JP2004109011A - 散乱光測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】散乱ビーム径を大きくせず、散乱光量を低下させることなく、投光軸と受光軸との間隔を小さくして、できるだけ大きな散乱角度を確保する。
【解決手段】両面が平行平面状の光軸調整板T,Jを、投光レンズ4と集光レンズ5との間、又は受光レンズ6と集光レンズ5との間の平行光束の部分に傾けて設置した。
【効果】平行光束同士の間隔を、平行関係を保ったまま近づけることができる。したがって、光量を減らさないで、散乱角を180度に近づけることができる。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液に光を照射し、散乱体積内から散乱される光を検出することにより散乱光測定を行う散乱光測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
散乱光測定装置は、流体中に存在する粒子の動き(ブラウン運動)による散乱光の経時変化を測定する装置である。
従来の散乱光測定装置では、溶液の入った直方体のセルに対してレンズで絞ったレーザ光を照射し、その散乱光をフォトマルチプライヤ等の受光素子で測定していた。
【0003】
溶液の濃度が濃い場合、粒子に当たって散乱された光がまた他の粒子に当たって測定されるという多重散乱の問題が起こる。
濃厚溶液では、この多重散乱の影響を避けることが、正確な測定のために重要である。
そのために、測定する散乱角度を180度近くに設定することが有効である。そこで従来では、照射光を集光する集光レンズと、散乱光を集める対物レンズとを同じレンズで共用する構成の光学系を採用している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−51843号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この場合、測定する散乱角度をできるだけ大きくする(限りなく180度に近くする)ためには、集光レンズの焦点距離を長くするか、投光軸と受光軸との間隔を小さくすることが重要である。
集光レンズの焦点距離を長くすると焦点の像が大きくなる(散乱ビーム径が大きくなる)ので、投光軸と受光軸との間隔を小さくすることが好ましい。
【0006】
このためには、光源の光を平行光束にして集光レンズに入れる投光レンズと、同じ集光レンズで集められた試料溶液からの散乱光を受光器に照射する受光レンズとを近づける必要があるが、投光レンズと受光レンズとを近づけるには、投光レンズと受光レンズとの口径の制限がある。
投光レンズの口径を小さくすると光源の光量が不足するし、受光レンズの口径を小さくすると検出する散乱光の検出感度が不足してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、散乱ビーム径を大きくせず、散乱光量を低下させることなく、投光軸と受光軸との間隔を小さくして、できるだけ大きな散乱角度を確保することができる散乱光測定装置を実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
本発明の散乱光測定装置は、光源と、試料溶液を収容する容器と、光源の光を平行光束にする投光レンズと、当該平行光束を集めて試料溶液に照射する集光レンズと、同じ集光レンズで集められた試料溶液からの散乱光を受光器に入射させる受光レンズと、受光器とを備え、両面が平行平面状の光軸調整板を、投光レンズと集光レンズとの間の投光軸上、又は受光レンズと集光レンズとの間の受光軸上の平行光束の部分に傾けて設置したものである(請求項1)。
【0009】
前記の構成によれば、光軸調整板を投光レンズと受光レンズとの間の平行光束の部分に、傾けて設置したことにより、平行光束同士の間隔を、平行関係を保ったまま近づけることができる。したがって、投光光量、受光光量を減らさないで散乱角を180度に近づけることができる。
前記光軸調整板は、投光軸上及び受光軸上の両方に設置することもできる(請求項2)。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は本発明の実施形態にかかる散乱光測定装置を示す平面図、図1(b)は側面図である。
光源2の光は、アパーチャ3を通過し、投光レンズ4によって平行光束にされる。当該平行光束は、集光レンズ5で集められてセル中の試料溶液Sに照射される。た試料溶液Sからの散乱光は、集光レンズ5で集められ、受光レンズ6、アパーチャ7を通して受光器8によって検出される。
【0011】
前記光源2は、白色光源とモノクロメータの組み合わせで構成してもよく、レーザ発振装置などで構成してもよい。前記受光器8は、CCDなどの半導体素子で構成されたものでもよく、光電子増倍管などでもよい。
試料溶液Sは、セルに収容されているが、図では、セル壁の一部をなす、光透過窓9のみを描いている。
この実施形態では、平行な平面により両面が構成された光軸調整板T,Jを、投光軸上の投光レンズ4と集光レンズ5との間、及び受光軸上の集光レンズ5と受光レンズ6との間に設置している。
【0012】
光軸調整板T,Jの材質は、光を透過させるものなら何でもよく、ガラス、セラミック、合成樹脂などを用いることができる。ただし、屈折率は、空気の屈折率とは異なるものでなければならない。
ここで、図2を用いて試料溶液S中の散乱部分の説明をする。投光軸に沿って照射された光は、散乱体積(図4の斜線部分)から散乱され、その一部が受光軸に沿って射出し、測定される。
【0013】
投光ビームの径と、受光ビームの径とが重なる部分の長さを重なり長L、重なる部分の直径を散乱ビーム径Dで示している。また、投光軸と受光軸とがなす角度を散乱角φで示している。
図1に戻り、光軸調整板T,Jと、光軸とのなす角度は、固定されていてもよく、可変であってもよい。この傾き角度をα1と書く。
傾ける場合の回転軸の方向は、図1のY軸の方向とする。また、傾ける方向は、光軸調整板T,Jの屈折率が空気の屈折率よりも高い場合は、図1に示したように、光軸調整板Tと光軸調整板Jとが、互いに試料溶液S中の焦点位置を向く方向にする。
【0014】
傾き角度α1を変化させる場合、可変方法はどんな方法を用いてもよいが、例えば、図3に示すように、光軸調整板T,Jを一軸回りに回転可能に取り付けて、プーリ11、ベルト12を介してモータ13で回転駆動する方法があげられる。
光軸調整板と、入射光軸とのなす角度α1を0°からずらすと出射光軸が移動する原理を、図4を用いて説明する。光軸調整板の屈折率をn、厚さをtとする。
【0015】
図4に示すように、光軸調整板の入射面21に立てられた法線と入射光軸A1との傾き角をα1とする。入射光は、光軸調整板の入射面21で屈折する。その屈折角をα2で表している。屈折された光は、光軸調整板の出射面22でさらに屈折する。その屈折角はα1となる。光軸調整板の入射面21上の入射点と、出射面22上の出射点との位置ずれを、光軸に垂直に測定すると、Δdとなる。Δdは、幾何光学的考察から、
Δd=tsin(α1−α2)/cosα2
=t sinα1[1− cosα1/√(n− sinα1)]
で表される。このように、光軸の位置ずれΔdは、光軸調整板と入射光軸との傾き角α1の関数で表される。
【0016】
したがって、光軸調整板を傾けることにより、光軸をずらすことができる。
投光軸上の光軸調整板Tを、投光軸が受光軸に近づくように傾け、受光軸上の光軸調整板Jを、受光軸が投光軸に近づくように傾けると、投光軸、受光軸間の間隔d(図1参照)は、
d―2Δd
となる。
【0017】
このように光軸調整板T,Jを設置して投光軸、受光軸間の間隔dを狭くすることができるので、投光レンズ4、受光レンズ6はそのままで、散乱角φを180度に近づけることができる。
なお、図1の実施形態では、光軸調整板T,Jを、投光軸上の投光レンズ4と集光レンズ5との間、及び受光軸上の集光レンズ5と受光レンズ6との間にそれぞれ設置しているが、光軸調整板Tだけ、又は光軸調整板Jだけを設置してもよい。この場合は、投光軸、受光軸間の間隔dは、
d―Δd
となる。
【0018】
【実施例】
図1に示した光学系で、光軸調整板T,Jを設置しない場合と設置した場合とをシミュレーションしてみた。
【0019】
【表1】
Figure 2004109011
【0020】
各レンズ4〜6のパラメータを適当に設定して、ある光学系Aを構成した。散乱角φ、散乱ビーム径D、重なり長Lは、表1に掲げたように、それぞれ172.6度,12.3μm,170μmであった。
屈折率1.5、厚さ3mmの光軸調整板Tを、傾斜角α1=30度で投光軸上に設置し、屈折率1.5、厚さ3mmの光軸調整板J、傾斜角α1=−30度で受光軸上に設置したところ、散乱角φは、表1に掲げたように、2.9度増加して175.5度になり、散乱ビーム径Dは変わらず、重なり長Lは396μm増加して566μmとなった。
【0021】
希薄な溶液を想定すれば、散乱光量は、散乱体積に比例する。散乱体積は、3.3倍になるので、散乱光量も3.3倍になる。
したがって、散乱ビーム径Dはそのままで、散乱角φを180度に近づけることができ、かつ、より明るい散乱光を測定できる。
【0022】
【表2】
Figure 2004109011
【0023】
各レンズ4〜6のパラメータを適当に設定して、他の光学系Bを構成した。散乱角φ、散乱ビーム径D、重なり長Lは、表2に掲げたように、それぞれ173.9度,14.7μm,240μmであった。
屈折率1.5、厚さ4mmの光軸調整板Tを、傾斜角α1=30度で投光軸上に設置し、屈折率1.5、厚さ4mmの光軸調整板J、傾斜角α1=−30度で受光軸上に設置したところ、散乱角φは、表1に掲げたように、3.2度増加して177.1度になり、散乱ビーム径Dは変わらず、重なり長Lは4376μm増加して4619μmとなった。
【0024】
散乱光量は18.5倍になった。
したがって、散乱ビーム径Dはそのままで、散乱角φを180度に近づけることができ、かつ、より明るい散乱光を測定できる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、投光レンズや受光レンズの口径や焦点距離、集光レンズの焦点距離は特に変えなくても、光軸調整板を平行光束の部分に傾けた状態で設置するだけで、散乱角φを180度に近づけることができる。この結果、投受光の重なり長を長くすることができ、散乱光量を多くできる。したがって、散乱光量の少ない希薄溶液から、散乱光量の多い濃厚溶液まで、正確に散乱光の測定を行える、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施形態にかかる散乱光測定装置を示す平面図、(b)は側面図である。
【図2】試料溶液S中の散乱部分の重なり長L、散乱ビーム径D、散乱角φを示す説明図である。
【図3】光軸調整板を回転させる方法を例示した斜視図である。
【図4】光軸調整板を傾けて光軸を移動させる原理を説明するための光路図である。
【符号の説明】
2 光源
3 アパーチャ
4 投光レンズ
5 集光レンズ
6 受光レンズ
7 アパーチャ
8 受光器
9 光透過窓
11 プーリ
12 ベルト
13 モータ
21 入射面
22 出射面
D 散乱ビーム径
L 重なり長
S 試料溶液
T,J 光軸調整板
φ 散乱角

Claims (2)

  1. 光源と、試料溶液を収容する容器と、光源の光を平行光束にする投光レンズと、当該平行光束を集めて試料溶液に照射する集光レンズと、同じ集光レンズで集められた試料溶液からの散乱光を受光器に入射させる受光レンズと、受光器とを備える散乱光測定装置において、
    両面が平行平面状の光軸調整板を、投光レンズと集光レンズとの間の投光軸上、又は受光レンズと集光レンズとの間の受光軸上の平行光束の部分に傾けて設置したことを特徴とする散乱光測定装置。
  2. 前記光軸調整板を投光軸上及び受光軸上にそれぞれ設置している請求項1記載の散乱光測定装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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