JP2004122433A - プリント基板製造用離型フィルム及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】プリント基板製造時の配線パターンのずれを小さく、プリント基板への打痕や傷を少なくすることができる離型フィルムを提供すること。また、本発明の他の目的は、上記離型フィルムを製造する方法を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルム。
【選択図】なし
【解決手段】ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルム。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板製造用離型フィルム及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、プリント基板製造時のパターンずれが少なく、かつプリント基板への打痕や傷を少なくすることができるプリント基板製造用離型フィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フレキシブルプリント基板の製造工程の一部として、電気回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に、熱硬化型接着剤によってカバーレイフィルムを熱プレス接着する工程がある。この工程では、カバーレイフィルムとプレス熱板とが接着するのを防止する必要がある。また、カバーレイフィルムは、基板本体の電気回路と電子部品の接続端子とが接続できるように電気回路の一部を被覆しないようになっているので、プレス熱板と被覆されていない電気回路部とが接着されないようにする必要がある。この要求に応えるために離型フィルムが広く使われている。この離型フィルムには、熱プレス成形に耐える耐熱性と離型性が要求される。離型フィルムの離型性が不十分であると、電極部分に数μm厚のフィルムが付着物として残存し、導電性を著しく損ない、フレキシブルプリント基板全体が不良品となる。
【0003】
上記離型フィルムとしては、フッ素系樹脂フィルムが用いられることもある。しかし、フッ素系樹脂フィルムは高価である上に、使用後のフィルム廃棄に制約があるため、使い捨ての用途にまで普及するには至っていない。また、4−メチル−1−ペンテン樹脂(以下、TPXという)よりなるフィルム(以下、TPXフィルムという)が知られている。このTPXフィルムは、ステンレス製のプレス熱板や、ポリイミドフィルムよりなるカバーレイフィルム等からの離型性がよく、かつ170℃前後の熱プレス工程での耐熱性も良好である。
しかしながら、TPXフィルムは、カバーレイフィルムで被覆されていないフレキシブルプリント基板の銅製電極との離型性能が不足する場合があり、フレキシブルプリント基板の製造効率を低下させる問題があった。
【0004】
さらに、荷重たわみ温度(ASTM D648に準拠して荷重186N/cm2で測定される)が160℃以上、200℃未満の脂環式オレフィン系樹脂からなることを特徴とする離型フィルムが提案されている。(例えば、特許文献1。)
電気回路の集積度合いを高くするためには、プリント基板の配線幅を細くする必要があり、それに加えて配線パターンの精度を高くすることも必要とされている。例えば、液晶表示装置などに使用される基板などにおいては、線幅が20μm以下の配線パターンを0.1%レベルの精度で形成させることが要求されている。
しかしながら、本発明者の検討では、上記公報に開示されている離型フィルムでは、この要求を満足することができないばかりか、プリント基板に傷や打痕を発生させることがあることがわかった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−233968号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、プリント基板製造時の配線パターンのずれが少なく、プリント基板への打痕や傷を少なくすることができるプリント基板製造用離型フィルムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記離型フィルムを製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の脂環式構造含有重合体樹脂からなるフィルムを用い、さらに、その熱収縮率と異物個数を特定のものとすることにより、上記目的を達成できることを見出した。さらに、本発明者は、上記プリント基板製造用離型フィルムの製造方法として、特定の構成の移送工程を有し、特定の冷却ドラム周速度条件で製造することが適していることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
かくして本発明によれば、
(1)ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルム、
(2)160℃で60分処理した時の脱ガス量が1重量%以下である前記(1)記載のプリント基板製造用離型フィルム、
(3)厚さむらが±10%以下の前記(1)又は(2)記載のプリント基板製造用離型フィルム、
(4)溶融押出成形によって成形されたものである前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のプリント基板製造用離型フィルム。
(5)押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、
第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2が0.999未満、0.990以上であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルムの製造方法、
(6)第1冷却ドラムの周速度R1に対するR2の比R2/R1が1.010未満、0.990以上であることを特徴とする請求項5記載のプリント基板製造用離型フィルムの製造方法、
がそれぞれ提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下、好ましくは50個/m2以下である。異物個数が100個/m2よりも多くなると、プリント基板表面への異物転写、打痕キズ発生が増加し、配線間の絶縁性が悪くなる傾向がある。
ここで、異物とは、外部から混入した不純物並びに触媒残渣、ゲル化物、及び副反応物などの脂環構造含有重合体に相溶化しないもの;フィルム製造時に発生した気泡;及びフィルム表面に付着しているほこり;などを意味する。異物の形状は、通常、粒状であるが、それに限定されない。0.1mm以上の異物個数は、三次元測定器を用いてフィルム表面を観察してカウントし、それをフィルムの面積(m2)で割り、フィルム1m2あたりの異物個数として算出する。
【0011】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、160℃で1時間処理した時の熱収縮率が、2%以下、好ましくは1.5%以下である。熱収縮率が2%よりも大きくなると、プリント基板製造の熱プレス時に離型フィルムが収縮することによりプリント基板に形成された配線パターンにも収縮方向の力がかかり、設計から外れたパターンになってしまう傾向がある。
熱収縮率は、フィルムを所定の大きさに切り出し、これをSUS板上においたものを乾燥機に入れ、160℃で1時間処理前後のフィルム寸法(長さ方向及び幅方向)の変化率を三次元測定器を用いて測定する。
【0012】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、160℃で60分間処理した時の脱ガス量が、フィルム重量に対して1重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。脱ガス量が1重量%を超えると、プリント配線板製造時に密着不良部分が発生する傾向がある。
フィルムの脱ガス量は、フィルムを所定の大きさに30mm×20mmに切り出して、フィルム重量を測定する。次に、フィルム表面に吸着している水分や有機物を実質的に除去したステンレス製の試料室に入れ、この試料室に市販の活性炭チューブをSUS管壁に取り付けられたバルブを連結して、160℃で60分間処理したときに発生する内部の気体を連続的に捕集し、熱脱着ガスクロマトグラフィー−質量分析計(以下、「TDS−GC−MS」と記す。)で分析してフィルム1gあたりの有機物の積算放出量として求める。
【0013】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムの厚さは、20〜100μm、好ましくは25〜75μmである。
【0014】
本発明のプリント配線基板製造用離型フィルムは、厚さむらが、±10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは±7%以下、特に好ましくは±5%以下である。厚さむらが±10%以下であることにより、プリント配線基板製造時のプリント配線基板にかかる圧力むらをなくすことができる。
【0015】
本発明のプリント配線基板製造用離型フィルムは、引張強度が、30MPa以上であることが好ましく、45MPa以上がさらに好ましい。引張強度が30MPa以上であることにより、プリント基板製造時に離型フィルムが破断するのを防ぐことができる。
フィルムの引張強度は、温度23℃において、ASTM−D882に従って測定する。
【0016】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、10kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を1層有する単層フィルムでもよく、必要に応じて他の樹脂からなるフィルムを積層した積層フィルムでもよい。このとき、最外層及び最内層が、前記脂環式構造含有重合体樹脂からなる層であることが好ましい。
本発明においてプリント基板製造用離型フィルムが積層フィルムである場合の0.1mm以上の異物個数は、各層を構成するフィルムについて0.1mm以上の異物個数を測定しその合計を異物個数とする。このときの異物個数は、単層フィルムと同様に、前記の三次元測定器を用いてフィルム表面を観察してカウントする。
本発明においてプリント基板製造用離型フィルムが積層フィルムである場合の160℃で1時間処理した時の熱収縮率は、積層した状態での熱収縮率を測定する。熱収縮率の測定は、単層フィルムの時と同様に、160℃で1時間処理前後のフィルム寸法(長さ方向及び幅方向)の変化率を三次元測定器を用いて測定する。
【0017】
必要に応じて使用する他の樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0018】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムに使用する脂環式構造含有重合体樹脂は、そのガラス転移温度は130℃以上である。ガラス転移温度が、130℃未満であると熱プレス時に離型フィルムが流動してしまい、離型性が悪化する傾向がある。
【0019】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムに使用する脂環式構造含有重合体樹脂は、その280℃、10kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが、50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下である。前記メルトインデックスが50g/10分を超えると熱プレス時に離型フィルムが流動してしまい、離型性が悪化する傾向がある。
【0020】
本発明のプリント基板製造用フィルムに使用する脂環式構造含有重合体とは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0021】
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。本発明に使用される脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合がこの範囲にあることがフィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0022】
本発明に使用する脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる構造のうち、ノルボルナン環を有さない脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。ノルボルナン環を有さない脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合の多い方が特に熱収縮後の防湿性、機械強度に優れ好ましい。こうした脂環式構造含有重合体の具体例としては、例えば、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体水素添加物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物が好ましい。
【0023】
(1)ノルボルネン系重合体
本発明に用いるノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ならびにこれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
【0024】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0025】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
【0026】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0028】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0029】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
【0030】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0031】
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを共重合する場合は、共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0032】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0033】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
【0034】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素添加物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0035】
脂環式構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲であるときに、樹脂の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0036】
脂環式構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲であるときに、樹脂の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0037】
脂環式構造含有重合体樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。
【0038】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムを成形する方法としては、例えば、溶液キャスティング法又は溶融押出成形法が挙げられる。中でも、フィルムの残留溶媒や脱ガス成分を少なくできる点から、溶融押出成形法が好ましい。さらに溶融押出成形法としては、Tダイを用いる方法やインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイ成形法が好ましい。
【0039】
また、本発明のプリント基板製造用離型フィルムの好ましい製造方法は、押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、前記第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2を0.999未満、0.990以上であることを特徴とする方法である。
【0040】
この製造方法では、押出機から押し出された、シート状に溶融した脂環式構造含有重合体樹脂(以下、「シート状脂環式構造含有重合体樹脂」ともいう。)を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有する。前記3本の冷却ドラムの配置としては、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。また押出機から押出されたシート状脂環式構造含有重合体樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
【0041】
押出機における脂環式構造含有重合体樹脂の溶融温度は、脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、ガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にすることがより好ましい。押出機での溶融温度が過度に低いと脂環式構造含有重合体樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
【0042】
本発明では、第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2を0.999未満、0.990以上、好ましくは0.998未満、0.995以上に設定する。R3/R2の値が過度に大きいとシート状脂環式構造含有重合体樹脂に延伸がかかって、得られる離型フィルムに熱収縮や厚さむらが発生する傾向がある。一方、R3/R2の値が過度に小さい場合も、シート状脂環式構造含有重合体樹脂が弛んで垂れ、その重さが張力となってシート状脂環式構造含有重合体樹脂に延伸がかかり、得られる離型フィルムに熱収縮や厚さむらが発生する傾向がある。R3/R2の設定値を決定するには、シート状脂環式構造含有重合体樹脂を第2冷却ドラムから第3冷却ドラムへと移送するときに、第2冷却ドラム温度近辺から第3冷却ドラム温度近辺に低下することによる樹脂の収縮率に見合うように、樹脂温度を設定する。上記の周速比を採ることにより、シート状脂環式構造含有重合体樹脂が弛むことなく、適当なテンションで引っ張られながら、熱収縮や厚さむらが小さい離型フィルムが製造できるようになる。
【0043】
また、第1冷却ドラムの周速度R1に対する第2冷却ドラムの周速度R2の比R2/R1を1.01未満、0.990以上に設定することが好ましく、1.000未満、0.995以上に設定することがより好ましい。R2/R1の値をこの範囲にすることにより、得られるフィルムの分子配向が特に小さくなり、それが熱収縮率を小さくすることができる。またさらに巻きジワの発生を防ぐことができる。
【0044】
本発明の製造方法において、離型フィルム中の脱ガス成分を少なくするための工程を有することが好ましい。具体的には、▲1▼脂環式構造含有重合体樹脂自体の残留溶媒量を減らす方法、▲2▼離型フィルムを製造する前に脂環式構造含有重合体樹脂を窒素でシールした容器に保管する方法、▲3▼離型フィルムを溶融押出成形で製造する場合は、押出工程を窒素シールする方法やフィルム押出し温度を上げすぎないように調整する方法、押出成形時に脂環式構造含有重合体樹脂に酸化防止剤を添加する方法などが挙げられる。
【0045】
本発明の製造方法においては、離型フィルム中の異物個数を低減させる工程を有することが好ましい。具体的には、離型フィルムの製造をクリーンルームやクリーンブース内で行う方法や、溶融押出成形により離型フィルムを製造する場合には、押出し機とダイスとの間にポリマーフィルターを設置して、溶融状態の脂環式構造含有重合体樹脂を濾過させる方法などが挙げられる。ポリマーフィルターとしては、ディスク形状フィルター、キャンドル形状フィルター、リーフディスク形状フィルターなどが挙げられる。中でも▲1▼濾過面積を大きくできる;▲2▼構造的な強度をもたせることができる;▲3▼溶融樹脂の滞留個所を少なくできるなどの点で、リーフディスク形状フィルターが好ましい。
ポリマーフィルターの材質は、特に制限されないが、通常はステンレス鋼を用いる。ポリマーフィルターの厚さや濾過精度なども溶融樹脂の粘度などに応じて適宜選択すればよい。
【0046】
本発明において、前記脂環式構造含有重合体樹脂からなる層に更に他の樹脂からなる層を積層する場合は、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及び基材樹脂フィルムに対して樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの公知の方法を適宜利用することができる。
【0047】
【実施例】
本発明を、参考例、及び実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)分子量
テトラヒドロフラン(THF)を溶媒にして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求める。
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS−K7121に基づいて、示差走査熱量分析法(DSC)で測定する。
(3)水素添加率
重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、1H−NMRを測定し算出する。
(4)メルトインデックス
JIS−K7210のA法に準拠して、荷重測定温度280℃、測定荷重2.16kgの条件で測定する。
【0048】
(5)熱収縮率
フィルムを100mm×100mmに切り出し、これをSUS板上においたものを乾燥機に入れ、160℃で1時間処理前後のフィルム寸法(長さ方向及び幅方向)の変化率を三次元測定器(ミツトヨ社製、LEGEX707)を用いて測定する。
(6)フィルム中の異物個数
フィルムを200mm×200mmに切り出し、これを三次元測定器(ミツトヨ社製、LEGEX707)を用いて観察して0.1mm以上の異物をカウントする。これと同様に25サンプル用意して異物個数を測定しその総数をm2あたりの異物個数とする。
【0049】
(7)フィルムの厚さむら
フィルムを1m×1mに切り出し、この厚さを50mm間隔でマイクロメーターを用いて測定し、以下の式で得られる数値のうち絶対値の大きい方を厚さむらとする。
厚さむら(%)=((Tmax−Tav)/Tav)×100又は(Tmin−Tav)/Tav)×100
(式中、Tmaxはフィルム厚さの最大値、Tminはフィルム厚さの最小値、Tavはフィルム厚さの平均値である。)
(8)脱ガス量
フィルムを30mm×20mmに切り出して、フィルム重量を測定する。次に、フィルム表面に吸着している水分や有機物を実質的に除去したステンレス製の試料室に入れ、この試料室に市販の活性炭チューブをSUS管壁に取り付けられたバルブを連結して、160℃で60分間処理したときに発生する内部の気体を連続的に捕集し、熱脱着ガスクロマトグラフィー−質量分析計(以下、「TDS−GC−MS」と記す。)で分析してフィルム1gあたりの有機物の積算放出量(重量%)として求める。
(9)引張り強度
温度23℃において、ASTM−D882に従って厚さ100μmのフィルムについて測定する。
【0050】
(10)プリント基板のパターンずれ
▲1▼まず、25μm厚のポリイミドフィルム(デュポン社製「カプトン100H」)上に、実装用接着剤(日立化成工業社製、商品名「KS9100」)を20μm厚で塗布してカバーレイフィルムを作製する。
▲2▼次に、厚さ50μmのポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名「カプトン200H」)に厚さ35μmの銅箔を実装用接着剤(日立化成工業社製、商品名「KS9100」)を用いて接着して得られた銅箔付フィルムにドライフィルムレジスト(日立化成工業社製、商品名「フォテックH−9025」)をラミネートし、JIS−C−5016付図3に規定された耐屈曲性試料パターンをフォトリソグラフィーの手法で形成させてフレキシブルプリント基板を作製する。
▲3▼前記耐屈曲性パターンを4つ形成させた100mm×200mmのフレキシブルプリント基板のパターン間を測定し(パターン間距離L0)し、フレキシブルプリント基板、カバーレイフィルム、離型フィルムの順に重ね合わせたものを1セットとして、この組み合わせ10セットを熱プレスに載置し、プレス温度160℃、圧力300N/cm2で30分間プレスする。プレスしてこれを取り出した後に、それぞれのセットから離型フィルムを引き剥がして配線パターンが形成されたフレキシブルプリント基板10枚を得る。プレス後のパターン間距離を三次元測定器を用いて測定し、以下の式からパターンずれを算出し、10枚の平均値をデータとする。
パターンずれ(%)=(La−L0)/L0)×100
ここで、L0はプレス前のパターン間距離、LAはプレス後のパターン間距離である。
【0051】
(11)プリント基板の傷及び打痕
三次元測定器を用いて、前記配線パターンが形成されたフレキシブルプリント基板の全面の観察を行い、100μm以上の傷や打痕の数をカウントする。
(12)離型性
三次元測定器を用いて、前記配線パターンが形成されたフレキシブルプリント基板の全面の観察を行い、フィルム残存物があるかどうかを観察する。
【0052】
(参考例1)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、以下「MTF」と略す)120部と、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン、以下、「TCD」と略す。)80部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
【0053】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン35部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、MTF/TCD開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去した後、前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去しつつ水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを回収した。この開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは163℃、メルトインデックスは6.0g/10分であった。
【0054】
(参考例2)
参考例1でで、MTF120部、TCD80部のかわりに、MTF50部、TCD35部およびトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下「DCP」と略す。)を用い他は、参考例1と同様に行い、MTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物のペレットを得た。
得られたMTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは134℃、メルトインデックスは15.2g/10分であった。
【0055】
(実施例1)
参考例1で得られたMTF/TCD開環共重合体水素添加物のペレットをステンレス製の容器内で窒素シールして5日間保管した。そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(濾過精度30μm)を設置したシリンダー内径が50mm、スクリューL/Dが28の単軸押出成形機(日本製鋼所製)でバレル温度260℃で溶融押出し、ダイ温度260℃のコートハンガーダイから幅650mmのシート状溶融樹脂を押し出し、第1冷却ドラム(直径200mm、温度:135℃、周速度R1:14.50m/秒)に密着させ、直ちにナイフコーターにより厚さ100μmの溶融状態のシートとして第1冷却ドラムを、次いで第2冷却ドラム(直径350mm、温度125℃、周速度R2:14.47m/秒)、次いで第3冷却ドラム(直径350mm、温度80℃、周速度R3:14.43m/秒)に順次密着させて移送し、逐次、冷却ならびに冷却ドラム面転写による表裏面の平滑化を行い、調整ロールを経て引取りロールに移行させ、離型フィルム1を得た。
得られたフィルム1の厚さむら、熱収縮率、脱ガス量及び異物個数、並びにこのフィルム1を用いて作製したフレキシブルプリント配線板の評価を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
参考例2で得られたMTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物のペレットを用いる他は、実施例1と同様にして、離型フィルム2を得、これを用いてフレキシブルプリント基板を作製して評価をおこなった。
得られたフィルム2の厚さむら、熱収縮率、脱ガス量及び異物個数、並びにこのフィルム2を用いて作製したフレキシブルプリント配線板の評価を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
参考例2で得られたMTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物のペレットを用い、押出し成形機にポリマーフィルターを設置せず、周速度R1、R2及びR3をすべて14.5m/秒とした他は、実施例1と同様に、離型フィルム3を得た。
得られたフィルム3の厚さむら、熱収縮率、脱ガス量及び異物個数、並びにこのフィルム3を用いて作製したフレキシブルプリント配線板の評価を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果から以下のことがわかる。実施例に示すように、本発明の製造方法により得られるプリント基板製造用離型フィルムは、160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下で、かつ0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下であるので、プリント配線基板作成時の配線パターンのずれが小さく、かつ基板表面への傷や打痕も少ない。
一方、比較例に示すように、押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、該第3冷却ドラムの周速度R3の、前記第2冷却ドラムの周速度R2に対する比R3/R2を1とし、かつポリマーフィルターを押出し機に設置していない方法で得られた離型フィルムは、160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%よりも大きくなり、かつ0.1mm以上の異物個数が100個/m2以上となる。このため、プリント配線基板作成時の配線パターンのずれが大きく、かつ基板表面への傷や打痕も多い。
【0060】
【発明の効果】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、プリント基板製造時の配線パターンのずれを小さく、プリント基板への打痕や傷を少なくすることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板製造用離型フィルム及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、プリント基板製造時のパターンずれが少なく、かつプリント基板への打痕や傷を少なくすることができるプリント基板製造用離型フィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フレキシブルプリント基板の製造工程の一部として、電気回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に、熱硬化型接着剤によってカバーレイフィルムを熱プレス接着する工程がある。この工程では、カバーレイフィルムとプレス熱板とが接着するのを防止する必要がある。また、カバーレイフィルムは、基板本体の電気回路と電子部品の接続端子とが接続できるように電気回路の一部を被覆しないようになっているので、プレス熱板と被覆されていない電気回路部とが接着されないようにする必要がある。この要求に応えるために離型フィルムが広く使われている。この離型フィルムには、熱プレス成形に耐える耐熱性と離型性が要求される。離型フィルムの離型性が不十分であると、電極部分に数μm厚のフィルムが付着物として残存し、導電性を著しく損ない、フレキシブルプリント基板全体が不良品となる。
【0003】
上記離型フィルムとしては、フッ素系樹脂フィルムが用いられることもある。しかし、フッ素系樹脂フィルムは高価である上に、使用後のフィルム廃棄に制約があるため、使い捨ての用途にまで普及するには至っていない。また、4−メチル−1−ペンテン樹脂(以下、TPXという)よりなるフィルム(以下、TPXフィルムという)が知られている。このTPXフィルムは、ステンレス製のプレス熱板や、ポリイミドフィルムよりなるカバーレイフィルム等からの離型性がよく、かつ170℃前後の熱プレス工程での耐熱性も良好である。
しかしながら、TPXフィルムは、カバーレイフィルムで被覆されていないフレキシブルプリント基板の銅製電極との離型性能が不足する場合があり、フレキシブルプリント基板の製造効率を低下させる問題があった。
【0004】
さらに、荷重たわみ温度(ASTM D648に準拠して荷重186N/cm2で測定される)が160℃以上、200℃未満の脂環式オレフィン系樹脂からなることを特徴とする離型フィルムが提案されている。(例えば、特許文献1。)
電気回路の集積度合いを高くするためには、プリント基板の配線幅を細くする必要があり、それに加えて配線パターンの精度を高くすることも必要とされている。例えば、液晶表示装置などに使用される基板などにおいては、線幅が20μm以下の配線パターンを0.1%レベルの精度で形成させることが要求されている。
しかしながら、本発明者の検討では、上記公報に開示されている離型フィルムでは、この要求を満足することができないばかりか、プリント基板に傷や打痕を発生させることがあることがわかった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−233968号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、プリント基板製造時の配線パターンのずれが少なく、プリント基板への打痕や傷を少なくすることができるプリント基板製造用離型フィルムを提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記離型フィルムを製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、特定の脂環式構造含有重合体樹脂からなるフィルムを用い、さらに、その熱収縮率と異物個数を特定のものとすることにより、上記目的を達成できることを見出した。さらに、本発明者は、上記プリント基板製造用離型フィルムの製造方法として、特定の構成の移送工程を有し、特定の冷却ドラム周速度条件で製造することが適していることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0008】
かくして本発明によれば、
(1)ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルム、
(2)160℃で60分処理した時の脱ガス量が1重量%以下である前記(1)記載のプリント基板製造用離型フィルム、
(3)厚さむらが±10%以下の前記(1)又は(2)記載のプリント基板製造用離型フィルム、
(4)溶融押出成形によって成形されたものである前記(1)乃至(3)のいずれかに記載のプリント基板製造用離型フィルム。
(5)押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、
第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2が0.999未満、0.990以上であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルムの製造方法、
(6)第1冷却ドラムの周速度R1に対するR2の比R2/R1が1.010未満、0.990以上であることを特徴とする請求項5記載のプリント基板製造用離型フィルムの製造方法、
がそれぞれ提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下、好ましくは50個/m2以下である。異物個数が100個/m2よりも多くなると、プリント基板表面への異物転写、打痕キズ発生が増加し、配線間の絶縁性が悪くなる傾向がある。
ここで、異物とは、外部から混入した不純物並びに触媒残渣、ゲル化物、及び副反応物などの脂環構造含有重合体に相溶化しないもの;フィルム製造時に発生した気泡;及びフィルム表面に付着しているほこり;などを意味する。異物の形状は、通常、粒状であるが、それに限定されない。0.1mm以上の異物個数は、三次元測定器を用いてフィルム表面を観察してカウントし、それをフィルムの面積(m2)で割り、フィルム1m2あたりの異物個数として算出する。
【0011】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、160℃で1時間処理した時の熱収縮率が、2%以下、好ましくは1.5%以下である。熱収縮率が2%よりも大きくなると、プリント基板製造の熱プレス時に離型フィルムが収縮することによりプリント基板に形成された配線パターンにも収縮方向の力がかかり、設計から外れたパターンになってしまう傾向がある。
熱収縮率は、フィルムを所定の大きさに切り出し、これをSUS板上においたものを乾燥機に入れ、160℃で1時間処理前後のフィルム寸法(長さ方向及び幅方向)の変化率を三次元測定器を用いて測定する。
【0012】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、160℃で60分間処理した時の脱ガス量が、フィルム重量に対して1重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である。脱ガス量が1重量%を超えると、プリント配線板製造時に密着不良部分が発生する傾向がある。
フィルムの脱ガス量は、フィルムを所定の大きさに30mm×20mmに切り出して、フィルム重量を測定する。次に、フィルム表面に吸着している水分や有機物を実質的に除去したステンレス製の試料室に入れ、この試料室に市販の活性炭チューブをSUS管壁に取り付けられたバルブを連結して、160℃で60分間処理したときに発生する内部の気体を連続的に捕集し、熱脱着ガスクロマトグラフィー−質量分析計(以下、「TDS−GC−MS」と記す。)で分析してフィルム1gあたりの有機物の積算放出量として求める。
【0013】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムの厚さは、20〜100μm、好ましくは25〜75μmである。
【0014】
本発明のプリント配線基板製造用離型フィルムは、厚さむらが、±10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは±7%以下、特に好ましくは±5%以下である。厚さむらが±10%以下であることにより、プリント配線基板製造時のプリント配線基板にかかる圧力むらをなくすことができる。
【0015】
本発明のプリント配線基板製造用離型フィルムは、引張強度が、30MPa以上であることが好ましく、45MPa以上がさらに好ましい。引張強度が30MPa以上であることにより、プリント基板製造時に離型フィルムが破断するのを防ぐことができる。
フィルムの引張強度は、温度23℃において、ASTM−D882に従って測定する。
【0016】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、10kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を1層有する単層フィルムでもよく、必要に応じて他の樹脂からなるフィルムを積層した積層フィルムでもよい。このとき、最外層及び最内層が、前記脂環式構造含有重合体樹脂からなる層であることが好ましい。
本発明においてプリント基板製造用離型フィルムが積層フィルムである場合の0.1mm以上の異物個数は、各層を構成するフィルムについて0.1mm以上の異物個数を測定しその合計を異物個数とする。このときの異物個数は、単層フィルムと同様に、前記の三次元測定器を用いてフィルム表面を観察してカウントする。
本発明においてプリント基板製造用離型フィルムが積層フィルムである場合の160℃で1時間処理した時の熱収縮率は、積層した状態での熱収縮率を測定する。熱収縮率の測定は、単層フィルムの時と同様に、160℃で1時間処理前後のフィルム寸法(長さ方向及び幅方向)の変化率を三次元測定器を用いて測定する。
【0017】
必要に応じて使用する他の樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0018】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムに使用する脂環式構造含有重合体樹脂は、そのガラス転移温度は130℃以上である。ガラス転移温度が、130℃未満であると熱プレス時に離型フィルムが流動してしまい、離型性が悪化する傾向がある。
【0019】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムに使用する脂環式構造含有重合体樹脂は、その280℃、10kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが、50g/10分以下、好ましくは30g/10分以下である。前記メルトインデックスが50g/10分を超えると熱プレス時に離型フィルムが流動してしまい、離型性が悪化する傾向がある。
【0020】
本発明のプリント基板製造用フィルムに使用する脂環式構造含有重合体とは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有するものであり、機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0021】
重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。脂環式構造を構成する炭素原子数には、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械強度、耐熱性、及びフィルムの成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。本発明に使用される脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合がこの範囲にあることがフィルムの透明性および耐熱性の観点から好ましい。
【0022】
本発明に使用する脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を含有してなる構造のうち、ノルボルナン環を有さない脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合は、好ましくは10重量%以上、さらに好ましくは30重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。ノルボルナン環を有さない脂環式構造を含有してなる繰り返し単位の割合の多い方が特に熱収縮後の防湿性、機械強度に優れ好ましい。こうした脂環式構造含有重合体の具体例としては、例えば、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体水素添加物、ビニル脂環式炭化水素重合体及びその水素添加物が好ましい。
【0023】
(1)ノルボルネン系重合体
本発明に用いるノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系モノマーの開環重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、ならびにこれらの水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体及びノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物が最も好ましい。
【0024】
ノルボルネン系モノマーとしては、ビシクロ〔2.2.1〕ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう:慣用名メタノテトラヒドロフルオレン)及びその誘導体、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体、などが挙げられる。
【0025】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−エチル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
【0026】
置換基としては、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基などが例示でき、上記ノルボルネン系モノマーは、これらを2種以上有していてもよい。具体的には、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕ドデカ−3−エンなどが挙げられる。
これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0027】
これらノルボルネン系モノマーの開環重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体は、モノマー成分を、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得ることができる。開環重合触媒としては、例えば、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩またはアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒、あるいは、チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物またはアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いることができる。
ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などを挙げることができる。
【0028】
ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物は、通常、上記開環重合体の重合溶液に、ニッケル、パラジウムなどの遷移金属を含む公知の水素化触媒を添加し、炭素−炭素不飽和結合を水素化することにより得ることができる。
【0029】
ノルボルネン系モノマーの付加重合体、またはノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとの付加(共)重合体は、これらのモノマーを、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて(共)重合させて得ることができる。
【0030】
ノルボルネン系モノマーと付加共重合可能なその他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエン;などが用いられる。これらの中でも、α−オレフィン、特にエチレンが好ましい。
【0031】
これらの、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノルボルネン系モノマーとこれと共重合可能なその他のモノマーとを共重合する場合は、共重合体中のノルボルネン系モノマー由来の構造単位と共重合可能なその他のモノマー由来の構造単位との割合が、重量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは70:30〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
【0032】
(2)単環の環状オレフィン系重合体
単環の環状オレフィン系重合体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体の付加重合体を用いることができる。
【0033】
(3)環状共役ジエン系重合体
環状共役ジエン系重合体としては、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,2−または1,4−付加重合した重合体及びその水素化物などを用いることができる。
【0034】
(4)ビニル脂環式炭化水素重合体
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素添加物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素添加物;などが挙げられ、ビニル脂環式炭化水素重合体やビニル芳香族系単量体と、これらの単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素添加物など、いずれでもよい。ブロック共重合体としては、ジブロック、トリブロック、またはそれ以上のマルチブロックや傾斜ブロック共重合体などが挙げられ、特に制限はない。
【0035】
脂環式構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲であるときに、樹脂の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0036】
脂環式構造含有重合体の分子量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定したポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜250,000、より好ましくは10,000〜200,000の範囲であるときに、樹脂の機械的強度及び成形加工性とが高度にバランスされて好適である。
【0037】
脂環式構造含有重合体樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填材、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止材、抗菌剤やその他の樹脂、熱可塑性エラストマーなどの公知の添加剤を発明の効果が損なわれない範囲で添加することができる。
【0038】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムを成形する方法としては、例えば、溶液キャスティング法又は溶融押出成形法が挙げられる。中でも、フィルムの残留溶媒や脱ガス成分を少なくできる点から、溶融押出成形法が好ましい。さらに溶融押出成形法としては、Tダイを用いる方法やインフレーション法などが挙げられるが、生産性や厚さ精度に優れる点でTダイ成形法が好ましい。
【0039】
また、本発明のプリント基板製造用離型フィルムの好ましい製造方法は、押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、前記第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2を0.999未満、0.990以上であることを特徴とする方法である。
【0040】
この製造方法では、押出機から押し出された、シート状に溶融した脂環式構造含有重合体樹脂(以下、「シート状脂環式構造含有重合体樹脂」ともいう。)を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有する。前記3本の冷却ドラムの配置としては、直線型、Z型、L型などが挙げられるが特に制限されない。また押出機から押出されたシート状脂環式構造含有重合体樹脂の冷却ドラムへの通し方も特に制限されない。
【0041】
押出機における脂環式構造含有重合体樹脂の溶融温度は、脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度よりも80〜180℃高い温度にすることが好ましく、ガラス転移温度よりも100〜150℃高い温度にすることがより好ましい。押出機での溶融温度が過度に低いと脂環式構造含有重合体樹脂の流動性が不足するおそれがあり、逆に溶融温度が過度に高いと樹脂が劣化する可能性がある。
【0042】
本発明では、第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2を0.999未満、0.990以上、好ましくは0.998未満、0.995以上に設定する。R3/R2の値が過度に大きいとシート状脂環式構造含有重合体樹脂に延伸がかかって、得られる離型フィルムに熱収縮や厚さむらが発生する傾向がある。一方、R3/R2の値が過度に小さい場合も、シート状脂環式構造含有重合体樹脂が弛んで垂れ、その重さが張力となってシート状脂環式構造含有重合体樹脂に延伸がかかり、得られる離型フィルムに熱収縮や厚さむらが発生する傾向がある。R3/R2の設定値を決定するには、シート状脂環式構造含有重合体樹脂を第2冷却ドラムから第3冷却ドラムへと移送するときに、第2冷却ドラム温度近辺から第3冷却ドラム温度近辺に低下することによる樹脂の収縮率に見合うように、樹脂温度を設定する。上記の周速比を採ることにより、シート状脂環式構造含有重合体樹脂が弛むことなく、適当なテンションで引っ張られながら、熱収縮や厚さむらが小さい離型フィルムが製造できるようになる。
【0043】
また、第1冷却ドラムの周速度R1に対する第2冷却ドラムの周速度R2の比R2/R1を1.01未満、0.990以上に設定することが好ましく、1.000未満、0.995以上に設定することがより好ましい。R2/R1の値をこの範囲にすることにより、得られるフィルムの分子配向が特に小さくなり、それが熱収縮率を小さくすることができる。またさらに巻きジワの発生を防ぐことができる。
【0044】
本発明の製造方法において、離型フィルム中の脱ガス成分を少なくするための工程を有することが好ましい。具体的には、▲1▼脂環式構造含有重合体樹脂自体の残留溶媒量を減らす方法、▲2▼離型フィルムを製造する前に脂環式構造含有重合体樹脂を窒素でシールした容器に保管する方法、▲3▼離型フィルムを溶融押出成形で製造する場合は、押出工程を窒素シールする方法やフィルム押出し温度を上げすぎないように調整する方法、押出成形時に脂環式構造含有重合体樹脂に酸化防止剤を添加する方法などが挙げられる。
【0045】
本発明の製造方法においては、離型フィルム中の異物個数を低減させる工程を有することが好ましい。具体的には、離型フィルムの製造をクリーンルームやクリーンブース内で行う方法や、溶融押出成形により離型フィルムを製造する場合には、押出し機とダイスとの間にポリマーフィルターを設置して、溶融状態の脂環式構造含有重合体樹脂を濾過させる方法などが挙げられる。ポリマーフィルターとしては、ディスク形状フィルター、キャンドル形状フィルター、リーフディスク形状フィルターなどが挙げられる。中でも▲1▼濾過面積を大きくできる;▲2▼構造的な強度をもたせることができる;▲3▼溶融樹脂の滞留個所を少なくできるなどの点で、リーフディスク形状フィルターが好ましい。
ポリマーフィルターの材質は、特に制限されないが、通常はステンレス鋼を用いる。ポリマーフィルターの厚さや濾過精度なども溶融樹脂の粘度などに応じて適宜選択すればよい。
【0046】
本発明において、前記脂環式構造含有重合体樹脂からなる層に更に他の樹脂からなる層を積層する場合は、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等の共押出による成形方法、ドライラミネーション等のフィルムラミネーション成形方法、及び基材樹脂フィルムに対して樹脂溶液をコーティングするようなコーティング成形方法などの公知の方法を適宜利用することができる。
【0047】
【実施例】
本発明を、参考例、及び実施例を示しながら、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお部及び%は特に断りのない限り重量基準である。
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)分子量
テトラヒドロフラン(THF)を溶媒にして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求める。
(2)ガラス転移温度(Tg)
JIS−K7121に基づいて、示差走査熱量分析法(DSC)で測定する。
(3)水素添加率
重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、1H−NMRを測定し算出する。
(4)メルトインデックス
JIS−K7210のA法に準拠して、荷重測定温度280℃、測定荷重2.16kgの条件で測定する。
【0048】
(5)熱収縮率
フィルムを100mm×100mmに切り出し、これをSUS板上においたものを乾燥機に入れ、160℃で1時間処理前後のフィルム寸法(長さ方向及び幅方向)の変化率を三次元測定器(ミツトヨ社製、LEGEX707)を用いて測定する。
(6)フィルム中の異物個数
フィルムを200mm×200mmに切り出し、これを三次元測定器(ミツトヨ社製、LEGEX707)を用いて観察して0.1mm以上の異物をカウントする。これと同様に25サンプル用意して異物個数を測定しその総数をm2あたりの異物個数とする。
【0049】
(7)フィルムの厚さむら
フィルムを1m×1mに切り出し、この厚さを50mm間隔でマイクロメーターを用いて測定し、以下の式で得られる数値のうち絶対値の大きい方を厚さむらとする。
厚さむら(%)=((Tmax−Tav)/Tav)×100又は(Tmin−Tav)/Tav)×100
(式中、Tmaxはフィルム厚さの最大値、Tminはフィルム厚さの最小値、Tavはフィルム厚さの平均値である。)
(8)脱ガス量
フィルムを30mm×20mmに切り出して、フィルム重量を測定する。次に、フィルム表面に吸着している水分や有機物を実質的に除去したステンレス製の試料室に入れ、この試料室に市販の活性炭チューブをSUS管壁に取り付けられたバルブを連結して、160℃で60分間処理したときに発生する内部の気体を連続的に捕集し、熱脱着ガスクロマトグラフィー−質量分析計(以下、「TDS−GC−MS」と記す。)で分析してフィルム1gあたりの有機物の積算放出量(重量%)として求める。
(9)引張り強度
温度23℃において、ASTM−D882に従って厚さ100μmのフィルムについて測定する。
【0050】
(10)プリント基板のパターンずれ
▲1▼まず、25μm厚のポリイミドフィルム(デュポン社製「カプトン100H」)上に、実装用接着剤(日立化成工業社製、商品名「KS9100」)を20μm厚で塗布してカバーレイフィルムを作製する。
▲2▼次に、厚さ50μmのポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名「カプトン200H」)に厚さ35μmの銅箔を実装用接着剤(日立化成工業社製、商品名「KS9100」)を用いて接着して得られた銅箔付フィルムにドライフィルムレジスト(日立化成工業社製、商品名「フォテックH−9025」)をラミネートし、JIS−C−5016付図3に規定された耐屈曲性試料パターンをフォトリソグラフィーの手法で形成させてフレキシブルプリント基板を作製する。
▲3▼前記耐屈曲性パターンを4つ形成させた100mm×200mmのフレキシブルプリント基板のパターン間を測定し(パターン間距離L0)し、フレキシブルプリント基板、カバーレイフィルム、離型フィルムの順に重ね合わせたものを1セットとして、この組み合わせ10セットを熱プレスに載置し、プレス温度160℃、圧力300N/cm2で30分間プレスする。プレスしてこれを取り出した後に、それぞれのセットから離型フィルムを引き剥がして配線パターンが形成されたフレキシブルプリント基板10枚を得る。プレス後のパターン間距離を三次元測定器を用いて測定し、以下の式からパターンずれを算出し、10枚の平均値をデータとする。
パターンずれ(%)=(La−L0)/L0)×100
ここで、L0はプレス前のパターン間距離、LAはプレス後のパターン間距離である。
【0051】
(11)プリント基板の傷及び打痕
三次元測定器を用いて、前記配線パターンが形成されたフレキシブルプリント基板の全面の観察を行い、100μm以上の傷や打痕の数をカウントする。
(12)離型性
三次元測定器を用いて、前記配線パターンが形成されたフレキシブルプリント基板の全面の観察を行い、フィルム残存物があるかどうかを観察する。
【0052】
(参考例1)
窒素雰囲気下、脱水したシクロヘキサン500部に、1−ヘキセン0.82部、ジブチルエーテル0.15部、及びトリイソブチルアルミニウム0.30部を室温で反応器に入れ混合した後、45℃に保ちながら、7,8−ベンゾトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3−エン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、以下「MTF」と略す)120部と、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−ドデカ−3−エン(テトラシクロドデセン、以下、「TCD」と略す。)80部と、六塩化タングステン(0.7%トルエン溶液)80部とを、2時間かけて連続的に添加し重合した。重合溶液にブチルグリシジルエーテル1.06部とイソプロピルアルコール0.52部を加えて重合触媒を不活性化し重合反応を停止させた。
【0053】
次いで、得られた開環重合体を含有する反応溶液100部に対して、シクロヘキサン35部を加え、さらに水素添加触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加え、水素により5MPaに加圧して撹拌しながら温度200℃まで加温した後、4時間反応させ、MTF/TCD開環共重合体水素添加物を20%含有する反応溶液を得た。濾過により水素化触媒を除去した後、前記水素添加物100部あたり0.5部の酸化防止剤(ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート])を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去しつつ水素化物を溶融状態で押出機からストランド状に押出し、冷却後ペレット化してペレットを回収した。この開環共重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは163℃、メルトインデックスは6.0g/10分であった。
【0054】
(参考例2)
参考例1でで、MTF120部、TCD80部のかわりに、MTF50部、TCD35部およびトリシクロ〔4.3.0.12,5〕デカ−3,7−ジエン(ジシクロペンタジエン、以下「DCP」と略す。)を用い他は、参考例1と同様に行い、MTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物のペレットを得た。
得られたMTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物の、重量平均分子量(Mw)は35,000、水素添加率は99.8%、Tgは134℃、メルトインデックスは15.2g/10分であった。
【0055】
(実施例1)
参考例1で得られたMTF/TCD開環共重合体水素添加物のペレットをステンレス製の容器内で窒素シールして5日間保管した。そしてこのペレットを、リーフディスク形状のポリマーフィルター(濾過精度30μm)を設置したシリンダー内径が50mm、スクリューL/Dが28の単軸押出成形機(日本製鋼所製)でバレル温度260℃で溶融押出し、ダイ温度260℃のコートハンガーダイから幅650mmのシート状溶融樹脂を押し出し、第1冷却ドラム(直径200mm、温度:135℃、周速度R1:14.50m/秒)に密着させ、直ちにナイフコーターにより厚さ100μmの溶融状態のシートとして第1冷却ドラムを、次いで第2冷却ドラム(直径350mm、温度125℃、周速度R2:14.47m/秒)、次いで第3冷却ドラム(直径350mm、温度80℃、周速度R3:14.43m/秒)に順次密着させて移送し、逐次、冷却ならびに冷却ドラム面転写による表裏面の平滑化を行い、調整ロールを経て引取りロールに移行させ、離型フィルム1を得た。
得られたフィルム1の厚さむら、熱収縮率、脱ガス量及び異物個数、並びにこのフィルム1を用いて作製したフレキシブルプリント配線板の評価を表1に示す。
【0056】
(実施例2)
参考例2で得られたMTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物のペレットを用いる他は、実施例1と同様にして、離型フィルム2を得、これを用いてフレキシブルプリント基板を作製して評価をおこなった。
得られたフィルム2の厚さむら、熱収縮率、脱ガス量及び異物個数、並びにこのフィルム2を用いて作製したフレキシブルプリント配線板の評価を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
参考例2で得られたMTF/TCD/DCP開環重合体水素添加物のペレットを用い、押出し成形機にポリマーフィルターを設置せず、周速度R1、R2及びR3をすべて14.5m/秒とした他は、実施例1と同様に、離型フィルム3を得た。
得られたフィルム3の厚さむら、熱収縮率、脱ガス量及び異物個数、並びにこのフィルム3を用いて作製したフレキシブルプリント配線板の評価を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1の結果から以下のことがわかる。実施例に示すように、本発明の製造方法により得られるプリント基板製造用離型フィルムは、160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下で、かつ0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下であるので、プリント配線基板作成時の配線パターンのずれが小さく、かつ基板表面への傷や打痕も少ない。
一方、比較例に示すように、押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、該第3冷却ドラムの周速度R3の、前記第2冷却ドラムの周速度R2に対する比R3/R2を1とし、かつポリマーフィルターを押出し機に設置していない方法で得られた離型フィルムは、160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%よりも大きくなり、かつ0.1mm以上の異物個数が100個/m2以上となる。このため、プリント配線基板作成時の配線パターンのずれが大きく、かつ基板表面への傷や打痕も多い。
【0060】
【発明の効果】
本発明のプリント基板製造用離型フィルムは、プリント基板製造時の配線パターンのずれを小さく、プリント基板への打痕や傷を少なくすることができる。
Claims (6)
- ガラス転移温度が130℃以上で、かつ280℃、2.16kg荷重の条件下で測定したメルトインデックスが50g/10分以下である脂環式構造含有重合体樹脂からなる層を少なくとも1層有し、0.1mm以上の異物個数が100個/m2以下で、かつ160℃で1時間処理した時の熱収縮率が2%以下であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルム。
- 160℃で60分処理した時の脱ガス量が1重量%以下である請求項1記載のプリント基板製造用離型フィルム。
- 厚さむらが±10%以下の請求項1又は2記載のプリント基板製造用離型フィルム。
- 溶融押出成形によって成形されたものである請求項1乃至3のいずれかに記載のプリント基板製造用離型フィルム。
- 押出機から押出されたシート状溶融脂環式構造含有重合体樹脂を、第1冷却ドラム、第2冷却ドラム及び第3冷却ドラムの3本の冷却ドラムに順に外接させて移送する工程を有し、
第2冷却ドラムの周速度R2に対する第3冷却ドラムの周速度R3の比R3/R2が0.999未満、0.990以上であることを特徴とするプリント基板製造用離型フィルムの製造方法。 - 第1冷却ドラムの周速度R1に対するR2の比R2/R1が1.010未満、0.990以上であることを特徴とする請求項5記載のプリント基板製造用離型フィルムの製造方法。
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