JP2004116481A - クローズドデッキ型シリンダブロックおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ブロック本体16を高圧鋳造(HPDC)にて成形する。この際、ウォータジャケット部20におけるガスケット面12側の端部に段部26を設けておく。次いで、シリンダボア14a〜14cに挿入されたシリンダスリーブ18a〜18cの外周壁部を摩擦撹拌接合にてシリンダボア14a〜14cの内周壁部にそれぞれ接合する。その後、段部26に載置された閉塞部材22とブロック本体16とを摩擦撹拌接合にて接合し、両部材16、22を継目なく一体的に接合する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロック本体のシリンダボアにシリンダスリーブを挿入することによって構成されるクローズドデッキ型シリンダブロックおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の内燃機関を構成するシリンダブロックの1種として、図10に示すように、ウォータジャケット部1のガスケット面2側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロック3が挙げられる。クローズドデッキ型シリンダブロック3には、ブロック本体4の肉厚が同一であれば、ウォータジャケット部のガスケット面側が開放されているオープンデッキ型シリンダブロックに比して剛性が高いという利点がある。
【0003】
クローズドデッキ型シリンダブロック3の場合、ウォータジャケット部1は、容易に崩壊させることが可能な中子、いわゆる崩壊性中子を用いて、重力鋳造(GDC)や低圧鋳造(LPDC)にて形成される。
【0004】
内燃機関においては、シリンダボア5の内部でピストン(図示せず)が往復動作する。このため、シリンダボア5には、耐摩耗性に優れる素材からなるシリンダスリーブ6、例えば、いわゆるFCスリーブやメッキスリーブ、MMCスリーブ等を挿入し、該シリンダスリーブ6の側周壁部にピストンの側周壁部を摺接させるようにしている。耐摩耗性に優れる他の素材としては、いわゆるハイシリコン系アルミニウムが例示される。
【0005】
このように、シリンダスリーブ6をブロック本体4と別素材とする理由は、ブロック本体4をハイシリコン系アルミニウムで鋳造成形した場合、シリンダボア5に巣穴が形成されるために品質不良の製品が多くなるからである。さらに、ハイシリコン系アルミニウムは切削加工し難いので、機械加工コストが高騰するという不具合を招く。
【0006】
そこで、クローズドデッキ型シリンダブロック3を製造する場合、まず、鋳造用金型によって形成されるキャビティに崩壊性中子やシリンダスリーブ6等を配置しておき、この状態で溶湯をキャビティに注湯して、該溶湯で崩壊性中子やシリンダスリーブ6等を囲繞する。
【0007】
次に、溶湯を冷却固化することによってブロック本体4を設ける。この冷却固化に伴って、シリンダスリーブ6が鋳ぐるまれる。
【0008】
その後、前記崩壊性中子を崩壊させる。この崩壊によって得られた中空部が、ウォータジャケット部1となる。すなわち、この場合、ウォータジャケット部1は、ブロック本体4に設けられる。
【0009】
さて、近年では、地球温暖化を防止するために、省エネルギの観点から自動車等の燃費を向上させることが希求されている。その方策として、内燃機関等を軽量化することにより、最終製品である自動車を軽量化することが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0010】
【特許文献1】
特開昭59−3142号公報
【特許文献2】
特開昭58−74850号公報
【特許文献3】
特開昭59−79056号公報
【特許文献4】
特開昭60−94230号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
クローズドデッキ型シリンダブロック3を軽量化するためには、該クローズドデッキ型シリンダブロック3の体積を小さくすればよい。しかしながら、上記のようにブロック本体4にウォータジャケット部1を設けた場合、ブロック本体4の肉厚を大きくする必要があるので、クローズドデッキ型シリンダブロック3の体積を小さくすることは困難である。この不都合は、シリンダが複数個設けられた多気筒型であり、かつシリンダボア5間にもウォータジャケット部1が設けられるものにおいて特に顕著となる。
【0012】
肉厚の小さいブロック本体4を得ることが可能な方法としては、高圧鋳造(HPDC)や精密鋳造等が挙げられる。しかしながら、HPDCでは中子を使用するのが著しく困難であるため、クローズドデッキ型シリンダブロック3を容易に鋳造成形することができない。このため、HPDCは、専らオープンデッキ型シリンダブロックを製造するのに採用されている。しかしながら、オープンデッキ型シリンダブロックは、クローズドデッキ型シリンダブロックに比して剛性が小さくなる傾向にある。
【0013】
そこで、HPDCにてオープンデッキ型シリンダブロック用のブロック本体を鋳造成形し、ウォータジャケット部のガスケット面側開口部を閉塞部材で閉塞することも想起される。しかしながら、HPDCにて得られたブロック本体には、閉塞部材を溶接で接合することが困難であるという不具合がある。
【0014】
一方、精密鋳造においては、ウォータジャケット部1の間隔を狭小化しようとすると、高強度かつ排出性が良好な崩壊性中子を使用しなければならないが、このような崩壊性中子は作製することが困難であるという不具合がある。
【0015】
このように、体積が小さいながらも剛性に優れるクローズドデッキ型シリンダブロックを製造することには様々な不具合を伴うため、結局、そのようなクローズドデッキ型シリンダブロックはこれまでのところ実現されていない。
【0016】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、剛性に優れ、しかも、小型かつ軽量で、その上、製造時に崩壊性中子を使用する必要がないので製造コストを低廉化することも可能なクローズドデッキ型シリンダブロックおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、ブロック本体と、前記ブロック本体に設けられたシリンダボア内に挿入されて前記ブロック本体に接合されたシリンダスリーブと、前記ブロック本体に設けられたウォータジャケット部とを備え、前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロックであって、
前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側は、閉塞部材によって閉塞されており、
かつ前記ブロック本体と前記閉塞部材とが継目なく接合されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成とすることにより、ブロック本体と閉塞部材との接合強度が著しく高くなる。このため、剛性に優れたクローズドデッキ型シリンダブロックを構成することができる。部材同士を継目なく接合する手法の好適な例としては、摩擦撹拌接合が挙げられる。
【0019】
この場合、ブロック本体におけるウォータジャケット部のガスケット面側端部に、ウォータジャケット部の幅に比して幅広な段部を設けることが好ましい。この段部に閉塞部材を載置することにより、該閉塞部材を確実に支持することができる。このため、クローズドデッキ型シリンダブロックの剛性が一層向上する。
【0020】
さらに、シリンダボアの内周壁部と前記シリンダスリーブの外周壁部とが継目なく接合された部位が存在することが好ましい。これによりシリンダスリーブがブロック本体に堅牢に接合されるので、剛性の高いクローズドデッキ型シリンダブロックを構成することができる。
【0021】
また、本発明は、シリンダボアおよびウォータジャケット部を有するブロック本体を鋳造成形する工程と、
前記ブロック本体の前記シリンダボアにシリンダスリーブを挿入する工程と、前記ウォータジャケット部における前記ブロック本体のガスケット側を閉塞部材にて閉塞した後、前記閉塞部材と前記ブロック本体とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する工程と、
を有することを特徴とする。
【0022】
なお、ブロック本体を鋳造成形するキャビティに予めシリンダスリーブを配置しておき、ブロック本体を鋳造成形するとともに該ブロック本体にシリンダスリーブが鋳ぐるまれるようにしてもよい。すなわち、本発明は、シリンダボアおよびウォータジャケット部を有するブロック本体を鋳造成形するとともに、前記ブロック本体の前記シリンダボアにシリンダスリーブを鋳ぐるむ工程と、
前記ウォータジャケット部における前記ブロック本体のガスケット側を閉塞部材にて閉塞した後、前記閉塞部材と前記ブロック本体とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する工程と、
を有することを特徴とする。
【0023】
両製造方法においては、閉塞部材とブロック本体とを摩擦撹拌接合するので、両部材を容易に一体化することができる。換言すれば、両部材の間に継目が存在しない。したがって、剛性に優れたクローズドデッキ型シリンダブロックを得ることができる。
【0024】
なお、ウォータジャケット部におけるガスケット面側端部に、閉塞部材を載置するための段部を設ける工程を行うことが好ましい。この段部に閉塞部材を載置した状態で摩擦撹拌接合を行う際、該閉塞部材が段部によって確実に支持されるので、閉塞部材をウォータジャケット部に陥没させることなく容易にブロック本体に接合させることができる。
【0025】
いずれの場合においても、ブロック本体を高圧鋳造(HPDC)にて成形することが好ましい。この鋳造成形方法においては、肉厚の小さいブロック本体を作製することができる。したがって、小型かつ軽量なクローズドデッキ型シリンダブロックを得ることができる。
【0026】
しかも、この製造方法では、ウォータジャケット部を設けるための崩壊性中子を使用する必要がない。このため、クローズドデッキ型シリンダブロックの製造コストを低廉化することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るクローズドデッキ型シリンダブロックおよびその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
本実施の形態に係るクローズドデッキ型シリンダブロック(以下、単にシリンダブロックともいう)10の要部概略縦断面図を図1に示すとともに、上端面であるガスケット面12側の平面図を図2に示す。このシリンダブロック10は、シリンダボア14a〜14cが設けられたアルミニウムからなるブロック本体16と、該シリンダボア14a〜14cにそれぞれ挿入されたシリンダスリーブ18a〜18cと、該シリンダスリーブ18a〜18cを冷却する冷却水が導入されるウォータジャケット部20と、該ウォータジャケット部20のガスケット面12側を閉塞する閉塞部材22とを有する。
【0029】
ブロック本体16のシリンダボア14a〜14cには、環状段部24a〜24cが設けられている。すなわち、シリンダボア14a〜14cにおいては、環状段部24a〜24cが存在する部位から内径が大きくなっている。
【0030】
図3および図4に示すように、ウォータジャケット部20は、シリンダボア14a〜14cから所定間隔で離間し、かつ該シリンダボア14a〜14cを囲繞するように、ブロック本体16に設けられている。
【0031】
そして、ウォータジャケット部20におけるガスケット面12側の端部には、該ウォータジャケット部20の幅に比して幅広の段部26が設けられている。この段部26は、3個の環状段部がその外周部で逐次的に連結した形状で設けられている(図3参照)。
【0032】
このような構成のブロック本体16は、HPDCによって成形されたものである。
【0033】
一方、シリンダスリーブ18a〜18cは、ハイシリコン系アルミニウムからなる円筒体である。これらシリンダスリーブ18a〜18cは、シリンダボア14a〜14cに設けられた環状段部24a〜24cにそれぞれ載置されており、これにより該シリンダスリーブ18a〜18cが支持されている。内燃機関を構成する図示しないピストンの側周壁部は、このように構成されたシリンダスリーブ18a〜18cの内周壁部に摺接する。
【0034】
また、閉塞部材22は、段部26の形状に対応するように、3個の環状部材が直線的に連結された形態で構成されている。この閉塞部材22が段部26に載置されることによって、ウォータジャケット部20のガスケット面12側が閉塞されている。
【0035】
シリンダスリーブ18a〜18cの外周壁部の一部は、シリンダボア14a〜14cの内周壁部に接合されている。その一方で、段部26上に載置された閉塞部材22の外縁部がブロック本体16のガスケット面12と接合されている。以上の接合は、後述するように、摩擦撹拌接合にて行われている。
【0036】
なお、図1および図2においては、便宜上、ブロック本体16と閉塞部材22とを境界線にて明示しているが、実際には、両部材16、22は摩擦撹拌接合によって継目なく接合されている。すなわち、両部材16、22は一体的に接合されており、明確な境界線は存在しない。
【0037】
本実施の形態に係るシリンダブロック10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0038】
上記したように、本実施の形態においては、ブロック本体16がHPDCによって作製されている。この場合、GDPやLPDCにて作製されたブロック本体に比して肉厚が小さくなるので、シリンダブロック10の体積を小さくすることができる。換言すれば、シリンダブロック10を小型化することができるとともに、軽量化することができる。
【0039】
そして、このシリンダブロック10を組み込んで構成された内燃機関を運転する際には、シリンダスリーブ18a〜18c内で図示しないピストンが往復動作し、この際に該ピストンの側周壁部がシリンダスリーブ18a〜18cの内周壁部に摺接する。この摺接に起因する摩擦熱、および内燃機関に導入された燃料と空気との混合ガスが爆発することに伴って発生する熱によって、シリンダスリーブ18a〜18cの温度が上昇する。
【0040】
ここで、上記したように、本実施の形態に係るシリンダブロック10においては、ブロック本体16の肉厚が小さい。したがって、一般的なシリンダブロックに比してウォータジャケット部20がシリンダスリーブ18a〜18cに比較的近接する。このため、シリンダスリーブ18a〜18cの熱がウォータジャケット部20に導入された冷却水に効率よく伝達されるので、シリンダスリーブ18a〜18cを効率的に冷却することができる。結局、シリンダスリーブ18a〜18c、ひいてはシリンダブロック10の温度が過度に上昇することを抑制することができる。
【0041】
また、シリンダスリーブ18a〜18cおよび閉塞部材22とブロック本体とが摩擦撹拌接合によって一体的に接合されている。換言すれば、シリンダスリーブ18a〜18cおよび閉塞部材22とブロック本体16とが強固に接合されているので、剛性に優れたシリンダブロック10を構成することができる。
【0042】
さらに、耐摩耗性に優れるハイシリコン系アルミニウムからなるシリンダスリーブ18a〜18cを使用しているので、シリンダブロック10の耐久性を確保することもできる。しかも、この場合、ブロック本体16を安価なアルミニウムから構成するようにしているので、シリンダブロック10の製造コストが上昇することもない。
【0043】
シリンダブロック10は、以下のようにして製造することができる。
【0044】
まず、HPDCによって、図3に示すブロック本体16を鋳造成形する。HPDCによれば、ウォータジャケット部20および段部26を設けるための崩壊性中子を使用する必要がない。すなわち、本実施の形態によれば、崩壊性中子を作製する煩雑な作業が不要となるとともに、崩壊性中子の作製コストを削減することができるのでシリンダブロック10の製造コストを低廉化することが可能となる利点がある。
【0045】
その一方で、円筒体形状のシリンダスリーブ18a〜18cを押し出し成形や鋳造成形等によって作製する。このシリンダスリーブ18a〜18cを、ブロック本体16のシリンダボア14a〜14cに挿入する。挿入されたシリンダスリーブ18a〜18cの各下端部が最終的に環状段部24a〜24cに載置されると、シリンダスリーブ18a〜18cの上端面とブロック本体16のガスケット面12とが面一となる。
【0046】
次いで、シリンダボア14aの内周壁部と、シリンダスリーブ18aの外周壁部とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する。
【0047】
図5に示すように、摩擦撹拌接合用工具40は、円柱状の第1回転体42と、この第1回転体42の側周壁部に設けられて該第1回転体42とは独立して回転可能な円柱状の第2回転体44と、該第2回転体44の先端部に設けられたプローブ46とを有する。本実施の形態においては、第1回転体42をシリンダスリーブ18aの長手方向に沿って挿入し、プローブ46をシリンダスリーブ18aの内周壁部に当接させる。
【0048】
この状態で第2回転体44を回転付勢すると、プローブ46が内周壁部に摺接することに伴って摩擦熱が発生し、該内周壁部におけるプローブ46の当接箇所が軟化する。その結果、プローブ46の先端部がシリンダスリーブ18aとシリンダボア14aの内周壁部との当接箇所に到達し、該当接箇所においても、シリンダスリーブ18aの外周壁部とシリンダボア14aの内周壁部とが摩擦熱によって軟化する。
【0049】
そして、第1回転体42を内周壁部に沿って回転動作させると、軟化した肉は、塑性流動した後にプローブ46が離間することに伴って固相接合される。これにより、シリンダスリーブ18aの外周壁部とシリンダボア14aの内周壁部とが一体的に固相接合される。
【0050】
第1回転体42が回転動作することに追従してこの現象が逐次的に繰り返されることにより、シリンダスリーブ18aの外周壁部と、シリンダボア14aの内周壁部とが一体的に接合されるに至る。勿論、残余のシリンダスリーブ18b、18cにおいても同様の作業が営まれる。
【0051】
次いで、段部26に閉塞部材22を載置した後、該閉塞部材22とブロック本体16とを接合する。この接合も、摩擦撹拌接合にて行われる。
【0052】
なお、この際には、図6に示す摩擦撹拌接合用工具50が使用される。この摩擦撹拌接合用工具50は、回転体52と、該回転体52に比して小径でかつ先端が円錐状のプローブ54とを備える。
【0053】
この摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54を、ブロック本体16のガスケット面12側の任意の位置に当接させ、回転体52を回転付勢する。この回転付勢に伴って上記と同様にブロック本体16の肉が塑性流動を起こし、その結果、プローブ54がブロック本体16に埋没される。この状態で、図7の矢印Aに沿って摩擦撹拌接合用工具50を変位させれば、閉塞部材22とブロック本体16との肉が摩擦撹拌接合されることに伴い、閉塞部材22の外周縁部とブロック本体16とが接合される。次いで、図8の矢印B、CおよびDに沿って摩擦撹拌接合用工具50を変位させることにより、閉塞部材22の内周縁部とブロック本体16とを接合する。この場合、段部26の深さを小さくすることができるという利点がある。
【0054】
以上の摩擦撹拌接合が遂行される最中、シリンダスリーブ18a〜18cが環状段部24a〜24cに載置されているので、該シリンダスリーブ18a〜18cが堅牢に支持されている。また、閉塞部材22も段部26に載置されることによって該段部26に堅牢に支持される。このため、摩擦撹拌接合を容易に遂行することができる。
【0055】
このように、本実施の形態においては、シリンダスリーブ18a〜18cとブロック本体16、および閉塞部材22とブロック本体16とを接合する手段として、摩擦撹拌接合を採用している。このため、ブロック本体16とシリンダスリーブ18a〜18cとの一部、およびブロック本体16と閉塞部材22とを継目なく一体的に接合することができるので、剛性に優れたシリンダブロック10を構成することができる。
【0056】
しかも、摩擦撹拌接合によれば、溶接し難い素材からなる部材同士であっても比較的容易に接合することができる。したがって、ブロック本体16がHPDCによって作製されたものである本実施の形態においても、シリンダスリーブ18a〜18c、閉塞部材22をブロック本体16に容易に接合することができる。このため、肉厚の一層小さいシリンダブロック10を構成することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、3気筒のシリンダブロック10を例示して説明したが、気筒数は特にこれに限定されるものではない。例えば、単気筒のシリンダブロックであってもよいし、4気筒のシリンダブロックであってもよい。
【0058】
そして、この場合、ブロック本体16を鋳造成形した後にシリンダスリーブ18a〜18cをシリンダボア14a〜14cに挿入するようにしているが、ブロック本体16を鋳造成形するキャビティにシリンダスリーブ18a〜18cを予め配置した後に前記キャビティに溶湯を導入し、ブロック本体16を鋳造成形するようにしてもよい。この場合、シリンダスリーブ18a〜18cは、鋳ぐるまれる。
【0059】
また、上記した実施の形態では、シリンダスリーブ18a〜18cを載置する載置部として環状段部24a〜24cを設けるようにしているが、ブロック本体に設けられたジャーナル部を載置部とするようにしてもよい。または、環状段部24a〜24cを設けず、換言すれば、シリンダスリーブ18a〜18cを載置することなくシリンダブロック10を構成するようにしてもよい。
【0060】
さらに、図9に示すように、プローブ60の直径が大きな摩擦撹拌接合工具62を使用して、閉塞部材22の外周縁部および内周縁部とブロック本体16とを同時に接合するようにしてもよい。この場合、プローブ60の全体が挿入されるように、段部26の深さを大きくすればよい。
【0061】
さらにまた、閉塞部材22は、3個の環状部材を個別に作製した後、該環状部材の端部の一部を切り欠いて段部26に載置し、端部同士を摩擦撹拌接合にて接合するようにしてもよい。勿論、切り欠かれた端部同士を予め接合した後に段部26に載置するようにしてもよい。
【0062】
そして、シリンダスリーブ18a〜18cは、ハイシリコン系アルミニウムからなるものに特に限定されるものではない。例えば、その他のアルミニウム合金からなるものであってもよいし、アルミニウムからなるものであってもよい。別の好適な例としては、マグネシウムまたはマグネシウム合金からなるシリンダスリーブや、MMCスリーブ等を挙げることができる。
【0063】
一方、ブロック本体16は、アルミニウムからなるものに限定されるものではなく、マグネシウムまたはマグネシウム合金等、他の素材からなるものであってもよい。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るクローズドデッキ型シリンダブロックによれば、ウォータジャケット部におけるブロック本体ガスケット面側を閉塞部材で閉塞し、かつ該閉塞部材とブロック本体とを継目なく一体的に接合するようにしている。このため、剛性に優れたクローズドデッキ型シリンダブロックを構成することができる。
【0065】
また、本発明に係るクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法によれば、閉塞部材とブロック本体とを摩擦撹拌接合にて接合するので、両部材の間に継目が存在しない。すなわち、両部材を一体的に接合することができるので、剛性に優れたクローズドデッキ型シリンダブロックを得ることができる。
【0066】
この製造方法において、ブロック本体を高圧鋳造(HPDC)にて成形することによって、ブロック本体の肉厚を小さくすることができる。すなわち、この場合、小型かつ軽量なクローズドデッキ型シリンダブロックを得ることができる。
【0067】
しかも、この場合、ウォータジャケット部を設けるための崩壊性中子を使用する必要がないので、クローズドデッキ型シリンダブロックの製造コストを低廉化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係るシリンダブロックの要部概略縦断面図である。
【図2】図1のシリンダブロックにおけるガスケット面側からの平面図である。
【図3】図1のシリンダブロックを構成するブロック本体の要部概略縦断面図である。
【図4】図2のブロック本体におけるガスケット面側からの平面図である。
【図5】シリンダスリーブの外周壁部をシリンダボアの内周壁部に摩擦撹拌接合にて接合する状態を示す要部概略縦断面図である。
【図6】閉塞部材とブロック本体とを摩擦撹拌接合するための摩擦撹拌接合用工具の概略全体斜視図である。
【図7】閉塞部材の外周縁部をブロック本体に接合する際の摩擦撹拌接合用工具の変位方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。
【図8】閉塞部材の内周縁部をブロック本体に接合する際の摩擦撹拌接合用工具の変位方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。
【図9】閉塞部材の外周縁部および内周縁部を摩擦撹拌接合にてブロック本体に同時に接合する状態を示す要部概略縦断面図である。
【図10】一般的なクローズドデッキ型シリンダブロックの要部概略縦断面図である。
【符号の説明】
1、20…ウォータジャケット部 2、12…ガスケット面
3、10…クローズドデッキ型シリンダブロック(シリンダブロック)
4、16…ブロック本体
6、18a〜18c…シリンダスリーブ
14a〜14c…シリンダボア 22…閉塞部材
24a〜24c…環状段部 26…段部
40、50、62…摩擦撹拌接合用工具
42、44、52…回転体
46、54、60…プローブ
Claims (7)
- ブロック本体と、前記ブロック本体に設けられたシリンダボア内に挿入されて前記ブロック本体に接合されたシリンダスリーブと、前記ブロック本体に設けられたウォータジャケット部とを備え、前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロックであって、
前記ウォータジャケット部の前記ブロック本体におけるガスケット面側は、閉塞部材によって閉塞されており、
かつ前記ブロック本体と前記閉塞部材とが継目なく接合されていることを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。 - 請求項1記載のクローズドデッキ型シリンダブロックにおいて、前記ウォータジャケット部のガスケット面側端部に該ウォータジャケット部の幅に比して幅広な段部が設けられており、前記閉塞部材は、前記段部に載置されていることを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。
- 請求項1または2記載のクローズドデッキ型シリンダブロックにおいて、前記シリンダボアの内周壁部と前記シリンダスリーブの外周壁部とが継目なく接合された部位が存在することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロック。
- シリンダボアおよびウォータジャケット部を有するブロック本体を鋳造成形する工程と、
前記ブロック本体の前記シリンダボアにシリンダスリーブを挿入する工程と、前記ウォータジャケット部における前記ブロック本体のガスケット側を閉塞部材にて閉塞した後、前記閉塞部材と前記ブロック本体とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する工程と、
を有することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。 - シリンダボアおよびウォータジャケット部を有するブロック本体を鋳造成形するとともに、前記ブロック本体の前記シリンダボアにシリンダスリーブを鋳ぐるむ工程と、
前記ウォータジャケット部における前記ブロック本体のガスケット側を閉塞部材にて閉塞した後、前記閉塞部材と前記ブロック本体とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する工程と、
を有することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。 - 請求項4または5記載の製造方法において、前記ウォータジャケット部における前記ブロック本体のガスケット面側端部に、前記閉塞部材を載置するための段部を設ける工程をさらに有することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。
- 請求項4〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記ブロック本体を高圧鋳造にて成形することを特徴とするクローズドデッキ型シリンダブロックの製造方法。
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