JP2012067548A - 建物開閉部の遮音構造並びにその構造に用いる開閉物、建材及び遮音器 - Google Patents

建物開閉部の遮音構造並びにその構造に用いる開閉物、建材及び遮音器 Download PDF

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Abstract

【課題】建物の開口部を開閉する扉等の開閉物とその開口部を構成する壁、枠材等の建材とを備えた建物開閉部において、その開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れ(遮音欠損)を的確に抑制することができる建物開閉部の遮音構造等を提供する。
【解決手段】遮音構造は、建物の開口部1を開閉する開閉物2と、開口部1を構成する建材3と、開閉物の建材との間に存在する隙間Sの少なくとも一部領域(Sa)に向き合った状態又はその一部領域と隣接する空間部分(Ed)に向き合った状態で配置される遮音器4とを有し、遮音器4として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さLが隙間Sを通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管41,42を、その各音響管の開口端が揃えられて隙間Sの一部領域又はその一部領域と隣接する空間部分と向き合う状態になるよう並べてなる構造物を設置している。
【選択図】図1

Description

この発明は、建物開閉部の遮音構造並びにその構造に用いる開閉物、建材及び遮音器に関するものである。
一般に、家屋、ビル等の建物には、区画された空間(部屋等)に人が出入りするときに主に使用する開口部が壁(床を含む場合もある)に形成されるとともに、その開口部に扉等の開閉物が取り付けられた構造部分としての開閉部が存在する。このような建物開閉部は、例えば、図19に例示するように、扉(本体)100とその開口部を構成する枠材(壁材、床材の場合もある)120とで構成されていることが多い。この場合、その扉100と枠材120との間には、スリット状の隙間Sが存在している。図中の符号101は扉の開け閉め時に操作するハンドル(取っ手)、102は蝶番、130は開口部を構成する壁、140は開口部の一部を構成する床をそれぞれ示す。
この隙間Sは、扉の開閉動作を円滑に行えるようにするために構造上必要なものである。また、この隙間は、建築施工時においても必要とされる空間でもある。
一方、この隙間Sは、扉の遮音性能を著しく低下させる原因となる。このため、扉が設置されている開閉部に遮音性能が要求される場合は、その隙間からの音漏れ(空気伝搬音)を少なくすることが大きな課題になっている。このような音漏れの防止が必要とされるのは、例えば、音響実験室、録音スタジオ等のような高度な音漏れ対策が要求される部屋をはじめ、一般の家屋や公共の建物等における部屋、廊下等も含まれる。
従来、この建物開閉部における音漏れの解決策としては、図20に示すように、枠材120の四方にゴムパッキン105を取り付けた後、その枠材120に扉100を強く押し付けて閉めた状態にすることにより、扉100と枠材120の間の隙間Sをなくして気密性を確保することで、その隙間Sからの音漏れを防ぐという遮音構造が知られている。特に同図に示す遮音構造では、扉100の四辺部に突起(剣先)106を取りつけ、その扉100(実際には突起106)をグレモンハンドル等の特殊なハンドル101を併用して枠材のパッキン105に強く押し付けて閉める構成を採用し、これにより優れた気密性を確保している。
ここで、高気密型の防音扉(既製品)の遮音特性について調べた結果を図21に示す。このときの遮音特性は、JIS(日本工業規格) A 1419:2000(建築物及び建築部材の遮音性能の評価方法)の基準方法に準じて評価したものである。具体的には、防音扉の片側に音源(スピーカー)を設置して所定の周波数の音を発生させ、そのときの防音扉の表側及び裏側での音圧を測定し、その音圧レベル差を「遮音量」として現したものである。また、防音扉としては、株式会社ソナ製のSPD45タイプを使用した。このときの結果は、JIS A 1419による等級(Dr)曲線のグラフに併せて示している。この場合、遮音量の値が大きい程、遮音性能が高いことを示すことになる。ちなみに、この等級曲線は、隙間などによる遮音欠損がない構造物を対象にした結果である。また、遮音性能は、その遮音欠損がない場合、一般にその等級曲線が示すように低い周波数から高い周波数になるにつれて徐々に高くなるという傾向にある。
図21の結果から、上記防音扉の場合、500Hz以下の中低域の周波数の騒音に対してはDr45という等級の遮音性能が得られるのに対し、1kHz以上の高域の周波数の騒音に対してはDr45という等級よりも2等級も低いDr35という等級レベルの遮音性能になってしまうことがわかる。
また参考までに、隙間による遮音欠損について数値計算によって算出した結果を図22に示す。このときの数値計算は、図23に示すように、厚さTが50mm、100mmである2種類の壁130を使用し、その同じ厚さTの壁130どうしを3mm、5mmという間隔tの隙間Sがそれぞれ形成されるよう設置したという内容を想定して行っている。遮音欠損については、上記した音圧レベル差に相当する値を算出し、その結果を遮音量として表示している。
図22の結果から、遮音欠損の様子は隙間の間隔tの大きさや扉の厚さTの厚薄の違いにより多少異なる特性になっているが、いずれの場合でも1kHz又は2kHzよりも高域の周波数からなる騒音に対する遮音性能が相対的に低下する傾向にあることがわかる。このことを参考にして考察するに、上記防音扉の遮音性能が図21に示すように1kHz以上の高域の周波数からなる騒音に対して低下している(遮音欠損がある)のは、隙間による影響が大きいものと推測される。とすれば、高気密型の防音扉であっても、扉と枠材の間の隙間による遮音欠損からは免れないことが言えそうである。
以上のことから、扉が設置されている開閉部に対して高い遮音性能を確保するためには、上記したパッキン等を取り付けて隙間を単に埋めて密閉する方式、いわば密閉方式による対策では足りないことが明らかである。このことからすれば、隙間を埋めるパッキン等を取り付けるという対策は、単に隙間における空気の通過を遮断しているにすぎず、音にとっては依然として隙間が開いた状態に近い状況に止まっていると解釈することもできる。従って、扉と枠材の気密性を高めるという密閉方式の対策では、隙間に起因した遮音欠損を適切に改善できないということになる。
この他、近年においては対象物が異なるものの、例えば以下のような消音対策手段が提案されている。
例えば、音波入射用の開口を有する複数の中空状の消音ユニットを備え、それら消音ユニットを組み合わせることによって、消音ユニット間に通気路を形成するとともに、消音ユニットの開口をその通気路に臨ませた消音機能を備えた通気装置や、その通気装置を用いた換気構造がある(特許文献1)。
また、矩形断面ダクトの長さ方向において対象音波の半波長程度以上にわたり、対向する一対の壁面境界ほぼ前面が境界面上にて音圧がほぼゼロとなる音響的にソフトな境界として構成され、その音響的にソフトな境界を、ダクト内表面に騒音の主成分をなす複数の音波の波長の1/4の長さを有して終端が閉じた多数の音響管を並設した音響管の集合体で構成するダクト消音装置がある(特許文献2)。
特開2007−225211号公報 特許第3831263号公報
この発明は、建物の開口部を開閉する扉等の開閉物とその開口部を構成する壁、枠材等の建材とを備えた建物開閉部において、その開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れ(遮音欠損)を的確に抑制することができる建物開閉部の遮音構造を提供することと、その遮音構造に用いて、その構造を容易に構築することができる開閉物、建材及び遮音器を提供することを目的とするものである。
この発明(A1)の建物開閉部の遮音構造は、
建物の開口部を開閉する開閉物と、
前記開口部を構成する建材と、
前記開閉物の前記建材との間に存在する隙間の少なくとも一部領域に向き合った状態又はその一部領域と隣接する空間部分に向き合った状態で配置される遮音器と
を有し、
前記遮音器として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域又はその一部領域と隣接する空間部分と向き合う状態になるよう並べてなる構造物を設置していることを特徴とするものである。
この発明(A2)の遮音構造は、上記発明A1の遮音構造において、前記遮音器が、前記開閉物と前記建材の一方又は双方に、前記複数の音響管の各開口端が前記隙間の一部領域と向き合う状態になるよう埋設されているものである。
この発明(A3)の遮音構造は、上記発明A1の遮音構造において、前記遮音器が、前記開閉物の表裏面の少なくとも一方の面の一部に、前記複数の音響管の各開口端が前記隙間の一部領域と隣接する空間部分と向き合う状態になるよう取り付けられているものである。
この発明(B1)の開閉物は、
建物の開口部を開閉する開閉物であって、
その開閉物の外周部のうち前記開口部を構成する建材との間に存在する隙間の少なくとも一部領域に向き合う状態になる部分に遮音器を埋設してなり、
前記遮音器として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と対峙する状態になるよう並べてなる構造物を埋設していることを特徴とするものである。
この発明(C1)の建材は、
開閉物で開閉される建物の開口部を構成する建材であって、
前記建材の前記開閉物の外周部と向かい合う部分のうち当該開閉物との間に存在する隙間の少なくとも一部領域と対峙する部分に遮音器を埋設してなり、
前記遮音器として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と対峙する状態になるよう並べてなる構造物を埋設していることを特徴とするものである。
また、この発明(D1)の遮音器は、
建物の開口部を開閉する開閉物の表裏面の少なくとも一方の面の一部に、その開閉物と当該開口部を構成する建材との間に存在する隙間の少なくとも一部領域と隣接する空間部分に向き合う状態で取り付けて使用する遮音器であって、
一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と隣接する空間部分と対峙する状態になるよう並べてなる構造物で構成されていることを特徴とするものである。
また、この発明(D2)の遮音器は、
開閉物で開閉される建物の開口部を構成する建材のうち当該開閉物と向き合う部分の一部に、その建材と開閉物との間に存在する隙間の少なくとも一部領域に向き合う状態で埋設して使用する遮音器であって、
一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と隣接する空間部分と対峙する状態になるよう並べてなる構造物で構成されていることを特徴とするものである。
上記発明A1の遮音構造によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、建物の開口部を開閉する開閉物とその開口部を構成する建材とを備えた建物開閉部において、開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れ(遮音欠損)を的確に抑制することができる。
上記発明A2の遮音構造では、その発明の構成を有しない場合に比べて、建物開閉部における外観を大幅に変更することなく、開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れを的確に抑制することができる。
上記発明A3の遮音構造では、その発明の構成を有しない場合に比べて、既存の建物開閉部について、開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して発生する音漏れを的確に抑制できる遮音構造を容易に構築することができる。
上記発明B1の開閉物によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、上記した建物開閉部において、その開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れを的確に抑制できる遮音構造を容易に実現することができる。
上記発明C1の建材によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、上記した建物開閉部において、その開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れを的確に抑制できる遮音構造を容易に実現することができる。
上記発明D1の遮音器によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、既存の建物開閉部について、その開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れを的確に抑制できる遮音構造を容易に構築することができる。
上記発明D2の遮音器によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、上記した建物開閉部において、その開閉物と建材の間に存在する隙間に起因して生じる音漏れを的確に抑制できる遮音構造を容易に実現することができる。
実施の形態1に係る建物開閉部の遮音構造等の概要を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面図である。 (a)は図1の遮音構造におけるQ−Q線に沿う断面部分の斜視図、(b)は(a)における一部(遮音器が埋設された開閉扉)のみの斜視図である。 図2における遮音器が埋設された開閉扉の分解斜視図である。 遮音性能等に関する数値計算や試験での条件内容を図1(a)のQ−Q線に沿う断面部分を基準して示す断面説明図、(b)はその試験での条件内容を図1(b)のQ−Q線に沿う断面部分を基準して示す断面説明図である。 建物開閉部における隙間による遮音性能(遮音欠損)について数値計算で算出したときの結果を示すグラフ図である。 音が通過するときの部材の境界面の各吸音処置の状態における境界面の音響インピーダンスとその各音響処置における音の入射及び反射の状態を示す説明図である。 図1の遮音構造等における隙間による遮音欠損の抑制効果に関する試験の結果を示すグラフ図である。 実施の形態1に係る建物開閉部における遮音器の配置に関する他の構成例を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面図である。 実施の形態2に係る建物開閉部の遮音構造等の概要を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面図である。 図9の遮音構造の構成(施工状態)を示す斜視図である。 図9の遮音構造に使用する遮音器を示し、(a)はその遮音器の斜視図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面図である。 図9の遮音構造の構成(寸法条件等)を示す断面説明図である。 図9の遮音構造等における隙間による遮音欠損の抑制効果に関する試験の結果を示すグラフ図である。 遮音欠損の抑制効果に関する試験の構成を示し、(a)は遮音器を設置しない場合の測定方法を示す説明図、(b)は遮音器を設置した場合の測定方法を示す説明図である。 実施の形態1に係る遮音構造の他の構成例を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面部分を代表して示す断面図である。 実施の形態1に係る遮音構造の他の別の構成例を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面図である。 実施の形態2に係る遮音構造の他の構成例を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面図である。 実施の形態2に係る遮音構造の他の別の構成例を示し、(a)はその遮音構造の構成を示す正面図、(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面部分を代表して示す断面図である。 従来の建物開閉部の構造を示し、(a)はその建物開閉部の構成を示す正面、上面及び側面図、(b)は(a)の丸A及び丸Bで囲む部分の拡大図である。 従来の建物開閉部に施される音漏れ対策の構成を示し、(a)はその建物開閉部の構成を示す正面、上面及び側面図、(b)は(a)の丸Aで囲む部分の拡大図である。 図20に示す既製品である高気密型の防音扉の遮音特性について測定した結果を示すグラフ図である。 隙間による遮音特性の変化について数値計算で算出した結果を示すグラフ図である。 図22の算出における数値計算で想定した建物開閉部の隙間の構成を示す説明斜視図である。
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
[実施の形態1]
図1及び図2は、実施の形態1に係る建物開閉部の遮音構造等の概要を示すものである。図1(a)はその遮音構造を正面から見たときの状態を示し、図1(b)は(a)におけるQ−Q線に沿う断面部分の状態を示している。図2(a)は図1(a)のQ−Q線に沿う断面部分を斜め上方から見たときの状態を示し、図2(b)は(a)における一部(扉)を斜め上方から見たときの状態を示している。
実施の形態1に係る遮音構造は、ビル等の建物において人の出入りのために設けられる開口部1を開閉する開閉扉2と、この開口部1を構成する壁31、床32等からなる建材3と、開閉扉2の開口部1を構成する建材3の該当部分との間に存在する隙間Sの所要の領域に向き合った状態で開閉扉2等に設置される遮音器4とで主に構成されている。建物開閉部は、開閉扉2と、開閉扉2が取り付けられる開口部1を構成する建材3の該当部分とで構成される建物の構造部分である。
開口部1は、人が通ることができる程度に開口形状が上下方向に長い長方形からなるものであり、壁31の所要箇所に貫通した状態で形成されている。実施の形態1における開口部1は、詳しくは、その左右の側辺部(長辺部)及び上辺部(上の短辺部)が壁31で区画されるように形成されており、その下辺部(下の短辺部)が床32で区画されるように形成されている。建材3としての壁31及び床32は、一般の建物において使用される材料で構成されるものである。開口部1は、その4辺部が壁31のみで囲まれた状態で形成されるものでもよい。なお、開口部1には、通常、開閉扉1が閉じられたときに開閉扉1の外周部が接触又は接近してその外周部を囲んだ状態にするとともに、開閉扉1をその閉じた位置で停止させる位置決めをする枠材(35,120)が取り付けられるが(図9、図19等を参照)、ここでは枠材の図示を省略する。
開閉扉2は、開口部1の開口形状に対応して縦長の長方形に形成された扉本体21で構成されている。この開閉扉2(の扉本体21)は、開口部1に対し、その片側の側辺部において蝶番23を介して揺動自在に取り付けられており、その蝶番23を支点にして開閉方向に向けて揺動させることにより開口部1を開閉するようになっている。また、開閉扉2は、開閉部1を閉じたときには、ハンドル24と連動するロック機構により開口部1の閉じ位置で確実に止められた状態になる。扉本体21は、金属材料で形成されているが、木材、合成樹脂等の他の材料で形成してもよい。
遮音器4は、開閉扉2の開口部1を構成する建材3(の壁31)部分との間に存在するスリット状の隙間Sに起因して生じる音漏れ(遮音の欠損部分)を抑制するために設置される。実施の形態1では、図1に示すように、閉じたときの開閉扉2の4辺部と対応する4つの位置(領域)に隙間Sa〜Sdが存在しているが、この4つ領域の隙間Sのうちハンドル24が配置される片側の側辺部と建材3の壁31部分との間に相当する一部領域の隙間Saから発生する音漏れを抑制する観点で、遮音器4を配置している。実際には、遮音器4は、その一部領域に該当する開閉扉2の外周部分及び壁31の開口部1の周囲部分の双方にそれぞれ1つずつ配置されている。図1等における符号4Aは開閉扉2に配置した遮音器を示し、4Bは壁31部分に配置した遮音器を示す。
この遮音器4A,4Bはいずれも、図2や図3に示すように、複数の音響管41,42を並べて一体にした構造物である。音響管41,42は、1端を開口された開口端41a,42aとし、その他端を塞がれた閉口端41b,42bとした筒状のものであり、その内部空間を音波が入り込む(音響)空間として使用する。音響管41,42は、例えば金属材料で作製される。また、この音響管41,42は、開口端41a,42aから閉口端41b,42bまでの管内の長さL1,L2が、上記した隙間Sの一部領域Saを通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定されたものである。
実施の形態1では、遮音対象となる音波として2種類のものを想定しているため、各管内の長さLが異なる2種類の音響管41,42を併用している。ちなみに、音響管41は相対的に低域の周波数の音波を対象とし、音響管42は音響管41の遮音対象の音波よりも高い周波数の音波を対象としている。このため、音響管41の管内の長さL1は、音響管42の管内の長さL2よりも相対的に長くなっている(L1>L2)。さらに、音響管41,42の管の太さ(管内の断面積)は、管内部の断面形状を構成する四角形の一辺の長さが、管内の長さL1,L2よりも十分に短い寸法になるよう設定されている。
また、遮音器4A,4Bは、図1、図2等に示すように、2種類の音響管41,42を所要の本数それぞれ用意し、その各音響管の開口端41a,42aが同じ平面内(面状)に存在するよう揃えられた状態になり、しかも、その各開口端41a,42aが隙間Sの一部領域Saと向き合う状態になるよう並べた構造物になっている。音響管41,42の本数については、例えば、遮音器4A,4Bを隙間Saが存在する開閉扉2の外周部分と壁31の該当部分のほぼ全域に存在させる場合、それに必要な数が選定される。さらに、遮音器4A,4Bは、音響管41,42の開口端41a,42aが、開閉扉2を閉じたときに隙間Saを挟んで互いに向き合う状態になる。
このような遮音器4(4A)は、例えば、図3に示すように、開閉扉2の該当する外周部分に遮音器埋設用の装着空間25を形成しておき、その装着空間25に挿入して固定することで設置(埋設)される。設置された遮音器4は、音響管41,42の開口端41a、42aが開閉扉2の外部に完全に露出した状態となる。壁31に設置される遮音器4Bについても、同様の形式で壁31の該当部分(装着空間)に埋設して設置される。このように遮音器4A,4Bを埋設する開閉扉2や壁31等は、例えば、適用する建物開閉部の施工現場で構成部品を搬入して組み立てて作製することで調達するか、あるいは、施工現場とは異なる場所で予め組み立てたものを作製しておき、その完成した部品(遮音器の埋設済みの開閉扉、壁等の建材3)を施工現場に搬入することで調達すればよい。
この建物開閉部の遮音構造は、開閉扉2と開口部3を構成する壁31部分との間に存在する隙間S(Sa)に起因して発生する遮音欠損を、その隙間Sの境界における音響インピーダンスを遮音器4の設置により変化させる(ほぼゼロにする)ことで抑制しようとするものである。
そこで、上記した建物開閉部における開閉扉2と開口部3を構成する壁31との双方の音響インピーダンスを「0」にした場合における遮音性能の有効性を知るために、その隙間による遮音性能(遮音欠損)について数値計算により予測した。この結果、図5に示される結果が得られた。
この数値計算は境界要素法によるものである。また、このときの数値計算は、前述した隙間による遮音欠損を数値計算で算出したときの条件設定の場合と同様に、図23に示すように壁130として厚さTが50mm、100mmである2種類の壁を想定したうえで、その同じ厚さTの壁どうしを5mmの間隔tからなる隙間Sが形成されるようそれぞれ設置したときの内容で行っている。図5において「処理無し」とは音響インピーダンス:Zが無限大(∞)であって遮音処理を何も施していない場合を示す。同じく「処理有り」とは、音響インピーダンス:Zが「0」となる遮音処理を仮想的に施した場合を示す。
図5の結果から、上記建物開閉部の隙間Saにおいては、遮音処理を施さずに音響インピーダンスZを無限大の状態で放置した場合には、厚さTが50mmの扉の場合には2kHz以上の高域の周波数域で遮音性能が低下するという遮音欠損が生じ、厚さTが100mmの扉の場合には1Hz以上の高域の周波数域で遮音欠損が生じていることがわかる。これに対し、音響インピーダンスZが「0」になる遮音処理を施した場合には、いずれの厚さTの壁を使用するときでも、その遮音欠損が生じていた周波数領域において遮音性能が改善されることが判明した。
続いて、音が通過するときの部材の境界面の音響処置の状態とその各状態における境界面の音響インピーダンスとの関係について考察する。図6に、その関係と各状態での音波の様子について示す。
まず、境界面において何も音響処置を施していない「剛の」境界では、その音響インピーダンスZが「∞」になる(図6の上部に示す状態(A))。この場合、図6の下部に示すように、その境界面に入射した音波(入射音)は、同じ大きさの音波(反射音)で反射される。このような状態が一般的な建具(建材の1種)である枠材における隙間の状況である。
次に、境界面に完全な吸音処置(吸音材の設置)を施した場合、換言すれば吸音率が「1」の境界である場合には、その音響インピーダンスZは空気の密度ρ(kg/m3)と音速c(m/s)の積で表されて約410kg/m2/sとなる(図6の上部に示す状態(B))。この場合、吸音処理によって変化させることができる音響インピーダンスは、図6の上部に示す(A)〜(B)の範囲となる。また、この場合、図6の下部に示すように、その境界面に入射した音波は、吸音材の吸音率に逆比例した大きさの音波で反射される。すなわち、状態(A)のときには、吸音率が「0」になるので、入射音波と同じ大きさの音波で反射される。状態(B)のときには、吸音率が「1」であるので、入射波は発生しない(すべて吸音される)。なお、状態(B)のときについては、現実的には、吸音率が「1」(完全吸音)となる吸音材を実際の建材に適用することは困難であるため、一般的にはある大きさの反射波が発生することになる。
一方、音響インピーダンスZが「0」になる境界面(図6の上部に示す状態(C))では、反射音波の位相が入射音波に対して180°反転して反射されるため、入射音波と反射音波は逆位相になって互いに相殺し合うこととなり、結果として境界面での音圧レベルが「0」になる。このため、上記した吸音処置などよりも確実に境界面での音圧を軽減することができる。
そして、音響インピーダンスZが「0」とは、空気の音響インピーダンスの値(約410kg/m2/s)よりも低い値となるため、通常の吸音材などでは実現することができない。音響インピーダンスZ=0を実現するためには、ある深さ(管内の長さ)を有する音響管によって実現することが試みられている。この場合、音響管の開口端での音響インピーダンスZは空気の密度ρ、音速c、波長λ、管内の長さL、虚数jを用いて「Z=(ρ・c)/[j・tan(2π・L/λ/c)]」と表せるため、音響管の深さ(図6の下部に示す符号L)に応じた周波数に対して音響インピーダンスを「0」にすることが可能になる。
例えば、図6の下部に示す音響管の深さLを1kHzの波長の1/4の寸法である「85mm」に設定した場合(状態(D))、図6の上部で示すように、1kHz,3kHz,5kHz、・・・等の周波数の音に対して音響インピーダンスを「0」にすることができる。この場合、吸音処置では実現することができない低い(図6の斜線を施した領域での)音響インピーダンスを実現できることになる。
以上のことから、音響管は、遮音効果を得たい周波数の情報に基づいて設計することができる。一方、隙間による遮音欠損は、前述したように特定の高域周波数の帯域において発生する傾向にある(図21、図22を参照)。とすれば、建物開閉部における隙間を構成する境界面(開閉扉と建材の向かい合う部分)に音響管を配置して、その境界面における音響インピーダンスを「0」にすることができる構造を採用した場合には、特定の周波数帯域で生じる隙間の遮音欠損を抑制するためには有効な手段であることが推測できる。
次に、実施の形態1に係る遮音構造による隙間の遮音欠損に対する抑制効果に関する試験を行った。
試験には、開閉扉2として、骨組み枠の内部空間がグラスウールで充填され、その表裏面に厚さ10mmのアクリル板をそれぞれ貼り付けてなる厚さTが100mmの扉を使用した。開口部1を構成する壁31も、その扉と同じ構造のものを使用した。この試験では、図4bに示すように、開閉扉2と壁31との間の隙間Sa以外の領域における隙間Sb,Sc,Sd(図1a参照)を設けておらず、その隙間Saとして間隔tが5mmのものを形成した。
遮音器4A,4Bとしては、管内の長さL1が53mmで、開口が1辺46mmの正方形で、肉厚が3mmの角筒の音響管41と、管内の長さL2が25mmで、開口が1辺34mmの正方形で、肉厚が3mmの角筒の音響管42を組み合わせたものを使用した。また、遮音器4A,4Bは、それを配置する領域の長さ550mmにほぼ相当する音響管の開口端を並べるため、音響管41を11本、音響管42を17本使用した。遮音器4A,4Bは、アクリル板を用いて製作した。音響管41は、隙間Saを通過する音のうち1.6kHzの音を遮音対象としたものである。また、音響管42は、隙間Saを通過する音のうち2.5kHzの音を遮音対象としたものである。
測定は、開閉扉2と壁31とで密閉された2つの同じ部屋を測定場所とし、その2つの部屋間における音圧レベルの差を測定することにより行った。すなわち、その片方の部屋から全周波数帯域を含む測定用信号をスピーカーより再生し、その片方の部屋の音圧レベルを測定するとともに、その他方の部屋での音圧レベルを測定した。各部屋での音圧レベルは、それぞれの部屋の異なる5箇所で測定したものを平均して得た値を測定値とした。その測定値から音圧差を算出した。このときの結果を図7に示す。
また参考のため、図8に示すように、遮音器4(4A)を開閉扉2のみに設置したもの(実施例2)を用意した。つまり、実施の形態1に係る遮音構造において壁31に遮音器4Bを設置しない場合の構成内容である。さらに比較のため、実施の形態1に係る遮音構造において開閉扉2及び壁31のいずれにも遮音器4A,4Bを設置しない構成例(比較例)を用意した。これらの構成例についても同様の測定を行い、その結果を図7に併せて示した。
図7の結果から、遮音器4をまったく設置しない場合(比較例)には、1kHz以上の高域の周波数の音に対して隙間Saによる遮音損失が発生していることが認められる。これに対して、遮音器4を設置した場合には、いずれの場合にも、1kHz以上の高域の周波数の音に対しても良好な遮音量(遮音効果)が得られており、隙間Saによる遮音損失を的確に改善していることが確認できる。特に遮音対象とした周波数である1.6kHzの音に対する遮音効果が強く得られ、遮音対象とした音に対する遮音を的確に行うことができることが明らかになった。また、この遮音効果は、扉2と壁31の双方に遮音器4A,4Bをそれぞれ設定した場合(実施例1)の方が、扉2の側にだけ遮音器4Aを設置する場合(実施例2)よりも良い結果が得られることが確認された。なお、500Hz以下の周波数帯域の音に対する遮音性能がわずかに低下しているが、これに関しては遮音器4における音響管の管内の長さL、数、形状、設置位置、設置範囲等の条件を調整することで改善できることが見込まれる。
[実施の形態2]
図9から図11は、実施の形態2に係る建物開閉部の遮音構造等の概要を示すものである。図9(a)はその遮音構造を正面から見たときの状態を示し、図9(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面部分の状態を示している。図10は図9の遮音構造の施工例を示している。図11(a)は図9の遮音構造に使用する遮音器を斜め上方から見たときの状態を示し、図11(b)は(a)のQ−Q線に沿う断面部分の状態を示している。
実施の形態2に係る遮音構造は、建物開閉部における既存の開閉扉2に後付け用の遮音器40を扉の外面に取り付ける点を変更している以外は実施の形態1に係る遮音構造と同じ構成からなるものである。以下では、実施の形態1に係る遮音構造等と共通する構成部分については同じ符号を付し、その説明も必要な場合を除き省略する。
すなわち、この遮音構造は、図10に示すように、建物開閉部を構成する既存の開閉扉2に対し、その片面21aの下部に遮音器40を取り付けることで構築されている。実施の形態2では、図9に示すように、閉じたときの開閉扉2の4辺部と対応する4つの位置(領域)における隙間Sa〜Sdのうち、扉2の下辺(外周)部21dと建材3の床32部分との間になる一部領域に存在する隙間Sdで発生する音漏れを抑制する観点で、遮音器40を配置している。実際には、遮音器40は、その一部領域の隙間Sdと隣接する一方の空間部分Ed1に(音響管の開口端41a,42a)が向き合った状態となるよう、開閉扉2の片面下部に後付けされた状態で取り付けられている。ちなみに、一部領域の隙間Sdと隣接する空間部分は、扉2を挟んで一方の空間部分Ed1とは反対側にも、他方の空間部分Ed2として存在する(図9b)。図9及び図10における符号35は、開口部1を構成する建材3としての枠材である。
遮音器40は、図9や図11に示すように、複数の音響管41,42を並べて一体にした構造物である。音響管41,42は、実施の形態1における音響管41,42と同様に、1端を開口された開口端41a,42aとし、その他端を塞がれた閉口端41b,42bとした筒状のものであり、その一方端が閉じられた内部空間を音波が入り込む空間として使用する。また、音響管41,42は、開口端41a,42aから閉口端41b,42bまでの管内の長さL1,L2が、上記した隙間Sの一部領域Sdを通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定されている。この音響管41,42の他の構成については、実施の形態1における音響管41,42と基本的に同じ内容になっている。
また、遮音器40は、図9bや図11に示すように、複数本からなる2種類の音響管41,42を、その開口端41a,42aが同じ平面内(面状)に存在するよう揃えられた状態になるとともに、その各開口端41a,42aが隙間Sの一部領域Sdと隣接する空間部分Ed1と向き合う状態になるよう並べた形態になっている。このように遮音器40は、基本的に、実施の形態1における遮音器4A,4Bの単体(図3)とほぼ同じ構成になっている。
このような遮音器40は、例えば、図9、図10等に示すように、開閉扉2の一方の外面21aの下部に、音響管41が接触する状態で取り付ける。また、このとき遮音器40は、その音響管41,42の開口端41a,42aが、扉2の下部外周面21dと同じ平面内に位置するように設置するか(図9b)あるいは隙間Sdと隣接する空間部分Ed1が隙間Sdよりも間隔tが小さくなるよう扉2の下部外周面21dよりも下方側(床32寄り)に位置するように設置する。なお、遮音器40は、既存の開閉扉2の外面21aに後付けするように取り付けるため、その外面21aからは突出した状態になる。
次に、実施の形態2に係る遮音構造による隙間の遮音欠損に対する抑制効果に関する試験を行った。
試験には、開閉扉2として、実際の部屋に既に取り付けてあった厚さTが40mmで縦横の寸法が2000mm×850mmのアルミニウム製のドアを使用した。開口部1を構成する壁31は、表裏面に石膏ボードが貼り付けられた一般的な間仕切り壁である。また、開口部1を構成する床32は、コンクリートスラブの表面に塩化ビニール製の化粧シートが貼り付けられたものである。開閉扉2の下辺部21dと床32との間の隙間Sdの間隔t(図12)は5mmである。
遮音器40としては、管内の長さL1が168mmで、開口が1辺(d1)46mmの正方形で、肉厚が2mmの角筒の音響管41と、管内の長さL2が84mmで、開口が1辺(d2)23mmの正方形で、肉厚が1mmの角筒の音響管42を組み合わせたものを使用した。また、遮音器40は、それを配置する領域の長さ550mmにほぼ相当する音響管の開口端を並べるため、音響管41を11本、音響管42を22本使用した。遮音器40は、アルミニウムを用いて製作した。音響管41は、隙間Sdを通過する音のうち510Hzの音を遮音対象としたものである。また、音響管42は、隙間Sdを通過する音のうち1kHzの音を遮音対象としたものである。
測定は、図14bに示すように、開閉扉2の片側に全周波数帯域を含む測定信号を発生する音源であるスピーカー71を開閉扉2の裏面21bから水平方向に距離j離れた位置に設置し、開閉扉2の離面21bから距離k離れた位置でかつ床32から距離hの高さ位置に1つのマイクロフォン72を設置し、開閉扉2の表面21aにおける遮音器40(音響管42)から同じ距離k離れた位置でかつ同じ距離hの高さ位置に1つのマイクロフォン73を設置した。そして、音源からの測定音を2箇所(音の入射側及び透過側)で測定した。図14における符号74は測定音を生成と測定音の記録を行う機器(パーソナルコンピュータ)、75はパワーアンプ、76はマイクアンプ、77はオーディオインターフェイスを示す。この測定では、j=1100mm、h=2mm、k=10mmとした。測定値から音圧差を算出した。このときの結果を図13に示す。
また比較のため、実施の形態2に係る遮音構造において開閉扉2に遮音器40を設置しない構成例(比較例)を用意した。この構成例についても同様の測定を行い、その結果を図13に併せて示した。
図13の結果から、遮音器40を設置しない場合(比較例)には、2kHz以上の高域の周波数の音に対して隙間Sdによる遮音損失が発生していることが認められる。これに対して、遮音器40を設置した場合には、2kHz以上の高域の周波数の音に対しても良好な遮音量(遮音効果)が得られており、隙間Sdによる遮音損失を的確に改善していることが確認できる。また、遮音対象とした周波数である510Hzと1kHzの音に対する遮音効果が強く得られており、遮音対象とした音に対する遮音を的確に行うことができることが明らかになった。なお、250Hzの周波数帯域の音に対する遮音性能がわずかに低下しているが、これに関しては遮音器40における音響管の管内の長さL、数、形状、設置位置、設置範囲等の条件を調整することで改善できることが見込まれる。
このように既存の開閉扉2に遮音器40を取り付けることによっても、隙間による遮音損失を改善できることが判明した。また、実施の形態2に係る遮音構造における遮音器40(上記試験の構成のもの)を設置したことによる遮音欠損の改善効果は、図9に示した開閉扉2と同様な厚さTを有する前述の高気密型の防音扉(株式会社ソナ製)に後付けで取り付けた場合も得られる。具体的には、その遮音器40を取り付けた上記高気密型の防音扉においては、図21に「○」でプロットして示すように、1kHz以上の高域における遮音性能が、その遮音器40を取り付けない場合の防音扉のときのDr35等級から、Dr40等級へと改善される。
[他の実施の形態]
実施の形態1,2に係る(埋設タイプの)遮音器4A,4B及び(外付けタイプの)遮音器40における管内の長さLの設定については、以下のようにして行う。
まず、適用対象の建物開閉部における開閉扉2等の開閉物と開口部1を構成する壁31、床32等の建材3の該当部分との間に存在する隙間Sを通過する音を測定し、その音のうちから遮音したい対象の音波の周波数帯域を選定する作業からはじめる。このときの測定は、例えば、JIS A 1417(建築物の空気遮断性能の測定方法)の内容の方法などを用いて行えばよい。
続いて、選定された音波の波長の1/4の寸法を算出し、その寸法の管内長さLからなる音響管を製作する。このとき遮音対象の音波が複数ある場合は、その各音波の波長の1/4の寸法の各管内長さL1、L2、・・・からなる複数種の音響管41,42、・・・を作製することになる。また、音響管の断面形状や寸法等については、各管内の長さLよりも十分に短い寸法となるよう設定すればよいが、最終的には遮音損失の改善効果の結果に照らしながら適宜調整して設定すればよい。
実施の形態1に係る遮音構造においては、図15に例示するように、開閉扉2の4辺部の全部に遮音器4A(4Aa、4Ab,4Ac,4Ad)をそれぞれ埋設するとともに、開口部1を構成して開閉扉2の4辺部に向き合う壁31の部分及び床32の部分のすべてに遮音器4B(4Ba、4Bb,4Bc,4Bd)を埋設するように構成することもできる。この場合は、その遮音構造において閉じたときの開閉扉2の4辺部と対応する4つの位置(領域)に存在する隙間Sa〜Sdのすべてに対して、開閉扉2と建材3(壁31及び床32)の双方から挟むように遮音器4A,4Bが向き合った状態で配置されることになる。これにより、その4つの各領域の隙間Sa〜Sdを通過する音のうち独自に選定する遮音対象の音波に対する遮音器4を適宜配分して設置することができ、この結果、隙間Sの全域における固有の遮音欠損をまとめて効率よく改善することができる。
このように実施の形態1に係る遮音構造では、開閉扉2に対しては4辺部の少なくとも1つの辺部(1つの辺部、2つの辺部、3つの辺部、4つの辺部のいずれか)に遮音器4Aを埋設することができる。同様に開口部1を構成する建材3(壁31と床32)に対しても開閉扉2の4辺部にそれぞれ向き合う部分の少なくとも1箇所に遮音器4Bを埋設することもできる。例えば、図16に例示するように、開閉扉2の下辺部に遮音器4Adを埋設するとともに、その下辺部に対応する開口部1部分に該当する建材3の床32に遮音器4Bdを埋設するように構成することが可能になる。この他にも、実施の形態1に係る遮音構造では、図8で例示したように、遮音器4を開閉扉2のみ(埋設場所は任意である)に埋設する構成を採用することができるが、遮音器4を開口部1を構成する建材3のみに埋設する構成を採用することもできる。
実施の形態2に係る遮音構造においては、図17に例示するように、開閉扉2の他方の本体外面(裏面)21bに遮音器40を取り付けるように構成することもできる。この場合も、実施の形態2に係る遮音構造(遮音器40を本体表面21aに取り付けた構成)とほぼ同様の遮音損失の改善効果を得ることができる。また、この遮音構造においては、図18に例示するように、開閉扉2の4辺部の全部に遮音器40(40A、40B,40C,40D)をそれぞれ取り付ける構成することもできる。この場合は、その遮音構造において閉じたときの開閉扉2の4辺部と対応する4つの位置(領域)に存在する隙間Sa〜Sdのすべてに対して、開閉扉2の片面から遮音器40が向き合った状態で配置されることになる。これにより、その4つの各領域の隙間Sa〜Sdを通過する音のうち独自に選定する遮音対象の音波に対する遮音器40を適宜配分して設置することができ、この結果、隙間Sの全域における固有の遮音欠損をまとめて効率よく改善することができる。
このように実施の形態2に係る遮音構造の場合でも、既存の開閉扉2に対しては4辺部の少なくとも1つの辺部(1つの辺部、2つの辺部、3つの辺部、4つの辺部のいずれか)に遮音器40を後付けするように取り付けることができる。しかも、この遮音器40は、開閉扉2の表裏の外面のいずれか一方に取り付けることができる他、その表裏外面の双方(21a,21b)に取り付けることも可能である。そして、この既存の開閉扉2に遮音器40を後付けのように取り付ける場合は、既存の建物開閉部の大幅な変更を必要とせず、隙間による遮音損失を抑制できる遮音構造を容易に実現することができる。
この他、実施の形態1,2では、遮音器4,40として2種類の音響管41,42で構成されるものを例示したが、その遮音器4,40としては、1種類の音響管で構成されるものや、3種以上の音響管で構成されるものを適用することも可能である。また、遮音器4,40の配置は、連続した状態で配置する形式に限らず、断続的な状態で配置することもできる。
また、実施の形態1,2では、埋設タイプの遮音器4を埋設する対象として、開口部1を構成する壁31や床32を例示したが、例えば、開口部1を構成する枠材(35)などに埋設するようにしても構わない。また、建物開閉部の開閉部1を開閉する開閉物としては、実施の形態1,2で例示した開閉扉2に代えて、各種物品の搬入搬出や、換気、採光、点検等を行うときに使用される他の開閉部材であってもよい。さらに、開閉部1を開閉する開閉物は、その全体の形状として矩形の形状のものに限らず、他の形状のものであってもよく、また、その構造等についても専用の防音技術を適用したものに限定されない。
1 …建物の開口部
2 …開閉扉(開閉物)
3 …建材
4,40…遮音器
31…壁(建材の1種)
32…床(建材の1種)
35…枠材(建材の1種)
41,42…音響管
41a,42a…開口端
41b,42b…閉口端
S …隙間
Sa,Sb,Sc,Sd…隙間の一部領域
Ed…隙間と隣接する空間部分

Claims (7)

  1. 建物の開口部を開閉する開閉物と、
    前記開口部を構成する建材と、
    前記開閉物の前記建材との間に存在する隙間の少なくとも一部領域に向き合った状態又はその一部領域と隣接する空間部分に向き合った状態で配置される遮音器と
    を有し、
    前記遮音器として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域又はその一部領域と隣接する空間部分と向き合う状態になるよう並べてなる構造物を設置していることを特徴とする建物開閉部の遮音構造。
  2. 前記遮音器は、前記開閉物と前記建材の一方又は双方に、前記複数の音響管の各開口端が前記隙間の一部領域と向き合う状態になるよう埋設されている請求項1に記載の遮音構造。
  3. 前記遮音器は、前記開閉物の表裏面の少なくとも一方の面の一部に、前記複数の音響管の各開口端が前記隙間の一部領域と隣接する空間部分と向き合う状態になるよう取り付けられている請求項1に記載の遮音構造。
  4. 建物の開口部を開閉する開閉物であって、
    その開閉物の外周部のうち前記開口部を構成する建材との間に存在する隙間の少なくとも一部領域に向き合う状態になる部分に遮音器を埋設してなり、
    前記遮音器として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と対峙する状態になるよう並べてなる構造物を埋設していることを特徴とする開閉物。
  5. 開閉物で開閉される建物の開口部を構成する建材であって、
    前記建材の前記開閉物の外周部と向かい合う部分のうち当該開閉物との間に存在する隙間の少なくとも一部領域と対峙する部分に遮音器を埋設してなり、
    前記遮音器として、一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と対峙する状態になるよう並べてなる構造物を埋設していることを特徴とする建材。
  6. 建物の開口部を開閉する開閉物の表裏面の少なくとも一方の面の一部に、その開閉物と当該開口部を構成する建材との間に存在する隙間の少なくとも一部領域と隣接する空間部分に向き合う状態で取り付けて使用する遮音器であって、
    一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と隣接する空間部分と対峙する状態になるよう並べてなる構造物で構成されていることを特徴とする遮音器。
  7. 開閉物で開閉される建物の開口部を構成する建材のうち当該開閉物と向き合う部分の一部に、その建材と開閉物との間に存在する隙間の少なくとも一部領域に向き合う状態で埋設して使用する遮音器であって、
    一端の開口端から他端の閉口端までの管内の長さが前記隙間を通過する音のうち遮音対象とする音波の波長の1/4の寸法に設定された複数の音響管を、その各音響管の開口端が揃えられて前記隙間の一部領域と隣接する空間部分と対峙する状態になるよう並べてなる構造物で構成されていることを特徴とする遮音器。
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