ところが、図16,図17に示される具体例では、開口部312,322が角張っているため、ロウ材316,326による接合後に熱処理前の封止材315,325の形成材料を塗布したとしても、熱処理(ガラス封止)時に、溶けた封止材315,325の形成材料が開口部312,322から逃げるように動くことにより、封止材315,325にヒケが生じやすいという問題がある。この場合、ヒケが生じる箇所では、封止材315,325の形成材料が薄くなり、気泡317,327(即ち、セパレータ311,321と燃料電池セル本体314,324との隙間内の空気)が弾けやすくなるため、リークパスが形成され、封止材315,325によるガス封止ができないという問題が生じてしまう。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、封止材のリークパス形成を防止することにより、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性を向上させることができるセパレータ付燃料電池セル及び燃料電池スタックを提供することにある。また、第2の目的は、上記のセパレータ付燃料電池セルを得るのに好適な製造方法を提供することにある。
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間に、封止材を有する封止部を設けるようにすれば、セパレータと燃料電池セル本体との間に配置されたロウ材が、空気極に接する酸化剤ガス、または、燃料極に接する燃料ガスに対して直接接触しなくなることを新規に知見した。この場合、ロウ材への酸化剤ガスまたは燃料ガスの移動が抑制されるため、ロウ材中での酸化剤ガスまたは燃料ガスの拡散が抑制され、水素と酸素との反応を起因とするボイドの発生を抑制することができる。
以下、上記課題を解決するための手段を示す。
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、固体電解質層、前記固体電解質層の第1主面に配置された空気極及び前記固体電解質層の第2主面に配置された燃料極を有する燃料電池セル本体と、開口部を有する枠状をなし、Agを含むロウ材で構成される接合部を介して、前記燃料電池セル本体に取り付けられるセパレータとを備えたセパレータ付燃料電池セルであって、前記ロウ材が、前記セパレータにおいて前記開口部よりも外周側となる位置に接合され、前記セパレータは、前記ロウ材よりも前記開口部側に位置する部分に、前記燃料電池セル本体と向かい合う第1領域と、前記第1領域の反対側に位置する第2領域とを有し、前記セパレータにおいて前記ロウ材よりも前記開口部側に位置する部分と前記燃料電池セル本体との間に生じる隙間に、ガラスを含む封止材を有する封止部が充填され、前記封止部は、前記第1領域及び前記第2領域の両方を被覆するものであり、前記セパレータの前記第2領域における前記開口部の開口縁、及び、前記セパレータの前記第2領域において前記セパレータと前記燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所の少なくとも一方は、R面またはC面を有する形状となっており、前記ロウ材は、酸化剤ガスまたは燃料ガスに対して接触しないようになっており、前記封止材は、前記ロウ材の前記開口部側の端面との間に隙間を有しない状態で、前記セパレータの前記第2領域側のR面またはC面を被覆することを特徴とするセパレータ付燃料電池セルがある。
従って、手段1に記載の発明によると、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間に、セパレータの第1領域及び第2領域の両方を覆う封止部が設けられるとともに、第2領域がR面またはC面を有する形状となっている。この場合、封止部が有する封止材は、熱処理時にヒケが生じにくくなるため、気泡(セパレータと燃料電池セル本体との間に生じる隙間内の空気)が弾けにくくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因したリークパスの形成を防止できるため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。以上のことから、封止材の破損を確実に防止できるため、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性を向上させることができる。
また、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間に、封止材を有する封止部が設けられるため、セパレータと燃料電池セル本体との間に配置されたロウ材が、空気極に接する酸化剤ガス、または、燃料極に接する燃料ガスに対して直接接触しなくなる。その結果、ロウ材への酸化剤ガスまたは燃料ガスの移動が抑制されるため、ロウ材中での酸化剤ガスまたは燃料ガスの拡散が抑制され、水素と酸素との反応を起因とするボイドの発生を抑制することができる。
燃料電池セル本体を構成する固体電解質層は、燃料極に接する燃料ガス及び空気極に接する酸化剤ガスの一部がイオンとなって移動する性質(イオン電導性)を有している。固体電解質層中を移動するイオンとしては、例えば酸素イオンや水素イオンなどが挙げられる。
固体電解質層(固体酸化物層)の形成材料としては、例えばジルコニア系、セリア系、ペロブスカイト系の電解質材料が挙げられる。ジルコニア系材料としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)及びカルシア安定化ジルコニア(CaSZ)を挙げることができ、一般的にはイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が用いられる例が多い。セリア系材料としてはいわゆる希土類元素添加セリアが、ペロブスカイト系材料としてはランタン元素を含有するペロブスカイト型複酸化物が用いられる。
燃料電池セル本体を構成する空気極は、酸化剤となる酸化剤ガスと接触し、セパレータ付燃料電池セルにおける正電極として機能する。ここで、空気極としては、例えば、La1−xSrxCoO3、La1−xSrxFeO3、La1−xSrxCo1−yFeyO3、La1−xSrxMnO3、Sm1−xSrxCoO3系等のSrを含有するペロブスカイト酸化物が用いられる。
また、酸化剤ガスとしては、例えば、酸素と他の気体との混合ガスなどが挙げられる。この混合ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。なお、混合ガスは、安全で安価な空気であることがよい。
燃料電池セル本体を構成する燃料極は、還元剤となる燃料ガスと接触し、セパレータ付燃料電池セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料極の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO2系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO2系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料及びそれら金属材料の合金のうちの少なくとも1つと、を混合した金属セラミック材料の混合物(サーメット)を使用することができる。
また、燃料ガスとしては、例えば、水素ガス、炭化水素ガス、水素ガスと炭化水素ガスとの混合ガスなどが挙げられる。燃料ガスとして炭化水素ガスを選択した場合、炭化水素ガスの種類は特に限定されないが、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等であってもよい。なお、水中にガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)を通過させて加湿することによって得られる燃料ガスや、ガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)に水蒸気を混合させることによって得られる燃料ガスを選択してもよい。また、1種類の燃料ガスのみを用いてもよいし、複数種類の燃料ガスを併用してもよい。さらに、燃料ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。また、液体の原料を気化したものを燃料ガスとして使用したり、水素ガス以外のガスを改質して生成した水素ガスを燃料ガスとして使用したりすることもできる。
燃料電池セル本体の固体電解質層に取り付けられるセパレータは、耐熱性、化学的安定性、強度、燃料電池セル本体との熱膨張差等を考慮すると、金属製セパレータであることが好ましい。金属製セパレータの形成材料の好適例としては、SUS430、SUS444、SUH21などのフェライト系ステンレス鋼が挙げられる。
なお、金属製セパレータとして、クロミア(酸化クロム)被膜を形成する材料(例えば、上記のステンレス鋼)を用いる場合、封止材に含まれるガラスがクロミアと反応する可能性があるため、封止材の信頼性が低下してしまう。そこで、セパレータは、例えば2質量%以上10質量%以下のアルミニウム(Al)を含み、接合部を構成する接合材(ロウ材)は、例えば2体積%以上15体積%以下の、アルミニウムの酸化物または複合酸化物を含み、封止材は、例えばAl2O3換算で、2質量%以上20質量%以下のアルミニウムを含むことがよい。セパレータがアルミニウムを2質量%以上含むと、表面にアルミナ被膜が形成されることによってセパレータの耐酸化性が向上する。また、ロウ材がアルミニウムの酸化物または複合酸化物を2体積%以上含むと、ロウ材が、セパレータのアルミナ被膜と親和してアンカー材として機能するため、セパレータとの接合強度が向上する。同時に、アルミナ被膜との濡れ性も向上するため、ロウ付け時にロウ材がセパレータから弾かれるといった問題を解消することができる。さらに、封止材がアルミニウムをAl2O3換算で2質量%以上含むと、封止材が、セパレータのアルミナ被膜や接合部のアルミニウムと親和するため、セパレータとの界面や接合部との界面に隙間が生じるといった問題を解消することができる。以上のことから、封止材の信頼性が向上する。なお、セパレータがアルミニウムを10質量%よりも多く含んでしまうと、セパレータの形成材料が硬くなるため、加工しにくくなる。また、ロウ材がアルミニウムの酸化物または複合酸化物を15体積%よりも多く含んでしまうと、接合部中のAgのネッキングが弱くなり、ロウ材の強度が低下してしまう。さらに、封止材がアルミニウムをAl2O3換算で20質量%よりも多く含んでしまうと、封止材の熱膨張係数が低くなるため、セパレータとの熱膨張差によって封止材が割れるおそれがある。
また、金属製セパレータの厚さは、例えば0.5mm以下であることがよい。仮に、金属製セパレータの厚さが0.5mmよりも厚いと、セパレータ付燃料電池セルを複数積層して燃料電池スタックを形成する際や運転時に、金属製セパレータに採用する機械応力や熱応力が緩和されにくくなるため、燃料電池セル本体が破損するおそれがある。
なお、セパレータは、Agを含むロウ材で構成される接合部を介して燃料電池セル本体に取り付けられる。ロウ材としては、Agと酸化物との混合体、具体的には、Ag−Al2O3、Ag−CuO、Ag−TiO2、Ag−Cr2O3、Ag−SiO2などが挙げられる。さらに、ロウ材として、Agと他の金属との合金、具体的には、Ag−Ge−Cr、Ag−Ti、Ag−Al、Ag−Pdなどを用いることもできる。なお、ロウ材は、大気雰囲気下でロウ付けされたものであることがよい。仮に、真空下や還元雰囲気下でロウ付けを行うと、空気極等の形成材料の特定が変化する可能性があるからである。
また、セパレータは燃料電池セル本体に取り付けられる。ここで、セパレータが取り付けられる態様としては、以下のものが挙げられる。例えば、燃料電池セル本体が備える空気極が固体電解質層の第1主面の中央部に配置される一方、燃料電池セル本体が備える燃料極が固体電解質層の第2主面全体に配置される場合には、セパレータは、ロウ材を介して第1主面の外周部に取り付けられることがよい。この場合、セパレータを固体電解質層の第1主面に取り付けたとしても、空気極が邪魔になることはない。なお、空気極が第1主面全体に配置される一方、燃料極が第2主面の中央部に配置される場合には、セパレータは、ロウ材を介して第2主面の外周部に取り付けられることがよい。さらに、空気極が第1主面の中央部に配置されるとともに、燃料極が第2主面の中央部に配置される場合には、セパレータは、ロウ材を介して第1主面の外周部及び第2主面の外周部の少なくとも一方に取り付けられることがよい。
さらに、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間には、ガラスを含む封止材を有する封止部が設けられる。封止部は、セパレータにおいて燃料電池セル本体と向かい合う第1領域、及び、セパレータにおいて第1領域の反対側に位置する第2領域の両方を被覆するものである。なお、セパレータは、封止材によって挟み込まれている。この場合、封止部は、セパレータの第1領域に加えて、セパレータの第2領域にも接触するため、封止材とセパレータとの接触面積がよりいっそう大きくなる。従って、セパレータや燃料電池セル本体が例えば面方向に沿って変形した際に、封止材とセパレータとの境界部分に剪断応力が作用したとしても、封止材において第1領域や第2領域に接する部分は割れが生じにくいため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。
また、セパレータと燃料電池セル本体との間に生じる隙間は、ロウ材側から開口部側に行くに従って大きくなるように設定されていてもよい。このようにすれば、封止材の形成材料を、広がっている開口部側から隙間内に容易に流し込むことができる。その結果、封止材の形成材料によって隙間が確実に充填され、熱処理時にヒケが確実に生じにくくなるため、気泡(隙間内の空気)が確実に弾けにくくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因したリークパスの形成を確実に防止できるため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。ゆえに、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性がよりいっそう向上する。
さらに、セパレータの第2領域における開口部の開口縁、及び、セパレータの第2領域においてセパレータと燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所の少なくとも一方を、R面またはC面を有する形状とするのに加えて、セパレータの第1領域における開口部の開口縁を、R面またはC面を有する形状としてもよい。また、第1領域側及び第2領域側のそれぞれがC面を有する場合、第1領域の表面を基準とした第1領域側のC面の面取り角度は、第2領域の表面を基準とした第2領域側のC面の面取り角度より大きくてもよい。このようにした場合、セパレータと燃料電池セル本体との間に生じる隙間が、R面またはC面を有する開口部において広がるため、封止材の形成材料を隙間内に容易に流し込むことができる。その結果、封止材の形成材料によって隙間が確実に充填され、形成材料が気泡を確実に巻き込まなくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因した封止材の破損を防止できるため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。ゆえに、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性がよりいっそう向上する。
なお、セパレータの第2領域における開口部の開口縁、または、セパレータの第2領域においてセパレータと燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所において、第2領域の高さを基準とした封止材の厚さは、特に限定される訳ではないが、例えば10μm以上400μm以下に設定されていることがよい。仮に、第2領域の高さを基準とした封止材の厚さが10μm未満になると、第2領域を被覆する封止材が薄くなるため、封止材において第2領域に接する部分に割れが生じやすくなり、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性が低下してしまう。一方、第2領域の高さを基準とした封止材の厚さが400μmよりも大きくなると、第2領域を被覆する封止材が無駄に厚くなるため、セパレータ付燃料電池セルの製造コストが上昇するおそれがある。
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、上記手段1に記載のセパレータ付燃料電池セルを複数積層してなることを特徴とする燃料電池スタックがある。
従って、手段2に記載の発明によると、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間に、セパレータの第1領域及び第2領域の両方を覆う封止部が設けられるとともに、第2領域がR面またはC面を有する形状となっている。この場合、封止部が有する封止材は、熱処理時にヒケが生じにくくなるため、気泡(セパレータと燃料電池セル本体との間に生じる隙間内の空気)が弾けにくくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因したリークパスの形成を防止できるため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。以上のことから、封止材の破損を確実に防止できるため、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性、ひいては、燃料電池スタックの信頼性を向上させることができる。
また、セパレータにおいてロウ材よりも開口部側に位置する部分と燃料電池セル本体との間に、封止材を有する封止部が設けられるため、セパレータと燃料電池セル本体との間に配置されたロウ材が、空気極に接する酸化剤ガス、または、燃料極に接する燃料ガスに対して直接接触しなくなる。その結果、ロウ材への酸化剤ガスまたは燃料ガスの移動が阻止されるため、ロウ材中での酸化剤ガスまたは燃料ガスの拡散が抑制され、水素と酸素との反応を起因とするボイドの発生を防止することができる。
上記課題を解決するためのさらに別の手段(手段3)としては、上記手段1に記載のセパレータ付燃料電池セルを製造する製造方法であって、プレス装置を用いて金属板の打抜加工を行うことにより、前記セパレータを形成するセパレータ形成工程と、前記燃料電池セル本体を形成する燃料電池セル本体形成工程と、前記ロウ材を用いたロウ付けにより、前記セパレータを前記燃料電池セル本体に接合する接合工程と、前記セパレータと前記燃料電池セル本体との隙間を、前記封止材によって封止する封止工程とを含み、前記セパレータ形成工程は、前記セパレータに前記開口部を形成する打抜工程と、前記打抜工程後、前記プレス装置を用いて前記第2領域をならすことにより、前記セパレータの前記第2領域における前記開口部の開口縁、または、前記セパレータの前記第2領域において前記セパレータと前記燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所を、R面またはC面を有するように形成するならし工程とを含むことを特徴とするセパレータ付燃料電池セルの製造方法がある。
従って、手段3に記載の発明によると、ならし工程において、セパレータの第2領域における開口部の開口縁、または、セパレータの第2領域においてセパレータと燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所を、R面またはC面を有するように形成している。よって、ならし工程後に封止工程を行ったとしても、第1領域及び第2領域の両方を被覆する封止部が有する封止材には、熱処理時にヒケが生じにくくなるため、気泡(セパレータと燃料電池セル本体との間に生じる隙間内の空気)が弾けにくくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因したリークパスの形成を防止できるため、封止材によるガス封止をより確実に行うことができる。以上のことから、封止材の破損を確実に防止できるため、信頼性に優れたセパレータ付燃料電池セルを好適に得ることができる。
以下、本発明を燃料電池200に具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1,図2に示されるように、本実施形態の燃料電池200は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池200は、発電の最小単位であるセパレータ付燃料電池セル201を複数積層してなる燃料電池スタック202を備えている。燃料電池スタック202は、縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体状をなしている。また、燃料電池スタック202は、同燃料電池スタック202を厚さ方向に貫通する8つの貫通孔210を有している。なお、燃料電池スタック202の四隅にある4つの貫通孔210に締結ボルト211を挿通させ、燃料電池スタック202の下面から突出する締結ボルト211の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔210にガス流通用締結ボルト212を挿通させ、燃料電池スタック202の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト212の両端部分にナット213を螺着させる。その結果、複数のセパレータ付燃料電池セル201が固定されるようになっている。
図2,図3に示されるように、燃料電池200は、セパレータ付燃料電池セル201と、集電体221と、コネクタプレート222,223とを積層配置することによって構成されている。セパレータ付燃料電池セル201は、空気極フレーム224、絶縁フレーム225、セパレータ226、燃料電池セル本体227及び燃料極フレーム228を順番に積層することによって構成されている。
コネクタプレート222,223は、耐熱性及び導電性に優れたステンレス鋼などの金属材料によって略矩形板状に形成され、セパレータ付燃料電池セル201の上端部及び下端部に配置されている。コネクタプレート222,223は、セパレータ付燃料電池セル201内にガス流路を形成するとともに、隣接するセパレータ付燃料電池セル201同士を導通させるようになっている。詳述すると、隣接するセパレータ付燃料電池セル201同士の間に位置するコネクタプレート222,223は、いわゆるインターコネクタとなり、隣接するセパレータ付燃料電池セル201同士を区画するようになっている。なお、本実施形態のコネクタプレート223は、下側に隣接するセパレータ付燃料電池セル201のコネクタプレート222を兼ねている。また、燃料電池スタック202の上端部に配置されたコネクタプレート222は上側エンドプレート203となり、燃料電池スタック202の下端部に配置されたコネクタプレート223は下側エンドプレート204となっている。両エンドプレート203,204は、燃料電池スタック202を挟持しており、燃料電池スタック202から出力される電流の出力端子となっている。なお、エンドプレート203,204となるコネクタプレート222,223は、インターコネクタとなるコネクタプレート222,223よりも肉厚になっている。
図2,図3に示される空気極フレーム224は、ステンレスなどの導電性材料によって略矩形枠状に形成されている。よって、空気極フレーム224の中央部には、同空気極フレーム224を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部231が設けられている。また、絶縁フレーム225は、厚さ0.5mmのマイカシートによって略矩形枠状に形成されている。よって、絶縁フレーム225の中央部には、同絶縁フレーム225を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部232が設けられている。さらに、燃料極フレーム228は、マイカシートによって略矩形枠状に形成されている。よって、燃料極フレーム228の中央部には、同燃料極フレーム228を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部233が設けられている。
図2〜図5に示されるように、本実施形態のセパレータ226は、金属箔(金属板)の折曲加工によって形成された金属製セパレータである。金属製セパレータは、主として鉄(Fe)を主成分とする金属材料によって形成され、2質量%以上10質量%以下(本実施形態では3質量%)のアルミニウム(Al)を含んでいる。そして、セパレータ226の表面にはアルミナの被膜が形成されている。セパレータ226の熱膨張係数は、JIS Z2285;2003に規定されるものであり、具体的には10〜12ppm/℃程度となっている。なお、セパレータ226の熱膨張係数は、常温〜300℃間の測定値の平均値をいう。また、セパレータ226の厚さは、500μm以下に設定されることが好ましく、特には、50μm以上200μm以下(本実施形態では100μm=0.1mm)に設定されることが好ましい。さらに、セパレータ226は、同セパレータ226を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部234を中央部に有する略矩形枠状をなしている。また、セパレータ226は、ロウ材241よりも開口部234側に位置する部分に、固体電解質層251と向かい合う第1領域242、及び、第1領域242の反対側に位置する第2領域243を有している。
そして、図4,図5に示されるように、セパレータ226の第1領域242における開口部234の開口縁は、C面248を有する形状となっている。なお、第1領域242の表面を基準とした第1領域242側のC面248の面取り深さは、0.05mmとなっている。また、第1領域242の表面を基準としたC面248の面取り角度は150°である。さらに、セパレータ226の第2領域243における開口部234の開口縁は、C面246を有する形状となっている。なお、第2領域243の表面を基準とした第2領域243側のC面246の面取り深さは、0.05mmとなっている。また、第2領域243の表面を基準としたC面246の面取り角度は135°である。従って、第1領域242側のC面248の面取り角度は、第1領域242側のC面246の面取り角度よりも大きくなる。
図2,図3に示されるように、本実施形態の燃料電池セル本体227は、固体電解質層251、空気極252及び燃料極253を備え、発電反応により電力を発生するようになっている。固体電解質層251は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料によって形成され、厚さ0.01mmの矩形板状をなしている。固体電解質層251の熱膨張係数は、JIS Z2285;2003に規定されるものであり、具体的には8〜10ppm/℃程度となっている。なお、固体電解質層251の熱膨張係数は、常温〜300℃間の測定値の平均値をいう。また、固体電解質層251は、セパレータ226の下面側に配置されており、ロウ材241を介してセパレータ226の下面に固定されている。そして、セパレータ226の開口部234は、封止材244によって塞がれている。固体電解質層251は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。また、空気極252は、固体電解質層251の第1主面254(図2,図3では上面)の中央部に貼付され、燃料電池スタック202に供給された空気(酸化剤ガス)に接するようになっている。一方、燃料極253は、固体電解質層251の第2主面255(図2,図3では下面)全体に貼付され、同じく燃料電池スタック202に供給された燃料ガスに接するようになっている。即ち、空気極252及び燃料極253は、固体電解質層251の両側に配置されている。空気極252は、セパレータ226の開口部234内に配置され、セパレータ226と接触しないようになっている。また、燃料極253は、ニッケルとイットリア安定化ジルコニアとの混合物(Ni−YSZ)によって形成され、厚さ0.8mmの平面視矩形状をなしている。
図4,図5に示されるように、セパレータ226は、接合部240を介して、燃料電池セル本体227、具体的には、固体電解質層251の第1主面254の外周部に取り付けられている。そして、セパレータ226及び固体電解質層251は、互いに平行に配置されている。つまり、セパレータ226と固体電解質層251との間に生じる隙間S1の大きさは、ロウ材241側から開口部234側に亘って略均一に設定されている。また、接合部240は、銀(Ag)を含むロウ材241によって構成され、2体積%以上15体積%以下(本実施形態では10体積%)の、アルミニウム(Al)の酸化物または複合酸化物を含んでいる。ロウ材241は、セパレータ226において開口部234よりも外周側となる位置に接合され、開口部234の開口端の全周に亘って配置されている。なお、ロウ材241の幅L1は、厚さ方向に切断した断面図(図4参照)において、切断面の内端から外端までの距離を示すものであり、具体的には2mm以上6mm以下(本実施形態では4mm)に設定されている。また、ロウ材241の厚さは、10μm以上80μm以下(本実施形態では50μm)に設定されている。
図4,図5に示されるように、セパレータ226においてロウ材241よりも開口部234側に位置する部分と固体電解質層251との間には、封止部245が設けられている。封止部245は、例えばガラス(SCHOTT社製 G018−311)を含む封止材244を有しており、Al2O3換算で、2質量%以上20質量%以下(本実施形態では10質量%)のアルミニウム(Al)を含んでいる。封止材244の熱膨張係数は、JIS Z2285;2003に規定されるものであり、具体的には8〜12ppm/℃程度となっている。なお、封止材244の熱膨張係数は、常温〜300℃間の測定値の平均値をいう。また、封止材244は、セパレータ226において開口部234よりも外周側となる位置に配置されている。そして、封止材244は、開口部234の開口端の全周に亘って配置されている。このため、ロウ材241は、セパレータ226の開口部234側のガス(本実施形態では空気)に触れないようになる。さらに、封止材244(封止部245)は、セパレータ226の第1領域242と、セパレータ226において第1領域242の反対側に位置する第2領域243と、セパレータ226の開口部234側の端面(開口部234の内側面)とを被覆するようになっている。このため、セパレータ226は、封止材244によって挟み込まれている。また、封止材244は、セパレータ226の表面に密着するのに加えて、固体電解質層251の第1主面254に密着する一方、ロウ材241の開口部234側の端面からは離間するようになっている。よって、封止材244とロウ材241との間には空洞部247が生じるようになる。
図4に示されるように、セパレータ226と固体電解質層251との隙間S1内の領域(潜り込み箇所)では、封止材244の幅L2が0.05mm以上4mm以下(本実施形態では0.2mm)に設定されている。一方、セパレータ226の第2領域243における開口部234の開口縁(セパレータ226上)では、封止材244の幅L3が0.2mm以上4mm以下(本実施形態では1.5mm)に設定されている。なお、封止材244の幅L2,L3は、厚さ方向に切断した断面図(図4参照)において、切断面の内端から外端(ロウ材241寄りの部分)までの距離を示すものである。また、潜り込み箇所では、固体電解質層251の第1主面254を基準とした封止材244の厚さH1(図5参照)が10μm上80μm以下(本実施形態では50μm)に設定されている。一方、セパレータ226上では、第2領域243の高さを基準とした封止材244の厚さH2(図5参照)が10μm以上400μm以下(本実施形態では200μm)に設定されている。そして、固体電解質層251の第1主面254を基準とした封止材244全体の厚さは、70μm以上1000μm以下、好ましくは、120μm以上1000μm以下(本実施形態では350μm)に設定されている。
なお、図2,図3に示されるように、本実施形態のセパレータ付燃料電池セル201では、燃料極フレーム228の開口部233、及びコネクタプレート223等により、セパレータ226の下方に燃料室205が形成されるようになっている。なお、燃料室205内には、固体電解質層251及び燃料極253が収容されている。
また、本実施形態のセパレータ付燃料電池セル201では、コネクタプレート222、空気極フレーム224の開口部231、及び、絶縁フレーム225の開口部232等により、セパレータ226の上方に空気室206が形成されるようになっている。そして、空気極252の表面側には、ニッケル合金等の金属材料からなる集電体221が設置されるようになっている。その結果、空気極252及びコネクタプレート222は、集電体221を介して電気的に接続されるようになる。
さらに、図2に示されるように、燃料電池スタック202は、各セパレータ付燃料電池セル201の燃料室205に燃料ガスを供給する燃料供給経路260と、燃料室205から燃料ガスを排出する燃料排出経路261とを備えている。燃料供給経路260は、ガス流通用締結ボルト212の中心部において軸方向に沿って延びる燃料供給孔262と、燃料供給孔262及び燃料室205を連通させる燃料供給横孔263とによって構成されている。また、燃料排出経路261は、ガス流通用締結ボルト212の中心部において軸方向に沿って延びる燃料排出孔264と、燃料排出孔264及び燃料室205を連通させる燃料排出横孔265とによって構成されている。よって、燃料ガスは、燃料供給孔262及び燃料供給横孔263を順番に通過して燃料室205に供給され、燃料排出横孔265及び燃料排出孔264を順番に通過して燃料室205から排出される。
また、図2に示されるように、燃料電池スタック202は、各セパレータ付燃料電池セル201の空気室206に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室206から空気を排出する空気排出経路(図示略)とを備えている。空気供給経路は、燃料供給経路260と略同様の構造を有しており、ガス流通用締結ボルト212の中心部において軸方向に沿って延びる空気供給孔(図示略)と、空気供給孔及び空気室206を連通させる空気供給横孔(図示略)とによって構成されている。また、空気排出経路は、燃料排出経路261と略同様の構造を有しており、ガス流通用締結ボルト212の中心部において軸方向に沿って延びる空気排出孔(図示略)と、空気排出孔及び空気室206を連通させる空気排出横孔(図示略)とによって構成されている。よって、空気は、空気供給孔及び空気供給横孔を順番に通過して空気室206に供給され、空気排出横孔及び空気排出孔を順番に通過して空気室206から排出される。
例えば、燃料電池200を稼働温度に加熱した状態で、燃料供給経路260から燃料室205に燃料ガスを導入するとともに、空気供給経路から空気室206に空気を供給する。その結果、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とが固体電解質層251を介して反応(発電反応)し、空気極252を正極、燃料極253を負極とする直流の電力が発生する。なお、本実施形態の燃料電池スタック202は、セパレータ付燃料電池セル201を複数積層して直列に接続しているため、空気極252に電気的に接続される上側エンドプレート203が正極となり、燃料極253に電気的に接続される下側エンドプレート204が負極となる。
次に、燃料電池200の製造方法を説明する。
まず、プレス装置(図示略)を用いてステンレス板(金属板)の打抜加工を行うことにより、コネクタプレート222,223及び空気極フレーム224を形成する。また、セパレータ形成工程を行い、プレス装置を用いてステンレス板の打抜加工を行うことにより、セパレータ226を形成する。詳述すると、まず、打抜工程を行い、セパレータ226に開口部234を形成する。打抜工程後、ならし工程を行い、プレス装置を用いて第1領域242をならすことにより、セパレータ226の第1領域242における開口部234の開口縁を、C面248を有するように形成する。また、プレス装置を用いて第2領域243をならすことにより、セパレータ226の第2領域243における開口部234の開口縁を、C面246を有するように形成する。この時点で、セパレータ226が形成される。
また、マイカシートを所定形状に形成することにより、絶縁フレーム225及び燃料極フレーム228を形成する。具体的には、市販のマイカシート(マイカと成形用樹脂との複合体からなるシート)を他の部材(コネクタプレート222,223、空気極フレーム224及びセパレータ226など)と略同じ形状に形成する。なお、マイカシートに含まれている樹脂成分は、他の部材とともに積層された後に行われる熱処理によって蒸発する。さらに、マイカシートは、各セパレータ付燃料電池セル201を積層方向にボルト締めした際に他の部材に挟まれることによって、各部材をシールするようになっている。
次に、セパレータ付燃料電池セル201を、従来周知の手法に従って形成する。具体的には、まず、燃料電池セル本体形成工程を行い、燃料極253となるグリーンシート上に固体電解質層251となるグリーンシートを積層し、焼成する。さらに、固体電解質層251上に空気極252の形成材料を印刷した後、焼成する。この時点で、燃料電池セル本体227が形成される。
続く接合工程では、ロウ材241を用いたロウ付けにより、セパレータ226を固体電解質層251に接合する。具体的には、固体電解質層251とセパレータ226とのそれぞれにロウ材241を配置する。例えば、ペースト状のロウ材241を、固体電解質層251の第1主面254とセパレータ226の第1領域242とにそれぞれ印刷する。なお、印刷によってロウ材241を配置する代わりに、ディスペンサを用いてロウ材241を配置するようにしてもよい。
次に、ロウ材241を溶融し、固体電解質層251とセパレータ226とを接合する。具体的には、ロウ材241が配置された固体電解質層251と、同じくロウ材241が配置されたセパレータ226とを接触させた状態で、大気雰囲気下で、例えば850〜1100℃で加熱する。その結果、固体電解質層251側のロウ材241とセパレータ226側のロウ材241とがそれぞれ溶融し、固体電解質層251とセパレータ226とが互いに接合される。
続く封止工程では、セパレータ226と固体電解質層251との隙間S1を、封止材244によって封止する。具体的には、封止材244を含むペーストをディスペンサなどを用いて隙間S1に流し込むことにより、隙間S1に対して封止材244を配置する。さらに、封止材244を含むペーストを、大気雰囲気下で、ロウ材241の溶融時よりも低い温度(本実施形態では700〜1000℃)で加熱する。その結果、ペーストが溶融し、封止材244が形成される。なお、ペーストを流し込むことによって封止材244を形成する代わりに、封止材244を含むペーストを印刷することによって、封止材244を形成してもよい。また、ガラスを含む板材を隙間S1内に配置した後、溶融させることによって、封止材244を形成してもよい。
その後、空気極フレーム224、絶縁フレーム225、(固体電解質層251がロウ付けによって固定された)セパレータ226及び燃料極フレーム228などを積層して一体化する。この時点で、セパレータ付燃料電池セル201が形成される。
次に、複数のセパレータ付燃料電池セル201やコネクタプレート222,223などを積層して一体化することにより、燃料電池スタック202を形成する。そして、燃料電池スタック202の四隅にある4つの貫通孔210に締結ボルト211を挿通させ、燃料電池スタック202の下面から突出する締結ボルト211の下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔210にガス流通用締結ボルト212を挿通させ、燃料電池スタック202の上面及び下面から突出するガス流通用締結ボルト212の両端部分にナット213を螺着させる。その結果、各セパレータ付燃料電池セル201が固定され、燃料電池200が完成する。
次に、セパレータ付燃料電池セルの評価方法及びその結果を説明する。
まず、測定用サンプルを次のように準備した。第2領域282側のみにC面283を有し、第1領域281側にC面を有しないセパレータ284を備えたセパレータ付燃料電池セル280(図6参照)を準備し、これを実施例とした。一方、第1領域271側にも第2領域272側にもC面を有しないセパレータ273を備えたセパレータ付燃料電池セル270(図7参照)を準備し、これを比較例とした。
次に、各測定用サンプル(実施例、比較例)を観察し、封止材274,285にヒケ(ガラスヒケ)が発生しているか否かの評価を行った。なお、ガラスヒケが発生しているか否かの評価は、それぞれ100個の測定用サンプルに対して行った。以上の結果を表1に示す。
その結果、比較例では、ガラスヒケが30%の確率で発生していることが確認された。一方、実施例では、ガラスヒケが全く発生していない(0%の確率で発生している)ことが確認された。従って、セパレータの第2領域における開口部の開口縁をC面を有する形状とすれば、ガラスヒケが生じなくなるため、燃料電池セル本体とセパレータとの接合部分の信頼性が高いセパレータ付燃料電池セルを得られることが証明された。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、セパレータ226においてロウ材241よりも開口部234側に位置する部分と固体電解質層251との間に、セパレータ226の第1領域242及び第2領域243の両方を覆う封止部245が設けられるとともに、第2領域243がC面246を有する形状となっている。この場合、封止材244は、熱処理時にヒケが生じにくくなるため、気泡(セパレータ226と固体電解質層251との間に生じる隙間S1内の空気)が弾けにくくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因したリークパスの形成を防止できるため、封止材244によるガス封止をより確実に行うことができる。以上のことから、封止材244の破損を確実に防止できるため、固体電解質層251とセパレータ226との接合部分の信頼性を向上させることができる。
(2)本実施形態では、セパレータ226においてロウ材241よりも開口部234側に位置する部分と固体電解質層251との間に封止材244が設けられるため、セパレータ226と固体電解質層251との間に配置されたロウ材241が、空気極252に接する空気に対して直接接触しなくなる。その結果、ロウ材241への空気の移動が抑制されるため、ロウ材241中での空気の拡散が抑制され、水素と酸素との反応を起因とするボイドの発生を抑制することができる。
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記実施形態のセパレータ付燃料電池セル201では、セパレータ226と固体電解質層251との間に生じる隙間S1の大きさが、ロウ材241側から開口部234側に亘って略均一に設定されていた。しかし、図8のセパレータ付燃料電池セル291に示されるように、セパレータ292と固体電解質層293との間に生じる隙間S2を、ロウ材294側から開口部295側に行くに従って大きくなるように設定してもよい。なお、このセパレータ292の開口部295側の端部296は、上方に突出するように湾曲した断面円弧状をなしている。また、セパレータ292の第2領域297における開口部295の開口縁は、C面298を有する形状となっている。さらに、セパレータ292の第2領域297においてセパレータ292と固体電解質層293(燃料電池セル本体)との距離が最大となる箇所では、第2領域297の高さを基準とした封止材299の厚さH3が、10μm以上400μm以下(本実施形態では200μm)に設定されている。
このようにすれば、封止材299の形成材料を、広がっている開口部295側から隙間S2内に容易に流し込むことができる。その結果、封止材299の形成材料によって隙間S2が充填されやすくなり、形成材料が気泡(隙間S2内の空気)を巻き込みにくくなる。従って、熱処理時において気泡が弾けることに起因した封止材299の破損を防止できるため、封止材299によるガス封止をより確実に行うことができる。ゆえに、固体電解質層293とセパレータ292との接合部分の信頼性がよりいっそう向上する。
・上記実施形態のセパレータ226は、第2領域243における開口部234の開口縁が、C面246を有する形状となっていた。しかし、図9のセパレータ331に示されるように、第2領域332における開口部333の開口縁が、R面334を有する形状となっていてもよい。また、上記実施形態のセパレータ226は、第1領域242における開口部234の開口縁が、C面248を有する形状となっていた。しかし、図10のセパレータ335に示されるように、第1領域336における開口部337の開口縁が、R面338を有する形状となっていてもよい。さらに、図12のセパレータ365に示されるように、セパレータ365の開口部366を樹脂材料等からなる被覆部367で覆うことにより、第2領域368における開口部366の開口縁も、第1領域369における開口部366の開口縁も、R面370を有するようにしてもよい。
・上記実施形態のセパレータ226は、第2領域243における開口部234の開口縁が、C面246を有する形状となっていた。しかし、図11のセパレータ361に示されるように、第2領域362においてセパレータ361と固体電解質層363との距離が最大となる箇所A1が、R面364またはC面を有する形状となっていてもよい。なお、上記の箇所A1では、第2領域362の高さを基準とした封止材360の厚さH4が、10μm以上400μm以下(本実施形態では200μm)に設定されている。
・上記実施形態のセパレータ付燃料電池セル201は、いわゆる燃料極支持型の燃料電池セルであり、空気極252が固体電解質層251の第1主面254の中央部に配置される一方、燃料極253が固体電解質層251の第2主面255全体に配置され、第1主面254の外周部にセパレータ226が取り付けられる構成を有していた。
しかし、図13に示されるように、空気極342が第1主面344全体に配置される一方、燃料極343が第2主面345の中央部に配置され、第2主面345の外周部にセパレータ346が取り付けられる、いわゆる空気極支持型のセパレータ付燃料電池セル341であってもよい。また、図14に示されるように、空気極352が第1主面354の中央部に配置されるとともに、燃料極353が第2主面355の中央部に配置され、第1主面354の外周部にセパレータ356が取り付けられる、いわゆる電解質支持型のセパレータ付燃料電池セル351であってもよい。なお、セパレータ356は、第2主面355の外周部に取り付けられていてもよいし、第1主面354の外周部及び第2主面355の外周部の両方に取り付けられていてもよい。
次に、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1において、前記セパレータと前記燃料電池セル本体とが互いに平行に配置されていることを特徴とするセパレータ付燃料電池セル。
(2)上記手段1において、前記セパレータの前記第2領域における前記開口部の開口縁、または、前記セパレータの前記第2領域において前記セパレータと前記燃料電池セル本体との距離が最大となる箇所では、前記燃料電池セル本体の主面を基準とした前記封止材の厚さが70μm以上1000μm以下に設定されていることを特徴とするセパレータ付燃料電池セル。
(3)上記手段1において、前記封止材は、前記第1領域、前記第2領域、及び、前記第1主面に密着する一方、前記ロウ材の前記開口部側の端面から離間していることを特徴とするセパレータ付燃料電池セル。従って、技術的思想(3)によると、ロウ材と封止材(ガラス)との間の熱膨張差に起因するクラックの発生を防止することができる。
(4)上記手段1において、前記空気極が前記第1主面の中央部に配置される一方、前記燃料極が前記第2主面全体に配置され、前記セパレータが、前記ロウ材を介して前記第1主面の外周部に取り付けられていることを特徴とするセパレータ付燃料電池セル。