JP2004113435A - ミシン - Google Patents

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JP2004113435A
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Tetsuya Kitamura
北村 哲弥
Hikoharu Aoki
青木 彦治
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Abstract

【課題】相対運動する第1部材と第2部材の摺動部分の摺動性と耐磨耗性を格段に高めることができるミシンを提供する。
【解決手段】内釜3の摺動レール19を覆うように摺動部分に相当する樹脂皮膜37が設けられており、その樹脂皮膜37は、少なくともカーボンナノチューブ(CNT)を含有した熱可塑性ポリイミドによって構成されており、そのCNTの直径は、100nm以下で、長さは、1μm以上のファイバー形状である。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はミシンに関し、特に、相対運動する第1部材と第2部材の摺動部分の耐磨耗性を改善したミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のミシンにおいては、特開平10−272274号公報に示すように、外釜に軌溝が形成され、その軌溝には内釜の軌条が入り込んで摺動するようになっている。そして、内釜の軌条には摺動層が形成されており、この摺動層はポリイミド系樹脂に潤滑剤としてシリコーンオイルが含有されてなる高分子組成物により形成されている。また、この高分子組成物にPAN系炭素繊維(カーボンファイバー)などの繊維強化剤を含有させることが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−272274号公報(第4頁、図4)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のミシンにおいて、摺動層を通常の炭素繊維を含有した高分子組成物により形成しただけでは、摺動部分の摺動性と耐磨耗性を十分に高めることができないという問題点がある。
【0005】
すなわち、通常の炭素繊維はその直径が5μm程度であるので、摺動する表面積全体に対して炭素繊維が露出している表面積が比較的小さく、その結果、摺動部分の摺動特性が悪いという問題点がある。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、相対運動する第1部材と第2部材の摺動部分の摺動性と耐磨耗性を格段に高めることができるミシンを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、請求項1記載のミシンは、相対運動する第1部材と第2部材との間に摺動部分を有するミシンにおいて、少なくとも前記第1部材の摺動部分がカーボンナノチューブ(CNT)を混合した樹脂にて形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
この構成によれば、CFよりも格段に直径の小さいCNTを混合したため、摺動する表面積全体に対してCNTが露出している表面積が比較的大きくすることができ、その結果、摺動部分の摺動特性を高めることができる。また、CNTはチューブ形状であるため、第1部材を軽量化することもできる。
【0009】
請求項2のミシンは、請求項1の発明において、CNTの直径が、100nm以下で、長さが1μm以上のファイバー形状であることを特徴とするものである。この構成によれば、格段に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0010】
請求項3のミシンは、請求項1または2の発明において、樹脂が熱可塑性のポリイミド若しくはポリアミドイミドであること特徴とするものである。この構成によれば、ポリイミド若しくはポリアミドイミドは摩耗しにくいので、その他の樹脂を使用した場合に比べて、格段に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0011】
請求項4のミシンは、請求項1〜3の何れかの発明において、CNTの混合量が1%以上であることを特徴とするものである。この構成によれば、格段に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0012】
請求項5のミシンは、請求項1〜4の何れかの発明において、樹脂には直径1μm以上のCFが混合されていることを特徴とするものである。この構成によれば、安価なCFと混合することにより、安価に作成することができる。
【0013】
請求項6のミシンは、請求項1〜5の何れかの発明において、樹脂にはフッ素が混合されていることを特徴とするものである。この構成によれば、更に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1は本実施例の工業用ミシンの釜部分の断面図である。まず、図1(a)に示す様に、本実施の形態の工業用ミシン(以下単にミシンと称す)は、外釜1と、この外釜1内に回転軸を一致させて収容される内釜3とを備えている。このうち、外釜1は、中央の外釜本体5と、大きな開口部7側に取り付けられるリング状の内釜押え9と、内釜押え9と反対側に設けられたボス部11とからなる。前記外釜本体5には、外側面17A及び周側面17Cを有する段部15が形成されており、この段部15は、内釜押え9の内側面17Bとによって環状の摺動溝17を構成している。摺動溝17は、後述する内釜3の摺動レール19と嵌合して、内釜2を回動可能に使用する環状の溝であり、外釜1の開口部7の内周面に形成されている。また、前記ボス部11は、釜駆動軸21が嵌合される中心孔23を有している。尚、外釜本体5の周囲には、剣先31に隣接する部位に、金属板からなる糸さばき板33が固定されている。
【0016】
一方、内釜3は、外釜1に嵌合する(一端が閉塞された)円筒部35を備えており、この円筒部35の外周に、環状に突出する摺動レール19が形成されている。つまり、図1(b)に示す様に、この摺動レール19は、摺動溝17に嵌合する様に、平行な左右の側面19A,19Bと、この左右の側面19A,19Bに直角に外周面19Cとを備えている。従って、内釜3と外釜1とが本願発明の第1部材と第2部材とにそれぞれ相当している。
【0017】
そして、内釜3の摺動レール19を覆うように摺動部分に相当する樹脂皮膜37が設けられている。樹脂皮膜37は、少なくともCNTを含有した熱可塑性ポリイミドによって構成されている。尚、CNTの直径は、100nm以下で、長さは、1μm以上のファイバー形状である。また、必要に応じて更にCFを含有させたり、フッ素樹脂を添加するようにしてもよい。
【0018】
このように、従来の直径5μmのCFから直径100nmのCNTにすることで、直径が50分の1となり、その長さも相似的に小さいとすると、同一体積で樹脂マトリクスの表面に出現するカーボン表面積は50倍となる。CF及びCNTは樹脂に比べて硬いので表面への出現量が多くなるほど摺動特性は良好となる。従って、同一重量を混合したとき、CFに比べてCNTの方が摺動特性は良好となる。また、より多く混合させることも可能である。また、チューブ形状であるので軽量化にもなる。
【0019】
次に、本実施の形態を含む本発明のミシンの効果を確認するために行った実験例について説明する。
【0020】
図2は、特開平8−173668号公報に記載の公知のピンオンディスク型試験器を用いて行った実験結果である。
【0021】
尚、ディスク材質は、SCM415(クロモリ鋼)浸炭焼き入れであり、ピン形状は、SR8(球面)であり、スピードは4m/sであり、荷重は0.5kgfであり、これは、実際のミシン実機の摺動条件を想定している。
【0022】
そして、ピン材質は、カーボンファイバー30%含有し、フッ素樹脂を添加した熱可塑性ポリイミドにCNTを0,1,3,5%(重量%)混合した4タイプである。
【0023】
また、摩耗量は40分後のピンの径から計算し、荷重と走行距離で除することで摩耗率を算出した。
【0024】
その結果、CNTを混合しない(0%)タイプは、その摩耗率が0.00555mm/kgfmであったのに対し、CNTを1%混合したタイプは、その摩耗率が0.003mm/kgfmであり、CNTを3%混合したタイプは、その摩耗率が0.003mm/kgfmであり、CNTを5%混合したタイプは、その摩耗率が0.002mm/kgfmであった。従って、CNTを1%以上混合すると効果が得られ、望ましくは5%以上混合するとよい。
【0025】
尚、摩擦係数については大きな変化はなかった。
【0026】
次に、図3において、ポリイミド+CF+フッ素、ポリイミド+CF、ポリイミド+フッ素、ポリイミドのそれぞれ4種類の素材に対してCNT混合量を変えて実験した結果を示す。
【0027】
この実験結果からCNT混合量を多くすると全ての素材において、摩耗率が低下する傾向が確認された。また、フッ素を入れた場合は、摩擦係数が0.4→0.2へと低下して、すべり性が優れるため、摩耗率が低下した。また、図3には図示していないが、ポリイミド単体にCNTを20%以上混ぜると、ポリイミド+CF+10%CNTと同等の摩耗率が得られることが確認されているが、CNTは高価であるので、今のところCFとの混合タイプでの使用が望ましい。
【0028】
次に、図4において、ミシン実機の釜にて実験した結果を以下に示す。ミシン主軸4000rpm(釜軸8000rpm)にて5秒間のon−offを繰り返した結果である。尚、釜の摺動部分が摩耗して、そのガタが0.2mmになった時点が釜のおおよその寿命である。
【0029】
この結果から、わかるように従来のCFを混合した釜では約400時間の寿命であったが、CNTを5%以上混合した釜では、倍の800時間の耐久性が達成された。
【0030】
次に、本発明の変形の形態について説明する。
【0031】
本実施の形態においては、摺動レール19を樹脂被膜37で覆うようにしているが、摺動レール19そのものを、CNTを含有した樹脂にて形成したり、内釜全体をCNTを含有した樹脂にて形成したりしてもよい。更に、外釜1の段部15、若しくは外釜全体をCNTを含有した樹脂にて形成してもよい。外釜と内釜との摺動部分に限定されることなく、例えば、針棒と針棒支持部材との摺動部分、天秤軸と滑り子との摺動部分、クランクレバーとクランク軸との摺動部分等にも利用可能である。
【0032】
また、本実施の形態においては、射出成形可能なように、ベースレジンとして熱可塑性ポリイミドを用いた例を示したが、他の樹脂を用いることも可能である。熱可塑性といえども上記ポリイミド樹脂は溶融温度が400℃であり、成形の際には金型などを400度以上に加熱する必要があり、非常に高温であり、取り扱いが非常に困難である。ポリアミドイミド樹脂はポリイミドと同等レベルの摺動特性が得られることが実験で確認されていて、溶融温度が300℃近辺であるのでこれを使用することも可能である。ポリイミドは摺動材料として用いられる樹脂の中でも最も硬くて摩耗しにくい材料ではあるが、コスト・成形性から他の樹脂に変更することも可能である。ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等比較的多く摺動材料として使われる樹脂にしてもCNT添加により耐摩耗性は各段に向上できることは可能である。
【0033】
また、今回は完全無潤滑(無給油)での例を示したが、グリース、油潤滑、微量給油条件下でも、この構成の材料は摺動特性が最も優れており、これらと併用することで高寿命を達成することが出来る。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、請求項1記載のミシンは、少なくとも第1部材の摺動部分がカーボンナノチューブ(CNT)を混合した樹脂にて形成されており、CFよりも格段に直径の小さいCNTを混合したため、摺動する表面積全体に対してCNTが露出している表面積が比較的大きくすることができ、その結果、摺動部分の摺動特性を高めることができる。また、CNTはチューブ形状であるため、第1部材を軽量化することもできる。
【0035】
請求項2のミシンは、CNTの直径が、100nm以下で、長さが1μm以上のファイバー形状であるため、格段に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0036】
請求項3のミシンは、樹脂が熱可塑性のポリイミド若しくはポリアミドイミドであるため、ポリイミド若しくはポリアミドイミドは摩耗しにくいので、その他の樹脂を使用した場合に比べて、格段に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0037】
請求項4のミシンは、CNTの混合量が1%以上であるため、格段に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【0038】
請求項5のミシンは、樹脂には直径1μm以上のCFが混合されているため、安価なCFと混合することにより、安価に作成することができる。
【0039】
請求項6のミシンは、樹脂にはフッ素が混合されているため、更に摺動部分の摺動特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る釜構造を示し、(a)はその外釜及び内釜の断面図であり、(b)はその摺動部分を拡大して示す断面図である。
【図2】実験結果のデータを示すグラフである。
【図3】実験結果のデータを示す別のグラフである。
【図4】実験結果のデータを示す別のグラフである。
【符号の説明】
1    外釜
3    内釜
17   摺動溝
19   摺動レール
37   樹脂皮膜

Claims (6)

  1. 相対運動する第1部材と第2部材との間に摺動部分を有するミシンにおいて、
    少なくとも前記第1部材の摺動部分がカーボンナノチューブ(CNT)を混合した樹脂にて形成されていることを特徴とするミシン。
  2. 前記CNTの直径が、100ナノメートル(nm)以下で、長さが1マイクロメートル(μm)以上のファイバー形状であることを特徴とする請求項1記載のミシン。
  3. 前記樹脂が熱可塑性のポリイミド若しくはポリアミドイミドであること特徴とする請求項1または2に記載のミシン。
  4. 前記CNTの混合量が1%以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のミシン。
  5. 前記樹脂には直径1μm以上のカーボンファイバー(CF)が混合されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のミシン。
  6. 前記樹脂にはフッ素が混合されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のミシン。
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