JP2004124601A - 防音構造体および防音壁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】開口部であるスリット2を有する防音構造体1であって、スリット2の側面から防音構造体本体3の内部に向かって、終端が閉じた複数の音響管4を併設し、これらの音響管4の長さを騒音中の遮音対象とする音波の波長の1/4とすることによりスリット2の側面における音響インピーダンスをゼロとするように構成し、さらに好ましくは、スリット2の幅dを遮音対象とする音波の波長の1/2以下とする。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種騒音の低減を目的とする防音技術に関し、特に、車道または鉄道における交通騒音を低減するための防音壁に関する。
【0002】
【従来の技術】
図23に示すように、従来から、車道や鉄道50の騒音防止のため、道路や線路50の両側に防音壁51が設けられている。一般的にこの防音壁51には、騒音源52からの音波を反射させるとともにその音波の透過を阻むため、ある程度の透過損失を有するものが用いられる。また、防音壁51の表面に吸音性を付与したものも多数使用されている。
【0003】
そして、防音壁51は道路や線路50の両側に一定高さまで設置され、その壁面には一切開口部は設けられていなかった。開口部を設けるとそこから音波が外部に漏れ出し、著しく遮音性能能が低下するためである。
【0004】
また、道路や線路50の両側に防音壁51が設置されていても、防音壁51の上方は開放されているため音波が回折により外部に伝播するため、高さの低い防音壁51では十分な遮音効果が得られない。そのため、例えば都心部で高速道路や線路50に近接して高層住宅53などが建設されている地域では、図示していないが7mを超えるきわめて高い防音壁51を設置するか、図23に示すように上端部を道路や線路50上方に被さるようにアーチ状に曲げた形状の防音壁51を設置するのが現状である。
【0005】
上記のような高さの高い防音壁は、道路や線路50側からの外観透視が不能となることに加え、通風・換気が不十分となる。また、防音壁51を高くすると、風圧による風荷重に耐えうる強度で設計しなければならず、防音壁51自体やそれを取り付ける構造体(壁高欄)も大型化し、設置コストが大幅に高くなってしまう。さらに、橋梁道路や線路のように建設限界、壁高欄強度等の制約が厳しい場合は大型の防音壁51自体設置できない。
【0006】
一方、アーチ状の防音壁51は、風荷重の問題は高さの高い防音壁51に比べ小さくなるが、外観透視の阻害、通風・換気性の低下、大型化による設置コストの上昇などの問題は残る。
【0007】
そこで、最近では、防音壁の上端部の形状を工夫したり、通常の高さの防音壁の上端部に特殊な構造体を取り付けたりして、防音壁の高さをある程度高くした分に相当する遮音効果を得るとともに外観透視性の確保や設置コストの低減を図る提案が多数なされている。
【0008】
例えば、防音壁の上端部に開口部を設け、さらに防音壁の背面を除く全面に吸音材を付与したもの(特許文献1参照)、防音壁の上端部に複数の音響管からなる構造体を取り付けたもの(特許文献2〜4参照)などが開示されている。これらの発明は、いずれも防音壁の上端部近傍で回折して外部に伝播する音に対してはある程度の効果が得られるものと考えられるが、防音壁や構造体のさらに上方の開放部を通過して直接音が到達する、例えば高層住宅の中層以上の部分ではほとんど効果が得られない(図23参照)。また、吸音材を付与した防音板は、低周波の騒音に対しては遮音効果が十分でない。また、複数の音響管からなる構造体を防音壁上端部に取り付けるもののうち、特許文献2および3に開示されているものでは1つの特定周波数付近においてのみ遮音効果が得られるように音響設計されているため、広い周波数帯域での遮音効果は望めず総合的な防音対策とならない。なお、特許文献4には、複数の周波数付近において遮音効果が得られるように音響設計されたものが提案されているが、依然として構造体の上方開放部からの漏出音に対してはほとんど効果がない。
【0009】
また、遮音効果を確保しつつ外観透視も可能にする対策として、透明のアクリル樹脂板等を表面板とした透光板を使用した防音壁が用いられている。しかし、この方法では、風荷重が問題となること、吸音性を付加することが困難なことに加え、車道用の防音壁に用いた場合には自動車の排気ガスにより汚染され透光性が低下してしまう。
【0010】
また、風荷重の低減と通風・換気性の向上を図る対策として、防音壁にある程度の隙間を開けることが主に行われている。しかし、この方法では、その隙間から騒音が外部に漏れ出すため、遮音性能能低下が著しい。
【0011】
さらには、風荷重の低減および通風・換気性の向上と外観透視の確保との両立のため、車道を取り囲むトンネル状の防音壁をストロボ効果によって外部が見える程度の間隔を開けて設置する構造のものが提案されている(特許文献5参照)。しかし、この方法でも開口部から音が外部へ漏れ出すため、遮音性能が低下する。
【0012】
また、ヘルムホルツ効果による吸音特性をもたせた構造体を防音壁に設けるものもあるが、特許文献2および3の提案と同様、1つの特定周波数付近において音響設計されており、広い周波数帯域での吸音効果が望めないため騒音に対する総合的な防音対策とはならないことに加え、依然として防音壁の上方開放部からの漏出音に対してはほとんど効果がない。
【0013】
以上のように、従来の交通騒音に対する防音対策はその効果が一長一短であり、いずれかの問題点が残されたままであった。
【0014】
また、交通騒音に対する防音対策以外でも、例えば機械の作動音などの工場騒音の防音対策として、騒音源全体を覆う防音カバーが一般に用いられる。ところが、騒音源が熱を発生する場合、防音カバー内の温度が上昇してしまう。そのため、防音カバー内の換気・冷却のため送風機等を追加することが必要となり設置コストが高くなる問題があった。
【0015】
【特許文献1】
特開2001―64920号公報
【特許文献2】
特許第2639393号公報
【特許文献3】
特開平9−151420号公報
【特許文献4】
特開平10−37342号公報
【特許文献5】
特公昭54−18492号公報
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、通風・換気性や外観透視性に優れ、遮音性能を確保し、かつ少ないコストで設置可能な防音構造体または防音壁を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、開口部を有する防音構造体であって、開口部の側面から防音構造体本体の内部に向かって、終端が閉じた複数の音響管を併設し、これらの音響管の長さを調節することにより開口部の側面における音響インピーダンスをゼロとするように構成されたことを特徴とする防音構造体である。騒音源からの音波が開口部を通過しようとする際に、その音波の一部が音響管内に入射し、音響管の終端で反射して音響管入口(すなわち、開口部の側面)に戻ってくる。この反射波の入射波に対する音圧反射率がほぼマイナス1の位相反転となるように音響管の構造がなされていることにより、反射波と入射波とがちょうど半波長分位相がずれ、互いに波動を打ち消し合い音圧がゼロになる。すなわち、音響管入口(開口部の側面)における音響インピーダンスはゼロとなる。これにより、開口部を通過して外部へ漏れ出す音波の音圧を大幅に低下でき、高い遮音効果が得られる。また、防音構造体に開口部を設けたことにより、通風・換気性や外観透視性も確保できる。ここに、音響インピーダンスとは、音場において音波の波面に平行で有限な面を考え,その面における音圧をその面を通過する粒子の体積速度で割った複素数比をいう(JIS Z8106参照)。
【0018】
請求項2の発明は、前記音響管の長さを、遮音対象とする音波の波長の1/4とする請求項1記載の防音構造体である。これにより、騒音中の広い周波数帯域のうち遮音したい波長の音波の反射波と入射波とが音響管入口(開口部の側面)でちょうど半波長だけ位相がずれて互いに打ち消し合って消音されるため、より高い遮音効果が得られる。なお、遮音対象とする音波の波長が複数ある場合には、それぞれの音波の波長の1/4の長さの(すなわち、長さの異なる)音響管を設けた防音構造体とすればよい。
【0019】
請求項3の発明は、前記開口部の短径を、前記遮音対象とする音波の波長の1/2以下とする請求項1または2記載の防音構造体である。後述の実施例2で示すように、開口部の短径(例えば、開口部がスリット状の場合にはスリット幅、開口部が長方形である場合には、短辺)を、遮音したい音波の波長の1/2以下とすることにより、当該音波の外部への透過をより効率的に低減でき、遮音効果をさらに向上できる。なお、遮音対象とする音波の波長が複数ある場合には、開口部の短径を最も短い音波の波長の1/2以下とすればよい。
【0020】
請求項4の発明は、金属材料を塑性加工することにより前記複数の音響管が一体に成形された請求項1〜3のいずれか1項記載の防音構造体である。これにより、防音構造体の音響管の部分が周知技術である押出成形法などにより簡易に成形できるため、安定した品質でかつ安価に製造できる。また、この複数の音響管が一体成形された防音構造体は、施工現場で既設構造物に簡単に並べて取り付けることができる、ないしは、製造工場で複数の防音構造体をあらかじめユニット化したものを施工現場に搬送して単に取り付けることもできるため、施工コストも低減できる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載の防音構造体を有する車道または鉄道用の防音壁であって、前記開口部が、車速に応じて残像現象により外部が見えるような間隔で配置されたことを特徴とする防音壁である。これにより、外観透視性をさらに満足なものとすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
〔実施形態1〕
図1に、本発明の防音構造体の一例を示す。防音構造体1は、開口部であるスリット2を有している。本例ではスリット2により防音構造体1が複数個の防音構造体本体3に物理的に分割されている。そして、スリット2の側面(すなわち、防音構造体本体3の端面)21には防音構造体本体3の内部に向かって終端が閉じた直方体形状の空洞部すなわち音響管4が複数形成されている。
【0023】
音響管4は、スリット2の両側面(すなわち、防音構造体本体3の両端面)21のうち片側だけに設置してもよいが、両側に設置する方が防音構造体1の単位設置面積に対する音響管3の本数が増やせるのでより大きな遮音効果が得られる。
【0024】
スリット2の幅(開口部の短径)dは、要求される遮音性能を満足するため遮音対象とする音波の波長の1/2以下とすることが望ましいが、さらに、通風性(換気性)、外観透視性、風荷重等をも総合的に考慮して決定される。
【0025】
防音構造体1(防音構造体本体3)の高さhは要求される遮音性能によって決定されるが、その高さを決定する要因としては、騒音源から官民境界線までの距離や騒音の影響を受ける対象が高層住宅のように高い地点であるような場合にはその建物の高さ等である。
【0026】
防音構造体1(防音構造体本体3)の厚さtも要求される遮音性能によって決定されるが、車道や鉄道の防音壁に用いる場合には、従来から数多く設置されている防音壁の厚さが100mm前後であるため、景観性などを考慮して100mm程度とすることが好ましい。
【0027】
図2にスリット2の側面(防音構造体3の端面)21の部分正面図を示す。音響管4は、(a)に示すように縦横に仕切り壁41を設けて格子状とし、各格子部分に底壁42を設けた直方体形状とする。なお、音響管4の横断面形状は(a)では長方形としているが、(b)、(c)のように正方形や円形としてもよく、図示していないが三角形や五角形以上の多角形など任意の形状とすることができる。あるいは、(d)のように縦横の仕切り壁の一方を省略したものとすることもできる。また、仕切り壁41の数や音響管4の横断面積は、要求される遮音性能に応じて適宜設計すればよい。
【0028】
音響管4を構成する仕切り壁41、底壁42、および防音構造体本体3の側壁31は、アルミニウム板、鋼板、ステンレス鋼板等の金属板を使用しても、合成樹脂やプラスチックを使用してもよい。アルミニウム板、鋼板、ステンレス鋼板等の金属板のように剛性の高い金属材料を使用した場合は、音響管4内に入射した音波の内部損失が少なく均一な反射波として音響管入口に戻ってくるため、より効率的に遮音効果が得られる。また、金属板は耐候性に優れていることにより屋外への設置に適している。軽量化が望まれる場合は、合成樹脂やプラスチックの適用が可能である。この構造体は耐候性に乏しいグラスウール、ロックウール等の多孔質吸音材を使用する必要がないため遮音性能能の経年変化が少なく長期に使用可能である。
【0029】
音響管4は一端が開口し他端が閉口しているため、音響管4内にごみや埃が侵入して溜まりやすい。この対策としては、防音構造体1を屋内で使用する場合には、例えば音響管4入口を通気性が良く、かつ吸音性を有するガラス繊維やアルミニウム繊維などの織布で被覆すればよい。これにより遮音される音の周波数(波長)の幅が広がり遮音性能能が向上するとともに、織布の表面を清掃するだけで簡単に清掃ができる防音構造体1が得られる。防音構造体1を屋外で使用する場合には、屋内使用時と同じ対策のほか、高圧水等による洗浄も可能である。また、特に車道の両側に設置し直接日光が当たる場所においては、光触媒の塗料を音響管4の内面に塗布することにより、スリット2から外部へ流出する自動車の排気ガス中のNOxを分解し低減することができる。
【0030】
図3は、防音構造体本体3の水平断面図であり、遮音対象とする音波の波長が4種類ある場合における音響管4の配置例を示したものである。防音構造体3は、遮音対象とする4種類の音波の波長のそれぞれ1/4の長さLの音響管4で構成されている。図のように異なる長さLの音響管4を表裏一対に組み合わせるなどして、コンパクトに配置することができる。本例では水平断面内で音響管4の長さLを順次変更した配置としているが、必ずしもこれに限られず、垂直断面内で同様の配置としてもよいし、各断面内で長さLの変更をランダムな配置としてもよい。
【0031】
図4は、上記の防音構造体1を用いて道路または線路に防音壁を新設した例を示す斜視図である。道路(または線路)壁高欄5の上端部に複数の防音構造体本体3を一定のスリット2の幅dを確保しつつ配置したものである。これにより、スリット2を通して自然換気や風荷重の低下が可能となる。また、防音構造体本体3の幅を調整することにより、スリット2の間隔を車速に応じて残像現象により外部が見える間隔とすることができる。さらに、スリット2部分の壁材料が不要となることによる防音構造体1全体の設置コストの低減、防音構造体1全体の重量減や風荷重の低下による壁高欄5の補強コストの低減等により防音壁の設置コストが低減できる効果もある。
【0032】
〔実施形態2〕
図5は、本発明の防音構造体1を既設の防音壁6の上端部に設置した例を示す斜視図である。これにより、既設の壁高欄5や防音壁6に過度の重量、風荷重等の負荷をかけることなく、防音壁の遮音性能を向上させることができる。
【0033】
〔実施形態3〕
図6は、上記実施形態2の変形例であり、防音構造体1を道路(または線路)上方に被さるように配置することができる。この場合、防音構造体本体3は、角柱を道路(線路)上方側に曲げた形状としてもよいが、円柱を道路(線路)上方側に曲げた形状として、円柱の、スリット2に面する側に開口部を有する音響管4を設けてもよい。
【0034】
〔実施形態4〕
図7は、本発明の防音構造体1を、道路または線路の両側が壁で上方に開放部を有する、例えば半地下部分に使用した例を示す部分斜視図である。上方の開放面に対して傾斜または水平下向きの吸音表面を有する複数の吸音板(防音構造体本体に相当)3が互いに間隔(スリットに相当)2を開けて設置され、さらにこれらの吸音板3が上下に複数段配置された吸音板ユニット(防音構造体に相当)1である。そして、スリット2の側面(吸音板3の端面)21に格子状に仕切り壁を設けて複数の音響管4を設置している。これにより、換気性や採光性を損なわずに遮音効果が得られる。
【0035】
〔実施形態5〕
図8は、防音構造体1が、上記実施形態1〜4のスリットと異なり、防音構造体本体3で取り囲まれた開口部2を有し、開口部2の側面21に音響管4を設置した例を示す斜視図である。開口部2の形状が、(a)は矩形、(b)は円形、(c)は菱形の例を示したものであるが、これらに限られず、いずれの形状であってもよい。
【0036】
また、本発明の防音構造体1は、その複数の音響管4の部分を押出成形、鋳鍛成形、ハニカム成形、ロールフォーミング等の公知の塑性加工技術にて一体構造として成形可能であるため、簡易にかつ安価に製造できる。
【0037】
図9は、図8(a)の矩形の開口部2を有する防音構造体1を1ユニットとして、従来の開口部2を有しない防音構造体16とを組み合わせて千鳥格子状に配置した防音壁の例である。本例では、従来の開口部の全くない防音壁に比べ開口部が約50%あるため、壁の部分の面積が減り、防音壁全体の設置コストが低減できる。千鳥格子状に開口部を設けたことにより外観透視が可能であり、かつ風荷重の低下や防音壁の全体重量の低減による壁高欄の負荷も軽減できる。
【0038】
〔実施形態6〕
図10は、複数の開口部(スリット)2を有する防音構造体1を1ユニットとし、開口部(スリット)2の側面21に音響管4を設置した例を示す斜視図である。図11は、この防音構造体1のユニットを、従来の開口部を有しない防音構造体で構成された開口部のない防音壁6の上部に設置した例を示す斜視図である。予め複数の防音構造体本体4をユニット化しているため、現地における設置が迅速におこなえ、設置コストが低減できる。
【0039】
〔実施形態7〕
図12は、本発明の防音構造体1をユニット化したものを道路または線路の両側に設置する例を示す斜視図である。従来の防音壁の設置方法は、道路または線路の両側に基礎部材としてH型鋼を一方のフランジ面を道路または線路側に向けて一定間隔で鉛直に設置する。次に、隣同士のH型鋼の間に開口部を有しない防音構造体を上方から順次落とし込むようにして設置する。本発明の防音構造体1も、図12に示すように、従来と同様、ユニット化した防音構造体1をH型鋼7の間に順次落とし込むことによって簡単に設置することができる。したがって、既設の防音壁に対して、道路または線路長手方向へ防音壁を延長する際や、防音壁の高さを高くする嵩上げ時にも、この設置方法を適用できる。
【0040】
〔実施形態8〕
図13は、本発明のユニット化した防音構造体1を道路または線路8の上方を取り囲むトンネル状に設置した例を示す斜視図である。これにより、道路または線路8に近接する高層建築物に対しても遮音効果が得られるとともに、自然換気や外観透視が可能となる。
【0041】
上記実施形態1〜7(実施形態4を除く)において、外観透視を確保するため、ストロボ効果による残像現象を利用して良好な外観透視性が得られるように開口部2の開口率を10〜50%の範囲で適宜設計することができる。
【0042】
〔実施形態9〕
図14は、本発明のユニット化した防音構造体1を、騒音源9の上方全体を覆うように頂部に丸みを持たせた鳥かご状にして設置した例を示す斜視図である。鳥かご状に限られず、円柱状、多面体状、ピラミッド状など任意の形状に設置できる。
【0043】
騒音源9が熱を発生する場合、従来は騒音源9を開口部のない防音カバーで全面覆い、さらに送風機等を設置して強制的に換気をおこなう方法が採用されてきたが、本発明によれば、騒音が漏れることを防止しつつ、開口部2が自然換気の役目を果たすため、送風機等の追加機器が不要となり低コストの防音対策ができる。
【0044】
〔実施形態10〕
また、図15に示すように、冷却などの必要性のために防音カバー10の一部が開口されている場合には、この開口部2の側面に音響管4を設けることにより、遮音効果を持たせることもできる。
【0045】
【実施例】
〔実施例1〕
図16は、本発明の防音構造体の遮音性能能確認のため行った実験の概要を示す図である。防音構造体本体3の高さは2000mm、厚さは100mm、スリット2の幅は300mmに設定した。音響管4として、肉厚1mmで外径25mmのアルミニウムパイプをスリット2側面(防音構造体本体3のスリット2側の端面)全面に配置した(図2(c)参照)。遮音対象とする音の設計周波数は500Hz、1kHz,2kHz、4kHzの4種類とし、音響管の長さは、それぞれの設計周波数に対応する波長の1/4に設定した。音源9は防音構造体本体3の中心から水平に1500mm離れた位置で路面8から300mm上方に配置し、受音点20は防音構造体本体3の中心から音源9とは反対方向に水平に1500mm離れた位置で路面8から500mm上方に配置した。そして、音源9からホワイトノイズを発生させ、受音点20にて音圧レベルを測定した。また、遮音効果を評価するための基準として、スリット2側面すなわち音響管4入口に反射性の高い金属板を被せて音響管のないスリットのみの場合の音圧レベルも測定した。そして、両者の音圧レベルの測定値の差を挿入損失として遮音効果を表す指標値とした。
【0046】
図17は、その測定結果を各1/3オクターブ中心周波数の音における挿入損失をプロットしたグラフ図である。挿入損失がプラス側に大きいほど遮音効果が大きいことを示す。図15から明らかなように、設計周波数の音はもちろんのことその前後の周波数の音に対しても遮音効果が認められ、幅広い周波数帯域にわたって遮音効果が得られることが分かった。
【0047】
〔実施例2〕
図18は、遮音効果に対するスリット幅(開口部の短径)の影響を調査するための実験装置の概略を示す水平断面図である。防音構造体本体3は、反射率の高い塩化ビニル板31と、その表裏に金属壁32を配置し、塩化ビニル板31と金属壁32とはそれぞれ独立に水平方向に摺動可能とし、スリット2の幅dと音響管4の長さLとを互いに独立して可変とできる構造とした。また、実験装置の周囲はグラスウール33で囲い、反射音の影響を極力少なくした。そして、防音構造体本体3で仕切られた一方の側には音源としてスピーカ9を配し、他方の側にはスリット2を通過した音波を捕らえる受音点としてマイクロホン20を図のように円弧状に5個設置した。また、スピーカ9から発生させるホワイトノイズの波長λに対して、音響管4の長さLはλ/4に設定した。そして、波長λとスリット幅dとを種々変更して、マイクロホン20にて音圧レベルを測定した。また、遮音効果を評価するための基準として、塩化ビニル板32の側面と金属壁31の側面とを面一に揃えて音響管4のないスリット2のみの場合の音圧レベルも測定した。そして、両者の音圧レベルの測定値の差を挿入損失として遮音効果を表す指標値とした。
【0048】
測定結果を図19に示す。図から明らかなように、d/λが0.5以下になると挿入損失が大幅に上昇しており、遮音効果がより高くなることがわかる。
【0049】
なお、挿入損失の算出には、5個のマイクロホン20による音圧レベルの測定値を算術平均したものを用いた。
【0050】
〔実施例3〕
本発明の防音構造体を従来の開口部のない防音壁の上部に設置すること(図5参照)による遮音効果を確認するため、モデル計算を実施した。騒音源の周波数特性は、音響学会で提示されている自動車騒音の相対周波数特性(ASJ Model,1998)を用いた(図20参照)。また、防音壁の上端近傍で回折する音の減音量は、前川チャートによるものとした(図21参照)。防音壁の内側5mの位置に音源を設定し、防音壁外側1〜10mの範囲で路面から5mの高さまでの領域の音圧分布(オーバーオール値)を計算した。
【0051】
比較のため、次の3ケースについて計算を実施した。
ケース1:高さ2mの開口部のない防音壁
ケース2:高さ3mの開口部のない防音壁
ケース3:高さ2mの開口部のない防音壁+高さ1mの本発明の防音構造体
【0052】
本発明の防音構造体は、防音構造体本体の幅140mm、スリット幅48mm(すなわち開口率26%)で、スリット側面(防音構造体本体の端面)において音響インピーダンスをゼロとしたものである。
【0053】
ケース3の音圧分布は、高さ3mの防音壁の回折音の音圧分布と、高さ2mの防音壁の回折音が本発明の防音構造体による挿入損失分だけ低減した音の音圧分布とを重ね合わせたものとした。
【0054】
図22に、モデル計算による音圧分布の結果を示す。図から明らかなように、ケース3はケース2とほぼ同等の音圧分布を示しており、本発明の防音構造体は、従来の開口部のない防音壁とほぼ同程度の遮音効果を有することがわかった。
【0055】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明によれば、通風・換気性や外観透視性に優れ、遮音性能を確保し、かつ少ないコストで設置可能な防音構造体または防音壁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の防音構造体を示す斜視図である。
【図2】実施形態1における、スリット側面の部分正面図である。
【図3】実施形態1における、防音構造体本体の水平断面図である。
【図4】実施形態1の防音壁を示す斜視図である。
【図5】実施形態2の防音壁を示す斜視図である。
【図6】実施形態3の防音壁を示す斜視図である。
【図7】実施形態4の防音構造体を示す斜視図である。
【図8】実施形態5の防音構造体を示す斜視図である。
【図9】実施形態5の防音壁を示す斜視図である。
【図10】実施形態6の防音構造体を示す斜視図である。
【図11】実施形態6の防音壁を示す斜視図である。
【図12】実施形態7の、防音構造体を用いた防音壁を設置する方法を示す斜視図である。
【図13】実施形態8の、(a)は防音壁、(b)は(a)のA部の防音構造体を示す斜視図である。
【図14】実施形態9の、(a)は防音壁、(b)は(a)のA部の防音構造体を示す斜視図である。
【図15】実施形態19の、防音カバーの開口部に防音構造体を設けた例を示す斜視図である。
【図16】実施例1の、防音構造体の遮音性能能を確認するための実験の概略を示す図であり、(a)は正面図、(b)は水平断面図である。
【図17】実施例1の実験結果である、1/3オクターブ中心周波数と挿入損失との関係を示すグラフ図である。
【図18】実施例2の、防音構造体の遮音性能能を確認するための実験の概略を示す水平断面図である。
【図19】実施例1の実験結果である、1/3オクターブ中心周波数と挿入損失との関係を示すグラフ図である。
【図20】自動車騒音の相対周波数特性である、1/3オクターブ中心周波数と音圧との関係を示すグラフ図である。
【図21】回折音のフレネル数と減音量との関係を示すグラフ図である。
【図22】垂直断面における音圧分布を示す等音圧線図であり、(a)はケース1、(b)はケース2、(c)はケース3を示す。
【図23】従来の防音壁の設置状況を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
1…防音構造体
2…開口部(スリット)
21…開口部の側面(スリットの側面)
3…防音構造体本体
4…音響管
L…音響管の長さ
d…開口部の短径(スリットの幅)
Claims (5)
- 開口部を有する防音構造体であって、開口部の側面から防音構造体本体の内部に向かって、終端が閉じた複数の音響管を併設し、これらの音響管の長さを調節することにより開口部の側面における音響インピーダンスをゼロとするように構成されたことを特徴とする防音構造体。
- 前記音響管の長さを、遮音対象とする音波の波長の1/4とする請求項1記載の防音構造体。
- 前記開口部の短径を、前記遮音対象とする音波の波長の1/2以下とする請求項1または2記載の防音構造体。
- 金属材料を塑性加工することにより前記複数の音響管が一体に成形された請求項1〜3のいずれか1項記載の防音構造体。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の防音構造体を有する車道または鉄道用の防音壁であって、前記開口部が、車両の速度に応じて残像現象により当該車両から外部が見えるような間隔で配置されたことを特徴とする防音壁。
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