JP2004105804A - ポリスルホン微孔性膜及びその製法 - Google Patents

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【課題】ポリスルホン系の親水性微孔性膜からろ液に僅かではあるが表面に残留しているポリビニルピロリドンが溶出する。ポリビニルピロリドンは食品添加や医薬品への添加が世界で広く認められている安全な物質ではあるが、本ろ過膜を半導体製造や液晶セル製造の洗浄水ろ過に使用する場合は、微量の不純物の溶出も許容が難しくなってきた。
本発明の目的はろ液への有機物溶出を少なくし、透水速度が早く、親水性も優れているポリスルホン系微孔性膜の製造方法を提供することにある。
【解決手段】ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンを溶媒に溶解した溶液を支持体に流延し、凝固浴に浸漬する工程よりなるポリスルホン系微孔性膜の製造方法において、K値が10から75のポリビニルピロリドンを使用することを特徴とする微孔性膜の製造方法によって達成できる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は微孔性膜の製造方法に関するものであり、特に製薬工業における薬剤、食品工業におけるアルコール飲料等の濾過、および前記製造工業及び半導体製造工業を初めとする微細な加工を行う電子工業分野、原子力工業、さらに諸工業の実験室等において使用される超純水製造のための精製水、純水等の濾過に用いられ、10μm以下特に1μm以下サブミクロンオーダーの微粒子や微生物を効率よく濾過する精密濾過用微孔性膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来製薬工業、食品工業、電子工業、原子力工業分野において、水系、非水系の0.1〜5μm程度の微粒子除去、菌除去などに用いられる精密濾用微孔性膜およびその製造方法に関してはセルロースエステル、脂肪族ポリアミド、ポリフルオロカーボン、ポリスルホン、ポリプロピレン等を原料とするものが開示されている。
このような微孔性膜は、その内部に存在する微孔の孔径が膜厚方向に実質的に変化せず、膜の両表面の孔径が実質的に変わらない所謂対称膜と、膜厚方向に孔径が連続的または不連続的に変化し、膜の一方の表面の孔径と他方の表面の孔径とが異なっている非対称膜と、膜厚方向に孔径分布を有し、膜内部に最小孔径層を有する内部緻密層膜と呼ばれる構造を有する非対称膜との三種類に分類される。
これらのうち対称膜は、濾過にあたって膜全体が流体の流れに対して大きな対抗を示し、小さな流速しか得られない(即ち、単位面積当たり、単位時間当たり単位差圧当たり小さな流量しか得られない)上、目詰まりがしやすく濾過寿命が短い、耐ブロツキング性がない等の欠点があつた。
【0003】
一方非対称膜は緻密層と呼ばれる孔径の小さい層を膜の片方の表面にもち比較的大きい穴をもう一方の表面にもったものである。これを濾過液の流れに対して大きい穴をもった面を向けると実質的には濾過除去されうる最小の微粒子はこの緻密層で捕捉されるというように、膜の厚みをすべて有効に瀘材として活用することができるので、注意深く使用する場合には、濾過流量を増加せしめることも膜の寿命を延ばすことも可能であり、この意味で優れた微孔性膜である。
しかしながら、この場合には緻密層が極めて重要であるにもかかわらず従来、この緻密層が表面にあるために擦過その他で傷がつきやすく、微粒子の漏洩をきたし易いという欠点があつた。
かかる欠点を補うために、内部緻密層膜即ち孔径の小さな層が濾過膜内部に存在する構造が望まれ、非対称膜を2枚緻密層同士を密着し重ね合わせる不連続な構造、および膜内部に緻密層を形成する微孔性膜が提案されている(例えば特許文献1。)。
【0004】
このようなポリスルホン系微孔性膜の製造方法は、ポリマーに膨潤剤と非溶媒を加えて溶媒に溶解してなる製膜原液を、全く安定な溶液状態で支持体上に流延し、該液膜に溶媒の蒸発と空気中の水分の吸収を行いコアセルベーシヨンを起させた後、該液膜を凝固浴に浸漬させ、しかる後微孔性膜を前記流延用支持体上より剥離することを特徴とするものである。膨潤剤としてポリビニルピロリドンがもっとも広く利用される。この理由はポリビニルピロリドンが精密ろ過用途には好ましいスポンジ状の多孔構造形成にすぐれているだけでなく、出来上がったポリスルホン膜の表面を親水性に保ちやすい性質を有しているためである。
さらには、ポリスルホン系微孔性膜の製造方法として、膜の親水性を高めるために分子量の大きなポリビニルピロリドンを用いる方法が提案されている(例えば特許文献2。)。また、このような化合物の分子量を表現するにはK値が一般的に用いられ、その測定法が示されている。
非溶媒として水がよく用いられ、またポリスルホンの良溶媒としてはN−メチル−2−ピロリドンや2−ピロリドンがよく用いられる。
【0005】
【特許文献1】
特公平4−68966号公報(第1−2頁)
【特許文献2】
特開平4−338224号公報(第2−3頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この様にして作られたポリスルホン系の親水性微孔性膜からろ液に僅かではあるが表面に残留しているポリビニルピロリドンが溶出する。ポリビニルピロリドンは食品添加や医薬品への添加が世界で広く認められている安全な物質ではあるが、本ろ過膜を半導体製造や液晶セル製造の洗浄水ろ過に使用する場合は、微量の不純物の溶出も許容が難しくなってきた。
本発明の目的はろ液への有機物溶出を少なくし、透水速度が早く、親水性も優れているポリスルホン系微孔性膜の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は検討の結果、製膜溶液調製に用いるポリビニルピロリドンの分子量に注目し、分子量に関係する係数K値を特定したポリビニルピロリドンを使用することにより、ポリビニルピロリドン溶出量減少と膜の親水性を両立するろ過膜及びその製法を提供するに至った。
即ち本発明の上記目的は、以下の態様により達成された。
(1)ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンを溶媒に溶解した溶液を支持体に流延し、凝固浴に浸漬する工程よりなるポリスルホン系微孔性膜の製造方法において、K値が10〜75のポリビニルピロリドンを使用することを特徴とする微孔性膜の製造方法。
(2) ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜75のポリビニルピロリドンの使用量が0.6〜1.2倍であることを特徴とする(1)に記載の微孔性膜の製造方法。
(3)K値が55〜75のポリビニルピロリドンを使用することを特徴とする(1)に記載の微孔性膜の製造方法。
(4)K値が60〜70のポリビニルピロリドンを使用することを特徴とする(3)に記載の微孔性膜の製造方法。
(5)ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜75であるポリビニルピロリドンの使用量が0.4〜2倍であり、かつK値が80〜100であるポリビニルピロリドンの使用量が0.01倍〜0.3倍であることを特徴とする(1)または(2)に記載の微孔性膜の製造方法。
(6)ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜40であるポリビニルピロリドンの使用量が0.4〜2倍であり、 かつK値が80〜100であるポリビニルピロリドンの使用量が0.01〜0.3倍であることを特徴とする(5)に記載の微孔性膜の製造方法。
(7)ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜40であるポリビニルピロリドンの使用量が0.4〜2倍であり、 かつK値が80〜100であるポリビニルピロリドンの使用量が0.01〜0.15倍であることを特徴とする(6)に記載の微孔性膜の製造方法。
(8)ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜40であるポリビニルピロリドンの使用量が0.4〜2倍であり、 かつK値が55〜75であるポリビニルピロリドンの使用量が0.5倍〜0.65倍であることを特徴とする(7)に記載の微孔性膜の製造方法。
(9)(1)〜(8)に記載された製造方法によって造られた微孔性膜。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の微孔性膜の製造方法の最も効果的な1実施態様について第1図を用いて説明する。
第1図において、ポリスルホンをジヤケツト付溶解釜1で溶解する。その時微細孔形成に必要な非溶媒として水、膨潤剤としてポリビニルピロリドン等が添加混合される。この溶液は脱泡後、送液ポンプ2により流延用の注液器3に送られ、注液器3より流延用支持体4としてのポリエステルフイルム上に安定した溶液状態の溶液を液膜5として流延する。流延された液膜5の表面に空気調節装置6で調節した空気を吹出口7より当てた後、ポリマーに対し非溶媒でありポリマーの溶液に相溶性を有する液を収容する凝固液槽8に浸漬させる。
液膜5は流延後調節した空気に吹かれることよって液膜の表面から内部に向ってコアセルベーシヨンを起こし、微細なコアセルベーシヨン相を液膜5の表面から内部に向って形成し、凝固液槽(凝固液としては水)8の中でその微細なコアセルベーシヨン相を微細孔として固定させると同時に液膜5の相分離によって、微細孔以外の細孔の形成し、微孔性膜9を形成する。しかる後、微孔性膜9を流延用支持体4より剥離させる。
【0009】
流延用支持体4は流延用支持体巻取機10へ、剥離した微孔性膜9は水洗槽11で水洗し、引続き多価アルコールによりポリビニルピロリドン(以下、PVPと称す)を洗い出す多価アルコール洗浄処理槽12を経て、水洗槽13を通りPVPの含有量を4%以下にし、乾燥機14を経て巻取機15に巻取られる。
上記の製造方法により、改良されたポリスルホン系微孔性膜を製造することができる。
本発明において用いられるポリスルホンは一般式(I)、(II)または(III)で表されるポリマーが好ましい。
【0010】
【化1】
Figure 2004105804
【0011】
本発明のポリスルホン系微孔性膜の製造は、上記ポリスルホンを良溶媒、良溶媒と非溶媒の混合溶媒、またはポリスルホンに対する溶解性の程度が異なる複数種の溶媒の混合したものに溶解して製膜原液を作製する。
この場合のポリスルホンの良溶媒としては、通常膜形成用ポリマーの良溶媒であり、かつ凝固浴に浸漬した場合に速やかに凝固液と置換されるものが使用される。多くの場合、凝固液としては水及び/又は水と相溶性のある有機溶媒が使用されるので、凝固液と相溶性のある極性溶媒を使用することが好ましい。例えば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンあるいはこれらの混合溶媒が適当である。
また本発明における非溶媒を混合する場合の非溶媒としては、水、セロソルブ類、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
非溶媒の良溶媒に対する割合は、混合液が均一状態を保てる範囲ならば如何なる範囲でもよいが、質量%で0.5〜50%が好ましい。
【0012】
また、多孔質構造形成を制御するものとして膨潤剤と称される無機電解質、有機電解質または高分子をポリマー溶液に加える。
膨潤剤としては、PVPの外に、食塩、塩化リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛等の無機酸の金属塩、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム等の有機酸の金属塩、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の高分子電解質、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルメチルタウリン酸ナトリウム等のイオン系界面活性剤等を併用してもよい。膜の孔形状に限外ろ過膜によくみられる指型構造を形成せず、ミクロンオーダーからサブミクロンオーダーの球形あるいはフットボール形状のセルを多数積層した多孔構造(スポンジ構造)を形成するためには、PVPあるいはポリエチレングリコールがもっとも適している。中でもPVPは出来上がったポリスルホン微孔性膜の表面を親水性にしやすいことが知られており、このため特にPVPがポリスルホン多孔膜性膜の膨潤剤として多用される理由である。
【0013】
しかし本発明者は膜の親水性を高め、PVPの溶出性を抑える技術について検討を重ねた結果、PVPの分子量の大きさを示すK値によって、生成する膜の親水性とろ液へのPVP溶出性が影響を受けることを見出し、技術的な研鑚を重ね、本発明を出願するに至った。また、K値とは分子量に対応するパラメータのひとつとして良く用いられ、 その測定法は、日本薬局方解説書編集委員会編「第十三改正日本薬局方−条文と注釈−」廣川書店、平成8年4月15日、p.2463―2467のポビドン(PVPのこと)の項に記載されている。K値は次式によって求められる。
K=(1.5logηrel−1)/(0.15+0.003c)+[300clogηrel+(c+1.5clogηrel1/2/(0.15c+0.003c
ここで、cは溶液100ml中の換算した脱水物の質量(g)であり、直接滴定によって求められた水分の寄与分を除いた値である。また、ηrelは水の動粘度に対する試料溶液の動粘度の比であり、同文献p.108−113に記載されている粘度測定法の第1法(毛細管粘度計法)によって求められた物性値である。同文献によると、K値が15から21のものは平均分子量が1万、K値が26から35のものは同じく4万、K値が50から62のものは16万、K値が80から100のものは36万と記載されている。
【0014】
K値の大きなPVPの使用は親水性に優れた膜を作るものの、ポリスルホン骨格表面にPVPが残留しやすくなる。このPVPは洗浄等によって完全に除去することが極めて難しく、ろ過使用時にPVPがろ液中に溶出するという問題を生じる。
ろ過時のPVP溶出量とPVPのK値の関係を詳細に調べたところ、PVP溶出量はPVPのK値によって影響され、K値が80以上のPVP使用においてより顕著であった。従ってK<80のPVPを使用することでろ液への溶出の問題は解消される。
しかし、 PVPのK値が小さくなればなるほど、粘度を上げるため製膜液への添加量が増大する、 製膜途中の洗浄過程においてPVPがポリスルホン骨格表面から容易に除去されて膜の親水性が消失するといった別の問題が生じ、これらの問題を解消することが課題となる。
【0015】
親水性向上とろ過時のPVP溶出量削減の課題を解決する方法として次の二通りの方法を見出した。
ひとつは、ポリスルホン膜へのPVP残留を洗浄条件で制御しやすく、親水性と溶出性をバランスよく調整できるようなK値を持つPVPを使用することであり、そのPVPのK値は10〜75であり、好ましくは55〜75であり、さらに好ましくは60〜70であった。
もうひとつはK値の異なる複数の種類のPVPを使用することである。即ち、洗浄で流れ出すためろ過時には溶出しないK値が10〜75と比較的小さいいわゆる低分子量のPVPと、膜を親水化しうるK値が比較的大きいいわゆる高分子量のPVPとを併用する方法である。この組み合わせとして、K値が10〜40の低分子量のPVPと、K値が80〜100の高分子量のPVPとを併用する方法がより好ましく、K値が20〜35の低分子量のPVPと、K値が80〜100の高分子量のPVPとを併用する方法が特に好ましい。さらに、これらはポリスルホンポリマーとの質量比によって影響を受け、低分子量のPVPにおいてはポリスルホンポリマーに対して質量比で0.4〜2倍が良く、好ましくは0.6〜1.2倍であり、 高分子のPVPにおいてはポリスルホンポリマーに対して質量比で0.01〜0.3倍が良く、好ましくは0.01〜0.15倍である。
さらに、K値が10〜75のPVPの中から、異なるK値をもつPVPを組み合わせることもできる。例えば、ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜40であるポリビニルピロリドン0.4〜2倍とK値が55〜75であるポリビニルピロリドン0.5倍〜0.65倍とを併用することにより、親水性、洗浄性に優れた膜を調製することができる。
【0016】
製膜原液中のポリスルホンの濃度は5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%である。35質量%を超えると、得られる微孔性膜の透水性が実質的な意味を持たない程小さくなり、また5質量%より低い濃度では十分な分離能を持った微孔性膜は得られない。製膜原液へのPVP添加量はポリスルホン量に対して50%から200%が好ましい。特に好ましくはポリスルホン量に対して70%から150%である。PVP量が少ないと指型構造が多くなり、スポンジ孔構造ができにくくなる。PVP量が多いと、出来上がりの微孔性膜の機械強度が小さくなり使用に耐えなくなる。
【0017】
本発明の微孔性膜の製造方法は、上記の如くして得られた製膜原液を流延支持体上に流延し、流延された液膜の表面に調節した空気を適当な時間当てることにより、溶媒蒸気の蒸発量と雰囲気からの非溶媒蒸気(通常は水蒸気)吸収量を適宜調節することにより内部緻密層膜を製造することができる。この場合、表面層付近にのみコアセルベーシヨンをおこさせるために、極めて短時間に、均一な溶媒の蒸発と非溶媒蒸気の吸収をおこさせ、直ちに凝固させる必要がある。この溶剤の蒸発と非溶媒蒸気の吸収を調節することにより、異方性孔形状を調節することができる。
上記の製造条件は、ポリマー種、溶媒種、非溶媒種、膨潤剤種、ポリマー濃度および流延時の雰囲気等により異なるので、ミクロ相分離の時間と、膜の構造を検討し、最適の条件を見い出す必要がある。見い出された条件は、流延膜からの溶媒の蒸発量と非溶媒蒸気の吸収量を種々の方法により調節することによって制御することができる。
【0018】
流延した液膜から一定量の溶媒が蒸発し、一定量の非溶媒蒸気を吸収するように調節する方法としては、流延部から凝固液までのポリマー溶液の経路に覆いをかけて、流延後凝固浴に浸漬するまでの時間を調節したり、この雰囲気の溶媒蒸気圧、非溶媒蒸気圧、温度並びに送風、排風速度等を調節するなどの方法を取る。
凝固液から離脱したポリマー溶液は自己支持性をもつに至り、補強のため密着していた流延用支持体から剥離されて水洗浴に浸漬される。水洗後は更に水、セロソルブ類、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の洗浄液により洗浄処理し、最後にもう一度水洗し、膜からの溶出PVPを少なくする。洗浄液はそれぞれ単独で使用してもよいが、混合して使用してもよい。特に水は単独で50℃以上の高温で使用したり、1級アルコールやアセトン、セロソルブ類との混合液にして使用する。多価アルコールは60℃以上の高温にして洗浄する場合使用しやすい。温度を高くすると洗浄時間は短縮できる。従って使用する洗浄液の沸点にもよるが、60℃以上の高温にすると、10分以下の時間で洗浄できる。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1〜4、比較例1、2
(微孔性膜の調製)  ポリスルホン(UCC社製P−3500)15質量部、N−メチル−2−ピロリドン72質量部、ポリビニルピロリドン13から20質量部、塩化リチウム1.0質量部、水1.2質量部を均一に溶解して製膜原液を得る。ポリビニルピロリドンのK値を変えて実施例4種、比較例2種の製膜原液を用意した。この溶液を安定した溶液状態でガラス板上に製品厚さ180μmになるようキヤステイングコーターを通して流延し、25℃相対湿度50%に調節した空気を風速1.2m/secで流延した液膜表面に当てた後、直ちに25℃の水を満たした凝固浴槽へ浸漬して微孔製膜を作った。液膜表面に空気を当てる時間を調節することにより、膜の平均孔径が0.2μmから0.6μmになるようにした。凝固後水中でガラス板より剥離した。膜に残存しているPVPを取り除くために、75℃のジエチレングリコール中で5分間洗浄処理を行ない、さらに水洗・乾燥を行い、微孔性膜を得た。
(微孔性膜の評価) 膜に残存しているPVPは、ろ過時に意図せず溶出してろ液を汚染する可能性がある。この状態での膜の親水性とPVP溶出性をそれぞれ下記に記載の親水性の測定方法およびPVP溶出性の測定方法により測定し、結果を第1表に示した(評価A)。
さらに残存PVPを除くために、膜を25℃の25%エタノール水溶液中に1時間浸漬し、水洗乾燥を行った。同様にここでの膜の親水性とPVP溶出性を測定し、結果を第1表に示した(評価B)。
評価Aは洗浄回数が1回のため比較的PVP溶出量が多くなる評価法であり、評価Bは洗浄を2回行うためPVPの溶出量が少なくなる評価法である。
【0020】
親水性の測定方法
約10cm四方の膜を水面上に静かに浮かべ、孔中に水が吸われて膜全面が半透明状に変色するまでの時間を測定する。30秒以内に吸水すれば○(excellent)、2分以内に吸水すれば△(good)、2分以上かかった場合は×(no good)と判定した。
PVP溶出性の測定方法
ろ過膜約27gを500ml広口ビンに詰め、これに450mlの超純水を入れる。回転するローラー上で転がしながら4時間抽出し、この液125mlをなす型フラスコにとり、凍結乾燥する。メタノールd/DO=3/2溶液2ml(内部標準含有)を注いで壁に付着しているPVPを溶解し、この液を核磁気共鳴装置にかけてPVP固有Hのシグナルを積分し、内部標準シグナル積分値と比較して定量する。この値は、ろ過時に起こるPVPのろ液への溶出量と相関するため、小さい方が良い。
【0021】
【表1】
Figure 2004105804
【0022】
K値の大きいPVP(K=89)を単独で使用すると、溶出量が大きかった(比較例1)。K値の大きいPVPは洗浄で洗い流されず膜に残存し、ろ過時に溶出してしまうためと考えられる。
使用するPVPのK値を63まで小さくすることで、溶出量が大きく抑えられた(実施例1)。K値を小さくすることでPVPは洗浄時に洗い流されるため、ろ過時における溶出量が減少したと考えられる。
次に、使用するPVPのK値を31までさらに小さくすると、親水性を良くするために少量のK値の大きいPVPを必要とするが、K値の小さいPVPは洗浄で充分に洗い流されるため、溶出量は少なくなった(実施例2、3)。ただし、親水性を得るために補助的に使用するK値の大きいPVPの量は、多すぎるとろ過時の溶出量を増加させた(比較例2)。また、親水性を得るため補助的に加えるPVPはK=63という中程度の分子量のものを用いることもできた(実施例4)。
以上の結果から、ろ過膜の親水性と、ろ過時での膜からろ液へのPVPの溶出量減少を両立のために、K値が10から75のポリビニルピロリドンを使用することが効果的であることがわかった。
【0023】
【発明の効果】
本発明のポリスルホンとポリビニルピロリドンを溶媒に溶解した溶液を支持体に流延し、凝固浴に浸漬する工程よりなるポリスルホン系微孔性膜の製造方法において、製膜溶液調製に使用するPVPのK値を規定することにより、できたろ過膜の親水性と膜からろ液へのPVP溶出量の削減を両立することができた。
【0024】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明による微孔性膜の製造方法の1実施例の説明図である。
【符号の簡単な説明】
1      溶解釜
2      送液ポンプ
3      注液器
4      流延用支持体
5      液膜
6      空気調節装置
7      吹出口
8      凝固液槽
9      微孔性膜
10    流延用支持体巻取機
11    水洗槽
12    多価アルコール洗浄処理槽
13    水洗槽
14    乾燥機
15    巻取機

Claims (4)

  1. ポリスルホン系ポリマーとポリビニルピロリドンを溶媒に溶解した溶液を支持体に流延し、凝固浴に浸漬する工程よりなるポリスルホン系微孔性膜の製造方法において、K値が10〜75のポリビニルピロリドンを使用することを特徴とする微孔性膜の製造方法。
  2. K値が55〜75のポリビニルピロリドンを使用することを特徴とする請求項1に記載の微孔性膜の製造方法。
  3. ポリスルホン系ポリマーの質量に対して、K値が10〜75であるポリビニルピロリドンの使用量が0.4〜2倍であり、かつK値が80〜100であるポリビニルピロリドンの使用量が0.01〜0.3倍であることを特徴とする請求項1に記載の微孔性膜の製造方法。
  4. 請求項1〜3に記載された製造方法によって造られた微孔性膜。
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