JP2004107093A - 給紙装置、記録装置、液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】側面視略D形の形状をなす給紙ローラ3に対向する位置に分離パッド7aが設けられ、給紙ローラ3外周面との間で用紙Pを挟圧することにより、用紙Pの重送を防止する。分離パッド7aは熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、発泡ウレタンと比して摩擦係数が管理し易く、高速給紙において適切な給紙結果を得ることができる。また、用紙Pの給紙速度Vfが25cm/s以上に設定され、これにより、分離パッド7aを通過する際の用紙P先端のめくれ発生率が低減する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被記録材を給紙ローラによって1枚ずつ記録部へと給紙する給紙装置及び該給紙装置を備えた記録装置に関する。また、本発明は、液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、インクジェット式記録ヘッドが用いられ、該記録ヘッドからインクを吐出して被記録媒体に記録を行うプリンタ、複写機およびファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えてその用途に対応する液体を前記インクジェット式記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから被記録材に相当する被噴射媒体に噴射して、前記液体と前記被噴射媒体に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0003】
液体噴射ヘッドとして、前記記録ヘッドの他に、液晶ディスプレー等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレーや面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0004】
【従来の技術】
記録装置の一つとしてインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)があり、プリンタには、複数枚の印刷用紙を積層状態で収納(セット)し、且つ、最上位のものから1枚ずつ記録ヘッド(記録部)へと給送する給紙装置を備えるものがある。
【0005】
この様な給紙装置はホッパを備え、該ホッパによって複数枚積層された印刷用紙(用紙束)を支持する。ホッパは回動支点を有し、回動することにより、複数枚積層された印刷用紙を押し上げて、最上位の印刷用紙を給紙ローラに圧接させる。そして、当該圧接状態で給紙ローラが回動することにより、最上位の印刷用紙が繰り出される。
【0006】
また、給紙装置には、印刷用紙の重送を防止する為に、高摩擦係数を有する分離パッド(摩擦分離材)が設けられている。分離パッドは給紙時に給紙ローラに圧接し、給紙ローラとの間で印刷用紙を挟圧することにより、給送されるべき最上位の印刷用紙と、次位以降の印刷用紙とを摩擦分離する(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ここで、従来のプリンタにおける分離パッドの材料には、主として発泡ウレタンが用いられている。発泡ウレタンは低コストであるとともに、その表面に気泡によって形成された凹部(孔)が多数ある為、これによって摩擦係数が高まり、摩擦分離に必要な摩擦係数(対印刷用紙:0.8〜1.0)を容易に実現することができるからである。加えて、ゴム、コルク等により分離パッドを形成する場合には、摩擦係数を調整するには材質を変更したり、表面を機械的に荒らして粗面化する等の必要があり、従って摩擦係数の調整が困難であるとともにコストアップとなるからである。
【0008】
【特許文献1】
特開平11−292333号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年プリンタには高スループット、高画質化の要請が著しい。そして特に、高スループットの要請に応える為には、給紙装置において給紙ローラを高速に回動駆動し、以て印刷用紙を高速に給紙する必要が生じることになる。
【0010】
しかし、この様な状況において、上述の様な従来の発泡ウレタンによる印刷用紙の摩擦分離は、必ずしも適切なものとは言えなくなってきた。即ち、印刷用紙を高速で給紙するに際しては、印刷用紙を確実に分離すべく、分離パッドと印刷用紙との間の摩擦係数を今まで以上に、よりシビアに管理することが望ましいが、従来の発泡ウレタンからなる分離パッドでは、必ずしも前記摩擦係数を管理し易いとは言えなかった。
【0011】
加えて近年、以下の様な問題も発生している。即ち、印刷用紙がハガキの場合、ハガキによっては、分離パッドを通過する際に”めくれ”を発生させるものがある。より具体的には、ハガキの通信面側がインクジェット記録用としてコート層によって形成されている場合、印刷用紙先端が分離パッドを通過する際に前記コート層が分離パッドに引っ掛かり、これにより、印刷用紙先端が分離パッドを通過するに伴って前記コート層が顕著にめくれるといった問題が発生している。
【0012】
これは、印刷用紙の四辺に余白無く印刷を行うことのできる、所謂縁無し印刷を実行可能なプリンタが近年開発され、市場に出回っているが、この様なプリンタにおいて最初に前記コート層側(通信面側)の縁無し印刷を行い、その後にハガキを裏返して宛名面を印刷すると、縁無し印刷によって用紙先端部分がインクを吸収した状態となっていて、これによって用紙先端部分の強度が低下した状態となっていることから、前記コート層のめくれが容易に発生し易くなる、といった背景に起因するものである。そしてまた、縁無し印刷を行った通信面側にめくれが発生することで、縁無し印刷を行わない場合における非印刷部分がめくれる場合に比して、より一層めくれが目立ち易いといった背景もある。
【0013】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その課題は、分離パッドの摩擦係数を管理し易く、また、分離パッド部分で用紙先端部分にめくれを発生させにくい給紙装置を得ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、回動駆動される給紙ローラと、複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、給紙時には支持した被記録材を前記給紙ローラに圧接させるホッパと、前記給紙ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給紙ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する給紙装置であって、前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、且つ、その摩擦係数が0.85〜0.95になされたことを特徴とする。
【0015】
上記第1の態様によれば、給紙装置において給紙ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成されているので、被記録材との摩擦係数が管理し易いとともに、被記録材先端の引っ掛かりによるめくれを、従来の発泡ウレタンに比して低減させることが可能となる。
【0016】
即ち、従来の発泡ウレタンを用いた摩擦分離材では、発泡させることによって形成される気泡の状態(気泡の多少)によって被記録材との摩擦係数を調整することから、摩擦係数の精密な調整に限界があった。しかし、摩擦分離材を熱可塑性エラストマーの成形によって形成したので、この様な非発泡体により、発泡ウレタンの様な発泡体と比べて前記摩擦係数をより一層精密に調整することが可能となり、具体的には、被記録材との摩擦係数を0.85〜0.95に調整することができる。従って、摩擦係数が0.85〜0.95といった幅の狭い範囲で管理可能であることから、高速給紙等の過酷な条件でも必要な分離性能を確保することが可能となる。
【0017】
また、非発泡体であるので、スライス加工等による加工時に気泡部分でバリが発生することもなく、被記録材先端の引っ掛かりによるめくれを低減させることが可能となる。加えて、コルク等に比して表面の摩擦係数を高めることができ、以て適切な給紙動作を実現することができる。
【0018】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が、25cm/s以上となる様に構成されていることを特徴とする。
本願発明者は、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度を種々変更して実験を行った結果、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度を向上させるに従って、被記録材先端のめくれ発生率が低下し、また、めくれの程度が小さくなる傾向を見い出した。そして、特に、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が25cm/s以上であると、めくれ発生率を飛躍的に低下させる(5%以下)ことができることを見い出した。そこで上記第2の態様では、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が、25cm/s以上となる様に構成したので、これによって被記録材のめくれを効果的に低減させることが可能となる。
【0019】
本発明の第3の態様は、上記第1のまたは第2の態様において、前記摩擦分離材が前記給紙ローラに圧接する力が、2.94N〜3.43Nとなる様に構成されていることを特徴とする
本願発明者は、前記摩擦分離材が前記給紙ローラに圧接する力を種々変更して実験を行った結果、前記摩擦分離材が前記給紙ローラに圧接する力が一定の範囲(2.94N〜3.43N)において、最も被記録材先端がめくれ難く、且つ、被記録材の重送を防止可能であることを見い出した。そこで上記第3の態様によれば、前記摩擦分離材が前記給紙ローラに圧接する力をこの様な範囲となる様に構成することにより、良好な給紙結果を得ることができる。
【0020】
本発明の第4の態様は、上記第1から第3の態様のいずれかにおいて、被記録材先端が前記摩擦分離材に突入する角度が、20°〜25°となる様に構成されていることを特徴とする。
本願発明者は、被記録材先端が前記摩擦分離材に突入する角度を種々変更して実験を行った結果、前記角度が一定の範囲(20°〜25°)において、被記録材先端がめくれ難く、且つ、被記録材の重送を防止可能であることを見い出した。そこで上記第4の態様によれば、被記録材先端が前記摩擦分離材に突入する角度をこの様な範囲となる様に構成することにより、良好な給紙結果を得ることができる。
【0021】
本発明の第5の態様は、上記第1から第4の態様のいずれかにおいて、前記ホッパが前記給紙ローラに圧接する力が、2.45N〜2.94Nとなる様に構成されていることを特徴とする。
本願発明者は、前記ホッパが前記給紙ローラに圧接する力を種々変更して実験を行った結果、前記ホッパが前記給紙ローラに圧接する力が一定の範囲(2.45N〜2.94N)において、被記録材先端がめくれ難く、且つ、被記録材の重送を防止可能であることを見い出した。そこで上記第5の態様によれば、前記摩擦分離材が前記給紙ローラに圧接する力をこの様な範囲となる様に構成することにより、良好な給紙結果を得ることができる。
【0022】
本発明の第6の態様は、回動駆動される給紙ローラと、複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、給紙時には支持した被記録材を前記給紙ローラに圧接させるホッパと、前記給紙ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給紙ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する給紙装置であって、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が、25cm/s以上となる様に構成されていることを特徴とする。
上記第6の態様によれば、前述した本願請求項2記載の発明と同様に、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が、25cm/s以上となる様に構成したので、これによって前述した上記第2の態様と同様に、被記録材のめくれを効果的に低減させることが可能となる。
【0023】
本発明の第7の態様は、回動駆動される給送ローラと、複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、被記録材給送時には支持した被記録材を前記給送ローラに圧接させるホッパと、前記給送ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給送ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する被記録材給送装置であって、前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、且つ、その摩擦係数が0.85〜0.95になされたことを特徴とする。
【0024】
上記第7の態様によれば、前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成されているので、上述した第1の態様と同様に、被記録材との摩擦係数が管理し易いとともに、被記録材先端の引っ掛かりによるめくれを、従来の発泡ウレタンに比して低減させることが可能となる。
【0025】
本発明の第8の態様は、回動駆動される給送ローラと、複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、被記録材給送時には支持した被記録材を前記給送ローラに圧接させるホッパと、前記給送ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給送ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する被記録材給送装置であって、前記摩擦分離材において被記録材と接する摩擦分離面に、当該摩擦分離面と被記録材との密着を防止する密着防止加工が施されていることを特徴とする。
【0026】
被記録材との接触面、即ち摩擦分離面が滑らかな摩擦分離材を用いると、同様に表面が滑らかな被記録材(例えば、光沢紙やフィルムシート等)を給送する際に、摩擦分離面と被記録材とが密着して、ノンフィードが発生したり、或いは給送量が不足して記録開始位置にばらつきが生じる虞がある。特に、近年、被記録材の両面にコート層を有し、両面に記録が可能な被記録材が出回っており、この様な被記録材は記録面と反対側の面、即ち摩擦分離面と接触する面も滑らかであり、摩擦分離面と密着し易い状態となっている。そこで、上記第8の態様においては、摩擦分離面に密着防止加工が施されているので、上述の様な両面記録可能な被記録材やフィルムシート等を給送する際にも、ノンフィード等を防止して適切な給送動作を実行することができる。
【0027】
本発明の第9の態様は、上記第8の態様において、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に形成される溝であることを特徴とする。
上記第9の態様によれば、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に形成される溝であるので、この様な容易に形成可能な溝によって前記摩擦分離面と被記録材との間に空気を介在させることができ、従って低コストに前記密着防止加工を施すことができる。
【0028】
本発明の第10の態様は、上記第9の態様において、前記溝が被記録材の給送方向に延びる様に形成されていることを特徴とする。
上記第10の態様によれば、前記溝が被記録材の給送方向に延びる様に形成されているので、被記録材先端が前記摩擦面に引っ掛かることなく適切な給送動作を実行することができる。
【0029】
本発明の第11の態様は、上記第8の態様において、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に施される皺加工であることを特徴とする。
上記第11の態様によれば、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に施される皺加工であるので、この様な容易に形成可能な皺によって前記摩擦分離面と被記録材との間に空気を介在させることができ、従って低コストに前記密着防止加工を施すことができる。
【0030】
本発明の第12の態様は、上記第8の態様において、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に複数点在する様に形成される微細孔であることを特徴とする。
上記第12の態様によれば、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に複数点在する様に形成される微細孔であるので、この様な容易に形成可能な皺によって前記摩擦分離面と被記録材との間に空気を介在させることができ、従って低コストに前記密着防止加工を施すことができる。
【0031】
本発明の第13の態様は、被記録材に記録を行う記録部を備えた記録装置であって、上記第1から第6の態様のいずれかに記載された給紙装置又は上記第7から第12の態様のいずれかに記載された被記録材給送装置を備えていることを特徴とする。
上記第13の態様によれば、記録装置は、上記第1から第6の態様のいずれかに記載された給紙装置または上記第8から第12の態様のいずれかに記載された被記録材給送装置を備えているので、前述した上記第1から第12の態様のいずれかに記載された発明と同様な作用効果を得ることができる。
【0032】
本発明の第14の態様は、被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、該液体噴射ヘッドの上流側に設けられ、回動駆動される被噴射媒体給送ローラと、複数枚の被噴射媒体を積層状態で支持し、且つ、被噴射媒体給送時には支持した被噴射媒体を前記被噴射媒体給送ローラに圧接させるホッパと、前記被噴射媒体給送ローラに圧接した被噴射媒体の圧接点から下流側に設けられ、前記被噴射媒体給送ローラとの間で被噴射媒体を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被噴射媒体と次位以降の被噴射媒体とを分離する摩擦分離材と、を有する液体噴射装置であって、前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、且つ、その摩擦係数が0.85〜0.95になされたことを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。以下では先ず、本発明に係る「記録装置」「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)100および「被記録材給送装置」としての給紙装置1の、概略構成について主として図1を参照しつつ、適宜図2および図3をも参照しながら説明する。ここで、図1はプリンタ100の側断面概略図であり、図2は給紙装置1の部分拡大斜視図、図3は分離パッド7および予備パッド10の拡大斜視図である。尚、以下では、図1の右側(プリンタ100の後方側)を「上流側」(用紙搬送経路の上流側)と言い、図1の左側(プリンタ100の前方側)を「下流側」(用紙搬送経路の下流側)と言うこととする。
【0034】
プリンタ100は、図1に示す様に上流側に、傾斜姿勢にセットされた「被記録材」「被噴射媒体」の一例としての用紙Pを下流側へと1枚ずつ給送する給紙装置1を備えている。
給紙装置1は、給紙(給送)ローラ3と、パッドホルダ7と、「摩擦分離材」としての分離パッド7aと、ホッパ5と、予備パッド5bと、紙戻しレバー9と、を備えている。
【0035】
図示しない駆動モータによって回動駆動される給紙ローラ3は側面視略D形の形状をなし、回動駆動される回動軸3cに取り付けられるローラ本体3aと、該ローラ本体3aの外周部に巻回されるゴム材3bとから構成されている。給紙ローラ3は、その円弧部分によって用紙Pを給送する一方、平坦部分によって用紙Pを通過させて、下流側の搬送ローラ17による搬送動作時に搬送負荷を与えない様になっている。
【0036】
ホッパ5は板状体からなり、図示する様に傾斜姿勢に設けられ、且つ、上部に設けられた回動軸5aを中心に図1の時計方向及び反時計方向に揺動可能に設けられている。ホッパ5の下部にはホッパばね8が設けられ、ホッパ5の下部を、給紙ローラ3に向けて付勢する。一方、ホッパ5は、図示しないカム機構により、ホッパばね8の付勢力に抗してホッパ5の下部を給紙ローラ3から離間する方向に揺動する様になっている。
【0037】
即ち、ホッパ5は、下部が給紙ローラ3に対して圧接及び離間動作する様になっていて、ホッパ5が給紙ローラ3に対して圧接する方向に揺動すると、ホッパ5上に堆積された用紙Pの束は給紙ローラ3に圧接し、そして当該圧接状態で給紙ローラ3が回動することにより、堆積された用紙Pの最上位のものが下流側へと給送される。
【0038】
尚、ホッパ5の下端部には、図3にも示す様に予備パッド5bが設けられている。予備パッド5bは、給紙ローラ3の回動による給紙動作の際に、用紙Pが束ごと給送されない様に、即ち、用紙Pの束の最下位のものの裏面との間で摩擦力を発揮する様に、摩擦係数の大なる部材(例えば、コルク)によって形成されている。
【0039】
次に、ホッパ5の下部には、図2にも示す様にホッパホルダ7および用紙ガイド部材11が設けられている。ホッパホルダ7は、図2に示す様に被記録材の幅方向において給紙ローラ3と対向する位置に設けられ、用紙ガイド部材11は、被記録材の幅方向に複数設けられている。
【0040】
より具体的には、パッドホルダ7は、図1に示す様にホッパ5と同様に上部の回動軸7bを中心にして図1の時計方向および半時計方向に揺動可能に設けられている。パッドホルダ7の下部にはパッドばね10が設けられ、パッドホルダ7を、後述する分離パッド7aが給紙ローラ3に圧接する方向に付勢する。
【0041】
パッドホルダ7において給紙ローラ3の外周面と対向する位置には「摩擦分離材」としての分離パッド7aが設けられている。分離パッド7aは高摩擦部材からなり、給紙ローラ3の円弧部分が分離パッド7aと対向する位置に回動すると、給紙ローラ3の円弧部分と圧接して圧接部を形成することができる様になっている。
【0042】
そして、ホッパ5上にセットされた用紙Pの束が給紙ローラ3に圧接した状態で給紙ローラ3が回動し、これによって下流側へと繰り出される最上位の用紙Pは、前記圧接部を通過して下流側へと進むが、最上位の用紙Pにつられて下流側へと進もうとする次位以降の用紙Pは、前記圧接部により、下流側への進行が阻止される。つまり、この様な摩擦分離方式により、用紙Pの重送が防止される。
【0043】
より具体的には、用紙Pと給紙ローラ3との間の摩擦係数をμ1、用紙P間の摩擦係数をμ2、用紙Pと分離パッド7aとの間の摩擦係数をμ3とすると、これらの関係が、μ1>μ3>μ2となる様に、給紙ローラ3の外周に巻回されるゴム材3bと、分離パッド7aとが形成されている。尚、分離パッド7aについては、後に詳説することとする。
用紙ガイド部材11は、図1および図2に示す様に給紙ローラ3と対向する側に傾斜面を有し、該傾斜面によって用紙Pを下流側へと滑らかにガイドする。
【0044】
次に、図2にも示す様に紙戻しレバー9はレバー形状をなし、ホッパ5の下部に配置され、回動支点9aを中心に図示しない駆動機構によって図1の時計方向および反時計方向に回動可能となる様に設けられている。この紙戻しレバー9は、用紙Pの給紙動作時には下流側に倒れた状態となっていて、用紙Pの給送を阻害しない状態となっている。そして、用紙Pの給紙が行われ、給送される用紙Pの先端が紙戻しレバー9の下流側に進むと、紙戻しレバー9は上流側に向かって起き上がり(図1に示す状態)、給送される用紙Pにつられて重送されようとする次位以降の用紙Pを、上流側に押し戻す機能を果たす。従ってこれにより、用紙Pの重送が更に確実に防止される。
【0045】
次に、給紙装置1の下流には板状体からなる紙案内15が略水平に設けられ、給紙ローラ3によって繰り出された用紙Pの先端が該紙案内15に斜めに当接し、滑らかに下流側に案内される。紙案内15から下流には回動駆動される搬送駆動ローラ17aと、該搬送駆動ローラ17aに圧接する搬送従動ローラ17bとからなる搬送ローラ17が設けられ、用紙Pは、当該搬送駆動ローラ17aと搬送従動ローラ17bとにニップされて、一定ピッチで下流側に搬送される。ここで、搬送従動ローラ17bは搬送従動ローラホルダ21の下流側に軸支されていて、当該搬送従動ローラホルダ21は、回動軸21aを中心に図1の時計方向及び反時計方向に回動可能に設けられ、且つ、図示しないねじりコイルばねによって搬送従動ローラ17bが常に搬送駆動ローラ17aに圧接する方向(図1の反時計方向)に回動付勢されている。尚、搬送駆動ローラ17aは、主走査方向(図1の紙面表裏方向)に長い軸体からなり、搬送従動ローラ17bと搬送従動ローラホルダ21とは、共に搬送駆動ローラ17aの軸方向に複数配設されている(図示は省略)。
【0046】
次に、最も0桁側(図1の紙面表側)に位置する搬送従動ローラホルダ21近傍には、用紙Pの通過を検出する、センサ本体部19bと検出レバー19aとからなる紙検出器19が配設されている。検出レバー19aは側面視略「く」の字の形状をなし、その中央付近の回動軸19cを中心に図2の時計方向及び反時計方向に回動可能に設けられている。検出レバー19aの上方に位置するセンサ本体部19bは発光部(図示せず)及び該発光部からの光を受ける受光部(図示せず)を備え、検出レバー19aの回動軸19cから上側が、その回動動作により、前記発光部から前記受光部に向かう光の遮断及び通過を行う様になっている。従って、図2に示す様に用紙Pの通過に伴って検出レバー19aが上方に押し上げられるように回動すると、検出レバー19aの上側がセンサ本体部19bから外れ、これによって前記受光部が受光状態となって、用紙Pの通過を検出する様になっている。
【0047】
続いて、搬送駆動ローラ17aの下流には、プラテン27及びインクジェット記録ヘッド25が上下に対向する様に配設され、搬送ローラ17によってインクジェット記録ヘッド25の下へ搬送される用紙Pは、プラテン27によって下から支持される。インクジェット記録ヘッド25はインクカートリッジ31を搭載するキャリッジ23の底部に設けられ、該キャリッジ23は、主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延び、図示しないメインフレームによって支持されるキャリッジガイド軸33により、主走査方向にガイドされる様になっている。そして、キャリッジ23が主走査方向に往復動しながら記録ヘッド25(図2)によってインクカートリッジ24から供給されたインク滴が吐出されることにより、用紙Pへの印刷が実行される。
【0048】
次に、インクジェット記録ヘッド25から下流は排紙部となっていて、回動駆動される排紙駆動ローラ29aと、自由回動可能な排紙従動ローラ29bとからなる排紙ローラ29が設けられている。従ってインクジェット記録ヘッド25によって印刷の行われた用紙Pは、排紙駆動ローラ29aと排紙従動ローラ29bとによってニップされた状態で排紙駆動ローラ29aが回動することにより、矢印方向に排出される。また、排紙従動ローラ29bのやや上流側には、自由回動可能な補助ローラ30が配設されていて、用紙Pのプラテン27からの浮き上がりを防止する様になっている。
【0049】
以上がプリンタ100の用紙搬送経路の構成であり、以下、給紙装置1について、分離パッド7aを中心として図4乃至図11を参照しつつ詳説する。ここで、図4は給紙ローラ3、ホッパ5、分離パッド7aの位置関係を示す説明図であり、図5は給紙速度と用紙先端のめくれ発生率との関係を示す図であり、図6は摩擦分離材(分離パッド7a)にかける荷重と用紙先端のめくれ発生率との関係を示す図である。また、図7は用紙Pの積層枚数が多い場合と少ない場合における、用紙P先端の分離パッド7aに突入する突入角の違いを示す説明図である。更に、図8及び図9は分離パッド7aの他の実施形態を示す斜視図、図10は給紙ローラ3と用紙Pとの接触の状態を示す図であり、図11は給紙速度と打痕長さとの関係を示す図である。
【0050】
先ず、図4において、符号αは用紙P先端が分離パッド7aに突入する突入角度(以下「用紙突入角度α」と言う)を示している。また、符号Vfは用紙Pの給紙速度を示し(以下「給紙速度Vf」と言う)、符号Fhは用紙Pが給紙ローラ3に圧接する力(ホッパばね8の付勢力:以下「ホッパ圧接力Fh」と言う)、符号Fpは分離パッド7aが給紙ローラ3に圧接する力(パッドばね10の付勢力:以下「パッド圧接力Fp」と言う)を示している。
【0051】
分離パッド7aは、本実施形態では熱可塑性エラストマーを用いた射出成形によって形成されている。熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系、オレフィン系を挙げることができる。分離パッド7aとして熱可塑性エラストマーを用いることにより、以下の様な作用効果を得ることができる。即ち、従来の様に発泡ウレタンによって分離パッド7aを形成する場合には、発泡させることによって形成される気泡の状態(気泡の多少)によって用紙Pとの摩擦係数(μ3)を調整することから、摩擦係数の精密な調整に限界があった。しかし、分離パッド7aを熱可塑性エラストマーを用いた射出成形によって形成することにより、摩擦係数を発泡ウレタンに比して精密に調整することが可能となり(例えば、0.85〜0.95)、これにより、用紙Pを高速で給紙する際にも、確実な分離を行うことが可能となる。また、分離パッド7aとしてコルクを用いる場合よりも、より高い摩擦係数(0.8以上)を得ることができる。更に、分離パッド7aの硬度調整も容易である。
【0052】
加えて、分離パッド7aを発泡ウレタンによって形成する場合には、スライス加工等によって分離パッド7aの表面の気泡部分にバリが発生する。このバリは、用紙Pが、印刷面がコート層によって形成されたハガキの場合には、用紙P先端が分離パッド7aに突入する際に前記コート層を剥がし、めくれ部分を形成するといった問題が生じる。しかし、本実施形態に係る分離パッド7aは熱可塑性エラストマーを用いた射出成形によって形成されるので、表面には気泡部分によって発生するバリがなく、以て上述の様なめくれの発生を低減することができる。
【0053】
次に、給紙速度Vfと用紙先端のめくれ発生率との関係について図5を参照しながら説明する。図5は、分離パッド7aとして従来の発泡ウレタンを用いた場合における、給紙速度Vfと用紙先端めくれ発生率との関係を示す図である。尚、用いた用紙Pはスーパーファインハガキ(以下「用紙1」とする)であり、分離パッド7aと用紙1との摩擦係数(μ3)は0.8〜1.0、用紙突入角度αは20°〜30°、パッド圧接力Fpおよびホッパ圧接力Fhは2.94〜3.43Nによって実験を行った。
【0054】
図示する様に、給紙速度Vfが低い場合には用紙先端めくれの発生率が高いが、給紙速度Vfを向上させるに従って、用紙先端のめくれ発生率が低下する。特に、給紙速度Vfを25cm/s以上とすれば、用紙先端のめくれ発生率を飛躍的に低下させることが可能であることが判明した。従って、給紙速度Vfを25cm/s以上とすることにより、高速な給紙動作を行うとともに、用紙先端のめくれ発生率を低下させることができる。尚、実験において少なくとも給紙速度Vf=25.4cm/sにおいては、用紙1の重送は発生しなかった。また、上記条件において、分離パッド7aを、前述した熱可塑性エラストマーを用いたものとすることにより、給紙速度Vf=25.4cm/sにおける用紙先端のめくれ発生率が、図5に示す発泡ウレタンの場合よりも更に低下(ほぼゼロ)することが判明した。しかしながら、給紙速度Vfを25cm/s以上とすることにより、分離パッド7aが発泡ウレタンの場合であっても、用紙先端のめくれ発生率を飛躍的に低下させることができることは、上述の通りである。
【0055】
次に、パッド圧接力Fpと用紙先端のめくれ発生率との関係について図6を参照しながら説明する。図6は、分離パッド7aとして熱可塑性エラストマーのものを用いた場合の、パッド圧接力Fpと用紙先端めくれ発生率との関係を示した図である。尚、用いた用紙Pは、前記用紙1の他に、PMマットハガキ(以下「用紙2」とする)を用い、その他の条件については、上記と同様である。
【0056】
図示する様に、パッド圧接力Fpが大きい場合には、用紙1および用紙2共に用紙先端のめくれ発生率が高いが、パッド圧接力Fpを小さくするに従って、用紙先端のめくれ発生率が低下する。特に、パッド圧接力Fpが3.5Nよりも小さい場合には、用紙1については特に用紙先端のめくれ発生率が低下し、パッド圧接力Fpが3Nよりも小さい場合には、用紙1、用紙2共に用紙先端のめくれ発生率がほぼゼロとなった。しかしここで、パッド圧接力Fpを小さくすると、用紙の重送が発生し易くなることが判っている。実験においては、パッド圧接力Fpは、2.45N〜3.43Nに設定することが望ましく、特に、パッド圧接力Fpを、2.94〜3.43Nに設定すると、極めて良好な結果が得られることが判明した。
【0057】
また、用紙突入角度αについては、20°〜30°が望ましく、特に、20°〜25°の場合に、用紙Pの重送防止および用紙先端のめくれ発生率低下の観点から、最もバランスが良いことが判明した。更に、ホッパ圧接力Fhについては、1.96N〜3.43Nが望ましく、特に、2.45〜2.94Nの場合に、用紙Pの重送防止および用紙先端のめくれ発生率低減の観点から、最もバランスが良いことが判明した。
【0058】
以上により、本実施形態では、分離パッド7aと用紙Pとの摩擦係数を0.85〜0.95、給紙速度Vfを25.4cm/s、パッド圧接力Fpを2.94〜3.43N、ホッパ圧接力Fhを2.45〜2.94N、用紙突入角度αを20°〜25°、となる様に給紙装置1を構成している。そしてこれにより、用紙Pの重送を防止しながら、用紙Pを高速に給紙すると共に、用紙先端のめくれ発生率を低下させることができる様になっている。
【0059】
尚、用紙突入角度αは、図7(A)、(B)に示す様に、ホッパ5上に積層された用紙Pの枚数によって変化する。即ち、ホッパ5上に積層された用紙Pの枚数が最大の場合に突入角度αは図7(A)に示す様にαmaxとなり、ホッパ5上に積層された用紙Pの枚数が少ない場合に突入角度αは図7(B)に示す様にαmin(<αmax)となる。従ってこれを考慮して、本実施形態では、αmax≦25°となる様に構成し、用紙Pの積層枚数に関わらず、適切な給紙動作を行える様になっている。
【0060】
続いて、図8及び図9を参照しながら、分離パッド7aの他の実施形態、具体的には、ノンフィード防止の為の分離パッド7aの形態について説明する。
分離パッド7aの材質として本実施形態の様に熱可塑性エラストマーを用いると、用紙Pとの接触面(以下「摩擦分離面」と言う)が滑らかになり易い。摩擦分離面が滑らかになると、用紙Pとして表面が滑らかなもの(例えば、光沢紙やフィルムシート等)を給送する際に、摩擦分離面と用紙Pとが密着して、ノンフィードが発生したり、或いは給送量が不足して印刷開始位置にばらつきが生じる虞がある。
【0061】
より詳しくは、近年、用紙Pには両面にコート層を有し、両面に写真並の高画質印刷が可能なものが出回っており、この様なものは印刷面と反対側の面、即ち摩擦分離面と接触する面も滑らかであり、摩擦分離面と密着し易い状態となっている。そこで、摩擦分離面に「密着防止加工」を施すことにより、摩擦分離面と用紙Pとの密着を防止して適切な給送動作を実行することが可能となる。
【0062】
図8(A)は、摩擦分離面に、密着防止加工として用紙給送方向(図の矢印方向)に延びる溝7cを複数形成した形態を示している。この様に溝7cを形成することにより、摩擦分離面と用紙Pとの間に空気を介在させることができ、以て摩擦分離面と用紙Pとの密着を防止することができる。また、この様に容易に形成可能な溝により、極めて低コストに密着防止加工を施すことができる。
【0063】
尚、本実施形態では、溝7cは用紙給送方向に真っ直ぐに延びる様に形成しているが、必ずしもこの様に形成する必要は無く、摩擦分離面と用紙Pとの間に空気を介在させることができればどの様なものであっても良い。しかし、本実施形態の様に用紙給送方向に真っ直ぐに延びる様に形成することにより、用紙P給送時に用紙P先端が引っ掛かるといった不具合を防止することができる。また、断面形状についても、本実施形態においては図示する様に方形の形状を成す様に形成しているが、V字形の形状等、どの様なものであっても構わない。
【0064】
次に、図8(B)は、摩擦分離面に、密着防止加工として微細孔7dを複数点在する様に形成した形態を示している。この様に微細孔7dを複数点在する様に形成することにより、上記溝7cと同様に、摩擦分離面と用紙Pとの間に空気を介在させることができ、以て摩擦分離面と用紙Pとの密着を防止することができる。また、この様に容易に形成可能な微細孔7dにより、極めて低コストに密着防止加工を施すことができる。
【0065】
更に、図9は摩擦分離面に、密着防止加工として皺加工を施した形態を示している。この様に摩擦分離面に皺7eを形成することにより、上記溝7cと同様に、摩擦分離面と用紙Pとの間に空気を介在させることができ、以て摩擦分離面と用紙Pとの密着を防止することができる。また、この様に容易に形成可能な皺により、極めて低コストに密着防止加工を施すことができる。尚、皺加工以外にも、エンボス加工を施すことにより、同様な作用効果を得ることもできる。更に、研磨加工を施すことによっても、同様な作用効果を得ることができる。この場合、用紙P先端の引っ掛かりを防止すべく、用紙Pの給送方向に順目となる様に前記研磨加工を行うことが望ましい。
【0066】
続いて、図10及び図11を参照しながら、用紙給送時に用紙Pに形成される擦り傷(打痕)低減対策について説明する。図10(A)に示す様に給紙ローラ3は、樹脂材料によって形成された、側面視略D形の形状をなすローラ本体3aと、該ローラ本体3aの外周面3cに巻回されるゴム材3bとから構成されている。ローラ本体3aはドラム形の形状をなす様に形成され、ゴム材3bは、ローラ本体3aの鍔部(符号3e及び3fで示す部分)の内側に巻回されることにより、軸方向に外れない様に拘束されている。
【0067】
図示する様に、鍔部3eはD形の形状における円弧領域を形成し、鍔部3fはD形の形状における平坦領域を形成するが、鍔部3fは、鍔部3eよりも外周面3dからより多く突出する様に形成されていて、従って外周面3dにゴム材3bが巻回されると、図示する様に鍔部3e(円弧領域)においてはゴム材3bが露出し、一方で鍔部3f(平坦領域)においてはゴム材3bは露出せず、鍔部3fに隠れる様になっている。従って、鍔部3f(平坦領域)では、用紙Pはゴム材3bと接触しない様になっている。
【0068】
これは、図10(A)に示す様に、鍔部3fを用紙給送経路に向けて極力突出させることにより、用紙Pを湾曲(屈曲)させ易くする為である。また、用紙Pが下流側の搬送ローラ17(図1)によって搬送中に、ゴム材3bと接触することによって搬送負荷を発生させない為である。そこで、特に図10(A)に示す様に給紙ローラ3の円弧領域と平坦領域とが交差する2つの交差位置a、bにおいては、用紙Pがゴム材3bと接触しない様に構成されている。しかし、用紙Pを給送する際、図10(B)に示す様に、交差位置aが用紙Pを介して分離パッド11に圧接する。すると、用紙Pに、局所的な目立ち易い擦り傷(打痕)を形成してしまう場合がある。
【0069】
そこで本願発明者は用紙P給送の際の条件を種々検討したところ、上記擦り傷(打痕)の濃淡(見えやすさ:即ち濃いほど目立ち易い)が、パッド圧接力Fpに依存し、擦り傷(打痕)の長さが、給紙速度Vfに依存することに想到するに至った。図11は、給紙速度Vfと擦り傷(打痕)長さとの関係を、分離パッド11の長さL及びパッド圧接力Fpの条件を変化させて実際に求めたデータをプロットしたものである。
【0070】
図示する様に、給紙速度Vfが早い程打痕長さが小さくなり、また、分離パッドの長さLが長い程打痕長さが小さくなる。尚、パッド荷重Fpは打痕長さにはさほど影響がないが、実際には、打痕の濃淡に影響し、大なる程濃くそして目立つ易くなり、小なるほど淡くそして目立ち難くなる傾向がある。
以上により、本実施形態においては、給紙速度Vfを20.32cm/s(8インチ/sec)とし、分離パッドの長さLを15.65mm、パッド圧接力Fpを2.793N(285gf)として、適切な給紙動作を行える様に構成している。
【0071】
以上説明した様に、本発明によれば、給紙装置において給紙ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成されているので、被記録材との摩擦係数が管理し易いとともに、被記録材先端の引っ掛かりによるめくれを、従来の発泡ウレタンに比して低減させることが可能となる。即ち、従来の発泡ウレタンを用いた摩擦分離材では、発泡させることによって形成される気泡の状態(気泡の多少)によって被記録材との摩擦係数を調整することから、摩擦係数の精密な調整に限界があった。しかし、摩擦分離材を熱可塑性エラストマーの成形によって形成したので、この様な非発泡体により、前記摩擦係数をより一層精密に調整することができる。また、非発泡体であるので、スライス加工等による加工時に気泡部分でバリが発生することもなく、被記録材先端の引っ掛かりによるめくれを低減させることが可能となる。加えて、コルク等に比して表面の摩擦係数を高めることができ(対印刷用紙:例えば、0.8〜1.0)、以て適切な給紙動作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るプリンタの側断面概略図である。
【図2】本発明に係る給紙装置の部分拡大斜視図である。
【図3】分離パッドおよび予備パッドの外観斜視図である。
【図4】給紙ローラ周りの位置関係を示す説明図である。
【図5】給紙速度と用紙めくれの発生率との関係を示す図である。
【図6】パッド圧接力と用紙めくれ発生率の関係を示す図である。
【図7】用紙突入角の違いを示す説明図である。
【図8】分離パッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】分離パッドの他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】給紙ローラと用紙との接触の状態を示す図である。
【図11】給紙速度と打痕長さとの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 給紙装置、3 給紙ローラ、5 ホッパ、7 パッドホルダ、7a 分離パッド、8 ホッパばね、9 紙戻しレバー、10 パッドばね、11 用紙ガイド部材、17 搬送ローラ、23 キャリッジ、25 インクジェット記録ヘッド、27 プラテン、29 排紙ローラ、100 インクジェットプリンタ
Claims (14)
- 回動駆動される給紙ローラと、
複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、給紙時には支持した被記録材を前記給紙ローラに圧接させるホッパと、
前記給紙ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給紙ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する給紙装置であって、
前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、且つ、その摩擦係数が0.85〜0.95になされたことを特徴とする給紙装置。 - 請求項1において、前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が、25cm/s以上となる様に構成されている、
ことを特徴とする給紙装置。 - 請求項1または2において、前記摩擦分離材が前記給紙ローラに圧接する力が、2.94N〜3.43Nとなる様に構成されていることを特徴とする給紙装置。
- 請求項1から3のいずれか1項において、被記録材先端が前記摩擦分離材に突入する角度が、15°〜25°となる様に構成されていることを特徴とする給紙装置。
- 請求項1から4のいずれか1項において、前記ホッパが前記給紙ローラに圧接する力が、2.45N〜2.94Nとなる様に構成されていることを特徴とする給紙装置。
- 回動駆動される給紙ローラと、
複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、給紙時には支持した被記録材を前記給紙ローラに圧接させるホッパと、
前記給紙ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給紙ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する給紙装置であって、
前記摩擦分離材を通過する被記録材の通過速度が、25cm/s以上となる様に構成されている、
ことを特徴とする給紙装置。 - 回動駆動される給送ローラと、
複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、被記録材給送時には支持した被記録材を前記給送ローラに圧接させるホッパと、
前記給送ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給送ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する被記録材給送装置であって、
前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、且つ、その摩擦係数が0.85〜0.95になされたことを特徴とする被記録材給送装置。 - 回動駆動される給送ローラと、
複数枚の被記録材を積層状態で支持し、且つ、被記録材給送時には支持した被記録材を前記給送ローラに圧接させるホッパと、
前記給送ローラに圧接した被記録材の圧接点から下流側に設けられ、前記給送ローラとの間で被記録材を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被記録材と次位以降の被記録材とを分離する摩擦分離材と、を有する被記録材給送装置であって、
前記摩擦分離材において被記録材と接する摩擦分離面に、当該摩擦分離面と被記録材との密着を防止する密着防止加工が施されている、
ことを特徴とする被記録材給送装置。 - 請求項8において、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に形成される溝である、
ことを特徴とする被記録材給送装置。 - 請求項9において、前記溝が被記録材の給送方向に延びる様に形成されている、
ことを特徴とする被記録材給送装置。 - 請求項8において、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に施される皺加工である、
ことを特徴とする被記録材給送装置。 - 請求項8において、前記密着防止加工が、前記摩擦分離面に複数点在する様に形成される微細孔である、
ことを特徴とする被記録材給送装置。 - 被記録材に記録を行う記録部を備えた記録装置であって、請求項1から6のいずれか1項に記載された給紙装置又は請求項7から12のいずれか1項に記載された被記録材給送装置を備えていることを特徴とする記録装置。
- 被噴射媒体に液体噴射を行う液体噴射ヘッドと、
該液体噴射ヘッドの上流側に設けられ、回動駆動される被噴射媒体給送ローラと、
複数枚の被噴射媒体を積層状態で支持し、且つ、被噴射媒体給送時には支持した被噴射媒体を前記被噴射媒体給送ローラに圧接させるホッパと、
前記被噴射媒体給送ローラに圧接した被噴射媒体の圧接点から下流側に設けられ、前記被噴射媒体給送ローラとの間で被噴射媒体を挟圧することにより、給送されるべき最上位の被噴射媒体と次位以降の被噴射媒体とを分離する摩擦分離材と、を有する液体噴射装置であって、
前記摩擦分離材が、熱可塑性エラストマーの成形によって形成され、且つ、その摩擦係数が0.85〜0.95になされたことを特徴とする液体噴射装置。
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Cited By (2)
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JP2009162637A (ja) * | 2008-01-08 | 2009-07-23 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 表面プラズモン共鳴測定装置 |
JPWO2009057359A1 (ja) * | 2007-10-31 | 2011-03-10 | 大日本スクリーン製造株式会社 | 添加剤除去方法、添加剤除去装置およびメッキシステム |
-
2003
- 2003-02-07 JP JP2003030301A patent/JP2004107093A/ja active Pending
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JP2009162637A (ja) * | 2008-01-08 | 2009-07-23 | Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> | 表面プラズモン共鳴測定装置 |
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