JP2004106474A - インクジェット記録装置、インクジェット記録方法及びインクジェット記録用のコンピュータプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルの乾燥を原因とするノズルからのインク吐出不良を発生しにくくする。
【解決手段】画像信号に基づいて生成した1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出し(度数分布作成部57)、算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させ(度数分布履歴記憶部58)、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と算出した度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し(回転角決定部59)、選択された印字方向となるように印字処理を実行する(印字データ回転部60)。これにより、インクを吐出させないノズルが発生する頻度が少なくなり、ノズルのインク吐出不良の発生防止が図られる。
【選択図】 図1
【解決手段】画像信号に基づいて生成した1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出し(度数分布作成部57)、算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させ(度数分布履歴記憶部58)、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と算出した度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し(回転角決定部59)、選択された印字方向となるように印字処理を実行する(印字データ回転部60)。これにより、インクを吐出させないノズルが発生する頻度が少なくなり、ノズルのインク吐出不良の発生防止が図られる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドを使用し、このインクジェットプリンタヘッドを画像信号に基づいて駆動制御し、各ノズルから記録媒体に選択的にインク滴を飛翔させて画像形成を行なうインクジェット記録装置、そのようなインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用のコンピュータプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録装置では、シリアル型のインクジェットプリンタヘッドを用いたシリアル方式の記録動作を行なうものが広く普及している。ところが、シリアル方式のインクジェット記録装置では、ノズル数が少ないインクジェットプリンタヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に何度も走査しながら記録動作を完遂するという構造上、自ずとヘッド走査回数が増え、記録時間が長くなってしまうという問題がある。
【0003】
これに対して、高速度な記録を実現するための手法として、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いたライン方式の記録手法がある。このようなライン方式の記録は、一回の記録媒体の搬送で記録動作を終了する1パス記録方式であり、そのために極めて高速な記録動作を実現することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなライン方式の記録は、例えばレシート印字等のような幅が比較的狭い記録媒体に対して印字を行なう方式として広く普及しているが、近年、ある程度の長さを持ったライン型のインクジェットプリンタヘッドが開発され、例えばA4用紙のような幅が広い記録媒体に対してもライン方式を用いた記録動作が可能になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平06−210879号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式での記録動作を実行する場合、インクジェットプリンタヘッドの各ノズルの位置と記録媒体の主走査方向の位置とは常に一定となる。それにも拘らず、記録される画像、特に文書やレイアウトされた画像等では、記録媒体の主走査方向の位置が常に一定であることが珍しくない。このため、インクジェットプリンタヘッドにおいて、使用するノズルに偏りが生じてしまい、長時間インクの吐出が行なわれないノズルが発生してしまうことがある。例えば、図5に例示するような画像を記録媒体101に記録するような場合、インクジェットヘッド102においては、画像が存在しない部分に対応するノズル群103が全く使用されず、これらのノズル群103に含まれているノズル(図示せず)は長時間非吐出状態となってしまう。これに対して、インクジェットプリンタヘッドでは、ノズルからインクを吐出しない時間が長くなるにつれ、そのノズルに吐出不良が発生し易くなる。
【0007】
このようなことから、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用すると、ノズルのインク吐出不良が発生しやすくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルの乾燥を原因とするノズルからのインク吐出不良を発生しにくくすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと記録媒体とをノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させながらインクジェットプリンタヘッドと副走査駆動部とを駆動制御して印字を行なうインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、インクジェット記録用のコンピュータプログラムについての新規な構成を規定する。
【0010】
つまり、本発明は、画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成し、生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出し、算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させ、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し、選択された印字方向となるように印字データに基づくインクジェットプリンタヘッドの駆動制御と副走査駆動部の駆動制御とを実行するという各種の処理を実行する。これらの各処理は、インクジェット記録装置では手段、インクジェット記録方法では工程、インクジェット記録用のコンピュータプログラムでは機能としてそれぞれ実行される。これにより、縦横上下反転のうちでノズルの乾燥防止に有利な印字方向で印字が行なわれることになり、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルのインク吐出不良が発生しにくくなる。
【0011】
本発明は、また、画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成し、生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出し、これから印字しようとする印字データについて算出された度数分布とに基づいて正位置及び縦横反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し、選択された印字方向となるように印字データに基づくインクジェットプリンタヘッドの駆動制御と副走査駆動部の駆動制御とを実行するという各種の処理を実行する。これらの各処理は、インクジェット記録装置では手段、インクジェット記録方法では工程、インクジェット記録用のコンピュータプログラムでは機能としてそれぞれ実行される。これにより、縦横反転のうちでノズルの乾燥防止に有利な印字方向で印字が行なわれることになり、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルのインク吐出不良が発生しにくくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を図1ないし図4に基づいて説明する。
【0013】
図1はインクジェット記録装置の機能ブロック図、図2はインクジェット記録装置の外観を概略的に示す斜視図、図3は画像回転について説明する模式図、図4はノズル乾燥防止のための処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0014】
本実施の形態のインクジェット記録装置は、図2に示すように、記録媒体1を搬送するベルト搬送機構2上にライン型のインクジェットプリンタヘッド3が位置付けられて構成されており、図1に示す制御系51によって各部が駆動制御され、入力された画像信号に基づく記録動作を実行する。
【0015】
インクジェットプリンタヘッド3は、ライン型であれば、そのインク吐出方式を問わない。つまり、バブルジェット(登録商標)方式、電歪素子を用いて圧力室を変形させる方式、その他のあらゆる方式のインク吐出方式をインクジェットプリンタヘッド3に適用することが可能である。但し、本明細書中では、インクジェットプリンタヘッド3に適用するインク吐出方式の種類を問わず、図示しないノズルからインク滴を吐出させるための駆動源をアクチュエータと呼ぶ。
【0016】
ベルト搬送機構2は、一対のプーリ4に記録媒体1よりも幅広の平ベルトである媒体搬送ベルト5がエンドレスに架け渡されて構成されている。このようなベルト搬送機構2は、図1に示す用紙搬送系52に含まれている図示しない用紙搬送用モータに一方のプーリ4が駆動されて回転することにより媒体搬送ベルト5が回転動作することで、この媒体搬送ベルト5上に位置する記録媒体1を上流(図2中の手前側)から下流(図2中の奥側)に向けて搬送する。このような記録媒体1の搬送方向は、インクジェット記録装置における記録動作という観点から見ると、副走査方向である。この意味で、ベルト搬送機構2及び用紙搬送系52に含まれている図示しない用紙搬送用モータ等のハードウェア資源は、インクジェットプリンタヘッド3と記録媒体1とをノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部6を構成する。
【0017】
図2では省略されているが、本実施の形態のインクジェット記録装置には、媒体搬送ベルト5の上流側に図示しない給紙装置が設けられ、媒体搬送ベルト5の下流側には図示しない媒体ストッカが設けられている。給紙装置は、複数枚の記録媒体1を積層収容し、図1に示す用紙搬送系52で生成された給紙命令信号に応じて最上位又は最下位の記録媒体1を媒体搬送ベルト5上に給送する。媒体ストッカは、媒体搬送ベルト5によって搬送された記録済みの記録媒体1を次々と積層状態で収容する。
【0018】
インクジェットプリンタヘッド3は、図示しない複数個のノズルがライン上に配列されたライン型のプリンタヘッドである。そこで、インクジェットプリンタヘッド3は、ベルト搬送機構2による記録媒体1の搬送方向(図2中、矢印で示す)と直交する方向に図示しないノズルが配列され、しかもそれらのノズルが媒体搬送ベルト5の上に位置する記録媒体1に対して規定の間隔を開けて位置付けられるように配置される。このようなインクジェットプリンタヘッド3の配置を実現する配置構造7として、本実施の形態では、媒体搬送ベルト5の両側に配置された一対の支持体8に一本の支持軸9が架け渡され、この支持軸9にインクジェットプリンタヘッド3が取り付けられた構造が設けられている。
【0019】
次いで、図1に示す制御系51について説明する。制御系51には、プリンタコントローラ53が設けられている。このプリンタコントローラ53は、図示しないCPU及びメモリから構築されるマイクロコンピュータであり、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが各種の演算処理を実行し、各部に制御信号を出力する。この意味で、メモリはコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体となる。
【0020】
プリンタコントローラ53が制御信号を出力する各部として、本実施の形態では、前述した用紙搬送系52の他に、画像処理部54、印字データバッファ55、操作部56、度数分布作成部57、度数分布履歴記憶部58、回転角決定部59、及び印字データ回転部60が設けられている。以下、それらの各部について説明する。
【0021】
[用紙搬送系52]
用紙搬送系52は、図示しない用紙搬送用モータを駆動制御し、これによって媒体搬送ベルト5を回転動作させることでこの媒体搬送ベルト5上に位置する記録媒体1を上流(図2中の手前側)から下流(図2中の奥側)に向けて搬送する。つまり、本実施の形態のインクジェット記録装置は、ライン型のインクジェットプリンタヘッド3を用いたライン方式(1パス記録方式)の記録動作を実行するので、インクジェットプリンタヘッド3の主走査方向の記録動作と記録媒体1の副走査方向の移動動作との組み合わせによって記録動作が実行されることになる。この際における記録媒体1の副走査方向の移動動作を実現させるのが用紙搬送系52である。このような用紙搬送系52は、図示しない給紙装置から媒体搬送ベルト5への記録媒体1の給送動作、媒体搬送ベルト5から記録済み記録媒体1の図示しない媒体ストッカへの排紙動作等をも実行する。
【0022】
[画像処理部54]
画像処理部54は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、入力された画像信号に対してγ補正や擬似中間調補正等の画像処理を実行し、インクジェットプリンタヘッド3に適した印字データに変換する。この場合、画像処理部54は、1ページ単位で印字データを生成する。したがって、画像処理部54は、画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成手段として機能する。そして、このような画像処理部54がその機能を実行した場合、印字データ生成工程が実行されることになる。
【0023】
また、このような画像処理部54がマイクロコンピュータとして構築される場合、画像処理部54は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが印字データ生成処理、つまり画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成するための演算処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記印字データ生成のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0024】
さらに、画像処理部54がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0025】
[印字データバッファ55]
印字データバッファ55は、画像メモリであり、画像処理部54で生成された印字データを一時的に格納する。この場合、印字データバッファ55は、1ページ単位で印字データを格納する。
【0026】
[操作部56]
操作部56は、インクジェット記録装置の入力装置であり、その操作部56を介してユーザは各種の情報を入力することができる。例えば、画像の回転の有無、過去履歴の参照の有無、画像の回転角の指定、画像の縦横上下反転の指定等を操作部56からプリンタコントローラ53に入力することができる。
【0027】
指定できる画像の回転角は、例えば、0°、90°、180°、270°である。回転角が0°であるということは、画像の回転処理が指定されないことを意味する。回転角が90°であるということは、画像を例えば右側に90°だけ回転させることを意味する。したがって、回転角が90°であるということは、例えば画像の右側への縦横反転を意味することになる。回転角が180°であるということは、画像を例えば右側に180°だけ回転させることを意味する。したがって、回転角が180°であるということは、画像の上下反転を意味することになる。回転角が270°であるということは、画像を例えば右側に270°だけ回転させることを意味する。したがって、回転角が270°であるということは、例えば画像の左側への縦横反転を意味することになる。
【0028】
指定できる画像の縦横上下反転は、例えば、縦横反転及び上下反転という印字画像の方向態様が合計四態様となる反転と、縦横反転という印字画像の方向態様が二態様となる反転と、上下反転という印字画像の方向態様が二態様となる反転との三種類である。
【0029】
[度数分布作成部57]
度数分布作成部57は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、印字データバッファ55に格納された1ページ分の印字データ中におけるインクジェットプリンタヘッド3が有するノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する。つまり、度数分布作成部57は、生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出手段として機能する。そして、このような度数分布作成部57がその機能を実行した場合、度数分布算出工程が実行されることになる。
【0030】
また、このような度数分布作成部57がマイクロコンピュータとして構築される場合、度数分布作成部57は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが度数分布算出処理、つまり生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出するための演算処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記度数分布算出のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0031】
さらに、度数分布作成部57がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0032】
[度数分布履歴記憶部58]
度数分布履歴記憶部58は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、度数分布作成部57によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる。この場合の記憶領域は、プリンタコントローラ53が具備するメモリ中における記憶領域でも、他の記憶領域でも良い。これにより、度数分布履歴記憶部58は、度数分布算出手段として機能する度数分布作成部57によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる度数分布履歴記憶手段として機能する。そして、このような度数分布履歴記憶部58がその機能を実行した場合、度数分布履歴記憶工程が実行されることになる。
【0033】
また、このような度数分布履歴記憶部58がマイクロコンピュータとして構築される場合、度数分布履歴記憶部58は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが度数分布作成部57によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させるための処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記記憶処理のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0034】
さらに、度数分布履歴記憶部58がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0035】
[回転角決定部59]
回転角決定部59は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、これから印字しようとする前記印字データについて、インクジェットプリンタヘッド3のノズルの乾燥防止に有利な印字方向、つまり正位置及び縦横上下反転位置のうちのどれかを選択する。正位置というのは、印字データを回転させない位置方向を意味する。縦横上下反転位置というのは、縦横を回転させた位置方向と上下を回転させた位置方向とを意味する。そして、このような選択に際して、回転角決定部59は、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と、度数分布算出手段として機能する度数分布作成部57によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する。回転角決定部59がノズルの乾燥防止に有利な印字方向をどのようにして選択するかについては、図4に示すフローチャートに基づいて後述する。
【0036】
したがって、回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と度数分布作成部57によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択手段として機能する。そして、このような回転角決定部59がその機能を実行した場合、印字方向選択工程が実行されることになる。
【0037】
また、このような回転角決定部59がマイクロコンピュータとして構築される場合、回転角決定部59は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUがノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択するための処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記選択処理のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0038】
さらに、回転角決定部59がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0039】
[印字データ回転部60]
印字データ回転部60は、インクジェットプリンタヘッド3のドライバ回路としての基本機能を有している。つまり、このドライバ回路機能のために、印字データ回転部60は、一例として集積回路によって構築されており、印字データバッファ55に格納した印字データに基づいてインクジェットプリンタヘッド3を駆動制御する。より詳細には、印字データ回転部60が有するドライバ回路機能では、印字データバッファ55から1ライン毎にシリアル転送される印字データ、つまり2値データを、ノズル毎に対応させて設けられたレジスタに順にレジストし、ラッチしておく。2値データというのは、インク吐出の指示の有無を指定するデータである。そして、トリガに従いラッチを開放することで、インク吐出を指示するデータがレジストされたレジスタに対応するノズルに対応付けられた図示しないアクチュエータが駆動され、このアクチュエータの駆動に応じて対応するノズルからインクが吐出される。
【0040】
印字データ回転部60は、このようなドライバ機能を基本機能として有しているが、その他に、回転角決定部59によって決定された回転角度の印字方向で記録媒体1に画像を記録させる機能を有している。この機能は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築される。つまり、印字データ回転部60は、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59によって選択された印字方向となるように、インクジェットプリンタヘッド3の駆動制御と副走査駆動部6の駆動制御とを実行する。このための処理としては、前述したドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスの指定と、レジスタに対する印字データのレジスト順序の指定とを適宜設定すれば良い。
【0041】
画像回転について説明する模式図である図3を参照しながら一例を挙げて説明すると、ある印字データが縦長原稿用の印字データであると想定した場合、その印字データの最も左側のデータがX方向の0座標、最も右側のデータがX方向の最終座標となるZ座標、最も上位のデータがY方向の0座標、最も下位のデータがY方向の最終座標となるZ座標である。そこで、印字データ回転部60によって正位置の印字方向、つまり回転しない方向が選択されたとすると、最初のラインにおいて、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(0,0)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(0,0)座標からXが増加する方向に進むことになる。そして、後続のラインでは、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(0,n)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(0,n)座標からXが増加する方向に進むことになる。これに対して、印字データ回転部60によって縦横反転位置の印字方向、つまり270°(あるいは90°)回転した方向が選択されたとすると、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z,0)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z,0)座標からYが増加する方向に進むことになる。そして、後続のラインでは、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z−n,0)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z−n,0)座標からYが増加する方向に進むことになる。さらに、印字データ回転部60によって上下反転位置の印字方向、つまり180°回転した方向が選択されたとすると、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z,Z)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z,Z)座標からXが減少する方向に進むことになる。そして、後続のラインでは、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z,Z−n)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z,Z−n)座標からXが減少する方向に進むことになる。
【0042】
したがって、印字データ回転部60は、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59によって選択された印字方向となるように印字データに基づくインクジェットプリンタヘッド3の駆動制御と副走査駆動部6の駆動制御とを実行する記録手段として機能する。そして、このような印字データ回転部60がその機能を実行した場合、記録工程が実行されることになる。
【0043】
また、このような印字データ回転部60のドライバ回路以外の部分がマイクロコンピュータとして構築される場合、印字データ回転部60は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが上記記録処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記記録処理のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0044】
さらに、印字データ回転部60がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0045】
以上、本実施の形態のハードウェア資源について説明した。そこで、以下では、このようなハードウェア資源を用いた記録処理について説明する。
【0046】
本実施の形態のインクジェット記録装置は、ライン方式(1パス記録方式)で記録動作を行なう。つまり、画像信号に基づいてインクジェットプリンタヘッド3を駆動制御してノズルから選択的にインク滴を吐出させる主走査駆動処理と、副走査駆動部6を駆動制御してインクジェットプリンタヘッド3と記録媒体1とを相対的に副走査方向に移動させる副走査駆動処理とによって記録動作が実行される。このような記録動作の詳細を次に述べる。
【0047】
インクジェット記録装置は、外部機器から記録命令と共に画像信号を受信すると、プリンタコントローラ53によって用紙搬送系52に記録媒体1の給送動作を命じ、媒体搬送ベルト5によって記録媒体1を搬送させる。そして、プリンタコントローラ53は、媒体搬送ベルト5による記録媒体1の搬送動作に同期させて、入力された画像信号に基づいてインクジェットプリンタヘッド3に記録動作を実行させる。つまり、入力された画像信号を画像処理部54でγ補正、擬似中間調補正する。これにより、画像信号は、インクジェットプリンタヘッド3に対応する2値データである印字データに変換される。そこで、2値データに変換された印字データは、印字データバッファ55に一時的に格納された後、印字データ回転部60に1ライン分ずつ転送される。そして、この印字データ回転部60が備える印字ドライバ機能によってインクジェットプリンタヘッド3が駆動され、そのノズルから選択的にインクが吐出される。このようなインクの選択的な吐出は、印字データバッファ55から印字データ回転部60への1ライン分のデータ転送が繰り返される毎に実行される。この際、媒体搬送ベルト5による記録媒体1の搬送が続行されているので、インクジェットプリンタヘッド3の各ノズルからの選択的なインクの吐出による主走査方向の記録動作と、媒体搬送ベルト5による記録媒体1の搬送による副走査方向の記録動作とが組み合わされ、これによって記録媒体1に画像信号に応じた画像が記録される。
【0048】
次いで、本実施の形態では、インクジェットプリンタヘッド3のノズルの乾燥を防止するために、画像の回転処理が選択的に実行される。以下、そのような画像の回転処理を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0049】
図4に示すフローチャートは、入力された画像信号に基づいて画像処理部54が印字データを生成し、印字データバッファ55に格納した後、印字データ回転部60によって画像の記録動作がなされるまでの処理を記述する。つまり、図1の機能ブロック図でいうと、度数分布作成部57及び回転角決定部59による処理である。
【0050】
まず、ステップS101では、印字データバッファ55に格納された印字データについて、操作部56からの操作入力によって指定された回転角での度数分布が作成される。この作成は、度数分布作成部57によってなされる。度数分布作成部57は、操作部56からの操作入力によって、例えば0°、90°、180°、270°という四種類の角度が指定されていれば、印字データをそれらの四種類の角度に回転させた場合の度数分布を作成する。ここでの度数分布は、インクジェットプリンタヘッド3におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を意味する。別の例として、操作部56では、画像の縦横上下反転の指定も可能である。そこで、操作部56からの入力操作によって、画像の縦横上下反転が指定されていた場合には、度数分布作成部57は、印字データを0°、90°、180°、270°という四種類の角度に回転させた場合におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を作成する。これに対して、操作部56からの入力操作によって、画像の上下反転が指定されていた場合には、度数分布作成部57は、印字データを0°、180°という二種類の角度に回転させた場合におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を作成する。
【0051】
なお、操作部56では、このような画像の回転角の指定や画像の縦横上下反転の指定だけではなく、画像の回転の有無の指定も操作入力可能である。こうして操作部56で操作入力された設定は、プリンタコントローラ53によってレジストされ、後の利用に供される。
【0052】
ステップS101で、度数分布作成部57がインクジェットプリンタヘッド3におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を作成したならば、回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データについて、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴と度数分布作成部57が作成した度数分布とに基づいて、ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する。そのための処理が、ステップS101に続くステップS102からステップS107までの処理である。
【0053】
ステップS102では、これから印字しようとする印字データに基づいて、度数分布作成部57が作成した度数分布を参照し、不使用ノズルの有無を判定する。この場合の解は、「一部の角度である」、「すべての角度でない」、又は「すべての角度である」の三種類である。そこで、回転角決定部59がそれらの三種類の解を得た場合に実行する処理を次に説明する。
【0054】
まず、回転角決定部59は、ステップS102で、不使用ノズルが一部の角度であると判定した場合、不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS104)。不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0055】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0056】
次に、回転角決定部59は、ステップS102で、不使用ノズルがすべての角度でないと判定した場合、度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS105)。度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0057】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0058】
さらに、回転角決定部59は、ステップS102で、不使用ノズルがすべての角度であると判定した場合、これから印字しようとする印字データに基づいて度数分布作成部57が作成した度数分布に対して、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴を合成して合成度数分布を作成する。そして、この合成度数分布を参照して、不使用ノズルの有無を再度判定する(ステップS103)。この場合の解も、「一部の角度である」、「すべての角度でない」、又は「すべての角度である」の三種類である。そこで、回転角決定部59がそれらの三種類の解を得た場合に実行する処理を次に説明する。
【0059】
まず、回転角決定部59は、ステップS103で、不使用ノズルが一部の角度であると判定した場合、合成度数分布を参照して得た不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS106)。不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0060】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0061】
次に、回転角決定部59は、ステップS103で、不使用ノズルがすべての角度でないと判定した場合、合成度数分布を参照して得た度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS105)。度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0062】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0063】
さらに、回転角決定部59は、ステップS103で、不使用ノズルがすべての角度であると判定した場合、最も不使用ノズル数が少ない角度の印字方向を選択する(ステップS107)。
【0064】
こうして、回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データについて、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴と度数分布作成部57が作成した度数分布とに基づいて、ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する。したがって、印字データ回転部60は、こうして選択された印字方向となるように画像の記録処理を実行するため、ノズル毎のインク吐出滴数のばらつきが最小となり、この意味でインクを吐出させないノズルが発生する頻度が少なくなり、ノズルのインク吐出不良の発生防止が図られる。
【0065】
ここで、以上説明した例は、操作部56において過去履歴を参照すべきことを操作指定した場合の処理ルーチンである。これに対して、本実施の形態では、操作部56において過去履歴を参照しないことを操作指定することも可能である。そこで、この場合には、ステップS103及びステップS103の処理が省略される。つまり、回転角決定部59は、ステップS102での不使用ノズル有無の解が「すべての角度である」であるとすると、直ちにステップS107に進み、最も不使用ノズル数が少ない角度の印字方向を選択する(ステップS107)。そして、この場合に重要なことは、ステップS104、ステップS105、及びステップS107で選択される印字方向は、正方向とその縦横反転方向との二種類だけであるという点である。何故なら、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴を参照しない場合、画像を上下反転させたとしても、不使用ノズル数が変わらず、上下反転による効果、つまりインクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくするという効果が得られないからである。同様の意味合いから、縦横反転する場合に、それが90°の反転だろうが270°の反転だろうが、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくするという効果を得るという意味では差がない。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態では、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の標準偏差が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するので、ノズル毎のインク吐出滴数のばらつきが最小となり、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0067】
また、別の実施の形態として紹介したように、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する場合には、少しでも多くのインクをノズルから吐出させることができ、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0068】
なお、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59が、ノズル毎の度数分布の標準偏差が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するか、あるいはノズル毎の度数分布の最小値が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するかについは、例えば操作部56からの入力操作によって選択可能としても良い。
【0069】
また、本実施の形態では、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データの度数分布中に不使用のノズルがない印字方向を優先させてノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するので、少しでも多くのインクをノズルから吐出させることができ、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0070】
さらに、本実施の形態では、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データの全ての印字方向における度数分布中に不使用のノズルがある場合、その度数分布と度数分布履歴とを合せた合成度数分布中に不使用のノズルがない印字方向を優先させてノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するので、少しでも多くのインクをノズルから吐出させることができ、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0071】
なお、実施に当っては、本実施の形態で紹介した画像の回転方向、つまり、0°、90°、180°、270°という四種類の方向のみならず、別の方向を画像の回転方向として採用しても良い。
【0072】
また、本実施の形態では、1色2値のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、多色印字を実行するインクジェット記録装置であっても、4値、8値、16値等のように階調を表現するインクジェット記録装置であっても、上記実施の形態で説明したのと同様の手法をもって本発明を適用できることは言うまでもない。
【0073】
さらに、インクジェットプリンタヘッド3については、単一構造のヘッドでも、複数個のヘッドをノズルの配列方向に接続して一体化したヘッドでも、その種類を問わず用いることが可能である。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶した度数分布履歴と算出した度数分布とに基づいて正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し、選択された印字方向となるように印字を行なうようにしたので、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルの乾燥を原因とするノズルからのインク吐出不良を発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すインクジェット記録装置の機能ブロック図である。
【図2】インクジェット記録装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【図3】画像回転について説明する模式図である。
【図4】ノズル乾燥防止のための処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】インクジェットプリンタヘッドのノズル群と記録媒体に記録される情報との位置関係を例示する模式図である。
【符号の説明】
1 記録媒体
3 インクジェットプリンタヘッド
6 副走査駆動部
7 配置構造
54 印字データ生成手段、印字データ生成工程、印字データ生成機能(画像処理部)
57 度数分布算出手段、度数分布算出工程、度数分布算出機能(度数分布作成部)
58 度数分履歴記憶手段、度数分履歴記憶工程、度数分履歴記憶機能(度数分布履歴記憶部)
59 印字方向選択手段、印字方向選択工程、印字方向選択機能(回転角決定部)
60 記録手段、記録工程、記録機能(印字データ回転部)
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドを使用し、このインクジェットプリンタヘッドを画像信号に基づいて駆動制御し、各ノズルから記録媒体に選択的にインク滴を飛翔させて画像形成を行なうインクジェット記録装置、そのようなインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録用のコンピュータプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録装置では、シリアル型のインクジェットプリンタヘッドを用いたシリアル方式の記録動作を行なうものが広く普及している。ところが、シリアル方式のインクジェット記録装置では、ノズル数が少ないインクジェットプリンタヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向に何度も走査しながら記録動作を完遂するという構造上、自ずとヘッド走査回数が増え、記録時間が長くなってしまうという問題がある。
【0003】
これに対して、高速度な記録を実現するための手法として、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いたライン方式の記録手法がある。このようなライン方式の記録は、一回の記録媒体の搬送で記録動作を終了する1パス記録方式であり、そのために極めて高速な記録動作を実現することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなライン方式の記録は、例えばレシート印字等のような幅が比較的狭い記録媒体に対して印字を行なう方式として広く普及しているが、近年、ある程度の長さを持ったライン型のインクジェットプリンタヘッドが開発され、例えばA4用紙のような幅が広い記録媒体に対してもライン方式を用いた記録動作が可能になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平06−210879号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式での記録動作を実行する場合、インクジェットプリンタヘッドの各ノズルの位置と記録媒体の主走査方向の位置とは常に一定となる。それにも拘らず、記録される画像、特に文書やレイアウトされた画像等では、記録媒体の主走査方向の位置が常に一定であることが珍しくない。このため、インクジェットプリンタヘッドにおいて、使用するノズルに偏りが生じてしまい、長時間インクの吐出が行なわれないノズルが発生してしまうことがある。例えば、図5に例示するような画像を記録媒体101に記録するような場合、インクジェットヘッド102においては、画像が存在しない部分に対応するノズル群103が全く使用されず、これらのノズル群103に含まれているノズル(図示せず)は長時間非吐出状態となってしまう。これに対して、インクジェットプリンタヘッドでは、ノズルからインクを吐出しない時間が長くなるにつれ、そのノズルに吐出不良が発生し易くなる。
【0007】
このようなことから、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用すると、ノズルのインク吐出不良が発生しやすくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルの乾燥を原因とするノズルからのインク吐出不良を発生しにくくすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと記録媒体とをノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させながらインクジェットプリンタヘッドと副走査駆動部とを駆動制御して印字を行なうインクジェット記録装置、インクジェット記録方法、インクジェット記録用のコンピュータプログラムについての新規な構成を規定する。
【0010】
つまり、本発明は、画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成し、生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出し、算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させ、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し、選択された印字方向となるように印字データに基づくインクジェットプリンタヘッドの駆動制御と副走査駆動部の駆動制御とを実行するという各種の処理を実行する。これらの各処理は、インクジェット記録装置では手段、インクジェット記録方法では工程、インクジェット記録用のコンピュータプログラムでは機能としてそれぞれ実行される。これにより、縦横上下反転のうちでノズルの乾燥防止に有利な印字方向で印字が行なわれることになり、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルのインク吐出不良が発生しにくくなる。
【0011】
本発明は、また、画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成し、生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出し、これから印字しようとする印字データについて算出された度数分布とに基づいて正位置及び縦横反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し、選択された印字方向となるように印字データに基づくインクジェットプリンタヘッドの駆動制御と副走査駆動部の駆動制御とを実行するという各種の処理を実行する。これらの各処理は、インクジェット記録装置では手段、インクジェット記録方法では工程、インクジェット記録用のコンピュータプログラムでは機能としてそれぞれ実行される。これにより、縦横反転のうちでノズルの乾燥防止に有利な印字方向で印字が行なわれることになり、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルのインク吐出不良が発生しにくくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態を図1ないし図4に基づいて説明する。
【0013】
図1はインクジェット記録装置の機能ブロック図、図2はインクジェット記録装置の外観を概略的に示す斜視図、図3は画像回転について説明する模式図、図4はノズル乾燥防止のための処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0014】
本実施の形態のインクジェット記録装置は、図2に示すように、記録媒体1を搬送するベルト搬送機構2上にライン型のインクジェットプリンタヘッド3が位置付けられて構成されており、図1に示す制御系51によって各部が駆動制御され、入力された画像信号に基づく記録動作を実行する。
【0015】
インクジェットプリンタヘッド3は、ライン型であれば、そのインク吐出方式を問わない。つまり、バブルジェット(登録商標)方式、電歪素子を用いて圧力室を変形させる方式、その他のあらゆる方式のインク吐出方式をインクジェットプリンタヘッド3に適用することが可能である。但し、本明細書中では、インクジェットプリンタヘッド3に適用するインク吐出方式の種類を問わず、図示しないノズルからインク滴を吐出させるための駆動源をアクチュエータと呼ぶ。
【0016】
ベルト搬送機構2は、一対のプーリ4に記録媒体1よりも幅広の平ベルトである媒体搬送ベルト5がエンドレスに架け渡されて構成されている。このようなベルト搬送機構2は、図1に示す用紙搬送系52に含まれている図示しない用紙搬送用モータに一方のプーリ4が駆動されて回転することにより媒体搬送ベルト5が回転動作することで、この媒体搬送ベルト5上に位置する記録媒体1を上流(図2中の手前側)から下流(図2中の奥側)に向けて搬送する。このような記録媒体1の搬送方向は、インクジェット記録装置における記録動作という観点から見ると、副走査方向である。この意味で、ベルト搬送機構2及び用紙搬送系52に含まれている図示しない用紙搬送用モータ等のハードウェア資源は、インクジェットプリンタヘッド3と記録媒体1とをノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部6を構成する。
【0017】
図2では省略されているが、本実施の形態のインクジェット記録装置には、媒体搬送ベルト5の上流側に図示しない給紙装置が設けられ、媒体搬送ベルト5の下流側には図示しない媒体ストッカが設けられている。給紙装置は、複数枚の記録媒体1を積層収容し、図1に示す用紙搬送系52で生成された給紙命令信号に応じて最上位又は最下位の記録媒体1を媒体搬送ベルト5上に給送する。媒体ストッカは、媒体搬送ベルト5によって搬送された記録済みの記録媒体1を次々と積層状態で収容する。
【0018】
インクジェットプリンタヘッド3は、図示しない複数個のノズルがライン上に配列されたライン型のプリンタヘッドである。そこで、インクジェットプリンタヘッド3は、ベルト搬送機構2による記録媒体1の搬送方向(図2中、矢印で示す)と直交する方向に図示しないノズルが配列され、しかもそれらのノズルが媒体搬送ベルト5の上に位置する記録媒体1に対して規定の間隔を開けて位置付けられるように配置される。このようなインクジェットプリンタヘッド3の配置を実現する配置構造7として、本実施の形態では、媒体搬送ベルト5の両側に配置された一対の支持体8に一本の支持軸9が架け渡され、この支持軸9にインクジェットプリンタヘッド3が取り付けられた構造が設けられている。
【0019】
次いで、図1に示す制御系51について説明する。制御系51には、プリンタコントローラ53が設けられている。このプリンタコントローラ53は、図示しないCPU及びメモリから構築されるマイクロコンピュータであり、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが各種の演算処理を実行し、各部に制御信号を出力する。この意味で、メモリはコンピュータプログラムを記憶する記憶媒体となる。
【0020】
プリンタコントローラ53が制御信号を出力する各部として、本実施の形態では、前述した用紙搬送系52の他に、画像処理部54、印字データバッファ55、操作部56、度数分布作成部57、度数分布履歴記憶部58、回転角決定部59、及び印字データ回転部60が設けられている。以下、それらの各部について説明する。
【0021】
[用紙搬送系52]
用紙搬送系52は、図示しない用紙搬送用モータを駆動制御し、これによって媒体搬送ベルト5を回転動作させることでこの媒体搬送ベルト5上に位置する記録媒体1を上流(図2中の手前側)から下流(図2中の奥側)に向けて搬送する。つまり、本実施の形態のインクジェット記録装置は、ライン型のインクジェットプリンタヘッド3を用いたライン方式(1パス記録方式)の記録動作を実行するので、インクジェットプリンタヘッド3の主走査方向の記録動作と記録媒体1の副走査方向の移動動作との組み合わせによって記録動作が実行されることになる。この際における記録媒体1の副走査方向の移動動作を実現させるのが用紙搬送系52である。このような用紙搬送系52は、図示しない給紙装置から媒体搬送ベルト5への記録媒体1の給送動作、媒体搬送ベルト5から記録済み記録媒体1の図示しない媒体ストッカへの排紙動作等をも実行する。
【0022】
[画像処理部54]
画像処理部54は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、入力された画像信号に対してγ補正や擬似中間調補正等の画像処理を実行し、インクジェットプリンタヘッド3に適した印字データに変換する。この場合、画像処理部54は、1ページ単位で印字データを生成する。したがって、画像処理部54は、画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成手段として機能する。そして、このような画像処理部54がその機能を実行した場合、印字データ生成工程が実行されることになる。
【0023】
また、このような画像処理部54がマイクロコンピュータとして構築される場合、画像処理部54は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが印字データ生成処理、つまり画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成するための演算処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記印字データ生成のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0024】
さらに、画像処理部54がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0025】
[印字データバッファ55]
印字データバッファ55は、画像メモリであり、画像処理部54で生成された印字データを一時的に格納する。この場合、印字データバッファ55は、1ページ単位で印字データを格納する。
【0026】
[操作部56]
操作部56は、インクジェット記録装置の入力装置であり、その操作部56を介してユーザは各種の情報を入力することができる。例えば、画像の回転の有無、過去履歴の参照の有無、画像の回転角の指定、画像の縦横上下反転の指定等を操作部56からプリンタコントローラ53に入力することができる。
【0027】
指定できる画像の回転角は、例えば、0°、90°、180°、270°である。回転角が0°であるということは、画像の回転処理が指定されないことを意味する。回転角が90°であるということは、画像を例えば右側に90°だけ回転させることを意味する。したがって、回転角が90°であるということは、例えば画像の右側への縦横反転を意味することになる。回転角が180°であるということは、画像を例えば右側に180°だけ回転させることを意味する。したがって、回転角が180°であるということは、画像の上下反転を意味することになる。回転角が270°であるということは、画像を例えば右側に270°だけ回転させることを意味する。したがって、回転角が270°であるということは、例えば画像の左側への縦横反転を意味することになる。
【0028】
指定できる画像の縦横上下反転は、例えば、縦横反転及び上下反転という印字画像の方向態様が合計四態様となる反転と、縦横反転という印字画像の方向態様が二態様となる反転と、上下反転という印字画像の方向態様が二態様となる反転との三種類である。
【0029】
[度数分布作成部57]
度数分布作成部57は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、印字データバッファ55に格納された1ページ分の印字データ中におけるインクジェットプリンタヘッド3が有するノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する。つまり、度数分布作成部57は、生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出手段として機能する。そして、このような度数分布作成部57がその機能を実行した場合、度数分布算出工程が実行されることになる。
【0030】
また、このような度数分布作成部57がマイクロコンピュータとして構築される場合、度数分布作成部57は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが度数分布算出処理、つまり生成された1ページ分の印字データ中におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出するための演算処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記度数分布算出のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0031】
さらに、度数分布作成部57がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0032】
[度数分布履歴記憶部58]
度数分布履歴記憶部58は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、度数分布作成部57によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる。この場合の記憶領域は、プリンタコントローラ53が具備するメモリ中における記憶領域でも、他の記憶領域でも良い。これにより、度数分布履歴記憶部58は、度数分布算出手段として機能する度数分布作成部57によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる度数分布履歴記憶手段として機能する。そして、このような度数分布履歴記憶部58がその機能を実行した場合、度数分布履歴記憶工程が実行されることになる。
【0033】
また、このような度数分布履歴記憶部58がマイクロコンピュータとして構築される場合、度数分布履歴記憶部58は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが度数分布作成部57によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させるための処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記記憶処理のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0034】
さらに、度数分布履歴記憶部58がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0035】
[回転角決定部59]
回転角決定部59は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築され、これから印字しようとする前記印字データについて、インクジェットプリンタヘッド3のノズルの乾燥防止に有利な印字方向、つまり正位置及び縦横上下反転位置のうちのどれかを選択する。正位置というのは、印字データを回転させない位置方向を意味する。縦横上下反転位置というのは、縦横を回転させた位置方向と上下を回転させた位置方向とを意味する。そして、このような選択に際して、回転角決定部59は、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と、度数分布算出手段として機能する度数分布作成部57によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する。回転角決定部59がノズルの乾燥防止に有利な印字方向をどのようにして選択するかについては、図4に示すフローチャートに基づいて後述する。
【0036】
したがって、回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶されている度数分布履歴と度数分布作成部57によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択手段として機能する。そして、このような回転角決定部59がその機能を実行した場合、印字方向選択工程が実行されることになる。
【0037】
また、このような回転角決定部59がマイクロコンピュータとして構築される場合、回転角決定部59は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUがノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択するための処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記選択処理のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0038】
さらに、回転角決定部59がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0039】
[印字データ回転部60]
印字データ回転部60は、インクジェットプリンタヘッド3のドライバ回路としての基本機能を有している。つまり、このドライバ回路機能のために、印字データ回転部60は、一例として集積回路によって構築されており、印字データバッファ55に格納した印字データに基づいてインクジェットプリンタヘッド3を駆動制御する。より詳細には、印字データ回転部60が有するドライバ回路機能では、印字データバッファ55から1ライン毎にシリアル転送される印字データ、つまり2値データを、ノズル毎に対応させて設けられたレジスタに順にレジストし、ラッチしておく。2値データというのは、インク吐出の指示の有無を指定するデータである。そして、トリガに従いラッチを開放することで、インク吐出を指示するデータがレジストされたレジスタに対応するノズルに対応付けられた図示しないアクチュエータが駆動され、このアクチュエータの駆動に応じて対応するノズルからインクが吐出される。
【0040】
印字データ回転部60は、このようなドライバ機能を基本機能として有しているが、その他に、回転角決定部59によって決定された回転角度の印字方向で記録媒体1に画像を記録させる機能を有している。この機能は、一例としては集積回路によって構築され、別の一例としてはマイクロコンピュータによって構築される。つまり、印字データ回転部60は、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59によって選択された印字方向となるように、インクジェットプリンタヘッド3の駆動制御と副走査駆動部6の駆動制御とを実行する。このための処理としては、前述したドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスの指定と、レジスタに対する印字データのレジスト順序の指定とを適宜設定すれば良い。
【0041】
画像回転について説明する模式図である図3を参照しながら一例を挙げて説明すると、ある印字データが縦長原稿用の印字データであると想定した場合、その印字データの最も左側のデータがX方向の0座標、最も右側のデータがX方向の最終座標となるZ座標、最も上位のデータがY方向の0座標、最も下位のデータがY方向の最終座標となるZ座標である。そこで、印字データ回転部60によって正位置の印字方向、つまり回転しない方向が選択されたとすると、最初のラインにおいて、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(0,0)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(0,0)座標からXが増加する方向に進むことになる。そして、後続のラインでは、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(0,n)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(0,n)座標からXが増加する方向に進むことになる。これに対して、印字データ回転部60によって縦横反転位置の印字方向、つまり270°(あるいは90°)回転した方向が選択されたとすると、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z,0)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z,0)座標からYが増加する方向に進むことになる。そして、後続のラインでは、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z−n,0)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z−n,0)座標からYが増加する方向に進むことになる。さらに、印字データ回転部60によって上下反転位置の印字方向、つまり180°回転した方向が選択されたとすると、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z,Z)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z,Z)座標からXが減少する方向に進むことになる。そして、後続のラインでは、ドライバ回路のレジスタに対する印字データのレジスト開始アドレスは(Z,Z−n)座標のアドレスであり、レジスタに対する印字データのレジスト順序は(Z,Z−n)座標からXが減少する方向に進むことになる。
【0042】
したがって、印字データ回転部60は、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59によって選択された印字方向となるように印字データに基づくインクジェットプリンタヘッド3の駆動制御と副走査駆動部6の駆動制御とを実行する記録手段として機能する。そして、このような印字データ回転部60がその機能を実行した場合、記録工程が実行されることになる。
【0043】
また、このような印字データ回転部60のドライバ回路以外の部分がマイクロコンピュータとして構築される場合、印字データ回転部60は、図示しないCPU及びメモリから構築され、メモリに保存されているコンピュータプログラムに従いCPUが上記記録処理を実行する。この意味で、メモリに保存されているコンピュータプログラムは、コンピュータにインストールされてコンピュータに上記記録処理のための機能を実行させる機械読み取り可能なコンピュータプログラムということになる。
【0044】
さらに、印字データ回転部60がマイクロコンピュータとして構築される場合、このマイクロコンピュータは、プリンタコントローラ53を構築するマイクロコンピュータと同一のコンピュータによって構築することも可能である。
【0045】
以上、本実施の形態のハードウェア資源について説明した。そこで、以下では、このようなハードウェア資源を用いた記録処理について説明する。
【0046】
本実施の形態のインクジェット記録装置は、ライン方式(1パス記録方式)で記録動作を行なう。つまり、画像信号に基づいてインクジェットプリンタヘッド3を駆動制御してノズルから選択的にインク滴を吐出させる主走査駆動処理と、副走査駆動部6を駆動制御してインクジェットプリンタヘッド3と記録媒体1とを相対的に副走査方向に移動させる副走査駆動処理とによって記録動作が実行される。このような記録動作の詳細を次に述べる。
【0047】
インクジェット記録装置は、外部機器から記録命令と共に画像信号を受信すると、プリンタコントローラ53によって用紙搬送系52に記録媒体1の給送動作を命じ、媒体搬送ベルト5によって記録媒体1を搬送させる。そして、プリンタコントローラ53は、媒体搬送ベルト5による記録媒体1の搬送動作に同期させて、入力された画像信号に基づいてインクジェットプリンタヘッド3に記録動作を実行させる。つまり、入力された画像信号を画像処理部54でγ補正、擬似中間調補正する。これにより、画像信号は、インクジェットプリンタヘッド3に対応する2値データである印字データに変換される。そこで、2値データに変換された印字データは、印字データバッファ55に一時的に格納された後、印字データ回転部60に1ライン分ずつ転送される。そして、この印字データ回転部60が備える印字ドライバ機能によってインクジェットプリンタヘッド3が駆動され、そのノズルから選択的にインクが吐出される。このようなインクの選択的な吐出は、印字データバッファ55から印字データ回転部60への1ライン分のデータ転送が繰り返される毎に実行される。この際、媒体搬送ベルト5による記録媒体1の搬送が続行されているので、インクジェットプリンタヘッド3の各ノズルからの選択的なインクの吐出による主走査方向の記録動作と、媒体搬送ベルト5による記録媒体1の搬送による副走査方向の記録動作とが組み合わされ、これによって記録媒体1に画像信号に応じた画像が記録される。
【0048】
次いで、本実施の形態では、インクジェットプリンタヘッド3のノズルの乾燥を防止するために、画像の回転処理が選択的に実行される。以下、そのような画像の回転処理を図4に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0049】
図4に示すフローチャートは、入力された画像信号に基づいて画像処理部54が印字データを生成し、印字データバッファ55に格納した後、印字データ回転部60によって画像の記録動作がなされるまでの処理を記述する。つまり、図1の機能ブロック図でいうと、度数分布作成部57及び回転角決定部59による処理である。
【0050】
まず、ステップS101では、印字データバッファ55に格納された印字データについて、操作部56からの操作入力によって指定された回転角での度数分布が作成される。この作成は、度数分布作成部57によってなされる。度数分布作成部57は、操作部56からの操作入力によって、例えば0°、90°、180°、270°という四種類の角度が指定されていれば、印字データをそれらの四種類の角度に回転させた場合の度数分布を作成する。ここでの度数分布は、インクジェットプリンタヘッド3におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を意味する。別の例として、操作部56では、画像の縦横上下反転の指定も可能である。そこで、操作部56からの入力操作によって、画像の縦横上下反転が指定されていた場合には、度数分布作成部57は、印字データを0°、90°、180°、270°という四種類の角度に回転させた場合におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を作成する。これに対して、操作部56からの入力操作によって、画像の上下反転が指定されていた場合には、度数分布作成部57は、印字データを0°、180°という二種類の角度に回転させた場合におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を作成する。
【0051】
なお、操作部56では、このような画像の回転角の指定や画像の縦横上下反転の指定だけではなく、画像の回転の有無の指定も操作入力可能である。こうして操作部56で操作入力された設定は、プリンタコントローラ53によってレジストされ、後の利用に供される。
【0052】
ステップS101で、度数分布作成部57がインクジェットプリンタヘッド3におけるノズル毎のインク吐出回数の度数分布を作成したならば、回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データについて、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴と度数分布作成部57が作成した度数分布とに基づいて、ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する。そのための処理が、ステップS101に続くステップS102からステップS107までの処理である。
【0053】
ステップS102では、これから印字しようとする印字データに基づいて、度数分布作成部57が作成した度数分布を参照し、不使用ノズルの有無を判定する。この場合の解は、「一部の角度である」、「すべての角度でない」、又は「すべての角度である」の三種類である。そこで、回転角決定部59がそれらの三種類の解を得た場合に実行する処理を次に説明する。
【0054】
まず、回転角決定部59は、ステップS102で、不使用ノズルが一部の角度であると判定した場合、不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS104)。不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0055】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0056】
次に、回転角決定部59は、ステップS102で、不使用ノズルがすべての角度でないと判定した場合、度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS105)。度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0057】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0058】
さらに、回転角決定部59は、ステップS102で、不使用ノズルがすべての角度であると判定した場合、これから印字しようとする印字データに基づいて度数分布作成部57が作成した度数分布に対して、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴を合成して合成度数分布を作成する。そして、この合成度数分布を参照して、不使用ノズルの有無を再度判定する(ステップS103)。この場合の解も、「一部の角度である」、「すべての角度でない」、又は「すべての角度である」の三種類である。そこで、回転角決定部59がそれらの三種類の解を得た場合に実行する処理を次に説明する。
【0059】
まず、回転角決定部59は、ステップS103で、不使用ノズルが一部の角度であると判定した場合、合成度数分布を参照して得た不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS106)。不使用ノズルがない角度のうち度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0060】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0061】
次に、回転角決定部59は、ステップS103で、不使用ノズルがすべての角度でないと判定した場合、合成度数分布を参照して得た度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を選択する(ステップS105)。度数分布が最も均一な分布となる角度の印字方向を求めるために、回転角決定部59は、その演算機能を発揮させ、ノズル毎の度数分布の標準偏差を算出し、この標準偏差が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行する。
【0062】
別の実施の形態として、回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値を算出し、この最小値が最小となる角度の印字方向を選択するという処理を実行しても良い。
【0063】
さらに、回転角決定部59は、ステップS103で、不使用ノズルがすべての角度であると判定した場合、最も不使用ノズル数が少ない角度の印字方向を選択する(ステップS107)。
【0064】
こうして、回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データについて、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴と度数分布作成部57が作成した度数分布とに基づいて、ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する。したがって、印字データ回転部60は、こうして選択された印字方向となるように画像の記録処理を実行するため、ノズル毎のインク吐出滴数のばらつきが最小となり、この意味でインクを吐出させないノズルが発生する頻度が少なくなり、ノズルのインク吐出不良の発生防止が図られる。
【0065】
ここで、以上説明した例は、操作部56において過去履歴を参照すべきことを操作指定した場合の処理ルーチンである。これに対して、本実施の形態では、操作部56において過去履歴を参照しないことを操作指定することも可能である。そこで、この場合には、ステップS103及びステップS103の処理が省略される。つまり、回転角決定部59は、ステップS102での不使用ノズル有無の解が「すべての角度である」であるとすると、直ちにステップS107に進み、最も不使用ノズル数が少ない角度の印字方向を選択する(ステップS107)。そして、この場合に重要なことは、ステップS104、ステップS105、及びステップS107で選択される印字方向は、正方向とその縦横反転方向との二種類だけであるという点である。何故なら、度数分布履歴記憶部58によって記憶領域に記憶保存された度数分布履歴を参照しない場合、画像を上下反転させたとしても、不使用ノズル数が変わらず、上下反転による効果、つまりインクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくするという効果が得られないからである。同様の意味合いから、縦横反転する場合に、それが90°の反転だろうが270°の反転だろうが、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくするという効果を得るという意味では差がない。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態では、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の標準偏差が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するので、ノズル毎のインク吐出滴数のばらつきが最小となり、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0067】
また、別の実施の形態として紹介したように、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、ノズル毎の度数分布の最小値が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する場合には、少しでも多くのインクをノズルから吐出させることができ、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0068】
なお、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59が、ノズル毎の度数分布の標準偏差が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するか、あるいはノズル毎の度数分布の最小値が最小となる印字方向をノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するかについは、例えば操作部56からの入力操作によって選択可能としても良い。
【0069】
また、本実施の形態では、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データの度数分布中に不使用のノズルがない印字方向を優先させてノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するので、少しでも多くのインクをノズルから吐出させることができ、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0070】
さらに、本実施の形態では、印字方向選択手段として機能する回転角決定部59は、これから印字しようとする印字データの全ての印字方向における度数分布中に不使用のノズルがある場合、その度数分布と度数分布履歴とを合せた合成度数分布中に不使用のノズルがない印字方向を優先させてノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択するので、少しでも多くのインクをノズルから吐出させることができ、この意味で、インクを吐出させないノズルが発生する頻度を少なくしてノズルのインク吐出不良の発生防止を図ることができる。
【0071】
なお、実施に当っては、本実施の形態で紹介した画像の回転方向、つまり、0°、90°、180°、270°という四種類の方向のみならず、別の方向を画像の回転方向として採用しても良い。
【0072】
また、本実施の形態では、1色2値のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、多色印字を実行するインクジェット記録装置であっても、4値、8値、16値等のように階調を表現するインクジェット記録装置であっても、上記実施の形態で説明したのと同様の手法をもって本発明を適用できることは言うまでもない。
【0073】
さらに、インクジェットプリンタヘッド3については、単一構造のヘッドでも、複数個のヘッドをノズルの配列方向に接続して一体化したヘッドでも、その種類を問わず用いることが可能である。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、これから印字しようとする印字データについて、記憶領域に記憶した度数分布履歴と算出した度数分布とに基づいて正位置及び縦横上下反転位置のうちノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択し、選択された印字方向となるように印字を行なうようにしたので、ライン型のインクジェットプリンタヘッドを用いた1パス記録方式を採用したとしても、ノズルの乾燥を原因とするノズルからのインク吐出不良を発生しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すインクジェット記録装置の機能ブロック図である。
【図2】インクジェット記録装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【図3】画像回転について説明する模式図である。
【図4】ノズル乾燥防止のための処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】インクジェットプリンタヘッドのノズル群と記録媒体に記録される情報との位置関係を例示する模式図である。
【符号の説明】
1 記録媒体
3 インクジェットプリンタヘッド
6 副走査駆動部
7 配置構造
54 印字データ生成手段、印字データ生成工程、印字データ生成機能(画像処理部)
57 度数分布算出手段、度数分布算出工程、度数分布算出機能(度数分布作成部)
58 度数分履歴記憶手段、度数分履歴記憶工程、度数分履歴記憶機能(度数分布履歴記憶部)
59 印字方向選択手段、印字方向選択工程、印字方向選択機能(回転角決定部)
60 記録手段、記録工程、記録機能(印字データ回転部)
Claims (13)
- 複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと、
前記インクジェットプリンタヘッドとその印字対象物である記録媒体とを規定の間隔を開けて位置付ける配置構造と、
前記インクジェットプリンタヘッドと前記記録媒体とを前記ノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部と、
画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成手段と、
生成された1ページ分の印字データ中における前記ノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出手段と、
前記度数分布算出手段によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる度数分布履歴記憶手段と、
これから印字しようとする前記印字データについて、前記記憶領域に記憶されている度数分布履歴と前記度数分布算出手段によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうち前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択手段と、
前記印字方向選択手段によって選択された印字方向となるように前記印字データに基づく前記インクジェットプリンタヘッドの駆動制御と前記副走査駆動部の駆動制御とを実行する記録手段と、
を具備するインクジェット記録装置。 - 前記印字方向選択手段は、前記ノズル毎の度数分布の標準偏差が最小となる印字方向を前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 前記印字方向選択手段は、前記ノズル毎の度数分布の最小値が最小となる印字方向を前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項1記載のインクジェット記録装置。
- 前記印字方向選択手段は、これから印字しようとする前記印字データの度数分布中に不使用の前記ノズルがない印字方向を優先させて前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項2又は3記載のインクジェット記録装置。
- 前記印字方向選択手段は、これから印字しようとする前記印字データの全ての印字方向における度数分布中に不使用の前記ノズルがある場合、その度数分布と前記記憶領域に記憶されている度数分布履歴とを合せた合成度数分布中に不使用の前記ノズルがない印字方向を優先させて前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項2又は3記載のインクジェット記録装置。
- 複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと、
前記インクジェットプリンタヘッドとその印字対象物である記録媒体とを規定の間隔を開けて位置付ける配置構造と、
前記インクジェットプリンタヘッドと前記記録媒体とを前記ノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部と、
画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成手段と、
生成された1ページ分の印字データ中における前記ノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出手段と、
これから印字しようとする前記印字データについて、前記度数分布算出手段によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横反転位置のうち前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択手段と、
前記印字方向選択手段によって選択された印字方向となるように前記印字データに基づく前記インクジェットプリンタヘッドの駆動制御と前記副走査駆動部の駆動制御とを実行する記録手段と、
を具備するインクジェット記録装置。 - 前記印字方向選択手段は、前記ノズル毎の度数分布の標準偏差が最小となる印字方向を前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項6記載のインクジェット記録装置。
- 前記印字方向選択手段は、前記ノズル毎の度数分布の最小値が最小となる印字方向を前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項6記載のインクジェット記録装置。
- 前記印字方向選択手段は、これから印字しようとする前記印字データの度数分布中に不使用の前記ノズルがない印字方向を優先させて前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向として選択する請求項7又は8記載のインクジェット記録装置。
- 複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと、前記インクジェットプリンタヘッドとその印字対象物である記録媒体とを規定の間隔を開けて位置付ける配置構造と、前記インクジェットプリンタヘッドと前記記録媒体とを前記ノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部とを具備するインクジェット記録装置を用い、
画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成工程と、
生成された1ページ分の印字データ中における前記ノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出工程と、
前記度数分布算出手段によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる度数分布履歴記憶工程と、
これから印字しようとする前記印字データについて、前記記憶領域に記憶されている度数分布履歴と前記度数分布算出手段によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうち前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択工程と、
前記印字方向選択手段によって選択された印字方向となるように前記印字データに基づく前記インクジェットプリンタヘッドの駆動制御と前記副走査駆動部の駆動制御とを実行する記録工程と、
を実行するインクジェット記録方法。 - 複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと、前記インクジェットプリンタヘッドとその印字対象物である記録媒体とを規定の間隔を開けて位置付ける配置構造と、前記インクジェットプリンタヘッドと前記記録媒体とを前記ノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部とを具備するインクジェット印字装置を用い、
画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成工程と、
生成された1ページ分の印字データ中における前記ノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出工程と、
これから印字しようとする前記印字データについて、前記度数分布算出手段によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横反転位置のうち前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択工程と、
前記印字方向選択手段によって選択された印字方向となるように前記印字データに基づく前記インクジェットプリンタヘッドの駆動制御と前記副走査駆動部の駆動制御とを実行記録工程と、
を実行するインクジェット記録方法。 - 複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと、前記インクジェットプリンタヘッドとその印字対象物である記録媒体とを規定の間隔を開けて位置付ける配置構造と、前記インクジェットプリンタヘッドと前記記録媒体とを前記ノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部とを具備するインクジェット記録装置が有するコンピュータにインストールされ、このコンピュータに、
画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成機能と、
生成された1ページ分の印字データ中における前記ノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出機能と、
前記度数分布算出手段によって算出された印字済みのページの度数分布を度数分布履歴として記憶領域に記憶させる度数分布履歴記憶機能と、
これから印字しようとする前記印字データについて、前記記憶領域に記憶されている度数分布履歴と前記度数分布算出手段によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横上下反転位置のうち前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択機能と、
前記印字方向選択手段によって選択された印字方向となるように前記印字データに基づく前記インクジェットプリンタヘッドの駆動制御と前記副走査駆動部の駆動制御とを実行する記録機能と、
を実行させる機械読み取り可能なインクジェット記録用のコンピュータプログラム。 - 複数のノズルが配列されたライン型のインクジェットプリンタヘッドと、前記インクジェットプリンタヘッドとその印字対象物である記録媒体とを規定の間隔を開けて位置付ける配置構造と、前記インクジェットプリンタヘッドと前記記録媒体とを前記ノズルの配列方向と直行する副走査方向に相対的に移動させる副走査駆動部とを具備するインクジェット印字装置が有するコンピュータにインストールされ、このコンピュータに、
画像信号に基づいて1ページ分の印字データを生成する印字データ生成機能と、
生成された1ページ分の印字データ中における前記ノズル毎のインク吐出回数の度数分布を算出する度数分布算出機能と、
これから印字しようとする前記印字データについて、前記度数分布算出手段によって算出された度数分布とに基づいて、正位置及び縦横反転位置のうち前記ノズルの乾燥防止に有利な印字方向を選択する印字方向選択機能と、
前記印字方向選択手段によって選択された印字方向となるように前記印字データに基づく前記インクジェットプリンタヘッドの駆動制御と前記副走査駆動部の駆動制御とを実行記録機能と、
を実行させる機械読み取り可能なインクジェット記録用のコンピュータプログラム。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2002
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