JP2004123497A - 調湿タイルの製造方法および製造用原料 - Google Patents
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Abstract
【課題】調湿タイルの表面に色むらや局部的な白色化が生じないようにして、外観品質を向上させる。
【解決手段】調湿材を含有する含水造粒物12の表面に吸水性乾燥粉14を付着させて成形用材料10を得る工程(a)と、成形用材料10をプレス成形してプレス成形物を得る工程(b)と、プレス成形物を焼成して調湿タイルを得る工程(c)とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】調湿材を含有する含水造粒物12の表面に吸水性乾燥粉14を付着させて成形用材料10を得る工程(a)と、成形用材料10をプレス成形してプレス成形物を得る工程(b)と、プレス成形物を焼成して調湿タイルを得る工程(c)とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、調湿タイルの製造方法および製造用原料に関し、詳しくは、環境中の湿気を吸放湿する調湿機能を有する調湿タイルの製造方法と、この製造方法に用いられる製造用原料とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
調湿タイルの製造方法として、珪藻土などの調湿材に、粘土などのバインダーや顔料、水などが配合された成形用材料を、プレス成形したあと焼成する方法が知られている。
前記バインダーには、焼成時の加熱によって溶融し、調湿材を融着一体化させる機能を有する成分、すなわち融剤が含まれているものが用いられる。
成形用材料として、予め、調湿材、バインダー、顔料、水などの原料を造粒してなる含水造粒物を用いる技術も知られている。含水造粒物は、プレス成形によって緻密に一体結合され、所望の立体形状を備えたプレス成形物になる。
【0003】
プレス成形および焼成の処理過程で、調湿材が有する調湿機能が損なわれないように、成形用材料の含水率を高めておくことが提案されている。焼成工程でプレス成形物が高い温度に加熱されると、調湿材が変質して、調湿機能を失ったり大幅に低下したりすることがある。プレス成形物の含水率が高いと、調湿材にも多量の水分が保持されることになり、加熱による調湿材の変質が防がれるものと推定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、含水率の高い成形用材料をプレス成形したあとで焼成すると、焼成された調湿タイルの表面に、色のむらや局部的な白色化が生じてしまい、調湿タイルの外観品質を大きく損なうという問題がある。
その原因について種々検討したところ、以下のように推測される。
プレス成形時に成形用材料に含まれる水分が脱水される際に、バインダーに含まれる水溶性融剤成分が、水分とともにプレス成形物の表面に染み出してくる。この状態を焼成すると、調湿タイルの表面に、水溶性融剤成分の存在する個所と存在しない個所ができたり、水溶性融剤成分の存在量のばらつきが生じたりすることによって、色むらや局部的な白色化が生じるのであると推定される。
【0005】
成形用材料に顔料などの着色成分が配合されている場合にも、調湿タイルの表面で、顔料による着色が前記水溶性融剤成分の存在によって損なわれ、目的とする着色効果が発揮できなくなったり、目的の色とは異なる色が現出したりすることになる。
本発明の課題は、前記したような調湿タイルの製造技術において、調湿タイルの表面に色むらや局部的な白色化が生じないようにして、外観品質を向上させることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる調湿タイルの製造方法は、調湿材を含む成形用材料をプレス成形し焼成する調湿タイルの製造方法であって、前記調湿材を含有する含水造粒物の表面に吸水性乾燥粉を付着させて前記成形用材料を得る工程(a)と、前工程(a)で得られた成形用材料をプレス成形してプレス成形物を得る工程(b)と、前工程(b)で得られたプレス成形物を焼成して調湿タイルを得る工程(c)とを含む。
〔含水造粒物〕
調湿タイルの製造用原料となる。基本的には、通常の調湿タイルと同様の材料や製造技術が適用できる。
【0007】
含水造粒物は、調湿材と水とを含有する。バインダーを含有することもできる。バインダーには、水溶性融剤を含むことができる。着色材を含有する場合もある。造粒剤その他の各種添加剤を含有することもできる。
含水造粒物の配合は、調湿タイルの要求性能や使用目的によって変更される。
含水造粒物の含水率は、15〜30重量%に設定できる。好ましくは、含水率15〜25重量%である。含水率が低過ぎると、調湿タイルの成形時における生強度および製品強度が不足する。含水率が高過ぎると、プレス成形時の脱型が困難になる。製品に変形が生じるなどの問題もある。
【0008】
含水造粒物の製造には、通常の造粒技術が適用できる。例えば、含水造粒物の原材料を湿式粉砕したあとスプレー造粒する技術が採用できる。より具体的には、泥漿状態の原材料を湿式粉砕したあと、泥漿をスプレーしながら、バーナーによる加熱乾燥などを行って、1.5mm以下程度の顆粒状の造粒物を得ることができる。含水造粒物の平均粒径を0.3〜1.5mmに設定できる。
また、原材料を湿式粉砕したあと、フィルタープレスし、押出し、粉砕する方法も適用できる。
<調湿材>
通常の調湿タイルに使用されている調湿材と同様の材料が使用できる。調湿材には、無機調湿材と有機調湿材との両方があり、何れも使用できる。焼成工程における耐熱性などの機能からは無機調湿材が好ましい。
【0009】
無機調湿材としては、ゼオライト、セピオライトなどの多孔質鉱物や、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノトライト、活性白土などの粘土鉱物、珪藻土、アロフェン、イモゴライトなどが使用できる。多孔質材料からなる無機調湿材は、その物理的構造によって調湿性などの性能が高くなる。多孔質材料として、平均細孔半径が20〜100Åで比表面積が20〜200m2/gのもの、好ましくは20〜60Åで比表面積が20〜200m2/gのものが好ましい。珪藻土の変成岩である珪質頁岩は、耐熱性、調湿機能などの点で優れたものである。無機調湿材は、1種類だけを単独で使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用することもできる。
【0010】
調湿材は、他の原料との混合、調合、粉砕などの工程を経たものを使用できる。湿式粉砕後にスプレー造粒して、得られた造粒物を使用することができる。
天然の無機調湿材の中で、珪質頁岩が特に優れる。
調湿材は、含水造粒物に対して15〜90重量%を含有させることができる。好ましくは20〜90重量%である。配合量が多いほうが、調湿性が優れたものになる。
<水溶性融剤>
通常の焼成製品の製造に利用されている水溶性融剤が使用できる。焼成時に、調湿材などの材料同士を融着一体化させる機能を果たす。
【0011】
具体的には、ガラス粉、亜鉛華、タルク、セピオライト、ベントナイト、無機調湿材、粘土などが挙げられる。複数の材料を組み合わせて使用することもできる。
含水造粒物に含まれる水溶性融剤の割合は、水溶性融剤の種類や焼成条件などにより、適切な量に設定する。
<その他の成分>
バインダーには、水溶性融剤以外に、粘結材料などを含むことができる。具体的には、ベントナイトや粘土などの可塑材料が挙げられる。
【0012】
着色材には、通常のタイル製造における着色材料が使用できる。例えば、無機あるいは有機の顔料や染料などが挙げられる。
含水造粒物の材料には、造粒作業を容易にする造粒剤を配合しておくこともできる。酸化チタンなどの光触媒機能を有する材料を配合しておくと、調湿タイルに吸着された有害な有機物を分解して無害化することができる。
〔吸水性乾燥粉〕
含水造粒物に含まれ調湿タイルの表面色や品質を損なう作用に関与する水を吸収保持して、前記有害な作用を発現させない機能を果たす。
【0013】
含水造粒物の成形性や焼成性あるいは調湿タイルの機能を損ない難い材料であって、吸水保持性に優れた材料が使用できる。含水造粒物に対する付着性を有している必要がある。具体的な材料として、ガラス粉、粘土、顔料が挙げられる。珪質頁岩、珪藻土、アロフェン、セピオライトなどの無機調湿材も使用できる。複数の材料を組み合わせて使用することもできる。造粒物への付着、焼成条件などに適した配合が好ましい。吸水性乾燥粉として、顔料を含有するものを用いると、調湿タイルに対する着色効果が発揮でき、表面の色むらや局部的な白色化を覆い隠す作用もある。吸水性乾燥粉自体が着色性を有するものであってもよい。
【0014】
吸水性乾燥粉は、含水率1.5〜10重量%の範囲のものが使用できる。含水率が低過ぎると、含水造粒物への付着がうまく行われなかったり、プレス成形の成形性を損なったりする。含水率が高過ぎると、含水造粒物から染み出す水分の吸収保持が十分に行い難い。そのために、色ムラ、白色化などの問題を十分に防止できなくなる。
吸水性乾燥粉は、比重0.6〜1.8の範囲のものが使用できる。比重が小さ過ぎると、含水造粒物と吸水性乾燥粉とが分離し易くなり、成形用材料粒子の強度低下やタイル強度の低下を生じる。比重が大き過ぎても、含水造粒物と吸水性乾燥粉とが分離し易くなり、同様の強度低下や色のバラツキなどを生じる。吸水性乾燥粉の粒径は、平均粒径5〜100μmの範囲に設定できる.好ましくは平均粒径8〜40μmである。粒径が小さ過ぎると、吸放湿性が低下したり、粉砕工程における負荷が過大になったりする。粒径が大き過ぎると、プレス時の生強度が弱くなり、焼成後の強度も弱くなる。
【0015】
吸水性乾燥粉の製造は、原材料を乾式で粉砕したり、湿式で粉砕したあと乾燥したりして得られる。含水造粒物に付着させる段階で、所定の乾燥状態に調整しておくこともできる。
<含水造粒物への付着>
含水造粒物に吸水性乾燥粉を付着させるには、含水造粒物と吸水性乾燥粉とを混合攪拌することができる。混合攪拌手段として、コンクリートミキサーなどの各種混練機が使用できる。混合攪拌の際に、付着作用を向上させる付着剤を添加することもできる。含水造粒物に含まれる水が、付着剤として機能する場合もある。
【0016】
含水造粒物に対する吸水性乾燥粉の付着量は、0.5〜10重量%に設定される。好ましくは2〜5重量%である。付着量が少な過ぎると、含水造粒物から染み出る水分の吸収保持が十分に行えない。付着量が多過ぎると、成形性や焼成性を損なったり調湿タイルの性能を低下させたりする。
含水造粒物に吸水性乾燥粉を付着させた段階で、含水造粒物に含まれる水分の一部が吸水性乾燥粉に移行することがある。したがって、付着工程の前の段階と後では、含水造粒物および吸水性乾燥粉の含水率は変わることがある。
〔成形用材料〕
基本的には、通常の調湿タイル製造に用いられる成形用材料の技術が使用できる。
【0017】
成形用材料には、吸水性乾燥粉が付着した含水造粒物が含まれている。吸水性乾燥粉が付着した含水造粒物のほかに、吸水性乾燥粉を付着させていない含水造粒物や、ガラス粒、石材、着色材なども配合できる。含水造粒物の配合成分は、含水造粒物とは別個に成形用材料に配合しておくこともできる。
〔プレス成形〕
基本的には、通常のタイル製造におけるプレス成形の製造技術が適用できる。
プレス成形では、調湿タイルの形状に対応する型形状を備えた成形型を使用することができる。
【0018】
プレス成形の成形条件として、プレス圧力14710〜29420kPa(150〜300kgf/cm2)に設定できる。好ましくは、プレス圧力19613〜29420kPa(200〜300kgf/cm2)である。成形時間は3秒以上である。
プレス成形によって所定の形状に成形されたプレス成形物が得られる。プレス成形では、含水造粒物が加圧されることで、含水造粒物に含まれる水分が含水造粒物の表面に染み出し、吸水性乾燥粉に吸収保持される。水分とともに水溶性融剤も含水造粒物の表面から吸水性乾燥粉に吸収される。個々の含水造粒物において、吸水性乾燥粉に水分および水溶性融剤を吸収保持することができる。その結果、プレス成形物の表面に、過剰量の水分および水溶性融剤が染み出して滞留することが防止できる。水溶性融剤は、個々の成形用材料粒子に均等に分かれて存在するので、プレス成形物のうち、表面などの一部のみに偏在することはない。水溶性融剤以外にも、含水造粒物に含まれる水溶性成分が含水造粒物から染み出してきても、吸水性乾燥粉で吸収保持されるので、当該水溶性成分がプレス成形物の表面などの一部に偏在することが生じ難くなり、プレス成形物の全体において成分組成の偏在が解消される。
【0019】
プレス成形物は、直ちに焼成工程に供給することもできるし、乾燥その他の工程を行ってから、焼成工程に供給することもできる。
〔焼成〕
基本的には、通常のタイル製造と共通する技術が適用できる。
焼成装置や焼成条件は、特に限定されない。例えば、焼成温度として700〜1000℃の範囲が採用でき、700〜900℃がより好ましい。焼成時間は、焼成装置によっても異なり、例えば、ローラーハースキルンを使用する場合、1〜6時間あるいはそれ以上である。トンネルキルンやシャットルキルンを使用する場合には、適切な時間条件が異なる。焼成雰囲気は、大気雰囲気のほか、不活性ガス雰囲気も採用される。
【0020】
焼成工程では、含水造粒物あるいは吸水性乾燥粉に含まれる水溶性融剤が、加熱溶融されて、成形用材料の粒子同士を融着結合させる機能を発揮する。水溶性融剤は、プレス成形物の全体に均等に存在するので、表面などの一部のみで水溶性融剤が偏在することはない。
含水造粒物には適量の水分が含まれているので、焼成工程で、調湿材が過度の熱変性を受けることがない。製造後に調湿機能を果たす細孔内にも水分が存在するので、細孔が溶融成分で埋められて調湿機能を失うことが防止できる。
〔調湿タイル〕
焼成工程を終えて得られる調湿タイルは、基本的には、通常のタイルと同様の形状および構造を備えている。
【0021】
調湿タイルは、調湿材が有する、優れた調湿機能を発揮できる。調湿タイルの全体に均等に配置された水溶性融剤が、調湿材を含むタイル構造を強力に融着結合するので、機械的強度や耐久性にも優れたものとなる。調湿タイルの表面では、水溶性融剤の偏在による色むらや局部的な白色化が起こらず、外観品質の優れた商品価値の高いものとなる。水溶性融剤以外の成分についても、調湿タイルの全体に均等に存在することになるので、調湿タイルの物理的・化学的特性が全体で均一化され、品質性能の優れた調湿タイルとなる。
調湿タイルの形状は、基本的には、通常のタイル形状が採用され、矩形や円形などの板状をなす。調湿タイルの周辺、裏面あるいは表面に、溝や穴、突起、段差部分などの凹凸を有する場合もある。これら調湿タイルの形状は、プレス成形の際における成形型の形状によって設定される。
【0022】
調湿タイルの寸法は、使用する用途によって異なり、通常の調湿タイルと同様の範囲が採用できる。
〔積層構造タイル〕
調湿タイルは、全体が同じ材料で構成されたもののほか、部分的に材質の異なる部分を備えたものもある。
例えば、吸水性乾燥粉を付着させない含水造粒物からなる基材層と、吸水性乾燥粉を付着させた含水造粒物すなわち前記成形用材料からなる表面層とを積層してプレス成形して、積層構造を有するプレス成形物を得ることができる。
【0023】
得られた調湿タイルは、基本的な構造や特性は、基材層を構成する含水造粒物の組成によって決定されるとともに、表面層の表面すなわち調湿タイルの表面には、水溶性融剤等の偏在による色ムラや局部的な白色化が生じない。基材層では、水溶性融剤等が表面側に移行したとしても、基材層を覆う表面層の存在によって、調湿タイルの表面までは移行することができない。基材層には、吸水性乾燥粉を使用しないので、その分だけ材料が削減される。吸水性乾燥粉の存在による影響もなく、通常の含水造粒物からなる調湿タイルと同等の性能特性が発揮できる。
【0024】
表面層の厚みは、調湿タイルの表面における色ムラや局部的な白色化が生じない程度に、水溶性融剤等の移行を阻止できる厚みがあればよい。具体的には、0.5〜5mmの厚みに設定できる。好ましくは2〜4mmである。
表面層の形成は、予め層状に形成された基材層の表面に、表面層となる成形用材料粒子を所定の厚みまで散布することで行える。成形用材料粒子の散布量は、形成する表面層の厚みによって決められるが、通常、30〜900g/m2の範囲に設定できる。
表面層の成形用材料に着色材を配合したり、表面層を形成する含水造粒物あるいは吸水性乾燥粉が着色されていたりすれば、調湿タイルの表面に着色を施すことができる。基材層には着色材を配合しなくてもよく、着色材の使用量を低減できる。
【0025】
色が異なる複数の表面層を、調湿タイルの表面に分割して配置することもできる。
基材層の厚みは、特に限定されないが、通常、表面層に比べて十分に厚く設定される。具体的には、4〜30mmの厚みに設定できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
〔成形用材料粒子〕
図1は、調湿タイルの製造用原料すなわち成形用材料粒子10の模式的断面構造を示している。
前記粒子10は、含水造粒物12の表面に吸水性乾燥粉14が付着している。含水造粒物12は、例えば、珪藻土からなる調湿材75重量%と、亜鉛華からなるバインダー5重量%と、粘土20重量%を含んでいる。さらに、外割で水22重量%を含んでいる。原材料を湿式粉砕したあとスプレー造粒して含水率を調整することで得られたものである。図1では、判り易くするために、断面円形あるいは球形に表示されているが、実際には、厳密な球形である必要はない。含水造粒物12の平均粒径は0.5mmである。
【0027】
吸水性乾燥粉14は、珪質頁岩、顔料、ガラス粉、粘土、シリカ粉の混合物からなり、含水率3重量%、比重1.0である。吸水性乾燥粉14についても、図1では、判り易くするために、断面円形あるいは球形に表示されているが、実際には、厳密な球形である必要はない。吸水性乾燥粉14の平均粒径は10μmである。
吸水性乾燥粉14は、含水造粒物12とともに攪拌混合することで、含水造粒物12の表面に付着させている。吸水性乾燥粉14は、含水造粒物12の表面に、ほぼ単層で付着している。図示しないが、部分的には複層で付着している場合もある。吸水性乾燥粉14は隙間なく配置されている必要はなく、隙間があいている個所も存在している。
【0028】
〔調湿タイルの製造〕
吸水性乾燥粉14が付着した含水造粒物12からなる粒子で構成された成形用材料10を、調湿タイルの形状に対応するキャビティが設けられた成形型に充填し、成形型を型閉めしたあと、プレス成形してプレス成形物を得る。成形条件は、プレス圧24520kPa(250kg/cm2)、成形時間10秒である。
なお、成形型におけるキャビティの寸法形状およびプレス成形物の寸法形状は、最終的に製造する調湿タイルの寸法形状とは少し違っていてもよい。通常は、キャビティの寸法形状とプレス成形物の寸法形状は厳密には一致せず、プレス成形物を焼成する前に乾燥あるいは保管することでも寸法形状は変わり、さらに焼成工程における寸法変化もある。したがって、最終的に製造する調湿タイルの寸法形状に、製造過程における寸法変化を考慮して、キャビティあるいはプレス成形物の寸法形状を設計しておく。
【0029】
成形型を型開きして、プレス成形物を取り出す。プレス成形物を焼成炉に移送し、焼成炉内で加熱焼成して、調湿タイル20を得る。焼成条件は、焼成温度900℃、焼成時間1.5時間である。
〔調湿タイル〕
図2に示すように、調湿タイル20は概略矩形板状をなしている。調湿タイル20の寸法例として、縦横30cm、厚み11mmの正方形板状をなすものが挙げられる。
調湿タイル20は、住宅の壁面などに貼り付けて使用される。調湿タイル20に含有される調湿材が、施工環境の空気に含まれる湿気を吸収保持して、環境湿度が過度に高くならないようにできる。環境湿度が過剰に低下して乾燥状態になれば、調湿タイル20の調湿材に保持された水分が放出されて、乾燥状態を解消する。調湿材は、環境中の揮発性ガス成分や臭い成分を吸収するなど、空気環境を改善する機能を発揮する。
【0030】
しかも、調湿タイル20の表面は美麗であり、色むらや局部的な白色化は生じていない。
<比較例1>
上記実施形態の成形用材料10の代わりに、含水造粒物12および吸水性乾燥粉14を構成する全ての配合材料を混合した含水率30%の含水造粒物からなる成形用材料を用いて、前記実施形態と同様の調湿タイルを製造した。しかし、プレス時の脱型が困難であった。製造された調湿タイルの表面には局部的な白色化が生じており、商品価値に劣るものとなった。また、プレス成形品の生強度や型離れ性についても劣るものであった。
【0031】
<比較例2>
前記実施形態の成形用材料10の代わりに、含水造粒物12および吸水性乾燥粉14を構成する全ての配合材料を混合した含水率15%の含水造粒物からなる成形用材料を用いて、前記実施形態と同様の調湿タイルを製造した。しかし、プレス成形品の生強度が不足であり、搬送時に、50%以上のプレス成形品にワレが生じた。焼成後の強度も、前記実施形態に比べて40%低かった。
〔2層構造タイル〕
図3に示す調湿タイル20は、基材層24と表面層22とを備えている。施工時に表面層22が表面に露出するように施工される。
【0032】
表面層22の材料は、前記実施形態と同様であり、成形用材料として、含水造粒物12に吸水性乾燥粉14が付着された粒子10が用いられる。基材層24の材料は、吸水性乾燥粉14を付着させていない含水造粒物12を用いている。
調湿タイル20の厚み11mmは、表面層22の厚み3mm、基材層24の厚み8mmで構成されている。
この実施形態でも、前記実施形態と同様に、調湿タイル20の表面には水溶性融剤等の偏在による色むらや局部的な白色化は生じていない。
【0033】
【発明の効果】
本発明にかかる調湿タイルの製造方法は、調湿材を含有する含水造粒物の表面に吸水性乾燥粉を付着させた粒子からなる成形用材料をプレス成形し焼成して調湿タイルを製造することで、含水造粒物に含まれる水の存在によって発生する調湿タイルの表面における色むらや局部的な白色化を良好に防止できる。特に、含水造粒物に水とともに水溶性融剤が含まれている場合に、水に溶けた水溶性融剤によって前記問題が生じることを有効に阻止できる。
その結果、高含水率の成形用材料を使用して、プレス成形および焼成の過程で、調湿材が本来有する、優れた調湿機能が損なわれないようにできる。製造された調湿タイルは、調湿機能が極めて高く、住宅用の建材などとして有用であり、商品価値の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表す成形用材料粒子の模式的断面図
【図2】調湿タイルの一部断面斜視図
【図3】別の実施形態となる調湿タイルの一部断面斜視図
【符号の説明】
10 成形用材料粒子
12 含水造粒物
14 吸水性乾燥粉
20 調湿タイル
22 表面層
24 基材層
【発明の属する技術分野】
本発明は、調湿タイルの製造方法および製造用原料に関し、詳しくは、環境中の湿気を吸放湿する調湿機能を有する調湿タイルの製造方法と、この製造方法に用いられる製造用原料とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
調湿タイルの製造方法として、珪藻土などの調湿材に、粘土などのバインダーや顔料、水などが配合された成形用材料を、プレス成形したあと焼成する方法が知られている。
前記バインダーには、焼成時の加熱によって溶融し、調湿材を融着一体化させる機能を有する成分、すなわち融剤が含まれているものが用いられる。
成形用材料として、予め、調湿材、バインダー、顔料、水などの原料を造粒してなる含水造粒物を用いる技術も知られている。含水造粒物は、プレス成形によって緻密に一体結合され、所望の立体形状を備えたプレス成形物になる。
【0003】
プレス成形および焼成の処理過程で、調湿材が有する調湿機能が損なわれないように、成形用材料の含水率を高めておくことが提案されている。焼成工程でプレス成形物が高い温度に加熱されると、調湿材が変質して、調湿機能を失ったり大幅に低下したりすることがある。プレス成形物の含水率が高いと、調湿材にも多量の水分が保持されることになり、加熱による調湿材の変質が防がれるものと推定される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、含水率の高い成形用材料をプレス成形したあとで焼成すると、焼成された調湿タイルの表面に、色のむらや局部的な白色化が生じてしまい、調湿タイルの外観品質を大きく損なうという問題がある。
その原因について種々検討したところ、以下のように推測される。
プレス成形時に成形用材料に含まれる水分が脱水される際に、バインダーに含まれる水溶性融剤成分が、水分とともにプレス成形物の表面に染み出してくる。この状態を焼成すると、調湿タイルの表面に、水溶性融剤成分の存在する個所と存在しない個所ができたり、水溶性融剤成分の存在量のばらつきが生じたりすることによって、色むらや局部的な白色化が生じるのであると推定される。
【0005】
成形用材料に顔料などの着色成分が配合されている場合にも、調湿タイルの表面で、顔料による着色が前記水溶性融剤成分の存在によって損なわれ、目的とする着色効果が発揮できなくなったり、目的の色とは異なる色が現出したりすることになる。
本発明の課題は、前記したような調湿タイルの製造技術において、調湿タイルの表面に色むらや局部的な白色化が生じないようにして、外観品質を向上させることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる調湿タイルの製造方法は、調湿材を含む成形用材料をプレス成形し焼成する調湿タイルの製造方法であって、前記調湿材を含有する含水造粒物の表面に吸水性乾燥粉を付着させて前記成形用材料を得る工程(a)と、前工程(a)で得られた成形用材料をプレス成形してプレス成形物を得る工程(b)と、前工程(b)で得られたプレス成形物を焼成して調湿タイルを得る工程(c)とを含む。
〔含水造粒物〕
調湿タイルの製造用原料となる。基本的には、通常の調湿タイルと同様の材料や製造技術が適用できる。
【0007】
含水造粒物は、調湿材と水とを含有する。バインダーを含有することもできる。バインダーには、水溶性融剤を含むことができる。着色材を含有する場合もある。造粒剤その他の各種添加剤を含有することもできる。
含水造粒物の配合は、調湿タイルの要求性能や使用目的によって変更される。
含水造粒物の含水率は、15〜30重量%に設定できる。好ましくは、含水率15〜25重量%である。含水率が低過ぎると、調湿タイルの成形時における生強度および製品強度が不足する。含水率が高過ぎると、プレス成形時の脱型が困難になる。製品に変形が生じるなどの問題もある。
【0008】
含水造粒物の製造には、通常の造粒技術が適用できる。例えば、含水造粒物の原材料を湿式粉砕したあとスプレー造粒する技術が採用できる。より具体的には、泥漿状態の原材料を湿式粉砕したあと、泥漿をスプレーしながら、バーナーによる加熱乾燥などを行って、1.5mm以下程度の顆粒状の造粒物を得ることができる。含水造粒物の平均粒径を0.3〜1.5mmに設定できる。
また、原材料を湿式粉砕したあと、フィルタープレスし、押出し、粉砕する方法も適用できる。
<調湿材>
通常の調湿タイルに使用されている調湿材と同様の材料が使用できる。調湿材には、無機調湿材と有機調湿材との両方があり、何れも使用できる。焼成工程における耐熱性などの機能からは無機調湿材が好ましい。
【0009】
無機調湿材としては、ゼオライト、セピオライトなどの多孔質鉱物や、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノトライト、活性白土などの粘土鉱物、珪藻土、アロフェン、イモゴライトなどが使用できる。多孔質材料からなる無機調湿材は、その物理的構造によって調湿性などの性能が高くなる。多孔質材料として、平均細孔半径が20〜100Åで比表面積が20〜200m2/gのもの、好ましくは20〜60Åで比表面積が20〜200m2/gのものが好ましい。珪藻土の変成岩である珪質頁岩は、耐熱性、調湿機能などの点で優れたものである。無機調湿材は、1種類だけを単独で使用してもよいし、複数種類を組み合わせて使用することもできる。
【0010】
調湿材は、他の原料との混合、調合、粉砕などの工程を経たものを使用できる。湿式粉砕後にスプレー造粒して、得られた造粒物を使用することができる。
天然の無機調湿材の中で、珪質頁岩が特に優れる。
調湿材は、含水造粒物に対して15〜90重量%を含有させることができる。好ましくは20〜90重量%である。配合量が多いほうが、調湿性が優れたものになる。
<水溶性融剤>
通常の焼成製品の製造に利用されている水溶性融剤が使用できる。焼成時に、調湿材などの材料同士を融着一体化させる機能を果たす。
【0011】
具体的には、ガラス粉、亜鉛華、タルク、セピオライト、ベントナイト、無機調湿材、粘土などが挙げられる。複数の材料を組み合わせて使用することもできる。
含水造粒物に含まれる水溶性融剤の割合は、水溶性融剤の種類や焼成条件などにより、適切な量に設定する。
<その他の成分>
バインダーには、水溶性融剤以外に、粘結材料などを含むことができる。具体的には、ベントナイトや粘土などの可塑材料が挙げられる。
【0012】
着色材には、通常のタイル製造における着色材料が使用できる。例えば、無機あるいは有機の顔料や染料などが挙げられる。
含水造粒物の材料には、造粒作業を容易にする造粒剤を配合しておくこともできる。酸化チタンなどの光触媒機能を有する材料を配合しておくと、調湿タイルに吸着された有害な有機物を分解して無害化することができる。
〔吸水性乾燥粉〕
含水造粒物に含まれ調湿タイルの表面色や品質を損なう作用に関与する水を吸収保持して、前記有害な作用を発現させない機能を果たす。
【0013】
含水造粒物の成形性や焼成性あるいは調湿タイルの機能を損ない難い材料であって、吸水保持性に優れた材料が使用できる。含水造粒物に対する付着性を有している必要がある。具体的な材料として、ガラス粉、粘土、顔料が挙げられる。珪質頁岩、珪藻土、アロフェン、セピオライトなどの無機調湿材も使用できる。複数の材料を組み合わせて使用することもできる。造粒物への付着、焼成条件などに適した配合が好ましい。吸水性乾燥粉として、顔料を含有するものを用いると、調湿タイルに対する着色効果が発揮でき、表面の色むらや局部的な白色化を覆い隠す作用もある。吸水性乾燥粉自体が着色性を有するものであってもよい。
【0014】
吸水性乾燥粉は、含水率1.5〜10重量%の範囲のものが使用できる。含水率が低過ぎると、含水造粒物への付着がうまく行われなかったり、プレス成形の成形性を損なったりする。含水率が高過ぎると、含水造粒物から染み出す水分の吸収保持が十分に行い難い。そのために、色ムラ、白色化などの問題を十分に防止できなくなる。
吸水性乾燥粉は、比重0.6〜1.8の範囲のものが使用できる。比重が小さ過ぎると、含水造粒物と吸水性乾燥粉とが分離し易くなり、成形用材料粒子の強度低下やタイル強度の低下を生じる。比重が大き過ぎても、含水造粒物と吸水性乾燥粉とが分離し易くなり、同様の強度低下や色のバラツキなどを生じる。吸水性乾燥粉の粒径は、平均粒径5〜100μmの範囲に設定できる.好ましくは平均粒径8〜40μmである。粒径が小さ過ぎると、吸放湿性が低下したり、粉砕工程における負荷が過大になったりする。粒径が大き過ぎると、プレス時の生強度が弱くなり、焼成後の強度も弱くなる。
【0015】
吸水性乾燥粉の製造は、原材料を乾式で粉砕したり、湿式で粉砕したあと乾燥したりして得られる。含水造粒物に付着させる段階で、所定の乾燥状態に調整しておくこともできる。
<含水造粒物への付着>
含水造粒物に吸水性乾燥粉を付着させるには、含水造粒物と吸水性乾燥粉とを混合攪拌することができる。混合攪拌手段として、コンクリートミキサーなどの各種混練機が使用できる。混合攪拌の際に、付着作用を向上させる付着剤を添加することもできる。含水造粒物に含まれる水が、付着剤として機能する場合もある。
【0016】
含水造粒物に対する吸水性乾燥粉の付着量は、0.5〜10重量%に設定される。好ましくは2〜5重量%である。付着量が少な過ぎると、含水造粒物から染み出る水分の吸収保持が十分に行えない。付着量が多過ぎると、成形性や焼成性を損なったり調湿タイルの性能を低下させたりする。
含水造粒物に吸水性乾燥粉を付着させた段階で、含水造粒物に含まれる水分の一部が吸水性乾燥粉に移行することがある。したがって、付着工程の前の段階と後では、含水造粒物および吸水性乾燥粉の含水率は変わることがある。
〔成形用材料〕
基本的には、通常の調湿タイル製造に用いられる成形用材料の技術が使用できる。
【0017】
成形用材料には、吸水性乾燥粉が付着した含水造粒物が含まれている。吸水性乾燥粉が付着した含水造粒物のほかに、吸水性乾燥粉を付着させていない含水造粒物や、ガラス粒、石材、着色材なども配合できる。含水造粒物の配合成分は、含水造粒物とは別個に成形用材料に配合しておくこともできる。
〔プレス成形〕
基本的には、通常のタイル製造におけるプレス成形の製造技術が適用できる。
プレス成形では、調湿タイルの形状に対応する型形状を備えた成形型を使用することができる。
【0018】
プレス成形の成形条件として、プレス圧力14710〜29420kPa(150〜300kgf/cm2)に設定できる。好ましくは、プレス圧力19613〜29420kPa(200〜300kgf/cm2)である。成形時間は3秒以上である。
プレス成形によって所定の形状に成形されたプレス成形物が得られる。プレス成形では、含水造粒物が加圧されることで、含水造粒物に含まれる水分が含水造粒物の表面に染み出し、吸水性乾燥粉に吸収保持される。水分とともに水溶性融剤も含水造粒物の表面から吸水性乾燥粉に吸収される。個々の含水造粒物において、吸水性乾燥粉に水分および水溶性融剤を吸収保持することができる。その結果、プレス成形物の表面に、過剰量の水分および水溶性融剤が染み出して滞留することが防止できる。水溶性融剤は、個々の成形用材料粒子に均等に分かれて存在するので、プレス成形物のうち、表面などの一部のみに偏在することはない。水溶性融剤以外にも、含水造粒物に含まれる水溶性成分が含水造粒物から染み出してきても、吸水性乾燥粉で吸収保持されるので、当該水溶性成分がプレス成形物の表面などの一部に偏在することが生じ難くなり、プレス成形物の全体において成分組成の偏在が解消される。
【0019】
プレス成形物は、直ちに焼成工程に供給することもできるし、乾燥その他の工程を行ってから、焼成工程に供給することもできる。
〔焼成〕
基本的には、通常のタイル製造と共通する技術が適用できる。
焼成装置や焼成条件は、特に限定されない。例えば、焼成温度として700〜1000℃の範囲が採用でき、700〜900℃がより好ましい。焼成時間は、焼成装置によっても異なり、例えば、ローラーハースキルンを使用する場合、1〜6時間あるいはそれ以上である。トンネルキルンやシャットルキルンを使用する場合には、適切な時間条件が異なる。焼成雰囲気は、大気雰囲気のほか、不活性ガス雰囲気も採用される。
【0020】
焼成工程では、含水造粒物あるいは吸水性乾燥粉に含まれる水溶性融剤が、加熱溶融されて、成形用材料の粒子同士を融着結合させる機能を発揮する。水溶性融剤は、プレス成形物の全体に均等に存在するので、表面などの一部のみで水溶性融剤が偏在することはない。
含水造粒物には適量の水分が含まれているので、焼成工程で、調湿材が過度の熱変性を受けることがない。製造後に調湿機能を果たす細孔内にも水分が存在するので、細孔が溶融成分で埋められて調湿機能を失うことが防止できる。
〔調湿タイル〕
焼成工程を終えて得られる調湿タイルは、基本的には、通常のタイルと同様の形状および構造を備えている。
【0021】
調湿タイルは、調湿材が有する、優れた調湿機能を発揮できる。調湿タイルの全体に均等に配置された水溶性融剤が、調湿材を含むタイル構造を強力に融着結合するので、機械的強度や耐久性にも優れたものとなる。調湿タイルの表面では、水溶性融剤の偏在による色むらや局部的な白色化が起こらず、外観品質の優れた商品価値の高いものとなる。水溶性融剤以外の成分についても、調湿タイルの全体に均等に存在することになるので、調湿タイルの物理的・化学的特性が全体で均一化され、品質性能の優れた調湿タイルとなる。
調湿タイルの形状は、基本的には、通常のタイル形状が採用され、矩形や円形などの板状をなす。調湿タイルの周辺、裏面あるいは表面に、溝や穴、突起、段差部分などの凹凸を有する場合もある。これら調湿タイルの形状は、プレス成形の際における成形型の形状によって設定される。
【0022】
調湿タイルの寸法は、使用する用途によって異なり、通常の調湿タイルと同様の範囲が採用できる。
〔積層構造タイル〕
調湿タイルは、全体が同じ材料で構成されたもののほか、部分的に材質の異なる部分を備えたものもある。
例えば、吸水性乾燥粉を付着させない含水造粒物からなる基材層と、吸水性乾燥粉を付着させた含水造粒物すなわち前記成形用材料からなる表面層とを積層してプレス成形して、積層構造を有するプレス成形物を得ることができる。
【0023】
得られた調湿タイルは、基本的な構造や特性は、基材層を構成する含水造粒物の組成によって決定されるとともに、表面層の表面すなわち調湿タイルの表面には、水溶性融剤等の偏在による色ムラや局部的な白色化が生じない。基材層では、水溶性融剤等が表面側に移行したとしても、基材層を覆う表面層の存在によって、調湿タイルの表面までは移行することができない。基材層には、吸水性乾燥粉を使用しないので、その分だけ材料が削減される。吸水性乾燥粉の存在による影響もなく、通常の含水造粒物からなる調湿タイルと同等の性能特性が発揮できる。
【0024】
表面層の厚みは、調湿タイルの表面における色ムラや局部的な白色化が生じない程度に、水溶性融剤等の移行を阻止できる厚みがあればよい。具体的には、0.5〜5mmの厚みに設定できる。好ましくは2〜4mmである。
表面層の形成は、予め層状に形成された基材層の表面に、表面層となる成形用材料粒子を所定の厚みまで散布することで行える。成形用材料粒子の散布量は、形成する表面層の厚みによって決められるが、通常、30〜900g/m2の範囲に設定できる。
表面層の成形用材料に着色材を配合したり、表面層を形成する含水造粒物あるいは吸水性乾燥粉が着色されていたりすれば、調湿タイルの表面に着色を施すことができる。基材層には着色材を配合しなくてもよく、着色材の使用量を低減できる。
【0025】
色が異なる複数の表面層を、調湿タイルの表面に分割して配置することもできる。
基材層の厚みは、特に限定されないが、通常、表面層に比べて十分に厚く設定される。具体的には、4〜30mmの厚みに設定できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
〔成形用材料粒子〕
図1は、調湿タイルの製造用原料すなわち成形用材料粒子10の模式的断面構造を示している。
前記粒子10は、含水造粒物12の表面に吸水性乾燥粉14が付着している。含水造粒物12は、例えば、珪藻土からなる調湿材75重量%と、亜鉛華からなるバインダー5重量%と、粘土20重量%を含んでいる。さらに、外割で水22重量%を含んでいる。原材料を湿式粉砕したあとスプレー造粒して含水率を調整することで得られたものである。図1では、判り易くするために、断面円形あるいは球形に表示されているが、実際には、厳密な球形である必要はない。含水造粒物12の平均粒径は0.5mmである。
【0027】
吸水性乾燥粉14は、珪質頁岩、顔料、ガラス粉、粘土、シリカ粉の混合物からなり、含水率3重量%、比重1.0である。吸水性乾燥粉14についても、図1では、判り易くするために、断面円形あるいは球形に表示されているが、実際には、厳密な球形である必要はない。吸水性乾燥粉14の平均粒径は10μmである。
吸水性乾燥粉14は、含水造粒物12とともに攪拌混合することで、含水造粒物12の表面に付着させている。吸水性乾燥粉14は、含水造粒物12の表面に、ほぼ単層で付着している。図示しないが、部分的には複層で付着している場合もある。吸水性乾燥粉14は隙間なく配置されている必要はなく、隙間があいている個所も存在している。
【0028】
〔調湿タイルの製造〕
吸水性乾燥粉14が付着した含水造粒物12からなる粒子で構成された成形用材料10を、調湿タイルの形状に対応するキャビティが設けられた成形型に充填し、成形型を型閉めしたあと、プレス成形してプレス成形物を得る。成形条件は、プレス圧24520kPa(250kg/cm2)、成形時間10秒である。
なお、成形型におけるキャビティの寸法形状およびプレス成形物の寸法形状は、最終的に製造する調湿タイルの寸法形状とは少し違っていてもよい。通常は、キャビティの寸法形状とプレス成形物の寸法形状は厳密には一致せず、プレス成形物を焼成する前に乾燥あるいは保管することでも寸法形状は変わり、さらに焼成工程における寸法変化もある。したがって、最終的に製造する調湿タイルの寸法形状に、製造過程における寸法変化を考慮して、キャビティあるいはプレス成形物の寸法形状を設計しておく。
【0029】
成形型を型開きして、プレス成形物を取り出す。プレス成形物を焼成炉に移送し、焼成炉内で加熱焼成して、調湿タイル20を得る。焼成条件は、焼成温度900℃、焼成時間1.5時間である。
〔調湿タイル〕
図2に示すように、調湿タイル20は概略矩形板状をなしている。調湿タイル20の寸法例として、縦横30cm、厚み11mmの正方形板状をなすものが挙げられる。
調湿タイル20は、住宅の壁面などに貼り付けて使用される。調湿タイル20に含有される調湿材が、施工環境の空気に含まれる湿気を吸収保持して、環境湿度が過度に高くならないようにできる。環境湿度が過剰に低下して乾燥状態になれば、調湿タイル20の調湿材に保持された水分が放出されて、乾燥状態を解消する。調湿材は、環境中の揮発性ガス成分や臭い成分を吸収するなど、空気環境を改善する機能を発揮する。
【0030】
しかも、調湿タイル20の表面は美麗であり、色むらや局部的な白色化は生じていない。
<比較例1>
上記実施形態の成形用材料10の代わりに、含水造粒物12および吸水性乾燥粉14を構成する全ての配合材料を混合した含水率30%の含水造粒物からなる成形用材料を用いて、前記実施形態と同様の調湿タイルを製造した。しかし、プレス時の脱型が困難であった。製造された調湿タイルの表面には局部的な白色化が生じており、商品価値に劣るものとなった。また、プレス成形品の生強度や型離れ性についても劣るものであった。
【0031】
<比較例2>
前記実施形態の成形用材料10の代わりに、含水造粒物12および吸水性乾燥粉14を構成する全ての配合材料を混合した含水率15%の含水造粒物からなる成形用材料を用いて、前記実施形態と同様の調湿タイルを製造した。しかし、プレス成形品の生強度が不足であり、搬送時に、50%以上のプレス成形品にワレが生じた。焼成後の強度も、前記実施形態に比べて40%低かった。
〔2層構造タイル〕
図3に示す調湿タイル20は、基材層24と表面層22とを備えている。施工時に表面層22が表面に露出するように施工される。
【0032】
表面層22の材料は、前記実施形態と同様であり、成形用材料として、含水造粒物12に吸水性乾燥粉14が付着された粒子10が用いられる。基材層24の材料は、吸水性乾燥粉14を付着させていない含水造粒物12を用いている。
調湿タイル20の厚み11mmは、表面層22の厚み3mm、基材層24の厚み8mmで構成されている。
この実施形態でも、前記実施形態と同様に、調湿タイル20の表面には水溶性融剤等の偏在による色むらや局部的な白色化は生じていない。
【0033】
【発明の効果】
本発明にかかる調湿タイルの製造方法は、調湿材を含有する含水造粒物の表面に吸水性乾燥粉を付着させた粒子からなる成形用材料をプレス成形し焼成して調湿タイルを製造することで、含水造粒物に含まれる水の存在によって発生する調湿タイルの表面における色むらや局部的な白色化を良好に防止できる。特に、含水造粒物に水とともに水溶性融剤が含まれている場合に、水に溶けた水溶性融剤によって前記問題が生じることを有効に阻止できる。
その結果、高含水率の成形用材料を使用して、プレス成形および焼成の過程で、調湿材が本来有する、優れた調湿機能が損なわれないようにできる。製造された調湿タイルは、調湿機能が極めて高く、住宅用の建材などとして有用であり、商品価値の高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表す成形用材料粒子の模式的断面図
【図2】調湿タイルの一部断面斜視図
【図3】別の実施形態となる調湿タイルの一部断面斜視図
【符号の説明】
10 成形用材料粒子
12 含水造粒物
14 吸水性乾燥粉
20 調湿タイル
22 表面層
24 基材層
Claims (9)
- 調湿材を含む成形用材料をプレス成形し焼成する調湿タイルの製造方法であって、
前記調湿材を含有する含水造粒物の表面に吸水性乾燥粉を付着させて前記成形用材料を得る工程(a)と、
前工程(a)で得られた成形用材料をプレス成形してプレス成形物を得る工程(b)と、
前工程(b)で得られたプレス成形物を焼成して調湿タイルを得る工程(c)と
を含む調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(a)が、含水率17〜30重量%、平均粒径0.3〜2mmの前記含水造粒物と、含水率1.5〜10重量%、比重0.6〜1.8、平均粒径5〜100μmの前記吸水性乾燥粉とを用い、含水造粒物に対する吸水性乾燥粉の付着量を0.5〜10重量%にする
請求項1に記載の調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(a)が、前記含水造粒物として、珪質頁岩、珪藻土、アロフェン、セピオライトからなる群から選ばれる無機調湿材を15〜90重量%含有する含水造粒物を用いる
請求項1または2に記載の調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(a)が、前記含水造粒物として、ガラス粉、無機調湿材、粘土からなる群から選ばれる水溶性融剤を含有する含水造粒物を用いる
請求項1〜3の何れかに記載の調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(a)が、前記吸水性乾燥粉として、亜鉛華、ガラス粉、無機調湿材、粘土、顔料からなる群から選ばれる吸水性乾燥粉を用いる
請求項1〜4の何れかに記載の調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(a)が、前記吸水性乾燥粉として、顔料を含有する吸水性乾燥粉を用いる
請求項1〜5の何れかに記載の調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(b)が、前記吸水性乾燥粉を付着させない前記含水造粒物からなる基材層と、前記成形用材料からなる表面層とを積層し、得られた積層物をプレス成形して、積層構造を有するプレス成形物を得る
請求項1〜6の何れかに記載の調湿タイルの製造方法。 - 前記工程(b)が、前記表面層の厚みが0.5〜5mmのプレス成形物を得る
請求項1〜7の何れかに記載の調湿タイルの製造方法。 - 請求項1〜8の何れかに記載の製造方法における前記成形用材料となり、
前記調湿材を含有する含水造粒物の表面に吸水性乾燥粉が付着してなる
調湿タイルの製造用原料。
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WO2008126760A1 (ja) * | 2007-04-10 | 2008-10-23 | Inax Corporation | 調湿建材及びその製造方法 |
-
2002
- 2002-10-07 JP JP2002294115A patent/JP2004123497A/ja active Pending
Cited By (2)
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WO2008126760A1 (ja) * | 2007-04-10 | 2008-10-23 | Inax Corporation | 調湿建材及びその製造方法 |
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