JP2004116919A - 車輌塗装部の乾燥装置及び乾燥方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】車輌の塗装部を乾燥する場合、上記塗装部を容易に高品質で、しかも速く乾燥することができ、従来よりも構成が簡素である車輌塗装部の乾燥装置を提供する。
【解決手段】開口部5を備えた筐体3と、筐体3内部に設けられ、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータ7と、筐体3の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を遠赤外線ヒータ7の近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、開口部5から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能に、筐体3内部に設けられた送風機9と、遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線を開口部5側方向に反射可能に、筐体3内部に設けられた反射板11とを有し、遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線によって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能である車輌塗装部の乾燥装置である。
【選択図】 図2
【解決手段】開口部5を備えた筐体3と、筐体3内部に設けられ、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータ7と、筐体3の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を遠赤外線ヒータ7の近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、開口部5から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能に、筐体3内部に設けられた送風機9と、遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線を開口部5側方向に反射可能に、筐体3内部に設けられた反射板11とを有し、遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線によって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能である車輌塗装部の乾燥装置である。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌の塗装部を乾燥する乾燥装置および乾燥方法に係り、特に、上記塗装部に対してほぼ均等に照射される遠赤外線と上記塗装部へのほぼ均等な送風とによって、上記車輌に塗布された塗装部を乾燥する乾燥装置、乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車輌に対する塗装作業において、上記車輌に塗布された塗料を乾燥させる工程がある。通常、この工程では、上記塗装面(塗装部)に赤外線を照射して上記塗装面を乾燥させる赤外線式乾燥装置や、上記塗装面に灯油やガス等の燃料を燃焼させて得られた温風を送って上記塗装面を乾燥させる温風式乾燥装置が使用され、塗装面を強制的に乾燥されることによって、作業時間の短縮を図っている。
【0003】
また、上記塗装面を乾燥する乾燥装置として、一端面に開口部を有する筐体と、この筐体内に設けられ、上記開口部より塗装面に対して遠赤外線を放射する赤外線放射装置と、上記筐体内の空気を上記開口部を介して上記塗装面に送風する送風機と、この送風機によって上記塗装面に送風された空気のうちの少なくとも一部を、再度、上記筐体内に流入させる循環路と、上記筐体内に外気を導く外気導入路と、上記循環路を経て上記筐体内に再流入する空気の流量を調節する流量調節機構とを備えた乾燥装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−243366号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車輌に塗布された塗膜(塗装部)が乾燥した(塗膜が形成された)状態とは、上記車輌に塗布された塗料中の溶剤(たとえば、キシレン、M.I.B.K・;メチルイソブチルケトン)がほぼ完全に蒸発し、しかも、上記塗料を構成している樹脂の分子が互いに結合した状態をいう。
【0006】
上記乾燥を速く行うには、上記塗膜中の溶剤の温度を速く上げて、上記溶剤の分子の運動を活発にして、上記溶剤を迅速に蒸発させ、また、上記塗料を構成している樹脂の分子を励起させ、上記樹脂の分子同士を互いに速く結合させることが必要である。
【0007】
換言すれば、上記塗膜の乾燥を迅速に行うためには、上記塗膜中の溶剤や樹脂に吸収されやすい波長の遠赤外線(波長が3μm〜10μmの赤外線)を、上記塗膜に照射することが重要である。
【0008】
ここで、上記従来の赤外線式乾燥装置では、一般的に、遠赤外線と共に、遠赤外線よりも短い波長(0.8μm〜3μmの波長)であって、上記溶剤や上記樹脂に吸収されにくい近赤外線も多く照射する構成であり、上記塗膜の乾燥を効率良く行うことができない場合があるという問題がある。
【0009】
また、上記従来の赤外線式乾燥装置では、上記塗膜を速く乾燥させるために、赤外線を上記塗膜に大量に照射すると、上記塗膜の温度が上昇(たとえば100℃以上に上昇)しすぎて、上記塗膜が変質し、乾燥後の塗膜の品質が劣化する場合があるという問題がある。
【0010】
従来の温風式乾燥装置では、上記塗膜を温風のみで暖めるか、または、上記温風に加えて、灯油等の燃焼によって発生する僅かな赤外線を上記塗膜に照射して、上記塗膜を乾燥させるので、上記塗膜が乾燥するために最も必要な遠赤外線が、上記塗膜に対してほとんど照射されず、したがって、上記塗膜の乾燥を効率良く行うことができないという問題がある。
【0011】
また、上記従来の温風式乾燥装置では、ピンホールやブリスターなどの乾燥不良が発生し、塗膜面の品質が劣化する場合がある。
【0012】
ここで、ピンホールとは、上記塗膜中の溶剤の抜気が不十分な状態において、上記塗膜の表面近傍の溶剤のみが蒸発し終え、上記表面近傍に固体部分が形成され、その後、上記塗膜内に残留していた溶剤が上記塗膜表面の固体の部分を破って揮発することにより、上記塗膜表面に形成される空孔を意味する。
【0013】
また、ブリスターとは、上記塗膜内に残留している溶剤と空気中の水分とが、塗膜乾燥後に結合することによって上記塗膜の表面が局所的に膨張する減少をいう。
【0014】
上記特許文献1には、上記塗膜が吸収しやすい波長の遠赤外線を上記塗膜に照射可能であると共に、温風を循環して使用することにより、外気温度が変化しても、ほぼ一定の温度の風を上記塗膜に送風することによって、上記塗膜を効率良く乾燥することができる乾燥装置が示されている。
【0015】
しかし、車輌に塗布された塗膜を迅速に乾燥させるためには、上述のように、上記塗膜の溶剤や樹脂に効率良く吸収される遠赤外線を、上記塗膜に対して効率良く照射することが最も重要であり、上記塗膜に一定温度の空気を送風することは必ずしも重要ではない。
【0016】
また、上記特許文献1の乾燥装置では、一度暖められた空気の一部を循環して上記塗膜に送風しているので、上記送風している空気の温度が上昇し過ぎて、上記塗膜が過熱状態になり、上記塗膜が変質する場合がある。上記塗膜の温度が、上昇し過ぎないようにするためには、オペレータが上記送風する空気の温度を監視し、上記循環する空気の割合をコントロールしなければならず、オペレータの作業が煩雑であり、したがって、品質の良い乾燥した塗膜を容易に得ることができない場合があるという問題がある。
【0017】
また、上記特許文献1の乾燥装置では、一度塗膜面に送風され、上記塗膜内から蒸発した溶剤を含んでいる空気を循環して再び蒸気塗膜に送風するので、この送風される空気内の上記溶剤の蒸気圧は、外気(乾燥装置の外の空気)よりも高く、したがって、上記塗膜から溶剤が蒸発しにくく、上記塗膜の乾燥が遅くなる場合があるという問題がある。
【0018】
さらにまた、上記特許文献1の乾燥装置では、上記循環させる空気の通路や上記循環させる空気の割合を調整するための機構が設けられているので、装置の構成が煩雑であるという問題がある。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車輌の塗装部の乾燥装置において、上記車輌の塗装部を乾燥する場合、上記塗装部を容易に高品質で、しかも速く乾燥することができ、従来よりも構成が簡素である車輌塗装部の乾燥装置および乾燥方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、 開口部を備えた筐体と、上記筐体内部に設けられ、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータと、上記筐体の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を上記遠赤外線ヒータの近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、上記開口部から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能に、上記筐体内部に設けられた送風手段と、上記遠赤外線ヒータが発する遠赤外線のうちで上記開口部側方向とは異なる方向に進行する遠赤外線を上記開口部側方向に反射可能に、上記筐体内部に設けられた反射手段とを有し、上記遠赤外線ヒータが発する遠赤外線のうちで上記開口部側方向に進行する遠赤外線と、上記反射された遠赤外線とによって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能である車輌塗装部の乾燥装置である。
【0021】
請求項2に記載の発明は、 請求項1に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、上記遠赤外線ヒータを点灯して上記塗装部へ遠赤外線を照射し、上記塗装部が所定の温度まで上昇した後に、上記遠赤外線の照射に加えて上記送風手段が送風を開始するように制御する制御手段とを有する車輌塗装部の乾燥装置である。
【0022】
請求項3に記載の発明は、 請求項1または請求項2に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、上記塗装部に対して、上記ほぼ均等な遠赤外線照射と上記ほぼ均等な送風とが可能なように、上記乾燥装置の位置および指向方向を調節自在な調節手段を有する車輌塗装部の乾燥装置である。
【0023】
請求項4に記載の発明は、 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、上記遠赤外線ヒータは、金属パイプで形成された筒状の保持体と、この保持体の長手方向に沿って上記保持体の内部に設けられたコイル状の抵抗線で構成された発熱体と、上記保持体の内部に充填され、上記発熱体を支持するための絶縁物と、遠赤外線の分光放射率を向上させるために、上記保持体の外周面に被覆されたセラミックスとによって構成されている車輌塗装部の乾燥装置である。
【0024】
請求項5に記載の発明は、 乾燥対象である車輌の塗装部での吸収度合いが高い遠赤外線を上記塗装部に対してほぼ均一に照射して上記塗装部を加熱する加熱工程と、上記塗装部を上記遠赤外線で加熱し上記塗装部が所定の温度まで上昇した後、上記塗装部表面近傍における蒸発した溶剤の滞留と、上記塗装部の過熱とを防止するために、上記遠赤外線による加熱に加えて上記塗装部にほぼ均一な風量と温度分布の空気を送風する送風工程とを有する車輌塗装部の乾燥方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係る車輌塗装部の乾燥装置(以下単に「乾燥装置」という。)1の概略構成を示す正面図である。
【0026】
図2は、図1におけるIIA−IIB断面を示す図であり、図3は、図1におけるIIIA−IIIB断面を示す図である。
【0027】
乾燥装置1は、開口部3を備えた筐体5を備え、この筐体3の内部には、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータ7と、上記筐体3の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を上記遠赤外線ヒータ7の近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、上記開口部5から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能な送風手段の例である送風機9とが設けられている。
【0028】
また、上記筐体3の内部には、上記遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線のうちで上記開口部5側方向とは異なる方向に進行する遠赤外線を上記開口部5側方向に反射可能な反射手段の例である反射板11が設けられている。そして、上記遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線のうちで上記開口部3側方向に進行する遠赤外線と、上記反射板11で反射された遠赤外線とによって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能になっている。
【0029】
また、乾燥装置1には、上記遠赤外線ヒータ7を点灯(ON)して上記塗装部へ遠赤外線を照射し、上記塗装部が所定の温度まで上昇した後に、上記遠赤外線の照射に加えて上記送風機9が送風を開始するように制御する制御部(図示せず)が設けられている。
【0030】
また、乾燥装置1には、 上記塗装部に対して、上記ほぼ均等な遠赤外線照射と上記ほぼ均等な送風とが可能なように、上記乾燥装置1の位置および指向方向を調節自在な調節手段13が設けられている。
【0031】
上記乾燥装置1について詳しく説明すると、上記開口部5は、ほぼ長方形に形成され、4つの各コーナーには各面取部5A〜5Dが形成されている。なお、上記面取りに代えて、各コーナーを円弧状に形成してもよい。
【0032】
ここで、説明の便宜を図るために、上記開口部5が形成する平面にほぼ垂直な方向を上記筐体3の奥行き方向とし、この奥行き方向にほぼ直角な方向であって上記開口部5の長手方向を上記筐体3の幅方向とし、上記奥行き方向と上記幅方向とにほぼ直角な方向を上記筐体3の高さ方向とする。
【0033】
上記筐体3の内部には、上記筐体3の幅方向に沿って長く設けられたほぼ円筒状の遠赤外線ヒータ7が適数本(たとえば3本)設けられている。なお、上記各遠赤外線ヒータ7の互いの間隔はほぼ等しく、上記各遠赤外線ヒータ7は、開口部5が形成する平面とほぼ平行な一平面上に配置されている。
【0034】
また、上記開口部5とは反対側に設けられている筐体3の開口部3Aと、上記遠赤外線ヒータ7との間であって、上記筐体3の内部には、上記開口部3Aを介して筐体3の外部から吸入した空気(外気)を、上記開口部5から乾燥装置1の外部に送風するための送風機9が適数(たとえば2個)設けられている。
【0035】
なお、上記送風機9として、たとえば、ローヤル電機株式会社製のファン(型式;T300P749−3TP−B42)が採用されている。なお、上記送風機9は、1台で17m3 /min〜22m3 /minの空気量を送風可能である。
【0036】
また、上記開口部3Aにフィルタを設けてもよい。このフィルタによって、清浄な空気が開口部5から塗膜に送られ、上記塗膜に粉塵等が付着することを未然に防止することができる。
【0037】
筐体3は、上述のように、奥行き方向の一端部に開口部5を備え、この開口部5に対向する他端部側には長方形状の開口部3Aを備えているが、上記開口部3Aをたとえば板状材で塞ぎ、この板状材に複数の貫通孔を設けて上記開口部3Aに代えてもよい。
【0038】
また、上記筐体3の上記奥行き方向に垂直な各平面で、上記筐体3を切断したとすると、上記筐体3の外壁で囲まれる長方形状の部分の面積は、上記開口部3Aと上記送風機9が設けられている箇所との間ではほぼ同一であり、上記送風機9が設けられている箇所と上記開口部5との間では、上記開口部5に近づくにしたがって大きくなるようになっている。なお、上記開口部5の大きさは、たとえば幅方向の寸法が約1000mmで、高さ方向の寸法が約700mmの形成され、上記開口部3Aの大きさは、たとえば幅方向の寸法が約700mmで、高さ方向の寸法が約400mmの形成されている。
【0039】
そして、筐体3が上述のような形状に構成されていることによって、開口部5側の筐体3の側壁の内面には、各斜面3B〜3Eが形成されている。
【0040】
また、開口部5の反対側は、筐体3と開口部3Aとを覆っている直方体形状のカバー部材14が設けられている。なお、このカバー部材14の外壁には、図示しない適数の貫通孔を設けられ、上記送風機9が送風する空気が、上記適数の貫通孔を通って吸入されるようになっている。
【0041】
筐体3内には、円筒状の各遠赤外線ヒータ7に対応する反射板11か適数(たとえば3つ)設けられている。なお、上記各反射板は、互いにほぼ平行で、ほぼ等間隔で、上記各遠赤外線ヒータ7に沿って設けられている。
【0042】
ここで、反射板11の長さ方向(遠赤外線ヒータ7の長さ方向)に垂直な断面は、台形状に形成され、この台形の内部の所定の位置に遠赤外線ヒータ7が配置されている。また、上記台形状の長い下底の部分が開口し、この下底の部分が開口部5側に位置している。すなわち、反射板11は、開口部5とほぼ平行に筐体3の幅方向に長く設けられた反射面11Aであって、筐体3の高さ方向に所定に幅を有する反射面11Aを、遠赤外線ヒータ7と送風機9との間に備えていると共に、高さ方向の各両端部側で、上記反射面11Aと鈍角で交差し、上記反射面11Aの各両端部側から開口部5の方向に所定の長さだけ延出した各反射面11B、11Cを備えている。
【0043】
そして、遠赤外線ヒータ7から放射状に放射される遠赤外線のうち、開口部5以外の方向に照射された遠赤外線が各反射部11A〜11Cで反射され、遠赤外線ヒータ7から反射されない遠赤外線と共に、開口部5を通過して、車輌の塗装部にほぼ均等に照射されるようになっている。
【0044】
各反射板11同士の間には、上記送風機9が送風する風を通過させるための隙間(幅約50mmの隙間)が設けられており、また、反射板11と筐体3の各傾斜部3B、3Dとの間にも、ほぼ同様な隙間が設けられており、上記各隙間を通過する際に、遠赤外線ヒータ7によって、送風機9で送風される風が暖められるようになっている。
【0045】
さらに、反射板11の長さ方向(筐体3の幅方向)の各両端部は、筐体3の各斜面3C、3Eを通過(貫通)し、筐体3の外部に所定の長さだけ延出している。そして、遠赤外線ヒータ7の各両端部も、反射板11の上記延出に伴って、筐体3の外部に所定の長さだけ延出している。
【0046】
そして、上記延出した上記遠赤外線ヒータ7の両端部が、セラミックス21の被覆がされていない部分(図4参照)であるようにすれば、このセラミックス21の被覆がされていない部分が、筐体3の開口部5側から覗けなくなり、上記開口部5側から覗けるのは、遠赤外線を照射可能なセラミックス21が被覆された部分のみになり、したがって、車両の塗装部にほぼ均一に遠赤外線を照射することが可能になる。
【0047】
次に、遠赤外線ヒータ7について説明する。
【0048】
図4は、遠赤外線ヒータ7の概略構成を示す断面図である。
【0049】
遠赤外線ヒータ7は、金属パイプ(インコイルパイプ)で形成された筒状の保持体15と、この保持体15の長手方向に沿って上記保持体15の内部に設けられたコイル状の抵抗線で構成された発熱体17と、上記保持体15の内部に充填され、上記発熱体17を支持するための絶縁物19と、遠赤外線の分光放射率を向上させるために、上記保持体15の外周面に被覆されたセラミックス(たとえば酸化アルミニウム;Al2 O3 )21とによって構成されている。
【0050】
なお、上記絶縁物19は、たとえば粒状のマグネシア(酸化マグネシウム;MgO)で構成され、上記保持体15の内部に充填されて、上記コイル状の発熱体17を固定支持している。また、遠赤外線ヒータ7の両端部側には、上記発熱体17に通電するための各端子T1、T2が設けられており、また、上記保持体15の両端部には、各遮蔽部材23A、23Bが設けられ、上記保持体15の内部に充填された上記絶縁物19が上記保持体15の外部にこぼれ出さないようにしている。
【0051】
そして、発熱体17に通電し発熱体17が発熱すると、この熱が絶縁物19を通過して保持体15に到達し、保持体15の外部にコーティングされたセラミックス21が加熱され、セラミックス21から遠赤外線ヒータ7の外部に、主に3μm〜10μmの波長を具備する遠赤外線が照射(放射)される。
【0052】
なお、上記波長の遠赤外線を効率良く放射するためには、上記セラミックスの21の表面温度が、500℃〜600℃であることが望ましい。
【0053】
上記セラミックス21の表面温度を上記温度にするには、発熱体17に一定の電流を流し続けて一定の熱量を発生させ、発熱体17からセラミックス21に供給される熱量と、セラミックス21が発散する熱量とが互いに等しくなり、平衡状態になってときに、セラミックス21の表面温度が500℃〜600℃になるようにすればよい。
【0054】
さらに、セラミックス21の表面温度を500℃〜600℃まで早く上昇させるのであれば、表面温度が上昇するまでの時間は、発熱体17に大きな電流を流し、表面温度の上昇後は、電流を減少させるようにすればよい。なお、発熱体17に流す電流の大きさは、乾燥装置1の上記制御部(図示せず)で制御されるものとする。
【0055】
セラミックス21を被覆した理由は、上記3μm〜10μmの波長においては、セラミックス21の分光放射率(単色放射率)が高いからである。つまり、上記波長における分光放射率は、一般の金属では、「0.2」程度であるが、セラミックスでは、「0.8」程度の高い値になっているからである。
【0056】
また、ステファンボルツマンの法則によると、セラミックス21の表面から放射される赤外線の総放射量は、セラミックス21表面の絶対温度の4乗に比例するので、セラミックス21の表面温度を高くすれば、それに応じて、セラミックス21表面から放射される赤外線の放射量は増大する。
【0057】
一方、ウィーンンの変位則によると、セラミックス21の表面から放射される赤外線の波長は、セラミックス21の表面温度が上昇するにつれて、短波長側に移行するので、セラミックス21の表面温度を600℃よりも上昇させると、3μm〜10μmの波長の遠赤外線の放射量も増えるが、それ以上に3μm以下の波長の近赤外線の放射量が増える。
【0058】
したがって、車輌の塗膜が吸収しにくい近赤外線の放射量を増やさずに、車輌の塗膜が吸収しやすい波長の遠赤外線を多く放射し、上記塗膜を効率良く乾燥するためには、セラミックス21の表面温度を500℃〜600℃に保つことが望ましい。
【0059】
なお、遠赤外線ヒータ7は、直径が約12mmで、セラミックスの被覆を施した部分の長さが約800mmであり、1本あたりの出力が1.6kWである。また、各遠赤外線ヒータ7は、互いの間隔が約210mmであり、さらに、筐体3の開口部5から筐体3の奥行き方向に約140mm入り込んだ位置に設けられている。
【0060】
次に、乾燥装置1に調節手段13を設けた場合について説明する。
【0061】
図5は、調節手段13を備えた乾燥装置1の概略構成を示す正面図である。
【0062】
図6は、図5におけるVI矢視であり、調節手段13を備えた乾燥装置1の概略構成を示す側面図である。
【0063】
図7は、図5におけるVII矢視であり、調節手段13を備えた乾燥装置1の概略構成を示す平面図である。
【0064】
なお、図5〜図7に示すx方向を左右方向とし、y方向を前後方向とし、z方向を上下方向とする。
【0065】
調節手段13は、「コ」字状のベース部材25を備え、このベース部材25の下面には、適数(たとえば4つ)のキャスター27が設けられ、ベース部材25は、床面GL1上を自在に移動できるようになっている。
【0066】
ベース部材25の上面側の基端部側には、z上方向に長く延出したガイド部材29が一体的に設けられており、このガイド部材29と係合した移動部材31が、z方向に移動自在に設けられている。
【0067】
また、ベース部材25の上方側であって、移動部材31からy方向(ベース部材25の先端部側の方向)に離隔した位置には、伸縮やっとこ(lazy tongs)機構を用いた移動手段33を介して、乾燥装置1の本体部が設けられ、乾燥装置1の本体部と移動部材31との間のy方向の距離を調節自在になっている。
【0068】
また、移動手段33と乾燥装置1のカバー部材14との接合部で、x方向に延びた軸Ax1を中心にして、乾燥装置1の本体部は回動自在になっており、乾燥装置1の筐体3に設けられた開口部5が、車輌の塗装部P1(図6参照)とほぼ平行になるように調節可能になっている。
【0069】
また、調節手段13には、移動部材31と共に乾燥装置1の本体部を上下方向にオペレータが移動する場合、容易に移動できるようにするためのカウンタウエイト35が設けられている。
【0070】
さらに、キャスター27、ガイド部材29と移動部材31との間、乾燥装置1の本体部と移動手段33との旋回部には、それぞれ係止手段(図示せず)が設けられており、塗装部P1に対して、乾燥装置1の本体部を所定の位置に設置した後、上記各係止手段によって、乾燥装置1の本体部が容易に移動し旋回できないようになっており、塗装部P1と乾燥装置1との間の相対的な位置関係と姿勢とを保つことができるようになっている。
【0071】
次に、塗装部P1に塗布された塗膜を、乾燥装置1を用いて乾燥する手順について説明する。
【0072】
調節手段13のベース部材25を移動旋回し、さらに必要に応じて、移動手段33で乾燥装置1の本体部を移動しまた乾燥装置1の本体部を移動手段33に対して軸Ax1を回動中心にして回動して、塗料が塗布された車輌の塗装部P1に対して、乾燥装置1を所定の位置に設置する。
【0073】
具体的には、塗装部P1と、乾燥装置1の開口部5とが互いにほぼ平行であり、塗装部P1と開口部5との距離を400mm〜700mm(好ましくは600mm)に設置する。
【0074】
続いて、乾燥対象である車輌の塗装部P1での吸収度合いが高い遠赤外線を、遠赤外線ヒータ7から上記塗装部P1に対してほぼ均一に照射して上記塗装部P1を加熱する。
【0075】
上記塗装部P1を上記遠赤外線で加熱し上記塗装部P1が所定の温度(たとえば、60℃〜70℃)まで上昇した後(たとえば、上記遠赤外線の照射開始後1分から3分経過後、好ましくは1分30秒から2分経過後)、上記塗装部P1の表面近傍での、蒸発した溶剤の滞留と、上記塗装部P1の過熱(上記塗装部P1が80℃以上になること)とを防止するために、上記遠赤外線による加熱に加えて上記塗装部P1にほぼ均一な風量と温度分布の空気を、送付機9を稼動して送風し、上記塗膜P1を乾燥させる。
【0076】
なお、上記各設定値において、まず上記塗装部P1に遠赤外線のみを照射すると、上記塗装部P1の温度が60℃〜70℃程度まで上昇し、その後送風がされ、上記塗装部P1の温度が80℃以上上昇することがない。また、上記送風における塗装部P1の風速は、0.5m/sec〜2.0m/secの範囲にある。
【0077】
乾燥装置1によれば、遠赤外線ヒータが、塗装部P1の溶剤や樹脂が吸収しやすい遠赤外線を多く照射するので、上記塗装部P1の塗膜の乾燥を効率良く行うことができる。
【0078】
また、乾燥装置1によれば、反射板11の隙間を通り、また筐体3の傾斜部3B〜3Eに沿って、送風機9からの風が塗装部P1の方向に流れる。そして、乾燥装置1の開口部5から上記塗装部P1まで空気が送風される際に、この空気が攪拌されるので、塗装部P1における風速がほぼ均一化される。
【0079】
さらに、乾燥装置1を塗装部P1に対して、上述のようにバランスよく設置し、しかも、塗装部P1の温度が上昇した後に送風するので、上記送風によって、上記塗装部P1の塗膜の過熱を抑制することができ、上記塗膜が変質し乾燥後の塗膜の品質が劣化することを防止することができる。
【0080】
また、乾燥装置1によれば、塗装部P1を乾燥する場合、まず所定時間、塗装部に遠赤外線のみを照射し、塗装部が所定の温度になった後に送風を開始するので、上記遠赤外線のみの照射によって、上記塗装部P1の温度が早く上昇し、また上記塗装部P1が表面のみならず内部から加熱され、上記塗装部P1の表面および内部から溶剤が蒸発する。その後、送風を開始するので、上記塗装部P1の内部に多くの溶剤が残った状態で上記塗装部P1の表面に固体状の膜ができることを防止することができ、上記塗装部P1での、ピンホールやブリスターなどの乾燥不良の発生を抑制することができる。
【0081】
また、乾燥装置1によれば、特許文献1に記載の乾燥装置とは異なり、塗装部P1に送風する空気を循環して使用することはせず、循環する空気よりも温度の低い外気を上記塗装部P1に送風するので、上記塗装部P1に送風する空気の温度が上昇し過ぎて、上記塗膜が過熱状態になることを防止でき、上記塗装部P1が変質することを避けることができる。つまり、上記塗装部P1の温度が、上昇し過ぎることを容易に抑制することができ、品質の良い、乾燥した塗装部P1(塗膜)を容易に得ることができる。
【0082】
また、乾燥装置1によれば、特許文献1に記載の乾燥装置と異なり、塗装部P1に送風する空気を循環して使用することはせず、溶剤の蒸気を含んでいない外気を上記塗装部P1に送風するので、上記塗装部P1からの溶剤が蒸発しやすくなり、塗装部P1の乾燥時間を短縮することができる。
【0083】
さらにまた、乾燥装置1では、上記特許文献1の乾燥装置のように、循環させる空気の通路や上記循環させる空気の割合を調整するための機構が設けられていないので、乾燥装置1の構成を簡素化することができる。
【0084】
また、乾燥装置1を塗装部P1に対して、上述のようにバランスよく設置するので、遠赤外線と送風とが、塗装部P1に対してほぼ均一に行われ、塗装部P1を容易にむらなく高品質でしかも速く乾燥することができる。
【0085】
また、乾燥装置1に設けられている調節手段13を用いて、乾燥装置1の開口部5を、塗装部P1に対して適切な位置に容易に設置することができる。
【0086】
さらに、上述の例では、乾燥装置1の遠赤外線ヒータとして、直径が12mmで長さが800mmで出力が1.6KWのものを3本平行に配置し、風量が17m3 /min〜22m3 /minである送風機を2台使用し、乾燥装置1の開口部5と塗布部P1との間の距離を約600mmに設定して乾燥を行っているが、上記各条件に拘束する必要はない。すなわち、塗装部P1に対して、遠赤外線を大量にしかも均一に照射可能であり、上記塗布部P1の温度を60℃〜70℃の間に保つことができ、しかも、上記塗装部P1における送風時の風速を0.5m/min〜2m/minにすることができるなら、別の条件を採用してもよい。
【0087】
また、上記遠赤外線ヒータ7の代わりに、平面状の遠赤外線セラミックスヒータやハロゲンランプを使用した遠赤外線ヒータを採用してもよい。さらに反射板11を平面状の反射面の組み合わせで構成するのではなく、たとえば反射面の断面形状(反射板の長さ方向に直角な断面の形状)を放物線状等の曲線状にして反射板を形成してもよい。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、車輌の塗装部の乾燥装置において、上記車輌の塗装部を乾燥する場合、上記塗装部を容易に高品質で、しかも速く乾燥することができ、従来よりも構成が簡素である車輌塗装部の乾燥装置および乾燥方法を提供するができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車輌塗装部の乾燥装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1におけるIIA−IIB断面を示す図である。
【図3】図2におけるIIIA−IIIB断面を示す図である。
【図4】遠赤外線ヒータの概略構成を示す断面図である。
【図5】調節手段を備えた乾燥装置の概略構成を示す正面図である。
【図6】図5におけるVI矢視であり、調節手段を備えた乾燥装置の概略構成を示す側面図である。
【図7】図5におけるVII矢視であり、調節手段を備えた乾燥装置の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
1 乾燥装置
3 筐体
5 開口部
7 遠赤外線ヒータ
9 送風機
11 反射板
13 調節手段
15 保持体
17 発熱体
19 絶縁物
21 セラミックス
【発明の属する技術分野】
本発明は、車輌の塗装部を乾燥する乾燥装置および乾燥方法に係り、特に、上記塗装部に対してほぼ均等に照射される遠赤外線と上記塗装部へのほぼ均等な送風とによって、上記車輌に塗布された塗装部を乾燥する乾燥装置、乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車輌に対する塗装作業において、上記車輌に塗布された塗料を乾燥させる工程がある。通常、この工程では、上記塗装面(塗装部)に赤外線を照射して上記塗装面を乾燥させる赤外線式乾燥装置や、上記塗装面に灯油やガス等の燃料を燃焼させて得られた温風を送って上記塗装面を乾燥させる温風式乾燥装置が使用され、塗装面を強制的に乾燥されることによって、作業時間の短縮を図っている。
【0003】
また、上記塗装面を乾燥する乾燥装置として、一端面に開口部を有する筐体と、この筐体内に設けられ、上記開口部より塗装面に対して遠赤外線を放射する赤外線放射装置と、上記筐体内の空気を上記開口部を介して上記塗装面に送風する送風機と、この送風機によって上記塗装面に送風された空気のうちの少なくとも一部を、再度、上記筐体内に流入させる循環路と、上記筐体内に外気を導く外気導入路と、上記循環路を経て上記筐体内に再流入する空気の流量を調節する流量調節機構とを備えた乾燥装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−243366号公報。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車輌に塗布された塗膜(塗装部)が乾燥した(塗膜が形成された)状態とは、上記車輌に塗布された塗料中の溶剤(たとえば、キシレン、M.I.B.K・;メチルイソブチルケトン)がほぼ完全に蒸発し、しかも、上記塗料を構成している樹脂の分子が互いに結合した状態をいう。
【0006】
上記乾燥を速く行うには、上記塗膜中の溶剤の温度を速く上げて、上記溶剤の分子の運動を活発にして、上記溶剤を迅速に蒸発させ、また、上記塗料を構成している樹脂の分子を励起させ、上記樹脂の分子同士を互いに速く結合させることが必要である。
【0007】
換言すれば、上記塗膜の乾燥を迅速に行うためには、上記塗膜中の溶剤や樹脂に吸収されやすい波長の遠赤外線(波長が3μm〜10μmの赤外線)を、上記塗膜に照射することが重要である。
【0008】
ここで、上記従来の赤外線式乾燥装置では、一般的に、遠赤外線と共に、遠赤外線よりも短い波長(0.8μm〜3μmの波長)であって、上記溶剤や上記樹脂に吸収されにくい近赤外線も多く照射する構成であり、上記塗膜の乾燥を効率良く行うことができない場合があるという問題がある。
【0009】
また、上記従来の赤外線式乾燥装置では、上記塗膜を速く乾燥させるために、赤外線を上記塗膜に大量に照射すると、上記塗膜の温度が上昇(たとえば100℃以上に上昇)しすぎて、上記塗膜が変質し、乾燥後の塗膜の品質が劣化する場合があるという問題がある。
【0010】
従来の温風式乾燥装置では、上記塗膜を温風のみで暖めるか、または、上記温風に加えて、灯油等の燃焼によって発生する僅かな赤外線を上記塗膜に照射して、上記塗膜を乾燥させるので、上記塗膜が乾燥するために最も必要な遠赤外線が、上記塗膜に対してほとんど照射されず、したがって、上記塗膜の乾燥を効率良く行うことができないという問題がある。
【0011】
また、上記従来の温風式乾燥装置では、ピンホールやブリスターなどの乾燥不良が発生し、塗膜面の品質が劣化する場合がある。
【0012】
ここで、ピンホールとは、上記塗膜中の溶剤の抜気が不十分な状態において、上記塗膜の表面近傍の溶剤のみが蒸発し終え、上記表面近傍に固体部分が形成され、その後、上記塗膜内に残留していた溶剤が上記塗膜表面の固体の部分を破って揮発することにより、上記塗膜表面に形成される空孔を意味する。
【0013】
また、ブリスターとは、上記塗膜内に残留している溶剤と空気中の水分とが、塗膜乾燥後に結合することによって上記塗膜の表面が局所的に膨張する減少をいう。
【0014】
上記特許文献1には、上記塗膜が吸収しやすい波長の遠赤外線を上記塗膜に照射可能であると共に、温風を循環して使用することにより、外気温度が変化しても、ほぼ一定の温度の風を上記塗膜に送風することによって、上記塗膜を効率良く乾燥することができる乾燥装置が示されている。
【0015】
しかし、車輌に塗布された塗膜を迅速に乾燥させるためには、上述のように、上記塗膜の溶剤や樹脂に効率良く吸収される遠赤外線を、上記塗膜に対して効率良く照射することが最も重要であり、上記塗膜に一定温度の空気を送風することは必ずしも重要ではない。
【0016】
また、上記特許文献1の乾燥装置では、一度暖められた空気の一部を循環して上記塗膜に送風しているので、上記送風している空気の温度が上昇し過ぎて、上記塗膜が過熱状態になり、上記塗膜が変質する場合がある。上記塗膜の温度が、上昇し過ぎないようにするためには、オペレータが上記送風する空気の温度を監視し、上記循環する空気の割合をコントロールしなければならず、オペレータの作業が煩雑であり、したがって、品質の良い乾燥した塗膜を容易に得ることができない場合があるという問題がある。
【0017】
また、上記特許文献1の乾燥装置では、一度塗膜面に送風され、上記塗膜内から蒸発した溶剤を含んでいる空気を循環して再び蒸気塗膜に送風するので、この送風される空気内の上記溶剤の蒸気圧は、外気(乾燥装置の外の空気)よりも高く、したがって、上記塗膜から溶剤が蒸発しにくく、上記塗膜の乾燥が遅くなる場合があるという問題がある。
【0018】
さらにまた、上記特許文献1の乾燥装置では、上記循環させる空気の通路や上記循環させる空気の割合を調整するための機構が設けられているので、装置の構成が煩雑であるという問題がある。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、車輌の塗装部の乾燥装置において、上記車輌の塗装部を乾燥する場合、上記塗装部を容易に高品質で、しかも速く乾燥することができ、従来よりも構成が簡素である車輌塗装部の乾燥装置および乾燥方法を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、 開口部を備えた筐体と、上記筐体内部に設けられ、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータと、上記筐体の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を上記遠赤外線ヒータの近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、上記開口部から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能に、上記筐体内部に設けられた送風手段と、上記遠赤外線ヒータが発する遠赤外線のうちで上記開口部側方向とは異なる方向に進行する遠赤外線を上記開口部側方向に反射可能に、上記筐体内部に設けられた反射手段とを有し、上記遠赤外線ヒータが発する遠赤外線のうちで上記開口部側方向に進行する遠赤外線と、上記反射された遠赤外線とによって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能である車輌塗装部の乾燥装置である。
【0021】
請求項2に記載の発明は、 請求項1に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、上記遠赤外線ヒータを点灯して上記塗装部へ遠赤外線を照射し、上記塗装部が所定の温度まで上昇した後に、上記遠赤外線の照射に加えて上記送風手段が送風を開始するように制御する制御手段とを有する車輌塗装部の乾燥装置である。
【0022】
請求項3に記載の発明は、 請求項1または請求項2に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、上記塗装部に対して、上記ほぼ均等な遠赤外線照射と上記ほぼ均等な送風とが可能なように、上記乾燥装置の位置および指向方向を調節自在な調節手段を有する車輌塗装部の乾燥装置である。
【0023】
請求項4に記載の発明は、 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、上記遠赤外線ヒータは、金属パイプで形成された筒状の保持体と、この保持体の長手方向に沿って上記保持体の内部に設けられたコイル状の抵抗線で構成された発熱体と、上記保持体の内部に充填され、上記発熱体を支持するための絶縁物と、遠赤外線の分光放射率を向上させるために、上記保持体の外周面に被覆されたセラミックスとによって構成されている車輌塗装部の乾燥装置である。
【0024】
請求項5に記載の発明は、 乾燥対象である車輌の塗装部での吸収度合いが高い遠赤外線を上記塗装部に対してほぼ均一に照射して上記塗装部を加熱する加熱工程と、上記塗装部を上記遠赤外線で加熱し上記塗装部が所定の温度まで上昇した後、上記塗装部表面近傍における蒸発した溶剤の滞留と、上記塗装部の過熱とを防止するために、上記遠赤外線による加熱に加えて上記塗装部にほぼ均一な風量と温度分布の空気を送風する送風工程とを有する車輌塗装部の乾燥方法である。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の形態に係る車輌塗装部の乾燥装置(以下単に「乾燥装置」という。)1の概略構成を示す正面図である。
【0026】
図2は、図1におけるIIA−IIB断面を示す図であり、図3は、図1におけるIIIA−IIIB断面を示す図である。
【0027】
乾燥装置1は、開口部3を備えた筐体5を備え、この筐体3の内部には、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータ7と、上記筐体3の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を上記遠赤外線ヒータ7の近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、上記開口部5から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能な送風手段の例である送風機9とが設けられている。
【0028】
また、上記筐体3の内部には、上記遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線のうちで上記開口部5側方向とは異なる方向に進行する遠赤外線を上記開口部5側方向に反射可能な反射手段の例である反射板11が設けられている。そして、上記遠赤外線ヒータ7が発する遠赤外線のうちで上記開口部3側方向に進行する遠赤外線と、上記反射板11で反射された遠赤外線とによって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能になっている。
【0029】
また、乾燥装置1には、上記遠赤外線ヒータ7を点灯(ON)して上記塗装部へ遠赤外線を照射し、上記塗装部が所定の温度まで上昇した後に、上記遠赤外線の照射に加えて上記送風機9が送風を開始するように制御する制御部(図示せず)が設けられている。
【0030】
また、乾燥装置1には、 上記塗装部に対して、上記ほぼ均等な遠赤外線照射と上記ほぼ均等な送風とが可能なように、上記乾燥装置1の位置および指向方向を調節自在な調節手段13が設けられている。
【0031】
上記乾燥装置1について詳しく説明すると、上記開口部5は、ほぼ長方形に形成され、4つの各コーナーには各面取部5A〜5Dが形成されている。なお、上記面取りに代えて、各コーナーを円弧状に形成してもよい。
【0032】
ここで、説明の便宜を図るために、上記開口部5が形成する平面にほぼ垂直な方向を上記筐体3の奥行き方向とし、この奥行き方向にほぼ直角な方向であって上記開口部5の長手方向を上記筐体3の幅方向とし、上記奥行き方向と上記幅方向とにほぼ直角な方向を上記筐体3の高さ方向とする。
【0033】
上記筐体3の内部には、上記筐体3の幅方向に沿って長く設けられたほぼ円筒状の遠赤外線ヒータ7が適数本(たとえば3本)設けられている。なお、上記各遠赤外線ヒータ7の互いの間隔はほぼ等しく、上記各遠赤外線ヒータ7は、開口部5が形成する平面とほぼ平行な一平面上に配置されている。
【0034】
また、上記開口部5とは反対側に設けられている筐体3の開口部3Aと、上記遠赤外線ヒータ7との間であって、上記筐体3の内部には、上記開口部3Aを介して筐体3の外部から吸入した空気(外気)を、上記開口部5から乾燥装置1の外部に送風するための送風機9が適数(たとえば2個)設けられている。
【0035】
なお、上記送風機9として、たとえば、ローヤル電機株式会社製のファン(型式;T300P749−3TP−B42)が採用されている。なお、上記送風機9は、1台で17m3 /min〜22m3 /minの空気量を送風可能である。
【0036】
また、上記開口部3Aにフィルタを設けてもよい。このフィルタによって、清浄な空気が開口部5から塗膜に送られ、上記塗膜に粉塵等が付着することを未然に防止することができる。
【0037】
筐体3は、上述のように、奥行き方向の一端部に開口部5を備え、この開口部5に対向する他端部側には長方形状の開口部3Aを備えているが、上記開口部3Aをたとえば板状材で塞ぎ、この板状材に複数の貫通孔を設けて上記開口部3Aに代えてもよい。
【0038】
また、上記筐体3の上記奥行き方向に垂直な各平面で、上記筐体3を切断したとすると、上記筐体3の外壁で囲まれる長方形状の部分の面積は、上記開口部3Aと上記送風機9が設けられている箇所との間ではほぼ同一であり、上記送風機9が設けられている箇所と上記開口部5との間では、上記開口部5に近づくにしたがって大きくなるようになっている。なお、上記開口部5の大きさは、たとえば幅方向の寸法が約1000mmで、高さ方向の寸法が約700mmの形成され、上記開口部3Aの大きさは、たとえば幅方向の寸法が約700mmで、高さ方向の寸法が約400mmの形成されている。
【0039】
そして、筐体3が上述のような形状に構成されていることによって、開口部5側の筐体3の側壁の内面には、各斜面3B〜3Eが形成されている。
【0040】
また、開口部5の反対側は、筐体3と開口部3Aとを覆っている直方体形状のカバー部材14が設けられている。なお、このカバー部材14の外壁には、図示しない適数の貫通孔を設けられ、上記送風機9が送風する空気が、上記適数の貫通孔を通って吸入されるようになっている。
【0041】
筐体3内には、円筒状の各遠赤外線ヒータ7に対応する反射板11か適数(たとえば3つ)設けられている。なお、上記各反射板は、互いにほぼ平行で、ほぼ等間隔で、上記各遠赤外線ヒータ7に沿って設けられている。
【0042】
ここで、反射板11の長さ方向(遠赤外線ヒータ7の長さ方向)に垂直な断面は、台形状に形成され、この台形の内部の所定の位置に遠赤外線ヒータ7が配置されている。また、上記台形状の長い下底の部分が開口し、この下底の部分が開口部5側に位置している。すなわち、反射板11は、開口部5とほぼ平行に筐体3の幅方向に長く設けられた反射面11Aであって、筐体3の高さ方向に所定に幅を有する反射面11Aを、遠赤外線ヒータ7と送風機9との間に備えていると共に、高さ方向の各両端部側で、上記反射面11Aと鈍角で交差し、上記反射面11Aの各両端部側から開口部5の方向に所定の長さだけ延出した各反射面11B、11Cを備えている。
【0043】
そして、遠赤外線ヒータ7から放射状に放射される遠赤外線のうち、開口部5以外の方向に照射された遠赤外線が各反射部11A〜11Cで反射され、遠赤外線ヒータ7から反射されない遠赤外線と共に、開口部5を通過して、車輌の塗装部にほぼ均等に照射されるようになっている。
【0044】
各反射板11同士の間には、上記送風機9が送風する風を通過させるための隙間(幅約50mmの隙間)が設けられており、また、反射板11と筐体3の各傾斜部3B、3Dとの間にも、ほぼ同様な隙間が設けられており、上記各隙間を通過する際に、遠赤外線ヒータ7によって、送風機9で送風される風が暖められるようになっている。
【0045】
さらに、反射板11の長さ方向(筐体3の幅方向)の各両端部は、筐体3の各斜面3C、3Eを通過(貫通)し、筐体3の外部に所定の長さだけ延出している。そして、遠赤外線ヒータ7の各両端部も、反射板11の上記延出に伴って、筐体3の外部に所定の長さだけ延出している。
【0046】
そして、上記延出した上記遠赤外線ヒータ7の両端部が、セラミックス21の被覆がされていない部分(図4参照)であるようにすれば、このセラミックス21の被覆がされていない部分が、筐体3の開口部5側から覗けなくなり、上記開口部5側から覗けるのは、遠赤外線を照射可能なセラミックス21が被覆された部分のみになり、したがって、車両の塗装部にほぼ均一に遠赤外線を照射することが可能になる。
【0047】
次に、遠赤外線ヒータ7について説明する。
【0048】
図4は、遠赤外線ヒータ7の概略構成を示す断面図である。
【0049】
遠赤外線ヒータ7は、金属パイプ(インコイルパイプ)で形成された筒状の保持体15と、この保持体15の長手方向に沿って上記保持体15の内部に設けられたコイル状の抵抗線で構成された発熱体17と、上記保持体15の内部に充填され、上記発熱体17を支持するための絶縁物19と、遠赤外線の分光放射率を向上させるために、上記保持体15の外周面に被覆されたセラミックス(たとえば酸化アルミニウム;Al2 O3 )21とによって構成されている。
【0050】
なお、上記絶縁物19は、たとえば粒状のマグネシア(酸化マグネシウム;MgO)で構成され、上記保持体15の内部に充填されて、上記コイル状の発熱体17を固定支持している。また、遠赤外線ヒータ7の両端部側には、上記発熱体17に通電するための各端子T1、T2が設けられており、また、上記保持体15の両端部には、各遮蔽部材23A、23Bが設けられ、上記保持体15の内部に充填された上記絶縁物19が上記保持体15の外部にこぼれ出さないようにしている。
【0051】
そして、発熱体17に通電し発熱体17が発熱すると、この熱が絶縁物19を通過して保持体15に到達し、保持体15の外部にコーティングされたセラミックス21が加熱され、セラミックス21から遠赤外線ヒータ7の外部に、主に3μm〜10μmの波長を具備する遠赤外線が照射(放射)される。
【0052】
なお、上記波長の遠赤外線を効率良く放射するためには、上記セラミックスの21の表面温度が、500℃〜600℃であることが望ましい。
【0053】
上記セラミックス21の表面温度を上記温度にするには、発熱体17に一定の電流を流し続けて一定の熱量を発生させ、発熱体17からセラミックス21に供給される熱量と、セラミックス21が発散する熱量とが互いに等しくなり、平衡状態になってときに、セラミックス21の表面温度が500℃〜600℃になるようにすればよい。
【0054】
さらに、セラミックス21の表面温度を500℃〜600℃まで早く上昇させるのであれば、表面温度が上昇するまでの時間は、発熱体17に大きな電流を流し、表面温度の上昇後は、電流を減少させるようにすればよい。なお、発熱体17に流す電流の大きさは、乾燥装置1の上記制御部(図示せず)で制御されるものとする。
【0055】
セラミックス21を被覆した理由は、上記3μm〜10μmの波長においては、セラミックス21の分光放射率(単色放射率)が高いからである。つまり、上記波長における分光放射率は、一般の金属では、「0.2」程度であるが、セラミックスでは、「0.8」程度の高い値になっているからである。
【0056】
また、ステファンボルツマンの法則によると、セラミックス21の表面から放射される赤外線の総放射量は、セラミックス21表面の絶対温度の4乗に比例するので、セラミックス21の表面温度を高くすれば、それに応じて、セラミックス21表面から放射される赤外線の放射量は増大する。
【0057】
一方、ウィーンンの変位則によると、セラミックス21の表面から放射される赤外線の波長は、セラミックス21の表面温度が上昇するにつれて、短波長側に移行するので、セラミックス21の表面温度を600℃よりも上昇させると、3μm〜10μmの波長の遠赤外線の放射量も増えるが、それ以上に3μm以下の波長の近赤外線の放射量が増える。
【0058】
したがって、車輌の塗膜が吸収しにくい近赤外線の放射量を増やさずに、車輌の塗膜が吸収しやすい波長の遠赤外線を多く放射し、上記塗膜を効率良く乾燥するためには、セラミックス21の表面温度を500℃〜600℃に保つことが望ましい。
【0059】
なお、遠赤外線ヒータ7は、直径が約12mmで、セラミックスの被覆を施した部分の長さが約800mmであり、1本あたりの出力が1.6kWである。また、各遠赤外線ヒータ7は、互いの間隔が約210mmであり、さらに、筐体3の開口部5から筐体3の奥行き方向に約140mm入り込んだ位置に設けられている。
【0060】
次に、乾燥装置1に調節手段13を設けた場合について説明する。
【0061】
図5は、調節手段13を備えた乾燥装置1の概略構成を示す正面図である。
【0062】
図6は、図5におけるVI矢視であり、調節手段13を備えた乾燥装置1の概略構成を示す側面図である。
【0063】
図7は、図5におけるVII矢視であり、調節手段13を備えた乾燥装置1の概略構成を示す平面図である。
【0064】
なお、図5〜図7に示すx方向を左右方向とし、y方向を前後方向とし、z方向を上下方向とする。
【0065】
調節手段13は、「コ」字状のベース部材25を備え、このベース部材25の下面には、適数(たとえば4つ)のキャスター27が設けられ、ベース部材25は、床面GL1上を自在に移動できるようになっている。
【0066】
ベース部材25の上面側の基端部側には、z上方向に長く延出したガイド部材29が一体的に設けられており、このガイド部材29と係合した移動部材31が、z方向に移動自在に設けられている。
【0067】
また、ベース部材25の上方側であって、移動部材31からy方向(ベース部材25の先端部側の方向)に離隔した位置には、伸縮やっとこ(lazy tongs)機構を用いた移動手段33を介して、乾燥装置1の本体部が設けられ、乾燥装置1の本体部と移動部材31との間のy方向の距離を調節自在になっている。
【0068】
また、移動手段33と乾燥装置1のカバー部材14との接合部で、x方向に延びた軸Ax1を中心にして、乾燥装置1の本体部は回動自在になっており、乾燥装置1の筐体3に設けられた開口部5が、車輌の塗装部P1(図6参照)とほぼ平行になるように調節可能になっている。
【0069】
また、調節手段13には、移動部材31と共に乾燥装置1の本体部を上下方向にオペレータが移動する場合、容易に移動できるようにするためのカウンタウエイト35が設けられている。
【0070】
さらに、キャスター27、ガイド部材29と移動部材31との間、乾燥装置1の本体部と移動手段33との旋回部には、それぞれ係止手段(図示せず)が設けられており、塗装部P1に対して、乾燥装置1の本体部を所定の位置に設置した後、上記各係止手段によって、乾燥装置1の本体部が容易に移動し旋回できないようになっており、塗装部P1と乾燥装置1との間の相対的な位置関係と姿勢とを保つことができるようになっている。
【0071】
次に、塗装部P1に塗布された塗膜を、乾燥装置1を用いて乾燥する手順について説明する。
【0072】
調節手段13のベース部材25を移動旋回し、さらに必要に応じて、移動手段33で乾燥装置1の本体部を移動しまた乾燥装置1の本体部を移動手段33に対して軸Ax1を回動中心にして回動して、塗料が塗布された車輌の塗装部P1に対して、乾燥装置1を所定の位置に設置する。
【0073】
具体的には、塗装部P1と、乾燥装置1の開口部5とが互いにほぼ平行であり、塗装部P1と開口部5との距離を400mm〜700mm(好ましくは600mm)に設置する。
【0074】
続いて、乾燥対象である車輌の塗装部P1での吸収度合いが高い遠赤外線を、遠赤外線ヒータ7から上記塗装部P1に対してほぼ均一に照射して上記塗装部P1を加熱する。
【0075】
上記塗装部P1を上記遠赤外線で加熱し上記塗装部P1が所定の温度(たとえば、60℃〜70℃)まで上昇した後(たとえば、上記遠赤外線の照射開始後1分から3分経過後、好ましくは1分30秒から2分経過後)、上記塗装部P1の表面近傍での、蒸発した溶剤の滞留と、上記塗装部P1の過熱(上記塗装部P1が80℃以上になること)とを防止するために、上記遠赤外線による加熱に加えて上記塗装部P1にほぼ均一な風量と温度分布の空気を、送付機9を稼動して送風し、上記塗膜P1を乾燥させる。
【0076】
なお、上記各設定値において、まず上記塗装部P1に遠赤外線のみを照射すると、上記塗装部P1の温度が60℃〜70℃程度まで上昇し、その後送風がされ、上記塗装部P1の温度が80℃以上上昇することがない。また、上記送風における塗装部P1の風速は、0.5m/sec〜2.0m/secの範囲にある。
【0077】
乾燥装置1によれば、遠赤外線ヒータが、塗装部P1の溶剤や樹脂が吸収しやすい遠赤外線を多く照射するので、上記塗装部P1の塗膜の乾燥を効率良く行うことができる。
【0078】
また、乾燥装置1によれば、反射板11の隙間を通り、また筐体3の傾斜部3B〜3Eに沿って、送風機9からの風が塗装部P1の方向に流れる。そして、乾燥装置1の開口部5から上記塗装部P1まで空気が送風される際に、この空気が攪拌されるので、塗装部P1における風速がほぼ均一化される。
【0079】
さらに、乾燥装置1を塗装部P1に対して、上述のようにバランスよく設置し、しかも、塗装部P1の温度が上昇した後に送風するので、上記送風によって、上記塗装部P1の塗膜の過熱を抑制することができ、上記塗膜が変質し乾燥後の塗膜の品質が劣化することを防止することができる。
【0080】
また、乾燥装置1によれば、塗装部P1を乾燥する場合、まず所定時間、塗装部に遠赤外線のみを照射し、塗装部が所定の温度になった後に送風を開始するので、上記遠赤外線のみの照射によって、上記塗装部P1の温度が早く上昇し、また上記塗装部P1が表面のみならず内部から加熱され、上記塗装部P1の表面および内部から溶剤が蒸発する。その後、送風を開始するので、上記塗装部P1の内部に多くの溶剤が残った状態で上記塗装部P1の表面に固体状の膜ができることを防止することができ、上記塗装部P1での、ピンホールやブリスターなどの乾燥不良の発生を抑制することができる。
【0081】
また、乾燥装置1によれば、特許文献1に記載の乾燥装置とは異なり、塗装部P1に送風する空気を循環して使用することはせず、循環する空気よりも温度の低い外気を上記塗装部P1に送風するので、上記塗装部P1に送風する空気の温度が上昇し過ぎて、上記塗膜が過熱状態になることを防止でき、上記塗装部P1が変質することを避けることができる。つまり、上記塗装部P1の温度が、上昇し過ぎることを容易に抑制することができ、品質の良い、乾燥した塗装部P1(塗膜)を容易に得ることができる。
【0082】
また、乾燥装置1によれば、特許文献1に記載の乾燥装置と異なり、塗装部P1に送風する空気を循環して使用することはせず、溶剤の蒸気を含んでいない外気を上記塗装部P1に送風するので、上記塗装部P1からの溶剤が蒸発しやすくなり、塗装部P1の乾燥時間を短縮することができる。
【0083】
さらにまた、乾燥装置1では、上記特許文献1の乾燥装置のように、循環させる空気の通路や上記循環させる空気の割合を調整するための機構が設けられていないので、乾燥装置1の構成を簡素化することができる。
【0084】
また、乾燥装置1を塗装部P1に対して、上述のようにバランスよく設置するので、遠赤外線と送風とが、塗装部P1に対してほぼ均一に行われ、塗装部P1を容易にむらなく高品質でしかも速く乾燥することができる。
【0085】
また、乾燥装置1に設けられている調節手段13を用いて、乾燥装置1の開口部5を、塗装部P1に対して適切な位置に容易に設置することができる。
【0086】
さらに、上述の例では、乾燥装置1の遠赤外線ヒータとして、直径が12mmで長さが800mmで出力が1.6KWのものを3本平行に配置し、風量が17m3 /min〜22m3 /minである送風機を2台使用し、乾燥装置1の開口部5と塗布部P1との間の距離を約600mmに設定して乾燥を行っているが、上記各条件に拘束する必要はない。すなわち、塗装部P1に対して、遠赤外線を大量にしかも均一に照射可能であり、上記塗布部P1の温度を60℃〜70℃の間に保つことができ、しかも、上記塗装部P1における送風時の風速を0.5m/min〜2m/minにすることができるなら、別の条件を採用してもよい。
【0087】
また、上記遠赤外線ヒータ7の代わりに、平面状の遠赤外線セラミックスヒータやハロゲンランプを使用した遠赤外線ヒータを採用してもよい。さらに反射板11を平面状の反射面の組み合わせで構成するのではなく、たとえば反射面の断面形状(反射板の長さ方向に直角な断面の形状)を放物線状等の曲線状にして反射板を形成してもよい。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、車輌の塗装部の乾燥装置において、上記車輌の塗装部を乾燥する場合、上記塗装部を容易に高品質で、しかも速く乾燥することができ、従来よりも構成が簡素である車輌塗装部の乾燥装置および乾燥方法を提供するができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車輌塗装部の乾燥装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1におけるIIA−IIB断面を示す図である。
【図3】図2におけるIIIA−IIIB断面を示す図である。
【図4】遠赤外線ヒータの概略構成を示す断面図である。
【図5】調節手段を備えた乾燥装置の概略構成を示す正面図である。
【図6】図5におけるVI矢視であり、調節手段を備えた乾燥装置の概略構成を示す側面図である。
【図7】図5におけるVII矢視であり、調節手段を備えた乾燥装置の概略構成を示す平面図である。
【符号の説明】
1 乾燥装置
3 筐体
5 開口部
7 遠赤外線ヒータ
9 送風機
11 反射板
13 調節手段
15 保持体
17 発熱体
19 絶縁物
21 セラミックス
Claims (5)
- 開口部を備えた筐体と;
上記筐体内部に設けられ、乾燥対象である車輌の塗装部へ、遠赤外線を照射可能な遠赤外線ヒータと;
上記筐体の外部から空気を吸入し、この吸入した空気を上記遠赤外線ヒータの近傍を通過させて暖め、この暖められた空気を、上記開口部から上記塗装部へ、ほぼ均等な風量と温度分布とで送風可能に、上記筐体内部に設けられた送風手段と;
上記遠赤外線ヒータが発する遠赤外線のうちで上記開口部側方向とは異なる方向に進行する遠赤外線を上記開口部側方向に反射可能に、上記筐体内部に設けられた反射手段と;
を有し、上記遠赤外線ヒータが発する遠赤外線のうちで上記開口部側方向に進行する遠赤外線と、上記反射された遠赤外線とによって、上記塗装部をほぼ均等に照射可能であることを特徴とする車輌塗装部の乾燥装置。 - 請求項1に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、
上記遠赤外線ヒータを点灯して上記塗装部へ遠赤外線を照射し、上記塗装部が所定の温度まで上昇した後に、上記遠赤外線の照射に加えて上記送風手段が送風を開始するように制御する制御手段と;
を有することを特徴とする車輌塗装部の乾燥装置。 - 請求項1または請求項2に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、
上記塗装部に対して、上記ほぼ均等な遠赤外線照射と上記ほぼ均等な送風とが可能なように、上記乾燥装置の位置および指向方向を調節自在な調節手段を有することを特徴とする車輌塗装部の乾燥装置。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の車輌塗装部の乾燥装置において、
上記遠赤外線ヒータは、金属パイプで形成された筒状の保持体と、この保持体の長手方向に沿って上記保持体の内部に設けられたコイル状の抵抗線で構成された発熱体と、上記保持体の内部に充填され、上記発熱体を支持するための絶縁物と、遠赤外線の分光放射率を向上させるために、上記保持体の外周面に被覆されたセラミックスとによって構成されていることを特徴とする車輌塗装部の乾燥装置。 - 乾燥対象である車輌の塗装部での吸収度合いが高い遠赤外線を上記塗装部に対してほぼ均一に照射して上記塗装部を加熱する加熱工程と;
上記塗装部を上記遠赤外線で加熱し上記塗装部が所定の温度まで上昇した後、上記塗装部表面近傍における蒸発した溶剤の滞留と、上記塗装部の過熱とを防止するために、上記遠赤外線による加熱に加えて上記塗装部にほぼ均一な風量と温度分布の空気を送風する送風工程と;
を有することを特徴とする車輌塗装部の乾燥方法。
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JP2008309366A (ja) * | 2007-06-13 | 2008-12-25 | Ketaka Electric Co Ltd | 乾燥装置 |
JP2011194281A (ja) * | 2010-03-17 | 2011-10-06 | Asmo Co Ltd | 静電粉体塗装装置、静電粉体塗装方法及び電機子部品の製造方法 |
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CN108889581A (zh) * | 2018-07-02 | 2018-11-27 | 广州市朗普光电科技有限公司 | 一种采用光导热能装置的烘干加热设备 |
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2002
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