JP2004261813A - 摩擦撹拌接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】例えば、内燃機関のシリンダブロックを構成するブロック本体とシリンダスリーブとを容易に接合することができる摩擦撹拌接合方法を提供する。
【解決手段】シリンダスリーブ30aの内周壁部には、テーパ状に縮径したテーパ部38を有する縮径部32が設けられている。摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54は、ブロック本体10の連通穴部18に挿入されたシリンダスリーブ30aの縮径部32におけるテーパ部38に挿入された後、該テーパ部38を介して周回動作される。これに伴い、シリンダスリーブ30aの円筒体部34aの外周壁と、連通穴部18における第1環状切欠部14の内周壁部とが互いに摩擦撹拌接合される。
【選択図】図5
【解決手段】シリンダスリーブ30aの内周壁部には、テーパ状に縮径したテーパ部38を有する縮径部32が設けられている。摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54は、ブロック本体10の連通穴部18に挿入されたシリンダスリーブ30aの縮径部32におけるテーパ部38に挿入された後、該テーパ部38を介して周回動作される。これに伴い、シリンダスリーブ30aの円筒体部34aの外周壁と、連通穴部18における第1環状切欠部14の内周壁部とが互いに摩擦撹拌接合される。
【選択図】図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1の部材に設けられた挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを互いに接合するための摩擦撹拌接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の内燃機関を構成するシリンダブロックの1種として、図13に示すように、ウォータジャケット部1のガスケット面2側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロック3が挙げられる。クローズドデッキ型シリンダブロック3には、ブロック本体4の肉厚が同一であれば、ウォータジャケット部のガスケット面側が開放されているオープンデッキ型シリンダブロックに比して剛性が高いという利点がある。
【0003】
クローズドデッキ型シリンダブロック3の場合、ウォータジャケット部1は、容易に崩壊させることが可能な中子、いわゆる崩壊性中子を用いて、重力鋳造(GDC)や低圧鋳造(LPDC)にて形成される。
【0004】
その一方で、内燃機関においては、ボア穴5の内部でピストン(図示せず)が往復動作する。このため、ボア穴5には、耐摩耗性に優れる素材からなるシリンダスリーブ6、例えば、いわゆるFCスリーブやメッキスリーブ、MMCスリーブ等を挿入し、該シリンダスリーブ6の側周壁部にピストンの側周壁部を摺接させるようにしている。耐摩耗性に優れる他の素材としては、いわゆるハイシリコン系アルミニウムが例示される。
【0005】
このように、シリンダスリーブ6をブロック本体4と別素材とする理由は、ブロック本体4をハイシリコン系アルミニウムで鋳造成形した場合、ボア穴5に巣穴が形成されるために品質不良の製品が多くなるからである。さらに、ハイシリコン系アルミニウムは切削加工し難いので、機械加工コストが高騰するという不具合を招く。
【0006】
そこで、クローズドデッキ型シリンダブロック3を製造する場合、まず、鋳造用金型によって形成されるキャビティに崩壊性中子やシリンダスリーブ6等を配置しておき、この状態で溶湯をキャビティに注湯して、該溶湯で崩壊性中子やシリンダスリーブ6等を囲繞する。
【0007】
次に、溶湯を冷却固化することによってブロック本体4を設ける。この冷却固化に伴って、シリンダスリーブ6が鋳込まれる。
【0008】
その後、前記崩壊性中子を崩壊させる。この崩壊によって得られた中空部が、ウォータジャケット部1となる。すなわち、この場合、ウォータジャケット部1は、ブロック本体4に設けられる。
【0009】
ところで、近年では、地球温暖化を防止するために、省エネルギの観点から自動車等の燃費を向上させることが希求されている。その方策として、内燃機関等を軽量化することにより、最終製品である自動車を軽量化することが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0010】
内燃機関を軽量化する方策として、ブロック本体とシリンダスリーブとを摩擦撹拌接合にて互いに接合することが想起される。摩擦撹拌接合においては、例えば、高圧鋳造(HPDC)によって作製した肉厚の小さいブロック本体と、シリンダスリーブとを接合することができるので、結局、形状が小さなシリンダブロックを得ることができるからである。
【0011】
しかしながら、一般的なシリンダスリーブは円筒状であり(図13参照)、一方、摩擦撹拌接合用工具は長尺物である。このため、シリンダブロックにおけるボア穴の内周壁部とシリンダスリーブの外周壁とを互いに接合しようとする場合、摩擦撹拌接合用工具を水平方向に向けなければならないが、この状態では、摩擦撹拌接合用工具の後端部がシリンダスリーブに干渉するので、該摩擦撹拌接合用工具をシリンダスリーブの内部に挿入することができないという不具合がある。
【0012】
なお、断面略T字状のT字型部材を板材の端面上に摩擦撹拌接合にて接合する手法としては、特許文献5に提案されているように、接合補助材を使用する方法が知られている。しかしながら、この方法によれば、T字型部材の脚部における摩擦撹拌接合用工具が当接する側の面と板材の端面とを摩擦撹拌接合することは可能であるものの、シリンダスリーブの外周壁とブロック本体のボア穴における内周壁部のように、摩擦撹拌接合用工具が当接しない側の面同士を接合することはできない。
【0013】
このように、シリンダスリーブとブロック本体とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する方法は困難を伴うため、未だ確立されていない。
【0014】
【特許文献1】
特開昭59−3142号公報
【特許文献2】
特開昭58−74850号公報
【特許文献3】
特開昭59−79056号公報
【特許文献4】
特開昭60−94230号公報
【特許文献5】
特開2001−321965号公報(図1、図4)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、第1の部材における挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを確実に接合することができる摩擦撹拌接合方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、第1の部材に設けられた挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを摩擦撹拌接合によって接合する摩擦撹拌接合方法であって、
前記第2の部材の内壁に前記挿入用孔部の開口端部から離間するに従って縮幅されたテーパ部を有する縮幅部を設け、
前記テーパ部に摩擦撹拌接合用工具のプローブを当接させた後、前記摩擦撹拌接合用工具を前記テーパ部に沿って移動させ、
前記プローブの回転動作によって生じる摩擦熱にて前記第2の部材のテーパ部および外壁の各肉と、前記第1の部材における前記挿入用孔部の内壁の肉とを軟化させるとともに撹拌して摩擦撹拌接合し、
前記プローブを前記テーパ部から離脱させた後、前記縮幅部を除去することを特徴とする。
【0017】
この方法においては、第2の部材のテーパ部に摩擦撹拌接合用工具のプローブを当接させて該摩擦撹拌接合用工具を傾斜させる。このため、摩擦撹拌接合用工具が第1の部材に干渉することがない。したがって、摩擦撹拌接合用工具をテーパ部に沿って移動させることにより、第1の部材における挿入用孔部の内壁の肉と、第2の部材の外壁の肉とを容易かつ簡便に接合することができる。
【0018】
そして、この場合、縮幅部を除去するので、第2の部材における中空部を均一幅とすることができる。
【0019】
なお、プローブを挿入用孔部の内壁から離間させた後にテーパ部から離脱させ、この離脱により形成された離脱穴を縮幅部とともに除去することが好ましい。これにより、脱離穴が存在しないので美観と剛性が優れる接合部を得ることができる。
【0020】
第1の部材の好適な例としては、内燃機関のシリンダブロックを構成するブロック本体を挙げることができる。この場合、シリンダボアが挿入用孔部となる。そして、第2の部材の好適な例としては、シリンダスリーブを挙げることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る摩擦撹拌接合方法につき、自動車の内燃機関となるシリンダブロックを構成するシリンダスリーブとブロック本体とを接合する場合を例として説明する。
【0022】
図1は、第1の部材であるブロック本体10の要部概略縦断面図であり、図2は、該ブロック本体10のガスケット面12側からの平面図である。このブロック本体10には、第1環状切欠部14および第2環状切欠部16を有する挿入用孔部としての連通穴部18が設けられており、かつ該連通穴部18内には、壁部20a、20bが突出形成されている。そして、連通穴部18の内周壁部と壁部20a、20bには環状段部22a〜22cがそれぞれ設けられ、かつ連通穴部18のガスケット面12側開口部には、凹部24が設けられている。
【0023】
このブロック本体10は、例えば、アルミニウムの溶湯を使用してのHPDCによって作製することができる。
【0024】
一方、第2の部材であるシリンダスリーブ30aは、図3および図4に示すように、下端部近傍の内周壁部がテーパ状に縮径されることによって設けられた縮径部32(図4参照)を具備する円筒体部34aと、該円筒体部34aの一端部に設けられた大径部36aとを有する。なお、縮径部32の一部であるテーパ部38は、シリンダスリーブ30aの内周が大径部36aから離間するにつれて縮径するように設けられている。
【0025】
このような形状のシリンダスリーブ30aは、例えば、ハイシリコン系アルミニウムからなるワークに対して、押し出し成形や鋳造成形等の公知の成形法を施すことによって作製することができる。
【0026】
さらに、シリンダスリーブ30aと同一構成のシリンダスリーブ30b、30cを作製する。勿論、これらシリンダスリーブ30b、30cも、本実施の形態における第2の部材である。
【0027】
次に、各大径部36a〜36cにおける側周壁部の下方を円周方向に沿って機械加工にて切り欠き、該大径部36a〜36cの下方に環状段部40a〜40cを設ける(図3参照)。その後、大径部36bの一部を直線的に切り欠いて、環状段部40bを露呈する。その一方で、環状段部40a、40cの一部を直線的に切り欠く。
【0028】
次に、ブロック本体10の連通穴部18にシリンダスリーブ30a〜30cを挿入する。挿入されたシリンダスリーブ30a〜30cの各下端部が環状段部22a〜22cに載置され、その一方で、大径部36a〜36cが凹部24に載置されるとともに、大径部36a、36cが環状段部40b上に載置される。この際、環状段部40a、40cが切り欠かれているので、環状段部40a、40cが環状段部40bに干渉することはない。さらに、環状段部40a〜40cの側周壁部が第2環状切欠部16の内周壁部に当接する。
【0029】
この挿入に伴って、第2環状切欠部16の内周壁部と各シリンダスリーブ30a〜30cとの間にクリアランスが形成される。このクリアランスは、シリンダスリーブ30a、30b同士の間、およびシリンダスリーブ30b、30c同士の間に形成されたクリアランスに連通し、これによりウォータジャケット部42が形成される。
【0030】
このように、本実施の形態においては、連通穴部18にシリンダスリーブ30a〜30cを挿入することによってウォータジャケット部42が形成される。すなわち、ブロック本体10にボア穴から離間したウォータジャケット部を設ける必要がない。
【0031】
このため、ブロック本体10を鋳造成型する際、鋳造用金型のキャビティに崩壊性中子を配置する必要はない。すなわち、本実施の形態によれば、崩壊性中子を作製する煩雑な作業が不要となるとともに、崩壊性中子の作製コストを削減することができるのでシリンダブロック60の製造コストを低廉化することができる。
【0032】
次に、第1環状切欠部14の内周壁部および壁部20a、20bと、シリンダスリーブ30a〜30cの外周壁部とを、本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法によって互いに接合する。
【0033】
図5に示すように、摩擦撹拌接合用工具50は、円柱状の回転体52と、該回転体52に比して小径でかつ先端が円錐状のプローブ54とを備える。本実施の形態においては、シリンダスリーブ30aの長手軸方向に対して傾斜した状態で摩擦撹拌接合用工具50をシリンダスリーブ30a内に挿入し、プローブ54をテーパ部38に当接させる。
【0034】
この状態で回転体52を回転付勢すると、プローブ54がテーパ部38に摺接することに伴って摩擦熱が発生し、テーパ部38におけるプローブ54の当接箇所が軟化する。その結果、プローブ54の先端部がシリンダスリーブ30aと第1環状切欠部14の内周壁部との当接箇所に到達し、該当接箇所においても、シリンダスリーブ30aの外周壁部と第1環状切欠部14の内周壁部とが摩擦熱によって軟化する。
【0035】
そして、摩擦撹拌接合用工具50をテーパ部38に沿って旋回動作させると、軟化した肉は、プローブ54にて撹拌されることに伴って塑性流動した後、該プローブ54が離間することに伴って固相接合する。摩擦撹拌接合用工具50が旋回動作されることに追従してこの現象が逐次的に繰り返されることにより、シリンダスリーブ30aの外周壁部と、第1環状切欠部14の内周壁部または壁部20aとが一体的に接合されるに至る。
【0036】
その後、図6に示すように、プローブ54を第1環状切欠部14の内周壁部から離間するように変位させた上で、摩擦撹拌接合用工具50を縮径部32から離脱させる。この離脱に伴い、縮径部32には、離脱穴が形成される。
【0037】
勿論、残余のシリンダスリーブ30b、30cにおいても同様の作業が営まれる。
【0038】
このように、本実施の形態においては、シリンダスリーブ30a〜30cの各内周壁部に縮径部32を設けているので、該縮径部32のテーパ部38に摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54を当接させることができる。このため、摩擦撹拌接合を容易に実施することができる。
【0039】
次に、シリンダスリーブ30a〜30cの各縮径部32を除去する。すなわち、例えば、ドリルによって研削加工を行う等して、シリンダスリーブ30a〜30cの内周を等径とする。これにより、該シリンダスリーブ30a〜30c内でピストンが往復動作することが可能となる。
【0040】
この除去の際には、縮径部32において形成されたプローブ54の離脱穴が形成された箇所も除去される。このため、円筒体部34a〜34cの内周壁部にプローブ54の離脱穴が残留することはない。
【0041】
次に、シリンダスリーブ30a〜30cの大径部36a〜36cとブロック本体10におけるガスケット面12とを接合する。この接合も、摩擦撹拌接合にて行われる。すなわち、摩擦撹拌接合用工具50の回転体52を回転付勢し、プローブ54を摺接させながら大径部36a〜36cおよびブロック本体10の肉を摩擦撹拌接合する。この場合、図7の矢印Aに沿って摩擦撹拌接合用工具50を変位させることによって大径部36a〜36cとガスケット面12(ブロック本体10)とを接合すればよい。
【0042】
この際、図8に拡大して示すように、大径部36a〜36cは、凹部24に載置されていることによって堅牢に支持されている。また、環状段部40a〜40cの側周壁部が第2環状切欠部16の内周壁部に当接しているので、該環状段部40a〜40cの楔作用によって、大径部36a〜36cがブロック本体10から離間し難くなる。このため、ブロック本体10と大径部36a〜36cとが離間することを防止するためのクランプ用治具を特に使用することなく、摩擦撹拌接合を容易に遂行することができる。
【0043】
しかも、この場合、ウォータジャケット部42を閉塞する環状段部40a〜40cが軟化しないので、軟化した肉がウォータジャケット部42に流動することを回避することもできる。
【0044】
次に、大径部36a、36b同士、大径部36b、36c同士を摩擦撹拌接合する。この際には、図9の矢印B、Cに沿って摩擦撹拌接合用工具50を変位させるようにすればよい。この場合においては、シリンダスリーブ30bの環状段部40bにシリンダスリーブ30a、30cの大径部36a、36cが載置されることによって支持されているので、上記と同様、摩擦撹拌接合を容易に遂行することができる。
【0045】
以上の作業によって、シリンダスリーブ30a〜30cとブロック本体10同士、およびシリンダスリーブ30a〜30c同士を一体的に接合することができる。
【0046】
ガスケット面12側において形成されたプローブ54の離脱穴は、図10に示すように、ボルト穴62a〜62hのいずれかとして加工するようにすればよい。例えば、大径部36a〜36cとブロック本体10とを摩擦撹拌接合する際(図8参照)の離脱穴をボルト穴62eとなるようにすればよい。また、大径部36a、36b同士を摩擦撹拌接合する際(図9参照)の離脱穴をボルト穴62fとなるようにし、大径部36b、36c同士を摩擦撹拌接合する際の離脱穴をボルト穴62gとなるようにすればよい。これにより、プローブ54の離脱穴が残留することを回避することができる。
【0047】
以上により、図10および図11に示すシリンダブロック60が得られるに至る。すなわち、互いに異種の金属であるブロック本体10(アルミニウム)と、シリンダスリーブ30a〜30c(ハイシリコン系アルミニウム)とが互いに接合されたシリンダブロック60を構成することができる。なお、このシリンダブロック60は、各大径部36a〜36cが前記凹部24上に載置されることに伴ってウォータジャケット部42のガスケット面12側が大径部36a〜36cで閉塞された、いわゆるクローズドデッキ型シリンダブロックである。
【0048】
ここで、図10および図11においては、便宜上、ブロック本体10と各シリンダスリーブ30a〜30cの大径部36a〜36cとを境界線にて明示しているが、実際には、各部材10、36a〜36c同士は摩擦撹拌接合によって継目なく接合されている。すなわち、各部材10、36a〜36cは一体的に接合されており、視認可能な程度に明確な境界線は存在しない。
【0049】
このシリンダブロック60を構成するブロック本体10は、HPDCにて鋳造成形されているので、肉厚が小さい。しかも、図1から諒解されるように、環状切欠部28とシリンダスリーブ30a〜30cとの間のクリアランス、シリンダスリーブ30a〜30cにおける隣接するもの同士の間のクリアランスがウォータジャケット部42となるので、一般的なシリンダブロック3(図13参照)のように、ウォータジャケット部1をブロック本体4の中空部として設ける必要はない。
【0050】
以上の理由から、ブロック本体10の肉厚を小さくすることができるので、シリンダブロック60の体積を小さくすることができる。換言すれば、シリンダブロック60を小型化することができるとともに、軽量化することができる。
【0051】
このシリンダブロック60においては、耐摩耗性に優れるハイシリコン系アルミニウムからなるシリンダスリーブ30a〜30cを使用しているので、充分な耐久性が確保される。しかも、この場合、ブロック本体10を安価なアルミニウムから構成するようにしているので、シリンダブロック60の製造コストが上昇することがないという利点がある。
【0052】
なお、上記した実施の形態においては、シリンダスリーブ30a〜30cに大径部36a〜36cを設けるようにしているが、シリンダスリーブは、図12に示すように、縮径部32のみを有するものであってもよい。この場合、ウォータジャケット部42のガスケット面12側が閉塞されていないオープンデッキ型シリンダブロックを構成することもできる。勿論、この場合においても、縮径部32は、該シリンダスリーブがブロック本体10に摩擦撹拌接合された後、切削除去される。
【0053】
いずれの場合においても、シリンダスリーブ30a〜30cは、ハイシリコン系アルミニウムからなるものに特に限定されるものではない。例えば、その他のアルミニウム合金からなるものであってもよいし、アルミニウムからなるものであってもよい。別の好適な例としては、マグネシウムまたはマグネシウム合金からなるシリンダスリーブや、MMCスリーブ等を挙げることができる。
【0054】
また、本発明に係る摩擦撹拌接合方法は、ブロック本体とシリンダスリーブとを接合する場合に限定されるものではなく、任意の部材における挿入用孔部の内壁と、該挿入用孔部に挿入された中空な別部材の外壁とを摩擦撹拌接合する場合全てに適用することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る摩擦撹拌接合方法によれば、中空な第2の部材の内壁にテーパ部を設けるようにしている。このため、第1の部材における挿入用孔部の内壁と、該挿入用孔部に挿入された第2の部材の外壁とを、摩擦撹拌用工具を干渉させることなく容易かつ確実に接合することができる。したがって、接合強度に優れた接合部を得ることができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法が遂行される第1の部材であるブロック本体の要部概略縦断面図である。
【図2】図1のブロック本体におけるガスケット面側からの平面図である。
【図3】本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法が遂行される第2の部材であるシリンダスリーブの概略全体斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3のシリンダスリーブの外周壁部を連通穴部の内周壁部に摩擦撹拌接合にて接合する状態を示す要部概略縦断面図である。
【図6】摩擦撹拌接合用工具のプローブを変位させて該プローブを連通穴部の内周壁部から離間させた状態を示す要部概略縦断面図である。
【図7】大径部をブロック本体に接合する際の摩擦撹拌接合用工具の変位方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。
【図8】大径部とブロック本体とを摩擦撹拌接合している状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図9】大径部同士を接合する際の摩擦撹拌接合用工具の変位方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。
【図10】図1のブロック本体と図3のシリンダスリーブとが摩擦撹拌接合されることによって作製されたシリンダブロックのガスケット面側からの平面図である。
【図11】図10のシリンダブロックの要部概略縦断面図である。
【図12】別の形状のシリンダスリーブの要部概略縦断面図である。
【図13】一般的な多気筒クローズドデッキ型シリンダブロックの要部概略縦断面図である。
【符号の説明】
1、42…ウォータジャケット部 2、12…ガスケット面
3、60…シリンダブロック 4、10…ブロック本体
5…ボア穴 6、30a〜30c…シリンダスリーブ
14、16…環状切欠部 18…連通穴部(挿入用孔部)
20a、20b…壁部 22a〜22c…環状段部
24…凹部 32…縮径部
34a〜34c…円筒体部 36a〜36c…大径部
38…テーパ部 40a〜40c…環状段部
50…摩擦撹拌接合用工具 52…回転体
54…プローブ 62a〜62h…ボルト穴
【発明の属する技術分野】
本発明は、第1の部材に設けられた挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを互いに接合するための摩擦撹拌接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の内燃機関を構成するシリンダブロックの1種として、図13に示すように、ウォータジャケット部1のガスケット面2側が閉塞されているクローズドデッキ型シリンダブロック3が挙げられる。クローズドデッキ型シリンダブロック3には、ブロック本体4の肉厚が同一であれば、ウォータジャケット部のガスケット面側が開放されているオープンデッキ型シリンダブロックに比して剛性が高いという利点がある。
【0003】
クローズドデッキ型シリンダブロック3の場合、ウォータジャケット部1は、容易に崩壊させることが可能な中子、いわゆる崩壊性中子を用いて、重力鋳造(GDC)や低圧鋳造(LPDC)にて形成される。
【0004】
その一方で、内燃機関においては、ボア穴5の内部でピストン(図示せず)が往復動作する。このため、ボア穴5には、耐摩耗性に優れる素材からなるシリンダスリーブ6、例えば、いわゆるFCスリーブやメッキスリーブ、MMCスリーブ等を挿入し、該シリンダスリーブ6の側周壁部にピストンの側周壁部を摺接させるようにしている。耐摩耗性に優れる他の素材としては、いわゆるハイシリコン系アルミニウムが例示される。
【0005】
このように、シリンダスリーブ6をブロック本体4と別素材とする理由は、ブロック本体4をハイシリコン系アルミニウムで鋳造成形した場合、ボア穴5に巣穴が形成されるために品質不良の製品が多くなるからである。さらに、ハイシリコン系アルミニウムは切削加工し難いので、機械加工コストが高騰するという不具合を招く。
【0006】
そこで、クローズドデッキ型シリンダブロック3を製造する場合、まず、鋳造用金型によって形成されるキャビティに崩壊性中子やシリンダスリーブ6等を配置しておき、この状態で溶湯をキャビティに注湯して、該溶湯で崩壊性中子やシリンダスリーブ6等を囲繞する。
【0007】
次に、溶湯を冷却固化することによってブロック本体4を設ける。この冷却固化に伴って、シリンダスリーブ6が鋳込まれる。
【0008】
その後、前記崩壊性中子を崩壊させる。この崩壊によって得られた中空部が、ウォータジャケット部1となる。すなわち、この場合、ウォータジャケット部1は、ブロック本体4に設けられる。
【0009】
ところで、近年では、地球温暖化を防止するために、省エネルギの観点から自動車等の燃費を向上させることが希求されている。その方策として、内燃機関等を軽量化することにより、最終製品である自動車を軽量化することが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0010】
内燃機関を軽量化する方策として、ブロック本体とシリンダスリーブとを摩擦撹拌接合にて互いに接合することが想起される。摩擦撹拌接合においては、例えば、高圧鋳造(HPDC)によって作製した肉厚の小さいブロック本体と、シリンダスリーブとを接合することができるので、結局、形状が小さなシリンダブロックを得ることができるからである。
【0011】
しかしながら、一般的なシリンダスリーブは円筒状であり(図13参照)、一方、摩擦撹拌接合用工具は長尺物である。このため、シリンダブロックにおけるボア穴の内周壁部とシリンダスリーブの外周壁とを互いに接合しようとする場合、摩擦撹拌接合用工具を水平方向に向けなければならないが、この状態では、摩擦撹拌接合用工具の後端部がシリンダスリーブに干渉するので、該摩擦撹拌接合用工具をシリンダスリーブの内部に挿入することができないという不具合がある。
【0012】
なお、断面略T字状のT字型部材を板材の端面上に摩擦撹拌接合にて接合する手法としては、特許文献5に提案されているように、接合補助材を使用する方法が知られている。しかしながら、この方法によれば、T字型部材の脚部における摩擦撹拌接合用工具が当接する側の面と板材の端面とを摩擦撹拌接合することは可能であるものの、シリンダスリーブの外周壁とブロック本体のボア穴における内周壁部のように、摩擦撹拌接合用工具が当接しない側の面同士を接合することはできない。
【0013】
このように、シリンダスリーブとブロック本体とを摩擦撹拌接合にて互いに接合する方法は困難を伴うため、未だ確立されていない。
【0014】
【特許文献1】
特開昭59−3142号公報
【特許文献2】
特開昭58−74850号公報
【特許文献3】
特開昭59−79056号公報
【特許文献4】
特開昭60−94230号公報
【特許文献5】
特開2001−321965号公報(図1、図4)
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、第1の部材における挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを確実に接合することができる摩擦撹拌接合方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明は、第1の部材に設けられた挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを摩擦撹拌接合によって接合する摩擦撹拌接合方法であって、
前記第2の部材の内壁に前記挿入用孔部の開口端部から離間するに従って縮幅されたテーパ部を有する縮幅部を設け、
前記テーパ部に摩擦撹拌接合用工具のプローブを当接させた後、前記摩擦撹拌接合用工具を前記テーパ部に沿って移動させ、
前記プローブの回転動作によって生じる摩擦熱にて前記第2の部材のテーパ部および外壁の各肉と、前記第1の部材における前記挿入用孔部の内壁の肉とを軟化させるとともに撹拌して摩擦撹拌接合し、
前記プローブを前記テーパ部から離脱させた後、前記縮幅部を除去することを特徴とする。
【0017】
この方法においては、第2の部材のテーパ部に摩擦撹拌接合用工具のプローブを当接させて該摩擦撹拌接合用工具を傾斜させる。このため、摩擦撹拌接合用工具が第1の部材に干渉することがない。したがって、摩擦撹拌接合用工具をテーパ部に沿って移動させることにより、第1の部材における挿入用孔部の内壁の肉と、第2の部材の外壁の肉とを容易かつ簡便に接合することができる。
【0018】
そして、この場合、縮幅部を除去するので、第2の部材における中空部を均一幅とすることができる。
【0019】
なお、プローブを挿入用孔部の内壁から離間させた後にテーパ部から離脱させ、この離脱により形成された離脱穴を縮幅部とともに除去することが好ましい。これにより、脱離穴が存在しないので美観と剛性が優れる接合部を得ることができる。
【0020】
第1の部材の好適な例としては、内燃機関のシリンダブロックを構成するブロック本体を挙げることができる。この場合、シリンダボアが挿入用孔部となる。そして、第2の部材の好適な例としては、シリンダスリーブを挙げることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る摩擦撹拌接合方法につき、自動車の内燃機関となるシリンダブロックを構成するシリンダスリーブとブロック本体とを接合する場合を例として説明する。
【0022】
図1は、第1の部材であるブロック本体10の要部概略縦断面図であり、図2は、該ブロック本体10のガスケット面12側からの平面図である。このブロック本体10には、第1環状切欠部14および第2環状切欠部16を有する挿入用孔部としての連通穴部18が設けられており、かつ該連通穴部18内には、壁部20a、20bが突出形成されている。そして、連通穴部18の内周壁部と壁部20a、20bには環状段部22a〜22cがそれぞれ設けられ、かつ連通穴部18のガスケット面12側開口部には、凹部24が設けられている。
【0023】
このブロック本体10は、例えば、アルミニウムの溶湯を使用してのHPDCによって作製することができる。
【0024】
一方、第2の部材であるシリンダスリーブ30aは、図3および図4に示すように、下端部近傍の内周壁部がテーパ状に縮径されることによって設けられた縮径部32(図4参照)を具備する円筒体部34aと、該円筒体部34aの一端部に設けられた大径部36aとを有する。なお、縮径部32の一部であるテーパ部38は、シリンダスリーブ30aの内周が大径部36aから離間するにつれて縮径するように設けられている。
【0025】
このような形状のシリンダスリーブ30aは、例えば、ハイシリコン系アルミニウムからなるワークに対して、押し出し成形や鋳造成形等の公知の成形法を施すことによって作製することができる。
【0026】
さらに、シリンダスリーブ30aと同一構成のシリンダスリーブ30b、30cを作製する。勿論、これらシリンダスリーブ30b、30cも、本実施の形態における第2の部材である。
【0027】
次に、各大径部36a〜36cにおける側周壁部の下方を円周方向に沿って機械加工にて切り欠き、該大径部36a〜36cの下方に環状段部40a〜40cを設ける(図3参照)。その後、大径部36bの一部を直線的に切り欠いて、環状段部40bを露呈する。その一方で、環状段部40a、40cの一部を直線的に切り欠く。
【0028】
次に、ブロック本体10の連通穴部18にシリンダスリーブ30a〜30cを挿入する。挿入されたシリンダスリーブ30a〜30cの各下端部が環状段部22a〜22cに載置され、その一方で、大径部36a〜36cが凹部24に載置されるとともに、大径部36a、36cが環状段部40b上に載置される。この際、環状段部40a、40cが切り欠かれているので、環状段部40a、40cが環状段部40bに干渉することはない。さらに、環状段部40a〜40cの側周壁部が第2環状切欠部16の内周壁部に当接する。
【0029】
この挿入に伴って、第2環状切欠部16の内周壁部と各シリンダスリーブ30a〜30cとの間にクリアランスが形成される。このクリアランスは、シリンダスリーブ30a、30b同士の間、およびシリンダスリーブ30b、30c同士の間に形成されたクリアランスに連通し、これによりウォータジャケット部42が形成される。
【0030】
このように、本実施の形態においては、連通穴部18にシリンダスリーブ30a〜30cを挿入することによってウォータジャケット部42が形成される。すなわち、ブロック本体10にボア穴から離間したウォータジャケット部を設ける必要がない。
【0031】
このため、ブロック本体10を鋳造成型する際、鋳造用金型のキャビティに崩壊性中子を配置する必要はない。すなわち、本実施の形態によれば、崩壊性中子を作製する煩雑な作業が不要となるとともに、崩壊性中子の作製コストを削減することができるのでシリンダブロック60の製造コストを低廉化することができる。
【0032】
次に、第1環状切欠部14の内周壁部および壁部20a、20bと、シリンダスリーブ30a〜30cの外周壁部とを、本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法によって互いに接合する。
【0033】
図5に示すように、摩擦撹拌接合用工具50は、円柱状の回転体52と、該回転体52に比して小径でかつ先端が円錐状のプローブ54とを備える。本実施の形態においては、シリンダスリーブ30aの長手軸方向に対して傾斜した状態で摩擦撹拌接合用工具50をシリンダスリーブ30a内に挿入し、プローブ54をテーパ部38に当接させる。
【0034】
この状態で回転体52を回転付勢すると、プローブ54がテーパ部38に摺接することに伴って摩擦熱が発生し、テーパ部38におけるプローブ54の当接箇所が軟化する。その結果、プローブ54の先端部がシリンダスリーブ30aと第1環状切欠部14の内周壁部との当接箇所に到達し、該当接箇所においても、シリンダスリーブ30aの外周壁部と第1環状切欠部14の内周壁部とが摩擦熱によって軟化する。
【0035】
そして、摩擦撹拌接合用工具50をテーパ部38に沿って旋回動作させると、軟化した肉は、プローブ54にて撹拌されることに伴って塑性流動した後、該プローブ54が離間することに伴って固相接合する。摩擦撹拌接合用工具50が旋回動作されることに追従してこの現象が逐次的に繰り返されることにより、シリンダスリーブ30aの外周壁部と、第1環状切欠部14の内周壁部または壁部20aとが一体的に接合されるに至る。
【0036】
その後、図6に示すように、プローブ54を第1環状切欠部14の内周壁部から離間するように変位させた上で、摩擦撹拌接合用工具50を縮径部32から離脱させる。この離脱に伴い、縮径部32には、離脱穴が形成される。
【0037】
勿論、残余のシリンダスリーブ30b、30cにおいても同様の作業が営まれる。
【0038】
このように、本実施の形態においては、シリンダスリーブ30a〜30cの各内周壁部に縮径部32を設けているので、該縮径部32のテーパ部38に摩擦撹拌接合用工具50のプローブ54を当接させることができる。このため、摩擦撹拌接合を容易に実施することができる。
【0039】
次に、シリンダスリーブ30a〜30cの各縮径部32を除去する。すなわち、例えば、ドリルによって研削加工を行う等して、シリンダスリーブ30a〜30cの内周を等径とする。これにより、該シリンダスリーブ30a〜30c内でピストンが往復動作することが可能となる。
【0040】
この除去の際には、縮径部32において形成されたプローブ54の離脱穴が形成された箇所も除去される。このため、円筒体部34a〜34cの内周壁部にプローブ54の離脱穴が残留することはない。
【0041】
次に、シリンダスリーブ30a〜30cの大径部36a〜36cとブロック本体10におけるガスケット面12とを接合する。この接合も、摩擦撹拌接合にて行われる。すなわち、摩擦撹拌接合用工具50の回転体52を回転付勢し、プローブ54を摺接させながら大径部36a〜36cおよびブロック本体10の肉を摩擦撹拌接合する。この場合、図7の矢印Aに沿って摩擦撹拌接合用工具50を変位させることによって大径部36a〜36cとガスケット面12(ブロック本体10)とを接合すればよい。
【0042】
この際、図8に拡大して示すように、大径部36a〜36cは、凹部24に載置されていることによって堅牢に支持されている。また、環状段部40a〜40cの側周壁部が第2環状切欠部16の内周壁部に当接しているので、該環状段部40a〜40cの楔作用によって、大径部36a〜36cがブロック本体10から離間し難くなる。このため、ブロック本体10と大径部36a〜36cとが離間することを防止するためのクランプ用治具を特に使用することなく、摩擦撹拌接合を容易に遂行することができる。
【0043】
しかも、この場合、ウォータジャケット部42を閉塞する環状段部40a〜40cが軟化しないので、軟化した肉がウォータジャケット部42に流動することを回避することもできる。
【0044】
次に、大径部36a、36b同士、大径部36b、36c同士を摩擦撹拌接合する。この際には、図9の矢印B、Cに沿って摩擦撹拌接合用工具50を変位させるようにすればよい。この場合においては、シリンダスリーブ30bの環状段部40bにシリンダスリーブ30a、30cの大径部36a、36cが載置されることによって支持されているので、上記と同様、摩擦撹拌接合を容易に遂行することができる。
【0045】
以上の作業によって、シリンダスリーブ30a〜30cとブロック本体10同士、およびシリンダスリーブ30a〜30c同士を一体的に接合することができる。
【0046】
ガスケット面12側において形成されたプローブ54の離脱穴は、図10に示すように、ボルト穴62a〜62hのいずれかとして加工するようにすればよい。例えば、大径部36a〜36cとブロック本体10とを摩擦撹拌接合する際(図8参照)の離脱穴をボルト穴62eとなるようにすればよい。また、大径部36a、36b同士を摩擦撹拌接合する際(図9参照)の離脱穴をボルト穴62fとなるようにし、大径部36b、36c同士を摩擦撹拌接合する際の離脱穴をボルト穴62gとなるようにすればよい。これにより、プローブ54の離脱穴が残留することを回避することができる。
【0047】
以上により、図10および図11に示すシリンダブロック60が得られるに至る。すなわち、互いに異種の金属であるブロック本体10(アルミニウム)と、シリンダスリーブ30a〜30c(ハイシリコン系アルミニウム)とが互いに接合されたシリンダブロック60を構成することができる。なお、このシリンダブロック60は、各大径部36a〜36cが前記凹部24上に載置されることに伴ってウォータジャケット部42のガスケット面12側が大径部36a〜36cで閉塞された、いわゆるクローズドデッキ型シリンダブロックである。
【0048】
ここで、図10および図11においては、便宜上、ブロック本体10と各シリンダスリーブ30a〜30cの大径部36a〜36cとを境界線にて明示しているが、実際には、各部材10、36a〜36c同士は摩擦撹拌接合によって継目なく接合されている。すなわち、各部材10、36a〜36cは一体的に接合されており、視認可能な程度に明確な境界線は存在しない。
【0049】
このシリンダブロック60を構成するブロック本体10は、HPDCにて鋳造成形されているので、肉厚が小さい。しかも、図1から諒解されるように、環状切欠部28とシリンダスリーブ30a〜30cとの間のクリアランス、シリンダスリーブ30a〜30cにおける隣接するもの同士の間のクリアランスがウォータジャケット部42となるので、一般的なシリンダブロック3(図13参照)のように、ウォータジャケット部1をブロック本体4の中空部として設ける必要はない。
【0050】
以上の理由から、ブロック本体10の肉厚を小さくすることができるので、シリンダブロック60の体積を小さくすることができる。換言すれば、シリンダブロック60を小型化することができるとともに、軽量化することができる。
【0051】
このシリンダブロック60においては、耐摩耗性に優れるハイシリコン系アルミニウムからなるシリンダスリーブ30a〜30cを使用しているので、充分な耐久性が確保される。しかも、この場合、ブロック本体10を安価なアルミニウムから構成するようにしているので、シリンダブロック60の製造コストが上昇することがないという利点がある。
【0052】
なお、上記した実施の形態においては、シリンダスリーブ30a〜30cに大径部36a〜36cを設けるようにしているが、シリンダスリーブは、図12に示すように、縮径部32のみを有するものであってもよい。この場合、ウォータジャケット部42のガスケット面12側が閉塞されていないオープンデッキ型シリンダブロックを構成することもできる。勿論、この場合においても、縮径部32は、該シリンダスリーブがブロック本体10に摩擦撹拌接合された後、切削除去される。
【0053】
いずれの場合においても、シリンダスリーブ30a〜30cは、ハイシリコン系アルミニウムからなるものに特に限定されるものではない。例えば、その他のアルミニウム合金からなるものであってもよいし、アルミニウムからなるものであってもよい。別の好適な例としては、マグネシウムまたはマグネシウム合金からなるシリンダスリーブや、MMCスリーブ等を挙げることができる。
【0054】
また、本発明に係る摩擦撹拌接合方法は、ブロック本体とシリンダスリーブとを接合する場合に限定されるものではなく、任意の部材における挿入用孔部の内壁と、該挿入用孔部に挿入された中空な別部材の外壁とを摩擦撹拌接合する場合全てに適用することができる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る摩擦撹拌接合方法によれば、中空な第2の部材の内壁にテーパ部を設けるようにしている。このため、第1の部材における挿入用孔部の内壁と、該挿入用孔部に挿入された第2の部材の外壁とを、摩擦撹拌用工具を干渉させることなく容易かつ確実に接合することができる。したがって、接合強度に優れた接合部を得ることができるという効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法が遂行される第1の部材であるブロック本体の要部概略縦断面図である。
【図2】図1のブロック本体におけるガスケット面側からの平面図である。
【図3】本実施の形態に係る摩擦撹拌接合方法が遂行される第2の部材であるシリンダスリーブの概略全体斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図3のシリンダスリーブの外周壁部を連通穴部の内周壁部に摩擦撹拌接合にて接合する状態を示す要部概略縦断面図である。
【図6】摩擦撹拌接合用工具のプローブを変位させて該プローブを連通穴部の内周壁部から離間させた状態を示す要部概略縦断面図である。
【図7】大径部をブロック本体に接合する際の摩擦撹拌接合用工具の変位方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。
【図8】大径部とブロック本体とを摩擦撹拌接合している状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図9】大径部同士を接合する際の摩擦撹拌接合用工具の変位方向を説明するガスケット面側からの平面説明図である。
【図10】図1のブロック本体と図3のシリンダスリーブとが摩擦撹拌接合されることによって作製されたシリンダブロックのガスケット面側からの平面図である。
【図11】図10のシリンダブロックの要部概略縦断面図である。
【図12】別の形状のシリンダスリーブの要部概略縦断面図である。
【図13】一般的な多気筒クローズドデッキ型シリンダブロックの要部概略縦断面図である。
【符号の説明】
1、42…ウォータジャケット部 2、12…ガスケット面
3、60…シリンダブロック 4、10…ブロック本体
5…ボア穴 6、30a〜30c…シリンダスリーブ
14、16…環状切欠部 18…連通穴部(挿入用孔部)
20a、20b…壁部 22a〜22c…環状段部
24…凹部 32…縮径部
34a〜34c…円筒体部 36a〜36c…大径部
38…テーパ部 40a〜40c…環状段部
50…摩擦撹拌接合用工具 52…回転体
54…プローブ 62a〜62h…ボルト穴
Claims (3)
- 第1の部材に設けられた挿入用孔部の内壁と、前記挿入用孔部に挿入された中空な第2の部材の外壁とを摩擦撹拌接合によって接合する摩擦撹拌接合方法であって、
前記第2の部材の内壁に前記挿入用孔部の開口端部から離間するに従って縮幅されたテーパ部を有する縮幅部を設け、
前記テーパ部に摩擦撹拌接合用工具のプローブを当接させた後、前記摩擦撹拌接合用工具を前記テーパ部に沿って移動させ、
前記プローブの回転動作によって生じる摩擦熱にて前記第2の部材のテーパ部および外壁の各肉と、前記第1の部材における前記挿入用孔部の内壁の肉とを軟化させるとともに撹拌して摩擦撹拌接合し、
前記プローブを前記テーパ部から離脱させた後、前記縮幅部を除去することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。 - 請求項1記載の摩擦撹拌接合方法において、前記プローブを前記挿入用孔部の内壁から離間させた後に前記テーパ部から離脱させ、この離脱により形成された離脱穴を前記縮幅部とともに除去することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
- 請求項1または2記載の摩擦撹拌接合方法において、前記第1の部材として内燃機関のシリンダブロックを構成するブロック本体を使用し、前記挿入用孔部としてのシリンダボアに前記第2の部材としてのシリンダスリーブを挿入して前記摩擦撹拌接合を遂行することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
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-
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