尚、隣接する金属セパレータ30,30間には、前記連結流路20a,20bを配置することも可能である。
【0032】
本発明は、以上に説明した各形態に限定されるものではない。
例えば、前記金属セパレータ10,30に形成する流路は、前記ジグザグ状の凹溝からなる流路12,34に限らず、対向する一対の辺に沿った一対のヘッダ部間に平行に配置した複数の凹溝からなる形態も含まれる。
また、前記金属セパレータ10,30は、前記ステンレス鋼板に限らず、Fe基合金、Ni基合金、Fe−Ni系合金、Ti、またはTi基合金からなる金属薄板の表・裏面に前記貴金属の皮膜を被覆したものを用いることも可能である。更に、前記金属セパレータに被覆する貴金属の皮膜には、前記Auに限らず、Ag、Pt、Pd、Rh、またはIr、あるいはこれらの1種以上を含む合金を用いることもできる。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明した本発明の燃料電池(請求項1)によれば、複数の単セル間で隣接する一対の金属セパレータにおける流路およびこれらを連通する連結流路の内周面は、貴金属の被膜によって確実に覆われる。このため、燃料ガスや酸化剤ガスを、一方の金属セパレータの流路から上記連結流路を経て他方の金属セパレータの流路に送るに際し、上記ガスは貴金属の被膜に覆われた流路を通るため、これらの金属セパレータの腐食を確実に防げ、安定した発電状態が得られる。
また、請求項2の燃料電池によれば、燃料電池を形成する複数の単セル間において、隣接する一対の金属セパレータの流路における背面同士を接触させたコンパクトな寸法にできると共に、上記各金属セパレータの流路およびこれらを連通する連結流路における腐食を確実に防ぐことができる。
【0034】
更に、請求項3の燃料電池によれば、連結流路は、各単セルの高分子電解質膜などの外側に位置し且つそれらの厚みに相当した軸方向のサイズとなるため、複数の単セルの厚み方向におけるサイズをコンパクトにした燃料電池となる。
加えて、請求項4の燃料電池によれば、貴金属を全面に被覆した前記金属セパレータの流路の端部の浅溝部などから、一対の筒部同士を突出させた際にも、それらの表面および裏面の全面も極薄くして上記皮膜により覆うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明の燃料電池に用いる金属セパレータの平面図、(B),(C)は(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図。
【図2】(A),(B)は図1の金属セパレータを用いた燃料電池を示す異なる位置における断面図、(C)は上記燃料電池の変形形態を示す断面図、(D)は(B),(C)中の矢印部分Dの拡大図、(E)は(D)中の一点鎖線部分Eの拡大図。
【図3】(A)は金属セパレータとなる金属薄板を示す断面図、(B)は(A)中の一点鎖線部分Bの拡大図、(C),(D)は連結流路の形成工程を示す概略図。
【図4】(A),(B)は本発明の燃料電池における連結流路を示す断面図。
【図5】(A),(B)は異なる形態の連結流路を示す断面図。
【図6】(A)は異なる形態の金属セパレータを示す平面図、(B),(C)は(A)中のB−B線またはC−C線に沿った矢視における断面図。
【図7】(A),(B)は図6の金属セパレータを用いた異なる形態の燃料電池を示す異なる位置における断面図。
【図8】(A)は従来の燃料電池を示す概略図、(B)は(A)中の一点鎖線部分Bの拡大図、(C)は(B)中の一点鎖線部分Cの拡大図。
【符号の説明】
1,1a,50…………燃料電池
2,2a,52…………単セル
4,54…………………高分子電解質膜
6,56…………………燃料電極膜
8,58…………………酸化剤電極膜
10,30………………金属セパレータ
11,31………………表面
11b,33……………裏面
12,34………………流路
15………………………浅溝部
17………………………浅凹部
20,20a,20b……連結流路
22,22a〜22d…筒部
24,24a〜24d…先端部
28………………………シール材
38,39………………隔壁
46〜49………………区画部
m…………………………貴金属の被膜
Claims (4)
- 両面に燃料電極膜と酸化剤電極膜とを個別に積層した高分子電解質膜の両側に一対の金属セパレータを配置した単セルを複数備え、
上記金属セパレータは、表面および裏面に貴金属の皮膜を被覆した金属薄板からなり、上記表面にジグザグ状または複数の平行な凹溝からなる流路を有し且つ係る流路と裏腹の位置における裏面に凸条が形成され、
上記複数の単セルにおける隣接する一対の金属セパレータにおいて、平面視で同じ位置に互いに接近する筒部をそれぞれ形成し、係る一対の筒部の先端部の少なくとも一方を外向きに折り曲げると共に、
上記一対の先端部の対向する表面および裏面を直に接触させ、あるいは係る一対の先端部の対向する表面および裏面間にシール材を挟持することにより、上記一対の筒部の内側に連結流路が形成されている、
ことを特徴とする燃料電池。 - 前記筒部は、前記金属セパレータにおける凹溝の端部の浅溝部、浅凹部、または隔壁により仕切られた区画部に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池。 - 前記連結流路は、隣接する各単セルにおける前記燃料電極膜と酸化剤電極膜とを積層した高分子電解質膜の外側に位置している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池。 - 前記金属セパレータにおける貴金属の皮膜は、厚みが1〜40nmのAu、Ag、Pt、Pd、Rh、またはIr、あるいはこれらの1種以上を含む合金からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の燃料電池。
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