JP2004125482A - ガス濃度検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数のセルを有するガス濃度検出装置において、外乱による温度変化でセル出力が変化するのを防止して、NOx等の低濃度のガス濃度を高精度に検出する。
【解決手段】NOxセンサセンサ素子101は、第1チャンバ120にポンプセル140を、第2チャンバ121にNOxおよび残留酸素を分解するセンサセル150および残留酸素のみを分解するモニタセル160を有し、例えば、センサセル150とモニタセル160の電流出力差からNOx濃度を検出する。ECU102は、センサセル150とモニタセル160の出力を、素子温度の変化に応じて補正することにより、出力の変動を防止する。
【選択図】 図1
【解決手段】NOxセンサセンサ素子101は、第1チャンバ120にポンプセル140を、第2チャンバ121にNOxおよび残留酸素を分解するセンサセル150および残留酸素のみを分解するモニタセル160を有し、例えば、センサセル150とモニタセル160の電流出力差からNOx濃度を検出する。ECU102は、センサセル150とモニタセル160の出力を、素子温度の変化に応じて補正することにより、出力の変動を防止する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質体に設けた複数のセルを用いて被測定ガス中の特定ガス成分、例えば、車両エンジンの排気ガスに含まれるNOx濃度を検出するガス濃度検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地球環境保護のため、車両エンジンから排出される排気ガスに対する規制が、年々厳しくなっている。この規制に対応するため、排ガス中の特定ガス、例えばNOx濃度を直接検出することが検討されている。このようなガス濃度検出装置として、酸素イオン導電性の固体電解質体に形成した複数のセルを備え、NOx還元に対する活性の違いを利用してNOx濃度を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−202285号公報
【0004】
従来のガス濃度検出装置において、センサ素子は、一般に、チャンバー内に導入される排ガス中の酸素を排出または汲み入れるポンプセルと、チャンバー内に残留する酸素濃度に応じた出力を発生するモニタセルと、チャンバー内に残留する酸素およびNOx濃度に応じた出力を発生するセンサセルにて構成される。そして、例えば、モニタセルで検出されるチャンバー内の酸素濃度が一定になるように、ポンプセル印加電圧をフィードバック制御するとともに、センサセルを流れる電流値から排ガス中のNOx濃度を検出している。
【0005】
また、センサセルとモニタセルの電流出力の差から、排ガス中のNOx濃度を検出することもできる。この時、ポンプセル印加電圧は、検出されるポンプセル電流に応じて予め定められた印加電圧マップを用いて制御される。このようにすると、チャンバー内の酸素濃度に依存しないセンサ出力を得ることができる利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両では、エンジンの回転数変動や負荷変動等により、排気ガス温度やガス流速が変化し、この外乱によりセンサ素子の温度が変化することがある。通常、センサ素子にはヒータが設けられており、素子温度を一定に保つようにヒータ制御を行なっているが、温度変動をゼロにすることは困難である。一方、外乱等によって温度変化が生じると、センサ素子を構成する固体電解質の焦電効果でセンサ温度の変化時に一時的に電流が流れたり、温度依存性により電流値が変化する。また、電圧電流特性の傾きが変化することから、検出すべき電流に変化が生じる。
【0007】
特に、検出すべき特定ガスが低濃度で、検出すべきセンサ電流が小さい場合、外乱等による温度変化の影響が大きくなる。例えば、排気ガス中のNOx濃度を検出する場合にはppmオーダーの検出が必要で、検出すべきセンサ電流はnA〜μAオーダーとなるため、温度変化の影響は無視できないものとなる。さらに、センサセルとモニタセルの温度変化に対する感度が異なるため、センサセルとモニタセルの出力にずれが生じる結果、検出されるNOx値が変動してしまうことになり、ガス検出精度が悪化するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、複数のセルを有するガス濃度検出装置において、外乱による素子温度変化時にセル出力が変化して検出精度が低下するのを防止し、被測定ガス中の低濃度の特定ガス成分、例えば排ガス中のNOxの検出を精度よく行なうことのできるガス濃度検出装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の発明は、被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出するための複数のセルを備えたガス濃度検出装置であって、素子温度が変化した時のセル電流の変化が異なる2つ以上のセルを有しており、その少なくとも1つの上記セル出力を温度変化に応じて補正する補正手段を設けたものである。
【0010】
上記構成によれば、外乱により温度変化が生じても、上記補正手段によりセル出力が温度変化に応じて補正されるので、温度変化の影響を小さくし出力の変動を抑制する。よって、低い濃度の検出が必要な特定ガス成分、例えばNOxの検出を精度よく行なうことができる。
【0011】
請求項2の発明において、上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が大きいセルのみ補正を行なう。例えば、モニタセル出力によってチャンバ内の酸素濃度を制御する場合に、外乱による出力変化が大きいモニタセルの出力を補正することで、残留酸素の変動を防止することができ、容易に検出精度の向上が可能になる。
【0012】
請求項3の発明のように、上記補正手段にて、素子温度が変化した時のセル出力の変化が小さいセルのみ補正を行なうようにすることもできる。
【0013】
請求項4の発明において、上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が異なる2つ以上のセルについて補正を行なう。例えば、センサセルとモニタセルの出力差から特定ガス成分濃度を検出する場合には、これらセルの出力をそれぞれ補正することで、より精度よい検出が可能である。
【0014】
請求項5の発明において、上記補正手段は、温度変化が生じた時の温度変化率に基づいて上記セル出力を補正する。例えば、固体電解質の焦電効果で一時的に電流が流れる場合、流れる電流は温度変化率に比例するので、これを基に補正を行なうことで、外乱による出力変動を防止できる。
【0015】
請求項6の発明において、上記補正手段は、温度変化が生じた時の温度変化量に基づいて上記セル出力を補正する。例えば、素子温度の変化でセルの電圧電流特性が変化するために検出誤差が生じる場合には、温度変化量を基に補正を行なうことで、外乱による検出誤差の発生を防止できる。
【0016】
請求項7の発明において、上記補正手段は、上記温度変化率または上記温度変化量を素子インピーダンスに基づいて算出する。例えば、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率ないし変化量に基づいて補正を行なうことで、精度よく補正を行なうことができる。
【0017】
請求項8の発明において、上記補正手段は、上記温度変化率または上記温度変化量から補正マップを用いて算出される補正値を基に上記セル出力を補正する。温度変化率または温度変化量に対する補正値を予め実験等により求めておき、補正マップを用いて出力補正を行なうことで、容易に検出精度を向上できる。
【0018】
請求項9の発明において、ガス濃度検出装置は、被測定ガスが導入されるチャンバと、上記チャンバ内の酸素濃度を検出するためのモニタセルと、上記チャンバ内の特定ガス成分濃度を検出するためのセンサセルを備える。
【0019】
上記構成とすることで、ガス濃度検出装置は、例えば、モニタセルとセンサセルの出力差から上記チャンバ内に導入される被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出することができる。この時、温度変化による出力変化が生じても、上記補正手段にてセル出力を補正することができるので、精度よい検出が実現できる。
【0020】
請求項10の発明において、上記補正手段は、上記モニタセルのみ補正を行なう。上記請求項9の構成の場合、外乱によるセル出力の変化が顕著であるモニタセルの出力を補正することで、検出精度の向上が容易にできる。
【0021】
請求項11の発明において、上記補正手段は、上記センサセルのみ補正を行なう。例えば、上記センサセルの方が外乱によるセル出力の変化が顕著であることもあり、このような場合にはセンサセルの出力を補正するようにしても、もちろんよい。
【0022】
請求項12の発明において、上記補正手段は、上記モニタセルおよび上記センサセルについてそれぞれ補正を行なう。モニタセルとセンサセルの出力をそれぞれ上記補正手段で補正することで、検出精度をより向上させることができる。
【0023】
請求項13の発明において、上記補正手段は、上記モニタセルおよび上記センサセルの出力を基に演算した結果について補正を行なう。例えば、センサセル電流とモニタセル電流の差を出力とする場合には、先に各セルの出力を補正する代わりに、センサセル電流からモニタセル電流を減算した結果を補正するようにしてもよい。
【0024】
請求項14の発明において、ガス濃度検出装置は、上記チャンバ内に導入される被測定ガス中の酸素を外部に排出または外部から酸素を導入して上記チャンバ内の酸素濃度を調整するポンプセルを備える。
【0025】
上記ポンプセルを用いると、例えば、上記チャンバ内の被測定ガス中の酸素を外部に排出し、上記チャンバ内を所定の低酸素濃度に制御することができる。よって、被測定ガス中の酸素濃度の影響を小さくすることができ、被測定ガス中の特定ガス成分の検出が容易になる。
【0026】
請求項15の発明において、上記モニタセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極間に所定の電圧を印加した時に上記チャンバ内の残留酸素濃度に対応する電流信号を出力する、あるいは上記一対の電極間に上記チャンバ内の残留酸素濃度に対応する起電力を発生する。
【0027】
上記モニタセルの一対の電極に所定の電圧を印加すると、上記チャンバ内の残留酸素のみが分解されて外部へ排出され、その際に流れる電流値を検出することで残留酸素濃度を知ることができる。または、上記モニタセルの一対の電極間に酸素濃度差に応じた起電力が生じるので、この起電力から残留酸素濃度を検出することもできる。この時、温度変化により上記モニタセルの出力が変化すると、残留酸素濃度の検出精度が低下するが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なうことで、これを防止することができる。
【0028】
請求項16の発明において、上記ポンプセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極への印加電圧を、上記モニタセルの出力が一定となるようにフィードバック制御する、あるいは上記一対の電極間を流れる電流値に応じて制御する。
【0029】
例えば、上記モニタセルの出力が所定の一定値となるように、上記一対の電極への印加電圧を制御することで、上記チャンバ内を所定の低酸素濃度に制御することができる。あるいは、上記ポンプセルの一対の電極間を流れる電流が、限界電流となるように、電流値に応じて上記一対の電極への印加電圧を制御することによっても、同様に、上記チャンバ内を所定の低酸素濃度に制御することができる。この時、温度変化により上記モニタセルの出力が変化すると、上記ポンプセルの制御性が低下するおそれがあるが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なうことで、これを防止することができる。
【0030】
請求項17の発明において、上記センサセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極間に所定の電圧を印加した時に上記チャンバ内の上記特定ガス成分および残留酸素濃度に対応する電流信号を出力する。
【0031】
上記センサセルの一対の電極に所定の電圧を印加すると、上記チャンバ内の上記特定ガス成分および残留酸素が分解されて外部へ排出される。上記チャンバ内は上記ポンプセルにより所定の酸素濃度に制御されているので、その際に流れる電流値は特定ガス成分濃度に依存して変化する。よって、この電流値から上記特定ガス成分濃度を検出することができる。この時、温度変化により上記センサセルの出力が変化すると、特定ガス成分の検出精度が低下するが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なうことで、これを防止することができる。
【0032】
請求項18の発明では、上記センサセルと上記モニタセルの電流出力の差から、被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出する。
【0033】
上記センサセルからは特定ガス成分および残留酸素濃度に応じた出力が、上記モニタセルからは残留酸素濃度に応じた出力が得られるので、その出力の差をとることで、酸素濃度に依存しない出力が得られ、精度よい検出が可能である。この時、温度変化による両セルの出力変化に差があると、出力差が変動するおそれがあるが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なって温度の影響を低減できるので、検出精度がさらに向上する。
【0034】
請求項19の発明では、上記特定ガス成分がNOxであり、上記チャンバに面して設けられる上記センサセルの電極がNOxの還元分解に活性な電極材からなり、上記チャンバに面して設けられる上記モニタセルの電極がNOxの還元分解に不活性な電極材からなる。
【0035】
例えば、NOx濃度を検出する場合には、上記センサセルの電極をNOx分解活性な電極とし、上記モニタセルの電極をNOx分解不活性な電極とすれば、両セルの出力からNOx濃度を、精度よく検出することができる。
【0036】
請求項20の発明では、上記チャンバに面して設けられる上記モニタセルの電極をPt−Au電極とし、上記チャンバに面して設けられる上記センサセルの電極をPt−Rh電極とする。
【0037】
具体的には、上記モニタセルの電極にNOxの還元分解に不活性なPt−Au電極が、上記センサセルの電極にNOxの還元分解に活性なPt−Rh電極が好適に用いられる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車エンジンの排気通路に設けられるガス濃度検出装置に適用した第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態において、ガス濃度検出装置は、被測定ガスである排気ガス中の特定ガス成分、例えば、NOxを検出するために用いられる。図1(a)は、ガス濃度検出装置の主要部を構成するNOxセンサ素子101の概略構成を示す図で、センサ素子101は、通常、先端側 (図の左端側)が排気通路内に位置するように、排気管壁に取付られる。後端側 (図の右端側)は大気に露出している。
【0039】
図1(a)において、センサ素子101は、排ガスが導入される第1チャンバ120および第2チャンバ121と、大気に連通する大気通路130、131と、第1チャンバ120側に設けられるポンプセル140と、第2チャンバ121側に設けられるセンサセル150およびモニタセル160とを有している。センサセル150とモニタセル160はセンサ素子101の長手方向に隣接して配されている。第1チャンバ120は第2チャンバ121と絞り110を介して連通しており、第1チャンバ120には、多孔質拡散層109およびピンホール111を介して排ガスが導入される。
【0040】
センサ素子101は、センサセル150およびモニタセル160を構成するシート状の固体電解質体171の下方に、第1チャンバ120および第2チャンバ121を構成するスペーサ172を介して、ポンプセル140を構成するシート状の固体電解質体173を積層し、さらに大気通路130を構成するスペーサ174およびシート状のヒータ112を積層してなる。固体電解質体171の上方には、多孔質拡散層109および大気通路131を構成するスペーサ175が積層される。固体電解質体171、173は、ジルコニア等の酸素イオン導電性を有する固体電解質からなり、スペーサ172、174、175は、アルミナ等の絶縁材料で構成される。多孔質拡散層109は多孔質アルミナ等からなる。
【0041】
ポンプセル140は、固体電解質体173とその上下表面に対向配置された一対の電極141、142からなり、第1チャンバ120内に導入された排ガス中の酸素を大気通路130に排出または汲み入れて、第1チャンバ120内の酸素濃度を調整する。一対の電極のうち第1チャンバ120側の電極141には、NOxの還元分解に対して不活性な電極、例えば、Pt−Au多孔質サーメット電極が、大気通路130側の電極142には、例えば、Pt多孔質サーメット電極が好適に使用される。なお、多孔質サーメット電極は、金属成分とジルコニア、アルミナ等のセラミックスをペースト化し、焼成することにより形成される。
【0042】
モニタセル160は、固体電解質体171とその上下表面に対向配置された一対の電極161、162からなり、第1チャンバ120から絞り110を経て第2チャンバ121内に導入された排ガス中の残留酸素濃度を検出する。一対の電極のうち第2チャンバ121側の電極161には、NOxの還元分解に対して不活性な電極、例えば、Pt−Au多孔質サーメット電極が、大気通路131側の電極162には、例えば、Pt多孔質サーメット電極が用いられ、これら電極161、162間に、所定の電圧を印加することにより、残留酸素濃度に応じた電流出力が得られる。
【0043】
センサセル150は、固体電解質体171とその上下表面に対向配置された一対の電極151、162からなる。センサセル150は、モニタセル160に隣接して設けられ、一対の電極のうち大気通路131側の電極162はモニタセル160と共通電極となっている。センサセル150は、第2チャンバ121内に導入された排ガス中のNOx濃度および残留酸素濃度を検出するもので、第2チャンバ121側の電極151には、NOxの還元分解に対して活性な電極、例えば、Pt−Rh多孔質サーメット電極が用いられる。これら電極151、162間に、所定の電圧を印加することにより、NOx濃度および残留酸素濃度に応じた電流出力が得られる。
【0044】
ヒータ112は、アルミナ等の絶縁材料からなるシート内に、ヒータ電極を埋設してなる。ヒータ電極は、外部からの給電により発熱し、素子全体を加熱して、上記各セル140、150、160を活性化温度以上に保持する。
【0045】
上記構成のNOxセンサ素子101の動作原理を説明する。図1(a)において、被測定ガスである排ガスは、多孔質拡散層109、ピンホール111を通過して第1チャンバ120に導入される。導入されるガス量は、多孔質拡散層109、ピンホール111の拡散抵抗により決定される。ここで、排ガス中の酸素が多い場合、ポンプセル140の電極141、142に、大気通路130側の電極142が+極となるように電圧を印加すると、第1チャンバ120側の電極141上で排ガス中の酸素が還元分解されて酸素イオンとなり、ポンピング作用により電極142側へ排出される。また、排ガス中の酸素が欠乏したリッチ状態の場合、印加電圧を小さくすると、大気通路130側から第1チャンバ120側へ酸素が導入される。
【0046】
ポンプセル140では、この酸素ポンプ作用を利用し、印加電圧の大きさと向きを調整して酸素を出し入れすることにより、チャンバ内の酸素濃度を制御することができる。通常は、NOx検出時の酸素の影響を小さくするために、第1チャンバ120に導入される酸素をできるだけ排出して、第2チャンバ121内を所定の低酸素濃度に保持する。すなわち、ポンプセル140においては、第1チャンバ120側の電極141で排ガス中のNOxが極力分解しないようにポンプセル140への印加電圧VPを制御する。
【0047】
ポンプセル140近傍を通過した排ガスは、絞り110を介して第1チャンバ120と連通する第2チャンバ121に流入する。排ガス中に残留する微量の酸素は、モニタセル160の電極161、162間に、大気通路131側の電極162が+極となるように所定の電圧VMを印加すると、第2チャンバ121側の電極161上で還元分解されて酸素イオンとなり、ポンピング作用により電極162側へ排出される。電極161はNOx不活性電極であり、NOxを分解しない程度の電圧VMを印加するため、電流検出器183で測定されるモニタセル電流IMは、第2チャンバ121内の電極161に到達する酸素量に依存し、NOx量には依存しない。従って、モニタセル電流IMを検出することで、残留酸素濃度を検出することができる。
【0048】
本実施の形態では、モニタセル160に所定の電圧VMを印加した時に、電流検出器183で測定されるモニタセル電流IMが一定となるように、ポンプセル140への印加電圧VPをフィードバック制御する。これにより、第1チャンバ120に導入された酸素を速やかに排出し、第1チャンバ120に連通する第2チャンバ121内を所定の低酸素濃度に制御できる。この時、電流検出器181で測定されるポンプセル電流IPは、排気ガス中の空燃比として扱われる。
【0049】
また、センサセル150では、第2チャンバ121側の電極151がNOx活性電極であるため、電極151、162間に、大気通路131側の電極162が+極となるように所定の電圧を印加すると、第2チャンバ121側の電極151上で排ガス中の残留酸素およびNOxが還元分解されて酸素イオンとなり、ポンピング作用により電極162側へ排出される。ここで、センサセル150とモニタセル160は第2チャンバ121内で隣接しているので、第2チャンバ121側の電極151、161に到達する酸素量はほぼ等しく、また、この酸素量に対応するモニタセル電流IMはポンプセル印加電圧VPのフィードバック制御により一定に保たれる。従って、電流検出器182で測定されるセンサセル電流ISを、NOx濃度として検出することができる。
【0050】
電流検出器181〜183で測定される電流値は、ECU102に出力され、ECU102は、モニタセル電流IMに基づいてポンプセル印加電圧VPのフィードバック制御等を行なうとともに、センサセル電流ISによりNOx濃度を検出する。
【0051】
ところが、図1(b)のように、車両エンジンの回転数変動や負荷変動により排気ガス温度やガス流速が変化して、センサ素子101が急激に冷やされると、、モニタセル電流IMおよびセンサセル電流ISが一時的に低下することがあった。これは、センサ素子を構成する固体電解質の焦電効果によるもので、固体電解質の結晶格子に歪みが発生して酸素が移動することにより、素子の温度変化率に応じて電流が変化する。また、この際、Pt−Au電極を用いるモニタセル160は電流変化が顕著に出るが、Pt−Rh電極を用いるセンサセル150は、酸素の吸着機能で電流変化があまり生じないこと、すなわち、電流変化幅は、ΔIM≠ΔISの関係にあることが判明した。
【0052】
そして、センサ素子101が冷却されるとモニタセル電流IMが一瞬低下するため、ECU102は、ポンプセル140で酸素を分解しすぎたと判断し、ポンプセル印加電圧VPを低くする。ところが、実際には酸素濃度は変化していないため、第2チャンバ121に導入される排気ガス中の残留酸素が増えてしまい、結果的にNOx出力(センサセル電流IS)が増加することになる。逆に、センサ素子101の温度が上昇するとモニタセル電流IMが一瞬増加するため、ECU102は、ポンプセル印加電圧VPを高くし、結果的にNOx出力(センサセル電流IS)が低下することになる。
【0053】
そこで、本発明では、センサセル150とモニタセル160の少なくとも1つについて、セル出力を温度変化に応じて補正する補正手段を設ける。これを実現するために、本実施の形態において、補正手段となるECU102は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が大きいモニタセル160について、温度変化率に基づき、検出されるモニタセル電流IMを補正する。温度変化率は、例えば、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)の変化率から知ることができる。よって、この温度変化率に基づいて、モニタセル電流IMを、図1(b)に破線で示すように、温度変化の影響がキャンセルされるように補正することで、ポンプセル印加電圧VPの変化も抑えられ、第2チャンバ121内の所定の低酸素濃度に保持できるので、NOx出力(センサセル電流IS)の変動を防止できる。
【0054】
ここで、センサセル150では、上述したように酸素の吸着作用で電流変化があまり生じないので、センサセル電流ISをそのままNOx出力とすることもできるが、より精度よい検出を行なうには、モニタセル電流IMを補正する際に、温度変化率によるセンサセル電流ISの変化を考慮して補正を行なうことが望ましい。これにより、NOx出力が図1(b)に破線で示すようになり、検出精度が向上する。モニタセル電流IMとセンサセル電流ISをそれぞれ補正することももちろんできる。
【0055】
また、上記第1の実施の形態では、モニタセル電流IMによりポンプセル印加電圧VPをフィードバック制御するようにしたが、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差によりNOxを検出することもできる。この場合を第2の実施の形態として図2で説明する。図2(a)に示すように、本実施の形態のNOxセンサ素子101の基本構成は上記第1の実施の形態と同様であり、ポンプセル印加電圧VPの制御方法が異なっている。
【0056】
本実施の形態では、ECU102によるポンプセル140の制御を、電流検出器181で測定されるポンプセル電流IPに応じて予め定められた印加電圧マップを用いて行なう。ポンプセル140は、酸素濃度に対して限界電流特性を有し、ポンプセル印加電圧VPとポンプセル電流IPの関係を示すV−I特性図(図6 (a) 参照)において、限界電流域はV軸に略平行な直線部分からなり、酸素濃度が高いほど電圧値が大きくなる方向にシフトする。従って、ポンプセル電流IPに応じてポンプセル印加電圧VPを可変制御することにより、第1チャンバ120に導入された酸素を速やかに排出し、第1チャンバ120内を所定の低酸素濃度に制御することができる。
【0057】
ポンプセル140近傍を通過した排ガスは、絞り110を介して第1チャンバ120と連通する第2チャンバ121に流入する。第2チャンバ121では、モニタセル160の電極161上で排ガス中の残留酸素が還元分解されて電極162側へ排出されるとともに、センサセル150の電極151上で排ガス中の残留酸素およびNOxが還元分解されて電極162側へ排出される。つまり、電流検出器183で測定されるモニタセル電流IMは、第2チャンバ121内の電極161に到達する酸素量のみに依存し、電流検出器182で測定されるセンサセル電流ISは、第2チャンバ121に到達する酸素量およびNOx量に依存したものとなる。センサセル150とモニタセル160は第2チャンバ121内で隣接しており、第2チャンバ121側の電極151、161に到達する酸素量はほぼ等しいので、センサセル電流ISからモニタセル電流IM(酸素量分)を減算することで、NOx濃度を検出することができる。
【0058】
第2の実施の形態においても、図2(b)のように、車両の運転条件等の変化で、センサ素子101が冷却されると、素子温度の温度変化率に応じてモニタセル電流IMが一時的に低下する。また、センサセル電流ISも、前述したようにモニタセル電流IMの変化より小さいが一時的に低下する。その結果、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差が実際よりも増加することになり、NOx出力(センサセル電流IS−モニタセル電流IM)が増加する、上記第1の実施の形態と同様の問題が生じる。また、逆に、センサ素子101の温度が上昇するとモニタセル電流IMが一時的に増加し、センサセル電流ISもモニタセル電流IMの変化より小さいが一時的に増加して、結果的にNOx出力が低下することになる。
【0059】
そこで、本実施の形態において、補正手段となるECU102は、セル出力の変化が異なるモニタセル160とセンサセル150のそれぞれについて、検出されるセル電流を補正する。この場合も、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率に基づいてモニタセル電流IMを図の破線のように(温度変化の影響がキャンセルされるように)補正するとともに、感度の違うセンサセル電流ISも図の破線のように(温度変化の影響がキャンセルされるように)補正すればよい。これにより、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差の増加を破線のように抑え、NOx出力の変動を防止することができる。
【0060】
具体的には、図3の補正マップを用いて、温度変化率[(1/Zac)の微分値]から補正値KM、KSを求め、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを補正する。図3のように、温度変化率が大きいほど補正値KM、KSが大きくなるように設定され、また、補正値KMは、補正値KSより大きくなっている。
【0061】
この温度変化率による出力補正のフローチャートを図4に示す。図4において、まず、ステップ101で電流検出器183で検出したモニタセル電流IMを、ステップ102で電流検出器182で検出したセンサセル電流ISを読み込む。次いで、ステップ103で、素子インピーダンスを検出し、検出された今回のインピーダンスの逆数 (1/Zac)と前回検出されたインピーダンスの逆数 (1/Zac)を用い、下記の式 (1) に基づいて温度変化率を算出する。
温度変化率=今回 (1/Zac)−前回 (1/Zac)・・・ (1)
【0062】
ここで、素子インピーダンスの検出は、掃引法を用いて行なうことができ、例えば、ポンプセル140またはモニタセル160に対して印加する電圧または電流を所定周期で一時的に切換え、その時の電圧変化および電流変化から素子インピーダンスを検出することができる。
【0063】
次いで、ステップ104において、ステップ103で算出した温度変化率から、図3の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値KMを算出する。ステップ105では、この補正値KMをモニタセル電流IMから減算し、下記式(2)から、補正後のモニタセル電流IM’を算出する。
IM’=IM−KM・・・(2)
【0064】
同様に、ステップ106において、ステップ103で算出した温度変化率から、図3の補正マップを用いて、センサセル電流ISを補正するための補正値KSを算出する。ステップ107では、この補正値KSをセンサセル電流ISから減算し、下記式(3)から、補正後のセンサセル電流IS’を算出する。
IS’=IS−KS・・・(3)
【0065】
このようにして補正されたモニタセル電流IM’とセンサセル電流IS’の差を、NOx出力とすることで、温度に対する感度を補正し、NOx出力の変動を防止することができる。なお、本実施の形態では、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを先に補正したが、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの差(NOx出力)を計算してから、インピーダンスの逆数 (1/Zac)で補正してもよい。また、これらの補正には、インピーダンスの逆数 (1/Zac)の微分値を用いたが、インピーダンスを微分してから逆数にしてもよい。また、温度変化に対応するものとしてインピーダンスを用いたが、温度センサ等により直接温度変化を検出してももちろんよい。
【0066】
図5は、本発明の効果を示す図で、中段は補正前のモニタセル電流IMとセンサセル電流ISを、下段は補正後のモニタセル電流IM’とセンサセル電流IS’を示す。上段のように温度変化が生じた時、中段のように、補正前のモニタセル電流IMとセンサセル電流ISが一時的に変化し、このためNOx出力(モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの差)が変動する。これに対し、上記補正手段により、温度変化率(インピーダンスの逆数 (1/Zac)の微分値)を用いて補正を行なうことで、補正後のモニタセル電流IM’とセンサセル電流IS’の温度変化に対する感度をほぼ一致させ、出力変動を抑制できることがわかる。
【0067】
なお、上記図1、2に示した第1、第2の実施の形態では、補正手段にて、温度変化率を基にセル電流の温度変化の影響がキャンセルされるように補正したが、上記図5では、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの感度が同じになるように補正を行なっている。このように、本発明では、温度変化に基づいて出力変動が抑制されるように補正を行なえばよく、いずれの補正方法によっても同様の効果が得られる。
【0068】
次に、本発明の第3、第4の実施の形態について説明する。上記第1、第2の実施の形態に示した、固体電解質の焦電効果による一時的な電流変化の他、温度変化による特性の変化で電流が変化することがある。特に、検出すべき特定ガスが低濃度である場合に、温度変化の影響を受けやすく、これを図6により説明する。図6(a)は、ポンプセル140のV−I特性図で、従来からある空燃比センサと同じ特性を示し、通常の使用温度では実線のような特性となるが、温度が高いと傾き (Ri) が一点鎖線のように小さくなり、温度が低いと破線のように傾き (Ri) が大きくなる。
【0069】
一方、図6(b)は、特定ガスを検出するセンサセル150のV−I特性図で、温度特性は図6(a) と同様であるが、検出すべき電流は、図6(a) がmAオーダーであるのに対し、図6(b)ではnAオーダーと非常に小さい。問題点は、センサセル電圧VSが一定以上になると水が分解して電流が増加することで、例えば、通常は、0.4V程度のセンサセル電圧VSを印加して特定ガス濃度相当の電流を検出するが、0.1V程度増加した場合は、水を分解しはじめるため、センサセル電流ISが60nA程度増加してしまう。これは特定ガス濃度(NOx)相当で20ppm程度であり、特定ガスを検出する上で、非常に大きな誤差となる。なお、ポンプセル140の場合も同様に印加電圧の上昇で水の分解が生じるが、電流の増加は同じ60nAで、出力がmAオーダーであることを考慮すると、酸素濃度で0.0024%であり影響は無視できる程度に小さい。
【0070】
図6(b)のように、センサセル150では、排気ガス温度や内蔵ヒータによる温度制御変動等の外乱で温度が上昇し、一点鎖線のように傾き (Ri) が低下すると、水の分解電圧も低下してしまう。一方で、外乱により温度が低下すると、破線のように傾き (Ri) が増大し水の分解電圧も上昇する。そこで、これらの影響を考慮してセンサセル印加電圧VSを設定するが、水を分解しない電圧とすると外乱により温度変動があった場合に、センサセル電流ISが若干限界電流域から外れることがあり、温度変化量の影響を大きく受けることになる。モニタセル160の特性も同様の影響を受ける。
【0071】
そこで、このような場合に、補正手段となるECU102は、温度変化量に基づき、セル出力の変化が異なるモニタセル160とセンサセル150のそれぞれについて、検出されるセル電流を補正する。この補正を、上記図1 (a) に示したモニタセル電流IMでポンプセル印加電圧VPをフィードバック制御する構成について行なった場合を、第3の実施の形態として説明する。図7 (a) のように、例えば、センサ素子101が冷却されることにより、モニタセル電流IMが低下した場合、ECU102は、ポンプセル140で酸素を分解しすぎたと判断し、ポンプセル印加電圧VPを低くする。ところが、実際には酸素濃度は変化していないため、第2チャンバ121に導入される排気ガス中の残留酸素が若干増え、、残留酸素の増加分だけセンサセル150で分解される酸素が増えることになる。一方、温度変化によってセンサセル電流ISも低下しているが、これらの合成で、結果的にNOx出力(センサセル電流IS)が上昇することになって、検出誤差を生む。
【0072】
このため、本実施の形態では、補正素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化量から温度変化量を算出し、これを基にモニタセル電流IMを図7 (a) の一点鎖線のように補正することで、ポンプセル印加電圧VPの変化も抑える。一方、NOx出力となるセンサセル電流ISも温度変化により上昇するため、同様に、インピーダンスの逆数(1/Zac)から算出される温度変化量で一点鎖線のように補正する。つまり、上記出力誤差は、モニタセル電流IMのフィードバックによる残留酸素の影響とセンサセル電流ISの温度変化による影響が含まれるため、本実施の形態では、温度変化量を基にモニタセル電流IMを補正して残留酸素の影響を除き、純粋なセンサセル電流ISをさらに補正することで、検出精度を向上させることができる。
【0073】
また、この補正を、上記図2 (a) に示したセンサセル電流ISとモニタセル電流IMの差によりNOxを検出する構成について行なった場合を、第4の実施の形態として説明する。図7 (b) のように、例えば、センサ素子101が冷却されると、同様に、モニタセル電流IMが低下する。また、センサセル電流ISも、前述したようにモニタセル電流IMの変化感度より小さいが低下する。その結果、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差が実際よりも増加することになり、NOx出力(センサセル電流IS−モニタセル電流IM)が増加することになり、検出誤差が発生する。
【0074】
本実施の形態においても、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化量に応じてセル電流を補正する。すなわち、インピーダンスの逆数(1/Zac)から温度変化量を算出し、これを基にモニタセル電流IMを図7 (b) の一点鎖線のように補正するとともに、感度の違うセンサセル電流ISも同様に一点鎖線のように補正することで、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差の増加を一点鎖線のように抑え、NOx出力の変動を防止することができる。
【0075】
具体的には、図8の補正マップを用いて、温度変化量(Δ1/Zac)から補正値AM、ASを求め、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを補正する。図8のように、温度変化量が大きいほど補正値AM、ASが大きくなるように設定され、また、補正値AMは、補正値ASより大きくなっている。この温度変化量による出力補正のフローチャートを図9に示す。図9において、まず、ステップ201で電流検出器183で検出したモニタセル電流IMを、ステップ202で電流検出器182で検出したセンサセル電流ISを読み込む。次いで、ステップ203で、素子インピーダンス (Zac)を検出し、目標温度 (1/Zac)と現在温度(1/Zac)の差を算出して温度変化量(Δ1/Zac)とする。
【0076】
次いで、ステップ204において、ステップ203で算出した温度変化量(Δ1/Zac)から、図8の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値AMを算出する。ステップ205では、この補正値AMをモニタセル電流IMから減算し、下記式(4)から、補正後のモニタセル電流IM’’を算出する。
IM’’=IM−AM・・・(4)
【0077】
同様に、ステップ206において、ステップ203で算出した温度変化量から、図8の補正マップを用いて、センサセル電流ISを補正するための補正値ASを算出する。ステップ207では、この補正値ASをセンサセル電流ISから減算し、下記式(5)から、補正後のセンサセル電流IS’’を算出する。
IS’’=IS−AS・・・(5)
【0078】
このようにして補正されたモニタセル電流IM’’とセンサセル電流IS’’の差を、NOx出力とすることで、温度に対する感度を補正し、NOx出力の変動を防止することができる。この場合も、上記第1、第2の実施の形態と同様、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの差を算出してから、図8のようなIMとISの差による補正マップによって補正してもよい。
【0079】
次に、本発明の第5、第6の実施の形態について説明する。車両では、エンジンの回転数変動や負荷変動により排気ガス温度やガス流速が変化して、上記第1、第2の実施の形態に示した、固体電解質の焦電効果による一時的な電流変化と、上記第3、第4の実施の形態に示した、温度特性による電流変化が、同時に発生してガス検出精度が低下することがある。そこで、これらの両方を考慮して、補正手段となるECU102により、検出されるセル電流を補正することもできる。
【0080】
この場合、補正手段となるECU102は、モニタセル160とセンサセル150のそれぞれについて、検出されるセル電流を、温度変化率および温度変化量に応じて補正する。この補正を、上記図1 (a) に示したモニタセル電流IMでポンプセル印加電圧VPをフィードバック制御する構成について行なった場合を、第5の実施の形態として説明する。図10 (a) のように、車両の条件により急激にセンサ素子101がセンサ素子101が冷却されると、素子温度の変化に伴い、モニタセル電流IMが低下する。このモニタセル電流IMの低下には、上記第1、第2の実施の形態と同様の温度変化率に応じた一時的な電流低下(実線分と破線分の差)と、上記第3、第4の実施の形態と同様の温度変化量に応じた電流低下(破線分)が含まれており、これらの合成で図(実線)のように変動する。
【0081】
このため、ECU102は、ポンプセル140で酸素を分解しすぎたと判断し、ポンプセル印加電圧VPを下げる。ところが、実際には酸素濃度は変化していないため、第2チャンバ121に導入される排気ガス中の残留酸素が若干増え、残留酸素の増加分だけセンサセル150で分解される酸素が増えることになる。ここで、温度変化率に応じてセンサセル電流ISも低下するが、感度の違いからモニタセル電流IMほどの低下とならないため、残留酸素によってセンサセル電流ISが上昇する。このため、NOx出力(センサセル電流IS)は、一時的な電流変化の後に安定するが、NOx出力(センサセル電流IS)は増加したままとなって、検出誤差を生む。
【0082】
そこで、本実施の形態においても、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率によりモニタセル電流IMの変化率を補正するとともに、その変化量を算出してモニタセル電流IMの変化量を補正する。これにより、モニタセル電流IMを図10 (a) の一点鎖線のように補正し、ポンプセル印加電圧VPの変化も抑える。一方、NOx出力となるセンサセル電流ISも、温度変化率と温度変化量により補正を行なうことで、一点鎖線のように出力変動を抑制し、検出精度を向上させることができる。
【0083】
また、この補正を、上記図2 (a) に示したセンサセル電流ISとモニタセル電流IMの差によりNOxを検出する構成について行なった場合を、第6の実施の形態として説明する。図10 (b) のように、センサ素子101が冷却されると、同様に、モニタセル電流IMが温度変化率と温度変化量に応じて変動しながら低下する。また、センサセル電流ISも、前述したようにモニタセル電流IMの変化感度より小さいが変動しながら低下する。その結果、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの温度に対する感度差により、結果的にNOx出力(センサセル電流IS−モニタセル電流IM)が変動しながら増加することになり、出力誤差が発生する。
【0084】
本実施の形態においても、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率によりモニタセル電流IMの変化率を補正するとともに、センサセル電流ISも温度変化率により、センサセル電流ISの感度に合わせて補正する。また、温度変化量を算出して、モニタセル電流IMの変化量を補正するとともに、センサセル電流ISも温度変化量により感度に合わせて補正する。図中、温度変化量による補正量が破線分であり、残りが温度変化率による補正量である。この2つの補正により一点鎖線のようにモニタセル電流IMおよびセンサセル電流ISがそれぞれ補正され、NOx出力の変動を防止することができる。
【0085】
具体的には、上記図3の温度変化率の補正マップを用い、温度変化率(1/Zacの微分値)から補正値KM、KSを求める一方、図8の補正マップを用いて、温度変化量(Δ1/Zac)から補正値AM、ASを求めて、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを補正する。この温度変化量による出力補正のフローチャートを図11に示す。図11において、まず、ステップ301で電流検出器183で検出したモニタセル電流IMを、ステップ302で電流検出器182で検出したセンサセル電流ISを読み込む。次いで、ステップ303で、素子インピーダンス (Zac)を検出し、上記式(1)から温度変化率を算出する。
【0086】
次いで、ステップ304において、ステップ303で算出した温度変化率から、図3の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値KMを算出し、ステップ305で、同様に、センサセル電流ISを補正するための補正値KSを算出する。さらに、ステップ306では、ステップ303で検出した素子インピーダンス (Zac)から、目標温度 (1/Zac)と現在温度(1/Zac)の差を算出して温度変化量(Δ1/Zac)とする。
【0087】
次いで、ステップ307において、ステップ306で算出した温度変化量から、図8の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値AMを算出し、ステップ308で、同様に、センサセル電流ISを補正するための補正値ASを算出する。さらに、ステップ309では、ステップ304、307で算出したモニタセル電流補正値KM、AMをモニタセル電流IMから減算し、下記式(6)から、補正後のモニタセル電流IM’’’を算出する。
IM’’’=IM−KM−AM・・・(6)
同様に、ステップ310において、ステップ305、308で算出したセンサセル電流補正値KS、ASをセンサセル電流ISから減算し、下記式(7)から、補正後のセンサセル電流IS’’’を算出する。
IS’’’=IS−KS−AS・・・(7)
【0088】
以上のようにして補正されたモニタセル電流IM’’’とセンサセル電流IS’’’の差を、NOx出力とすることで、温度に対する感度を補正し、NOx出力の変動を防止することができる。
【0089】
ここで、NOxセンサ素子101構成は、上記各実施の形態の構成(図1(a)、図2(a))に限るものではなく、例えば、図12に第7の実施の形態として示す構成とすることもできる。上記各実施の形態では、センサセル150とモニタセル160を素子の長手方向に隣合うように配設したが、図12のように、本実施の形態におけるセンサ素子101は、センサセル150とモニタセル160が、素子の長手方向の同等位置に、略対称に配置してある。その他の構成および基本的な作動は上記各実施の形態と同様である。
【0090】
第2チャンバ121内の酸素濃度分布は、排ガスの導入経路に沿った方向、ここでは素子の長手方向で生じやすいが、本実施の形態の配置とすると、第2チャンバ201のガス流れに対してセンサセル150とモニタセル160が同等距離位置となる。このため、酸素濃度分布によらず、センサセル150の電極151とモニタセル160の電極161上の酸素濃度が同じになる。従って、第2チャンバ121内の残留酸素に対するセンサセル150とモニタセル160の感度を同じくすることができ、より精度の高い検出が可能になる。
【0091】
また、上記各実施の形態では、ポンプセル140とセンサセル150およびモニタセル160を備える3セル構造のNOxセンサ素子101を用いたが、本発明を、4セルまたはそれ以上のセルを有するNOxセンサ素子101に適用することもできる。また、モニタセル160の起電力からポンプセル140をフィードバック制御する構成としてもよい。これを、図13に第8の実施の形態として示す。
【0092】
図13において、センサ素子101は、ジルコニア等の固体電解質体176、177、178を順に積層して、その内部に第1チャンバ120、第2チャンバ121を形成しており、多孔質抵抗層117、118を通って排ガスが導入されるようになっている。第1チャンバ120には、第1ポンプセル143とモニタセル160が、第2チャンバ121には、センサセル150と第2ポンプセル146が設けられる。第1ポンプセル143は固体電解質体176の上下表面に一対の電極144、145を有し、モニタセル160は、固体電解質体178の上下表面に一対の電極161、116を有する。電極116は大気通路132に面する大気電極で、センサセル150、第2ポンプセル146と共通電極となっている。センサセル150は、固体電解質体178の上下表面に一対の電極151、116を有し、第2ポンプセル146は、固体電解質体176下面の電極147と大気電極116からなる。大気通路132の下方にはヒータ112が設けられる。
【0093】
上記構成において、排ガスは多孔質抵抗層117を通って第1チャンバ120に導入され、ガス中の大部分の酸素は、第1ポンプセル143によって排気側へ排出される。この時、第1チャンバ120内の酸素濃度は、モニタセル160の電極161、116間に生じる起電力VMによって検出され、この検出値が所定の一定値になるように、第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御することで、第1チャンバ120内を所定の低酸素濃度とする。排ガスは、さらに多孔質抵抗層118を通って第2チャンバ121に導入され、ガス中の残留酸素は、第2ポンプセル146により分解されて大気通路132へ排出される。第2ポンプセル146の印加電圧VP2は、第2ポンプセル146を流れる電流IP2 に応じて制御されたり、NOxを分解しない程度の固定電圧VP2が印加される。NOxは、センサセル150に所定の電圧VSを印加することにより、チャンバ側の電極151上で分解されて大気通路132へ排出される。その際、センサセル150に流れる電流ISがNOx濃度として検出される。
【0094】
このように、モニタセル160の電圧出力(VM)によって第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御する構成においても、上記第1、第2の実施の形態で示した電気的補正手段を用いることができる。ここで、本実施の形態では、モニタセル160の電圧出力(VM)によって第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御するように構成されており、センサセル150との出力差を算出してNOx濃度とする上記第2、第4の実施の形態とは異なるが、センサセル150とモニタセル160の出力特性は、上記実施の形態とほぼ同じになる。そこで、本実施の形態においても、上記第1ないし第6の実施の形態で示した補正手段を用いて、モニタセル160、センサセル150の出力を補正することで、検出精度を向上させる同様の効果が得られる。
【0095】
図14に本発明の第9の実施の形態を示す。本実施の形態の構成は、上記第8の実施の形態とほぼ同様であり、第1チャンバ120に、第1モニタセル163を設けるとともに、第2チャンバ121に、第2モニタセル164を設けた点でのみ異なっている。第1モニタセル163の電極は、第1ポンプセル143と共通の電極144と大気電極116からなり、第2モニタセル164の電極は、第2ポンプセル146と共通の電極147と大気電極116からなる。
【0096】
この構成では、第1モニタセル163の電極144、116間に生じる起電力VM1 によって、第1チャンバ120内の酸素濃度を検出し、第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御するとともに、第2モニタセル164の電極147、116間に生じる起電力VM2 によって、第2チャンバ121内の酸素濃度を検出し、第2ポンプセル146への印加電圧VP2 を制御するようになっている。この構成においても、上記第1ないし第6の実施の形態で示した補正手段を用いることができ、同様の効果が得られる。
【0097】上記各実施の形態では、排ガス中に含まれるNOx濃度の検出に本発明を適用する構成について説明したが、本発明は、NOx以外の特定ガス成分、例えば、HC、CO、O2等を検出するガス濃度検出装置にも適用可能である。また、内燃機関の排ガス以外のガスを被測定ガスとすることもできる。
【0098】
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は第1の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図、(b)は温度変化率に基づく補正方法を説明するための図である。
【図2】(a)は第2の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図、(b)は温度変化率に基づく補正方法を説明するための図である。
【図3】温度変化率と補正値の関係を示す図である。
【図4】温度変化率に基づく補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の効果を示すセンサセル電流およびモニタセル電流の出力特性図である。
【図6】(a)はポンプセルのV−I特性図、(b)はセンサセルのV−I特性図である。
【図7】(a)は第3の実施の形態における温度変化量に基づく補正方法を説明するための図、(b)は第4の実施の形態における温度変化量に基づく補正方法を説明するための図である。
【図8】温度変化量と補正値の関係を示す図である。
【図9】温度変化量に基づく補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】(a)は第5の実施の形態における温度変化率および温度変化量に基づく補正方法を説明するための図、(b)は第6の実施の形態における温度変化率および温度変化量に基づく補正方法を説明するための図である。
【図11】温度変化率および温度変化量に基づく補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a)は第7の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図13】第8の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図である。
【図14】第9の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図である。
【符号の説明】
101 NOxセンサ素子
102 ECU
120 第1チャンバ
121 第2チャンバ
130、131 大気通路
140 ポンプセル
150 センサセル
160 モニタセル
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体電解質体に設けた複数のセルを用いて被測定ガス中の特定ガス成分、例えば、車両エンジンの排気ガスに含まれるNOx濃度を検出するガス濃度検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
地球環境保護のため、車両エンジンから排出される排気ガスに対する規制が、年々厳しくなっている。この規制に対応するため、排ガス中の特定ガス、例えばNOx濃度を直接検出することが検討されている。このようなガス濃度検出装置として、酸素イオン導電性の固体電解質体に形成した複数のセルを備え、NOx還元に対する活性の違いを利用してNOx濃度を検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−202285号公報
【0004】
従来のガス濃度検出装置において、センサ素子は、一般に、チャンバー内に導入される排ガス中の酸素を排出または汲み入れるポンプセルと、チャンバー内に残留する酸素濃度に応じた出力を発生するモニタセルと、チャンバー内に残留する酸素およびNOx濃度に応じた出力を発生するセンサセルにて構成される。そして、例えば、モニタセルで検出されるチャンバー内の酸素濃度が一定になるように、ポンプセル印加電圧をフィードバック制御するとともに、センサセルを流れる電流値から排ガス中のNOx濃度を検出している。
【0005】
また、センサセルとモニタセルの電流出力の差から、排ガス中のNOx濃度を検出することもできる。この時、ポンプセル印加電圧は、検出されるポンプセル電流に応じて予め定められた印加電圧マップを用いて制御される。このようにすると、チャンバー内の酸素濃度に依存しないセンサ出力を得ることができる利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両では、エンジンの回転数変動や負荷変動等により、排気ガス温度やガス流速が変化し、この外乱によりセンサ素子の温度が変化することがある。通常、センサ素子にはヒータが設けられており、素子温度を一定に保つようにヒータ制御を行なっているが、温度変動をゼロにすることは困難である。一方、外乱等によって温度変化が生じると、センサ素子を構成する固体電解質の焦電効果でセンサ温度の変化時に一時的に電流が流れたり、温度依存性により電流値が変化する。また、電圧電流特性の傾きが変化することから、検出すべき電流に変化が生じる。
【0007】
特に、検出すべき特定ガスが低濃度で、検出すべきセンサ電流が小さい場合、外乱等による温度変化の影響が大きくなる。例えば、排気ガス中のNOx濃度を検出する場合にはppmオーダーの検出が必要で、検出すべきセンサ電流はnA〜μAオーダーとなるため、温度変化の影響は無視できないものとなる。さらに、センサセルとモニタセルの温度変化に対する感度が異なるため、センサセルとモニタセルの出力にずれが生じる結果、検出されるNOx値が変動してしまうことになり、ガス検出精度が悪化するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、複数のセルを有するガス濃度検出装置において、外乱による素子温度変化時にセル出力が変化して検出精度が低下するのを防止し、被測定ガス中の低濃度の特定ガス成分、例えば排ガス中のNOxの検出を精度よく行なうことのできるガス濃度検出装置を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1の発明は、被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出するための複数のセルを備えたガス濃度検出装置であって、素子温度が変化した時のセル電流の変化が異なる2つ以上のセルを有しており、その少なくとも1つの上記セル出力を温度変化に応じて補正する補正手段を設けたものである。
【0010】
上記構成によれば、外乱により温度変化が生じても、上記補正手段によりセル出力が温度変化に応じて補正されるので、温度変化の影響を小さくし出力の変動を抑制する。よって、低い濃度の検出が必要な特定ガス成分、例えばNOxの検出を精度よく行なうことができる。
【0011】
請求項2の発明において、上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が大きいセルのみ補正を行なう。例えば、モニタセル出力によってチャンバ内の酸素濃度を制御する場合に、外乱による出力変化が大きいモニタセルの出力を補正することで、残留酸素の変動を防止することができ、容易に検出精度の向上が可能になる。
【0012】
請求項3の発明のように、上記補正手段にて、素子温度が変化した時のセル出力の変化が小さいセルのみ補正を行なうようにすることもできる。
【0013】
請求項4の発明において、上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が異なる2つ以上のセルについて補正を行なう。例えば、センサセルとモニタセルの出力差から特定ガス成分濃度を検出する場合には、これらセルの出力をそれぞれ補正することで、より精度よい検出が可能である。
【0014】
請求項5の発明において、上記補正手段は、温度変化が生じた時の温度変化率に基づいて上記セル出力を補正する。例えば、固体電解質の焦電効果で一時的に電流が流れる場合、流れる電流は温度変化率に比例するので、これを基に補正を行なうことで、外乱による出力変動を防止できる。
【0015】
請求項6の発明において、上記補正手段は、温度変化が生じた時の温度変化量に基づいて上記セル出力を補正する。例えば、素子温度の変化でセルの電圧電流特性が変化するために検出誤差が生じる場合には、温度変化量を基に補正を行なうことで、外乱による検出誤差の発生を防止できる。
【0016】
請求項7の発明において、上記補正手段は、上記温度変化率または上記温度変化量を素子インピーダンスに基づいて算出する。例えば、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率ないし変化量に基づいて補正を行なうことで、精度よく補正を行なうことができる。
【0017】
請求項8の発明において、上記補正手段は、上記温度変化率または上記温度変化量から補正マップを用いて算出される補正値を基に上記セル出力を補正する。温度変化率または温度変化量に対する補正値を予め実験等により求めておき、補正マップを用いて出力補正を行なうことで、容易に検出精度を向上できる。
【0018】
請求項9の発明において、ガス濃度検出装置は、被測定ガスが導入されるチャンバと、上記チャンバ内の酸素濃度を検出するためのモニタセルと、上記チャンバ内の特定ガス成分濃度を検出するためのセンサセルを備える。
【0019】
上記構成とすることで、ガス濃度検出装置は、例えば、モニタセルとセンサセルの出力差から上記チャンバ内に導入される被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出することができる。この時、温度変化による出力変化が生じても、上記補正手段にてセル出力を補正することができるので、精度よい検出が実現できる。
【0020】
請求項10の発明において、上記補正手段は、上記モニタセルのみ補正を行なう。上記請求項9の構成の場合、外乱によるセル出力の変化が顕著であるモニタセルの出力を補正することで、検出精度の向上が容易にできる。
【0021】
請求項11の発明において、上記補正手段は、上記センサセルのみ補正を行なう。例えば、上記センサセルの方が外乱によるセル出力の変化が顕著であることもあり、このような場合にはセンサセルの出力を補正するようにしても、もちろんよい。
【0022】
請求項12の発明において、上記補正手段は、上記モニタセルおよび上記センサセルについてそれぞれ補正を行なう。モニタセルとセンサセルの出力をそれぞれ上記補正手段で補正することで、検出精度をより向上させることができる。
【0023】
請求項13の発明において、上記補正手段は、上記モニタセルおよび上記センサセルの出力を基に演算した結果について補正を行なう。例えば、センサセル電流とモニタセル電流の差を出力とする場合には、先に各セルの出力を補正する代わりに、センサセル電流からモニタセル電流を減算した結果を補正するようにしてもよい。
【0024】
請求項14の発明において、ガス濃度検出装置は、上記チャンバ内に導入される被測定ガス中の酸素を外部に排出または外部から酸素を導入して上記チャンバ内の酸素濃度を調整するポンプセルを備える。
【0025】
上記ポンプセルを用いると、例えば、上記チャンバ内の被測定ガス中の酸素を外部に排出し、上記チャンバ内を所定の低酸素濃度に制御することができる。よって、被測定ガス中の酸素濃度の影響を小さくすることができ、被測定ガス中の特定ガス成分の検出が容易になる。
【0026】
請求項15の発明において、上記モニタセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極間に所定の電圧を印加した時に上記チャンバ内の残留酸素濃度に対応する電流信号を出力する、あるいは上記一対の電極間に上記チャンバ内の残留酸素濃度に対応する起電力を発生する。
【0027】
上記モニタセルの一対の電極に所定の電圧を印加すると、上記チャンバ内の残留酸素のみが分解されて外部へ排出され、その際に流れる電流値を検出することで残留酸素濃度を知ることができる。または、上記モニタセルの一対の電極間に酸素濃度差に応じた起電力が生じるので、この起電力から残留酸素濃度を検出することもできる。この時、温度変化により上記モニタセルの出力が変化すると、残留酸素濃度の検出精度が低下するが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なうことで、これを防止することができる。
【0028】
請求項16の発明において、上記ポンプセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極への印加電圧を、上記モニタセルの出力が一定となるようにフィードバック制御する、あるいは上記一対の電極間を流れる電流値に応じて制御する。
【0029】
例えば、上記モニタセルの出力が所定の一定値となるように、上記一対の電極への印加電圧を制御することで、上記チャンバ内を所定の低酸素濃度に制御することができる。あるいは、上記ポンプセルの一対の電極間を流れる電流が、限界電流となるように、電流値に応じて上記一対の電極への印加電圧を制御することによっても、同様に、上記チャンバ内を所定の低酸素濃度に制御することができる。この時、温度変化により上記モニタセルの出力が変化すると、上記ポンプセルの制御性が低下するおそれがあるが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なうことで、これを防止することができる。
【0030】
請求項17の発明において、上記センサセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極間に所定の電圧を印加した時に上記チャンバ内の上記特定ガス成分および残留酸素濃度に対応する電流信号を出力する。
【0031】
上記センサセルの一対の電極に所定の電圧を印加すると、上記チャンバ内の上記特定ガス成分および残留酸素が分解されて外部へ排出される。上記チャンバ内は上記ポンプセルにより所定の酸素濃度に制御されているので、その際に流れる電流値は特定ガス成分濃度に依存して変化する。よって、この電流値から上記特定ガス成分濃度を検出することができる。この時、温度変化により上記センサセルの出力が変化すると、特定ガス成分の検出精度が低下するが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なうことで、これを防止することができる。
【0032】
請求項18の発明では、上記センサセルと上記モニタセルの電流出力の差から、被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出する。
【0033】
上記センサセルからは特定ガス成分および残留酸素濃度に応じた出力が、上記モニタセルからは残留酸素濃度に応じた出力が得られるので、その出力の差をとることで、酸素濃度に依存しない出力が得られ、精度よい検出が可能である。この時、温度変化による両セルの出力変化に差があると、出力差が変動するおそれがあるが、本発明では、上記補正手段により出力補正を行なって温度の影響を低減できるので、検出精度がさらに向上する。
【0034】
請求項19の発明では、上記特定ガス成分がNOxであり、上記チャンバに面して設けられる上記センサセルの電極がNOxの還元分解に活性な電極材からなり、上記チャンバに面して設けられる上記モニタセルの電極がNOxの還元分解に不活性な電極材からなる。
【0035】
例えば、NOx濃度を検出する場合には、上記センサセルの電極をNOx分解活性な電極とし、上記モニタセルの電極をNOx分解不活性な電極とすれば、両セルの出力からNOx濃度を、精度よく検出することができる。
【0036】
請求項20の発明では、上記チャンバに面して設けられる上記モニタセルの電極をPt−Au電極とし、上記チャンバに面して設けられる上記センサセルの電極をPt−Rh電極とする。
【0037】
具体的には、上記モニタセルの電極にNOxの還元分解に不活性なPt−Au電極が、上記センサセルの電極にNOxの還元分解に活性なPt−Rh電極が好適に用いられる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を自動車エンジンの排気通路に設けられるガス濃度検出装置に適用した第1の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態において、ガス濃度検出装置は、被測定ガスである排気ガス中の特定ガス成分、例えば、NOxを検出するために用いられる。図1(a)は、ガス濃度検出装置の主要部を構成するNOxセンサ素子101の概略構成を示す図で、センサ素子101は、通常、先端側 (図の左端側)が排気通路内に位置するように、排気管壁に取付られる。後端側 (図の右端側)は大気に露出している。
【0039】
図1(a)において、センサ素子101は、排ガスが導入される第1チャンバ120および第2チャンバ121と、大気に連通する大気通路130、131と、第1チャンバ120側に設けられるポンプセル140と、第2チャンバ121側に設けられるセンサセル150およびモニタセル160とを有している。センサセル150とモニタセル160はセンサ素子101の長手方向に隣接して配されている。第1チャンバ120は第2チャンバ121と絞り110を介して連通しており、第1チャンバ120には、多孔質拡散層109およびピンホール111を介して排ガスが導入される。
【0040】
センサ素子101は、センサセル150およびモニタセル160を構成するシート状の固体電解質体171の下方に、第1チャンバ120および第2チャンバ121を構成するスペーサ172を介して、ポンプセル140を構成するシート状の固体電解質体173を積層し、さらに大気通路130を構成するスペーサ174およびシート状のヒータ112を積層してなる。固体電解質体171の上方には、多孔質拡散層109および大気通路131を構成するスペーサ175が積層される。固体電解質体171、173は、ジルコニア等の酸素イオン導電性を有する固体電解質からなり、スペーサ172、174、175は、アルミナ等の絶縁材料で構成される。多孔質拡散層109は多孔質アルミナ等からなる。
【0041】
ポンプセル140は、固体電解質体173とその上下表面に対向配置された一対の電極141、142からなり、第1チャンバ120内に導入された排ガス中の酸素を大気通路130に排出または汲み入れて、第1チャンバ120内の酸素濃度を調整する。一対の電極のうち第1チャンバ120側の電極141には、NOxの還元分解に対して不活性な電極、例えば、Pt−Au多孔質サーメット電極が、大気通路130側の電極142には、例えば、Pt多孔質サーメット電極が好適に使用される。なお、多孔質サーメット電極は、金属成分とジルコニア、アルミナ等のセラミックスをペースト化し、焼成することにより形成される。
【0042】
モニタセル160は、固体電解質体171とその上下表面に対向配置された一対の電極161、162からなり、第1チャンバ120から絞り110を経て第2チャンバ121内に導入された排ガス中の残留酸素濃度を検出する。一対の電極のうち第2チャンバ121側の電極161には、NOxの還元分解に対して不活性な電極、例えば、Pt−Au多孔質サーメット電極が、大気通路131側の電極162には、例えば、Pt多孔質サーメット電極が用いられ、これら電極161、162間に、所定の電圧を印加することにより、残留酸素濃度に応じた電流出力が得られる。
【0043】
センサセル150は、固体電解質体171とその上下表面に対向配置された一対の電極151、162からなる。センサセル150は、モニタセル160に隣接して設けられ、一対の電極のうち大気通路131側の電極162はモニタセル160と共通電極となっている。センサセル150は、第2チャンバ121内に導入された排ガス中のNOx濃度および残留酸素濃度を検出するもので、第2チャンバ121側の電極151には、NOxの還元分解に対して活性な電極、例えば、Pt−Rh多孔質サーメット電極が用いられる。これら電極151、162間に、所定の電圧を印加することにより、NOx濃度および残留酸素濃度に応じた電流出力が得られる。
【0044】
ヒータ112は、アルミナ等の絶縁材料からなるシート内に、ヒータ電極を埋設してなる。ヒータ電極は、外部からの給電により発熱し、素子全体を加熱して、上記各セル140、150、160を活性化温度以上に保持する。
【0045】
上記構成のNOxセンサ素子101の動作原理を説明する。図1(a)において、被測定ガスである排ガスは、多孔質拡散層109、ピンホール111を通過して第1チャンバ120に導入される。導入されるガス量は、多孔質拡散層109、ピンホール111の拡散抵抗により決定される。ここで、排ガス中の酸素が多い場合、ポンプセル140の電極141、142に、大気通路130側の電極142が+極となるように電圧を印加すると、第1チャンバ120側の電極141上で排ガス中の酸素が還元分解されて酸素イオンとなり、ポンピング作用により電極142側へ排出される。また、排ガス中の酸素が欠乏したリッチ状態の場合、印加電圧を小さくすると、大気通路130側から第1チャンバ120側へ酸素が導入される。
【0046】
ポンプセル140では、この酸素ポンプ作用を利用し、印加電圧の大きさと向きを調整して酸素を出し入れすることにより、チャンバ内の酸素濃度を制御することができる。通常は、NOx検出時の酸素の影響を小さくするために、第1チャンバ120に導入される酸素をできるだけ排出して、第2チャンバ121内を所定の低酸素濃度に保持する。すなわち、ポンプセル140においては、第1チャンバ120側の電極141で排ガス中のNOxが極力分解しないようにポンプセル140への印加電圧VPを制御する。
【0047】
ポンプセル140近傍を通過した排ガスは、絞り110を介して第1チャンバ120と連通する第2チャンバ121に流入する。排ガス中に残留する微量の酸素は、モニタセル160の電極161、162間に、大気通路131側の電極162が+極となるように所定の電圧VMを印加すると、第2チャンバ121側の電極161上で還元分解されて酸素イオンとなり、ポンピング作用により電極162側へ排出される。電極161はNOx不活性電極であり、NOxを分解しない程度の電圧VMを印加するため、電流検出器183で測定されるモニタセル電流IMは、第2チャンバ121内の電極161に到達する酸素量に依存し、NOx量には依存しない。従って、モニタセル電流IMを検出することで、残留酸素濃度を検出することができる。
【0048】
本実施の形態では、モニタセル160に所定の電圧VMを印加した時に、電流検出器183で測定されるモニタセル電流IMが一定となるように、ポンプセル140への印加電圧VPをフィードバック制御する。これにより、第1チャンバ120に導入された酸素を速やかに排出し、第1チャンバ120に連通する第2チャンバ121内を所定の低酸素濃度に制御できる。この時、電流検出器181で測定されるポンプセル電流IPは、排気ガス中の空燃比として扱われる。
【0049】
また、センサセル150では、第2チャンバ121側の電極151がNOx活性電極であるため、電極151、162間に、大気通路131側の電極162が+極となるように所定の電圧を印加すると、第2チャンバ121側の電極151上で排ガス中の残留酸素およびNOxが還元分解されて酸素イオンとなり、ポンピング作用により電極162側へ排出される。ここで、センサセル150とモニタセル160は第2チャンバ121内で隣接しているので、第2チャンバ121側の電極151、161に到達する酸素量はほぼ等しく、また、この酸素量に対応するモニタセル電流IMはポンプセル印加電圧VPのフィードバック制御により一定に保たれる。従って、電流検出器182で測定されるセンサセル電流ISを、NOx濃度として検出することができる。
【0050】
電流検出器181〜183で測定される電流値は、ECU102に出力され、ECU102は、モニタセル電流IMに基づいてポンプセル印加電圧VPのフィードバック制御等を行なうとともに、センサセル電流ISによりNOx濃度を検出する。
【0051】
ところが、図1(b)のように、車両エンジンの回転数変動や負荷変動により排気ガス温度やガス流速が変化して、センサ素子101が急激に冷やされると、、モニタセル電流IMおよびセンサセル電流ISが一時的に低下することがあった。これは、センサ素子を構成する固体電解質の焦電効果によるもので、固体電解質の結晶格子に歪みが発生して酸素が移動することにより、素子の温度変化率に応じて電流が変化する。また、この際、Pt−Au電極を用いるモニタセル160は電流変化が顕著に出るが、Pt−Rh電極を用いるセンサセル150は、酸素の吸着機能で電流変化があまり生じないこと、すなわち、電流変化幅は、ΔIM≠ΔISの関係にあることが判明した。
【0052】
そして、センサ素子101が冷却されるとモニタセル電流IMが一瞬低下するため、ECU102は、ポンプセル140で酸素を分解しすぎたと判断し、ポンプセル印加電圧VPを低くする。ところが、実際には酸素濃度は変化していないため、第2チャンバ121に導入される排気ガス中の残留酸素が増えてしまい、結果的にNOx出力(センサセル電流IS)が増加することになる。逆に、センサ素子101の温度が上昇するとモニタセル電流IMが一瞬増加するため、ECU102は、ポンプセル印加電圧VPを高くし、結果的にNOx出力(センサセル電流IS)が低下することになる。
【0053】
そこで、本発明では、センサセル150とモニタセル160の少なくとも1つについて、セル出力を温度変化に応じて補正する補正手段を設ける。これを実現するために、本実施の形態において、補正手段となるECU102は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が大きいモニタセル160について、温度変化率に基づき、検出されるモニタセル電流IMを補正する。温度変化率は、例えば、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)の変化率から知ることができる。よって、この温度変化率に基づいて、モニタセル電流IMを、図1(b)に破線で示すように、温度変化の影響がキャンセルされるように補正することで、ポンプセル印加電圧VPの変化も抑えられ、第2チャンバ121内の所定の低酸素濃度に保持できるので、NOx出力(センサセル電流IS)の変動を防止できる。
【0054】
ここで、センサセル150では、上述したように酸素の吸着作用で電流変化があまり生じないので、センサセル電流ISをそのままNOx出力とすることもできるが、より精度よい検出を行なうには、モニタセル電流IMを補正する際に、温度変化率によるセンサセル電流ISの変化を考慮して補正を行なうことが望ましい。これにより、NOx出力が図1(b)に破線で示すようになり、検出精度が向上する。モニタセル電流IMとセンサセル電流ISをそれぞれ補正することももちろんできる。
【0055】
また、上記第1の実施の形態では、モニタセル電流IMによりポンプセル印加電圧VPをフィードバック制御するようにしたが、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差によりNOxを検出することもできる。この場合を第2の実施の形態として図2で説明する。図2(a)に示すように、本実施の形態のNOxセンサ素子101の基本構成は上記第1の実施の形態と同様であり、ポンプセル印加電圧VPの制御方法が異なっている。
【0056】
本実施の形態では、ECU102によるポンプセル140の制御を、電流検出器181で測定されるポンプセル電流IPに応じて予め定められた印加電圧マップを用いて行なう。ポンプセル140は、酸素濃度に対して限界電流特性を有し、ポンプセル印加電圧VPとポンプセル電流IPの関係を示すV−I特性図(図6 (a) 参照)において、限界電流域はV軸に略平行な直線部分からなり、酸素濃度が高いほど電圧値が大きくなる方向にシフトする。従って、ポンプセル電流IPに応じてポンプセル印加電圧VPを可変制御することにより、第1チャンバ120に導入された酸素を速やかに排出し、第1チャンバ120内を所定の低酸素濃度に制御することができる。
【0057】
ポンプセル140近傍を通過した排ガスは、絞り110を介して第1チャンバ120と連通する第2チャンバ121に流入する。第2チャンバ121では、モニタセル160の電極161上で排ガス中の残留酸素が還元分解されて電極162側へ排出されるとともに、センサセル150の電極151上で排ガス中の残留酸素およびNOxが還元分解されて電極162側へ排出される。つまり、電流検出器183で測定されるモニタセル電流IMは、第2チャンバ121内の電極161に到達する酸素量のみに依存し、電流検出器182で測定されるセンサセル電流ISは、第2チャンバ121に到達する酸素量およびNOx量に依存したものとなる。センサセル150とモニタセル160は第2チャンバ121内で隣接しており、第2チャンバ121側の電極151、161に到達する酸素量はほぼ等しいので、センサセル電流ISからモニタセル電流IM(酸素量分)を減算することで、NOx濃度を検出することができる。
【0058】
第2の実施の形態においても、図2(b)のように、車両の運転条件等の変化で、センサ素子101が冷却されると、素子温度の温度変化率に応じてモニタセル電流IMが一時的に低下する。また、センサセル電流ISも、前述したようにモニタセル電流IMの変化より小さいが一時的に低下する。その結果、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差が実際よりも増加することになり、NOx出力(センサセル電流IS−モニタセル電流IM)が増加する、上記第1の実施の形態と同様の問題が生じる。また、逆に、センサ素子101の温度が上昇するとモニタセル電流IMが一時的に増加し、センサセル電流ISもモニタセル電流IMの変化より小さいが一時的に増加して、結果的にNOx出力が低下することになる。
【0059】
そこで、本実施の形態において、補正手段となるECU102は、セル出力の変化が異なるモニタセル160とセンサセル150のそれぞれについて、検出されるセル電流を補正する。この場合も、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率に基づいてモニタセル電流IMを図の破線のように(温度変化の影響がキャンセルされるように)補正するとともに、感度の違うセンサセル電流ISも図の破線のように(温度変化の影響がキャンセルされるように)補正すればよい。これにより、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差の増加を破線のように抑え、NOx出力の変動を防止することができる。
【0060】
具体的には、図3の補正マップを用いて、温度変化率[(1/Zac)の微分値]から補正値KM、KSを求め、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを補正する。図3のように、温度変化率が大きいほど補正値KM、KSが大きくなるように設定され、また、補正値KMは、補正値KSより大きくなっている。
【0061】
この温度変化率による出力補正のフローチャートを図4に示す。図4において、まず、ステップ101で電流検出器183で検出したモニタセル電流IMを、ステップ102で電流検出器182で検出したセンサセル電流ISを読み込む。次いで、ステップ103で、素子インピーダンスを検出し、検出された今回のインピーダンスの逆数 (1/Zac)と前回検出されたインピーダンスの逆数 (1/Zac)を用い、下記の式 (1) に基づいて温度変化率を算出する。
温度変化率=今回 (1/Zac)−前回 (1/Zac)・・・ (1)
【0062】
ここで、素子インピーダンスの検出は、掃引法を用いて行なうことができ、例えば、ポンプセル140またはモニタセル160に対して印加する電圧または電流を所定周期で一時的に切換え、その時の電圧変化および電流変化から素子インピーダンスを検出することができる。
【0063】
次いで、ステップ104において、ステップ103で算出した温度変化率から、図3の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値KMを算出する。ステップ105では、この補正値KMをモニタセル電流IMから減算し、下記式(2)から、補正後のモニタセル電流IM’を算出する。
IM’=IM−KM・・・(2)
【0064】
同様に、ステップ106において、ステップ103で算出した温度変化率から、図3の補正マップを用いて、センサセル電流ISを補正するための補正値KSを算出する。ステップ107では、この補正値KSをセンサセル電流ISから減算し、下記式(3)から、補正後のセンサセル電流IS’を算出する。
IS’=IS−KS・・・(3)
【0065】
このようにして補正されたモニタセル電流IM’とセンサセル電流IS’の差を、NOx出力とすることで、温度に対する感度を補正し、NOx出力の変動を防止することができる。なお、本実施の形態では、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを先に補正したが、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの差(NOx出力)を計算してから、インピーダンスの逆数 (1/Zac)で補正してもよい。また、これらの補正には、インピーダンスの逆数 (1/Zac)の微分値を用いたが、インピーダンスを微分してから逆数にしてもよい。また、温度変化に対応するものとしてインピーダンスを用いたが、温度センサ等により直接温度変化を検出してももちろんよい。
【0066】
図5は、本発明の効果を示す図で、中段は補正前のモニタセル電流IMとセンサセル電流ISを、下段は補正後のモニタセル電流IM’とセンサセル電流IS’を示す。上段のように温度変化が生じた時、中段のように、補正前のモニタセル電流IMとセンサセル電流ISが一時的に変化し、このためNOx出力(モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの差)が変動する。これに対し、上記補正手段により、温度変化率(インピーダンスの逆数 (1/Zac)の微分値)を用いて補正を行なうことで、補正後のモニタセル電流IM’とセンサセル電流IS’の温度変化に対する感度をほぼ一致させ、出力変動を抑制できることがわかる。
【0067】
なお、上記図1、2に示した第1、第2の実施の形態では、補正手段にて、温度変化率を基にセル電流の温度変化の影響がキャンセルされるように補正したが、上記図5では、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの感度が同じになるように補正を行なっている。このように、本発明では、温度変化に基づいて出力変動が抑制されるように補正を行なえばよく、いずれの補正方法によっても同様の効果が得られる。
【0068】
次に、本発明の第3、第4の実施の形態について説明する。上記第1、第2の実施の形態に示した、固体電解質の焦電効果による一時的な電流変化の他、温度変化による特性の変化で電流が変化することがある。特に、検出すべき特定ガスが低濃度である場合に、温度変化の影響を受けやすく、これを図6により説明する。図6(a)は、ポンプセル140のV−I特性図で、従来からある空燃比センサと同じ特性を示し、通常の使用温度では実線のような特性となるが、温度が高いと傾き (Ri) が一点鎖線のように小さくなり、温度が低いと破線のように傾き (Ri) が大きくなる。
【0069】
一方、図6(b)は、特定ガスを検出するセンサセル150のV−I特性図で、温度特性は図6(a) と同様であるが、検出すべき電流は、図6(a) がmAオーダーであるのに対し、図6(b)ではnAオーダーと非常に小さい。問題点は、センサセル電圧VSが一定以上になると水が分解して電流が増加することで、例えば、通常は、0.4V程度のセンサセル電圧VSを印加して特定ガス濃度相当の電流を検出するが、0.1V程度増加した場合は、水を分解しはじめるため、センサセル電流ISが60nA程度増加してしまう。これは特定ガス濃度(NOx)相当で20ppm程度であり、特定ガスを検出する上で、非常に大きな誤差となる。なお、ポンプセル140の場合も同様に印加電圧の上昇で水の分解が生じるが、電流の増加は同じ60nAで、出力がmAオーダーであることを考慮すると、酸素濃度で0.0024%であり影響は無視できる程度に小さい。
【0070】
図6(b)のように、センサセル150では、排気ガス温度や内蔵ヒータによる温度制御変動等の外乱で温度が上昇し、一点鎖線のように傾き (Ri) が低下すると、水の分解電圧も低下してしまう。一方で、外乱により温度が低下すると、破線のように傾き (Ri) が増大し水の分解電圧も上昇する。そこで、これらの影響を考慮してセンサセル印加電圧VSを設定するが、水を分解しない電圧とすると外乱により温度変動があった場合に、センサセル電流ISが若干限界電流域から外れることがあり、温度変化量の影響を大きく受けることになる。モニタセル160の特性も同様の影響を受ける。
【0071】
そこで、このような場合に、補正手段となるECU102は、温度変化量に基づき、セル出力の変化が異なるモニタセル160とセンサセル150のそれぞれについて、検出されるセル電流を補正する。この補正を、上記図1 (a) に示したモニタセル電流IMでポンプセル印加電圧VPをフィードバック制御する構成について行なった場合を、第3の実施の形態として説明する。図7 (a) のように、例えば、センサ素子101が冷却されることにより、モニタセル電流IMが低下した場合、ECU102は、ポンプセル140で酸素を分解しすぎたと判断し、ポンプセル印加電圧VPを低くする。ところが、実際には酸素濃度は変化していないため、第2チャンバ121に導入される排気ガス中の残留酸素が若干増え、、残留酸素の増加分だけセンサセル150で分解される酸素が増えることになる。一方、温度変化によってセンサセル電流ISも低下しているが、これらの合成で、結果的にNOx出力(センサセル電流IS)が上昇することになって、検出誤差を生む。
【0072】
このため、本実施の形態では、補正素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化量から温度変化量を算出し、これを基にモニタセル電流IMを図7 (a) の一点鎖線のように補正することで、ポンプセル印加電圧VPの変化も抑える。一方、NOx出力となるセンサセル電流ISも温度変化により上昇するため、同様に、インピーダンスの逆数(1/Zac)から算出される温度変化量で一点鎖線のように補正する。つまり、上記出力誤差は、モニタセル電流IMのフィードバックによる残留酸素の影響とセンサセル電流ISの温度変化による影響が含まれるため、本実施の形態では、温度変化量を基にモニタセル電流IMを補正して残留酸素の影響を除き、純粋なセンサセル電流ISをさらに補正することで、検出精度を向上させることができる。
【0073】
また、この補正を、上記図2 (a) に示したセンサセル電流ISとモニタセル電流IMの差によりNOxを検出する構成について行なった場合を、第4の実施の形態として説明する。図7 (b) のように、例えば、センサ素子101が冷却されると、同様に、モニタセル電流IMが低下する。また、センサセル電流ISも、前述したようにモニタセル電流IMの変化感度より小さいが低下する。その結果、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差が実際よりも増加することになり、NOx出力(センサセル電流IS−モニタセル電流IM)が増加することになり、検出誤差が発生する。
【0074】
本実施の形態においても、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化量に応じてセル電流を補正する。すなわち、インピーダンスの逆数(1/Zac)から温度変化量を算出し、これを基にモニタセル電流IMを図7 (b) の一点鎖線のように補正するとともに、感度の違うセンサセル電流ISも同様に一点鎖線のように補正することで、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの差の増加を一点鎖線のように抑え、NOx出力の変動を防止することができる。
【0075】
具体的には、図8の補正マップを用いて、温度変化量(Δ1/Zac)から補正値AM、ASを求め、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを補正する。図8のように、温度変化量が大きいほど補正値AM、ASが大きくなるように設定され、また、補正値AMは、補正値ASより大きくなっている。この温度変化量による出力補正のフローチャートを図9に示す。図9において、まず、ステップ201で電流検出器183で検出したモニタセル電流IMを、ステップ202で電流検出器182で検出したセンサセル電流ISを読み込む。次いで、ステップ203で、素子インピーダンス (Zac)を検出し、目標温度 (1/Zac)と現在温度(1/Zac)の差を算出して温度変化量(Δ1/Zac)とする。
【0076】
次いで、ステップ204において、ステップ203で算出した温度変化量(Δ1/Zac)から、図8の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値AMを算出する。ステップ205では、この補正値AMをモニタセル電流IMから減算し、下記式(4)から、補正後のモニタセル電流IM’’を算出する。
IM’’=IM−AM・・・(4)
【0077】
同様に、ステップ206において、ステップ203で算出した温度変化量から、図8の補正マップを用いて、センサセル電流ISを補正するための補正値ASを算出する。ステップ207では、この補正値ASをセンサセル電流ISから減算し、下記式(5)から、補正後のセンサセル電流IS’’を算出する。
IS’’=IS−AS・・・(5)
【0078】
このようにして補正されたモニタセル電流IM’’とセンサセル電流IS’’の差を、NOx出力とすることで、温度に対する感度を補正し、NOx出力の変動を防止することができる。この場合も、上記第1、第2の実施の形態と同様、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISの差を算出してから、図8のようなIMとISの差による補正マップによって補正してもよい。
【0079】
次に、本発明の第5、第6の実施の形態について説明する。車両では、エンジンの回転数変動や負荷変動により排気ガス温度やガス流速が変化して、上記第1、第2の実施の形態に示した、固体電解質の焦電効果による一時的な電流変化と、上記第3、第4の実施の形態に示した、温度特性による電流変化が、同時に発生してガス検出精度が低下することがある。そこで、これらの両方を考慮して、補正手段となるECU102により、検出されるセル電流を補正することもできる。
【0080】
この場合、補正手段となるECU102は、モニタセル160とセンサセル150のそれぞれについて、検出されるセル電流を、温度変化率および温度変化量に応じて補正する。この補正を、上記図1 (a) に示したモニタセル電流IMでポンプセル印加電圧VPをフィードバック制御する構成について行なった場合を、第5の実施の形態として説明する。図10 (a) のように、車両の条件により急激にセンサ素子101がセンサ素子101が冷却されると、素子温度の変化に伴い、モニタセル電流IMが低下する。このモニタセル電流IMの低下には、上記第1、第2の実施の形態と同様の温度変化率に応じた一時的な電流低下(実線分と破線分の差)と、上記第3、第4の実施の形態と同様の温度変化量に応じた電流低下(破線分)が含まれており、これらの合成で図(実線)のように変動する。
【0081】
このため、ECU102は、ポンプセル140で酸素を分解しすぎたと判断し、ポンプセル印加電圧VPを下げる。ところが、実際には酸素濃度は変化していないため、第2チャンバ121に導入される排気ガス中の残留酸素が若干増え、残留酸素の増加分だけセンサセル150で分解される酸素が増えることになる。ここで、温度変化率に応じてセンサセル電流ISも低下するが、感度の違いからモニタセル電流IMほどの低下とならないため、残留酸素によってセンサセル電流ISが上昇する。このため、NOx出力(センサセル電流IS)は、一時的な電流変化の後に安定するが、NOx出力(センサセル電流IS)は増加したままとなって、検出誤差を生む。
【0082】
そこで、本実施の形態においても、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率によりモニタセル電流IMの変化率を補正するとともに、その変化量を算出してモニタセル電流IMの変化量を補正する。これにより、モニタセル電流IMを図10 (a) の一点鎖線のように補正し、ポンプセル印加電圧VPの変化も抑える。一方、NOx出力となるセンサセル電流ISも、温度変化率と温度変化量により補正を行なうことで、一点鎖線のように出力変動を抑制し、検出精度を向上させることができる。
【0083】
また、この補正を、上記図2 (a) に示したセンサセル電流ISとモニタセル電流IMの差によりNOxを検出する構成について行なった場合を、第6の実施の形態として説明する。図10 (b) のように、センサ素子101が冷却されると、同様に、モニタセル電流IMが温度変化率と温度変化量に応じて変動しながら低下する。また、センサセル電流ISも、前述したようにモニタセル電流IMの変化感度より小さいが変動しながら低下する。その結果、センサセル電流ISとモニタセル電流IMの温度に対する感度差により、結果的にNOx出力(センサセル電流IS−モニタセル電流IM)が変動しながら増加することになり、出力誤差が発生する。
【0084】
本実施の形態においても、素子の温度変化に対し1:1で対応する素子インピーダンスの逆数(1/Zac)を用い、その変化率によりモニタセル電流IMの変化率を補正するとともに、センサセル電流ISも温度変化率により、センサセル電流ISの感度に合わせて補正する。また、温度変化量を算出して、モニタセル電流IMの変化量を補正するとともに、センサセル電流ISも温度変化量により感度に合わせて補正する。図中、温度変化量による補正量が破線分であり、残りが温度変化率による補正量である。この2つの補正により一点鎖線のようにモニタセル電流IMおよびセンサセル電流ISがそれぞれ補正され、NOx出力の変動を防止することができる。
【0085】
具体的には、上記図3の温度変化率の補正マップを用い、温度変化率(1/Zacの微分値)から補正値KM、KSを求める一方、図8の補正マップを用いて、温度変化量(Δ1/Zac)から補正値AM、ASを求めて、モニタセル電流IMとセンサセル電流ISを補正する。この温度変化量による出力補正のフローチャートを図11に示す。図11において、まず、ステップ301で電流検出器183で検出したモニタセル電流IMを、ステップ302で電流検出器182で検出したセンサセル電流ISを読み込む。次いで、ステップ303で、素子インピーダンス (Zac)を検出し、上記式(1)から温度変化率を算出する。
【0086】
次いで、ステップ304において、ステップ303で算出した温度変化率から、図3の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値KMを算出し、ステップ305で、同様に、センサセル電流ISを補正するための補正値KSを算出する。さらに、ステップ306では、ステップ303で検出した素子インピーダンス (Zac)から、目標温度 (1/Zac)と現在温度(1/Zac)の差を算出して温度変化量(Δ1/Zac)とする。
【0087】
次いで、ステップ307において、ステップ306で算出した温度変化量から、図8の補正マップを用いて、モニタセル電流IMを補正するための補正値AMを算出し、ステップ308で、同様に、センサセル電流ISを補正するための補正値ASを算出する。さらに、ステップ309では、ステップ304、307で算出したモニタセル電流補正値KM、AMをモニタセル電流IMから減算し、下記式(6)から、補正後のモニタセル電流IM’’’を算出する。
IM’’’=IM−KM−AM・・・(6)
同様に、ステップ310において、ステップ305、308で算出したセンサセル電流補正値KS、ASをセンサセル電流ISから減算し、下記式(7)から、補正後のセンサセル電流IS’’’を算出する。
IS’’’=IS−KS−AS・・・(7)
【0088】
以上のようにして補正されたモニタセル電流IM’’’とセンサセル電流IS’’’の差を、NOx出力とすることで、温度に対する感度を補正し、NOx出力の変動を防止することができる。
【0089】
ここで、NOxセンサ素子101構成は、上記各実施の形態の構成(図1(a)、図2(a))に限るものではなく、例えば、図12に第7の実施の形態として示す構成とすることもできる。上記各実施の形態では、センサセル150とモニタセル160を素子の長手方向に隣合うように配設したが、図12のように、本実施の形態におけるセンサ素子101は、センサセル150とモニタセル160が、素子の長手方向の同等位置に、略対称に配置してある。その他の構成および基本的な作動は上記各実施の形態と同様である。
【0090】
第2チャンバ121内の酸素濃度分布は、排ガスの導入経路に沿った方向、ここでは素子の長手方向で生じやすいが、本実施の形態の配置とすると、第2チャンバ201のガス流れに対してセンサセル150とモニタセル160が同等距離位置となる。このため、酸素濃度分布によらず、センサセル150の電極151とモニタセル160の電極161上の酸素濃度が同じになる。従って、第2チャンバ121内の残留酸素に対するセンサセル150とモニタセル160の感度を同じくすることができ、より精度の高い検出が可能になる。
【0091】
また、上記各実施の形態では、ポンプセル140とセンサセル150およびモニタセル160を備える3セル構造のNOxセンサ素子101を用いたが、本発明を、4セルまたはそれ以上のセルを有するNOxセンサ素子101に適用することもできる。また、モニタセル160の起電力からポンプセル140をフィードバック制御する構成としてもよい。これを、図13に第8の実施の形態として示す。
【0092】
図13において、センサ素子101は、ジルコニア等の固体電解質体176、177、178を順に積層して、その内部に第1チャンバ120、第2チャンバ121を形成しており、多孔質抵抗層117、118を通って排ガスが導入されるようになっている。第1チャンバ120には、第1ポンプセル143とモニタセル160が、第2チャンバ121には、センサセル150と第2ポンプセル146が設けられる。第1ポンプセル143は固体電解質体176の上下表面に一対の電極144、145を有し、モニタセル160は、固体電解質体178の上下表面に一対の電極161、116を有する。電極116は大気通路132に面する大気電極で、センサセル150、第2ポンプセル146と共通電極となっている。センサセル150は、固体電解質体178の上下表面に一対の電極151、116を有し、第2ポンプセル146は、固体電解質体176下面の電極147と大気電極116からなる。大気通路132の下方にはヒータ112が設けられる。
【0093】
上記構成において、排ガスは多孔質抵抗層117を通って第1チャンバ120に導入され、ガス中の大部分の酸素は、第1ポンプセル143によって排気側へ排出される。この時、第1チャンバ120内の酸素濃度は、モニタセル160の電極161、116間に生じる起電力VMによって検出され、この検出値が所定の一定値になるように、第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御することで、第1チャンバ120内を所定の低酸素濃度とする。排ガスは、さらに多孔質抵抗層118を通って第2チャンバ121に導入され、ガス中の残留酸素は、第2ポンプセル146により分解されて大気通路132へ排出される。第2ポンプセル146の印加電圧VP2は、第2ポンプセル146を流れる電流IP2 に応じて制御されたり、NOxを分解しない程度の固定電圧VP2が印加される。NOxは、センサセル150に所定の電圧VSを印加することにより、チャンバ側の電極151上で分解されて大気通路132へ排出される。その際、センサセル150に流れる電流ISがNOx濃度として検出される。
【0094】
このように、モニタセル160の電圧出力(VM)によって第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御する構成においても、上記第1、第2の実施の形態で示した電気的補正手段を用いることができる。ここで、本実施の形態では、モニタセル160の電圧出力(VM)によって第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御するように構成されており、センサセル150との出力差を算出してNOx濃度とする上記第2、第4の実施の形態とは異なるが、センサセル150とモニタセル160の出力特性は、上記実施の形態とほぼ同じになる。そこで、本実施の形態においても、上記第1ないし第6の実施の形態で示した補正手段を用いて、モニタセル160、センサセル150の出力を補正することで、検出精度を向上させる同様の効果が得られる。
【0095】
図14に本発明の第9の実施の形態を示す。本実施の形態の構成は、上記第8の実施の形態とほぼ同様であり、第1チャンバ120に、第1モニタセル163を設けるとともに、第2チャンバ121に、第2モニタセル164を設けた点でのみ異なっている。第1モニタセル163の電極は、第1ポンプセル143と共通の電極144と大気電極116からなり、第2モニタセル164の電極は、第2ポンプセル146と共通の電極147と大気電極116からなる。
【0096】
この構成では、第1モニタセル163の電極144、116間に生じる起電力VM1 によって、第1チャンバ120内の酸素濃度を検出し、第1ポンプセル143への印加電圧VP1 を制御するとともに、第2モニタセル164の電極147、116間に生じる起電力VM2 によって、第2チャンバ121内の酸素濃度を検出し、第2ポンプセル146への印加電圧VP2 を制御するようになっている。この構成においても、上記第1ないし第6の実施の形態で示した補正手段を用いることができ、同様の効果が得られる。
【0097】上記各実施の形態では、排ガス中に含まれるNOx濃度の検出に本発明を適用する構成について説明したが、本発明は、NOx以外の特定ガス成分、例えば、HC、CO、O2等を検出するガス濃度検出装置にも適用可能である。また、内燃機関の排ガス以外のガスを被測定ガスとすることもできる。
【0098】
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は第1の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図、(b)は温度変化率に基づく補正方法を説明するための図である。
【図2】(a)は第2の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図、(b)は温度変化率に基づく補正方法を説明するための図である。
【図3】温度変化率と補正値の関係を示す図である。
【図4】温度変化率に基づく補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の効果を示すセンサセル電流およびモニタセル電流の出力特性図である。
【図6】(a)はポンプセルのV−I特性図、(b)はセンサセルのV−I特性図である。
【図7】(a)は第3の実施の形態における温度変化量に基づく補正方法を説明するための図、(b)は第4の実施の形態における温度変化量に基づく補正方法を説明するための図である。
【図8】温度変化量と補正値の関係を示す図である。
【図9】温度変化量に基づく補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図10】(a)は第5の実施の形態における温度変化率および温度変化量に基づく補正方法を説明するための図、(b)は第6の実施の形態における温度変化率および温度変化量に基づく補正方法を説明するための図である。
【図11】温度変化率および温度変化量に基づく補正方法を説明するためのフローチャートである。
【図12】(a)は第7の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図13】第8の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図である。
【図14】第9の実施の形態におけるガス濃度検出装置の主要部の概略構成図である。
【符号の説明】
101 NOxセンサ素子
102 ECU
120 第1チャンバ
121 第2チャンバ
130、131 大気通路
140 ポンプセル
150 センサセル
160 モニタセル
Claims (20)
- 被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出するための複数のセルを備えたガス濃度検出装置であって、素子温度が変化した時のセル出力の変化が異なる2つ以上のセルを有しており、その少なくとも1つの上記セル出力を温度変化に応じて補正する補正手段を設けたことを特徴とするガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が大きいセルのみ補正を行なう請求項1記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が小さいセルのみ補正を行なう請求項1記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、素子温度が変化した時のセル出力の変化が異なる2つ以上のセルについて補正を行なう請求項1記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、温度変化が生じた時の温度変化率に基づいて上記セル出力を補正する請求項1ないし4のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、温度変化が生じた時の温度変化量に基づいて上記セル出力を補正する請求項1ないし5のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、上記温度変化率または上記温度変化量を素子インピーダンスに基づいて算出する請求項5または6のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、上記温度変化率または上記温度変化量から補正マップを用いて算出される補正値を基に上記セル出力を補正する請求項5ないし7のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 被測定ガスが導入されるチャンバと、上記チャンバ内の酸素濃度を検出するためのモニタセルと、上記チャンバ内の特定ガス成分濃度を検出するためのセンサセルを備える請求項1ないし8のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、上記モニタセルのみ補正を行なう請求項9記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、上記センサセルのみ補正を行なう請求項9記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、上記モニタセルおよび上記センサセルについてそれぞれ補正を行なう請求項9記載のガス濃度検出装置。
- 上記補正手段は、上記モニタセルおよび上記センサセルの出力を基に演算した結果について補正を行なう請求項9記載のガス濃度検出装置。
- 上記チャンバ内に導入される被測定ガス中の酸素を外部に排出または外部から酸素を導入して上記チャンバ内の酸素濃度を調整するポンプセルを備える請求項9ないし13のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記モニタセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極間に所定の電圧を印加した時に上記チャンバ内の残留酸素濃度に対応する電流信号を出力する、あるいは上記一対の電極間に上記チャンバ内の残留酸素濃度に対応する起電力を発生する請求項9ないし14のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記ポンプセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極への印加電圧を、上記モニタセルの出力が一定となるようにフィードバック制御する、あるいは上記一対の電極間を流れる電流値に応じて制御する請求項14または15記載のガス濃度検出装置。
- 上記センサセルは、酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に一対の電極を形成してなり、上記一対の電極間に所定の電圧を印加した時に上記チャンバ内の上記特定ガス成分および残留酸素濃度に対応する電流信号を出力する請求項9ないし16のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記センサセルの電流出力と上記モニタセルの電流出力の差から、被測定ガス中の特定ガス成分濃度を検出する請求項9ないし17のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記特定ガス成分がNOxであり、上記チャンバに面して設けられる上記センサセルの電極がNOxの還元分解に活性な電極材からなり、上記チャンバに面して設けられる上記モニタセルの電極がNOxの還元分解に不活性な電極材からなる請求項1ないし18のいずれか記載のガス濃度検出装置。
- 上記チャンバに面して設けられる上記モニタセルの電極がPt−Au電極であり、上記チャンバに面して設けられる上記センサセルの電極がPt−Rh電極である請求項19記載のガス濃度検出装置。
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