JP2004111198A - 鉛蓄電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた寿命性能をもたらす負極活物質中のBaSOの大きさと分布とが明らかにする。また、実際にそのような負極活物質を得る方法も提供する。
【解決手段】負極活物質中にBa元素を含む負極を備えた鉛蓄電池において、 前記Ba元素は直径10μm以上の塊として存在しないことを特徴とする鉛蓄電池。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛蓄電池関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池の負極活物質は、ボールミル式あるいはバルトン式の鉛粉製造装置で製造された一酸化鉛と金属鉛との混合物である鉛粉と、リグニンスルホン酸と、カーボンと、BaSO等必要な添加物をミキサーで混合した後、所定量の水を加えて混練後、さらに混練しながら所定量、所定比重の希硫酸を加えて負極活物質ペーストとしたもので構成される。この負極活物質ペーストを格子に充填し、多くの場合熟成、乾燥工程を経て負極板が完成する。この負極板を用いて鉛蓄電池が構成される。
【0003】
上記添加剤を添加する理由としては、負極活物質は正極活物質に比べてその比表面積が約1/10と非常に小さいために、正極活物質に比べて性能が低下しやすいため、その性能低下を防止するためである。これらの添加剤のうちBaSOは、鉛蓄電池の放電によって生成するPbSOの核となるべき役割を担っているため、BaSOの粒子はできるだけ細かいものがよいことが知られる。
【0004】
これまでもBaSOを均一に分布させる方法や、BaSOを微細化する方法が特開平7−169464号公報、特開昭58−111263号公報、特開2001−332252号公報等で開示されている。特開平7−169464号公報に記載の方法は、硫酸バリウムとリグニンスルホン酸塩を主成分とする添加剤粉末を水中に分散させる工程と、前記添加剤粉末を分散させた水と希硫酸とを負極活物質に加え、これらを練合してペーストを得る工程とからなる鉛蓄電池用負極ペーストの製造方法であり、特開昭58−111263号公報に記載の方法は、水酸化バリウムと硫酸とを反応させた硫酸バリウムを添加する方法であり、特開2001−332252号公報に記載の方法は、バリウムイオンと硫酸イオンとの反応により硫酸バリウムを析出させた反応液、またはこれを濃縮した反応液、或いはその濾過により分取したスラリー状の硫酸バリウム反応液を調製し、これを負極活物質ペーストの調製時に添加、混練して負極活物質ペーストを調製する鉛蓄電池の負極板の製造方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法によってBaSOを均一に分布させたり、BaSOを微細化させたりすることが可能であることはわかっていても、これらの方法では単にBaSO粒子が小さければ寿命性能がよいとか、BaSOの分布が均一なほうがよいという表現があるだけである。実際に負極活物質中にBaSOをどのように分散させると優れた寿命性能をもたらすのかは明らかになっていなかった。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、優れた寿命性能をもたらす負極活物質中のBaSOの分布を明らかにするものである。また、実際にそのような負極活物質を得る方法についても述べる。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するためになした発明は、負極活物質中にBa元素を含む負極を備えた鉛蓄電池において、前記Ba元素は直径10μm以上の塊として存在しないことを特徴とする鉛蓄電池である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本願発明の実施の形態を以下に述べる。従来の技術で述べた負極活物質ペーストの製造方法に変えて、まず、例えばBaSやBa(OH)のような水溶性バリウム化合物を水に溶解したバリウム含有液に硫酸を添加、撹拌して硫酸バリウム含有液を調整し、その硫酸バリウム含有液に、リグニンスルホン酸ナトリウムのかわりに、図1に示す構造のビスフェノールスルホン酸ポリマー(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンのホルムアルデヒド縮合物と2,2−ビス(4ヒドロキシフェニル)プロパンのホルムアルデヒド縮合物を添加、撹拌するものである。このビスフェノールスルホン酸ポリマーを添加した硫酸バリウム含有液には、必要に応じてカーボン粉末など、負極活物質ペーストに添加する添加剤を添加することもできる。
【0009】
そして別途鉛粉を準備し、必要があれば事前に鉛粉にBaSO以外の負極活物質ペーストに添加する添加剤を加えて混合した後、上記ビスフェノールスルホン酸ポリマーを添加した硫酸バリウム含有液を加え(好ましくは徐々に加え)て鉛粉を混練する。
【0010】
このように構成した負極活物質ペーストを格子に充填し、必要に応じて熟成、乾燥工程を経て未化成の負極板とする。この未化成の負極板はタンク化成を経てから鉛蓄電池の負極板とすることもできるし、この負極板を用いて鉛蓄電池を組み立てた後に電槽化成を実施することもできる。
【0011】
上述のようにして構成した負極板を備えた鉛蓄電池を解体し、解体後速やかに負極板を流水中に浸し、負極板が保持している電解液(希硫酸)を充分に除去した後、この負極板を真空乾燥機あるいはArやNなどの不活性ガス中で乾燥する。乾燥させた負極板をエポキシ等の樹脂に含浸し、樹脂が固化した後に極板の断面が露出するように樹脂を切断する。この切断面を鏡面状になるまで研磨してから、EPMA(電子線マイクロアナライザ、Electron Probe Micro Analyzer)により、負極活物質断面のBaの分布を調査する。調査結果を図2に示す。
【0012】
図2の従来1で示した上段のものは、従来の技術で示した方法で得た負極板のBaの分布である。15〜20μmのBa元素の塊が存在していることがわかる。そして従来2で示した中段のものは、本発明と同様の方法であるが、ビスフェノールスルホン酸ポリマーに変えて、従来から鉛蓄電池の負極板に添加されていたリグニンスルホン酸ナトリウムを使用したものである。従来1のものに比べてBa元素の塊は小さくなっているが、10μmを越えるBa元素の塊が存在していることが認められる。そして、本発明で示した下段のものは、本発明の方法で構成した負極板のBa元素の分布である。10μmよりも大きなBa元素の塊は一切認められず、すべて1μm以下であった。そしてその分布も従来1、従来2で示したものよりも均一であることがわかる。
【0013】
これらの負極板を備えた鉛蓄電池の初期容量と充放電サイクル寿命性能を調査したところ、本発明による負極板を備えた鉛蓄電池は、従来1の負極板、従来2の負極板を供えた鉛蓄電池に比べて初期容量、充放電サイクル寿命性能のいずれもが優れていた。
【0014】
【実施例】
図2の従来1で示した負極活物質Aは、まず鉛粉100kgにカーボン200g、BaSO1000g、リグニンスルホン酸200gを添加し、それらを充分に混合してから水10.9Lを加えて混練し、混練しながら20℃における比重が1.40の希硫酸5.3Lを少しずつ加えることによりその負極活物質ペーストを得た。
【0015】
図2の従来2で示した負極活物質Bは、まず水10.9Lに725gのBaS(硫化バリウム)を溶かし、BaSがほぼ完全に溶解した後に20℃における比重が1.40の希硫酸5.3Lを加えて充分に撹拌し、その後リグニンスルホン酸ナトリウム200gを添加、撹拌した後、さらにカーボン200gを添加して撹拌したBaSO含有液を、鉛粉100kgに少しずつ添加しながら混練することによりその負極活物質ペーストを得た。
【0016】
図2の本発明で示した負極活物質Cは、まず水10.9Lに725gのBaS(硫化バリウム)を溶かし、BaSがほぼ完全に溶解した後に20℃における比重が1.40の希硫酸5.3Lを加えて充分に撹拌し、その後ビスフェノールスルホン酸ポリマー200gを添加、撹拌した後、さらにカーボン200gを添加して撹拌したBaSO含有液を、鉛粉100kgに少しずつ添加しながら混練することによりその負極活物質ペーストを得た。
【0017】
これらの負極活物質をペースト混合終了直後のペースト状態のうちに負極格子に充填し、熟成乾燥工程を経て負極板を作製した。この負極板11枚と常法による正極板10枚とをセパレータを介して積層して極板群とし、60Ah/5hRの制御弁式鉛蓄電池を製作した。
【0018】
これらの鉛蓄電池の、初期の放電容量とサイクル寿命性能とを調査した。初期の放電容量は、25℃での0.2CA放電容量(12A放電容量)と−15℃での5CA放電容量(300A放電容量)とを調べた。また、サイクル寿命性能を調査するための試験条件は、75℃において、0.5CA(30A)で2分間放電し、その後最大電流0.5CA(30A)の2.4Vの定電流−定電圧充電を10分間おこなうものである。試験結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 2004111198
【0020】
表1から明らかなように、本発明による負極活物質Cを備えた鉛蓄電池は、
従来の負極活物質A、Bを備えた鉛蓄電池に比べて、その初期の放電容量、特に大電流放での放電容量が優れているとともに、充放電サイクル寿命性能にも優れていることがわかる。初期の放電容量が優れていた理由としては、放電の核となるBaSOが細かく、均一に分散した負極活物質を使用したことによって、負極板の反応部位が増加したためではないかと思われる。充放電サイクル寿命性能が向上した理由については、同様に、放電の核となるBaSOが細かく、均一に分散した負極活物質を使用したことによって、負極板の放電時の電流密度が均一になり、負極板の中で特に劣化しやすい部分がなくなったためではないかと思われる。
【0021】
この理由は明らかではないが、リグニンスルホン酸ナトリウムにはBa元素を凝集させる性質があり、ビスフェノールスルホン酸ポリマーにはBa元素を凝集させる性質がないのではないかと思われる。
【0022】
なお今回の実施例では、図2に示した負極板中のBaの分布を、1つの鉛蓄電池につき8ヶ所で調査した。また、複数の鉛蓄電池を充放電サイクル寿命試験に供し、充放電サイクル1000サイクル毎に1つの鉛蓄電池を取り出してBaの分布を調査した。この結果、Baの分布はその部位によらず、また、充放電サイクル数にも影響されずに、いずれも図2に示したものと同様の分布が認められた。
【0023】
この他、ビスフェノールスルホン酸ポリマーについては、図1で示した4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンと2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンとを混合したホルムアルデヒド縮合物について検討した結果、ビスフェノール類と亜硫酸塩とのホルムアルデヒド縮合物あるいはビスフェノール類とアミノ酸とのホルムアルデヒド縮合物の群から選ばれた少なくとも1種が適していることがわかった。
【0024】
例えば、ビスフェノール類としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、4,4’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酪酸およびこれらの異性体を用いることができる。
【0025】
そして、本発明では図1で示されるビスフェノール類化合物、すなわち4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを含むもの、例えば、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンが単独、または、前記ビスフェノール類中における4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン以外の化合物の少なくとも1種と4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンとが混合されたビスフェノール類を用いることもできる。なお、混合されたビスフェノール類が用いられる場合には、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを全ビスフェノール類化合物に対して1モル%以上混合するのが良い。
【0026】
なお、図1で表されるビスフェノール類は4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、または2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンであるが、これらは1種以上を組み合わせて用いても良く、2種以上用いる場合には、図1に示したビスフェノール類の合計の含有量を1モル%以上とするのが良い。
【0027】
また亜硫酸塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等が使用可能であり、特に、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等のナトリウム塩が好ましい。
【0028】
また、亜硫酸塩に変えて、アミノ酸であるグルタミン酸を用いたビスフェノールアミノ酸ポリマーにおいても、上記実施例と同様の効果が得られ、アミノ酸としては、グルタミン酸、グリシン、アラニン、イミノ二酢酸、アスパラギン酸、セリン、アミノ酪酸、グルタチオン、6−アミノヘキサン酸、バリン、メチオニン、ロイシン等が使用可能であり、特に、グルタミン酸、グリシン、アラニン、イミノ二酢酸が好ましい。
【0029】
本願発明において用いられるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン等のホルムアルデヒド誘導体、アセトアルデヒド等が使用可能であり、特に、ホルムアルデヒド誘導体が好ましく、反応性やコストの点から、ホルムアルデヒドがより好ましい。
【0030】
本願発明において用いられる縮合物は、上記のような、ビスフェノール類と亜硫酸塩とアルデヒド類、または、ビスフェノール類とアミノ酸とアルデヒド類、または、ビスフェノール類と亜硫酸塩とアミノ酸とアルデヒド類等、との縮合物であるが、このような縮合物は、例えば、これらを水性条件下で混合し、常圧または加圧条件下で、50〜140℃で通常5〜50時間反応させることによって製造することができる。
【0031】
ただ、反応生成物水溶液のpHは、6〜14である必要があり、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、水酸化アンモニウム等のアルカリを添加することがある。
【0032】
また、これらの原料を縮合する際には、ビスフェノール類:亜硫酸塩および/もしくはアミノ酸:アルデヒド類のモル比は1:0.5〜2.5:1.2〜6.0とするのが好ましい。このモル比をはずれると、縮合物の分子量が大きくなりすぎたり、高分子とならなくなったりすることがあるためである。さらに未反応成分が多量に残存する場合もある。
【0033】
なお、本発明で用いられる縮合物の重量平均分子量は、0.3〜3.0×10であるのが好ましい。これは、分子量が小さすぎると充電反応が阻害され、分子量が大きすぎると分散性が低下するためである。なお、重量平均分子量は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定が可能である。
【0034】
また、本実施例では開放型鉛蓄電池を適用したが、制御弁式鉛蓄電池でも本願発明の効果がかわるものではない。
【0035】
【発明の効果】
本発明により、優れた寿命性能をもたらす負極活物質中のBaSOの大きさと分布とが明らかにすることができた。また、実際にそのような負極活物質を得る方法も提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビスフェノールスルホン酸ポリマーの例。
【図2】負極板中のBa元素の分布を示す図。

Claims (1)

  1. 負極活物質中にBa元素を含む負極を備えた鉛蓄電池において、
    前記Ba元素は直径10μm以上の塊として存在しないことを特徴とする鉛蓄電池。
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