JP2004106109A - 旋削加工方法、旋削加工装置およびワーク把持機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質の旋削加工品を従来より短時間で得る。
【解決手段】旋削加工装置において、ワーク1を把持して回転運動する主軸台A1と、主軸台A1の正面側に配置され正面工具20を装着する正面刃物台B1と、主軸台A1の背面側に配置され背面工具10を装着する背面刃物台C1とを備え、主軸台A1のスピンドル2およびワーク把持機構3の少なくとも1つに、背面工具10が移動可能な内径空間2b、22を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】旋削加工装置において、ワーク1を把持して回転運動する主軸台A1と、主軸台A1の正面側に配置され正面工具20を装着する正面刃物台B1と、主軸台A1の背面側に配置され背面工具10を装着する背面刃物台C1とを備え、主軸台A1のスピンドル2およびワーク把持機構3の少なくとも1つに、背面工具10が移動可能な内径空間2b、22を設けた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの正面および背面の双方の加工を行う旋削加工装置およびワーク保持機構と、これらを用いた旋削加工方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、円筒形状のワークの背面加工を背面主軸台を用いて主軸台より背面主軸台に受け渡し、背面主軸台の回転軸上で加工する旋盤は周知であり、この旋盤を用いた加工方法は従来から採用されている。例えば、スター精密社のカタログに掲載されているスイス型CNC旋盤(従来例1)がある。この旋盤は、主軸台の他に背面主軸台を装備し、ワークの背面加工が可能な旋盤である。図15〜図17を用いて、この従来例1を説明する。
【0003】
図15において、旋盤は、その両側に配置された主軸台209および背面主軸台229と、主軸台209と背面主軸台229との間に配置された刃物台215とから構成されている。主軸台209のスピンドル202の回転軸に配設されたコレットチャック203には、ワーク201が把持され矢印H方向に回転可能となっている。背面主軸台229は、主軸台209の構造と勝手違いの同一構造となっており、さらに、矢印G方向に移動可能となっている。刃物台215は、Zガイド216上を矢印Z方向に移動可能で、Zガイド216はスライドベース217に固着されている。スライドベース217はXガイド218上を矢印X方向(紙面に垂直)に移動可能となっている。刃物台215の上部には、正面用工具台214と背面用工具台234とが配設され、それぞれ正面用バイト210、背面用バイト230が工具ホルダ211、231を介して取り付けられている。
【0004】
ワーク201のA面側を旋削する際は、コレットチャック203を図示しないコレット開閉装置により常時閉側に弾力付勢して、ワーク201を把持し、H方向に回転させて、正面用バイト210をZガイド216およびXガイド218上を矢印XおよびZ方向に移動させて旋削加工を行う。また、ワーク201の背面側であるB面側を旋削する際は、図16に示すように、背面主軸台229が主軸台209の方向(矢印G方向)に移動し、コレットチャック203からコレットチャック223へワーク201を授受交換する。その間、刃物台215(2点鎖線で示す)は矢印X方向(図15参照)に移動し退避している。ワーク201の授受交換が終了後、背面主軸台229は元の位置に後退する。図17において、背面用バイト230をZガイド216およびXガイド218上で矢印XおよびZ方向に移動させて、背面主軸台229のコレットチャック223に把持されたワーク201のB面側の旋削加工を行う。
【0005】
また、ワークがある程度長い場合は、ワークのほぼ中央部を主軸台で把持した状態で、正面側と背面側との双方から旋削加工することも行われている。しかし、上述した従来の両面加工方法では、主軸台構造からワークの長さが短い場合は、主軸台と加工工具とが干渉するため、両端を加工することができず、背面側を加工するためには、ワークを背面主軸に把持し直さなければならなかった。
【0006】
従来例1の他に、「中空ワーク両端面の加工法及び装置」として、特開平9−174301号公報に開示されたもの(従来例2)がある。図7、図18〜図21を用いてこの従来例2について説明する。
【0007】
従来、図7に示すような複数の内径を有する円筒形状の部品を加工する加工方法は、図18〜図21に示す方法によっている。図18に示すように、正面加工用チャック302を有する図示しない正面加工用スピンドルと、背面加工用チャック303を有する図示しない背面加工用スピンドルとからなる対向主軸を有する2軸型の旋盤の正面加工用チャック302にワーク301を取り付ける。つぎに、図19に示すように、正面加工用チャック302にワーク301が取り付いている状態で、外周および端面加工用工具304Aによりワーク301の外周と正面側端面とを加工し、正面側内径加工用工具305を使用し、正面側内径の加工を行う。
【0008】
正面側の外周、端面および内径の加工が終了すると、図20に示すように、正面加工用チャック302と背面加工用チャック303とを同期回転させ、両チャックでワーク301を把持し、外周および端面加工用工具として取り付けられた突っ切りバイト304Bによりワーク301を突っ切る。その後、図21に示すように、背面側内径加工用工具306を使用し、背面側内径加工を行う。この旋削加工方法により図7に示す複数の内径を有する円筒形状の部品を旋削加工することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記従来技術にはつぎのような問題点があった。すなわち、従来例1では、背面加工をするためには、主軸台から背面主軸台にワークを移動させる必要があるが、背面主軸台にワークを受け渡す前に、背面主軸台のコレットチャックで把持する部分を主軸台の回転軸上で加工し、その加工した部分を背面主軸台のコレットチャックで把持するため、背面主軸台の回転軸の振れが精度に加算され、同軸度を必要とする部品の加工には不利となる。また、加工した面を把持するため、把持痕が外周上に残ったり、薄肉の場合は変形する恐れがある。また、受け渡しの際に、ワークの外周に切り屑が付着している場合は、背面主軸台に渡した際にワークが振れてしまい、背面加工において同軸度も振れも、精度不良となる。また、受け渡しの際、背面主軸が把持する面を洗浄する必要があり、受け渡しに長時間を要し、加工サイクルタイムが長くなるという問題があった。
【0010】
また、従来例2では、ワークを掴み替えるため精度が出し難いという問題点があった。詳細内容を図22を用いて説明する。図22において、正面加工用スピンドルの回転軸307と背面加工用スピンドルの回転軸308とは互いに傾きとズレとが存在する。従来例2による旋削加工では、外周および正面側内径は、正面加工用スピンドルの回転軸307に沿って加工が行われる。背面側内径は、背面加工用スピンドルの回転軸308に沿って加工が行われる。そのため、旋削加工機のスピンドル同士の傾きとズレとが、ワーク301にそのまま転写される。さらに、掴み替えの誤差がワーク301に加算される。従って、図7に示す内径Cと外径Bとの同軸度や、内径Cと内径Aとの同軸度を高精度に加工することは困難であった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、請求項1および2に係る発明の課題は、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質の旋削加工品を従来より短時間で得る旋削加工方法を提供することである。
【0012】
請求項3または4に係る発明の課題は、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質の旋削加工品を従来より短時間で得ることができる旋削加工装置を提供することである。
【0013】
請求項5または6に係る発明の課題は、請求項3または4に係る発明の旋削加工装置に直接用いることができるワーク把持機構を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1またた2に係る発明は、スピンドルに把持され回転するワークの正面側および背面側から旋削加工を行う旋削加工方法において、前記背面側から行う旋削加工は、背面工具がスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つを経由して行う。
【0015】
請求項3または4に係る発明は、旋削加工装置において、ワークを把持して回転運動する主軸台と、該主軸台の正面側に配置され正面工具を装着する正面刃物台と、前記主軸台の背面側に配置され背面工具を装着する背面刃物台とを備え、前記主軸台のスピンドルおよびワーク把持機構の少なくとも1つに、前記背面工具が移動可能な内径空間を設けた。
【0016】
請求項5または6に係る発明は、ワーク把持機構において、スピンドルに取着され正面側にダイヤフラムを形成したチャック保持部材と、該チャック保持部材のダイヤフラムに固着された複数のワーク把持部材と、前記チャック保持部材の内周に摺動自在に嵌装されかつ前記ダイヤフラムと連結されたピストンと、前記チャック把持部材の正面側に螺合し伝達受け穴を有する圧力調整部材とを備え、前記チャック保持部材、前記ダイヤフラム、前記ピストンおよび前記圧力調整部材により形成される密閉空間に充填された流体の圧力に応じて前記ピストンが移動することにより、前記ワーク保持部材が開閉するように構成した。
【0017】
請求項1または2に係る発明の旋削加工法では、ワークをスピンドルに把持して回転させ、正面側から可能な旋削加工を行った後、背面側から背面工具をスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに挿入してワークの背面側の旋削加工を行う。
【0018】
請求項2に係る発明の旋削加工方法では、上記作用に加え、背面側から行う旋削加工は、前記背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させながら行うことにより、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出する。
【0019】
請求項3または4に係る発明の旋削加工装置では、主軸台を中央に配置し、その正面側に正面刃物台、背面側に背面刃物台を配置したことにより、ワークの正面および背面をワークの掴み替えなしで加工可能となり、主軸台の背面側に配置された背面刃物台に背面工具を装着して、主軸台のスピンドルの内径空間およびワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに背面工具を移動させ、ワークの背面側の旋削加工を行う。
【0020】
請求項4に係る発明の旋削加工装置では、上記作用に加え、背面工具を把持する工具ホルダに圧縮空気源と接続可能で、かつ前記工具ホルダの先端部より圧縮空気が噴出可能なエア通路を設けたことにより、背面側から行う旋削加工は、前記背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させ、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出しながら行う。
【0021】
請求項5または6に係る発明のワーク把持機構では、開放状態の複数のワーク把持部材にワークを挿入し、チャック保持部材の正面側に螺合する圧力調整部材をネジに対して正回転させて密閉空間内の流体を圧縮させると、ピストンが後退し、ダイヤフラムが凹んで複数のワーク把持部材の先端側が内方へ閉塞し、ワークを把持する。また、圧力調整部材をネジに対して逆回転させて密閉空間内の流体を膨張させると、ピストンが前進し、ダイヤフラムが正面側に張り出して複数のワーク把持部材の先端側が外方へ開き、ワークを開放する。なお、圧力調整部材の回転量により、密閉空間内における流体の圧力を調整することができる。
【0022】
請求項6に係る発明のワーク把持機構では、上記作用に加え、モータベースを前進させて従動プーリの伝達ピンと圧力調整部材の伝達ピン受け穴とを嵌合させ、サーボモータを回転させて、従動プーリの伝達ピンが圧力調整部材の伝達ピン受け穴に回転運動を伝達する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下具体的な実施の形態について説明する。なお、実施の形態2で説明するワーク把持機構U2は、旋削加工装置に装備された場合を示すが、この用途は旋削加工装置に限られることなく、独立して他の工作機械、例えば、フライス盤、ボール盤等におけるワーク把持機構として用いることができる。
【0024】
(実施の形態1)
図1および図2は、実施の形態1を示し、図1は旋削加工装置の縦断面図、図2は背面加工時の主軸台と背面刃物台との配置図である。
【0025】
図1において、旋削加工装置は、主に、主軸台A1と、主軸台A1の正面側に配置された正面刃物台B1と、主軸台A1の背面側に配置された背面刃物台C1とから構成されている。主軸台A1において、主軸台本体9は、ベース23上にボルト等によって固着されている。主軸台本体9には、2つのベアリング5が嵌装され、押さえ板8A、8Bを介してボルト等により固着されている。ベアリング5の内輪には、スピンドル2が嵌装され、プーリ6およびキー6Aを介してナット7により回転自在に装着されている。スピンドル2の回転軸上には、ワーク1を把持するコレットチャック3が嵌装され、ダブルナット24により力量調整された複数の皿バネ4の弾発力により、矢印J方向の左方に付勢されている。ダブルナット24および皿バネ4は、スピンドル2の後端2a側に形成された内径空間2bに収容されている。コレットチャック3には、後端面3aから円筒状の内径空間22が形成され、後述する背面工具10が挿入され、水平方向に移動可能であり、かつ、切り屑の排除が可能なスペースとなっている。また、コレットチャック3には、複数個所に放射状のスリワリが形成されており、そのスリワリには、弾力性のあるシール剤25が充填され、密封されている。
【0026】
正面刃物台B1において、ベース23上にはXガイド29が敷設され、Xガイド29にはスライドベース28が嵌装され、矢印X1方向(紙面に垂直)に案内される。スライドベース28上にはZガイド27が配設され、Zガイド27には、正面刃物台本体26が嵌装され、矢印Z1方向に案内される。正面刃物台本体26の上面には、工具ホルダ台24が取着されており、工具ホルダ台24には、ワーク1の正面側1aを旋削加工する正面工具20を取り付けた工具ホルダ21が把持されている。これにより、正面工具20は、矢印Z1およびX1方向に移動可能となっている。
【0027】
背面刃物台C1において、ベース23上にはZガイド18が敷設され、Zガイド18にはスライドベース17が嵌装され、矢印Z2方向に案内される。スライドベース17上には、Xガイド16が配設され、、Xガイド16には、背面刃物台本体15が嵌装され、矢印X2方向(紙面に垂直)に案内される。背面刃物台本体15の上面には、工具ホルダ台14が取着されており、工具ホルダ台14には、ワーク1の背面側1bを旋削加工する背面工具10を取り付けた工具ホルダ11が把持されている。これにより、背面工具10は、矢印Z2およびX2方向に移動可能となっている。ここで、矢印X1方向と矢印X2方向とは、互いに平行で、かつスピンドル2の回転軸に直交する水平方向の軸である。矢印Z1方向と矢印Z2方向とは、スピンドル2の回転軸に対して平行である。また、工具ホルダ11の内部には、その先端部11aからエア通路12が穿設され、工具ホルダ台14に穿設されたエア導入口13と連通している。エア導入口13は、図示しない圧縮空気源に接続されている。
【0028】
上記構成の旋削加工装置を用いたワーク1の旋削加工方法について説明する。図1において、主軸台A1のプーリ6に図示しないモータおよびベルトにより回転運動を与えると、スピンドル2およびコレットチャック3が回転し、コレットチャック3に把持されているワーク1が主軸台A1の回転軸上で回転する。そのとき、正面刃物台B1の正面工具20を図示しないサーボモータにて、矢印X1およびZ1方向に移動させ、ワーク1に接触させることにより、ワーク1の正面側1aを所望の形状に正面加工する。一方、背面刃物台Cの背面工具10を図示しないサーボモータにて、矢印X2およびZ2方向に移動させ、ワーク1に接触させて、ワーク1の背面側1bを所望の形状に背面加工する。
【0029】
図2において、背面刃物台C1の工具ホルダ11の外径は、背面加工の際の切り屑19を排出するため、コレットチャック3の内径空間22の内周径より2mmほどマイナスさせる必要がある。また、背面加工する際、圧縮空気をエア導入口13よりD方向へ導入すると、圧縮空気は、エア通路12を通り工具ホルダ11の先端部11aより矢印E方向に噴出する。コレットチャック3には、スリワリがあるがシール剤25で密閉構造となっているので、圧縮空気はワーク1の背面側1bに当たり跳ね返る。その跳ね返った圧縮空気の圧力により、背面加工時に発生した切り屑19をコレットチャック3の後方(矢印L方向)よりスピンドル2の内径空間2bに排出する。
【0030】
本実施の形態の旋削加工装置および旋削加工方法によれば、ワークの背面側を加工する際に、掴み替えが不要のため、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。さらに、切り屑がコレットチャックの後方へ排出されるので、切り屑によるワークの傷、切り屑の詰まりによる背面工具の損傷等の障害は発生しない。
【0031】
(実施の形態2)
図3〜図6は実施の形態2を示し、図3は旋削加工装置の縦断面図、図4は主軸台に配置されたワーク把持機構の縦断面図、図5は素材供給装置および圧力調整部材駆動装置の縦断面図、図6は旋削加工装置に素材を供給し、正面側を切断する工程の説明図である。
【0032】
図3において、旋削加工装置は、主に、ワーク把持機構U2を装備した主軸台A2と、主軸台A2の正面側に配置された正面刃物台B2と、主軸台A2の背面側に配置された背面刃物台C2とから構成されている。さらに、図5において、主軸台A2の正面側にて、正面刃物台B2と交互に配置される素材供給装置D2と、その上面に配設された圧力調整部材駆動装置E2とを備えている。
【0033】
図3において、主軸台A2の主軸台本体39は、ベース55上にボルト等によって固着されている。主軸台本体39には、2つのベアリング35が嵌装され、押さえ板38A、38Bを介してボルト等により固着されている。ベアリング35の内輪には、スピンドル32が嵌装され、プーリ36および図示しないキーを介してロックナット37により回転自在に装着されている。スピンドル32の回転軸上には、後述するワーク把持機構U2が装着されている。また、スピンドル32の後端面32aから円筒状の内径空間52が形成され、後述する背面工具40が挿入され、水平方向に移動可能であり、かつ、切り屑の排除が可能なスペースとなっている。
【0034】
また、主軸台本体39の上面にはステー60がボルト等により取着され、ステー60にはロックシリンダ61が取り付けられている。ロックシリンダ61の先端には、位置決めピン63が取り付いている。一方、プーリ36のロックナット37側には、V形穴64が穿設され、ロックシリンダ53を作動させると、位置決めピン63がV形穴64に嵌入し、プーリ36と一体的に回転するスピンドル32を、回転しないようにロックすることができる。プーリ36には、図示しないモータの駆動プーリとの間にベルト62が張架されており、スピンドル32が回転駆動される。
【0035】
つぎに、スピンドル32に装着されたワーク把持機構U2について説明する。図4において、スピンドル32の先端側の内径32bには、チャック保持部材としてのチャックベース71が嵌装され、ボルト81により固定されている。チャックベース71の最小内径部71gには、メネジが螺刻され、ピストン72が螺着し一体化されている。ピストン72の外径には、ピストンシール73が嵌装され、チャックベース71の段穴内径71aと密に摺動するようになっている。ピストン72の内径72aは、後述する背面工具40が移動できる内径空間を構成している。また、チャックベース71とピストン72との間には、円板状の密閉空間71bが形成されている。この密閉空間71bの正面側の壁はチャックベース71の一部であるが極めて薄く形成され、ダイヤフラム71cを形成している。また、ダイヤフラム71cの正面側には、ボス71dが数個所突設され、ワーク1を把持するための複数のワーク把持部材としてのチャック76がボルト80により螺着されている。
【0036】
チャックベース71の密閉空間71bのさらに外周には、円環状の密閉溝71eが形成され、シール78が密に嵌装されている。密閉空間71bと密閉溝71eとチャックベース71の外周とを連通するための貫通孔71fが複数個所穿設されている。密閉空間71bと密閉溝71eと貫通孔71fには、流体としての油83(図4の網目部分)が注入され、栓82により密封されている。ピストン72の背面には、皿バネ74が装着され、チャックベース71にバネフタ75が螺着されて、ピストン72を矢印ZA方向に付勢している。バネフタ75の内径75aも、後述する背面工具40が移動可能な空間を形成している。チャックベース71の外周71hには、オネジが螺刻され圧力調整部材としての押さえフタ77が螺合し、矢印ZA、ZB方向に進退可能となっている。
【0037】
押さえフタ77の進退は、その外周近傍に穿設されたカニメ穴状の2つの伝達ピン受け穴77aをネジに対して正回転させることにより行われる。押さえフタ77の回転は、通常後述する圧力調整部材駆動装置E2の2本の伝達ピン85(図5参照)の嵌入により行われるが、手動の場合はカニメ工具などを挿入して回してもよい。押さえフタ77の円環状の先端はシール78を介して、密封された油83を圧縮または膨張させることができる。チャックベース71と押さえフタ77との間に装着されたバネ79は、常時、矢印ZA方向に押さえフタ77を押圧しており、スピンドル32が回転する際にチャックベース71と押さえフタ77とが螺合するネジが緩んでズレないようになっている。
【0038】
ロックシリンダ61(図3参照)を作動させて、スピンドル32をロックした状態で、押さえフタ77を右回転させると、押さえフタ77は矢印ZB方向に移動してシール78を介して、油83の右方向より押さえフタ77が回転した程度に応じてピストン72に圧力が加えられる。しかし、押さえフタ77により、油83に圧力が加えられない状態では、ピストン72は皿バネ74により、常時ZA方向に付勢されているため、ダイヤフラム71cも矢印ZA方向に押され、ダイヤフラム71cに取り付いているチャック76は常時開いている。
【0039】
図3において、正面刃物台B2では、ベース55上にはXガイド59が敷設され、Xガイド59にはスライドベース58が嵌装され、矢印X1方向(紙面に垂直)に案内される。スライドベース58上にはZガイド57が配設され、Zガイド57には、正面刃物台本体56が嵌装され、矢印Z1方向に案内される。正面刃物台本体56の上面には、工具ホルダ台54が取着されており、工具ホルダ台54には、ワーク1の正面側1aを旋削加工する正面工具50を取り付けた工具ホルダ51が把持されている。これにより、正面工具50は、矢印Z1およびX1方向に移動可能となっている。
【0040】
背面刃物台C2では、ベース55上にはZガイド48が敷設され、Zガイド48にはスライドベース47が嵌装され、矢印Z2方向に案内される。スライドベース47上にはXガイド46が配設され、Xガイド46には、背面刃物台本体45が嵌装され、矢印X2方向(紙面に垂直)に案内される。背面刃物台本体45の上面には、工具ホルダ台44が取着されており、工具ホルダ台44には、ワーク1の背面側1bを旋削加工する背面工具40を取り付けた工具ホルダ41が把持されている。これにより、背面工具40は、矢印Z2およびX2方向に移動可能となっている。ここで、矢印X1方向と矢印X2方向とは、互いに平行で、かつスピンドル32の回転軸に直交する水平方向の軸である。矢印Z1方向と矢印Z2方向とは、スピンドル32の回転軸に対して平行である。また、工具ホルダ41の内部には、その先端部41aからエア通路42が穿設され、工具ホルダ台44に穿設されたエア導入口43と連通している。エア導入口43は、図示しない圧縮空気源に接続されている。
【0041】
つぎに、圧力調整部材駆動装置E2および素材供給装置D2について説明する。図5において、主軸台A2の正面には、素材供給装置D2と、その上面に配設された圧力調整部材駆動装置E2とが配置されている。まず、ワーク把持機構U2の圧力調整部材を駆動する圧力調整部材駆動装置E2から説明する。モータベース88は、素材供給装置D2の上面に固着されており、主軸台A2の回転軸と同軸上の下部にベアリング87が配設され、ベアリング87の内輪に従動プーリ86が固着され、ベアリング87により回転自在に保持されている。また、サーボモータ91が、モータベース88の上部に固着されており、モータ回転軸91aにはモータプーリ90が取着されている。、モータプーリ90と従動プーリ86とはタイミングベルト89により連結され、サーボモータ91の回転を伝達できるようになっている。従動プーリ86の左側面には、押さえフタ77の伝達ピン受け穴77aに対応する位置に伝達ピン85が突設されている。
【0042】
スピンドル32のロック状態にて、後述する素材供給装置D2の素材供給装置本体94を矢印ZD方向に移動し、伝達ピン85を押さえフタ77の伝達ピン受け穴77aに嵌入して、サーボモータ91を右回転すれば、タイミングベルト89を介して、押さえフタ77が右回転し、図4に示すように、押さえフタ77を矢印ZB方向に移動させ、シール78を介して油83を右方向より押圧し、サーボモータ91が回転した角度に応じて圧力を加えるようになっている。
【0043】
つぎに素材供給装置D2について説明する。図5において、ベース55上にはZガイド97が敷設され、Zガイド97には素材供給装置本体94が嵌装され、矢印ZC、ZD方向に案内される。素材供給装置本体94にはスピンドル32の回転軸と同軸上に給材軸受け96が固着され、給材軸受け96には図示しない給材軸が嵌装されている。給材軸の主軸台A2側には、給材チャック93が配設され、爪92によりワーク素材1Aが把持されている。一方、給材軸の後端には、給材プーリ95が取着され、給材軸を回転可能にしている。
【0044】
つぎに、上記旋削加工装置を用いた旋削加工法について説明する。図5に示すように、ワーク把持機構U2のチャック76が開いている状態で、ワーク素材1Aを給材チャック93にて把持した素材供給装置D2を矢印ZD方向に前進させ、ワーク素材1Aをチャック76に対して所定の位置に停止させる。主軸台A2のロックシリンダ61を作動させて、スピンドル32をロックした状態で伝達ピン85を伝達ピン受穴77aに嵌入して、サーボモータ91を回転すれば、タイミングベルト89を介して、押さえフタ77がネジに対して正回転して矢印ZB方向に移動する。図4に示すように、押さえフタ77が矢印ZB方向に移動すると、シール78を介して油83は、サーボモータ91が回転した角度に応じて、右方向よりピストン72に圧力を加える。その結果、ダイヤフラム71cが矢印ZB方向に変形し、ダイヤフラム71cに取り付いているチャック76が閉じる。この際、ワーク素材1Aをサーボモータ66の回転角度制御により所望の把持力にて把持する。
【0045】
つぎに、図6において、給材チャック93の爪92を開いて、素材供給装置D2を矢印ZC方向に後退させ、給材チャック93の爪92を閉じて、ロックシリンダ61の作動を停止すると、位置決めピン63が上昇(図6の2点鎖線の位置)し、スピンドル32は開放されて回転可能になる。プーリ36および給材プーリ95に、図示しないモータおよびベルト(プーリ36ではベルト62)により同期回転を与えると、スピンドル32およびチャック76と給材チャック93の爪92とが回転させられ、チャック76に把持されているワーク素材1Aが主軸台A2の回転軸上で回転する。この際、バイトホルダ99に保持された突っ切りバイト98が、図示しない移動装置により矢印YA方向に移動すれば、ワーク素材1Aを所望の長さに切断してワーク1を得ることができる。
【0046】
この切断作業の後、図3において、プーリ36に図示しないモータ及びベルト62により回転を与えると、スピンドル32およびチャック76が回転させられ、チャック76に把持されているワーク1が主軸台A2の回転軸上で回転する。正面工具50を図示しないサーボモータにて矢印X1およびZ1方向に移動させ、ワーク1に接触させれば、所望の形状にワーク1の正面側1aを旋削加工することができる。
【0047】
一方、背面工具40を図示しないサーボモータにて、矢印X2およびZ2方向に移動させ、ワーク1に接触させれば、所望の形状にワーク1の背面側1bを旋削加工することができる。工具ホルダ41の外径は、背面加工の際の矢印X2方向への移動および切り屑49の排出のために、内径空間52の内周径32cよりマイナスさせる必要がある。また、背面加工をする際、圧縮空気をエア導入口43より矢印D方向に導入すると、圧縮空気はエア通路42を通り、工具ホルダ41の先端部41aより、矢印E方向に噴出する。圧縮空気はワーク1の背面側1bに当たって跳ね返る。その跳ね返った圧縮空気の圧力により、背面加工時に発生した切り屑49をワーク把持機構U2および内径空間52の後方(矢印L方向)に排出する。
【0048】
本実施の形態の旋削加工装置および旋削加工方法によれば、ワークの背面を加工する際に、掴み替えが不要のため、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。さらに、ワーク素材を自動的にチャックに供給し、切断してワークを把持できるので、作業能率が良い。
【0049】
(実施の形態3)
図7は実施の形態3〜5にて扱うワークの縦断面図、図8〜図12は実施の形態3を示し、図8は旋削加工装置の平面図、図9は旋削加工装置の正面図、図10はワーク素材の把持状態を示す工程図、図11はワークの正面、背面および外周の加工を示す工程図、図12はワークの突っ切り加工を示す工程図である。
【0050】
図7において、ワーク101は、内径に複数の段状穴101a、101bおよびクビレ101cを有し、正面側内径Aと外周Bとの同軸度、正面側内径Aと背面側内径Cとの同軸度に高精度を要求されている。まず、このワーク101を旋削加工する旋削加工装置について説明する。
【0051】
図8および図9において、ベース110の上面にコの字状の刃物台105が配設され、矢印XおよびZ方向に移動可能に構成されている。コの字状の内側のベース110上には、主軸台102がボルト等により固定されている。主軸台102には、ベアリング等によりスピンドル104が回転自在に装着されている。スピンドル104の回転軸上に、背面側より円筒状の内径空間104aが形成され、後述する背面工具107が内径空間104a内に挿入され水平方向に移動可能になっている。スピンドル104の背面側外周には、プーリ104Aが嵌装され、図示しないモータのプーリとプーリ104Aとの間にベルト111が張架されている。スピンドル104の正面側には、ワーク把持機構としてのチャック103が装着され、ワーク101が回転可能に把持されている。
【0052】
ベース110内には、刃物台105の図示しないX軸ガイドと駆動装置、Z軸ガイドと駆動装置が配設されており、刃物台105は主軸台102に対してX軸方向とZ軸方向とに駆動される。刃物台105の正面側には、正面側内径加工用工具106、外径正面側端面加工用工具108および突っ切り工具109が取り付けられている。刃物台105の背面側には、複数の背面側端面内径加工用工具107が取り付けられている。すなわち、刃物台105の正面側は正面刃物台を構成し、背面側は背面刃物台を構成している。正面側内径加工用工具106はワーク101の正面側内径を旋削加工する。背面側端面内径加工用工具107はスピンドル104の空間104aを通過し、ワーク101の背面側端面および背面側内径を旋削加工する。外径正面側端面加工用工具108はワーク101の外径と正面側端面とを旋削加工する。突っ切り工具109はワーク101の突っ切り加工を行う。
【0053】
つぎに、上記構成の旋削加工装置を用いたワーク101の旋削加工方法について説明する。図10に示すように、ワーク素材101Aをチャック103に取り付ける。つぎに、図11に示すように、外径正面側端面加工用工具108により正面側端面101dおよび外周B、正面側内径加工用工具106によりクビレ101c、段状穴101aおよび正面側内径A、背面側端面内径加工用工具107により段状穴101b、背面側内径Cを旋削加工する。最後に、図12に示すように、突っ切り工具109によりワーク101を切り落とす。
【0054】
本実施の形態によれば、ワークを掴み替えることなく、全工程の加工を行うことができるとともに、内径に複数の段状穴やクビレを有するワークの正面側内径と外周との同軸度、および正面側内径と背面側内径との同軸度を高精度に確保することができる。
【0055】
(実施の形態4)
図13は実施の形態4を示し、旋削加工装置の平面図である。本実施の形態の旋削加工装置は、実施の形態3の旋削加工装置と刃物台の構造のみが異なり、他の構造は実施の形態3と同様のため、異なる部分のみ説明し、同一の部材には同一の符号を付し説明を省略する。
【0056】
図13において、ベース110上には、刃物台ベース112が配設され、刃物台ベース112上には、正面刃物台113および背面刃物台114がそれぞれ配設されている。ベース110内には、刃物台ベース112の図示しないZ軸ガイドおよびその駆動装置が配設され、刃物台ベース112は、ベース110に配設されている主軸台102に対して矢印Z方向に移動可能である。刃物台ベース112内には、正面刃物台113の図示しないX軸ガイドおよび駆動装置と、背面刃物台114の図示しないX軸ガイドおよび駆動装置とがそれぞれ配置されている。正面刃物台113と背面刃物台114は、ベース110に配設されている主軸台102に対して矢印X方向にそれぞれ移動可能である。その他の構成は、実施の形態3と同様である。
【0057】
上記構成の旋削加工装置を用いたワークの旋削加工方法は、実施の形態3とほぼ同じであるが、正面刃物台113と背面刃物台114とは、主軸台102に対し矢印X方向に別々に移動可能なので、実施の形態3にくらべ、工具配置の自由度が増し、ワークの加工順位を能率のよい手順に編成可能となる。
【0058】
本実施の形態によれば、実施の形態3と同様の効果に加え、ワークの加工順位を能率のよい手順に編成可能となり、短時間に旋削加工を行うことができる。
【0059】
(実施の形態5)
図14は実施の形態5を示し、旋削加工装置の平面図である。本実施の形態の旋削加工装置は、実施の形態3の旋削加工装置と刃物台の構造のみが異なり、他の構造は実施の形態3と同様のため、異なる部分のみ説明し、同一の部材には同一の符号を付し説明を省略する。
【0060】
図14において、ベース110上には、正面刃物台123と背面刃物台124とがそれぞれ配設されている。ベース110内には、正面刃物台123のZ軸ガイド125およびその駆動装置と図示しないX軸ガイドとその駆動装置が配設されている。また、背面刃物台124のZ軸ガイド125およびその駆動装置と図示しないX軸ガイドとその駆動装置が配設されている。正面刃物台123と背面刃物台124とは、ベース110上に配設されている主軸台102に対して矢印X方向および矢印Z方向に別々に移動可能である。その他の構成は、実施の形態3と同様である。
【0061】
上記構成の旋削加工装置を用いたワークの旋削加工方法は、実施の形態3とほぼ同じであるが、正面刃物台123と背面刃物台124とは、主軸台102に対して矢印X方向および矢印Z方向に別々に移動可能なので、ワークの正面側と背面側とを同時に加工することができる。
【0062】
本実施の形態によれば、実施の形態3と同様の効果に加え、ワークの正面側と背面側とを同時に加工することができるため、極めて、短時間で旋削加工を行うことができる。
【0063】
なお、上述した具体的な実施の形態から、つぎのような構成の技術的思想が導き出される。
(付記)
(1) 請求項5に記載のワーク把持機構を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の旋削加工装置。
【0064】
付記(1)によれば、請求項3または4の効果に加え、ワークの把持開放が容易にできるとともに、薄肉のワークでも外周に把持痕がつかず、変形もせず、より良質な旋削加工品を得ることができる。
【0065】
(2) 請求項6に記載のワーク把持機構を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の旋削加工装置。
【0066】
付記(2)によれば、請求項3または4の効果に加え、ワークの把持開放が容易にできるとともに、薄肉のワークでも外周に把持痕がつかず、変形もせず、より良質な旋削加工品を得ることができる。さらに、ワークの把持開放作業を能率よく自動的に行うことができる。
【0067】
(3) 前記正面刃物台および前記背面刃物台には、それぞれ複数の正面工具および背面工具を把持させ、独立して同時に旋削加工可能となるように構成したことを特徴とする請求項3または4記載の旋削加工装置。
【0068】
付記(3)によれば、請求項3または4の効果に加え、同時加工が可能となるので、加工サイクルタイムを短縮させることができる。
【0069】
【発明の効果】
請求項1または2に係る発明によれば、ワークをスピンドルに把持して回転させ、正面側から可能な旋削加工を行った後、背面側から背面工具をスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに挿入してワークの背面側の旋削加工を行うようにしたので、ワークの掴み替えすることなく、同軸度、触れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。
【0070】
請求項2に係る発明によれば、上記効果に加え、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出するようにしたので、切り屑がワークの旋削加工の障害になることはない。
【0071】
請求項3または4に係る発明によれば、ワークの正面および背面をワークの掴み替えなしで加工可能となり、主軸台の背面側に配置された背面刃物台に背面工具を装着して、主軸台のスピンドルの内径空間およびワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに背面工具を移動させ、ワークの背面側の加工を行うようにしたので、同軸度、振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。
【0072】
請求項4に係る発明によれば、上記効果に加え、背面側から行う旋削加工は、背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させ、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出しながら行うことにより、切り屑がワークの旋削加工の障害になることはない。
【0073】
請求項5または6に係る発明によれば、圧力調整部材の回転量により、密閉空間内における油の圧力を調整することができるようにしたので、ワークの把持、開放が容易にできるとともに、薄肉のワークでも外周に把持痕がつかず、変形もせず、より良質な加工品を得ることができる。
【0074】
請求項6に係る発明によれば、上記効果に加え、モータベースを前進させて従動プーリの伝達ピンと圧力調整部材の伝達ピン受け穴とを嵌合させ、サーボモータを回転させて、圧力調整部材の伝達ピン受け穴に回転運動を伝達するようにしたので、ワークの把持開放作業を能率よく自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の旋削加工装置の縦断面図である。
【図2】実施の形態1の背面加工時の主軸台と背面刃物台との配置図である。
【図3】実施の形態2の旋削加工装置の縦断面図である。
【図4】実施の形態2の主軸台に配置されたワーク把持機構の縦断面図である。
【図5】実施の形態2の素材供給装置及び圧力調整部材駆動装置の縦断面図である。
【図6】実施の形態2の旋削加工装置に素材を供給し、正面側を切断する工程の説明図である。
【図7】実施の形態3〜5にて扱うワークの縦断面図である。
【図8】実施の形態3の旋削加工装置の平面図である。
【図9】実施の形態3の旋削加工装置の正面図である。
【図10】実施の形態3のワーク素材の把持状態を示す工程図である。
【図11】実施の形態3のワークの正面、背面および外周の加工を示す工程図である。
【図12】実施の形態3のワークの突っ切り加工を示す工程図である。
【図13】実施の形態4の旋削加工装置の平面図である。
【図14】実施の形態5の旋削加工装置の平面図である。
【図15】従来例1の旋削加工装置の縦断面図である。
【図16】従来例1のワークを授受する工程の説明図である。
【図17】従来例1の背面加工を行う工程の説明図である。
【図18】従来例2のワーク素材を装着した工程の説明図である。
【図19】従来例2の外周および正面側加工をする説明図である。
【図20】従来例2の突っ切り工程の説明図である。
【図21】従来例2の背面側加工をする説明図である。
【図22】従来例2のワークの加工精度の説明図である。
【符号の説明】
1 ワーク
2 スピンドル
2b 内径空間
3 コレットチャック
10 背面工具
20 正面工具
22 内径空間
A1 主軸台
B1 正面刃物台
C1 背面刃物台
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワークの正面および背面の双方の加工を行う旋削加工装置およびワーク保持機構と、これらを用いた旋削加工方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、円筒形状のワークの背面加工を背面主軸台を用いて主軸台より背面主軸台に受け渡し、背面主軸台の回転軸上で加工する旋盤は周知であり、この旋盤を用いた加工方法は従来から採用されている。例えば、スター精密社のカタログに掲載されているスイス型CNC旋盤(従来例1)がある。この旋盤は、主軸台の他に背面主軸台を装備し、ワークの背面加工が可能な旋盤である。図15〜図17を用いて、この従来例1を説明する。
【0003】
図15において、旋盤は、その両側に配置された主軸台209および背面主軸台229と、主軸台209と背面主軸台229との間に配置された刃物台215とから構成されている。主軸台209のスピンドル202の回転軸に配設されたコレットチャック203には、ワーク201が把持され矢印H方向に回転可能となっている。背面主軸台229は、主軸台209の構造と勝手違いの同一構造となっており、さらに、矢印G方向に移動可能となっている。刃物台215は、Zガイド216上を矢印Z方向に移動可能で、Zガイド216はスライドベース217に固着されている。スライドベース217はXガイド218上を矢印X方向(紙面に垂直)に移動可能となっている。刃物台215の上部には、正面用工具台214と背面用工具台234とが配設され、それぞれ正面用バイト210、背面用バイト230が工具ホルダ211、231を介して取り付けられている。
【0004】
ワーク201のA面側を旋削する際は、コレットチャック203を図示しないコレット開閉装置により常時閉側に弾力付勢して、ワーク201を把持し、H方向に回転させて、正面用バイト210をZガイド216およびXガイド218上を矢印XおよびZ方向に移動させて旋削加工を行う。また、ワーク201の背面側であるB面側を旋削する際は、図16に示すように、背面主軸台229が主軸台209の方向(矢印G方向)に移動し、コレットチャック203からコレットチャック223へワーク201を授受交換する。その間、刃物台215(2点鎖線で示す)は矢印X方向(図15参照)に移動し退避している。ワーク201の授受交換が終了後、背面主軸台229は元の位置に後退する。図17において、背面用バイト230をZガイド216およびXガイド218上で矢印XおよびZ方向に移動させて、背面主軸台229のコレットチャック223に把持されたワーク201のB面側の旋削加工を行う。
【0005】
また、ワークがある程度長い場合は、ワークのほぼ中央部を主軸台で把持した状態で、正面側と背面側との双方から旋削加工することも行われている。しかし、上述した従来の両面加工方法では、主軸台構造からワークの長さが短い場合は、主軸台と加工工具とが干渉するため、両端を加工することができず、背面側を加工するためには、ワークを背面主軸に把持し直さなければならなかった。
【0006】
従来例1の他に、「中空ワーク両端面の加工法及び装置」として、特開平9−174301号公報に開示されたもの(従来例2)がある。図7、図18〜図21を用いてこの従来例2について説明する。
【0007】
従来、図7に示すような複数の内径を有する円筒形状の部品を加工する加工方法は、図18〜図21に示す方法によっている。図18に示すように、正面加工用チャック302を有する図示しない正面加工用スピンドルと、背面加工用チャック303を有する図示しない背面加工用スピンドルとからなる対向主軸を有する2軸型の旋盤の正面加工用チャック302にワーク301を取り付ける。つぎに、図19に示すように、正面加工用チャック302にワーク301が取り付いている状態で、外周および端面加工用工具304Aによりワーク301の外周と正面側端面とを加工し、正面側内径加工用工具305を使用し、正面側内径の加工を行う。
【0008】
正面側の外周、端面および内径の加工が終了すると、図20に示すように、正面加工用チャック302と背面加工用チャック303とを同期回転させ、両チャックでワーク301を把持し、外周および端面加工用工具として取り付けられた突っ切りバイト304Bによりワーク301を突っ切る。その後、図21に示すように、背面側内径加工用工具306を使用し、背面側内径加工を行う。この旋削加工方法により図7に示す複数の内径を有する円筒形状の部品を旋削加工することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記従来技術にはつぎのような問題点があった。すなわち、従来例1では、背面加工をするためには、主軸台から背面主軸台にワークを移動させる必要があるが、背面主軸台にワークを受け渡す前に、背面主軸台のコレットチャックで把持する部分を主軸台の回転軸上で加工し、その加工した部分を背面主軸台のコレットチャックで把持するため、背面主軸台の回転軸の振れが精度に加算され、同軸度を必要とする部品の加工には不利となる。また、加工した面を把持するため、把持痕が外周上に残ったり、薄肉の場合は変形する恐れがある。また、受け渡しの際に、ワークの外周に切り屑が付着している場合は、背面主軸台に渡した際にワークが振れてしまい、背面加工において同軸度も振れも、精度不良となる。また、受け渡しの際、背面主軸が把持する面を洗浄する必要があり、受け渡しに長時間を要し、加工サイクルタイムが長くなるという問題があった。
【0010】
また、従来例2では、ワークを掴み替えるため精度が出し難いという問題点があった。詳細内容を図22を用いて説明する。図22において、正面加工用スピンドルの回転軸307と背面加工用スピンドルの回転軸308とは互いに傾きとズレとが存在する。従来例2による旋削加工では、外周および正面側内径は、正面加工用スピンドルの回転軸307に沿って加工が行われる。背面側内径は、背面加工用スピンドルの回転軸308に沿って加工が行われる。そのため、旋削加工機のスピンドル同士の傾きとズレとが、ワーク301にそのまま転写される。さらに、掴み替えの誤差がワーク301に加算される。従って、図7に示す内径Cと外径Bとの同軸度や、内径Cと内径Aとの同軸度を高精度に加工することは困難であった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、請求項1および2に係る発明の課題は、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質の旋削加工品を従来より短時間で得る旋削加工方法を提供することである。
【0012】
請求項3または4に係る発明の課題は、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質の旋削加工品を従来より短時間で得ることができる旋削加工装置を提供することである。
【0013】
請求項5または6に係る発明の課題は、請求項3または4に係る発明の旋削加工装置に直接用いることができるワーク把持機構を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1またた2に係る発明は、スピンドルに把持され回転するワークの正面側および背面側から旋削加工を行う旋削加工方法において、前記背面側から行う旋削加工は、背面工具がスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つを経由して行う。
【0015】
請求項3または4に係る発明は、旋削加工装置において、ワークを把持して回転運動する主軸台と、該主軸台の正面側に配置され正面工具を装着する正面刃物台と、前記主軸台の背面側に配置され背面工具を装着する背面刃物台とを備え、前記主軸台のスピンドルおよびワーク把持機構の少なくとも1つに、前記背面工具が移動可能な内径空間を設けた。
【0016】
請求項5または6に係る発明は、ワーク把持機構において、スピンドルに取着され正面側にダイヤフラムを形成したチャック保持部材と、該チャック保持部材のダイヤフラムに固着された複数のワーク把持部材と、前記チャック保持部材の内周に摺動自在に嵌装されかつ前記ダイヤフラムと連結されたピストンと、前記チャック把持部材の正面側に螺合し伝達受け穴を有する圧力調整部材とを備え、前記チャック保持部材、前記ダイヤフラム、前記ピストンおよび前記圧力調整部材により形成される密閉空間に充填された流体の圧力に応じて前記ピストンが移動することにより、前記ワーク保持部材が開閉するように構成した。
【0017】
請求項1または2に係る発明の旋削加工法では、ワークをスピンドルに把持して回転させ、正面側から可能な旋削加工を行った後、背面側から背面工具をスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに挿入してワークの背面側の旋削加工を行う。
【0018】
請求項2に係る発明の旋削加工方法では、上記作用に加え、背面側から行う旋削加工は、前記背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させながら行うことにより、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出する。
【0019】
請求項3または4に係る発明の旋削加工装置では、主軸台を中央に配置し、その正面側に正面刃物台、背面側に背面刃物台を配置したことにより、ワークの正面および背面をワークの掴み替えなしで加工可能となり、主軸台の背面側に配置された背面刃物台に背面工具を装着して、主軸台のスピンドルの内径空間およびワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに背面工具を移動させ、ワークの背面側の旋削加工を行う。
【0020】
請求項4に係る発明の旋削加工装置では、上記作用に加え、背面工具を把持する工具ホルダに圧縮空気源と接続可能で、かつ前記工具ホルダの先端部より圧縮空気が噴出可能なエア通路を設けたことにより、背面側から行う旋削加工は、前記背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させ、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出しながら行う。
【0021】
請求項5または6に係る発明のワーク把持機構では、開放状態の複数のワーク把持部材にワークを挿入し、チャック保持部材の正面側に螺合する圧力調整部材をネジに対して正回転させて密閉空間内の流体を圧縮させると、ピストンが後退し、ダイヤフラムが凹んで複数のワーク把持部材の先端側が内方へ閉塞し、ワークを把持する。また、圧力調整部材をネジに対して逆回転させて密閉空間内の流体を膨張させると、ピストンが前進し、ダイヤフラムが正面側に張り出して複数のワーク把持部材の先端側が外方へ開き、ワークを開放する。なお、圧力調整部材の回転量により、密閉空間内における流体の圧力を調整することができる。
【0022】
請求項6に係る発明のワーク把持機構では、上記作用に加え、モータベースを前進させて従動プーリの伝達ピンと圧力調整部材の伝達ピン受け穴とを嵌合させ、サーボモータを回転させて、従動プーリの伝達ピンが圧力調整部材の伝達ピン受け穴に回転運動を伝達する。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下具体的な実施の形態について説明する。なお、実施の形態2で説明するワーク把持機構U2は、旋削加工装置に装備された場合を示すが、この用途は旋削加工装置に限られることなく、独立して他の工作機械、例えば、フライス盤、ボール盤等におけるワーク把持機構として用いることができる。
【0024】
(実施の形態1)
図1および図2は、実施の形態1を示し、図1は旋削加工装置の縦断面図、図2は背面加工時の主軸台と背面刃物台との配置図である。
【0025】
図1において、旋削加工装置は、主に、主軸台A1と、主軸台A1の正面側に配置された正面刃物台B1と、主軸台A1の背面側に配置された背面刃物台C1とから構成されている。主軸台A1において、主軸台本体9は、ベース23上にボルト等によって固着されている。主軸台本体9には、2つのベアリング5が嵌装され、押さえ板8A、8Bを介してボルト等により固着されている。ベアリング5の内輪には、スピンドル2が嵌装され、プーリ6およびキー6Aを介してナット7により回転自在に装着されている。スピンドル2の回転軸上には、ワーク1を把持するコレットチャック3が嵌装され、ダブルナット24により力量調整された複数の皿バネ4の弾発力により、矢印J方向の左方に付勢されている。ダブルナット24および皿バネ4は、スピンドル2の後端2a側に形成された内径空間2bに収容されている。コレットチャック3には、後端面3aから円筒状の内径空間22が形成され、後述する背面工具10が挿入され、水平方向に移動可能であり、かつ、切り屑の排除が可能なスペースとなっている。また、コレットチャック3には、複数個所に放射状のスリワリが形成されており、そのスリワリには、弾力性のあるシール剤25が充填され、密封されている。
【0026】
正面刃物台B1において、ベース23上にはXガイド29が敷設され、Xガイド29にはスライドベース28が嵌装され、矢印X1方向(紙面に垂直)に案内される。スライドベース28上にはZガイド27が配設され、Zガイド27には、正面刃物台本体26が嵌装され、矢印Z1方向に案内される。正面刃物台本体26の上面には、工具ホルダ台24が取着されており、工具ホルダ台24には、ワーク1の正面側1aを旋削加工する正面工具20を取り付けた工具ホルダ21が把持されている。これにより、正面工具20は、矢印Z1およびX1方向に移動可能となっている。
【0027】
背面刃物台C1において、ベース23上にはZガイド18が敷設され、Zガイド18にはスライドベース17が嵌装され、矢印Z2方向に案内される。スライドベース17上には、Xガイド16が配設され、、Xガイド16には、背面刃物台本体15が嵌装され、矢印X2方向(紙面に垂直)に案内される。背面刃物台本体15の上面には、工具ホルダ台14が取着されており、工具ホルダ台14には、ワーク1の背面側1bを旋削加工する背面工具10を取り付けた工具ホルダ11が把持されている。これにより、背面工具10は、矢印Z2およびX2方向に移動可能となっている。ここで、矢印X1方向と矢印X2方向とは、互いに平行で、かつスピンドル2の回転軸に直交する水平方向の軸である。矢印Z1方向と矢印Z2方向とは、スピンドル2の回転軸に対して平行である。また、工具ホルダ11の内部には、その先端部11aからエア通路12が穿設され、工具ホルダ台14に穿設されたエア導入口13と連通している。エア導入口13は、図示しない圧縮空気源に接続されている。
【0028】
上記構成の旋削加工装置を用いたワーク1の旋削加工方法について説明する。図1において、主軸台A1のプーリ6に図示しないモータおよびベルトにより回転運動を与えると、スピンドル2およびコレットチャック3が回転し、コレットチャック3に把持されているワーク1が主軸台A1の回転軸上で回転する。そのとき、正面刃物台B1の正面工具20を図示しないサーボモータにて、矢印X1およびZ1方向に移動させ、ワーク1に接触させることにより、ワーク1の正面側1aを所望の形状に正面加工する。一方、背面刃物台Cの背面工具10を図示しないサーボモータにて、矢印X2およびZ2方向に移動させ、ワーク1に接触させて、ワーク1の背面側1bを所望の形状に背面加工する。
【0029】
図2において、背面刃物台C1の工具ホルダ11の外径は、背面加工の際の切り屑19を排出するため、コレットチャック3の内径空間22の内周径より2mmほどマイナスさせる必要がある。また、背面加工する際、圧縮空気をエア導入口13よりD方向へ導入すると、圧縮空気は、エア通路12を通り工具ホルダ11の先端部11aより矢印E方向に噴出する。コレットチャック3には、スリワリがあるがシール剤25で密閉構造となっているので、圧縮空気はワーク1の背面側1bに当たり跳ね返る。その跳ね返った圧縮空気の圧力により、背面加工時に発生した切り屑19をコレットチャック3の後方(矢印L方向)よりスピンドル2の内径空間2bに排出する。
【0030】
本実施の形態の旋削加工装置および旋削加工方法によれば、ワークの背面側を加工する際に、掴み替えが不要のため、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。さらに、切り屑がコレットチャックの後方へ排出されるので、切り屑によるワークの傷、切り屑の詰まりによる背面工具の損傷等の障害は発生しない。
【0031】
(実施の形態2)
図3〜図6は実施の形態2を示し、図3は旋削加工装置の縦断面図、図4は主軸台に配置されたワーク把持機構の縦断面図、図5は素材供給装置および圧力調整部材駆動装置の縦断面図、図6は旋削加工装置に素材を供給し、正面側を切断する工程の説明図である。
【0032】
図3において、旋削加工装置は、主に、ワーク把持機構U2を装備した主軸台A2と、主軸台A2の正面側に配置された正面刃物台B2と、主軸台A2の背面側に配置された背面刃物台C2とから構成されている。さらに、図5において、主軸台A2の正面側にて、正面刃物台B2と交互に配置される素材供給装置D2と、その上面に配設された圧力調整部材駆動装置E2とを備えている。
【0033】
図3において、主軸台A2の主軸台本体39は、ベース55上にボルト等によって固着されている。主軸台本体39には、2つのベアリング35が嵌装され、押さえ板38A、38Bを介してボルト等により固着されている。ベアリング35の内輪には、スピンドル32が嵌装され、プーリ36および図示しないキーを介してロックナット37により回転自在に装着されている。スピンドル32の回転軸上には、後述するワーク把持機構U2が装着されている。また、スピンドル32の後端面32aから円筒状の内径空間52が形成され、後述する背面工具40が挿入され、水平方向に移動可能であり、かつ、切り屑の排除が可能なスペースとなっている。
【0034】
また、主軸台本体39の上面にはステー60がボルト等により取着され、ステー60にはロックシリンダ61が取り付けられている。ロックシリンダ61の先端には、位置決めピン63が取り付いている。一方、プーリ36のロックナット37側には、V形穴64が穿設され、ロックシリンダ53を作動させると、位置決めピン63がV形穴64に嵌入し、プーリ36と一体的に回転するスピンドル32を、回転しないようにロックすることができる。プーリ36には、図示しないモータの駆動プーリとの間にベルト62が張架されており、スピンドル32が回転駆動される。
【0035】
つぎに、スピンドル32に装着されたワーク把持機構U2について説明する。図4において、スピンドル32の先端側の内径32bには、チャック保持部材としてのチャックベース71が嵌装され、ボルト81により固定されている。チャックベース71の最小内径部71gには、メネジが螺刻され、ピストン72が螺着し一体化されている。ピストン72の外径には、ピストンシール73が嵌装され、チャックベース71の段穴内径71aと密に摺動するようになっている。ピストン72の内径72aは、後述する背面工具40が移動できる内径空間を構成している。また、チャックベース71とピストン72との間には、円板状の密閉空間71bが形成されている。この密閉空間71bの正面側の壁はチャックベース71の一部であるが極めて薄く形成され、ダイヤフラム71cを形成している。また、ダイヤフラム71cの正面側には、ボス71dが数個所突設され、ワーク1を把持するための複数のワーク把持部材としてのチャック76がボルト80により螺着されている。
【0036】
チャックベース71の密閉空間71bのさらに外周には、円環状の密閉溝71eが形成され、シール78が密に嵌装されている。密閉空間71bと密閉溝71eとチャックベース71の外周とを連通するための貫通孔71fが複数個所穿設されている。密閉空間71bと密閉溝71eと貫通孔71fには、流体としての油83(図4の網目部分)が注入され、栓82により密封されている。ピストン72の背面には、皿バネ74が装着され、チャックベース71にバネフタ75が螺着されて、ピストン72を矢印ZA方向に付勢している。バネフタ75の内径75aも、後述する背面工具40が移動可能な空間を形成している。チャックベース71の外周71hには、オネジが螺刻され圧力調整部材としての押さえフタ77が螺合し、矢印ZA、ZB方向に進退可能となっている。
【0037】
押さえフタ77の進退は、その外周近傍に穿設されたカニメ穴状の2つの伝達ピン受け穴77aをネジに対して正回転させることにより行われる。押さえフタ77の回転は、通常後述する圧力調整部材駆動装置E2の2本の伝達ピン85(図5参照)の嵌入により行われるが、手動の場合はカニメ工具などを挿入して回してもよい。押さえフタ77の円環状の先端はシール78を介して、密封された油83を圧縮または膨張させることができる。チャックベース71と押さえフタ77との間に装着されたバネ79は、常時、矢印ZA方向に押さえフタ77を押圧しており、スピンドル32が回転する際にチャックベース71と押さえフタ77とが螺合するネジが緩んでズレないようになっている。
【0038】
ロックシリンダ61(図3参照)を作動させて、スピンドル32をロックした状態で、押さえフタ77を右回転させると、押さえフタ77は矢印ZB方向に移動してシール78を介して、油83の右方向より押さえフタ77が回転した程度に応じてピストン72に圧力が加えられる。しかし、押さえフタ77により、油83に圧力が加えられない状態では、ピストン72は皿バネ74により、常時ZA方向に付勢されているため、ダイヤフラム71cも矢印ZA方向に押され、ダイヤフラム71cに取り付いているチャック76は常時開いている。
【0039】
図3において、正面刃物台B2では、ベース55上にはXガイド59が敷設され、Xガイド59にはスライドベース58が嵌装され、矢印X1方向(紙面に垂直)に案内される。スライドベース58上にはZガイド57が配設され、Zガイド57には、正面刃物台本体56が嵌装され、矢印Z1方向に案内される。正面刃物台本体56の上面には、工具ホルダ台54が取着されており、工具ホルダ台54には、ワーク1の正面側1aを旋削加工する正面工具50を取り付けた工具ホルダ51が把持されている。これにより、正面工具50は、矢印Z1およびX1方向に移動可能となっている。
【0040】
背面刃物台C2では、ベース55上にはZガイド48が敷設され、Zガイド48にはスライドベース47が嵌装され、矢印Z2方向に案内される。スライドベース47上にはXガイド46が配設され、Xガイド46には、背面刃物台本体45が嵌装され、矢印X2方向(紙面に垂直)に案内される。背面刃物台本体45の上面には、工具ホルダ台44が取着されており、工具ホルダ台44には、ワーク1の背面側1bを旋削加工する背面工具40を取り付けた工具ホルダ41が把持されている。これにより、背面工具40は、矢印Z2およびX2方向に移動可能となっている。ここで、矢印X1方向と矢印X2方向とは、互いに平行で、かつスピンドル32の回転軸に直交する水平方向の軸である。矢印Z1方向と矢印Z2方向とは、スピンドル32の回転軸に対して平行である。また、工具ホルダ41の内部には、その先端部41aからエア通路42が穿設され、工具ホルダ台44に穿設されたエア導入口43と連通している。エア導入口43は、図示しない圧縮空気源に接続されている。
【0041】
つぎに、圧力調整部材駆動装置E2および素材供給装置D2について説明する。図5において、主軸台A2の正面には、素材供給装置D2と、その上面に配設された圧力調整部材駆動装置E2とが配置されている。まず、ワーク把持機構U2の圧力調整部材を駆動する圧力調整部材駆動装置E2から説明する。モータベース88は、素材供給装置D2の上面に固着されており、主軸台A2の回転軸と同軸上の下部にベアリング87が配設され、ベアリング87の内輪に従動プーリ86が固着され、ベアリング87により回転自在に保持されている。また、サーボモータ91が、モータベース88の上部に固着されており、モータ回転軸91aにはモータプーリ90が取着されている。、モータプーリ90と従動プーリ86とはタイミングベルト89により連結され、サーボモータ91の回転を伝達できるようになっている。従動プーリ86の左側面には、押さえフタ77の伝達ピン受け穴77aに対応する位置に伝達ピン85が突設されている。
【0042】
スピンドル32のロック状態にて、後述する素材供給装置D2の素材供給装置本体94を矢印ZD方向に移動し、伝達ピン85を押さえフタ77の伝達ピン受け穴77aに嵌入して、サーボモータ91を右回転すれば、タイミングベルト89を介して、押さえフタ77が右回転し、図4に示すように、押さえフタ77を矢印ZB方向に移動させ、シール78を介して油83を右方向より押圧し、サーボモータ91が回転した角度に応じて圧力を加えるようになっている。
【0043】
つぎに素材供給装置D2について説明する。図5において、ベース55上にはZガイド97が敷設され、Zガイド97には素材供給装置本体94が嵌装され、矢印ZC、ZD方向に案内される。素材供給装置本体94にはスピンドル32の回転軸と同軸上に給材軸受け96が固着され、給材軸受け96には図示しない給材軸が嵌装されている。給材軸の主軸台A2側には、給材チャック93が配設され、爪92によりワーク素材1Aが把持されている。一方、給材軸の後端には、給材プーリ95が取着され、給材軸を回転可能にしている。
【0044】
つぎに、上記旋削加工装置を用いた旋削加工法について説明する。図5に示すように、ワーク把持機構U2のチャック76が開いている状態で、ワーク素材1Aを給材チャック93にて把持した素材供給装置D2を矢印ZD方向に前進させ、ワーク素材1Aをチャック76に対して所定の位置に停止させる。主軸台A2のロックシリンダ61を作動させて、スピンドル32をロックした状態で伝達ピン85を伝達ピン受穴77aに嵌入して、サーボモータ91を回転すれば、タイミングベルト89を介して、押さえフタ77がネジに対して正回転して矢印ZB方向に移動する。図4に示すように、押さえフタ77が矢印ZB方向に移動すると、シール78を介して油83は、サーボモータ91が回転した角度に応じて、右方向よりピストン72に圧力を加える。その結果、ダイヤフラム71cが矢印ZB方向に変形し、ダイヤフラム71cに取り付いているチャック76が閉じる。この際、ワーク素材1Aをサーボモータ66の回転角度制御により所望の把持力にて把持する。
【0045】
つぎに、図6において、給材チャック93の爪92を開いて、素材供給装置D2を矢印ZC方向に後退させ、給材チャック93の爪92を閉じて、ロックシリンダ61の作動を停止すると、位置決めピン63が上昇(図6の2点鎖線の位置)し、スピンドル32は開放されて回転可能になる。プーリ36および給材プーリ95に、図示しないモータおよびベルト(プーリ36ではベルト62)により同期回転を与えると、スピンドル32およびチャック76と給材チャック93の爪92とが回転させられ、チャック76に把持されているワーク素材1Aが主軸台A2の回転軸上で回転する。この際、バイトホルダ99に保持された突っ切りバイト98が、図示しない移動装置により矢印YA方向に移動すれば、ワーク素材1Aを所望の長さに切断してワーク1を得ることができる。
【0046】
この切断作業の後、図3において、プーリ36に図示しないモータ及びベルト62により回転を与えると、スピンドル32およびチャック76が回転させられ、チャック76に把持されているワーク1が主軸台A2の回転軸上で回転する。正面工具50を図示しないサーボモータにて矢印X1およびZ1方向に移動させ、ワーク1に接触させれば、所望の形状にワーク1の正面側1aを旋削加工することができる。
【0047】
一方、背面工具40を図示しないサーボモータにて、矢印X2およびZ2方向に移動させ、ワーク1に接触させれば、所望の形状にワーク1の背面側1bを旋削加工することができる。工具ホルダ41の外径は、背面加工の際の矢印X2方向への移動および切り屑49の排出のために、内径空間52の内周径32cよりマイナスさせる必要がある。また、背面加工をする際、圧縮空気をエア導入口43より矢印D方向に導入すると、圧縮空気はエア通路42を通り、工具ホルダ41の先端部41aより、矢印E方向に噴出する。圧縮空気はワーク1の背面側1bに当たって跳ね返る。その跳ね返った圧縮空気の圧力により、背面加工時に発生した切り屑49をワーク把持機構U2および内径空間52の後方(矢印L方向)に排出する。
【0048】
本実施の形態の旋削加工装置および旋削加工方法によれば、ワークの背面を加工する際に、掴み替えが不要のため、同軸度および振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。さらに、ワーク素材を自動的にチャックに供給し、切断してワークを把持できるので、作業能率が良い。
【0049】
(実施の形態3)
図7は実施の形態3〜5にて扱うワークの縦断面図、図8〜図12は実施の形態3を示し、図8は旋削加工装置の平面図、図9は旋削加工装置の正面図、図10はワーク素材の把持状態を示す工程図、図11はワークの正面、背面および外周の加工を示す工程図、図12はワークの突っ切り加工を示す工程図である。
【0050】
図7において、ワーク101は、内径に複数の段状穴101a、101bおよびクビレ101cを有し、正面側内径Aと外周Bとの同軸度、正面側内径Aと背面側内径Cとの同軸度に高精度を要求されている。まず、このワーク101を旋削加工する旋削加工装置について説明する。
【0051】
図8および図9において、ベース110の上面にコの字状の刃物台105が配設され、矢印XおよびZ方向に移動可能に構成されている。コの字状の内側のベース110上には、主軸台102がボルト等により固定されている。主軸台102には、ベアリング等によりスピンドル104が回転自在に装着されている。スピンドル104の回転軸上に、背面側より円筒状の内径空間104aが形成され、後述する背面工具107が内径空間104a内に挿入され水平方向に移動可能になっている。スピンドル104の背面側外周には、プーリ104Aが嵌装され、図示しないモータのプーリとプーリ104Aとの間にベルト111が張架されている。スピンドル104の正面側には、ワーク把持機構としてのチャック103が装着され、ワーク101が回転可能に把持されている。
【0052】
ベース110内には、刃物台105の図示しないX軸ガイドと駆動装置、Z軸ガイドと駆動装置が配設されており、刃物台105は主軸台102に対してX軸方向とZ軸方向とに駆動される。刃物台105の正面側には、正面側内径加工用工具106、外径正面側端面加工用工具108および突っ切り工具109が取り付けられている。刃物台105の背面側には、複数の背面側端面内径加工用工具107が取り付けられている。すなわち、刃物台105の正面側は正面刃物台を構成し、背面側は背面刃物台を構成している。正面側内径加工用工具106はワーク101の正面側内径を旋削加工する。背面側端面内径加工用工具107はスピンドル104の空間104aを通過し、ワーク101の背面側端面および背面側内径を旋削加工する。外径正面側端面加工用工具108はワーク101の外径と正面側端面とを旋削加工する。突っ切り工具109はワーク101の突っ切り加工を行う。
【0053】
つぎに、上記構成の旋削加工装置を用いたワーク101の旋削加工方法について説明する。図10に示すように、ワーク素材101Aをチャック103に取り付ける。つぎに、図11に示すように、外径正面側端面加工用工具108により正面側端面101dおよび外周B、正面側内径加工用工具106によりクビレ101c、段状穴101aおよび正面側内径A、背面側端面内径加工用工具107により段状穴101b、背面側内径Cを旋削加工する。最後に、図12に示すように、突っ切り工具109によりワーク101を切り落とす。
【0054】
本実施の形態によれば、ワークを掴み替えることなく、全工程の加工を行うことができるとともに、内径に複数の段状穴やクビレを有するワークの正面側内径と外周との同軸度、および正面側内径と背面側内径との同軸度を高精度に確保することができる。
【0055】
(実施の形態4)
図13は実施の形態4を示し、旋削加工装置の平面図である。本実施の形態の旋削加工装置は、実施の形態3の旋削加工装置と刃物台の構造のみが異なり、他の構造は実施の形態3と同様のため、異なる部分のみ説明し、同一の部材には同一の符号を付し説明を省略する。
【0056】
図13において、ベース110上には、刃物台ベース112が配設され、刃物台ベース112上には、正面刃物台113および背面刃物台114がそれぞれ配設されている。ベース110内には、刃物台ベース112の図示しないZ軸ガイドおよびその駆動装置が配設され、刃物台ベース112は、ベース110に配設されている主軸台102に対して矢印Z方向に移動可能である。刃物台ベース112内には、正面刃物台113の図示しないX軸ガイドおよび駆動装置と、背面刃物台114の図示しないX軸ガイドおよび駆動装置とがそれぞれ配置されている。正面刃物台113と背面刃物台114は、ベース110に配設されている主軸台102に対して矢印X方向にそれぞれ移動可能である。その他の構成は、実施の形態3と同様である。
【0057】
上記構成の旋削加工装置を用いたワークの旋削加工方法は、実施の形態3とほぼ同じであるが、正面刃物台113と背面刃物台114とは、主軸台102に対し矢印X方向に別々に移動可能なので、実施の形態3にくらべ、工具配置の自由度が増し、ワークの加工順位を能率のよい手順に編成可能となる。
【0058】
本実施の形態によれば、実施の形態3と同様の効果に加え、ワークの加工順位を能率のよい手順に編成可能となり、短時間に旋削加工を行うことができる。
【0059】
(実施の形態5)
図14は実施の形態5を示し、旋削加工装置の平面図である。本実施の形態の旋削加工装置は、実施の形態3の旋削加工装置と刃物台の構造のみが異なり、他の構造は実施の形態3と同様のため、異なる部分のみ説明し、同一の部材には同一の符号を付し説明を省略する。
【0060】
図14において、ベース110上には、正面刃物台123と背面刃物台124とがそれぞれ配設されている。ベース110内には、正面刃物台123のZ軸ガイド125およびその駆動装置と図示しないX軸ガイドとその駆動装置が配設されている。また、背面刃物台124のZ軸ガイド125およびその駆動装置と図示しないX軸ガイドとその駆動装置が配設されている。正面刃物台123と背面刃物台124とは、ベース110上に配設されている主軸台102に対して矢印X方向および矢印Z方向に別々に移動可能である。その他の構成は、実施の形態3と同様である。
【0061】
上記構成の旋削加工装置を用いたワークの旋削加工方法は、実施の形態3とほぼ同じであるが、正面刃物台123と背面刃物台124とは、主軸台102に対して矢印X方向および矢印Z方向に別々に移動可能なので、ワークの正面側と背面側とを同時に加工することができる。
【0062】
本実施の形態によれば、実施の形態3と同様の効果に加え、ワークの正面側と背面側とを同時に加工することができるため、極めて、短時間で旋削加工を行うことができる。
【0063】
なお、上述した具体的な実施の形態から、つぎのような構成の技術的思想が導き出される。
(付記)
(1) 請求項5に記載のワーク把持機構を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の旋削加工装置。
【0064】
付記(1)によれば、請求項3または4の効果に加え、ワークの把持開放が容易にできるとともに、薄肉のワークでも外周に把持痕がつかず、変形もせず、より良質な旋削加工品を得ることができる。
【0065】
(2) 請求項6に記載のワーク把持機構を備えたことを特徴とする請求項3または4記載の旋削加工装置。
【0066】
付記(2)によれば、請求項3または4の効果に加え、ワークの把持開放が容易にできるとともに、薄肉のワークでも外周に把持痕がつかず、変形もせず、より良質な旋削加工品を得ることができる。さらに、ワークの把持開放作業を能率よく自動的に行うことができる。
【0067】
(3) 前記正面刃物台および前記背面刃物台には、それぞれ複数の正面工具および背面工具を把持させ、独立して同時に旋削加工可能となるように構成したことを特徴とする請求項3または4記載の旋削加工装置。
【0068】
付記(3)によれば、請求項3または4の効果に加え、同時加工が可能となるので、加工サイクルタイムを短縮させることができる。
【0069】
【発明の効果】
請求項1または2に係る発明によれば、ワークをスピンドルに把持して回転させ、正面側から可能な旋削加工を行った後、背面側から背面工具をスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに挿入してワークの背面側の旋削加工を行うようにしたので、ワークの掴み替えすることなく、同軸度、触れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。
【0070】
請求項2に係る発明によれば、上記効果に加え、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出するようにしたので、切り屑がワークの旋削加工の障害になることはない。
【0071】
請求項3または4に係る発明によれば、ワークの正面および背面をワークの掴み替えなしで加工可能となり、主軸台の背面側に配置された背面刃物台に背面工具を装着して、主軸台のスピンドルの内径空間およびワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つに背面工具を移動させ、ワークの背面側の加工を行うようにしたので、同軸度、振れ精度が良く、外周に把持痕もつかず、変形もせず、良質な旋削加工品を従来より短時間で得ることができる。
【0072】
請求項4に係る発明によれば、上記効果に加え、背面側から行う旋削加工は、背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させ、ワーク把持機構の外へ切り屑を排出しながら行うことにより、切り屑がワークの旋削加工の障害になることはない。
【0073】
請求項5または6に係る発明によれば、圧力調整部材の回転量により、密閉空間内における油の圧力を調整することができるようにしたので、ワークの把持、開放が容易にできるとともに、薄肉のワークでも外周に把持痕がつかず、変形もせず、より良質な加工品を得ることができる。
【0074】
請求項6に係る発明によれば、上記効果に加え、モータベースを前進させて従動プーリの伝達ピンと圧力調整部材の伝達ピン受け穴とを嵌合させ、サーボモータを回転させて、圧力調整部材の伝達ピン受け穴に回転運動を伝達するようにしたので、ワークの把持開放作業を能率よく自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の旋削加工装置の縦断面図である。
【図2】実施の形態1の背面加工時の主軸台と背面刃物台との配置図である。
【図3】実施の形態2の旋削加工装置の縦断面図である。
【図4】実施の形態2の主軸台に配置されたワーク把持機構の縦断面図である。
【図5】実施の形態2の素材供給装置及び圧力調整部材駆動装置の縦断面図である。
【図6】実施の形態2の旋削加工装置に素材を供給し、正面側を切断する工程の説明図である。
【図7】実施の形態3〜5にて扱うワークの縦断面図である。
【図8】実施の形態3の旋削加工装置の平面図である。
【図9】実施の形態3の旋削加工装置の正面図である。
【図10】実施の形態3のワーク素材の把持状態を示す工程図である。
【図11】実施の形態3のワークの正面、背面および外周の加工を示す工程図である。
【図12】実施の形態3のワークの突っ切り加工を示す工程図である。
【図13】実施の形態4の旋削加工装置の平面図である。
【図14】実施の形態5の旋削加工装置の平面図である。
【図15】従来例1の旋削加工装置の縦断面図である。
【図16】従来例1のワークを授受する工程の説明図である。
【図17】従来例1の背面加工を行う工程の説明図である。
【図18】従来例2のワーク素材を装着した工程の説明図である。
【図19】従来例2の外周および正面側加工をする説明図である。
【図20】従来例2の突っ切り工程の説明図である。
【図21】従来例2の背面側加工をする説明図である。
【図22】従来例2のワークの加工精度の説明図である。
【符号の説明】
1 ワーク
2 スピンドル
2b 内径空間
3 コレットチャック
10 背面工具
20 正面工具
22 内径空間
A1 主軸台
B1 正面刃物台
C1 背面刃物台
Claims (6)
- スピンドルに把持され回転するワークの正面側および背面側から旋削加工を行う旋削加工方法において、
前記背面側から行う旋削加工は、背面工具がスピンドルの内径空間およびワークを把持するワーク把持機構の内径空間の少なくとも1つを経由して行うことを特徴とする旋削加工方法。 - 前記背面側から行う旋削加工は、前記背面工具を把持する工具ホルダの先端部より圧縮空気を噴出させながら行うことを特徴とする請求項1記載の旋削加工方法。
- ワークを把持して回転運動する主軸台と、該主軸台の正面側に配置され正面工具を装着する正面刃物台と、前記主軸台の背面側に配置され背面工具を装着する背面刃物台とを備え、前記主軸台のスピンドルおよびワーク把持機構の少なくとも1つに、前記背面工具が移動可能な内径空間を設けたことを特徴とする旋削加工装置。
- 前記背面工具を把持する工具ホルダに圧縮空気源と接続可能で、かつ前記工具ホルダの先端部より圧縮空気が噴出可能なエア通路を設けたことを特徴とする請求項3記載の旋削加工装置。
- スピンドルに取着され正面側にダイヤフラムを形成したチャック保持部材と、前記ダイヤフラムに固着された複数のワーク把持部材と、前記チャック保持部材の内周に摺動自在に嵌装されかつ前記ダイヤフラムと連結されたピストンと、前記チャック保持部材の正面側に螺合し伝達ピン受け穴を有する圧力調整部材とを備え、前記チャック保持部材、前記ダイヤフラム、前記ピストンおよび前記圧力調整部材により形成される密閉空間に充填された流体の圧力に応じて前記ピストンが移動することにより、前記ワーク把持部材が開閉するように構成したことを特徴とするワーク把持機構。
- 前記圧力調整部材の回転軸と同軸に回転自在に保持され周辺部に伝達ピンを突設した従動プーリと、該従動プーリと同期して回転するモータプーリと、該モータプーリを回転させるサーボモータと、前記圧力調整部材に対して進退自在なモータベースとを有し、前記伝達ピンの回転により前記圧力調整部材を進退させる圧力調整部材駆動装置を備えたことを特徴とする請求項5記載のワーク把持機構。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
- 2002-09-18 JP JP2002271360A patent/JP2004106109A/ja not_active Withdrawn
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