JP2004115718A - 近赤外線吸収性樹脂組成物 - Google Patents

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Takahiro Aoyama
青山 孝浩
Nobuhisa Noda
野田 信久
Kenji Shimizu
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Abstract

【課題】近赤外線吸収性色素が劣化することが抑制されて耐久性が向上し、フィルムのヘイズ(濁度)変化が少なく、しかも耐湿熱性と可とう性とを両立することができる近赤外線吸収性塗膜や熱線吸収フィルムを形成する近赤外線吸収性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】780〜1200nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収性色素と、フッ素系重合体とを含んでなる近赤外線吸収性樹脂組成物、好ましくは、上記フッ素系重合体は、フッ素系単量体と炭素数4〜25の炭化水素基を有する単量体とを必須とする単量体成分を重合してなる上記近赤外線吸収性樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、近赤外線吸収性樹脂組成物に関する。より詳しくは、プラズマディスプレイ等における近赤外線吸収層の形成に好適な近赤外線吸収性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近赤外線吸収性樹脂組成物は、熱線である近赤外線を吸収する性質を有するフィルムやコーティング膜を形成することができるものである。このようなフィルムやコーティング膜は、大型の薄型テレビ、薄型ディスプレイ等に用いられるプラズマディスプレイ等の電子機器において広く用いられており、重要な機能を有している。すなわちプラズマディスプレイ等においては、画面から近赤外線が放射されることになることから、これが近赤外線を利用するリモコン機器等の周辺の電子機器に作用して誤作動を起こす原因となる。プラズマディスプレイは、多くの層状の材料により形成されているが、近赤外線を吸収し、かつ可視光線を透過する近赤外線吸収層を近赤外線吸収性樹脂組成物により形成することにより、画面から放射される近赤外線が遮断されることになる。
【0003】
また近赤外線吸収性樹脂組成物から形成されるフィルムやコーティング膜は、熱線を遮蔽して温度上昇を防止する熱線吸収フィルムとして省エネルギーの観点から近年注目されている。例えば、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される熱線吸収フィルムを窓ガラス等に貼り付けたり、2枚のガラスの間に挟み込んだり、また、近赤外線吸収性樹脂組成物をコーティング剤として窓ガラス等に塗布して熱線吸収フィルムを形成させたりする等により、ビルや住宅、車両、アーケード、温室等に使用されている。
【0004】
このように屋内外で使用されるため、有機系色素では、熱線吸収フィルム中で太陽光等により近赤外線吸収性能が次第に失われるために、熱線吸収フィルムの耐候性としては充分ではなく、自然環境における温度差により塗膜に柔軟性がないと塗膜にクラックが生じる問題や、近赤外線吸収性能を持続させるための工夫の余地があった。同様に、プラズマディスプレイ等の電子機器等の用途においても、ディスプレイ前面が80℃以上の高温になることが多く、この条件で塗膜に微小クラックが生じる問題があり、耐湿熱性や可とう性等のフィルムやコーティング膜における基本性能を向上するための工夫の余地があった。
【0005】
このような近赤外線を遮断する技術として、透明基材、紫外線遮蔽層及び熱線遮蔽物質を含む熱線遮蔽層を備えた積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この積層体では、紫外線遮蔽層を熱線遮蔽層よりも光入射側に形成することにより熱線遮蔽層に含まれる熱線遮蔽物質が劣化することを抑制している。しかしながら、熱線遮蔽層自体を工夫することにより、熱線遮蔽物質の劣化を抑制してより簡便にかつ確実に熱線の遮蔽性能を持続させるための工夫の余地があった。
【0006】
ところで、特定構造の末端基を有する側鎖を持つ含フッ素重合体の塗膜を形成せしめる金属表面の防湿防錆方法において、芳香核又はシクロヘキシル環を有する側鎖を持つ含フッ素重合体を用いることが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、ガラス転移温度60℃以下のポリフルオロアルキル基含有共重合体が不燃性の低沸点有機溶媒に溶解されてなる有機溶液により被覆膜を形成せしめる電子部品のコーティング方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。更に、アルキル基の炭素数が4以上の、フッ素を含まないアルキルアクリレート又はメタクリレートを必須構成単位とするアクリル樹脂を、不溶性溶剤に溶解してなる防湿コーティング剤組成物が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、これらは、プラズマディスプレイ等の電子機器における近赤外線吸収層への適用について開示するものではなく、近赤外線吸収性色素と組み合わせた場合の作用効果については検討されていない。したがって、プラズマディスプレイ等の電子機器における近赤外線吸収層に好適に適用することができるようにしたうえで、近赤外線吸収性能を持続させたり、フィルムやコーティング膜における基本性能を向上させたりするための工夫の余地があった。
【0007】
また近赤外線吸収性色素を含有し、紫外線オートフェードメーターによる促進耐候性試験における光照射48時間後の近赤外線吸収能残存率が50%以上である近赤外線吸収性塗膜が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。これは、近赤外線吸収性色素が劣化することを抑制し、優れた耐候性を発揮することができるようにしたものであるが、プラズマディスプレイ等の電子機器における近赤外線吸収層に好適に適用することができるようにしたり、フィルムやコーティング膜における基本性能を向上させたりするための工夫の余地があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2000−177064号公報(第2、3頁)
【特許文献2】
特開昭54−43244号公報(第1、2頁)
【特許文献3】
特許第1675245号明細書(第1頁)
【特許文献4】
特開平1−103682号公報(第1頁)
【特許文献5】
特開2002−249721号公報(第1、2、6頁)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、近赤外線吸収性色素が劣化することが抑制されて耐久性が向上し、フィルムのヘイズ(濁度)変化が少なく、しかも耐湿熱性と可とう性とを両立することができる近赤外線吸収性塗膜や熱線吸収フィルムを形成する近赤外線吸収性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、近赤外線吸収性色素とバインダー樹脂とを含んでなり、プラズマディスプレイ等の電子機器等における近赤外線吸収層に適用することができる近赤外線吸収性樹脂組成物について種々検討するうち、このような近赤外線吸収性樹脂組成物中に含有される水分及び本樹脂組成物からなる塗膜に吸収される水分が近赤外線吸収性色素を劣化させる原因の1つであることに着目し、近赤外線吸収性樹脂組成物中の水の含有量を減少させ、及び本樹脂組成物からなる塗膜に吸収される水分量を低下させると、近赤外線吸収性色素の劣化を抑制することができることを見いだした。そして、フッ素系重合体をバインダー樹脂として用いると、プラズマディスプレイ等の電子機器等における近赤外線吸収層に好適に適用することが可能であり、フッ素系重合体に起因する疎水性により近赤外線吸収性色素の耐久性が向上し、フィルムのヘイズ(濁度)変化が少なく、しかも耐湿熱性と可とう性とを両立することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。本発明においては、「フッ素」により、(1)色素の耐久性向上、すなわち▲1▼吸光度の低下が抑制される、▲2▼塗膜の色彩変化が抑制される、(2)可とう性向上、すなわち耐候試験や湿熱試験後にも塗膜にクラックが起こらないという作用効果が発揮されることとなる。
なお、通常では、バインダー樹脂を疎水性のものとし、近赤外線吸収性色素の耐久性を向上させることと、可とう性を充分なものとすることとは相反することとなるが、本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物は、近赤外線吸収性色素の耐久性が向上すると共に、可とう性も充分なものとすることができるところに特徴があるものである。
またフッ素系重合体が、フッ素系単量体と特定の炭素数の炭化水素基を有する単量体とを必須とする単量体成分を重合してなると、フッ素系単量体により形成される単量体単位に起因して柔軟性が発現し、フッ素系単量体と特定の炭素数の炭化水素基を有する単量体とにより形成される単量体単位が相乗的に疎水性を発現して本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0011】
すなわち本発明は、780〜1200nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収性色素と、フッ素系重合体とを含んでなる近赤外線吸収性樹脂組成物である。
以下に、本発明を詳述する。
【0012】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物は、近赤外線吸収性色素と、フッ素系重合体を必須とするバインダー樹脂とを含んでなるものである。
本発明における近赤外線吸収性色素は、780〜1200nmに極大吸収波長を有する色素であり、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このような色素として、近赤外線の吸収特性が異なる2種以上を併用した場合には、近赤外線の吸収効果が向上する場合がある。なお、近赤外線吸収性は、熱線吸収性と同等の意味で用いられる。
【0013】
上記近赤外線吸収性色素としては、有機溶剤への溶解性を有する色素、すなわち有機溶剤可溶性の近赤外線吸収性色素を用いることが好ましい。色素が有機溶剤に可溶であると、バインダー樹脂中へ容易に溶解できるため、近赤外線吸収性樹脂組成物の作製が容易になる。一方色素が溶解性に乏しいとバインダー樹脂への混合が難しくなるため、近赤外線吸収性樹脂組成物の作製も困難となる。有機溶剤に対する溶解度として、有機溶剤を100質量%とした溶解度が0.01質量%以上である近赤外線吸収性色素を用いることが好適である。有機溶剤可溶性における有機溶剤としては特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0014】
上記近赤外線吸収性色素の種類としては、例えば、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクワリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、アミノチオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、トリアリールメタン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物等の有機物質;無機物質であるカーボンブラックや、酸化アンチモン又は酸化インジウムをドーブした酸化錫;周期表の4族、5族又は6族に属する金属の酸化物、炭化物又はホウ化物;イモニウム系化合物;ジイモニウム系化合物;アミニウム塩系化合物等が挙げられる。
このような近赤外線吸収性色素の市販品としては、「イーエクスカラーIR−10」、「イーエクスカラーIR−12」、「イーエクスカラーIR−14」、「イーエクスカラーHA−1」、「イーエクスカラーHA−14」(いずれも商品名、日本触媒社製)、「SIR−128」、「SIR−130」、「SIR−132」、「SIR−159」、「IRG−022」、「IRG−023」(いずれも商品名、日本化薬社製)、「CIR−1081」(商品名、日本カーリット社製)が挙げられる。
【0015】
本明細書でいうフタロシアニン系とは、フタロシアニン、フタロシアニン錯体、或いはフタロシアニン及びフタロシアニン錯体であって、例えば、下記一般式(1);
【0016】
【化1】
Figure 2004115718
【0017】
(式中、αは、同一若しくは異なって、SR、OR、NHR又はハロゲン原子を表し、NHRを必須とする。R、R及びRは、同一若しくは異なって、置換基を有してもよいフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基を表す。βは、同一若しくは異なって、SR、OR又はハロゲン原子を表し、SR又はORを必須とする。ただし、α及びβのうち少なくとも1つは、ハロゲン原子又はORを必須とする。Mは、無金属、金属、金属酸化物又は金属ハロゲン化物を表す。)で表される化合物であることが好ましい。これにより本発明の作用効果をより充分に発揮させることができる。
【0018】
上記一般式(1)において、炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基等が挙げられる。炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子であることが好ましい。
【0019】
上記R、R及びRにおけるフェニル基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数7〜20のアラルキル基は、置換基を1個又は2個以上有してもよい。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アシル基等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(1)中のMにおいて、無金属とは、金属以外の原子、例えば、2個の水素原子であることを意味する。具体的には、フタロシアニン構造の中央部分に存在する、置換基を有してもよい相対する2つの窒素原子に水素原子が結合している構造となる。金属としては、例えば、鉄、マグネシウム、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、亜鉛、バナジウム、チタン、インジウム、錫等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、チタニル、バナジル等が挙げられる。金属ハロゲン化物としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化インジウム、塩化ゲルマニウム、塩化錫、塩化珪素等が挙げられる。Mとしては、金属、金属酸化物又は金属ハロゲン化物であることが好ましく、具体的には、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、鉄、バナジル、ジクロロ錫等が挙げられる。より好ましくは、亜鉛、コバルト、バナジル、ジクロロ錫である。
【0021】
上記一般式(1)で表される化合物の好ましい形態としては、8個のβのうち4〜8個が、同一若しくは異なって、SR又はORを表すことである。より好ましくは、8個のβがすべて、同一若しくは異なって、SR又はORを表すことである。このような近赤外線吸収性色素としては、例えば、VOPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}{Ph(CH)CHNH}F、VOPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}{Ph(CHNH)、CuPc(2,5−ClPhO){2,6−(CHPhO}(PhCHNH)の略称で表されるフタロシアニン化合物等が挙げられる。またこれらの化合物の中でも8個のαのうち4個が、同一若しくは異なってOR又はハロゲン原子を表す化合物で、例えば、ZnPc(PhS)(PhNH)、ZnPc(PhS)(PhNH)の略称で一般的に表される化合物等が挙げられる。上記化合物の略号において、Pcはフタロシアニン核を表し、Pcの後には、β位に置換する8個の置換基を表し、その後にα位に置換する8個の置換基を表す。また、上記Phはフェニル基を表す。更に具体的には、上記略号は、中心金属:Pc:β位の8個の置換基:α位の8個の置換基を表す。例えば、ZnPc(PhS)(PhNH)で説明すると、Zn Pc (PhS)  (PhNH) の下線部が上の説明に該当する。
【0022】
上記近赤外線吸収性色素の使用量としては、例えば、バインダー樹脂100重量部に対して、0.0005重量部以上とすることが好ましく、また、20重量部以下とすることが好ましい。0.0005重量部未満であると、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜が充分な近赤外線吸収性能を発揮しないおそれがあり、20重量部を超えると、近赤外線吸収性塗膜の物性が低下するおそれがある。より好ましくは、0.0015重量部以上であり、また、10重量部以下であり、更に好ましくは、0.002重量部以上であり、また、7重量部以下である。また、近赤外線吸収性塗膜の厚さにより適宜設定することが好ましく、例えば、厚さ10μmでは、0.5重量部以上とすることが好ましく、また、20重量部以下とすることが好ましく、1.0重量部以上とすることがより好ましく、また、10重量部以下とすることがより好ましい。厚さ3mmの近赤外線吸収性塗膜とする場合には、0.002重量部以上とすることが好ましく、また、0.06重量部以下とすることが好ましく、0.005重量部以上とすることがより好ましく、また、0.03重量部以下とすることがより好ましい。更に、近赤外線吸収性塗膜の単位面積あたりに含有される重量としては、例えば、0.01〜2.4g/mとすることが好ましい。0.01g/m未満であると、近赤外線吸収性色素の作用が充分に発揮されないおそれがあり、2.4g/mを超えると、近赤外線吸収性塗膜の製造コストが高くなるおそれがある。より好ましくは、0.05〜1.0g/mである。
【0023】
本発明におけるフッ素系重合体は、近赤外線吸収性樹脂組成物におけるバインダー樹脂を構成するものであり、1種又は2種以上を用いることができる。バインダー樹脂は、フッ素系重合体を必須とし、必要により有機溶剤や不飽和単量体を含有することにより構成されることになる。
【0024】
上記フッ素系重合体としては、フッ素原子を有する単量体を必須とする単量体成分を重合してなるものが好ましく、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。また、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂を用いることもできる。
上記フッ素原子を有する単量体としては、ポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を有するラジカル重合性単量体が挙げられ、パーフルオロアルキル基としては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロテトラデシル基が好適である。このような単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。このようなフッ素原子を有する単量体としては、CH=C(CH)COOCH(CFCF、CH=C(CH)COOCHCH(CFCF、CH=CHCOO(CFCF、CH=CHCOOCHCH(CFCF、CH=CHCOOCHCH(CFCF(CF、CH=C(CH)COOCH(OCOCH)CH(CFCF(CF、CH=CHCOOCHCH(OH)CH(CFCF(CF、CH=CHCOOCHCH(CFCF、CH=C(CH)COOCHCHNHCO(CFCF、CH=CHOCONHCO(CFCF(CFCl)CF、CH=CHCOOCHCHN(C)SO(CFCF、CH=CHCOOCHCHCHCH(CFCF、CH=C(CH)COOCHCHN(C)SO(CFCF、CH=CHCOOCHCHNHCO(CFCF、CH=CHCOO(CH(CFCF(CF、CH=CHCOOCH(CF10H、CH=C(CH)COOCH(CF10CFCl、CH=CHCONHCHCHOCOCF(CF)OC、CH=CHCONHCHCHOCOCF(CF)(OCOCが好適である。また、このような単量体の市販品としては、以下の単量体が好適である。
ライトエステルFM−108、ライトエステルM−3F、ライトエステルM−4F(いずれも商品名、共栄社化学社製);CHEMINOX FAAC、CHEMINOX FAMAC、CHEMINOX FAAC−M、CHEMINOXFAMAC−M、CHEMINOX PFAE、CHEMINOX PFOE(いずれも商品名、日本メクトロン社製)。
【0025】
上記フッ素原子を有する単量体の使用量としては、フッ素系重合体を形成することになる単量体成分100質量%中0.5質量%以上とすることが好ましく、また、95質量%以下とすることが好ましい。0.5%未満であると、近赤外線吸収性色素の耐久性向上効果がないおそれがあり、95%を超えると、近赤外線吸収性塗膜の製造コストが高くなるおそれがある。より好ましくは、3質量%以上であり、また、80質量%以下である。更に好ましくは、5質量%以上であり、また、70%以下である。
【0026】
また上記フッ素系重合体は、フッ素原子を有する単量体と炭素数4〜25の炭化水素基を有する単量体とを必須とする単量体成分を重合してなることが好ましい。炭素数4〜25の炭化水素基を有する単量体としては、下記一般式(2);
【0027】
【化2】
Figure 2004115718
【0028】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表す。Zは、炭素数4〜25の炭化水素基を表す。)で表される単量体が好適である。一般式(2)で表される単量体は1種用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これにより、近赤外線吸収性色素の耐久性が向上することに加えて、フッ素系重合体から構成されるバインダー樹脂自体の耐候性も優れたものとなるため、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜の耐候性をより向上させることができる。
【0029】
上記一般式(2)中、Zで表される炭素数4〜25の炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基等の脂環式炭化水素基;ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の直鎖又は分枝鎖のアルキル基;ボルニル基、イソボルニル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。これらの中でも、脂環式炭化水素基、分枝鎖のアルキル基、炭素数6以上の直鎖アルキル基であることが好ましい。更に好ましくは炭素数6以上の脂環式炭化水素基である。
【0030】
上記一般式(2)で表される単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の他、特開2002−69130号公報で開示されているような(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステル類、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記一般式(2)で表される単量体の使用量としては、例えば、すべての単量体成分を100質量%とすると、5質量%以上とすることが好ましい。5質量%未満であると、近赤外線吸収性色素の耐候性が充分に向上しないおそれがある。より好ましくは、10質量%以上であり、更に好ましくは、30質量%以上である。また、60質量%以下とすることが好ましい。
【0032】
上記単量体成分に用いることができるその他の共重合可能な不飽和単量体としては、上述したもの以外に、例えば、下記の単量体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM」)等の活性水素をもつ基を有する不飽和単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する不飽和単量体。
【0033】
(メタ)アクリルアミド、N,N′−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子を有する不飽和単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の2個以上の重合性二重結合を有する不飽和単量体;塩化ビニル等のハロゲン原子を有する不飽和単量体;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族不飽和単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;ビニルエーテル。
【0034】
本発明においては、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜の耐候性向上のために、フッ素原子を有する単量体に共重合させる不飽和単量体として、重合性紫外線吸収性単量体、重合性紫外線安定性単量体、重合性酸化防止単量体を使用することができる。特に本発明の近赤外線吸収性塗膜に更に紫外線遮断能が必要な場合は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収性基を有する不飽和単量体を使用すればよい。具体的には「RUVA93」(商品名、大塚化学社製)、「BP−1A」(商品名、大阪有機化学社製)等が挙げられ、これらは単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。またバインダー樹脂の更なる耐候性向上が必要な場合には、紫外線安定性基を有する不飽和単量体として「アデカスタブLA−82」、「アデカスタブLA−87」(いずれも商品名、旭電化工業社製)、酸化防止能を有する不飽和単量体として「スミライザーGS」、「スミライザーGM」(いずれも商品名、住友化学工業社製)等が挙げられ、これらは単独で使用し得る他、必要により2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0035】
上記フッ素系重合体を製造するための重合方法としては、例えば、重合開始剤を用いて、溶液重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により行うことができる。溶液重合を行う場合の溶媒としては特に限定されず、例えば、上述したような有機溶剤を1種又は2種以上用いることができる。溶媒の使用量としては、重合条件やフッ素系重合体中のフッ素系重合体の量等により適宜設定すればよい。
【0036】
上記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、2,2′−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル等の通常のラジカル重合開始剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。使用量としては、所望するフッ素系重合体の特性値等から適宜設定すればよいが、例えば、全単量体成分を100質量%とすると、0.01〜50質量%とすることが好ましい。より好ましくは、0.05〜20質量%である。
【0037】
上記重合方法における重合条件としては、重合方法により適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。例えば、重合温度としては、室温〜200℃とすることが好ましい。より好ましくは、40〜140℃である。反応時間としては、単量体成分の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
【0038】
上記フッ素系重合体の重量平均分子量としては、1000以上であることが好ましく、また、1000000以下であることが好ましい。より好ましくは、5000以上であり、また、800000以下であり、更に好ましくは、10000以上であり、また、600000である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準GPCでの測定値である。
【0039】
本発明においては、バインダー樹脂としてフッ素系重合体と共に、各種の樹脂を併用することができる。このような樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂や、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンアルキド樹脂、シリコーンウレタン樹脂、シリコーンポリエステル樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂、フッ素変性(メタ)アクリル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フルオロオレフィンビニルエーテルポリマー等のフッ素系樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂、湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等の硬化性樹脂でもよい。また、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等の合成ゴム又は天然ゴム等の有機系バインダー樹脂;シリカゾル、アルカリ珪酸塩、シリコンアルコキシドやそれらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等の無機系結着剤等の従来公知のバインダー樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、比較的低温で乾燥して近赤外線吸収性塗膜を形成することができ、しかも、バインダー樹脂自体の耐候性に優れる点で、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、(メタ)アクリルシリコーン系樹脂、シリコーンアクリル樹脂等の変性シリコーン樹脂、フッ素変性(メタ)アクリル樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル系樹脂である。なお、アクリル系樹脂とメタクリル系樹脂をアクリル系樹脂ともいう。
【0040】
本発明におけるフッ素系重合体を必須とするバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−80℃以上であることが好ましく、また、160℃以下であることが好ましい。これにより、バインダー樹脂自体の耐候性が向上することになり、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成してなる塗膜に吸収される水分量が抑制され、近赤外線吸収性色素の近赤外線吸収性能が持続すると共に、近赤外線吸収性塗膜自体の耐候性や物性がより向上することとなる。好ましくは、−50℃以上であり、また、155℃以下であり、より好ましくは、20℃以上であり、更に好ましくは、40℃以上であり、また、150℃以下である。
【0041】
上記バインダー樹脂の使用量としては、例えば、近赤外線吸収性樹脂組成物を100質量%とすると、50質量%以上とすることが好ましく、また、99.9995質量%以下とすることが好ましい。50質量%未満であると、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜の物性が充分でなくなるおそれがあり、99.9995質量%を超えると、近赤外線吸収性塗膜の質量割合が少なくなるため、近赤外線吸収性塗膜の近赤外線吸収性能が充分でなくなるおそれがある。より好ましくは、60質量%以上であり、また、99.9985質量%以下であり、更に好ましくは、70質量%以上であり、また、99.998質量%以下である。なお、バインダー樹脂におけるフッ素系重合体の含有量としては、バインダー樹脂の主成分となるようにすることが好ましく、例えば、バインダー樹脂全量を100質量%とすると、50質量%以上とすることが好ましい。
【0042】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物は、更に、脱水剤を含んでなることが好ましい。これにより、近赤外線吸収性樹脂組成物中の水の含有量をバインダー樹脂と共に効果的に抑制することができる。脱水剤としては、無機化合物又は有機化合物において種々のものがあるが、本発明に用いる場合には、近赤外線吸収性塗膜形成時に揮発し形成後には残存しない方が、近赤外線吸収性塗膜の性能低下がない点で好ましい。このような点で、比較的揮発しやすい有機系の脱水剤を用いるのがよい。このような脱水剤の例として、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、メチルシリケート、エチルシリケート等の加水分解性エステル化合物が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。このような脱水剤の化学構造の好ましい形態は、例えば、下記一般式(3);
【0043】
【化3】
Figure 2004115718
【0044】
(式中、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1〜8の有機基を表し、好ましくは、炭素数1〜3の有機基である。)で表される。また、脱水剤の使用量としては、例えば、バインダー樹脂100重量部に対して、1〜20重量部とすることが好ましい。1重量部未満であると、脱水剤の作用効果を充分に発揮することができないおそれがあり、20重量部を超えると、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜の物性が低下するおそれがある。より好ましくは、2〜10重量部であり、更に好ましくは、3〜7重量部である。
【0045】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜は、架橋、未架橋のいずれでも使用可能である。
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物は、それが用いられる用途や架橋剤の種類によって様々な硬化条件で硬化させることができるものであり、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線又は電子線硬化型等として用いることができる。また、架橋剤の使用量や、添加及び分散方法等は特に限定されず、例えば、フッ素系重合体が1分子内に水酸基を複数有するポリオールとなる場合では、ポリオールに通常用いられる使用量や、添加及び分散方法とすればよい。
【0046】
上記架橋剤としては、バインダー樹脂がポリオールにより構成される場合では、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物には、上述した以外の配合物として、例えば、溶剤や添加剤等を1種又は2種以上含んでいてもよい。このような溶剤としては、上述したのと同様の有機溶剤等が挙げられ、また、添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に一般に使用される従来公知の添加剤等を用いることができ、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾル等の無機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、シランカップリング剤;粘性改質剤;紫外線安定剤;防錆剤;蛍光性増白剤;有機及び無機系紫外線吸収剤、無機系熱線吸収剤;静電防止剤等が挙げられる。
【0048】
本発明の近赤外線吸収性塗膜の使用形態としては、例えば、近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜を近赤外線吸収層として、透明基材上に設けた積層体や2枚の透明基材で挟んだ積層体等が挙げられる。
上記透明基材としては特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の有機系基材;ガラス等の無機系基材が挙げられる。
【0049】
上記近赤外線吸収層の形成方法としては、例えば、(1)近赤外線吸収性樹脂組成物を透明基板上に塗布し、その後に塗布した近赤外線吸収性樹脂組成物を熱乾燥させて近赤外線吸収層を形成する方法、(2)近赤外線吸収性樹脂組成物を成形してフィルム化し、基材に貼りつけることにより積層体とする方法等が挙げられ、(1)の方法が簡便であることから好ましい。
【0050】
上記近赤外線吸収層の形成方法において、近赤外線吸収性樹脂組成物を透明基材上に塗布する方法としては、例えば、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、ブレードコート、バーコート、リバースコート、ダイコート、スプレーコート、静電塗装等の方法が挙げられる。これらの場合には、近赤外線吸収性樹脂組成物に上述した有機溶剤を適宜混合させて塗布することができる。また、近赤外線吸収性樹脂組成物を硬化させる方法としては、バインダー樹脂を構成するフッ素系重合体の種類等により適宜設定すればよく、例えば、加熱する方法、紫外線や電子線を照射する方法等が挙げられる。
【0051】
上記近赤外線吸収層の厚さとしては、使用用途等により適宜設定すればよく特に限定されるものではない。例えば、乾燥時の厚さを0.5μm以上とすることが好ましく、また、1000μm以下となるようにすることが好ましい。より好ましくは、1μm以上であり、また、100μm以下である。更に好ましくは、50μm以下である。特に好ましくは、50μm以下である。
【0052】
上記積層体においては、近赤外線吸収層の光入射側に、紫外線吸収層を設けることが好ましい。これにより、近赤外線吸収性色素の劣化をより効果的に抑制することができる。このような積層体の積層構造としては特に限定されず、例えば、(1)光入射側から紫外線吸収層、近赤外線吸収層、基材の順に積層された形態、(2)光入射側から紫外線吸収層、基材、近赤外線吸収層の順に積層された形態、等が挙げられる。また、耐擦り傷性及び耐汚染性を向上させるために、積層体表面にシリコン系や有機系のハードコート層、光触媒機能層等の表面保護層を更に設けてもよく、必要により基材と積層体との間や積層体の各層間にプライマー層を設けてもよい。このような紫外線吸収層や表面保護層、プライマー層の組成や厚さとしては、特に限定されるものではない。
【0053】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜は、近赤外線吸収性能の劣化が少ないことを特長としており、塗膜が持つ物性として、促進耐候性試験後の近赤外線吸収性色素の近赤外線吸収性能の低下が少ない、すなわち吸収能残存率が高いことが挙げられ、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、型式WEL−SUN−HC−B)による促進耐候性試験におけるブラックパネル温度63℃、2時間毎に18分間降雨、300時間後の近赤外線吸収能残存率が50%以上であるようにすることが好ましい。具体的には、近赤外線吸収性樹脂組成物を用いて形成された塗膜を用いて紫外線フェードメーターによる促進耐候性試験を行い、次の評価方法により求められる吸収能残存率が、50%以上である。より好ましくは、60%以上であり、更に好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。なお、近赤外線吸収性能残存率の実際の測定は、ガラス、PETフィルム等の近赤外線領域に吸収をもたない基材にコーティングした塗膜で行うことになる。
【0054】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物から形成される近赤外線吸収性塗膜や、該近赤外線吸収性塗膜を近赤外線吸収性層として含む積層体は、透明性を高くすることが好ましく、例えば、ヘイズ(曇価)を3.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは、2.0%以下であり、更に好ましくは、1.0%以下である。
【0055】
このような近赤外線吸収性塗膜や積層体は、プラズマディスプレイ等の電子機器における近赤外線吸収層に適用されることにより、近赤外線等が画面から放射されることを抑制することができるものである。その他にも、ビルや住宅の窓用、電車や自動車等の車両の窓用、アーケード、温室や、太陽電池パネルの保護用や、サングラス、一般眼鏡、保護眼鏡等にも用いることができる。また、上記の物品や構造体の所望の部分に(例えば窓等のガラス面に)、近赤外線吸収性樹脂組成物を塗布して使用することもできる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は、「重量部」を意味するものとする。
【0057】
合成例1
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた500mLフラスコに酢酸エチル40gを仕込んだ。更に滴下槽にパーフロロオクチルエチルメタクリレート(商品名「ライトエステルFM−108」、共栄社化学社製)を90g、メチルメタクリレート9.5g、メタクリル酸0.5g及びtert−ブチル−パーオキシ−2−エチルヘキサノート0.2gの単量体混合物を仕込み、この単量体混合物の60%をフラスコに投入させて還流温度まで昇温させた。昇温後に残り40%の単量体混合物を1時間かけて連続滴下し、滴下後に酢酸エチル60gを投入させた後8時間加熱させた。滴下開始してから9時間後にトルエン50gを加えて不揮発物が40.1%溶液、重量平均分子量275000のアクリル樹脂(以下、重合体1とする)を得た。
【0058】
合成例2〜9
合成例2〜9は、表1に示すようにした以外は、合成例1と同様な方法でアクリル樹脂を得た。
【0059】
【表1】
Figure 2004115718
【0060】
表1について、説明する。FM−108とは、パーフロロオクチルエチルメタクリレート(商品名「ライトエステルFM108」、共栄社化学社製)であり、CHMAとは、シクロヘキシルメタクリレートであり、IBXとは、イソボルニルメタクリレートであり、MMAとは、メチルメタクリレートであり、BAとは、ブチルアクリレートであり、MAAとは、メタクリル酸であり、HEMAとは、2−ヒドロキシエチルメタクリレートであり、LA82(商品名)とは、紫外線安定性モノマー(旭電化社製)であり、RUVA93(商品名)とは、紫外線吸収性モノマー(大塚化学社製)である。
【0061】
実施例1
バインダー樹脂として合成例1のアクリル樹脂100部、フタロシアニン系色素Aを0.18部、メチルエチルケトン10部を配合して近赤外線吸収性樹脂組成物を調製した。これを厚さ100ミクロンのPETフィルム(東洋紡社製、商品名「コスモシャインA4100」)の易接着処理面に塗装して100℃で5分乾燥させて厚膜5ミクロンの近赤外線吸収層を形成した。更にこの上に紫外線吸収層として、ハルスハイブリッドUV−G13(商品名、日本触媒社製、紫外線吸収性アクリル樹脂、不揮発分42%酢酸エチル品)をトルエンで不揮発分が20%になるように希釈して、80℃で3分乾燥させて膜厚3ミクロンの紫外線吸収層を形成させた。以上の方法で作製したフィルムを更に40℃で7日間養生させた。その後、促進耐候性試験では紫外線吸収層が照射面になるようにフィルムをおいて試験を行い、試験前後のフィルムのへイズ変化、また極大吸収波長での光の透過率を測定した。
【0062】
実施例2〜9
実施例2〜7、9は近赤外線吸収性樹脂組成物の組成を表2に示すようにした以外は、実施例1と同様な方法でフィルムを作製し、性能試験を行った。実施例8は、イソシアネート硬化剤(商品名「スミジュールN3200」、住友バイエルウレタン社製)をアクリル樹脂のOH基と当量比になるように配合した以外は実施例1と同様な方法でフィルムを作製し、性能試験を行った。
【0063】
ヘーズ(曇価)の測定
実施例1〜9の方法で作製した試験試料の初期及び促進耐候性試験後のヘーズの測定を、JIS K7105に従い、日本電色社製のヘーズメーターを用いて行った。結果を表2に示した。なお、基材として使用した厚さ100μmのPET基材(商品名「コスモシャインA4100」、東洋紡社製)のみの初期ヘイズは0.7%であった。
【0064】
近赤外線吸収塗膜の耐候性
実施例1〜9の方法で作製した試験試料の極大吸収波長での光の透過率を、分光光度計により測定した(T初期値)。また基材フィルムの当該波長での透過率を測定した(T)。この試験試料を用い、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機社製、型式WEL−SUN−HC−B)による促進耐候性試験をブラックパネル温度63℃、2時間毎に18分間降雨の条件で300時間行い、促進耐候性試験とし、試験後の極大吸収波長での透過率を測定した(T)。これらの測定値から、近赤外線吸収能残存率R(%)を次式により求めた。結果を表2に示した。
R(%)={(T−T)/(T−T)}×100
【0065】
(塗膜クラック評価)
試験サンプルは、紫外線吸収層を形成しない以外(基材に近赤外線吸収層のみを形成)は実施例と同じ方法で作成し、60℃で90%RH中に1000時間暴露後の塗膜に発生したクラックの程度を下記の評価基準で目視評価した。
〇;異常なし ×;微小クラックあり
(塗膜の退色性)
試験サンプルは、紫外線吸収層を形成しない以外(基材に近赤外線吸収層のみを形成)は実施例と同じ方法で作成し、60℃で90%RH中に1000時間暴露後の塗膜の色彩変化を暴露前と比較して目視評価した。
〇;暴露前後で変化なし △;変化小さい ×;変化大きい
【0066】
【表2】
Figure 2004115718
【0067】
表2について、説明する。
色素Aは、「イーエクスカラーIR−14」(商品名、日本触媒社製)である。
【0068】
表2より、上記の色素を含む近赤外線吸収性樹脂組成物をPET基材に塗装した塗膜は、耐候性試験後でも色素の吸光度の低下が少なく、フィルムのヘイズ(濁度)変化も少ないことが分かる。
【0069】
【発明の効果】
本発明の近赤外線吸収性樹脂組成物は、上述の構成よりなるので、近赤外線吸収性色素が劣化することが抑制されて耐久性が向上し、フィルムのヘイズ(濁度)変化が少なく、しかも耐湿熱性と可とう性とを両立することができる近赤外線吸収性塗膜や熱線吸収フィルムを形成することができるものであり、プラズマディスプレイにおける赤外線リモコン誤作動防止用に好適に用いることができる他、ビルや住宅の窓用、電車や自動車等の車両の窓用、アーケード、温室等、太陽電池パネルの保護用や、サングラス、一般眼鏡、保護眼鏡等に用いることができる。

Claims (2)

  1. 780〜1200nmに極大吸収波長を有する近赤外線吸収性色素と、フッ素系重合体とを含んでなる
    ことを特徴とする近赤外線吸収性樹脂組成物。
  2. 前記フッ素系重合体は、フッ素系単量体と炭素数4〜25の炭化水素基を有する単量体とを必須とする単量体成分を重合してなる
    ことを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収性樹脂組成物。
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