JP2004124589A - 鋼製円柱体の継手構造および接合方法 - Google Patents
鋼製円柱体の継手構造および接合方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】鋼管杭等の鋼製円柱体どうしを無溶接で短時間に接合でき、かつ強固な接合強度が得られる接継手構造およびその接合方法を提供する。
【解決手段】上側の鋼製円柱体11の下端部に、環状体12を介して、先細形状の係止部14を有する可撓体13を、複数取り付けてある。下側の鋼製円柱体21の上端部には、段差部23を形成する環状体22を取り付けてある。上下の鋼製円柱体11,21どうしを近づけて行くと、先細形状の係止部14が、下側の環状体22の上端角部に接触し、可撓体13の胴部が鋼製円柱体11,21の内面側に弾性変形し、係止部13が下側の環状体22の内面に乗り上げる。上側の環状体12の下端面と下側の環状体22の上端面とが突き合わさると、弓なりになっていた可撓体13が自らの弾性力により初期状態に復帰し、係止部14が段差部23の下端に係合し、鋼製円柱体11,21の接続が完了する。
【選択図】 図2
【解決手段】上側の鋼製円柱体11の下端部に、環状体12を介して、先細形状の係止部14を有する可撓体13を、複数取り付けてある。下側の鋼製円柱体21の上端部には、段差部23を形成する環状体22を取り付けてある。上下の鋼製円柱体11,21どうしを近づけて行くと、先細形状の係止部14が、下側の環状体22の上端角部に接触し、可撓体13の胴部が鋼製円柱体11,21の内面側に弾性変形し、係止部13が下側の環状体22の内面に乗り上げる。上側の環状体12の下端面と下側の環状体22の上端面とが突き合わさると、弓なりになっていた可撓体13が自らの弾性力により初期状態に復帰し、係止部14が段差部23の下端に係合し、鋼製円柱体11,21の接続が完了する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、鋼製円柱体の継手構造および接合方法に関するもので、鋼管杭等の杭や、建築物・構築物の構造材、長柱等の接続に利用することができる。
【0002】
なお、本願でいう鋼製円柱体は、部材としての柱に限定される意味ではなく、外形が円柱状であることを意味し、中実の場合に限らず、一部または全長が中空の筒状である場合も含む。また、鋼製円柱体の全体が鋼製である必要はなく、少なくとも接合する位置の円柱体が鋼製であれば良い。
【0003】
【従来の技術】
長尺の鋼管杭を地盤中に設置する場合、現場に運搬可能な長さに制限があるため、短い鋼管杭を現場において継ぎ合わせる必要がある。従来、この継ぎ杭作業は溶接が一般的であった。
【0004】
しかしながら、作業環境の悪い現場で行う溶接には優れた溶接技術と慎重な施工管理が必要であり、また厚さの大きい鋼管杭が用いられる地滑り抑止工事等においては、鋼管杭の継ぎ合わせ溶接部の品質の確保が問題となっている。
【0005】
その上、近年、優秀な溶接工の確保がますます困難な状況にあり、このようなことから、溶接をしないで簡単に鋼管杭を接続できる継手(以下、無溶接継手と称す)の開発が求められていた。
【0006】
このような無溶接継手として、既に多くの技術が開発されており、代表的な方式として以下に述べるようなものがある。
【0007】
(1) 雄ねじと雌ねじを螺合する方式
特許文献1には、図6に示すように、接合すべき鋼管杭51a,51bの端部に雄ねじ53aを有する下端部金物52aと雌ねじ53bを有する上端部金物52bを溶接し、雄ねじ53aと雌ねじ53bの螺合により接合する継手が記載されている。
この他、雄ねじと雌ねじを螺合する方式としては、特許文献2記載の鋼管杭の継手等がある。
【0008】
(2) テーパ管どうしを嵌合する方式
特許文献3には、図7に示すように、接合すべき鋼管杭61a,61bの端部に互いに嵌合する複数の段差のテーパ62a,62bを形成した印籠継手が記載されている。
この他、テーパ管どうしを嵌合する方式としては、特許文献4記載の鋼管杭の継手構造等がある。
【0009】
(3) 管端に接合したつば状突起どうしを接続金物で結合する方式
特許文献5には、図8に示すように、鋼管柱の継手構造として、上下の管体71a,71bの端部につば状突起(フランジ)72a,72bを取り付け、これらを半割金物73a,73bで挟み込み、その外面をスリーブ74で締め付けた構造が記載されている。
【0010】
(4) 内挿管と外挿管をピンや突起で接合する方式
特許文献6には、鋼管杭の接合構造として、図9に示すように、接合すべき一方の鋼管杭81bに内挿管82bを溶接し、他方の鋼管杭81aの端部に外挿管82aを溶接し、外挿管82aに内挿管82bを嵌合させ、両者を貫通するピン83により上下の鋼管杭81a,81bどうしを接合した構造が記載されている。
この他、特許文献7には、係合スリットと係合突起の組み合わせにより上下の鋼管杭を接合する継手構造が記載されている。
【0011】
(5) その他の接合方式
その他の接合方式として、特許文献8には内挿管と外挿管の間隙に接着剤を注入して接合する方法、特許文献9には特殊な形状に機械加工された継手どうしを嵌合する方法、特許文献10には鋼管杭の突合せ部外周にテーパスリーブを設け、テーパリングで該テーパスリーブを締め付けて接合する継手構造、特許文献11や特許文献12には外周面に円錐テーパ面を有する雄テーパ筒体を内周面に円錐テーパ面を有する雌テーパ筒体に押し込んで係合する円環継手が記載されている。
さらに、特許文献13には、図10に示すように、円筒形鋼管をコンクリート杭91a,91bに固着して継手とし、それらに設けられた嵌合用溝92bと先端突起92aを係合させ、その外側に締付用バンド93を設けた継手構造が記載されている。
この他、特許文献14には、図11に示すように、異径のパイプ101a,101bを接続して形成される街路灯用のポールの接続装置として、一方のパイプ101bの端部に弾性係止片102bを設け、もう一方のパイプ101aには段部102aを設け、両者を係合させることで、接続構造が外観に表われないように、かつ接続部からの雨水の侵入を阻止できるようにしたものが記載されている。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−311028号公報
【特許文献2】
特開平9−256357号公報
【特許文献3】
特開平5−295725号公報
【特許文献4】
特開平7−150553号公報
【特許文献5】
特開平8−144384号公報
【特許文献6】
特開2001−11850号公報
【特許文献7】
特開平8−27781号公報
【特許文献8】
特開平5−156628号公報
【特許文献9】
特開2002−61174号公報
【特許文献10】
特開平9−119132号公報
【特許文献11】
特開平10−246368号公報
【特許文献12】
特開平10−245898号公報
【特許文献13】
実開平2−120525号公報
【特許文献14】
特開2002−5363号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の無溶接継手には、それぞれいくつかの問題点や技術的課題がある。
【0014】
図6のような雄ねじ53aと雌ねじ53bを螺合する方式の接合構造では、接続に時間がかかるほか、接続した後に鋼管杭を回転圧入する際、地中の障害物に当たった時には、逆方向に回転して障害物に対処する場合があり、この逆方向の回転により雄ねじ53aと雌ねじ53bの螺合部が緩むことがある。
【0015】
図7のようなテーパー管どうしを嵌合するタイプの継手においては、一方の鋼管61a端部を他方の鋼管61b端部に挿入する印籠構造としたのが特徴であるが、このような構造は継手に引張力が作用した際に容易に離脱する欠点を有している。
【0016】
図8のような管端のつば状突起72a,72bどうしを、半割金物73a,73bおよびスリーブ74で接合する構造では、スリーブ74の内面と半割金物73a,73bの外面との隙間が小さいとスリーブ74の外挿が難しくなり、時間を要し作業性が低下するほか、逆に隙間が大きいと半割金物73a,73bの締め付けが弱くなるため接合強度が低下するといった問題がある。
【0017】
図9のような内挿管82bと外挿管82aをピン83や突起で接合する構造(特許文献 参照)においては、ピンや突起とこれらが嵌合する孔との隙間の管理方法によっては、接合部にガタが生じて十分な接合剛性が得られないという問題がある。また、上記隙間が小さすぎたり、孔の加工精度によってはピンや突起の嵌合に必要以上に時間を要して作業性が悪くなるといった問題がある。
【0018】
その他の接合方式についても、それぞれ課題を有し、図10の嵌合用溝92bと先端突起92aを係合させる構造(特許文献13参照)では、継手接合後のコンクリート杭端部の突合せ面には隙間が設けられている。そのため、杭施工時に発生する軸方向圧縮力を継手となる薄肉の円筒形鋼管および締付用バンドが負担する構造となっており、十分な接合強度が得られない問題がある。
【0019】
また、図11の異径パイプどうしを弾性係止片102bを利用して接合する構造(特許文献14参照)は、薄肉で小断面の鋼管どうしの接続を対象としたものであり、杭等の比較的厚肉の鋼管の接合を考えた場合、加工が容易でないほか、特許文献14に示されている継手構造のように、突き合わせ面をテーパ面とすると、特に軸方向圧縮荷重に対して必要とされる接合強度が得られないという問題がある。
【0020】
本願発明は、鋼管杭その他の鋼製円柱体の継手について、構造が簡単で、短時間で接合でき、かつ強固な接合強度が得られる無溶接継手構造およびその接合方法を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る発明は、鋼製円柱体どうしの継手構造であって、互いに接続される鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に垂直な面で突き合わせた状態で、一方の鋼製円柱体の端部に設けられた該鋼製円柱体の径方向に撓み変形可能な複数の可撓体に形成されている係止部を、他方の鋼製円柱体の端部に形成された径方向の段差部に係合可能としたことを特徴とするものである。
【0022】
本願発明の継手構造の適用対象となる鋼製円柱体としては、鋼管杭等の杭の他、建築物・構築物の構造材、長柱等が挙げられる。ここで、構造材とは、柱、梁、桁、ブレース、スラブ、屋根またはこれらを構成する部材を言い、長柱とはポール、電柱、マスト等を言う。
【0023】
また、本願でいう鋼製円柱体には、鋼管などの中空のものや、中間が中実で端部のみ筒状のものも含む。さらに、鋼製円柱体が中空体、例えば鋼管の場合において、管端部内面にもう一方の管端部が外嵌する内筒を設けたり、管端部に補強リング等を設け、座屈に対する補強等としてもよい。
【0024】
また、鋼製円柱体は、継手構造を含む長大の一体物であってもよいし、継手部をあらかじめ製作しておき、別の鋼製円柱体の端部に工場溶接したものであっても良い。
【0025】
上記のような構成において、本願発明では、2つの鋼製円柱体どうしを接続する過程で弾性変形する可撓体を接合部に設けることで、構造が極めてシンプルな上に、嵌合しやすく、かつ離脱し難いという一見相反する性能を両立させたものである。
【0026】
請求項2は、請求項1に係る鋼製円柱体どうしの継手構造において、前記複数の可撓体が、該可撓体が設けられている鋼製円柱体の端面から軸方向に突出し、先端部に前記撓み変形の向きと逆向きに突出する係止部を有する鋼製の部材からなることを特徴とするものである。
【0027】
鋼製円柱体どうしの係合を確実なものとでき、かつ比較的安価に製作できるという点では、可撓体についても鋼製のものなどが望ましい。また、必要な撓み量を確保するためには、可撓体としては棒状の鋼材などがが望ましく、係止部も可撓体の先端に近い部分に設けることで大きな変形性能が得られる。
【0028】
請求項3は、請求項1または2に係る鋼製円柱体の継手構造において、前記係止部が前記可撓体の先端側に向けて先細形状となっていることを特徴とするものである。
【0029】
鋼製円柱体どうしを突き合わせるために互いに近づけて行く際、最初に係止部と段差部がぶつかることになるが、係止部を先細形状としておくことで、係止部の先端部が弾性変形しやすくなり、接合作業がスムーズとなる。なお、係止部の最初に段差部とぶつかる面にテーパを形成しておくことで、さらに接合作業がスムーズとなる。
【0030】
請求項4は、請求項1〜3に係る鋼製円柱体の継手構造において、前記複数の可撓体が係止部の形成されていない位置で一体化されて環状体を構成していることを特徴とするものである。
【0031】
環状体として一体化することで、鋼製円柱体の端部への取付けが、複数の可撓体を個々に取り付ける場合より容易となり、コスト的にも安価となる。
【0032】
請求項5は、請求項1〜4に係る鋼製円柱体の継手構造において、互いに接続される前記鋼製円柱体の接続面に、互いに係合し、該鋼製円柱体どうしの軸回りの相対的な回転を拘束する凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【0033】
鋼製円柱体どうしの突合せ面に凹凸を付与し、相互に嵌合可能な構造とすることで、現場施工時等にいずれか一方の鋼製円柱体が回転トルクを受けた際に、継手部を介してもう一方の鋼製円柱体に回転トルクが伝達されるようにしたものである。
【0034】
請求項6は、請求項1〜5に係る鋼製円柱体の継手構造において、少なくとも前記鋼製円柱体の端部に中空部が形成されており、前記係止部および前記段差部が、前記鋼製円柱体の中空部内面側に設けられていることを特徴とするものである。
【0035】
鋼製円柱体が鋼管杭の場合等においては、施工時のトラブル防止の観点からは鋼製円柱体の外面に突起物がない方がよく、係止部および段差部が内面側にある方が望ましい。また、係止部および段差部が鋼製円柱体の中空部内面側に設けられる場合、必要な強度に応じて肉厚の変更も可能である。中空部内面側であれば、肉厚が大きくても施工の妨げとならない。
【0036】
請求項7に係る発明は、鋼製円柱体どうしの接合方法であって、一方の鋼製円柱体の端部に設けられた該鋼製円柱体の径方向に撓み変形可能な複数の可撓体に形成されている係止部が、他方の鋼製円柱体の端部に形成された径方向の段差部に係合可能となっており、互いに接続すべき鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に向き合わせて近づけて行き、前記係止部が前記段差部を乗り越えようとする際に該段差部から受ける径方向の力により、前記可撓体を径方向に弾性的に撓み変形させ、さらに前記鋼製円柱体の端部どうしを近づけて行き、前記係止部が前記段差部を乗り越えることで前記可撓体の撓み変形を戻しつつ、前記係止部を前記段差部の端部に係合させ、鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に垂直な面で突き合わせた状態に接合することを特徴とするものである。
【0037】
このように接合することにより、現場における溶接作業がほとんど必要なく、短時間で2つの鋼製円柱体を強固に接合させることができる。また、この方法により鋼製円柱体の離脱し難い接合構造を得ることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1は、鋼製円柱体が鋼管杭である場合について、本願発明の継手構造の一実施形態を示したもので、図1(a) は継手部上側の水平断面図、図1(b) はそのA−A線拡大断面図である。図1(b) において、図中、右側が鋼管杭の内面側、左側が鋼管杭の外面側である。
【0039】
図1(b) の上部に位置する鋼製円柱体11の下端部には、継手部を構成する環状体12が溶接(溶接部19)されており、この環状体12には下端に先細形状の係止部14を有する可撓体13が、図1(a) に示すように周方向に複数個、取付けボルト15を用いて取付けられている。
【0040】
一方、図1(b) の下部に位置するもう一方の鋼製円柱体21の上端部には、継手部を構成する環状体22が溶接(溶接部29)されており、この環状体22の下端には段差部23が形成されており、可撓体13下端の係止部14が係合する構造となっている。
【0041】
可撓体13の環状体12への取付け方法としては、ボルト接合以外に溶接等でもよい。
【0042】
図2は、図1の実施形態について、本願発明の接合方法を適用した場合の接合手順の一例を示したものである。
【0043】
図2(a) に示すように、上述の下端に係止部14を有する可撓体13を取付けた環状体12と、下端に段差部23を有する環状体22を近接させていくと、やがて可撓体13の先細形状の係止部14が、下側の環状体22の上端角部に接触し、可撓体13の胴部が鋼製円柱体11,21としての上下の鋼管杭の内面側に撓む形で弾性変形し、図2(b) に示すように、可撓体12の係止部13が下側の環状体22の内面に乗り上げる。
【0044】
なお、係止部13の先細形状は、図1(b) に示すように下面側がテーパになっていることで、下側の環状体22の上端角部に接触する際、角部とテーパ面が線接触の状態でずれて行き、可撓体13がスムーズに弾性変形しながら環状体22の内面に乗り上げるようになっている。このテーパ面の断面形状は円弧状でもよい。
【0045】
上下の鋼製円柱体11,21をさらに近接させて行くと(すなわち、上下の環状体12,22を近接させて行くと)、図2(c) に示すように、上側の環状体12の下端面と下側の環状体22の上端面とが突き合わさると同時に、弓なりになっていた可撓体13が自らの弾性力により初期状態に復帰し、可撓体13の下端の係止部14が環状体22の段差部23の下端に係合することで上下の鋼製円柱体11,21の接続が完了する。
【0046】
なお、図2(c) に示すように、上下の環状体12,22を突き合わせた状態で、可撓体13の係止部14と下側の環状体22下端の段差部23には、接続を円滑にするための嵌合い公差を考慮する必要がある。すなわち、係止部14の先端が段差部23の厚さを越えないようにすることが望ましい。
【0047】
また、係止部14と段差部23の係合部分についても角部を隅切り形状とすることなどにより係合がスムーズとなる。
【0048】
さらには、上下の鋼製円柱体11,21どうしの接合端部は、必ずしも図示したような環状体12,22を介さなければならないというものではなく、また鋼製等の環状体12,22を用いる場合にもそれらの形状は図示したものに限らない。
【0049】
例えば、環状体12,22の一方または両方が、鋼製円柱体11,21の内面に取り付けられ、上下の鋼製円柱体11,21どうしが、突合せにより直接メタルタッチする場合や、環状体12,22に相当する部分が鋼製円柱体11,21の一部である場合なども考えられる。
【0050】
要は、上下の鋼製円柱体11,21としての鋼管杭等の突合せ接合部において、大まかにはその肉厚分のメタルタッチが確保できれば、軸方向圧縮荷重に対して必要とされる接合強度が得られる。その場合、可撓体13は軸方向の圧縮力を負担する必要がない。
【0051】
図3は、本願発明の他の実施形態として、複数の可撓体13が環状体として端部で一体化された環状爪16を形成している場合を示したもので、図4はその環状爪16をボルト15で上側の環状体12に取り付けた状態の水平断面図である。
【0052】
図3に示すように、環状爪16の個々の可撓体13の端部には係止部14が形成されており、また環状爪16の上部にはボルト接合用の複数の取付け孔17が設けられ、図4に示すように取付けボルト15で環状体12に取り付ける構造となっている。もちろん、上記環状爪16は、ボルト15によらずに溶接等により環状体12に取付けても良い。
【0053】
なお、以上の説明では、係止部14および段差部23が鋼製円柱体11,21の内面側に設けられる場合について説明したが、同様の係止部14および段差部23を鋼製円柱体11,21の外側に設けてもよい。
【0054】
ただし、鋼製円柱体11,21が鋼管杭の場合等には、施工時のトラブル防止の観点から外面側に突起物はない方がよく、通常は、係止部14および段差部23は内面側にあるのが望ましい。
【0055】
また、段差部は係止部と係合可能であれば良く、鋼製円柱体21および/または環状体22に設けた係止孔を段差部としても良い。
【0056】
図5は、本願発明の継手構造のさらに他の実施形態における継手部の構造を示したものである。
【0057】
この例では、図に示すように、上側の鋼製円柱体(図示省略)の下端部に設けた環状体12と、下側の鋼製円柱体(図示省略)の上端部に設けた環状体22の突合せ面に凹凸18,28を付与し、環状体12,22の凹凸18,28どうしが相互に嵌合可能な構造となっている。
【0058】
したがって、現場施工時等にいずれか一方の鋼製円柱体が回転トルクを受けた際には、継手部を介してもう一方の鋼製円柱体にも回転トルクが伝達されるようになっている。
【0059】
ここで、凹凸形状は、図5に示したものに限定されず、環状体12,22どうしが嵌合可能で、回転トルクが伝達される構造であればどのような形状であってもよい。
【0060】
以上の説明では主として鋼管杭の場合を説明したが、本願発明は杭以外、例えば建築物、橋、その他の構築物の柱、梁、桁、斜材、支柱等、あるいは電柱、ポール、マスト等の長柱などにも適用することができる。また、本願発明の継手構造は、端部に鋼製の継手部材を取り付けるなどして、コンクリート杭等の継手として利用することもできる。
【0061】
【発明の効果】
本願発明の継手構造および接合方法によれば、継手の嵌合を施工現場において短時間で容易に行うことができ、かつ強固な継手性能が得られる。
【0062】
また、杭に限らず、構造材や長柱に適用した場合においても、合理的な無溶接継手として、安価で高性能、省力的な構造およびその接合方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の継手構造の一実施形態を示したもので、(a) は継手部上側の水平断面図、(b) は(a) のA−A線拡大断面図である。
【図2】(a) 〜(c) は本願発明の接合方法の一実施形態における接合手順を示す鉛直断面図である。
【図3】複数の可撓体が環状爪として端部で一体化された場合の一例を示す斜視図である。
【図4】本願発明の継手構造の他の実施形態として、図3の環状爪を用いた場合の継手部を示した水平断面図である。
【図5】本願発明の継手構造のさらに他の実施形態を示す継手部の斜視図である。
【図6】従来の継手構造の一例を示す継手部の正面図(右側は断面図)である。
【図7】従来の継手構造の他の例を示す継手部の正面図である。
【図8】従来の継手構造の他の例を示す継手部の斜視図である。
【図9】従来の継手構造の他の例を示す継手部の断面図である。
【図10】従来の継手構造の他の例を示す継手部の正面図(左側は断面図)である。
【図11】従来の継手構造のさらに他の例を示す継手部の斜視図である。
【符号の説明】
11…鋼製円柱体、12…環状体、13…可撓体、14…係止部、15…ボルト、16…環状爪、17…取付け孔、19…溶接部、
21…鋼製円柱体、22…環状体、23…段差部、29…溶接部
【発明の属する技術分野】
本願発明は、鋼製円柱体の継手構造および接合方法に関するもので、鋼管杭等の杭や、建築物・構築物の構造材、長柱等の接続に利用することができる。
【0002】
なお、本願でいう鋼製円柱体は、部材としての柱に限定される意味ではなく、外形が円柱状であることを意味し、中実の場合に限らず、一部または全長が中空の筒状である場合も含む。また、鋼製円柱体の全体が鋼製である必要はなく、少なくとも接合する位置の円柱体が鋼製であれば良い。
【0003】
【従来の技術】
長尺の鋼管杭を地盤中に設置する場合、現場に運搬可能な長さに制限があるため、短い鋼管杭を現場において継ぎ合わせる必要がある。従来、この継ぎ杭作業は溶接が一般的であった。
【0004】
しかしながら、作業環境の悪い現場で行う溶接には優れた溶接技術と慎重な施工管理が必要であり、また厚さの大きい鋼管杭が用いられる地滑り抑止工事等においては、鋼管杭の継ぎ合わせ溶接部の品質の確保が問題となっている。
【0005】
その上、近年、優秀な溶接工の確保がますます困難な状況にあり、このようなことから、溶接をしないで簡単に鋼管杭を接続できる継手(以下、無溶接継手と称す)の開発が求められていた。
【0006】
このような無溶接継手として、既に多くの技術が開発されており、代表的な方式として以下に述べるようなものがある。
【0007】
(1) 雄ねじと雌ねじを螺合する方式
特許文献1には、図6に示すように、接合すべき鋼管杭51a,51bの端部に雄ねじ53aを有する下端部金物52aと雌ねじ53bを有する上端部金物52bを溶接し、雄ねじ53aと雌ねじ53bの螺合により接合する継手が記載されている。
この他、雄ねじと雌ねじを螺合する方式としては、特許文献2記載の鋼管杭の継手等がある。
【0008】
(2) テーパ管どうしを嵌合する方式
特許文献3には、図7に示すように、接合すべき鋼管杭61a,61bの端部に互いに嵌合する複数の段差のテーパ62a,62bを形成した印籠継手が記載されている。
この他、テーパ管どうしを嵌合する方式としては、特許文献4記載の鋼管杭の継手構造等がある。
【0009】
(3) 管端に接合したつば状突起どうしを接続金物で結合する方式
特許文献5には、図8に示すように、鋼管柱の継手構造として、上下の管体71a,71bの端部につば状突起(フランジ)72a,72bを取り付け、これらを半割金物73a,73bで挟み込み、その外面をスリーブ74で締め付けた構造が記載されている。
【0010】
(4) 内挿管と外挿管をピンや突起で接合する方式
特許文献6には、鋼管杭の接合構造として、図9に示すように、接合すべき一方の鋼管杭81bに内挿管82bを溶接し、他方の鋼管杭81aの端部に外挿管82aを溶接し、外挿管82aに内挿管82bを嵌合させ、両者を貫通するピン83により上下の鋼管杭81a,81bどうしを接合した構造が記載されている。
この他、特許文献7には、係合スリットと係合突起の組み合わせにより上下の鋼管杭を接合する継手構造が記載されている。
【0011】
(5) その他の接合方式
その他の接合方式として、特許文献8には内挿管と外挿管の間隙に接着剤を注入して接合する方法、特許文献9には特殊な形状に機械加工された継手どうしを嵌合する方法、特許文献10には鋼管杭の突合せ部外周にテーパスリーブを設け、テーパリングで該テーパスリーブを締め付けて接合する継手構造、特許文献11や特許文献12には外周面に円錐テーパ面を有する雄テーパ筒体を内周面に円錐テーパ面を有する雌テーパ筒体に押し込んで係合する円環継手が記載されている。
さらに、特許文献13には、図10に示すように、円筒形鋼管をコンクリート杭91a,91bに固着して継手とし、それらに設けられた嵌合用溝92bと先端突起92aを係合させ、その外側に締付用バンド93を設けた継手構造が記載されている。
この他、特許文献14には、図11に示すように、異径のパイプ101a,101bを接続して形成される街路灯用のポールの接続装置として、一方のパイプ101bの端部に弾性係止片102bを設け、もう一方のパイプ101aには段部102aを設け、両者を係合させることで、接続構造が外観に表われないように、かつ接続部からの雨水の侵入を阻止できるようにしたものが記載されている。
【0012】
【特許文献1】
特開平10−311028号公報
【特許文献2】
特開平9−256357号公報
【特許文献3】
特開平5−295725号公報
【特許文献4】
特開平7−150553号公報
【特許文献5】
特開平8−144384号公報
【特許文献6】
特開2001−11850号公報
【特許文献7】
特開平8−27781号公報
【特許文献8】
特開平5−156628号公報
【特許文献9】
特開2002−61174号公報
【特許文献10】
特開平9−119132号公報
【特許文献11】
特開平10−246368号公報
【特許文献12】
特開平10−245898号公報
【特許文献13】
実開平2−120525号公報
【特許文献14】
特開2002−5363号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の無溶接継手には、それぞれいくつかの問題点や技術的課題がある。
【0014】
図6のような雄ねじ53aと雌ねじ53bを螺合する方式の接合構造では、接続に時間がかかるほか、接続した後に鋼管杭を回転圧入する際、地中の障害物に当たった時には、逆方向に回転して障害物に対処する場合があり、この逆方向の回転により雄ねじ53aと雌ねじ53bの螺合部が緩むことがある。
【0015】
図7のようなテーパー管どうしを嵌合するタイプの継手においては、一方の鋼管61a端部を他方の鋼管61b端部に挿入する印籠構造としたのが特徴であるが、このような構造は継手に引張力が作用した際に容易に離脱する欠点を有している。
【0016】
図8のような管端のつば状突起72a,72bどうしを、半割金物73a,73bおよびスリーブ74で接合する構造では、スリーブ74の内面と半割金物73a,73bの外面との隙間が小さいとスリーブ74の外挿が難しくなり、時間を要し作業性が低下するほか、逆に隙間が大きいと半割金物73a,73bの締め付けが弱くなるため接合強度が低下するといった問題がある。
【0017】
図9のような内挿管82bと外挿管82aをピン83や突起で接合する構造(特許文献 参照)においては、ピンや突起とこれらが嵌合する孔との隙間の管理方法によっては、接合部にガタが生じて十分な接合剛性が得られないという問題がある。また、上記隙間が小さすぎたり、孔の加工精度によってはピンや突起の嵌合に必要以上に時間を要して作業性が悪くなるといった問題がある。
【0018】
その他の接合方式についても、それぞれ課題を有し、図10の嵌合用溝92bと先端突起92aを係合させる構造(特許文献13参照)では、継手接合後のコンクリート杭端部の突合せ面には隙間が設けられている。そのため、杭施工時に発生する軸方向圧縮力を継手となる薄肉の円筒形鋼管および締付用バンドが負担する構造となっており、十分な接合強度が得られない問題がある。
【0019】
また、図11の異径パイプどうしを弾性係止片102bを利用して接合する構造(特許文献14参照)は、薄肉で小断面の鋼管どうしの接続を対象としたものであり、杭等の比較的厚肉の鋼管の接合を考えた場合、加工が容易でないほか、特許文献14に示されている継手構造のように、突き合わせ面をテーパ面とすると、特に軸方向圧縮荷重に対して必要とされる接合強度が得られないという問題がある。
【0020】
本願発明は、鋼管杭その他の鋼製円柱体の継手について、構造が簡単で、短時間で接合でき、かつ強固な接合強度が得られる無溶接継手構造およびその接合方法を提供することを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る発明は、鋼製円柱体どうしの継手構造であって、互いに接続される鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に垂直な面で突き合わせた状態で、一方の鋼製円柱体の端部に設けられた該鋼製円柱体の径方向に撓み変形可能な複数の可撓体に形成されている係止部を、他方の鋼製円柱体の端部に形成された径方向の段差部に係合可能としたことを特徴とするものである。
【0022】
本願発明の継手構造の適用対象となる鋼製円柱体としては、鋼管杭等の杭の他、建築物・構築物の構造材、長柱等が挙げられる。ここで、構造材とは、柱、梁、桁、ブレース、スラブ、屋根またはこれらを構成する部材を言い、長柱とはポール、電柱、マスト等を言う。
【0023】
また、本願でいう鋼製円柱体には、鋼管などの中空のものや、中間が中実で端部のみ筒状のものも含む。さらに、鋼製円柱体が中空体、例えば鋼管の場合において、管端部内面にもう一方の管端部が外嵌する内筒を設けたり、管端部に補強リング等を設け、座屈に対する補強等としてもよい。
【0024】
また、鋼製円柱体は、継手構造を含む長大の一体物であってもよいし、継手部をあらかじめ製作しておき、別の鋼製円柱体の端部に工場溶接したものであっても良い。
【0025】
上記のような構成において、本願発明では、2つの鋼製円柱体どうしを接続する過程で弾性変形する可撓体を接合部に設けることで、構造が極めてシンプルな上に、嵌合しやすく、かつ離脱し難いという一見相反する性能を両立させたものである。
【0026】
請求項2は、請求項1に係る鋼製円柱体どうしの継手構造において、前記複数の可撓体が、該可撓体が設けられている鋼製円柱体の端面から軸方向に突出し、先端部に前記撓み変形の向きと逆向きに突出する係止部を有する鋼製の部材からなることを特徴とするものである。
【0027】
鋼製円柱体どうしの係合を確実なものとでき、かつ比較的安価に製作できるという点では、可撓体についても鋼製のものなどが望ましい。また、必要な撓み量を確保するためには、可撓体としては棒状の鋼材などがが望ましく、係止部も可撓体の先端に近い部分に設けることで大きな変形性能が得られる。
【0028】
請求項3は、請求項1または2に係る鋼製円柱体の継手構造において、前記係止部が前記可撓体の先端側に向けて先細形状となっていることを特徴とするものである。
【0029】
鋼製円柱体どうしを突き合わせるために互いに近づけて行く際、最初に係止部と段差部がぶつかることになるが、係止部を先細形状としておくことで、係止部の先端部が弾性変形しやすくなり、接合作業がスムーズとなる。なお、係止部の最初に段差部とぶつかる面にテーパを形成しておくことで、さらに接合作業がスムーズとなる。
【0030】
請求項4は、請求項1〜3に係る鋼製円柱体の継手構造において、前記複数の可撓体が係止部の形成されていない位置で一体化されて環状体を構成していることを特徴とするものである。
【0031】
環状体として一体化することで、鋼製円柱体の端部への取付けが、複数の可撓体を個々に取り付ける場合より容易となり、コスト的にも安価となる。
【0032】
請求項5は、請求項1〜4に係る鋼製円柱体の継手構造において、互いに接続される前記鋼製円柱体の接続面に、互いに係合し、該鋼製円柱体どうしの軸回りの相対的な回転を拘束する凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【0033】
鋼製円柱体どうしの突合せ面に凹凸を付与し、相互に嵌合可能な構造とすることで、現場施工時等にいずれか一方の鋼製円柱体が回転トルクを受けた際に、継手部を介してもう一方の鋼製円柱体に回転トルクが伝達されるようにしたものである。
【0034】
請求項6は、請求項1〜5に係る鋼製円柱体の継手構造において、少なくとも前記鋼製円柱体の端部に中空部が形成されており、前記係止部および前記段差部が、前記鋼製円柱体の中空部内面側に設けられていることを特徴とするものである。
【0035】
鋼製円柱体が鋼管杭の場合等においては、施工時のトラブル防止の観点からは鋼製円柱体の外面に突起物がない方がよく、係止部および段差部が内面側にある方が望ましい。また、係止部および段差部が鋼製円柱体の中空部内面側に設けられる場合、必要な強度に応じて肉厚の変更も可能である。中空部内面側であれば、肉厚が大きくても施工の妨げとならない。
【0036】
請求項7に係る発明は、鋼製円柱体どうしの接合方法であって、一方の鋼製円柱体の端部に設けられた該鋼製円柱体の径方向に撓み変形可能な複数の可撓体に形成されている係止部が、他方の鋼製円柱体の端部に形成された径方向の段差部に係合可能となっており、互いに接続すべき鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に向き合わせて近づけて行き、前記係止部が前記段差部を乗り越えようとする際に該段差部から受ける径方向の力により、前記可撓体を径方向に弾性的に撓み変形させ、さらに前記鋼製円柱体の端部どうしを近づけて行き、前記係止部が前記段差部を乗り越えることで前記可撓体の撓み変形を戻しつつ、前記係止部を前記段差部の端部に係合させ、鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に垂直な面で突き合わせた状態に接合することを特徴とするものである。
【0037】
このように接合することにより、現場における溶接作業がほとんど必要なく、短時間で2つの鋼製円柱体を強固に接合させることができる。また、この方法により鋼製円柱体の離脱し難い接合構造を得ることができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
図1は、鋼製円柱体が鋼管杭である場合について、本願発明の継手構造の一実施形態を示したもので、図1(a) は継手部上側の水平断面図、図1(b) はそのA−A線拡大断面図である。図1(b) において、図中、右側が鋼管杭の内面側、左側が鋼管杭の外面側である。
【0039】
図1(b) の上部に位置する鋼製円柱体11の下端部には、継手部を構成する環状体12が溶接(溶接部19)されており、この環状体12には下端に先細形状の係止部14を有する可撓体13が、図1(a) に示すように周方向に複数個、取付けボルト15を用いて取付けられている。
【0040】
一方、図1(b) の下部に位置するもう一方の鋼製円柱体21の上端部には、継手部を構成する環状体22が溶接(溶接部29)されており、この環状体22の下端には段差部23が形成されており、可撓体13下端の係止部14が係合する構造となっている。
【0041】
可撓体13の環状体12への取付け方法としては、ボルト接合以外に溶接等でもよい。
【0042】
図2は、図1の実施形態について、本願発明の接合方法を適用した場合の接合手順の一例を示したものである。
【0043】
図2(a) に示すように、上述の下端に係止部14を有する可撓体13を取付けた環状体12と、下端に段差部23を有する環状体22を近接させていくと、やがて可撓体13の先細形状の係止部14が、下側の環状体22の上端角部に接触し、可撓体13の胴部が鋼製円柱体11,21としての上下の鋼管杭の内面側に撓む形で弾性変形し、図2(b) に示すように、可撓体12の係止部13が下側の環状体22の内面に乗り上げる。
【0044】
なお、係止部13の先細形状は、図1(b) に示すように下面側がテーパになっていることで、下側の環状体22の上端角部に接触する際、角部とテーパ面が線接触の状態でずれて行き、可撓体13がスムーズに弾性変形しながら環状体22の内面に乗り上げるようになっている。このテーパ面の断面形状は円弧状でもよい。
【0045】
上下の鋼製円柱体11,21をさらに近接させて行くと(すなわち、上下の環状体12,22を近接させて行くと)、図2(c) に示すように、上側の環状体12の下端面と下側の環状体22の上端面とが突き合わさると同時に、弓なりになっていた可撓体13が自らの弾性力により初期状態に復帰し、可撓体13の下端の係止部14が環状体22の段差部23の下端に係合することで上下の鋼製円柱体11,21の接続が完了する。
【0046】
なお、図2(c) に示すように、上下の環状体12,22を突き合わせた状態で、可撓体13の係止部14と下側の環状体22下端の段差部23には、接続を円滑にするための嵌合い公差を考慮する必要がある。すなわち、係止部14の先端が段差部23の厚さを越えないようにすることが望ましい。
【0047】
また、係止部14と段差部23の係合部分についても角部を隅切り形状とすることなどにより係合がスムーズとなる。
【0048】
さらには、上下の鋼製円柱体11,21どうしの接合端部は、必ずしも図示したような環状体12,22を介さなければならないというものではなく、また鋼製等の環状体12,22を用いる場合にもそれらの形状は図示したものに限らない。
【0049】
例えば、環状体12,22の一方または両方が、鋼製円柱体11,21の内面に取り付けられ、上下の鋼製円柱体11,21どうしが、突合せにより直接メタルタッチする場合や、環状体12,22に相当する部分が鋼製円柱体11,21の一部である場合なども考えられる。
【0050】
要は、上下の鋼製円柱体11,21としての鋼管杭等の突合せ接合部において、大まかにはその肉厚分のメタルタッチが確保できれば、軸方向圧縮荷重に対して必要とされる接合強度が得られる。その場合、可撓体13は軸方向の圧縮力を負担する必要がない。
【0051】
図3は、本願発明の他の実施形態として、複数の可撓体13が環状体として端部で一体化された環状爪16を形成している場合を示したもので、図4はその環状爪16をボルト15で上側の環状体12に取り付けた状態の水平断面図である。
【0052】
図3に示すように、環状爪16の個々の可撓体13の端部には係止部14が形成されており、また環状爪16の上部にはボルト接合用の複数の取付け孔17が設けられ、図4に示すように取付けボルト15で環状体12に取り付ける構造となっている。もちろん、上記環状爪16は、ボルト15によらずに溶接等により環状体12に取付けても良い。
【0053】
なお、以上の説明では、係止部14および段差部23が鋼製円柱体11,21の内面側に設けられる場合について説明したが、同様の係止部14および段差部23を鋼製円柱体11,21の外側に設けてもよい。
【0054】
ただし、鋼製円柱体11,21が鋼管杭の場合等には、施工時のトラブル防止の観点から外面側に突起物はない方がよく、通常は、係止部14および段差部23は内面側にあるのが望ましい。
【0055】
また、段差部は係止部と係合可能であれば良く、鋼製円柱体21および/または環状体22に設けた係止孔を段差部としても良い。
【0056】
図5は、本願発明の継手構造のさらに他の実施形態における継手部の構造を示したものである。
【0057】
この例では、図に示すように、上側の鋼製円柱体(図示省略)の下端部に設けた環状体12と、下側の鋼製円柱体(図示省略)の上端部に設けた環状体22の突合せ面に凹凸18,28を付与し、環状体12,22の凹凸18,28どうしが相互に嵌合可能な構造となっている。
【0058】
したがって、現場施工時等にいずれか一方の鋼製円柱体が回転トルクを受けた際には、継手部を介してもう一方の鋼製円柱体にも回転トルクが伝達されるようになっている。
【0059】
ここで、凹凸形状は、図5に示したものに限定されず、環状体12,22どうしが嵌合可能で、回転トルクが伝達される構造であればどのような形状であってもよい。
【0060】
以上の説明では主として鋼管杭の場合を説明したが、本願発明は杭以外、例えば建築物、橋、その他の構築物の柱、梁、桁、斜材、支柱等、あるいは電柱、ポール、マスト等の長柱などにも適用することができる。また、本願発明の継手構造は、端部に鋼製の継手部材を取り付けるなどして、コンクリート杭等の継手として利用することもできる。
【0061】
【発明の効果】
本願発明の継手構造および接合方法によれば、継手の嵌合を施工現場において短時間で容易に行うことができ、かつ強固な継手性能が得られる。
【0062】
また、杭に限らず、構造材や長柱に適用した場合においても、合理的な無溶接継手として、安価で高性能、省力的な構造およびその接合方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の継手構造の一実施形態を示したもので、(a) は継手部上側の水平断面図、(b) は(a) のA−A線拡大断面図である。
【図2】(a) 〜(c) は本願発明の接合方法の一実施形態における接合手順を示す鉛直断面図である。
【図3】複数の可撓体が環状爪として端部で一体化された場合の一例を示す斜視図である。
【図4】本願発明の継手構造の他の実施形態として、図3の環状爪を用いた場合の継手部を示した水平断面図である。
【図5】本願発明の継手構造のさらに他の実施形態を示す継手部の斜視図である。
【図6】従来の継手構造の一例を示す継手部の正面図(右側は断面図)である。
【図7】従来の継手構造の他の例を示す継手部の正面図である。
【図8】従来の継手構造の他の例を示す継手部の斜視図である。
【図9】従来の継手構造の他の例を示す継手部の断面図である。
【図10】従来の継手構造の他の例を示す継手部の正面図(左側は断面図)である。
【図11】従来の継手構造のさらに他の例を示す継手部の斜視図である。
【符号の説明】
11…鋼製円柱体、12…環状体、13…可撓体、14…係止部、15…ボルト、16…環状爪、17…取付け孔、19…溶接部、
21…鋼製円柱体、22…環状体、23…段差部、29…溶接部
Claims (7)
- 鋼製円柱体どうしの継手構造であって、互いに接続される鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に垂直な面で突き合わせた状態で、一方の鋼製円柱体の端部に設けられた該鋼製円柱体の径方向に撓み変形可能な複数の可撓体に形成されている係止部を、他方の鋼製円柱体の端部に形成された径方向の段差部に係合可能としたことを特徴とする鋼製円柱体の継手構造。
- 前記複数の可撓体は、該可撓体が設けられている鋼製円柱体の端面から軸方向に突出し、先端部に前記撓み変形の向きと逆向きに突出する係止部を有する鋼製部材からなることを特徴とする請求項1記載の鋼製円柱体の継手構造。
- 前記係止部は前記可撓体の先端側に向けて先細形状となっていることを特徴とする請求項1または2記載の鋼製円柱体の継手構造。
- 前記複数の可撓体が係止部の形成されていない位置で一体化されて環状体を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鋼製円柱体の継手構造。
- 互いに接続される前記鋼製円柱体の接続面に、互いに係合し、該鋼製円柱体どうしの軸回りの相対的な回転を拘束する凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋼製円柱体の継手構造。
- 前記係止部および前記段差部が、前記鋼製円柱体の中空部内面側に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鋼製円柱体の継手構造。
- 鋼製円柱体どうしの接合方法であって、一方の鋼製円柱体の端部に設けられた該鋼製円柱体の径方向に撓み変形可能な複数の可撓体に形成されている係止部が、他方の鋼製円柱体の端部に形成された径方向の段差部に係合可能となっており、互いに接続すべき鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に向き合わせて近づけて行き、前記係止部が前記段差部を乗り越えようとする際に該段差部から受ける径方向の力により、前記可撓体を径方向に弾性的に撓み変形させ、さらに前記鋼製円柱体の端部どうしを近づけて行き、前記係止部が前記段差部を乗り越えることで前記可撓体の撓み変形を戻しつつ、前記係止部を前記段差部の端部に係合させ、鋼製円柱体の端部どうしを軸方向に垂直な面で突き合わせた状態に接合することを特徴とする鋼製円柱体の接合方法。
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Cited By (2)
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JP2013167082A (ja) * | 2012-02-15 | 2013-08-29 | Giken Seisakusho Co Ltd | 杭継手、鋼製部品用継手、杭の接合方法、及び鋼製部品の接合方法 |
JP2014156755A (ja) * | 2013-02-18 | 2014-08-28 | Maruko Juryo:Kk | 掘削ロッド |
-
2002
- 2002-10-04 JP JP2002292446A patent/JP2004124589A/ja not_active Withdrawn
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