JP2004124143A - 堆積膜形成方法および電子写真感光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】堆積膜の密着性を向上させ、特性の優れた半導体デバイスや電子写真感光体等の良品率を向上させる。
【解決手段】円筒状基体205上に第1層として電荷注入阻止層を印加電力P1にて形成する。電荷注入阻止層が所望の膜厚に到達したら、印加電力を上昇させて電荷注入阻止層の変化領域を形成する。この際、基板温度が極小値をとるように温度制御した後、基板温度を光導電層条件へと変化させる。次いで、第2層として光導電層を、P1<P2となる印加電力P2にて形成する。
【選択図】 図2
【解決手段】円筒状基体205上に第1層として電荷注入阻止層を印加電力P1にて形成する。電荷注入阻止層が所望の膜厚に到達したら、印加電力を上昇させて電荷注入阻止層の変化領域を形成する。この際、基板温度が極小値をとるように温度制御した後、基板温度を光導電層条件へと変化させる。次いで、第2層として光導電層を、P1<P2となる印加電力P2にて形成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサ、撮影デバイス、光起電力デバイス等における堆積膜形成方法、および該堆積膜形成方法を用いて形成された電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサ、撮影デバイス、光起電力デバイス等を作製する堆積膜形成方法として、プラズマCVD法、反応性スパッタ法、熱CVD法、光CVD法等の堆積膜形成方法が知られており、多く実用化されている。
【0003】
例えば、プラズマCVD法を用いた堆積膜形成方法では、原料ガスをグロー放電中で分解し、被処理体上に堆積膜を形成する。この方法を用いた場合、例えば原料ガスにSiH4を用いることで水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)堆積膜を形成することが可能である。このような方法で特性の良い堆積膜をはがれなく被処理体上に堆積させるためには被処理体と堆積膜の密着性を向上する必要がある。
【0004】
例えば、電子写真用光受容部材において、支持体と長波長光感光層との間、または、支持体と電荷注入阻止層との間に窒素原子、酸素原子、炭素原子の少なくとも1つとシリコン原子と必要に応じて水素原子およびハロゲン原子の少なくとも1つとを含有する非晶質材料で構成された密着層を有して、密着性を向上する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平7−19068号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法によって、堆積膜の密着性をある程度まで向上することをはできる。しかし、被処理体上に密着性の良い第1層を形成した後、第2層を積層して積層構造の堆積膜を形成しても十分な密着性が得られない場合があった。例えば、電子写真感光体を形成する場合、堆積膜が十分な密着性を保持していないと、形成途中で反応容器内の部品より、はがれが発生し、生成されたダストが感光体表面に付着し、球状突起を形成してしまう場合がある。こうして形成された球状突起は、画像欠陥の原因となる。
【0007】
近年、電子写真装置に対する市場の要求レベルは日々高まっており、印刷並の高画質を実現していくためには、これまで問題とならなかったレベルの微小な球状突起に起因する画像欠陥も改善していく必要がある。したがって、積層構造の堆積膜を形成する際に、さらに密着性を向上する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、堆積膜の密着性を向上させ、特性の優れた半導体デバイスや電子写真感光体等の良品率を向上させる堆積膜形成方法、および該堆積膜形成方法を用いて形成された電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、堆積膜形成時に印加する高周波電力と基板温度によって積層構造の堆積膜を形成した場合の堆積膜密着性が変化することを見出した。
【0010】
すなわち、減圧可能な反応容器内に被処理体を設置し、反応容器内に原料ガスを供給し、高周波電力によって原料ガスのプラズマを生成して、被処理体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、少なくとも被処理体上に、第1の高周波電力値P1で第1層を形成し、第1の高周波電力値P1から第2の高周波電力値P2に変化させながら変化領域を形成し、第2の高周波電力値P2で第2層を形成して、P1<P2、かつ、変化領域を形成中に被処理体の表面温度が極小値をとるようにすることによって、堆積膜の密着性が向上することを見出した。
【0011】
本発明の堆積膜形成方法によれば、第1層を第2層よりも低い印加電力で形成することによって、プラズマ生成時のプラズマ中イオンの衝撃効果等を低減でき、被処理体と第1層の密着性が向上できると考えられる。さらに、変化領域で基板である被処理体の表面温度が極小値をとるようにすることによって、変化領域での密着性が向上するとともに、第1層と第2層の応力緩和等によって、特に第2層の密着性が向上する。
【0012】
そして、変化領域を被処理体の表面から10μm以内に形成すれば、堆積膜の密着性と膜特性の両立が可能であることが確認された。
【0013】
さらに、第1層から第2層までの総膜厚を15μm以上堆積させた場合に、本発明の効果がより顕著に得られた。
【0014】
そして、高周波電力が10MHz以上250MHz以下の周波数範囲内にある少なくとも2つの高周波電力を含み、前記周波数範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、そのうち周波数の高い方の高周波電力の電力値をPA 、周波数の低い方の高周波電力の電力値をPB としたとき、前記電力値PA 、PB が、
0.1≦PB /(PA +PB )≦0.9
の条件を満たし、合成された高周波電力により前記原料ガスのプラズマを生成して、被処理体上に堆積膜を形成する場合により顕著な効果が得られる。
【0015】
上記周波数範囲の高周波電力を用いた処理では、低圧力処理、ガス利用効率、堆積速度等の面で優れている。しかし、一方で、定在波による電界むらが被処理体の大きさと同等になる場合もあり、より広い範囲で均一な堆積膜を形成するためには、周波数の異なる高周波電力を同時に印加することによって電界むらを抑制することが効果的である。さらに、上記周波数帯の高周波電力を使用した場合には、低圧処理や堆積速度向上のためにより高い印加電力を供給する場合があり、上記周波数範囲の高周波電力を用いて処理を施す場合には本発明の効果が顕著に得られる。
【0016】
さらに、反応圧力が10Pa以下の領域において、プラズマの影響を受け易く、温度にも敏感であり効果がある。
【0017】
また、本発明は、比較的膜厚を必要とする堆積膜を形成する場合に効果が得られることが実験的に確認されているので、電子写真感光体等の厚膜の堆積膜を形成する場合に適している。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
まず、本発明の堆積膜形成方法を適用可能な堆積膜の例として電子写真感光体が挙げられる。電子写真感光体を形成する場合、堆積膜の密着性を向上するために、密着性の高い第1層を基板上に形成し、第1層上に電気的・光学的機能を持つ第2層を積層し、必要に応じて第3層、第4層と順次積層する。そして、第1層と第2層の密着性を向上するために、第1層と第2層が接する領域で電気的・光学的・機械的特性が連続的に変化する変化領域を設ける。もちろん、第1層は密着性以外の電気的・光学的機能を両立した膜であっても構わない。また、第1層と第2層の間以外にも必要に応じて変化領域を設けても構わない。
【0020】
図1にa−Si:H系感光体の模式断面図の一例を示す。図1に示すa−Si:H系感光体は、被処理体である導電性の基体101上に密着性の良い第1層として電荷注入阻止層102、第2層として光導電層103、第3層として表面層104の順に積層し、第1層と第2層の間にキャリアの移動性や機械的な密着性を向上する目的で電荷注入阻止層の変化領域105を設けている。
【0021】
さらに、図1には示していないが、第2層の光導電層102と第3層の表面層103の間にキャリアの移動性、光の透過性や機械的な密着性を改善する目的として表面層の変化領域を設けても良い。
【0022】
次に、前述のa−Si:H系感光体を形成する装置について説明する。図2は複数のa−Si:H系感光体を形成可能な、本発明のプラズマCVD堆積膜形成装置の一例の模式図を示している。図2の装置は、減圧可能で少なくとも一部が誘電体で形成された円筒状の反応容器201と、反応容器201内に原料ガスを供給するガス供給システム202と、高周波電源203と、真空ポンプ204とを有する。
【0023】
被処理体である複数の円筒状基体205は反応容器201内で、同一同心円上に等間隔に設置されたホルダ206に積載され、ホルダ206は回転軸シャフト207を介して駆動装置214によって自転する構成となっている。ガス供給システム202は、処理に用いる原料ガス、例えばSiH4、GeH4、H2、B2H6、PH3、CH4、NO、Ar、He、N2等をマスフローコントローラ等により所定流量でガス供給ポート209を通じて反応容器201内へ供給可能な構成である。高周波電源203は整合回路211、電力分岐板210を介して反応容器201外に複数設置された棒状の高周波電極212に供給する構成である。そして、電力分岐板210、高周波電極212ならびに反応容器201はシールド容器208内に収納された構成である。反応容器201内は真空ポンプ204によって所望の圧力まで真空引きと、ガス供給システム202より所望のガスを所定流量で供給し、コンダクタンスバルブ213によって、真空ポンプ204の排気速度を調整することによって所望の圧力に調整することが可能な構成になっている。
【0024】
次に、図2の装置を用い、図1に示すa−Si:H系感光体を形成する形成方法について具体的に説明する。
【0025】
まず、被処理体である導電性の円筒状基体205を反応容器201内のホルダ206に設置し、真空ポンプ204により反応容器201内を所望の圧力まで排気する。次にガス供給システム202よりガス供給ポート209を通じて不活性ガス、例えばArガスを所定流量で反応容器201内に導入する。コンダクタンスバルブ213の開度を調整して反応容器201内を所定圧力に維持し、ヒータ215により円筒状基体205を所定温度に加熱・制御する。
【0026】
円筒状基体205が所望温度に加熱・制御できたら、Arガスの供給を停止し、真空ポンプ204によって、反応容器201内のArガスを十分排気し、ガス供給システム202よりガス供給ポート209を通じて電荷注入阻止層を形成する条件のガス種を所定流量で反応容器201内に供給し、コンダクタンスバルブ213の開度を調整して反応容器201内の圧力を所定圧力に設定する。
【0027】
反応容器201内の圧力が安定したら、高周波電源203より整合回路211、電力分岐板210を介して複数の高周波電極212に高周波電力を印加して反応容器201内に原料ガスのプラズマを生成し、円筒状基体205上に電荷注入阻止層を形成する。電荷注入阻止層形成中、基板温度は所定温度範囲に制御する。電荷注入阻止層形成時の印加電力P1は少なくとも光導電層形成時の印加電力P2の90%以下が好ましく、より好ましくは50%以下が好ましい。また、電荷注入阻止層形成時の基板温度は150〜300℃の範囲が好ましく、より好ましくは150〜250℃の範囲が好ましい。
【0028】
電荷注入阻止層が所望の膜厚に到達したら、印加電力を上昇させながら電荷注入阻止層の変化領域を形成する。もちろん、ガス種、ガス流量、反応圧力等の他の形成条件を同時に変化しても良い。そして、電荷注入阻止層の変化領域を形成している途中に、基板温度が極小値をとるように制御した後、基板温度を光導電層条件へと変化させる。変化領域形成中の基板温度の極小値は、電荷注入阻止層形成時の基板温度に比べ−50〜−5℃の範囲が好ましく、より好ましくは−30〜−5℃の範囲が好ましい。
【0029】
反応容器201内が光導電層形成条件に設定できたら光導電層の形成を続けて行い、光導電層が所望の膜厚に到達したら、高周波電力の供給を停止し、光導電層の形成を終了する。光導電層形成中、基板温度は所定温度範囲に制御する。光導電層形成時の基板温度は、電荷注入阻止層形成時の基板温度よりも高温に設定することが好ましく、150〜300℃の範囲、より好ましくは、200〜300℃の範囲が好ましい。
【0030】
その後、反応容器201内を、表面層形成条件にして、高周波電源203より整合回路211を介して高周波電極212に高周波電力を印加して原料ガスのプラズマを生成し、光導電層上に表面層を形成する。表面層が所望の膜厚に到達したら、高周波電力の供給を停止し、原料ガスの供給も停止してa―Si:H系感光体の形成を終了する。
【0031】
a−Si:H系感光体形成終了後、ガス供給システム202よりガス供給ポート210を通じてパージガス導入と真空ポンプ204による真空引きによって、反応容器201内を複数回パージし、冷却ガス用の不活性ガス例えばHeガスを反応容器201内に所定圧力で詰めて冷却を行う。円筒状基体205の温度が十分冷えたら冷却ガスを真空ポンプ204で排気した後、ガス供給ポート210よりベントガスを導入して反応容器201内を大気圧にして、反応容器201から円筒状基体205を取り出す。
【0032】
なお、本発明においては基板温度が重要なパラメータであり、堆積膜を形成する前に、基板の温度校正を実施することが重要である。しかも、プラズマ生成中の反応容器内に設置された基体の表面温度を正確に測定するためには、プラズマの影響を受けない温度計を使用して行うことが好ましい。したがって、蛍光式光ファイバー温度計等を用い、温度計プローブと基体表面とを十分に接触させて測定する方法等が挙げられる。
【0033】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、図2の装置を用い、表1に示す形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。
【0034】
まず、投入工程において、脱脂洗浄した直径80mm、長さ358mmのアルミニュウムを主原料とする円筒状基体205をホルダ206に積載し真空ポンプ204によって0.5Pa以下まで真空引きを行った。
【0035】
加熱工程では、駆動装置214により回転軸シャフト207を介してホルダ206及びホルダ206に積載された円筒状基体205を1rpmで自転させ、ガス供給システム202よりArガスをガス供給ポート209から500ml/min.(nomal)で供給し、コンダクタンスバルブ213の開度調整によって65Paに設定し、Arガスの流量および反応容器201の内圧が安定したところで、ヒータ215によって90分で円筒状基体205を220℃に加熱・制御した。なお、円筒状基体205の温度制御は堆積膜形成終了まで行った。
【0036】
成膜工程では、Arガスの供給を停止し、反応容器201内を1Pa以下まで真空引きを行った後、ガス供給ポート209より供給して表1の電荷注入阻止層条件で堆積した。電荷注入阻止層を成膜した後、電荷注入層の変化領域、光導電層、表面層の順に堆積膜を形成し、a−Si:H系感光体を作製した。なお、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層の初期形成時の円筒状基板の温度変化を図3(A)に示す。
【0037】
パージ工程では、反応容器201内を1Pa以下まで一旦真空引きした後、ガス供給ポート209よりArガスを供給して複数回パージを行った。
【0038】
冷却工程では、ガス供給ポート209より冷却ガスとしてHeガスを反応容器201内に供給し反応容器201の内圧を1×103Paとして円筒状基体205を自然冷却した。
【0039】
ベント工程では、冷却用のHeガスを一旦排気した後、ガス供給ポート209よりN2ガスを供給し、反応容器201を大気圧に戻し反応容器201より円筒状基体205を取り出した。
【0040】
なお、a−Si:H系感光体を作製する前に、安立計器(株)製 蛍光式光ファイバー温度計 AMOTH TM−5855を用い、堆積膜形成中の円筒状基体205表面上の温度校正を行った。
【0041】
【表1】
【0042】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、以下の具体的方法および基準で評価を行い、結果を表2に示す。
「球状突起」
電子写真感光体の表面を顕微鏡で観察し、直径10μm以上の球状突起数を数える。したがって、数値が小さいほど良好である。
【0043】
こうして求められた球状突起を、比較例1−1で作製した電子写真感光体の球状突起数を基準として、120%以上の場合を×、90%以上120%未満の場合を△、50%以上90%未満の場合を○、50%未満の場合を◎として評価を行った。
「画像欠陥」
電子写真感光体をキヤノン製の複写機Image Runner 5000に設置し、キヤノン製全面黒チャート(部品番号:FY9−9073)を原稿台に置き、コピーした時に得られたコピー画像の同一面積内のある直径0.1mm以上の白点の数を数える。したがって、数値が小さいほど良好である。
【0044】
こうして求められた画像欠陥を、比較例1−1で作製した電子写真感光体の画像欠陥の数を基準として、120%以上の場合を×、90%以上120%未満の場合を△、50%以上90%未満の場合を○、50%未満の場合を◎として評価を行った。
「帯電能」
電子写真感光体の特性は帯電能により評価を行った。帯電能は、電子写真感光体を本テスト用に改造されたキヤノン製の複写機Image Runner 5000に設置し、上記複写機の主帯電器に一定電流を流した時の現像器位置での感光体表面の暗部電位を測定する。したがって、暗部電位が高いほど帯電能は良好である。
【0045】
こうして求められた帯電能を、比較例1−1で作製した電子写真感光体の帯電能を基準として、90%未満の場合を×、90%以上120%未満の場合を△、120%以上150%未満の場合を○、150%以上の場合を◎として評価を行った。
(比較例1−1)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力1.0kWで形成した点が異なる。
(比較例1−2)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を形成する際の基板温度を220℃に制御した点が異なる(図3(B)参照)。
(比較例1−3)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる(図3(C)参照)。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
(比較例1−4)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力2.0kWで形成した点が異なる。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、実施例1で作製したa−Si:H系感光体は「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」全ての項目で良好な結果が得られた。
【0048】
一方、比較例1−2で作製したa−Si:H系感光体は、光導電層形成時の基板温度を低く設定したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電総形成時の印加電力を高くしているため「帯電能」は若干良化している。
【0049】
また、比較例1−3で作製したa−Si:H系感光体は、変化領域で基板温度が極小値を持たなかったために、「球状突起」、「画像欠陥」共に増加した。ただし、光導電層形成時の基板温度、印加電力共に高く設定したので「帯電能」は良好な結果を示している。
【0050】
最後に、比較例1−4で作製したa−Si:H系感光体は、電荷注入阻止層から高い印加電力で形成したため、「球状突起」、「画像欠陥」共にかなり増加した。ただし、「帯電能」は良好な結果を示している。
(実施例2)
本実施例では、図2の装置を用い、表3に示す形成条件で、実施例1とは異なる層構成、すなわち、2層の光導電層を有する層構成のa−Si:H系感光体を作製した。
【0051】
【表3】
【0052】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、結果を表4に示す。ただし、比較例2−1で作製した電子写真感光体を基準に評価した。
(比較例2−1)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力0.7kWで形成した点が異なる。
(比較例2−2)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を形成する際の基板温度を220℃に制御した点が異なる。
(比較例2−3)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
(比較例2−4)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力2.2kWで形成した点が異なる。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示すように、実施例2で作製したa−Si:H系感光体は「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」全ての項目で良好な結果が得られた。
【0055】
一方、比較例2−2で作製したa−Si:H系感光体は、光導電層形成時の基板温度を低く設定したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電層形成時の印加電力を高く設定したため「帯電能」は若干良化している。
【0056】
また、比較例2−3で作製したa−Si:H系感光体は、変化領域で基板温度が極小値を持たなかったために、「球状突起」、「画像欠陥」共に増加した。ただし、光導電層形成時の基板温度、印加電力共に高く設定したため「帯電能」は良好な結果を示している。
【0057】
最後に、比較例2−4で作製したa−Si:H系感光体は、電荷注入阻止層から高い印加電力で形成したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に増加した。ただし、「帯電能」は良好な結果を示している。
(実施例3)
本実施例では、図2の装置を用い、表5に示す形成条件で、実施例1とは異なる層構成、すなわち、光導電層と表面層との間に上部電荷注入阻止層を有する層構成のa−Si:H系感光体を作製した。
【0058】
【表5】
【0059】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、結果を表6に示す。ただし、比較例3−1で作製した電子写真感光体を基準に評価した。
(比較例3−1)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力1.2kWで形成した点が異なる。
(比較例3−2)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を形成する際に基板温度を220℃に制御した点が異なる。
(比較例3−3)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
(比較例3−4)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力1.8kWで形成した点が異なる。
【0060】
【表6】
【0061】
表6に示すように、実施例3で作製したa−Si:H系感光体は「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」全ての項目で良好な結果が得られた。
【0062】
一方、比較例3−2で作製したa−Si:H系感光体は、光導電層形成時の基板温度を低く設定したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電層形成時の印加電力を高く設定したため「帯電能」は若干良化した。
【0063】
そして、比較例3−3で作製したa−Si:H系感光体は、変化領域で基板温度が極小値を持たなかったために、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電層形成時の基板温度を250℃に設定したため「帯電能」は良好な結果を示している。
【0064】
最後に、比較例3−4で作製したa−Si:H系感光体は、電荷注入阻止層から高い印加電力で形成したため、「球状突起」、「画像欠陥」共にかなり悪化している。ただし、「帯電能」は良好な結果を示している。
(実施例4および比較例4)
本実施例では、図2の装置を用い、表7に示す形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本実施例および本比較例では、総膜厚を一定とし、電荷注入阻止層と光導電層の膜厚比率を種々変更して作製した。すなわち、電荷注入阻止層の膜厚をXμmとし、光導電層の膜厚を 28−Xμmとし、Xの値を実施例4−1〜4−5では、1〜9まで変えることで5種類の膜厚比率について検討した。また、比較例4−1、4−2では、Xの値をそれぞれ11、13と変えることで5種類の膜厚比率について検討した(表8参照)。
【0065】
【表7】
【0066】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行った。ただし、X=13の場合を基準に結果を表8に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
表8に示すように総膜厚を一定にした本実施例・本比較例においては、電荷注入阻止層の膜厚に関係なく良好な密着性が得られ、「球状突起」「画像欠陥」共に同程度であった。ただ、電荷注入阻止層の膜厚を厚くし過ぎると帯電能が低くなり、「球状突起」および「画像欠陥」と「帯電能」を両立するためには、電荷注入阻止層の変化領域を基体から10μm以内に形成することが好ましい。より好ましくは6μm以内に形成することが好ましい。
(実施例5)
本実施例では、図2の装置を用い、表9に示す形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。なお、光導電層の膜厚をY=5〜23μmの間で種々変更して作製した(表10参照)。
【0069】
【表9】
【0070】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、Y=5の場合を基準に結果を表10に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
表10に示すように、全ての範囲で「球状突起」、「画像欠陥」共に良好な結果が得られた。一方、「帯電能」に関しては膜厚を厚くするほど良好な結果が得られた。
(比較例5)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例5とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
【0073】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、実施例5のY=5の場合を基準に結果を表11に示す。
【0074】
【表11】
【0075】
表11に示すように、光導電層が11μm以上の範囲で、「球状突起」、「画像欠陥」共に悪化している。一方、「帯電能」に関しては実施例5と同様の結果が得られ、膜厚を厚くするほど良好な結果を示している。
【0076】
実施例5および比較例5の結果より、本発明は電荷注入阻止層から光導電層までの総膜厚が15μm以上の場合により顕著な効果を得られる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、被処理体上に、第1の高周波電力値P1で形成する第1層、第1の高周波電力値P1から第2の高周波電力値P2に変化しながら形成する変化領域、第2の高周波電力値P2で形成する第2層の順に積層構造の堆積膜を形成し、P1<P2であり、かつ、変化領域形成中に被処理体の表面温度が極小値をとるようにした。これにより、第1層と第2層との密着性を向上させることができ、その結果、特性の優れた半導体デバイスや電子写真感光体等の良品率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】a−Si:H系感光体の層構成を示す模式断面図である。
【図2】a−Si:H系感光体を形成可能な、本発明の一実施形態であるプラズマCVD堆積膜形成装置の模式図である。
【図3】本発明の実施例1、比較例1−2、比較例1−3における、a−Si:H系感光体形成中の基体表面温度の変化をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
101 基体
102 電荷注入阻止層
103 光導電層
104 表面層
105 電荷注入阻止層の変化領域
201 反応容器
202 ガス供給システム
203 高周波電源
204 真空ポンプ
205 円筒状基体
206 ホルダ
207 回転軸シャフト
208 シールド容器
209 ガス供給ポート
210 電力分岐板
211 整合回路
212 高周波電極
213 コンダクタンスバルブ
214 回転駆動装置
215 ヒータ
216 減速ギヤ
217 同軸ケーブル
218 排気配管
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサ、撮影デバイス、光起電力デバイス等における堆積膜形成方法、および該堆積膜形成方法を用いて形成された電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体、画像入力用ラインセンサ、撮影デバイス、光起電力デバイス等を作製する堆積膜形成方法として、プラズマCVD法、反応性スパッタ法、熱CVD法、光CVD法等の堆積膜形成方法が知られており、多く実用化されている。
【0003】
例えば、プラズマCVD法を用いた堆積膜形成方法では、原料ガスをグロー放電中で分解し、被処理体上に堆積膜を形成する。この方法を用いた場合、例えば原料ガスにSiH4を用いることで水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)堆積膜を形成することが可能である。このような方法で特性の良い堆積膜をはがれなく被処理体上に堆積させるためには被処理体と堆積膜の密着性を向上する必要がある。
【0004】
例えば、電子写真用光受容部材において、支持体と長波長光感光層との間、または、支持体と電荷注入阻止層との間に窒素原子、酸素原子、炭素原子の少なくとも1つとシリコン原子と必要に応じて水素原子およびハロゲン原子の少なくとも1つとを含有する非晶質材料で構成された密着層を有して、密着性を向上する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特公平7−19068号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法によって、堆積膜の密着性をある程度まで向上することをはできる。しかし、被処理体上に密着性の良い第1層を形成した後、第2層を積層して積層構造の堆積膜を形成しても十分な密着性が得られない場合があった。例えば、電子写真感光体を形成する場合、堆積膜が十分な密着性を保持していないと、形成途中で反応容器内の部品より、はがれが発生し、生成されたダストが感光体表面に付着し、球状突起を形成してしまう場合がある。こうして形成された球状突起は、画像欠陥の原因となる。
【0007】
近年、電子写真装置に対する市場の要求レベルは日々高まっており、印刷並の高画質を実現していくためには、これまで問題とならなかったレベルの微小な球状突起に起因する画像欠陥も改善していく必要がある。したがって、積層構造の堆積膜を形成する際に、さらに密着性を向上する必要がある。
【0008】
そこで、本発明は、堆積膜の密着性を向上させ、特性の優れた半導体デバイスや電子写真感光体等の良品率を向上させる堆積膜形成方法、および該堆積膜形成方法を用いて形成された電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、堆積膜形成時に印加する高周波電力と基板温度によって積層構造の堆積膜を形成した場合の堆積膜密着性が変化することを見出した。
【0010】
すなわち、減圧可能な反応容器内に被処理体を設置し、反応容器内に原料ガスを供給し、高周波電力によって原料ガスのプラズマを生成して、被処理体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、少なくとも被処理体上に、第1の高周波電力値P1で第1層を形成し、第1の高周波電力値P1から第2の高周波電力値P2に変化させながら変化領域を形成し、第2の高周波電力値P2で第2層を形成して、P1<P2、かつ、変化領域を形成中に被処理体の表面温度が極小値をとるようにすることによって、堆積膜の密着性が向上することを見出した。
【0011】
本発明の堆積膜形成方法によれば、第1層を第2層よりも低い印加電力で形成することによって、プラズマ生成時のプラズマ中イオンの衝撃効果等を低減でき、被処理体と第1層の密着性が向上できると考えられる。さらに、変化領域で基板である被処理体の表面温度が極小値をとるようにすることによって、変化領域での密着性が向上するとともに、第1層と第2層の応力緩和等によって、特に第2層の密着性が向上する。
【0012】
そして、変化領域を被処理体の表面から10μm以内に形成すれば、堆積膜の密着性と膜特性の両立が可能であることが確認された。
【0013】
さらに、第1層から第2層までの総膜厚を15μm以上堆積させた場合に、本発明の効果がより顕著に得られた。
【0014】
そして、高周波電力が10MHz以上250MHz以下の周波数範囲内にある少なくとも2つの高周波電力を含み、前記周波数範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、そのうち周波数の高い方の高周波電力の電力値をPA 、周波数の低い方の高周波電力の電力値をPB としたとき、前記電力値PA 、PB が、
0.1≦PB /(PA +PB )≦0.9
の条件を満たし、合成された高周波電力により前記原料ガスのプラズマを生成して、被処理体上に堆積膜を形成する場合により顕著な効果が得られる。
【0015】
上記周波数範囲の高周波電力を用いた処理では、低圧力処理、ガス利用効率、堆積速度等の面で優れている。しかし、一方で、定在波による電界むらが被処理体の大きさと同等になる場合もあり、より広い範囲で均一な堆積膜を形成するためには、周波数の異なる高周波電力を同時に印加することによって電界むらを抑制することが効果的である。さらに、上記周波数帯の高周波電力を使用した場合には、低圧処理や堆積速度向上のためにより高い印加電力を供給する場合があり、上記周波数範囲の高周波電力を用いて処理を施す場合には本発明の効果が顕著に得られる。
【0016】
さらに、反応圧力が10Pa以下の領域において、プラズマの影響を受け易く、温度にも敏感であり効果がある。
【0017】
また、本発明は、比較的膜厚を必要とする堆積膜を形成する場合に効果が得られることが実験的に確認されているので、電子写真感光体等の厚膜の堆積膜を形成する場合に適している。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
まず、本発明の堆積膜形成方法を適用可能な堆積膜の例として電子写真感光体が挙げられる。電子写真感光体を形成する場合、堆積膜の密着性を向上するために、密着性の高い第1層を基板上に形成し、第1層上に電気的・光学的機能を持つ第2層を積層し、必要に応じて第3層、第4層と順次積層する。そして、第1層と第2層の密着性を向上するために、第1層と第2層が接する領域で電気的・光学的・機械的特性が連続的に変化する変化領域を設ける。もちろん、第1層は密着性以外の電気的・光学的機能を両立した膜であっても構わない。また、第1層と第2層の間以外にも必要に応じて変化領域を設けても構わない。
【0020】
図1にa−Si:H系感光体の模式断面図の一例を示す。図1に示すa−Si:H系感光体は、被処理体である導電性の基体101上に密着性の良い第1層として電荷注入阻止層102、第2層として光導電層103、第3層として表面層104の順に積層し、第1層と第2層の間にキャリアの移動性や機械的な密着性を向上する目的で電荷注入阻止層の変化領域105を設けている。
【0021】
さらに、図1には示していないが、第2層の光導電層102と第3層の表面層103の間にキャリアの移動性、光の透過性や機械的な密着性を改善する目的として表面層の変化領域を設けても良い。
【0022】
次に、前述のa−Si:H系感光体を形成する装置について説明する。図2は複数のa−Si:H系感光体を形成可能な、本発明のプラズマCVD堆積膜形成装置の一例の模式図を示している。図2の装置は、減圧可能で少なくとも一部が誘電体で形成された円筒状の反応容器201と、反応容器201内に原料ガスを供給するガス供給システム202と、高周波電源203と、真空ポンプ204とを有する。
【0023】
被処理体である複数の円筒状基体205は反応容器201内で、同一同心円上に等間隔に設置されたホルダ206に積載され、ホルダ206は回転軸シャフト207を介して駆動装置214によって自転する構成となっている。ガス供給システム202は、処理に用いる原料ガス、例えばSiH4、GeH4、H2、B2H6、PH3、CH4、NO、Ar、He、N2等をマスフローコントローラ等により所定流量でガス供給ポート209を通じて反応容器201内へ供給可能な構成である。高周波電源203は整合回路211、電力分岐板210を介して反応容器201外に複数設置された棒状の高周波電極212に供給する構成である。そして、電力分岐板210、高周波電極212ならびに反応容器201はシールド容器208内に収納された構成である。反応容器201内は真空ポンプ204によって所望の圧力まで真空引きと、ガス供給システム202より所望のガスを所定流量で供給し、コンダクタンスバルブ213によって、真空ポンプ204の排気速度を調整することによって所望の圧力に調整することが可能な構成になっている。
【0024】
次に、図2の装置を用い、図1に示すa−Si:H系感光体を形成する形成方法について具体的に説明する。
【0025】
まず、被処理体である導電性の円筒状基体205を反応容器201内のホルダ206に設置し、真空ポンプ204により反応容器201内を所望の圧力まで排気する。次にガス供給システム202よりガス供給ポート209を通じて不活性ガス、例えばArガスを所定流量で反応容器201内に導入する。コンダクタンスバルブ213の開度を調整して反応容器201内を所定圧力に維持し、ヒータ215により円筒状基体205を所定温度に加熱・制御する。
【0026】
円筒状基体205が所望温度に加熱・制御できたら、Arガスの供給を停止し、真空ポンプ204によって、反応容器201内のArガスを十分排気し、ガス供給システム202よりガス供給ポート209を通じて電荷注入阻止層を形成する条件のガス種を所定流量で反応容器201内に供給し、コンダクタンスバルブ213の開度を調整して反応容器201内の圧力を所定圧力に設定する。
【0027】
反応容器201内の圧力が安定したら、高周波電源203より整合回路211、電力分岐板210を介して複数の高周波電極212に高周波電力を印加して反応容器201内に原料ガスのプラズマを生成し、円筒状基体205上に電荷注入阻止層を形成する。電荷注入阻止層形成中、基板温度は所定温度範囲に制御する。電荷注入阻止層形成時の印加電力P1は少なくとも光導電層形成時の印加電力P2の90%以下が好ましく、より好ましくは50%以下が好ましい。また、電荷注入阻止層形成時の基板温度は150〜300℃の範囲が好ましく、より好ましくは150〜250℃の範囲が好ましい。
【0028】
電荷注入阻止層が所望の膜厚に到達したら、印加電力を上昇させながら電荷注入阻止層の変化領域を形成する。もちろん、ガス種、ガス流量、反応圧力等の他の形成条件を同時に変化しても良い。そして、電荷注入阻止層の変化領域を形成している途中に、基板温度が極小値をとるように制御した後、基板温度を光導電層条件へと変化させる。変化領域形成中の基板温度の極小値は、電荷注入阻止層形成時の基板温度に比べ−50〜−5℃の範囲が好ましく、より好ましくは−30〜−5℃の範囲が好ましい。
【0029】
反応容器201内が光導電層形成条件に設定できたら光導電層の形成を続けて行い、光導電層が所望の膜厚に到達したら、高周波電力の供給を停止し、光導電層の形成を終了する。光導電層形成中、基板温度は所定温度範囲に制御する。光導電層形成時の基板温度は、電荷注入阻止層形成時の基板温度よりも高温に設定することが好ましく、150〜300℃の範囲、より好ましくは、200〜300℃の範囲が好ましい。
【0030】
その後、反応容器201内を、表面層形成条件にして、高周波電源203より整合回路211を介して高周波電極212に高周波電力を印加して原料ガスのプラズマを生成し、光導電層上に表面層を形成する。表面層が所望の膜厚に到達したら、高周波電力の供給を停止し、原料ガスの供給も停止してa―Si:H系感光体の形成を終了する。
【0031】
a−Si:H系感光体形成終了後、ガス供給システム202よりガス供給ポート210を通じてパージガス導入と真空ポンプ204による真空引きによって、反応容器201内を複数回パージし、冷却ガス用の不活性ガス例えばHeガスを反応容器201内に所定圧力で詰めて冷却を行う。円筒状基体205の温度が十分冷えたら冷却ガスを真空ポンプ204で排気した後、ガス供給ポート210よりベントガスを導入して反応容器201内を大気圧にして、反応容器201から円筒状基体205を取り出す。
【0032】
なお、本発明においては基板温度が重要なパラメータであり、堆積膜を形成する前に、基板の温度校正を実施することが重要である。しかも、プラズマ生成中の反応容器内に設置された基体の表面温度を正確に測定するためには、プラズマの影響を受けない温度計を使用して行うことが好ましい。したがって、蛍光式光ファイバー温度計等を用い、温度計プローブと基体表面とを十分に接触させて測定する方法等が挙げられる。
【0033】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、図2の装置を用い、表1に示す形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。
【0034】
まず、投入工程において、脱脂洗浄した直径80mm、長さ358mmのアルミニュウムを主原料とする円筒状基体205をホルダ206に積載し真空ポンプ204によって0.5Pa以下まで真空引きを行った。
【0035】
加熱工程では、駆動装置214により回転軸シャフト207を介してホルダ206及びホルダ206に積載された円筒状基体205を1rpmで自転させ、ガス供給システム202よりArガスをガス供給ポート209から500ml/min.(nomal)で供給し、コンダクタンスバルブ213の開度調整によって65Paに設定し、Arガスの流量および反応容器201の内圧が安定したところで、ヒータ215によって90分で円筒状基体205を220℃に加熱・制御した。なお、円筒状基体205の温度制御は堆積膜形成終了まで行った。
【0036】
成膜工程では、Arガスの供給を停止し、反応容器201内を1Pa以下まで真空引きを行った後、ガス供給ポート209より供給して表1の電荷注入阻止層条件で堆積した。電荷注入阻止層を成膜した後、電荷注入層の変化領域、光導電層、表面層の順に堆積膜を形成し、a−Si:H系感光体を作製した。なお、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層の初期形成時の円筒状基板の温度変化を図3(A)に示す。
【0037】
パージ工程では、反応容器201内を1Pa以下まで一旦真空引きした後、ガス供給ポート209よりArガスを供給して複数回パージを行った。
【0038】
冷却工程では、ガス供給ポート209より冷却ガスとしてHeガスを反応容器201内に供給し反応容器201の内圧を1×103Paとして円筒状基体205を自然冷却した。
【0039】
ベント工程では、冷却用のHeガスを一旦排気した後、ガス供給ポート209よりN2ガスを供給し、反応容器201を大気圧に戻し反応容器201より円筒状基体205を取り出した。
【0040】
なお、a−Si:H系感光体を作製する前に、安立計器(株)製 蛍光式光ファイバー温度計 AMOTH TM−5855を用い、堆積膜形成中の円筒状基体205表面上の温度校正を行った。
【0041】
【表1】
【0042】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、以下の具体的方法および基準で評価を行い、結果を表2に示す。
「球状突起」
電子写真感光体の表面を顕微鏡で観察し、直径10μm以上の球状突起数を数える。したがって、数値が小さいほど良好である。
【0043】
こうして求められた球状突起を、比較例1−1で作製した電子写真感光体の球状突起数を基準として、120%以上の場合を×、90%以上120%未満の場合を△、50%以上90%未満の場合を○、50%未満の場合を◎として評価を行った。
「画像欠陥」
電子写真感光体をキヤノン製の複写機Image Runner 5000に設置し、キヤノン製全面黒チャート(部品番号:FY9−9073)を原稿台に置き、コピーした時に得られたコピー画像の同一面積内のある直径0.1mm以上の白点の数を数える。したがって、数値が小さいほど良好である。
【0044】
こうして求められた画像欠陥を、比較例1−1で作製した電子写真感光体の画像欠陥の数を基準として、120%以上の場合を×、90%以上120%未満の場合を△、50%以上90%未満の場合を○、50%未満の場合を◎として評価を行った。
「帯電能」
電子写真感光体の特性は帯電能により評価を行った。帯電能は、電子写真感光体を本テスト用に改造されたキヤノン製の複写機Image Runner 5000に設置し、上記複写機の主帯電器に一定電流を流した時の現像器位置での感光体表面の暗部電位を測定する。したがって、暗部電位が高いほど帯電能は良好である。
【0045】
こうして求められた帯電能を、比較例1−1で作製した電子写真感光体の帯電能を基準として、90%未満の場合を×、90%以上120%未満の場合を△、120%以上150%未満の場合を○、150%以上の場合を◎として評価を行った。
(比較例1−1)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力1.0kWで形成した点が異なる。
(比較例1−2)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を形成する際の基板温度を220℃に制御した点が異なる(図3(B)参照)。
(比較例1−3)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる(図3(C)参照)。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
(比較例1−4)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例1とほぼ同じ形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力2.0kWで形成した点が異なる。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、実施例1で作製したa−Si:H系感光体は「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」全ての項目で良好な結果が得られた。
【0048】
一方、比較例1−2で作製したa−Si:H系感光体は、光導電層形成時の基板温度を低く設定したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電総形成時の印加電力を高くしているため「帯電能」は若干良化している。
【0049】
また、比較例1−3で作製したa−Si:H系感光体は、変化領域で基板温度が極小値を持たなかったために、「球状突起」、「画像欠陥」共に増加した。ただし、光導電層形成時の基板温度、印加電力共に高く設定したので「帯電能」は良好な結果を示している。
【0050】
最後に、比較例1−4で作製したa−Si:H系感光体は、電荷注入阻止層から高い印加電力で形成したため、「球状突起」、「画像欠陥」共にかなり増加した。ただし、「帯電能」は良好な結果を示している。
(実施例2)
本実施例では、図2の装置を用い、表3に示す形成条件で、実施例1とは異なる層構成、すなわち、2層の光導電層を有する層構成のa−Si:H系感光体を作製した。
【0051】
【表3】
【0052】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、結果を表4に示す。ただし、比較例2−1で作製した電子写真感光体を基準に評価した。
(比較例2−1)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力0.7kWで形成した点が異なる。
(比較例2−2)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を形成する際の基板温度を220℃に制御した点が異なる。
(比較例2−3)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
(比較例2−4)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力2.2kWで形成した点が異なる。
【0053】
【表4】
【0054】
表4に示すように、実施例2で作製したa−Si:H系感光体は「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」全ての項目で良好な結果が得られた。
【0055】
一方、比較例2−2で作製したa−Si:H系感光体は、光導電層形成時の基板温度を低く設定したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電層形成時の印加電力を高く設定したため「帯電能」は若干良化している。
【0056】
また、比較例2−3で作製したa−Si:H系感光体は、変化領域で基板温度が極小値を持たなかったために、「球状突起」、「画像欠陥」共に増加した。ただし、光導電層形成時の基板温度、印加電力共に高く設定したため「帯電能」は良好な結果を示している。
【0057】
最後に、比較例2−4で作製したa−Si:H系感光体は、電荷注入阻止層から高い印加電力で形成したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に増加した。ただし、「帯電能」は良好な結果を示している。
(実施例3)
本実施例では、図2の装置を用い、表5に示す形成条件で、実施例1とは異なる層構成、すなわち、光導電層と表面層との間に上部電荷注入阻止層を有する層構成のa−Si:H系感光体を作製した。
【0058】
【表5】
【0059】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、結果を表6に示す。ただし、比較例3−1で作製した電子写真感光体を基準に評価した。
(比較例3−1)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力1.2kWで形成した点が異なる。
(比較例3−2)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を形成する際に基板温度を220℃に制御した点が異なる。
(比較例3−3)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
(比較例3−4)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例2とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。本比較例では、電荷注入阻止層、電荷注入阻止層の変化領域、光導電層を印加電力1.8kWで形成した点が異なる。
【0060】
【表6】
【0061】
表6に示すように、実施例3で作製したa−Si:H系感光体は「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」全ての項目で良好な結果が得られた。
【0062】
一方、比較例3−2で作製したa−Si:H系感光体は、光導電層形成時の基板温度を低く設定したため、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電層形成時の印加電力を高く設定したため「帯電能」は若干良化した。
【0063】
そして、比較例3−3で作製したa−Si:H系感光体は、変化領域で基板温度が極小値を持たなかったために、「球状突起」、「画像欠陥」共に同程度であるが、光導電層形成時の基板温度を250℃に設定したため「帯電能」は良好な結果を示している。
【0064】
最後に、比較例3−4で作製したa−Si:H系感光体は、電荷注入阻止層から高い印加電力で形成したため、「球状突起」、「画像欠陥」共にかなり悪化している。ただし、「帯電能」は良好な結果を示している。
(実施例4および比較例4)
本実施例では、図2の装置を用い、表7に示す形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。ただし、本実施例および本比較例では、総膜厚を一定とし、電荷注入阻止層と光導電層の膜厚比率を種々変更して作製した。すなわち、電荷注入阻止層の膜厚をXμmとし、光導電層の膜厚を 28−Xμmとし、Xの値を実施例4−1〜4−5では、1〜9まで変えることで5種類の膜厚比率について検討した。また、比較例4−1、4−2では、Xの値をそれぞれ11、13と変えることで5種類の膜厚比率について検討した(表8参照)。
【0065】
【表7】
【0066】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行った。ただし、X=13の場合を基準に結果を表8に示す。
【0067】
【表8】
【0068】
表8に示すように総膜厚を一定にした本実施例・本比較例においては、電荷注入阻止層の膜厚に関係なく良好な密着性が得られ、「球状突起」「画像欠陥」共に同程度であった。ただ、電荷注入阻止層の膜厚を厚くし過ぎると帯電能が低くなり、「球状突起」および「画像欠陥」と「帯電能」を両立するためには、電荷注入阻止層の変化領域を基体から10μm以内に形成することが好ましい。より好ましくは6μm以内に形成することが好ましい。
(実施例5)
本実施例では、図2の装置を用い、表9に示す形成条件で、図1に示す層構成のa−Si:H系感光体を作製した。なお、光導電層の膜厚をY=5〜23μmの間で種々変更して作製した(表10参照)。
【0069】
【表9】
【0070】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、Y=5の場合を基準に結果を表10に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
表10に示すように、全ての範囲で「球状突起」、「画像欠陥」共に良好な結果が得られた。一方、「帯電能」に関しては膜厚を厚くするほど良好な結果が得られた。
(比較例5)
本比較例では、図2の装置を用いて、実施例5とほぼ同じ形成条件で、a−Si:H系感光体を作製した。ただし、本比較例では電荷注入阻止層の変化領域形成する際の基板温度を220℃→250℃に制御した点が異なる。つまり、変化領域で基板温度は極小値を取らない。
【0073】
作製した電子写真感光体の「球状突起」、「画像欠陥」、「帯電能」について、実施例1と同様の方法で評価を行い、実施例5のY=5の場合を基準に結果を表11に示す。
【0074】
【表11】
【0075】
表11に示すように、光導電層が11μm以上の範囲で、「球状突起」、「画像欠陥」共に悪化している。一方、「帯電能」に関しては実施例5と同様の結果が得られ、膜厚を厚くするほど良好な結果を示している。
【0076】
実施例5および比較例5の結果より、本発明は電荷注入阻止層から光導電層までの総膜厚が15μm以上の場合により顕著な効果を得られる。
【0077】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、被処理体上に、第1の高周波電力値P1で形成する第1層、第1の高周波電力値P1から第2の高周波電力値P2に変化しながら形成する変化領域、第2の高周波電力値P2で形成する第2層の順に積層構造の堆積膜を形成し、P1<P2であり、かつ、変化領域形成中に被処理体の表面温度が極小値をとるようにした。これにより、第1層と第2層との密着性を向上させることができ、その結果、特性の優れた半導体デバイスや電子写真感光体等の良品率を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】a−Si:H系感光体の層構成を示す模式断面図である。
【図2】a−Si:H系感光体を形成可能な、本発明の一実施形態であるプラズマCVD堆積膜形成装置の模式図である。
【図3】本発明の実施例1、比較例1−2、比較例1−3における、a−Si:H系感光体形成中の基体表面温度の変化をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
101 基体
102 電荷注入阻止層
103 光導電層
104 表面層
105 電荷注入阻止層の変化領域
201 反応容器
202 ガス供給システム
203 高周波電源
204 真空ポンプ
205 円筒状基体
206 ホルダ
207 回転軸シャフト
208 シールド容器
209 ガス供給ポート
210 電力分岐板
211 整合回路
212 高周波電極
213 コンダクタンスバルブ
214 回転駆動装置
215 ヒータ
216 減速ギヤ
217 同軸ケーブル
218 排気配管
Claims (6)
- 減圧可能な反応容器内に被処理体を設置し、前記反応容器内に原料ガスを供給し、高周波電力によって前記原料ガスのプラズマを生成して、前記被処理体上に堆積膜を形成する堆積膜形成方法において、
少なくとも前記被処理体上に、第1の高周波電力値P1で形成する第1層、前記第1の高周波電力値P1から第2の高周波電力値P2に変化させながら形成する変化領域、前記第2の高周波電力値P2で形成する第2層の順に積層構造の堆積膜を形成し、P1<P2、かつ、前記変化領域の形成中に前記被処理体の表面温度が極小値をとるようにすることを特徴とする堆積膜形成方法。 - 前記変化領域を前記被処理体上から10μm以内に形成する、請求項1に記載の堆積膜形成方法。
- 前記第1層から前記第2層までの総膜厚を15μm以上に形成する、請求項1または2に記載の堆積膜形成方法。
- 前記高周波電力が10MHz以上250MHz以下の周波数範囲内にある少なくとも2つの高周波電力を含み、前記周波数範囲内にある高周波電力が有する電力値の中で最も大きい電力値と次に大きい電力値を有する高周波電力について、そのうち周波数の高い方の高周波電力の電力値をPA 、周波数の低い方の高周波電力の電力値をPB としたとき、前記電力値PA 、PB が、
0.1≦PB /(PA +PB )≦0.9
の条件を満たし、合成された高周波電力により前記原料ガスのプラズマを生成して、前記被処理体上に堆積膜を形成する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の堆積膜形成方法。 - 前記第1層および前記第2層を10Pa以下の条件で形成する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の堆積膜形成方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の堆積膜形成方法により形成された堆積膜を含んで成る電子写真感光体。
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