JP2004107309A - 口腔用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】有効成分の亜鉛化合物の研磨剤存在下での安定性に優れると共に、高い歯垢抑制効果と歯石予防効果を併せ有し、延いては、う蝕予防、歯肉炎予防、口臭予防に効果がある口腔用組成物を提供する。
【解決手段】研磨剤と水溶性亜鉛化合物を含有する口腔用組成物において、塩基性ペプチドを配合したことを特徴とする口腔用組成物。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水溶性亜鉛化合物を有効成分として含むと共に、その保存安定性に優れ、歯垢抑制、歯石予防、う蝕予防、歯肉炎予防、口臭予防効果をも向上させた口腔用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水溶性亜鉛化合物を、口臭予防や歯石予防等の目的で口腔用組成物に配合することが知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、水溶性亜鉛化合物は、製剤中に多くの遊離亜鉛イオンを放出するため、亜鉛イオンの研磨剤への吸着により、有効成分である亜鉛イオンが減少する欠点が存在する。そこで、この亜鉛化合物の安定性を改善するため、特開平1−239016号公報(特許文献2参照)、特開平2−237910号公報(特許文献3参照)および特開平2−296712公報(特許文献4参照)に亜鉛と相容性の良い無水ケイ酸を使用することが開示されている。しかしながら、その効果は充分なものではなく、又、限定された無水ケイ酸を使用せねばならず、製剤の物性等に悪影響を及ぼす問題がある。又、特開平11−246375号公報(特許文献5参照)には、水溶性亜鉛化合物と水難溶性亜鉛化合物とを併用することにより亜鉛イオンの減少を抑制する方法が開示されている。しかしながら、亜鉛化合物配合量の増加は製剤の味や物性等に悪影響を及ぼす問題がある。
【0003】
【特許文献1】
特開昭60−233008号公報(第1−3頁)
【特許文献2】
特開平1−239016号公報(第1−3頁)
【特許文献3】
特開平2−237910号公報(第1−3頁)
【特許文献4】
特開平2−296712号公報(第1−9頁)
【特許文献5】
特開平11−246375号公報(第1−2頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、研磨剤存在下での亜鉛化合物の安定性を向上させ、亜鉛化合物の有効性を約束できる実用的な口腔用組成物を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記要望に応えるため鋭意検討を重ねた結果、研磨剤と水溶性亜鉛化合物を含有する口腔用組成物に塩基性ペプチドを配合すると亜鉛化合物の安定性が向上すること、さらには、歯垢抑制効果と歯石抑制効果が格段に向上する事を発見し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明によれば、研磨剤と水溶性亜鉛化合物を含有する口腔用組成物において、塩基性ペプチド(特に好ましくはポリリジン)を配合したことを特徴とする口腔用組成物が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0008】
本発明に用いる研磨剤としては、口腔用組成物分野で知られた研磨剤を挙げることができる。例えば、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸水素カルシウム無水物、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、無水ケイ酸等である。その配合量は、製剤により異なるが、通常、口腔用組成物全体の5〜30%(質量百分率、以下同様)である。
【0009】
本発明に用いる水溶性亜鉛化合物とは、25℃において水100gに対して、0.5g以上の亜鉛化合物が完全に溶解するものをいう。使用できる水溶性亜鉛化合物は特に限定されないが、例えば塩化亜鉛、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛を具体的に挙げることができる。これらは、単独でも、2種以上併用しても良い。
【0010】
水溶性亜鉛化合物の配合量は、薬学的許容範囲内であれば良く、具体的には口腔用組成物全体の0.001〜1%の配合量で通常用いられ、特には0.01〜0.5%が好ましい。0.001%未満であると所望の効果が得られず、また1重量%を超えて配合すると亜鉛自体の苦味、収斂味、金属味などが強く感じられるようになり、実使用に耐え難くなる。
【0011】
本発明に用いる塩基性ペプチドとしては、塩基性アミノ酸であるところのリジン、アルギニン、ヒスチジンを多く含み、水溶液中で正電荷となるアミノ酸重合体であり、リジンのホモポリマー、アルギニンのホモポリマー、ヒスチジンのホモポリマー、Lys−His−His−Ser−His−Arg−Gly−Thr、Ala−Lys−Arg−His−His−Gly−Thr−Lys−Arg−Lys−Phe−Hisなどが挙げられる。但し、Lysはリジン、Hisはヒスチジン、Argはアルギニン、Serセリン、Glyはグリシン、Thrはトレオニン、Pheはフェニルアラニンを表わす。
【0012】
その中でも特に好ましい塩基性ペプチドはポリリジンである。ポリリジンは、塩基性アミノ酸であるリジンの重合体であり、重合するアミノ基の位置によりαポリリジンとεポリリジンの二つの構造を取り得るが、いずれの構造のものも本発明に使用し得る。この中で、εポリリジンは、ストレプトマイセス・アルブラス(Streptomyces albulus)により産生され、既存添加物辞典に収載の食品保存料として市販されており、安全性の点から、εポリリジンを用いることが特に望ましい。また、ポリリジンは、市販されている物だけでなく、ペプチド合成に常用される固相法などで、容易に合成することが可能である。又、市販のペプチドシンセサイザーなどによっても合成することもできる。また、本発明のペプチドのアミノ酸配列をコードする遺伝子を利用することで遺伝子工学的手法を用いて、微生物細胞、植物細胞、動物細胞において大量に生産することが可能である。得られた粗合成ペプチドは、ゲル濾過、順相、逆相HPLC、イオン交換カラム精製など、通常の蛋白質・ペブチドの精製に用いられる手段により、さらに高純度化することが可能である。本発明において、ポリリジンは遊離の形で用いることもできるが、無機酸、有機酸の塩の形で用いても有効性は変わらない。
【0013】
塩基性ペプチドの配合量は、口腔用組成物全体の0.001〜5%、特には0.01〜1.0%がとするのが好ましい。
【0014】
本発明の口腔用組成物は、その製剤の特徴に応じ、その他の成分を本発明の効果を著しく損ねない範囲で使用し得る。任意成分としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール等の粘稠剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、キサンタンガム等の粘結剤、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤、サッカリンナトリウム等の甘味剤、その他防腐剤、香料、着色剤、pH調整剤、賦形剤、各種薬効成分等を配合することができる。
【0015】
本発明の口腔用組成物は、研磨剤を含有する口腔用製剤であれば何れにも応用でき、例えば、練歯磨、潤製歯磨、液体歯磨等の歯磨剤の形態とすることが有利である。その調製は通常の方法ででき、又、容器等も通常のものを用いることができる。
【0016】
【発明の効果】
本発明の口腔用組成物は、有効成分の水溶性亜鉛化合物の研磨剤存在下での安定性に優れると共に、高い歯垢抑制効果と歯石予防効果を併せ有する。延いては、う蝕予防、歯肉炎予防、口臭予防に対し高い効果を有する。
【0017】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0018】
[実施例1〜2、比較例1]
表1の組成の歯磨剤を調製し、下記試験法により、亜鉛イオン安定性と歯垢抑制効果と歯石予防効果とを評価した。結果を表1に併記した。
【0019】
<亜鉛イオン安定性>
歯磨剤1gを3倍量の蒸留水に分散し、遠心分離にて上清を得る。さらに、遠心沈査から同様の操作により得た上清と合わせ、上清中に溶解している亜鉛量を原子吸光法により定量した。
【0020】
<歯垢抑制効果>
3週齢(雄)のゴールデンハムスターを1群10匹とし、各ハムスターにストレプトマイシン耐性のう蝕原因菌Streptococcus mutans10449株を感染させた。感染は該菌株を4mLのBHI培地(BBL社製)に1白金耳植菌し、嫌気条件下、36℃、20時間培養した後、この菌液0.1mLを各ハムスターの口中に滴下する事を3日間行った。各ハムスターの菌の定着は、0.1%ストレプトマイシンを含むMS寒天培地(Difuco社製)を用いて確認した。菌の定着を上記のように確認した後、表1の歯磨を製造し、3倍量の水で抽出した液を5週間投与した。投与方法は、ハムスターの口中に0.1mLを1日2回投与した。実験期間中の飼料としては、う蝕誘発性粉末飼料Diet2000(日本クレア社製)を用いた。また、飲料水は、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過したイオン交換水を使用した。各ハムスターの歯垢付着の状態は、臼歯12本につき、島田らの方法(衛生検査技術講座 11巻)により評価し、その合計点で表した。評価基準は以下の通りである
0:染め出された歯垢が無く、小窩裂溝の内容物が点あるいは線状に染まるのみのもの
1:1/3未満の面積が染め出された歯垢で被覆されるもの
2:2/3未満の面積が染め出された歯垢で被覆されるもの
3:2/3以上の面積が染め出された歯垢で被覆されるもの
【0021】
<歯石予防効果>
生後3〜4週の40匹のWistar系ラットを均等な4群に分け以下の3種類の歯磨の水抽出溶液を1日2回綿球で歯に塗布した、餌は歯石形成餌RC−16(Briner et al.,1971)を与えた。4週後の歯石スコアを篠田らの方法(骨代謝、14巻、1号、35〜44)により評価した。歯磨の水抽出液は、歯磨を2倍量(重量)の水で均一に分散し遠心分離した。1群は、実験のコントロールとして蒸留水を1日2回綿球で歯に塗布した。
【0022】
【表1】
Figure 2004107309
【0023】
上記、表1より明らかに、ポリリジン添加により亜鉛イオン溶出量が増加しており、有効成分である亜鉛イオンの製剤中での安定性が向上したことが解る。又、歯垢抑制と歯石予防にも有効であることが解る。
【0024】
以下に、配合例(実施例)を示す。
【0025】
[実施例3] 歯磨剤
Figure 2004107309
【0026】
[実施例4] 歯磨剤
Figure 2004107309
Figure 2004107309
【0027】
[実施例5] 歯磨剤
Figure 2004107309

Claims (2)

  1. 研磨剤と水溶性亜鉛化合物を含有する口腔用組成物において、塩基性ペプチドを配合したことを特徴とする口腔用組成物。
  2. 塩基性ペプチドがポリリジンである請求項1記載の口腔用組成物。
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