以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1に示すものは、第1の実施の形態に係わり、吸音装置は、道路の防音壁1として例示される。
防音壁1は、道路の側部に設けられた基礎外壁2と、基礎外壁2に所定間隔を有して立設された支柱3と、支柱3間に配置された吸音板ユニット4とを有する。吸音板ユニット4は、支柱3、3間に上下方向複数枚、密着して配置されている。
図2は、吸音板ユニット4の斜視図であり、図3はその要部拡大図である。
図2において、吸音板ユニット4は、音源(図1に示す自動車)側の前面部5と、前面部5の反対側の後面部6とを有する。前面部5と後面部6間に吸音空間7が形成されている。吸音空間7に連通する開口部8が前面部5に設けられている。
吸音板ユニット4は、互いに直行する長手方向L・幅方向W・厚み方向Tの寸法を有し、開口部8は、長手方向Lに沿って連続し、幅方向Wに沿って複数設けられている。
前記吸音空間7に、リサイクル可能な板状材9で構成された共振手段10が配置されている。共振手段10は、共振数が異なる複数の平板状材9で構成されている。板状材9は、各開口部8に対応して長手方向Lに沿って配置されている。
前面部5は、幅方向Wに所定間隔を有して配置された複数枚の前面板11で構成されている。前面板11の所定間隔が、開口部8を構成している。この開口部8を塞ぐように吸音空間7内にスリット板12が長手方向Lに配置されている。スリット板12と前面板11との厚み方向Tの吸音空間7に、共振手段10が配置されている。
後面部6は、一枚の後面板13で構成されている。後面板13の幅方向中央部に、吸音空間7に突出する突条14が長手方向に形成されている。図2に示す吸音板ユニット4は、防音壁1の最上部に設けられるものであり、後面板13の上端部は前面部5側に折れ曲げされて吸音空間7を塞ぐ上面部15とされている。後面部6と前面部5の下端は、吸音空間7に開放されている。最上部以外の吸音板ユニット4の上端部と下端部において、吸音空間7は解放されている。なお、最下部の吸音板ユニット4の下端は、吸音空間7を閉じる下面部で塞がれていてもよい。
なお、前面板11、後面板13、スリット板12、及び、板状材9の位置保持は、長手方向L両端部の支柱3によって行う。または、前面板11又は後面板13の長手方向L両端部に設けた位置保持手段によって行ってもよく、また、この位置保持手段は、吸音空間7内に設けられたものであってもよい。
図3に示すように、前面板11の開口部8に臨む幅方向W端部は、吸音空間7側に折り曲げ形成された端部16とされている。この端部16とスリット板12との間に音の進入通路17が形成されている。板状材9は、厚み方向Tに平行に複数枚配置されている。板状材9は、共振数が異なるように、幅方向Wの寸法が異なるものとされている。共振数を異ならすために厚み方向T寸法を変えたものであってもよい。
前面板11、後面板13、スリット板12、及び、板状材9は、リサイクル可能な金属材料で構成されている。
開口部8の表面開口率は20%以上とされている。吸音空間7の厚み方向寸法は100mm以下である。板状材9は、板厚みが0.2mm~0.8mmであり、0.5mmの幅違いを4mm前後の厚み方向T間隔を設けて配置されている。
なお、板状材9は、平坦面を有する平板であるが、曲面を有していてもよく、板幅方向の広いものから狭いものが順次配置されているが、図3配置の順序に限定されず、配置間隔も一定に限定されるものではなく、配置位置もスリット板12と表面板11との間に限定されるものではなく、枚数も限定されるものではない。
上記実施の形態によれば、音源側からの騒音が、図2の矢印で示すように、開口部8か吸音空間7に進入する。この時、図3に示す進入通路17を通って吸音空間7に曲がって進入する。音は曲がれば減衰する。進入した騒音は、共振手段10の板状材9を共振させて減衰する。共振手段10は、共振数の異なる板状材9からなるので、吸音周波数領域帯を広げることができる。よって、騒音の吸音効果を向上させることができる。また、吸音空間7内に進入した騒音は、図2の矢印で示すように後面板13に反射して共振手段10を共振させて減衰する。
なお、この実施の形態の吸音板ユニット4は、開口部8が道路平面と平行な水平方向に配置されているが、上下方向に配置されたものであってもよい。
図4に示すものは、第2の実施の形態に係わり、吸音装置は、道路の防音壁1として例示される。
この実施の形態では、開口部8の幅方向W中央に、仕切り部材18が長手方向Lに沿って配置されている。この仕切り部材18で幅方向Wに分割された開口部8に、複数枚の板状材9が、幅方向Wに平行に配置されている。開口部8が、騒音の進入通路17とされている。
図5は図4の要部拡大図であり、分割された開口部8の幅方向W寸法は、14mm前後とされている。その開口部8に板厚みが0.2mm~0.8mmで、0.5mmの幅違いの板状材9が、4mm前後の幅方向W間隔を設けて配置されている。板状材9の吸音空間内の端部9aは、L字状に屈曲されている。その他の構成は、第1の実施の形態と同じである。
なお、端部9aのL字状屈曲は、直角に限らず鋭角や鈍角であってっもよく、また直線状に限らず曲線状に屈曲されたものであってもよい。また屈曲の向きも図示のものに限定されるものではなく、その反対方向に向くものであってもよく、その向きが統一されたものに限られない。また、板状材9は、板幅の寸法が順次変化するように配置するものに限定されない。板状材9の枚数や寸法、形状は、図5に示すものに限定されるものではない。
第2の実施の形態によれば、図4の矢印で示すように騒音が開口部8(進入通路17)を通って吸音空間7に進入する。この時、共振手段10の板状材9を共振させることにより、騒音は減衰する。また、騒音は、板状材9の端部9aの屈曲部により曲げられて減衰して吸音空間7に進入し、減衰する。
図6に示すものは、第3の実施の形態に係わり、前記第2の実施の形態の仕切り部材18を有しないものであり、開口部8の幅方向寸法は39mmとされ、その他は第2の実施の形態と同じである。
図7に示すものは、第4の実施の形態に係わり、板状材9は、厚み方向Tに対して所定角度を有して配置されている。
前面板11の幅方向W寸法は80mm、開口部8の幅方向W寸法は20mm、前面板11の端部16と後面板13との距離は10mm、吸音空間7の厚み方向T寸法は50mm前後とされている。前面板11の幅方向W中央部に、後面板13に達する仕切り板19が設けられて吸音空間7を区画している。
板状材9は、断面V字状又はU字状に形成され、その中央部が前面板11に取り付けられている。V字又はU字の両端部の開口角度が異なる複数枚の板状材9が、その中央部で共締めされて前面板11に固定されている。
板状材9は、アルミ押し出し型材またはアルミ板曲げ加工材で構成されている。
図7の矢印で示すように騒音は開口部8を通って吸音空間7に進入する。前面板11の端部16と後面板13の隙間が、騒音の進入通路17とされている。進入路17から曲がって進入した騒音は、共振手段10の板状材9を共振させて減衰する。
なお、図7の実施の形態では、後面板13が複数枚で後面部6を構成している。また、仕切り板19により吸音空間7を仕切って、一つの吸音空間7内に一つの共振手段10を設けているが、共振手段10を複数設けたものであってもよい。また、仕切り板19を設けるものに限定されるものではない。
図8は、第5の実施の形態に係わり、板状材9の厚み方向Tに対しする所定角度が、第4の実施の形態と異なるものである。共振手段10は、一枚の前面板11に対応して設けられ、開口方向(扇形となった形状の開いた部分の向き)が前面板11を向いている点で、後面板13側を向いている前記第4の実施の形態とその構成を異にする。また、共振手段10は、後面板13に設けられている。
図9は、第6の実施の形態に係わり、板状材9が、幅W・厚みT方向断面において渦巻き状に形成されている。前面板11の端部16が、図7に示すものよりもさらに折り曲げられ、吸音空間7内に入り込んでいる。その端部16に渦巻き状の板状材9が設けられている。
図9の矢印で示すように、騒音は、開口部8から入って後面板13と仕切り板19によって曲げられる進入通路17を通って吸音空間7に入り、減衰する。進入路17からの騒音は共振手段10を共振させて減衰する。吸音空間7や共振手段10の大きさは、同じとされているが、吸音周波数領域帯を広げることができるよう異なる大きさとすることができる。
図10に示すものは、第7の実施の形態に係わり、開口部8の集音効果を高めたものである。
開口部8の幅方向Wに複数個の仕切り部材18を設け、進入通路17のスリット幅を狭めている。仕切り部材18は、断面砲弾型とされ進入路17への集音効果を高めている。相隣接する前面板11の端部16間の開口部8を塞ぐように、仕切り部材18の後方に、特殊吸音材20が配置されている。特殊吸音材20は、リサイクル可能な素材で構成されている。
前面板11の端部16に、共振手段10の板状材9が、吸音空間7内に突出するよう設けられている。板状材9は、共振数が異なるもの(板幅や厚み等が異なるもの)が複数枚、取り付け角度を異ならして、放射状に端部16に設けられている。
この実施の形態では、騒音は、開口部8の進入路17から特殊吸音材20を通って吸音空間7内に進入するとき、特殊吸音材20により吸音される。そして吸音空間7内の共振手段10により減衰する。仕切り部材18は、断面砲弾型とされ、吸音空間7内の騒音をウナギ仕掛け効果のように外に逃がさない。
図11に示すものは、第8の実施の形態に係わり、前記第7の実施の形態の共振手段10の取り付け向きを逆にしたものである。すなわち、共振手段10の板状材9は、後面板13に設けられている。その他は図10に示すものと同じである。
図12に示すものは、仕切り部材18を開口部8に一つ設けたものであり、その他は図10に示すものとほぼ同じである。
上記図10~図12に示す実施の形態によれば、開口部8が拡声器型であるので、集音効果が向上する。
図13に示すものは、前面板11の端部16や、仕切り部材18の端部に音エネルギー吸収部21を設け、進入通路17を通過する騒音の音エネルギーを低減させるものである。この音エネルギー吸収部21は、端部の表面に凹凸を設け、音エネルギー摩擦の効果で振動及び熱エネルギーに転換させるものである。
図14に示すものは、前記特殊吸音材20の具体例の一例を示すものである。特殊吸音材20は、パンチングメタル等を折り曲げ成型して形成されている。パンチングメタルの丸穴や長穴の寸法、折り曲げピッチ、板厚、板幅を変えることにより、吸音効果を向上させることができる。
図15、16に示すものは、特殊吸音材20の他の例である。図に示すように縦金属板20aと横金属板20bを、四ツ目編み状に組み合わせることにより、金属板平織吸音材20を構成することができる。
一方の金属板を鋼線に変えることが出来る。図17に示すものは、縦材を鋼線20aとしたものである。
このような四ツ目編み状の特殊吸音材20は、縦材20aと横材20bとの間に空気層ができる。音は、空気の流れではなく、粗密で空気を媒体として伝達される。その方向は指向性はあるものの直進と回折の性質があり、波長より小さい物体に対しては、音は廻り込んでいく。それを利用して吸音性能を得る。金属板20a、bの板厚、板幅を変えて各周波数対応する。板厚は0.1mm~0.3mmである。板材20a、bの表面を粗面とすることで、吸音性能が向上する。
このような特殊吸音材20を開口部8を塞ぐように配置することにより、吸音空間7に入る騒音を低減させるとともに、中に入った音を外に逃がさない効果が向上する。
図18に示すものは、第9の実施の形態に係わり、共振手段10を放射型にして吸音性の向上を図ったものである。
すなわち、開口部8に対面して、放射型の共振手段10を吸音空間7内に配置したものである。共振手段10の板状材9は、放射角度を変えて複数枚が配置されている。いちばん外側の板状材9の傾斜角度に平行に、前面板11の端部16が配置されている。この端部16と板状材9間の隙間が進入通路17とされている。
図19に示すものは、第10の実施の形態に係わり、前面板11が山形に形成され、その谷底側端部16の間が開口部8とされ、この開口部8に共振手段10の板状部材9が、幅方向Wに所定間隔を置いて複数枚配置されている。
図20に示すものは、第11の実施の形態に係わり、前面板11の端部に、J字状の板状材9が取り付けられている。この実施の形態では、板状材9で進入通路17が形成されて、音の通路を曲げている。
図21に示すものは、第12の実施の形態に係わり、開口部8に共振手段10が配置されている。板状材9の振動板形状(大きさ、厚み、枚数)を変えたものである。
図22に示すものは、音源からの騒音が斜め下方から来る場合のものであり、前面板11の端部16が音の進行方向に沿った角度で形成されており、その端部に、板状材9が放射角度を変えて複数枚設けられている。
図23に示すものは、吸音装置として建物の天井に設けられたものに用いられる吸音板ユニット4の一例であり、前面板11の端部16間に形成される開口部8に対面して、共振手段10である板状材9が台形状に配置されている。
地方独立法人大阪産業技術研究所において、装置番号:A6001,装置構成・型番:ブリュエル・ケアー Type4206の「吸音率測定システム」により、垂直入射による吸音率測定を行った。なお、この吸音率測定システムに使用される「テストピース」の直径は100mmである。測定手法は、2マイクロホン法(伝達関数法)である。適用規格は、ISO10534-2及びASTME1050である。測定周波数範囲は、100から1600Hzである。
図24、図25に示すものは、前記「吸音率測定システム」に使用した第1テストピースである。この第1テストピースは、前記図23に示す吸音板ユニット4に対応したものある。
第1テストピースは、直径99mmの円形の前面板11と、板状材9を有する。前面板11のセンターに幅20mmの開口部8が形成されている。前面板11は厚み1.0mmのアルミ板である。前面板11の背後に所定厚みの「背後空気層」が形成されている。板状材9は、厚み0.27mmのトタン板を折り曲げて、集音型に成型されて、開口部8に対面して振動板として配置されている。
なお、前記「背後空気層」の厚みは、前記図23における板状材9と後面板13との距離をいう。吸率音測定システムには、後面板13に相当する部材が設けられている。
図26は、前記「背後空気層」を20mmとした時の第1テストピースの吸音率測定結果のグラフである。このグラフの縦軸が吸音率(0~1.0)とされ、横軸が音源の周波数(Hz)とされている。音源より、100~1600Hzの音がテストピースに対して垂直入射され、その吸音率の測定結果が示されている。同グラフによれば、吸音率の良い「代表周波数」は、1200Hzである。
図27は、「背後空気層」を30mmとした場合であり、「代表周波数」は、800Hzである。
以上のことから、「背後空気層」の厚さを変えることにより、「代表周波数」を変えられることが分かる。
図28に示すものは、第2テストピースであり、前記図4~図6に示す第2、3の実施の形態の吸音装置の吸音板ユニット4に対応したものある。
第2テストピースは、直径99mm、厚み1.0mmのアルミ板の前面板11を有し、この前面板11に幅17mmの開口部8が設けられている。この開口部8は、前面板11を直角に折り曲げた端部16によって形成されている。開口部8の中央に断面コ字型の仕切り部材18が配置され、仕切り部材18で分割された開口部8に板状材9が、端部16と平行に配置されている。
図29に示すものは、4種類の板状材9であり、厚み0.27mmのトタン板である。この板状材9の中心に、長さの異なる長孔9bが形成されている。
図30に示すものは、図29に示す板状材9の長孔9bをセンターにして二つ折りされたものである。この二つ折りされた板状材9が、その折り目(長孔9b)が音の進入側になるよう、図28に示すように開口部8に、複数枚が所定間隔を有して振動板として配置されている。
長孔9bの寸法、形状を変えることにより、板状材9のバネ定数に変化を持たせることができる。振動板としての固有振動周波数領域を広げることができる。
図31は、「背後空気層」を20mmとした場合の第2テストピースの吸音率のグラフであり、代表周波数は1200Hzである。背後空気層の厚みは、図28における板状材9の後端から後面板(図示省略)までの距離である。
グラフは図示省略するが、「背後空気層」を25mmとした場合、「代表周波数」は1000Hzである。
図32に示すものは、第3テストピースである。この第3テストピースは、前記図2及び図3に示す第1の実施の形態の吸音装置の吸音板ユニット4に対応したものある。
第3テストピースは、直径99mmの円形の前面板11を有する。前面板11に幅15mmの開口部8が形成されている。前面板11は厚み1.0mmのアルミ板である。開口部8を挟んだ前面板11の背面側に、前面板11と平行になるよう、折り曲げ成型された2枚の板状材9が振動板として配置されている。その後に、1枚の両端部9aのみを折り曲げた板状材9が開口部8を塞ぐように配置されている。
図33に示すように、板状材9は、厚み0.27mmのトタン板を折り曲げ成型し、その両端部9aはL字状に背後空気層に突出している。両端部9aは位置ずれするよう折り曲げられている。幅の異なる板状材9が所定隙間を有して複数枚重ねられている。複数枚の板状材9は、折り曲げ部が開口部8のセンターに順次近づくように、ずらされて配置されている。
図34は、「背後空気層」を20mmとした時の第3テストピースの吸音率測定結果のグラフであり、「代表周波数」は、850Hzである。
図示省略するが、「背後空気層」を40mmとした場合、「代表周波数」は、550Hzである。
図35及び図36に示すものは、第4テストピースである。この第4テストピースは、直径99mmの円形の前面板11を有する。前面板11は厚み0.27mmのトタン板である。前面板11に幅広の大きな開口部8が形成されている。開口部8の前面板端部16は直角に折り曲げられた後、さらに前面板11と平行になるよう端部が折り曲げられて、段部16aを形成している。両側の段部16aの間に小開口部8aが形成されている。この段部16aの前面に、複数枚の板状材9が振動板として所定間隔を有して積層されている。
板状材9は、厚み0.27mmのトタン板を、前記図30に示すように折り曲げ成型したものである。長孔9bが外側になり、かつ、その位置が開口部8の幅方向にずれるように積層されている。板状材9の対向端部間の距離は、小開口部8aの開口幅を保って積層されている。
小開口部8aの前面側は前遮蔽板22で閉じられている。小開口部8aの後ろ側は、背後空気層に音の進入を許容する空間を有して後遮蔽板23が配置されている。
図示省略するが、「背後空気層」を25mmとした時の「代表周波数」は、1100Hzである。「背後空気層」を40mmとした場合、「代表周波数」は、800Hzである
図37及び図38に示すものは、第5テストピースである。この第5テストピースは、直径99mmの円形の前面板11を有する。前面板11は厚み0.27mmのトタン板である。前面板11に幅広の大きな開口部8が形成されている。開口部8の前面板端部16は直角に折り曲げられた後、さらに前面板11と平行になるよう端部が折り曲げられて、段部16aを形成している。両側の段部16aの間に小開口部8aが形成されている。この段部16aの前面に、複数枚の板状材9が振動板として所定間隔を有して積層されている。
板状材9は、厚み0.5mmのアルミ板を、前記図30に示すように折り曲げ成型したものである。同じ幅のものが6層に積層されている。
小開口部8aの前面側は前遮蔽板22で閉じられているが、小開口部8aの後ろ側は、背後空気層に開放されている。
図示省略するが、「背後空気層」を20mmとした時の「代表周波数」は、1100Hzである。「背後空気層」を30mmとした場合、「代表周波数」は、800Hzである。
なお、第4、第5テストピースにおける「背後空気層」の厚みは、段部16aからの距離である。
図39に示すものは、第6テストピースである。この第6テストピースは、直径99mmの円形の前面板11を有する。前面板11は厚み0.27mmのトタン板である。前面板11に開口部8が形成されている。開口部8の前面板端部16は内側に折り曲げられた後、さらに前面板11と平行になるよう端部が内側に折り曲げられて、段部16bを形成している。この段部16bの背面に、複数枚の板状材9が振動板として所定間隔を有して積層されている。
板状材9は、厚み0.5mmのアルミ板を、前記図30に示すように折り曲げ成型したものである。同じ幅のものが6層に積層されている。板状材9の背面で、開口部8は、後遮蔽板23で閉じられている。
図40は、「背後空気層」を15mmとした時の第6テストピースの吸音率測定結果のグラフである。
なお、第6テストピースにおける「背後空気層」の厚みは、後遮蔽板23からの距離である。
図41に示すものは、第7テストピースである。この第7テストピースは、直径99mmの円形の前面板11を有する。前面板11は厚み0.27mmのトタン板である。前面板11の二か所に開口部8が形成されている。各開口部8に板状材9が振動板として配置されている。
図42に示すように、板状材9は、厚み0.5mmのアルミ板であり、両端の端部9aの間に、長孔9bと丸穴9cの列が複数列形成されている。端部9a、長孔9b、丸穴9cの列を折り目として折り曲げ成型されたものである。この折り畳まれた板状材9は、開口部8を塞ぐように、その両端部9aが、図41に示すように、前面板11の背面に取り付けられている。なお、この板状材9は、前記図14に示す特殊吸音材20に対応するものである。
図示省略するが、「背後空気層」を30mmとした時の第7テストピースの「代表周波数」は、1150Hzである。
図43に示すものは、第8テストピースであり、前記図18に示す第9の実施の形態の吸音装置の吸音板ユニット4に対応したものある。
第8テストピースは、厚み1.0mmのアルミ板の前面板11を有し、前面板11に幅23mmの開口部8が設けられ、この開口部8に板状材9が配置されている。
板状材9は、厚み0.5mmのアルミ板をコ字状に折り曲げるか、アルミ押し出し型材で製作されている。6個の折り曲げ成型された板状材9が、所定隙間を有して放射状に配置されている。
図示省略するが、「背後空気層」を10mmとした時の「代表周波数」は、700Hzである。「背後空気層」を15mmとした場合であり、「代表周波数」は、500Hzである
図44に示すものは、第9テストピースであり、前記図15及び図16示す特殊吸音材20に対応する。
この第9テストピースは、図15、図16に示すように縦板20aと横板20bを編んで、四ツ目編み構造体としたものを前面板11としたものであり、後面板との間の背後空気層には振動吸収部材は配置していない。四ツ目編み構造体の隙間が音進入通路となり、この特殊吸音材20自体が振動吸収部材として機能するものである。
編み板の縦板20aと横板20bの材質や厚み幅、及び、背後空気層を各種変化させた場合の吸音率を測定した。その吸音率測定結果のグラフが、図45及び図46に示されている。
第9テストピースの構成、背後空気層、吸収のよい代表周波数、及び、図番の関係を、下記「表1」に示す。
図47に示すものは、第10テストピースであり、四ツ目編み構造体の特殊吸音材20を折り曲げたものである。縦板、横板は、厚さ0.2mmのアルミの帯板である。横板の幅は9mmで、縦板の幅は、6/6.5/7/7.5/8/8.5/9/9.5mmである。
図48は、「背後空気層」を15mmとした時の第10テストピースの吸音率測定結果のグラフであり、「代表周波数」は、1000Hzである。
このグラフより、四ツ目編み構造体を折り曲げることにより、吸音面積を広げることで、吸音率の高い周波数領域を広げることが可能となることが分かる。
図49は、第11テストピースである。第11テストピースは、図44に示す四ツ目編み構造の特殊吸音材20の前面を、開口部を有するカバー部材24で被覆し、前面板11の吸音面積を3割減少させたものである。前面板11は、板厚0.27mmのトタン塗装編み板で、横板の幅は7mmで、縦板の幅は、8/11/12/13/14/8mmで、前記「表1」の「6」の試験に使用した四ツ目編み構造体と同じである。
図50は、「背後空気層」を40mmとした時の第11テストピースの吸音率測定結果のグラフであり、「代表周波数」は、900Hzである。
この試験は、殊吸音材20をカバー部材24で覆うことにより、吸音面積が前記「表1」の「6」に示すものに対して3割程度低下しているが、吸音率は10%程度の低下である。
図示省略するが、透明のポリカーボネートからなる厚み0.5mmの帯板を、図44に示すように編んだテストピースの吸音率測定を行った。その結果、「背後空気層」が50mmの場合、「代表周波数」は1000Hzである。
また、木材の「ひのき」の厚さ0.5mmの帯板を図44に示すように編んだテストピースの吸音率測定を行った。縦板の幅は、10/20/10/20/10/20/10mmであり、横板の幅は10mm一定である。「背後空気層」は40mmで、「代表周波数」は1000Hzであった。
上記テスト結果から、図15に示す四ツ目編み構造体の特殊吸音材20を、図10や図12に示すように板状材9と組み合わせて使用することなく、特殊吸音材20単独で開口部8を塞ぐように用いても、吸音装置として機能する。
また、この四ツ目編み構造体の特殊吸音材20を、前面板11として使用することができる。この場合、吸音空間に連通する開口部は、縦板20aと横板20bの編み目の隙間により形成される。この特殊吸音材20自体が振動吸収版として機能する。
図51に示すものは、第12テストピースであり、図10及び図12に記載の特殊吸音材20に対応するものである。このテストピースは、特殊吸音材20を前面板11としたものである。
この第12テストピースは、直径99.5mmの吸音スリット板25を有する。このスリット板25に、図に示すようなスリット26が形成されている。スリット26の溝幅は0.1mmであり、レーザ加工で形成されている。このスリット26を音が通過するとき、スリット板25は振動吸収板として機能する。
図52は、第12テストピースの吸音率測定結果のグラフであり、吸音スリット板25は厚み0.5mmのステンレス板で、「背後空気層」は30mmとした場合で、「代表周波数」は、1200Hzである。
図53は、「背後空気層」を40mmとした場合で、「代表周波数」は1000Hzである。
図示省略するが、吸音スリット板25を厚み1.0mmのアルミ板とし、「背後空気層」を30mmとした場合、「代表周波数」は1000Hzである。
図54に示すものは、第13テストピースであり、吸音スリット板25に、図に示すようなスリット26が形成されている。スリット26の溝幅は0.1mmであり、レーザ加工で形成されている。
図示省略するが、第13テストピースの円板の吸音スリット板25の厚みは0.5mmのステンレス板で、「背後空気層」は30mmとした場合で、「代表周波数」は、1000Hzである。「背後空気層」を50mmとした場合、「代表周波数」は800Hzである。また、吸音スリット板25を厚み1.0mmのアルミ板とし、「背後空気層」を30mmとした場合、「代表周波数」は800Hzである。
図55に示すものは、第14テストピースであり、吸音スリット板25に、図に示すようなひし形スリット26が形成されている。スリット26の溝幅は0.1mmであり、レーザ加工で形成されている。
図示省略するが、第14テストピースの吸音スリット板25を厚み0.5mmのステンレス板で、「背後空気層」は30mmとした場合、「代表周波数」は、1500Hzである。「背後空気層」を40mmとした場合で、「代表周波数」は1300Hzである。
また、スリット板25を10mm間隔で2枚配置し、「背後空気層」を30mmとした場合、「代表周波数」は1100Hzである。「背後空気層」を40mmとした場合、「代表周波数」は900Hzである。
図56に示すものは、第15テストピースであり、吸音スリット板25に、図に示すような放射状スリット26が形成されている。スリット26の溝幅は0.1mmであり、レーザ加工で形成されている。
図示省略するが、第15テストピースの吸音スリット板25は厚み0.5mmのステンレス板で、「背後空気層」は30mmとした場合、「代表周波数」は、1000Hzである。「背後空気層」を50mmとした場合で、「代表周波数」は750Hzである。
吸音スリット板25は厚み0.5mmのアルミ板として、「背後空気層」を10mmとした場合、「代表周波数」は1000Hzである。2枚配置で、「背後空気層」を30mmとした場合、「代表周波数」は500Hzである。
図57に示すものは、第16テストピースであり、吸音スリット板25に、図に示すような卍字状スリット26が形成されている。スリット26の溝幅は0.3mmであり、レーザ加工で形成されている。
図58は、第16テストピースの吸音率測定結果のグラフであり、吸音スリット板25は厚み0.5mmのステンレス板で、「背後空気層」は30mmとした場合で、「代表周波数」は、1100Hzである。
上記測定結果より、次のことがいえる。
スリット26を音が通過するとき、吸音スリット板25が振動板として機能し、溝幅が0.3mm以上になると吸音性能が低下する。したがって、溝幅は、0.1~0.2mmが好ましい。
スリットで描く形状を変えることにより、バネ定数を変化させることができ、吸音領域(周波数)を変えることが可能である。バネ定数を変化させることで背後空気層の変化(パネルの厚さ)が可能となる。バネ定数が増えると共振する周波数が多く出現する傾向にある。
空気層を変えると吸音代表周波数を自在に変えることが可能である。
また、上記テスト結果から、レーザ加工によりスリットを形成した板材を、図10や図12に示す特殊吸音材20として用いることができる。また、スリット加工の特殊吸音材20を、図10や図12に示すように板状材9と組み合わせて使用することなく、特殊吸音材20単独で開口部8を塞ぐように用いても、吸音装置として機能する。
また、このレーザ加工の特殊吸音材20を、前面板11として使用することができる。この場合、吸音空間に連通する開口部は、スリット26により形成される。この特殊吸音材20自体が振動吸収板として機能する。
図59に示すものは、本発明の第13の実施の形態である。この実施の形態の吸音板ユニット4は、前面部5を構成する前面板11と、後面部6を構成する後面板13と、前面板11と後面板13の間を塞ぐ上面部15を有する。前面板11と後面板13の間が、吸音空間7であり、「背後空気層」を形成している。
同図(a)に示すものは、背後空気層変化型で、低~中周波数対応であり、(b)に示すものは、背後空気層厚型で、低周波数対応であり、(c)に示すものは、背後空気層薄型で、中周波数対応である。
図60に示すものは、第13の実施の形態の第1実施例であり、図59に示す前面板11が、四ツ目編み構造体の特殊吸音材20で形成されている。
図61に示すものは、第13の実施の形態の第2実施例であり、図59に示す前面板11が、吸音スリット板25で形成されている。
図62に示すものは、本発明の第14の実施の形態である。この実施の形態は、室内の天井や壁面に取付金具27を介して前面板11を取り付け、天井面や壁面を後面板13とするものである。前面板11と、後面板13との間の吸音空間7が「背後空気層」を形成している。
前面板11として四ツ目編み構造体の特殊吸音材20や吸音スリット板25が用いられる。
図63に示すものは、取付金具27がスパンドレール方式とされたものである。取付金具の一方が取付ネジ28で壁面13に固定され、他方がネジ28を覆うように差し込まれたものであり、取付ネジ28が外部から見えないようにされている。この取付金具27に特殊吸音材20や吸音スリット板25からなる前面板11が取り付けられる。
図64に示すものは、取付金具27がハット型鋼板で形成されたものであり、取付ネジ28が外部から見えるものである。この取付金具27に特殊吸音材20や吸音スリット板25からなる前面板11が取り付けられる。この取付金具27は左右分離されたものが例示されているが、一体成型されたものであってもよい。
本発明は、上記各実施の形態に示されたもの、又は、テストピースに示されたものに限定されない。例えば、テストピースで示された構成を吸音板ユニットにする場合、前面板とするか、前面板の背後空間内に配置するか、開口部に配置するか等、その配置は任意である。
本発明の実施の形態では、音源側の前面部と、該前面部の反対側の後面部とを有し、前記前面部と後面部間に吸音空間が形成され、該吸音空間に連通する開口部が前記前面部に設けられた吸音板ユニットにおいて、前記前面部は、縦材と横材とからなる四ツ目編み構造体で構成され、前記開口部は、前記四ツ目編み構造体の隙間により形成されている吸音板ユニットとすることができる。
また本発明の実施の形態として、音源側の前面部と、該前面部の反対側の後面部とを有し、前記前面部と後面部間に吸音空間が形成され、該吸音空間に連通する開口部が前記前面部に設けられた吸音板ユニットにおいて、前記前面部は、板材から構成され、前記開口部は、前記板材にレーザ加工により形成されたスリットからなる吸音板ユニットとすることができる。。
上記各実施の形態において、吸音板ユニット4は、金属材料のリサイクル可能な素材で構成されているので、従来の樹脂製品等のものに比べてリサイクルが可能になる。また、共振手段10が、共振数が異なる複数の板状材9で構成されているので、吸音周波数領域帯を広げることができる。
本実施の形態では、吸音装置として道路の防音壁1を例示したが、本発明は、これに限らず、空調設備の排気・吸気装置に設置される吸音板ユニット、又は、天井材・壁材に設置される室内吸音板ユニット等を備えるものであってもよい。図1に示す「音源」は自動車に限らず、機械・工場・プラント等であってもよい。また、リサイクル可能なものであれば、金属材料に限定されるものではない。
本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。