以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1はこの発明の第1の実施例で、測距装置の概念を示したブロック図である。同図に於いて、CPU1は、被写体に対し、測距用光を投光する手段である投光部2及びこの投光部2を走査する走査部3を制御する。また、受光レンズ4の後方には光位置検出素子(PSD)5が位置され、同様に受光レンズ6の後方にはPSD7が位置されている。そして、これらPSD5及び7の出力は、光位置検出回路8及び9を介して、それぞれCPU1に入力される。
このような構成に於いて、投光部2から、図示されない被写体に対し、測距用光が投光される。このとき、投光部2は、走査部3を介してCPU1によってその投光方向が変化されるように制御されて走査されるようになっている。これにより、画面内の各ポイントの測距が可能となる。
上記投光部2によって投射された測距用光は、図示されない被写体上で反射され、2つの受光レンズ4及び6を介して、各々PSD5及び7上に光点を結ぶ。これら2つのPSD5及び7の出力信号に基いて、光位置検出回路8及び9にて上記光点の入射位置が演算される。そして、光位置検出回路8及び9の出力により、CPU1で被写体距離が演算される。
図2は、この発明の測距装置の測距原理を示したものである。同図に於いて、10は被写体上に投光された測距用光スポットであり、この測距用光スポット10から距離Lだけ離れた位置に受光レンズ4、6が配置されている。そして、これら受光レンズ4、6の後方にPSD5、7が配置されている。また、受光レンズ4、6とPSD5、7間の距離をfJ とし、PSD5、7上の光点位置を各々のレンズの光軸基準で図示の如くx1 、x2 とすると、次の関係式が成立する。
L:fJ =S1 :x1
L:fJ =S2 :x2
S1 =L・x1 /fJ …(1)
S2 =L・x2 /fJ …(2)
S=S1 +S2 =(L/fJ )(x1 +x2 ) …(3)
L=(S・fJ )/(x1 +x2 ) …(4)
したがって、PSD5、7によってx1 、x2 を検出すれば、S、fJ は固定値となるので、距離Lを求めることができる。
故に、測距用光スポット10の位置に関係なく、正確な測距が可能となる。
次に、この発明の測距装置をカメラに適用した第2の実施例を説明する。
図3は、この発明の第2の実施例の構成を示すブロック図である。上述した第1の実施例では、PSD5、7として1次元位置検出型のものを用いたが、この第2の実施例では、IREDを2次元的にスキャンするタイプの機構を採用し、PSDも2次元の位置検出が可能なものを用いている。したがって、同実施例によれば、カメラ画面内に投光ポイント(測距用光ポイント)を配送することが可能となる。
先ず、この2次元的にIREDをスキャンする機構について説明する。IRED11はIREDドライバ12を介してCPU1により駆動制御されるもので、その前方には投光レンズ13が配置されている。上記IRED11はIRED保持部14に取付けられているもので、モータ(M)ドライバ15により駆動されるモータ16及び送りねじ17によって、ガイドレール18に沿って図示x方向にスライドする。また、IRED11及びIRED保持部14は、モータ(M)ドライバ19により駆動されるモータ20及び送りねじ21によって、支持部22と共にガイドレール23に沿って図示y方向にスライドする。
一方、基線長Sだけ離れて配置された受光レンズ4及び6の後方には、それぞれ2次元の位置検出が可能なPSD5及び7が配置されている。そして、PSD5の出力は光位置検出回路8a及び8bを、PSD7の出力は光位置検出回路9a及び9bを介して、それぞれCPU1に供給される。尚、24は測距の開始タイミングを入力するためのスイッチであり、一般にレリーズスイッチと兼用される。
また、図4(a)は図3に示した測距装置をカメラに組込んだ配置を示す外観図である。図4(a)に於いて、カメラボディ25の上面にはレリーズスイッチ24が設けられている。このカメラの前面で、その略中央部には撮影レンズ26が、そして、その周辺にはファインダ27の窓、及び測距装置の投光レンズ13、受光レンズ4、6が、図示の如く配置されている。
このような構成に於いて、Mドライバ15によってモータ16が回転すると、IRED保持部14がガイドレール18に沿って、送りねじ17によってx方向にスライドする。また、支持部22はガイドレール23に沿って可動となっており、Mドライバ19によって駆動されるモータ20が送りねじ21を回転させることにより、IRED11がy方向にスキャンされる。CPU1は、Mドライバ15及び19を所定のシーケンスに従って制御しながら、IREDドライバ12を介してIRED11を発光させる。
IRED11からの測距用光は、投光レンズ13によって図示されない被写体に投光される。この測距用光は、IRED11の位置と、投光レンズ13の主点を結ぶ方向に投射されるので、IRED11の位置がx、y方向に移動する度に、図4(b)に示されるように、写真画面(ファインダ)上の測距ポイント28が2次元的に変化する。
一方、IRED11の発光に同期して、2つのPSD5、7の出力から、受光レンズ4、6を介してPSD5、7に入射した被写体から反射信号光の位置が、光位置検出回路8a、8b、9a、9bによって検出される。CPU1は、これら光位置検出回路8a、8b、9a、9bの出力より、画面内の各ポイントの被写体までの距離を演算する。
ここで、図3の光位置検出回路について、図5を用いて説明する。
PSD30の両端からは出力電流i1 、i2 が出力され、それぞれプリアンプ31、32、圧縮ダイオード33、34、バッファ35、36を介して、定電流源37と共に差動演算回路を構成するNPNトランジスタ38、39のベースに供給される。上記トランジスタ38、39はエミッタが共通接続されて定電流源37と接続している。また、トランジスタ39のコレクタは、積分用コンデンサ40を介して電源に接続されると共に、スイッチ41、端子42を介してCPU1に接続される。尚、PSD30の出力には、背景光の電流を除去する背景光除去回路43が接続されている。
いま、長さtのPSD30に、図5に示されるようにxの位置に信号光が入射しているとする。2つの出力電流i1 、i2 は、この光位置xとtに依存し、
i1 /(i1 +i2 )=x/t …(5)
の関係を満たす。
ところが、PSD30には、信号光以外にも入射する背景光があり、これを取り除かなければ上記(5)式のi1 、i2 を得ることはできない。したがって、PSD30の出力に、背景光電流除去回路43が接続されている。
信号光電流i1 、i2 は、プリアンプ31、32によってβ倍に増幅され、図5に示されるように、圧縮ダイオード33、34に流れる。この圧縮ダイオード33、34に生じた電圧を、バッファ35、36によって差動演算回路に入力される。CPU1により制御される定電流源30は、IREDの発光、つまり信号光の入射に同期してI0 の電流を流す。一方、積分用コンデンサ40は、IREDの発光前はスイッチ41によって両端の電位を等しくVccに初期化されている。
このスイッチ41は、IREDの発光に同期してオフする。
このように構成された回路により、PSD30の出力電流i1 、i2 とIINT の関係は、
IINT =(i1 /(i1 +i2 ))×I0
=(x/t)I0 …(6)
となる。この電流IINT は、積分コンデンサ40に所定時間積分されるので、端子42の電圧を検出することにより、CPU1は上記(6)式により
x=t・IINT /I0 …(6)′
として信号光入射位置xを演算することができる。
図3に示された光位置検出回路8a、8b、9a、9bは、このような原理により光の位置を検出する。
次に、図6(a)を用いて、これらのPSD上の信号光位置から被写体距離Lを求める方法について説明する。
上述した図2の例では、x方向の1次元投光スキャンについて測距原理の説明をしたが、ここでは更に測距ポイントのy方向の変化についても考慮した、2次元の投光スキャンに対応するAFの実施例となっている。つまり、図6(a)の受光レンズ4、6の光軸と測距ポイントのなす角度θがθ=0の時、図2で説明した上記(4)式が成立する。
図6(a)に於いて、上記(4)式より
L1 =S・fJ /(x1 +x2 ) …(7)
となるから、
L=L1 cosθ …(8)
であり、θを検出すれば上記(7)式と合わせて、x1 、x2 より被写体距離Lが求められることが明らかである。
投光レンズ13より被写体44に向けて投光された測距用光は、図4(a)に示されるように受光レンズ4、6を配置し、更に2次元PSD5、7については、2つの受光レンズ4、6の主点を結ぶ方向(x)と、それと垂直な図中y方向を検出できるようにy方向を揃えて配置したとき、図6(b)に示されるように、2つのPSD5、7上に光点を結ぶ。
2組の受光レンズとPSD間の距離を共にfJ とすると、レンズ光軸のPSD上の位置45、46を基準とした光点のy方向の位置y1 は、上述したθとの間に次の関係式が成立させる。
tanθ=y1 /fJ …(9)
この関係より、被写体距離Lは、次のように、x、y方向の光点位置、x1 、x2 、y1 より演算することが可能となる。
L=(S・fJ /(x1 +x2 ))・cos(arctan(y1 /fJ ))
…(10)
したがって、図3に示されるように、2次元PSD5、7の出力からCPU1と光位置検出回路8a、8b、9a、9bとがx1 、x2 、y1 を演算することにより、CPU1は上記(10)式に従って被写体距離を求めることができる。
尚、光位置検出回路については、図5で説明したものを用いている。y1 は、いずれのPSDでも検出できるが、ここでは後述する図7(b)のようなフローチャートを想定して、y1 の検出精度を上げている。
次に、図7及び図8のフローチャートを参照して、この測距装置のスキャンAF動作について説明する。
図7に於いて、ステップS1は、図3のモータ19、20を逆転させて、IRED11の位置を初期化するステップである。同時に、この位置をM=0、N=0とする。次いで、ステップS2にて、y方向の最初の測距座標を決定する。そして、ステップS3に於いて、スキャン測距されたポイント数がM1 を超えたか否かを判定する。
ここで、まだ上記測距されたポイント数がM1 を超えていなければ、ステップS4に進んでx方向へIRED11を所定量スキャンする。そして、ステップS5にてMをインクリメントして、ステップS6で測距を行い、ステップS3に戻る。このように、ステップS3〜S6にて、図4(b)に参照されるように、x方向のM1 ヶ所の測距が順次行われる。
こうして、ステップS3でx方向のスキャンが一通り行われたことが判定されると、次にステップS7へ分岐するが、これは次の測距y座標を決定するためである。そして、ステップS8でNのインクリメントがなされた後、ステップS9に於いて、スキャン測距されたポイント数がN1 となるのを判定する。
ここで、スキャン測距されたポイント数がN1 を超えなければ、ステップS10に進んで、x方向の位置をリセットする。次いで、ステップS11にて、Mの値も初期化してステップS4へ戻り、先に説明したx方向M1 ヶ所の測距を行う。これは、ステップS9にてy方向N1 ヶ所の測距が終了するまで繰返される。そして、ステップS12にて、得られた測距結果L11〜LM1N1より最も近い測距結果にピント合わせするようにする。
このフローチャートにより、図4(b)に示されるように、写真画面内にM1 ×N1 の数の測距ポイントを配置することができる。
ところで、2次元PSDで同時にx方向、y方向の光位置を検出するのは困難である。したがって、同実施例では、2回IREDを発光させて、その都度x方向の光位置座標、y方向の光位置座標を検出するようにしている。但し、異なるPSDに接続された位置検出回路は、同時に作動させることができる。
故に、図7のステップS6に於ける測距のサブルーチンでは、ステップS22とS23、ステップS28とS29のように、同時のタイミングでPSD5、7それぞれからの光位置検出が行われていることを明示している。
図8に於いて、先ずステップS21にてIRED11を発光開始させ、光位置検出回路8a、8b、9a、9bを用いて、ステップS22及びS23のように同一タイミングでx方向の信号光入射位置x1 、x2 を求める。具体的には、各光位置検出回路8a、8b、9a、9bの積分コンデンサ(図5の40)に、上記(6)式に依存した電圧が発生し、ホールドされる。そして、ステップS24に於いて、所定時間の積分コンデンサへの積分終了を判定する。ここで、積分が終了した後、ステップS25にてIRED11の発光を終了する。
次に、再度IRED11を発光させるが、連続発光によるIRED11のチップ温度上昇による光量劣化を防ぐため、ステップS26にてタイマで所定時間のインターバルをおく。このステップS26に於いては、上述したステップS22、S23にて、積分コンデンサによるホールドされた積分電圧を、CPU1がA/D変換して読込むようにする。
次に、ステップS27で再度IRED11を発光させ、ステップS28及びS29でy方向の信号光入射位置y15、y16を光位置検出回路8b、9bによって検出させる。
上述したx方向の検出と同様、ステップS30で所定時間の積分が終了すると、ステップS31に進んでIRED11の発光を終了させる。そして、ステップS32で再度積分結果を読出し、上記(6)′式で説明したようにして求められた信号光位置y15とy16を、ステップS33のように平均化し、測定誤差を小さくするようにする。このようにして得られたy1 、及びx1 、x2 から、ステップS34にて、上記(10)式で説明したような演算式を用いて被写体距離を算出する。
以上説明したフローチャートでは、図9(a)に示されるように測距が行われるが、これに限られず、例えば図9(b)に示されるように測距ポイントの変更を行ってもよい。この図9(b)に示される例によれば、測距時間は更に短くできるというメリットがある。
こうした測距装置によって、図10に示されるように、画面27の中央部47のポイントに被写体が存在しないシーンであっても、正しく主要被写体44にピント合わせが可能となる。
以上のように、同実施例によれば、画面内の複数のポイントを高精度、高速で測距し、正しいピントの写真を簡単に撮影できるカメラを単純な構成で提供することができる。
また、同実施例によれば、IREDの可動部のがたつきとは全く関係なしに、(10)式に従って測距ができるので、厳密なスキャン位置検出用の手段が不要である。すなわち、図7のフローチャートのステップS1のようにIREDを初期化する際、その位置を適当に検出できればよく、続く所定量のスキャンもモータへの通電時間等で制御すればよいので、投受光間を基線長とする従来のアクティブ式三角測距方式で投光部をスキャンする時のように厳密な位置決めを必要としない。
尚、図11に示されるように、画面内中央部に主要被写体44が存在し、単に最至近の被写体にピント合わせしてしまうと、雑被写体48にピントが合い、主要被写体44のピントが甘くなってしまうシーンも多いので、画面中央部の測距結果だけは特別扱いとする主要被写体選択フローチャートも考えられる。例えば、画面中央に誰も存在せずに風景しかない時、画面中央の測距結果は無限遠の値を示すので、この時のみ最至近を選択するようなアルゴリズムが考えられる。
上述したように、厳密な位置決め手段を有していなくとも、この発明によれば、画面中央の測距結果が選択できるので、これを第3の実施例として図12を参照して説明する。
図12(a)はこの発明の第3の実施例で、測距装置をカメラに組込んだ配置を示す正面図である。カメラボディ25の上面にレリーズスイッチ24が設けられている。また、このカメラの前面には、その略中央部に撮影レンズ26が、そして、その周辺にはファインダ27の窓、及び測距装置の投光レンズ13、受光レンズ4、6が、図示の如く配置されている。
図12(b)は、同図(a)のカメラを上方からみた概念図である。同図に於いて、ファインダ対物レンズ27に対し、2つの受光レンズ4、6が並んで配置されている。ここで、x座標のみ考えれば、カメラ画面の中心は図中47の位置だが、y方向を考えなければ図示していない投光部から、このポイントに測距用光を投射した時に得られる測距結果が画面中心の測距結果といえる。
したがって、ファインダ対物レンズ27と受光レンズ4の主点間距離のx方向をS2x(図4(a)参照)とすると、受光レンズとPSD間の距離fJ より、PSD7上の信号光受光位置x1 と距離Lには、次の関係が成立する。
x2 =((S+S2x)・fJ )/L …(11)
PSD5上の信号位置x1 を用いてもよいが、一般に、基線は長い方が良いので、x2 を利用する。
また、y座標のみ考えれば、図12(c)に示されるようになる。同図に於いて、13を投光レンズ、11をIRED、ファインダ対物レンズを27とすると、画面中央の被写体から入射する反射信号光は、受光レンズ4を介してPSD7のy1 の位置に光点を結ぶ。この時、PSD7上のy方向の信号受光位置y1 は、距離Lとの間に、次の関係を成立させる。
y1 =(S2y・fJ )/L …(12)
ここでS2 は、図4(a)に示されるように、レンズ27と、レンズ4の主点間距離のy方向成分を示している。
S+S2x=30mm、fJ =20mm、S2y=30mmとすると、(11)式及び(12)式は、
x2 ・L=y1 ・L=600mm2 …(13)
となる。
図13は、このような画面中央部の測距結果LMNO を重視した第3の実施例の動作を説明するフローチャートである。この図13のフローチャートに於いて、ステップS1〜S11は、上述した図7のステップS1〜S11と同じであるので、説明は省略する。
ステップS9にて、スキャン測距されたポイント数NがN1 を超えれたならば、ステップS13に進んで、上記(11)式及び(12)式で説明した原理に従って、求められた距離LMNと、その時の光入射位置x2 、L1 から画面中央の測距結果を判断する。ここでの判定用数値は上記(13)式に基いている。尚、不等式としたのは、光位置検出回路のばらつきや、IREDスキャン位置に誤差があるためである。
次に、ステップS14に於いて、こうして求められた画面中央部の測距結果LMNO と所定距離L1 を比較する。ここで、例えば、L1 =5mより近い距離の場合は、中央にいる被写体は主要被写体と考えられるので、ステップS15へ分岐して、上記画面中央部の測距結果LMNO にピント合わせを行う。一方、L1 =5m以上の遠距離の場合は、画面中央に主要被写体は存在しないとしてステップS16に分岐する。そして、図7のステップS12と同様に、ステップS16にて、得られたM1 ×N1 の測距結果から最も近い距離を選び、ここにピント合わせをする。
このような実施例では、図11に示されるようなシーンに於いても、正しく主要被写体である人物にピント合わせが可能となる。
ところで、図14に示されるように、一般的な従来のカメラのファインダレンズ27と、投光手段(IRED11、投光レンズ13)の位置関係は固定であり、27aで示される位置の画面に対しては中央部の測距ができても、27bで示される位置の画面に対しては画面中央部の測距はできない。これを測距系とファインダ系のパララックス誤差と称するが、上述した第3の実施例では、こうしたパララックスの問題にも対策が可能である。
また、以上の説明では測距用光スキャンの例として、図3に示されるIREDスキャン機構を前提としていたが、これに限られるものではなく、例えば図15(a)及び(b)に示されるような機構でも代用可能である。すなわち、図15(a)は、投光レンズ13及びIRED11を一体的にして、支点49を軸に回動可能なユニット50の構成を示している。また、図15(b)は、投光レンズ13を介して投光されたIRED11の測距用光を、支点51を中心に回動可能とするミラー52によって反射させる機構を示している。
尚、上述した実施例では、光位置検出素子にPSDを用いて説明したが、これに限られものではなく、2分割SPDを用いてもよいものである。
次に、図16乃至図19を参照して、この発明の更なる実施例について説明する。
図16に於いて、IRED53は、長さt、幅wで表される大きさのPSD54と55の縦方向、すなわち図示y方向の真中に配置されている。そして、これらIRED53、PSD54及び55の前方には、それぞれ投光レンズ56、受光レンズ57及び58が、縦方向に配置されている。IRED53から投光レンズ56を介して投射される測距用光59は、スキャン装置60によって投光方向が変更可能(θx )となっている。また、スキャン位置は、位置検出回路61によりCPU62に入力される。
上記受光レンズ57及び58を介して受光された反射信号光は、PSD54及び55により受光され、その受光位置がAF回路63により検出されるようになっている。このAF回路63には、後述する傾き調整回路64から測距結果を補正する値が得られるようになっている。
尚、上記CPU62には、装置の調整値を記憶している電気的に書換え可能なメモリであるEEPROM65が接続されている。
図17は、このような構成の測距装置が搭載されたカメラの外観図である。同図に於いて、カメラボディ66の上面にはレリーズスイッチ67が設けられている。そして、このカメラの前面で、その略中央部には撮影レンズ68が、その上方にはファインダ対物レンズ69が配置されている。また、撮影レンズ68の周辺部でファインダ対物レンズ69に隣接して受光レンズ57が配置され、更にこの受光レンズ57の下方には投光レンズ56、受光レンズ58が、それぞれ図示の如く配置されている。尚、70はストロボを表している。
次に、このような構成の測距装置の2つのPSDの動作を図18を参照して説明する。
PSD54は、受光レンズ57を介してθ
57の範囲から入射する光信号の位置を測定できる。一方、PSD55は、受光レンズ58を介してθ
58の範囲からの光信号を測定できる。したがって、2つのPSDが同時に測定できる光点の位置は、図18(a)の斜線部Eで示されるθ
y の範囲となる。つまり、PSD端部から受光レンズ光軸までの距離をaとし、焦点距離をf
J とすると、θ
y は(14)式のように表される。
ここで、fj =16mm、a=0.3mmとすると、θy は約2°しかないことになる。
一方、図16に示されるように、PSD54、55の幅wを考慮すると、図示x方向の光点の検出可能範囲θx は
θx =arctan(w/fJ ) …(15)
となり、w=3mm、fJ =16mmとすると、θx は10.6°となる。ここでθy を広げようとするにはaを大きくすることが考えられるが、aを大きくするとPSDの長さtが大きくなり、AFの分解能が劣化する。
このように考えると、この測距装置にて写真画面内の多くのポイントの測距を行おうとすると、y方向よりもx方向の方が広い範囲を補えることがわかる。
図18(b)は、測距用光59が同一距離でy方向に移動した時の各PSD54、55に入射するy方向の光点位置を示したものである。図18(a)に示されたように、両PSDに対称に光が入射する位置に於いて、各PSD54、55の出力によるPSD上の光点位置54a、55aは交差する。受光レンズ57、58とPSD54、55が対称性良く配置され、2つのPSDの出力を処理する回路が全く等しい特性を有していれば、54a、55aの結果を加算することにより、正しい測距結果を得ることができる。
ここで注意するべきことは、回路や各素子の配置等がアンバランスになれば、直線55bに示されるように、各PSDの出力の傾きがアンバランスになってしまい、上記加算によっても正しい測距結果が得られないということである。これを電気的に補正するのが、上述した傾き調整回路64である。
また、図18(c)は、測距用光59が同一距離でx方向に動いた時の各PSD54、55上のy方向の光点位置を示したものである。y方向への変化がないので、理想的には図示されるように、一定の出力となる。
したがって、図16の構成の測距装置は、先の定数の条件下に於いて、x方向10°、y方向2°の範囲から入射される測距用光に対して、2つのPSDの出力に従った測距が可能となる。
このような測距方式であれば、図19に示されるような、画面内2°×10°の範囲E′の部分から反射してくる測距用光に対して、正しいピント合わせが可能となる。したがって、測距用光が図19に示されるように広がって、被写体からはみ出すような場合でも、反射光が返ってきさえすれば正しく測距できるというメリットがある。
特に、遠距離の被写体では、投光スポット径φT が、(16)式の関係で距離Lに比例して大きくなる。故に、顔の大きさφF よりφT が大きくなりがちである。
φT =(φLED /fT )・L …(16)
但しfT :投光レンズ焦点距離
φLED :IREDの発光径
一般のアクティブ式三角測距方式では、φF >φT の条件でしか正しい測距はできないが、同実施例によれば、上述したように被写体から測距用光の一部が反射して2つのPSDに入射すれば、正しい測距が可能となるというメリットがある。
次に、図20を参照して、同実施例をより詳細に説明する。
IRED53は、IREDドライバ71を介してCPU62により発光制御されるもので、可動部材72に取付けられている。このIRED53は、モータ73と送りねじ74によって図示x方向に、またモータ75と送りねじ76によってy方向に可動となっている。そして、CPU62がモータ(M)ドライバ77、78を介してモータ73、75の回転を制御することによって、IRED53と投光レンズ56との相対位置を制御することができる。
初期位置スイッチ79は、IRED53の初期位置を検出するためのものであり、この初期位置から各モータがどれだけ回転したかによって、CPU62がIRED53の位置を検出するようになっている。IRED53の位置によって投光レンズ56を通る光線の方向が変化するので、図16に示されるように、測距用光投ポイント59を変化させることができる。CPU62は、このようにIRED53の位置を変更しながら、IREDドライバ71を制御して画面内の各部を測距する。
このように投光された測距用光は、図示されない被写体上で反射され、2つの受光レンズ57、58を介して、PSD54、55上に結像される。これらPSD54、55に入射された測距用光から、PSDの機能によって光の入射位置に対応する出力の2つの電流信号が出力される。これらの電流信号がプリアンプ80、81、82、83にて低入力インピーダンスで吸取られ、増幅されて圧縮ダイオード84、85、86、87に入力される。
圧縮ダイオード84、85、86、87に生じた各圧縮電圧は、バッファ回路88、89、90、91にて基準電圧Vref 基準で、各々NPNトランジスタ92、93、94、95のベースに導かれる。NPNトランジスタ92と93、及び94と95は、それぞれエミッタが共通に接続された差動回路を構成している。そして、これらNPNトランジスタのエミッタには、IRED53の発光に同期して所定の電流値を流したり止めたりすることのできる電流源96、97が接続されている。また、NPNトランジスタ93、94のコレクタはVccに接続されており、NPNトランジスタ92、95のコレクタは、積分用コンデンサ98を介してVccに接続されている。この積分用コンデンサ98の出力電圧は、CPU62によって制御されるもので、スイッチ99によって初期化が可能である。
このようにして、PSD54および55の2つの出力電流が圧縮され、差動回路に入力されるので、NPNトランジスタ92、95のコレクタ電流は、各PSDの信号光入射位置に比例した出力となる。これらのコレクタ電流をI92、I95とする。
ここで、図18(a)に示された記号を用いると、
I92=A92・(a+y54)
I95=A95・(a+y55) …(17)
但しA92、A95:比例定数
となるので、A92=A95とすると、スイッチ99をオフし、IRED53を発光させた時、積分コンデンサ98に発生する電圧V98は、
V98=A92(2a+y54+y55)・B98 …(18)
但しB98:比例定数
となる。
つまり、(19)式に表される関係となるので、CPU62がこのV
98を内蔵のA/D変換器により入力すると、V
98からy
54+y
55が求められる。
したがって、被写体距離Lは
L=S・fJ /(y54+y55) …(20)
として算出できる。
風景等を測距すると、被写体からの反射信号光がPSDに入射しない場合がある。この場合、信号光が少ないと圧縮ダイオードの出力電圧が小さくなり、ノイズによる測距演算がなされてしまう。この演算結果は、当然正しい被写体距離とは無関係なので、比較回路100、101によって上記圧縮ダイオード85、87の出力電圧が判定される。この出力電圧が、所定レベルよりも小さい時、この比較回路がCPU62に対して判定信号を出力する。したがって、CPU62は、この信号を検知した時、積分コンデンサ98の出力電圧は無視して、被写体距離を例えば無限遠と判定する。
尚、102は、図18(b)に於いて55a、55bとして説明した傾きの調整回路である。
図21は、この調整回路102を説明するためのものである。例えば、図21(c)に示されるように、製造上、各受光レンズ57、58と各PSD54、55の位置関係が正しく一致しない場合がある。つまり、fJ54 をfJ55 と完全に一致させるのも、またPSDの組付け上、傾きθ54とθ55を完全に一致させるのも困難である。
こうした組立て上の誤差は、そのまま図18(b)に示されるようなAF結果の傾き誤差につながるが、これを機械的に調整して、傾き調整を行うには、専用の調整用機構を用意する必要が生じるので、高価となりやすく、調整時間も長くなりがちである。そこで、これを電気的に調整するために、調整回路102及びEEPROM65が用いられる。
より具体的には、調整回路102は、図21(a)に示されるように構成されているもので、電流源96の電流値を切換えるようになっている。
電流源96の電流値が変化すると、上述したNPNトランジスタ92のコレクタ電流I92とPSD54に入射された光位置y54の比例定数A92を変化させることができる。したがって、PSDの組付けによって、この比例定数A92がもう一方の受光系の比例定数A95と一致しない時にも、電気的にこれを調整し、正しい測距が可能となる。
電流源96は、図示されるようにNPNトランジスタにより構成されており、NPNトランジスタ103と共にカレントミラー回路を形成している。このNPNトランジスタ103は、コレクタとベースが短絡されており、このコレクタに5つの定電流源104、105、106、107、108が接続されている。104〜108のうち、105〜108の4つの電流源は、フリップフロップ109、110、111、112から成るカウンタ回路によって、オン、オフが制御される。
CPU62は、このカウンタ回路にCK(クロック)信号とReset(リセット)信号を入力制御することにより、各電流源をオン、オフ制御することができる。このカウンタ回路のCK端子にリセット信号L(ローレベル)の状態で所定のクロックを入力すると、図21(b)に示されるように、トランジスタ103及び96のコレクタに流れる電流値IINT が変化する。
したがって、装置の組立て時に、PSDの組付け誤差等に基くA92とA95の差を検出しておき、それを打消すだけのIINT の値を演算し、このクロック数に相当する値を、電気的に書込み可能なROM(EEPROM)65に記憶させておけばよい。
尚、図21(a)のトランジスタ113は、電流源96をIREDの発光に同期してオン、オフ制御するためのスイッチである。
また、PSDに図21(c)のθ54、θ55に示されるような傾きがある場合、IREDをx方向にスキャンした時、被写体距離が等しくてもAF結果が変化してしまう。そのため、図18(c)に示されたようなxに対して変化しないグラフを得ることができなくなる。
そこで、EEPROM65には、IREDのスキャン位置を、xに従ってこの誤差を打消すような補正係数を入力しておくようにする。CPU62は、初期位置スイッチ79とモータ73(図20参照)の回転数より、スキャン位置xを検出することができる。xの位置を測距した時に得られた測距結果が、このEEPROMに入力されている。そのxに対応する補正値で補正した後、正しい測距結果として決定すれば、PSDの組付け工程を簡単にすることができ、コストを低減することが可能である。
次に、図22を参照して、2つのPSD54、55が同時に検出することができない範囲E以外の部分を測距する方法について説明する。
IRED53が投光レンズ56の光軸からyLED だけシフトした位置から投光を行うと、被写体距離Lの59の部分の測距は、上述してきた方法では不十分である。何故なら、59の部分からの反射信号光は、PSD54には入射してもPSD55には入射せず、y55が検出できないからである。
しかしながら、もう一方のPSD54のy54に反射光は入射しているので、この情報に従って測距は可能である。つまり、投受光レンズ56、57の主点間距離をS1 、受光レンズ57の焦点距離をfJ とすると、
L=S1 ・fJ /(yLED +y54) …(21)
となる。
図23は、このような場合も測距を可能としたこの測距装置の動作を説明するフローチャートである。以下、このフローチャートに従って動作を説明する。
先ず、ステップS41にてIRED53の位置yLED を、CPU62が初期位置スイッチ79とモータ73の回転数から検出する。次いで、ステップS42及びS43にて、yLED の値を判断する。ここで、yLED が−yg ≦yLED ≦yg の条件を満足する時のみ、ステップS44以降のPSD54、55を用いた測距処理に進む。尚、上記−yg 、yg は、図18(a)の斜線領域Eに測距用光59が入るためのyLED の位置の限界を表している。
ステップS44では、IRED53の発光を開始させ、続いてステップS45及びS46に於いて、2つのPSD54及び55で各々信号光入射位置y54、y55を検出するための積分動作を行うように、電流源96及び97をオンさせる。そして、積分コンデンサ98に信号が積分され、ステップS47にて、所定時間の積分が終了判定される。このステップS47で積分終了と判定されると、次にステップS48でIRED53の発光が終了する。その後、ステップS49に於いて、積分コンデンサ98の充電電圧から、両受光レンズ間距離Sとy54、y55に従って、被写体距離Lの演算が行われる。
一方、上記ステップS42に於いて、yLED が大きくなり、PSD54に信号が入ってこないと考えられる場合は、ステップS50へと分岐する。そして、ステップS50にてIRED53の発光がなされた後、ステップS51にてPSD55への信号光入射位置y55を検出するための積分動作用に、電流源97がオンされる。次いで、ステップS52で所定時間後の積分終了検出がなされると、ステップS53にてIRED53の発光終了が制御される。この後、ステップS54で積分結果よりy55が検出され、yLED 及び投光レンズ56と受光レンズ58の間の距離から、被写体距離Lが演算される。
また、上記ステップS43に於いて、yLED が−yg を越えると判定される場合は、まさに図22に示されたような状況である。したがって、ステップS55にてIRED53の発光がなされた後、ステップS56にて電流源97がオンされる。次いで、ステップS57で所定時間後の積分終了検出がなされると、ステップS58にてIRED53の発光終了が制御される。その後、上記ステップS54と同様にして、ステップS59でy54とyLED とS1 (図22参照)から、
被写体距離Lが演算される。
このように、IREDのスキャン位置yLED と、投受光間の距離を加味した測距演算を併用することにより、より広い画角を測距できる装置を提供することができる。
1…CPU、2…投光部、3…走査部、4、6…受光レンズ、5、7…光位置検出素子(PSD)、8、8a、8b、9、9a、9b…光位置検出回路、10…測距用光スポット、11…IRED、12…IREDドライバ、13…投光レンズ、14…IRED保持部、15、19…モータ(M)ドライバ、16、20…モータ、17、21…送りねじ、18、23…ガイドレール、22…支持部、24…スイッチ。