JP2004105565A - 眼科用光凝固装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、被検眼の眼底上に投影された照準用レーザ光の視認性を向上させるとともに、治療用レーザ光の光量のロスを減少させることが可能な眼科用光凝固装置を提供する。
【解決手段】被検眼の疾患部位に光凝固による治療を施すための治療用レーザ光を発振する治療用レーザ発振器11と、治療用レーザ光が照射されるべき被検眼の疾患部位に照準を合わせるための照準用レーザ光を発振する照準用レーザ発振器12と、治療用レーザ光の光路と照準用レーザ光の光路とを偏光カップリングにより合成させるための偏光ビームスプリッタ13とを有し、治療用レーザ発振器11と照準用レーザ発振器12とは同系色のレーザ光を発振する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検眼の疾患部位の治療を行うための眼科用光凝固装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水冷式でレーザ光の連続発振が可能な眼科用光凝固装置が主流となっていた。このような眼科用光凝固装置は、単一のレーザ発振器を備えており、濃いフィルタを抜き差しすることによって治療用レーザ光と照準用レーザ光との使い分けを行っていた。治療用レーザ光とは被検眼の疾患部位に対して光凝固による治療を施すためのレーザ光を意味し、照準用レーザ光とは治療用レーザ光を当該疾患部位に的確に照射するための照準を合わせるためのレーザ光を意味する。しかしながらこの従来の眼科用光凝固装置は、そのサイズが大きくならざるを得なかったため、治療室ないしは手術室のスペースとの兼ね合いにおいて問題があった。
【0003】
上記問題を受けて装置の小型化が図られ、通常のコンセントからの電源により動作する空冷式の眼科用光凝固装置が開発され、現在はこのタイプが主流となっている。このような眼科用光凝固装置においては、レーザの連続発振ができなくなったことに伴い、治療用レーザ光を発振する治療用レーザ発振器と照準用レーザ光を発振する照準用レーザ発振器とをそれぞれ単独に設けている。この際、治療用レーザ光としては高エネルギーの緑色レーザ光を適用し、照準用レーザ光としては低エネルギーの赤色レーザ光を適用しているのが通常である。図3に、このような眼科用光凝固装置50の特徴部分の概略を示す。
【0004】
眼科用光凝固装置50は、治療用レーザ光である緑色レーザ光を発振するための治療用レーザ発振器51、照準用レーザ光である赤色レーザ光を発振するための照準用レーザ発振器52、治療用レーザ光および照準用レーザ光の光路を合成するためのダイクロイックミラー53、被検眼にレーザ光を案内するための光学系の一部をなす光ファイバ54、その入射端54aにレーザ光を集光するための集光レンズ55、治療用レーザ光の出力を監視するために治療用レーザ光の一部を受光するためのフォトダイオード56を含んで構成されている。
【0005】
眼科用光凝固装置50によれば、赤色の照準用レーザ光により被検眼の眼底上の疾患部位に照準を合わせたのち、照準用レーザ光と同一の光路を経由して眼底上に結像される緑色の治療用レーザ光により上記照準を外さずに疾患部位の光凝固を行うことができる。したがって、レーザ光を連続発振できない小型の眼科用光凝固装置においても、水冷式の大型の眼科用光凝固装置と同様の治療を行うことが可能となる。
【0006】
このような眼科用光凝固装置としては、例えば、照準用レーザ発振器にはHe−Neレーザが使用され、治療用レーザ発振器にはアルゴンレーザやダイ(Dye)レーザが使用され、被検眼を観察するための観察用レーザ光の波長と照準用レーザ光の波長を相違させたり、観察用レーザ光の波長と治療用レーザ光の波長とを一致または相違させた構成を有するものが知られている。なお、このような眼科用光凝固装置では、治療用レーザ光の光路と照準用レーザ光の光路とを一致させるための合成手段としてはダイクロイックミラーが使用されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−163613号公報(段落〔0019〕、〔0025〕、
〔0026〕、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の眼科用光凝固装置においては、次のような問題が生じていた。即ち、被検眼の眼底上に結像された照準用レーザ光のスポット像は、これと同系色の眼底上における視認性が悪いため、疾患部位に照準を合わせることが困難であった。また、治療用レーザ光の光路と照準用レーザ光の光路とを一致させるための合成手段としてダイクロイックミラーを使用すると、合成手段を透過するいずれか一方のレーザ光の光量ロスが大きくならざるを得なかった(7%程度)。
【0009】
また、上記特許文献1に開示された眼科用光凝固装置では、透過の場合と比較して反射による光量ロスが小さいというダイクロイックミラーの特性を考慮すると、高出力が要求される治療用レーザ光を反射される側のレーザ光として配設することによって光量損失上の効率性を担保する必要があった。これは、装置を設計する際の自由度を制約するひとつの要因となっていた。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、被検眼の眼底上に結像された照準用レーザ光のスポット像の視認性を向上させるとともに、合成手段を経由するレーザ光、特に透過する側のレーザ光、の光量のロスを減少させることにより装置の設計上の自由度の向上を図ることが可能な眼科用光凝固装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の本発明は、被検眼の疾患部位に光凝固による治療を施すための治療用レーザ光を発振する治療用レーザ発振手段と、前記治療用レーザ光が照射されるべき前記被検眼の前記疾患部位に照準を合わせるための照準用レーザ光を発振する照準用レーザ発振手段と、前記治療用レーザ光の光路と前記照準用レーザ光の光路とを偏光カップリングにより合成させるための合成手段と、を有し、前記治療用レーザ発振手段と前記照準用レーザ発振手段とは、同系色のレーザ光を発振することを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の眼科用光凝固装置であって、前記治療用レーザ発振手段により発振される前記治療用レーザ光の波長と、前記照準用レーザ発振手段により発振される前記照準用レーザ光の波長とは、30nm以内の差異であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の眼科用光凝固装置であって、前記治療用レーザ発振手段が所望の出力を発振しているか否かを監視するために前記治療用レーザ光の一部を受光する受光手段をさらに有することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態の一例について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
(眼科用光凝固装置の構成について)
図1には本発明に係る第1の実施形態の眼科用光凝固装置1の光学的構成の概略が示されている。眼科用光凝固装置1は、治療用レーザ発振器11、照準用レーザ発振器12、偏光ビームスプリッタ13、光ファイバ14、集光レンズ15、フォトダイオード16および17、ガラス板18、レーザ照射光学系20を含んで構成されている。
【0016】
眼科用光凝固装置1には、2つのレーザ発振器が具備されている。治療用レーザ発振器11は、被検眼Eの眼底Ea上の疾患部位に光凝固による治療を施すための治療用レーザ光を発振する治療用レーザ発振手段である。また、照準用レーザ発振器12は、治療用レーザ光が照射されるべき疾患部位に照準を合わせるための照準用レーザ光を発振する照準用レーザ発振手段を構成している。
【0017】
治療用レーザ発振器11は、治療用レーザ光として光軸O方向に緑色レーザ光(例えば532nmのグリーンレーザ光)を発振する。一方、照準用レーザ発振器12は、照準用レーザ光として光軸O´方向に治療用レーザ光と同一の波長、即ち同色を有する緑色レーザ光を発振する。この2つのレーザ発振器11、12にはそれぞれ図示しないスイッチが接続されており、このスイッチを操作することで独立にレーザ光発振のオン/オフを切り替えることができる。ここで使用されるレーザ発振器は、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザ等、あらゆる種類のレーザの中からその必要に応じて適宜選択することができる。また、双方が同一の種類のレーザである必要はなく、同一の波長を有する緑色レーザ光を発振することが可能でありさえすればよい。なお、「同一の波長」とは、あくまでも治療用レーザ光の波長が主で、これに従って照準用レーザ光の波長が定められることを意味するものとし、照準用レーザの波長に基づいて治療用レーザ光の波長が決定されることを意味するものではない。
【0018】
偏光ビームスプリッタ13は、複屈折性結晶を利用した光学素子であって、入射された光束を互いに直交する振動方向を持つ2方向への光束に分離する作用を備えており、治療用レーザ光と照準用レーザ光とを偏光カップリングにより合成するための合成手段として用いられる。この偏光ビームスプリッタ13を使用することによって、合成手段を経由する際に生じるレーザ光の光量のロスを小さくすることができる。特に、偏光ビームスプリッタ13により反射されるレーザ光だけでなく、これを透過する側のレーザ光の光量ロスを効果的に減少させることが可能となる。
【0019】
ところで、同波長の2つのレーザ光を合成するための合成手段として光量分割のハーフミラーを用いることも考えられるが、ハーフミラーでは治療用レーザ光の光量ロスが大きくなってしまうので、本実施の形態の眼科用光凝固装置1においては好適な代替手段とは言えない。
【0020】
光ファイバ14は、集光レンズ15によりその入射端14aに集光された治療用レーザ光および/または照準用レーザ光をレーザ照射光学系まで案内するためのものである。
【0021】
フォトダイオード16は、治療用レーザ光の偏光ビームスプリッタ13による反射光を受光するための受光手段である。フォトダイオード16により受光された治療用レーザ光の一部は、治療用レーザ発振器11が正規の出力を保持しているか否か判断するための出力監視用データとしてフィードバックされる。フォトダイオード17も同様に照準用レーザ発振器12の出力を監視するためにフィードバックされる。また、ガラス板18は、照準用レーザ発振器12から発振された照準用レーザ光の一部を分離してフォトダイオード17に入射させるために配置されている。
【0022】
レーザ照射光学系20は、被検眼Eの観察、撮影等を行うための図示しないスリットランプに組み込まれたレンズ群(各種レンズ21ないし26)からなり、光ファイバ14によって案内されてきた治療用レーザ光および/または照準用レーザ光を被検眼Eまで導くとともに眼底Ea上に照射しスポット像を形成するために用いられる光学系である。レンズ23および24は図1中に付された矢印の示す方向に移動可能とされ、治療用レーザ光および/または照準用レーザ光の眼底Ea上におけるスポット像のサイズを変更できるように構成されている。また、レンズ26は被検眼Eをこれに対向して配置させるための対物レンズであり、治療用レーザ光および/または照準用レーザ光を眼底Ea上に結像させスポット像を形成する。また、スリットランプには、通常のように、スリットランプの微小なアライメントや被検眼Eの観察領域を移動するための操作を行うコントロールレバーが設けられている。
【0023】
コンタクトレンズCは、眼底Eaを観察するために用いられ、治療用レーザ光および照準用レーザ光は、このコンタクトレンズCを介して照射される。
【0024】
治療用レーザ発振器11および照準用レーザ発振器12は、治療用レーザ光および照準用レーザ光を互いに直交する方向から偏光ビームスプリッタ13に入射するように配置されている。図1において偏光ビームスプリッタ13が時計板の中心に位置すると仮定するならば、治療用レーザ発振器11は9時の方向に、照準用レーザ発振装置12は6時の方向に配置されている。また、治療用レーザ光の入射光と偏光ビームスプリッタ13の表面反射による反射光とは半時計回りに90度だけその方向を変化させる(上記時計板による例においては12時の方向)。
【0025】
また、照準用レーザ発振器12から光軸O´方向に発振された照準用レーザは、偏光ビームスプリッタ13によって時計回りに90度だけ進行方向を変えて治療用レーザ光の透過光と同様に光軸Oに沿って進行する。即ち、治療用レーザ光と照準用レーザ光とは、偏光ビームスプリッタ13により偏光カップリングされる。したがって、治療用レーザ光のスポット像と照準用レーザ光のスポット像とは、眼底Ea上での結像位置が一致するようにアライメントされている。
【0026】
(眼科用光凝固装置の作用)
以下、上記のような構成を具備する本発明の第1の実施形態の眼科用光凝固装置1が奏する作用について説明する。
【0027】
眼科用光凝固装置1による処置を行う際には、まず前述したスリットランプの対物レンズ26に被検眼Eを臨ませる。術者は、スリットランプにより被検眼Eの眼底Eaの状態を観察しながら疾患部位を特定する。
【0028】
次に、特定された疾患部位に治療用レーザ光で光凝固を施すためにこの疾患部位に照準を定める。術者は図示しないスイッチをオンして照準用レーザ発振器12から照準用レーザ光を発振させる。発振された照準用レーザ光は、光軸O´に沿ってガラス板18を透過したのち偏光ビームスプリッタ13により反射されて進行方向を光軸O方向に変更する。照準用レーザ光は集光レンズ15によって集光されてオプティカルファイバ14の入射端14aに入射する。光ファイバ14によりスリットランプに導かれた照準用レーザ光は、レーザ照射光学系20によって被検眼Eの眼底Ea上にスポット像を形成する。
【0029】
術者は、スリットランプのコントロールレバーを操作して、特定された疾患部位に照準用レーザ光のスポット像を重ね合わせ、治療用レーザ光を照射するための照準を定める。
【0030】
このとき、照準用レーザ光は緑色レーザ光であるので、バックグラウンド上、即ち赤色を有する眼底Ea上におけるスポット像の視認性は良好であり、術者は容易に疾患部位に照準を定めることができる。よって、迅速かつ的確な照準合わせが可能となるため、処置時間の短縮および治療ミスの減少が期待されるとともに、処置を受ける者の身体的負担や術者にかかる精神的負担が軽減されることとなる。
【0031】
疾患部位の照準合わせが終了したら治療用レーザ発振器11をオンして治療用レーザ光を発振させる。発振された治療用レーザ光は、光軸Oに沿って偏光ビームスプリッタ13に入射され、これを透過したのち集光レンズ15により光ファイバ14の入射端14aに集光される。光ファイバ14を通過してレーザ照射光学系20に到達した治療用レーザ光は、照準用レーザ光と同様に、被検眼Eの眼底Ea上に結像されスポット像を形成する。これにより光凝固による治療が行われる。
【0032】
上述したように、治療用レーザ光と照準用レーザ光とはともに偏光ビームスプリッタ13により光軸Oに沿って同一の光路を進行するように構成されているので、照準合わせがなされた疾患部位に的確に光凝固を施すことができる。
【0033】
ところで、レーザ光の偏光軸の単一性を考慮して、治療用レーザ光の偏光軸と偏光ビームスプリッタ13の透過軸とが平行になるように偏光ビームスプリッタ13を配置することによって、治療用レーザ光の大部分は偏光ビームスプリッタ13を透過してそのまま光軸Oに沿って進む。また、治療用レーザ光の偏光軸と偏光ビームスプリッタ13の透過軸とが配置の制約上平行にできない場合でも、1/2波長板で偏光軸を回転することによって平行にできる。その際、治療用レーザ光の光量の1〜2%が偏光ビームスプリッタ13により反射されてフォトダイオード16へと入射する。発振された治療用レーザ光の1〜2%という光量は、フォトダイオード16による検出には十分なものであるとともに、治療用レーザ光の光量のロスという観点においては、従来のダイクロイックミラーによる7%程度という数値と比較して格段に向上したものとなっている。
【0034】
治療における必要性等の理由により治療用レーザ光の出力を更に大きくしたい場合には、以下のような方法を採用することもできる。上述したように、照準用レーザ光は、治療用レーザ光と同一の波長を有するものであるとともに共通の光軸Oに沿って進行するのである。したがって、照準用レーザ光を治療用レーザ光の補助光として使用することによって、治療用レーザ光の出力の不足分を埋め合わせることができる。これは、例えば、治療用レーザ光の眼底Ea上でのスポット像のサイズを大きく設定して広い範囲に亘る疾患部位を一度に光凝固するケースに適用できる。
【0035】
本実施の形態では、偏光ビームスプリッタ13からなる合成手段は、照準用レーザ光の進行方向を変更して治療用レーザ光の進行方向に一致させる構成となっているが、治療用レーザ発振器11と照準用レーザ発振器12の配置を逆にして、治療用レーザ光の進行方向を変更して照準用レーザ光の進行方向に一致させるような構成としてもよい。さらに言えば、偏光ビームスプリッタ13によれば透過および反射によるレーザ光の光量ロスが微小となるので、両レーザ光が偏光ビームスプリッタ13により偏光カップリングされるように構成されていれば十分である。よって、治療用レーザ発振器11および照準用レーザ発振器12の配置に関する制約は解消されるので、装置設計上の自由度が広がり、装置の更なる小型化等を図ることが可能となる。
【0036】
(第2の実施の形態)
図1には本発明に係る第2の実施形態の眼科用光凝固装置30の光学的構成の概略が示されている。眼科用光凝固装置30は、複数色のレーザ光を用いて光凝固による治療を行うための装置であって、治療用レーザ発振器31および33、照準用レーザ発振器32および34、偏光ビームスプリッタ35および36、ダイクロイックミラー37、光ファイバ38、集光レンズ39を含んで構成されている。第1の実施の形態の眼科用光凝固装置1と同様にフォトダイオードを設けて出力制御のためのフィードバックを行うことも可能である。なお、光ファイバ38に入射したレーザ光はスリットランプに案内されて被検眼に照射される構成となっているが、眼科用光凝固装置1のケースと同様であるため詳細は同ケースの説明に譲ることとする。
【0037】
治療用レーザ発振器31および33はそれぞれ異なる色の治療用レーザ光を発振する。治療用レーザ発振器31は緑色の第1の治療用レーザ光を発振し、治療用レーザ発振器33は黄色の第2の治療用レーザ光を発振する。術者は、図示しない被検眼の眼底上の疾患部位の状態等に基づいてどちらの色のレーザ光を使用するか選択を行う。
【0038】
照準用レーザ発振器32は第1の治療用レーザ光と同じ波長を有する緑色の第1の照準用レーザ光を発振し、照準用レーザ発振器34は第2の治療用レーザ光と同じ波長を有する黄色の第2の照準用レーザ光を発振する。つまり、治療用レーザ光の照準合わせは、これと同じ色の照準用レーザ光によって行われるように構成されている。
【0039】
このような構成とすることで、術者は、どちらの色の治療用レーザ光によって光凝固を行うか照準合わせの段階で明確に認識できるため、治療用レーザ光に切り替えて照射する際の選択ミスを効果的に回避することが可能となる。
【0040】
また、各レーザ発振器のオン/オフを制御することで、照準合わせを行った照準用レーザ光に対応する色の治療用レーザ光しかその照準用レーザ光に引き続いて発振できないような構成としてもよい。
【0041】
なお、使用されるレーザ光の色は、緑と黄に限定されることはなく、治療に必要な各種の色のレーザ光を適宜選択することができることは言うまでもない。また、使用されるレーザ光の色の種類は2色には限られず3色以上としてもよい。また、複数色のレーザ光を発振することが可能な治療用レーザ発振器を設けた場合においても、治療用レーザ光と同じ色の照準用レーザ光を照射可能な照準用レーザ発振器が具備されていればよい。
【0042】
上記第1の実施形態の眼科用光凝固装置1および第2の実施形態の眼科用光凝固装置30を通じて、治療用レーザ光と照準用レーザ光とは同一の波長を有するものとされているが、眼底上に投影された際にほぼ同色であると術者が認識する程度の波長の差異があってもよい。例えば、人間の眼の色相認識能力を考慮すると、個人差はあるが30nm程度以内の差異であれば同系色として認識される。
【0043】
なお、第2の実施形態に示したケースにおいては、対応する治療用レーザ光および照準用レーザ光の波長がより近い方が好ましいと言える。具体的には、治療用レーザ光の色と照準用レーザ光の色とをより近づけることによって、別の色のレーザ光との誤認を生じる可能性が小さくなるからである。特に、使用されるレーザ光の色の種類が多い場合にはこれが言える。また、眼科用光凝固装置30の場合でも、例えば、第1の照準用レーザ光が黄色寄りの緑色で、第2の照準用レーザ光が緑色寄りの黄色であったとすれば誤認が生じやすいが、それぞれの照準用レーザ光が治療用レーザ光と同じか若しくは同系色と認識される程度に近い波長を有するものであればこのような誤認は生じ難くなる。
【0044】
結局、第2の実施形態にその一例として説明されたような眼科用光凝固装置は、複数の色の治療用レーザ光を発振する一つ若しくは複数の治療用レーザ発振器と、治療用レーザ光の照準合わせを行うための照準用レーザ光を発振する一つ若しくは複数の照準用レーザ発振器とを有し、照準用レーザ発振器は、治療用レーザ発振器が発振する治療用レーザ光が有する上記複数の色に含まれる各色と同系色の照準用レーザ光を発振することが可能であることを特徴とするものと言える。
【0045】
以上詳述された構成を有する眼科用光凝固装置は、本発明の実施の形態としての一例に過ぎない。したがって、これを以って本発明の主旨を狭く解釈することはできないものであって、あくまでも特許請求の範囲の記載により本発明の主旨は判断されるべきである。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、照準用レーザ光の色を治療用レーザ光の色と同系色としたので、照準用レーザ光の被検眼の眼底上におけるスポット像の視認性が向上し、疾患部位への照準合わせを容易に行うことが可能となるので、治療を行う術者にとって好適な眼科用光凝固装置を提供することができる。
【0047】
また、照準合わせを行う時間の短縮、延いては処置時間の短縮が可能となり、治療を受ける者にかかる負担が軽減する。
【0048】
また、本発明によれば、レーザ光が合成手段を経由(特に透過)する際の光量ロスが小さくなるため、眼科用光凝固装置を設計する際の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の眼科用光凝固装置の光学的構成の概略を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の眼科用光凝固装置の光学的構成の概略を示す図である。
【図3】従来の眼科用光凝固装置の光学的構成の概略を示す図である。
【符号の説明】
1、30 眼科用光凝固装置
11、31、33 治療用レーザ発振器
12、32、34 照準用レーザ発振器
13、35、36 偏光ビームスプリッタ

Claims (3)

  1. 被検眼の疾患部位に光凝固による治療を施すための治療用レーザ光を発振する治療用レーザ発振手段と、前記治療用レーザ光が照射されるべき前記被検眼の前記疾患部位に照準を合わせるための照準用レーザ光を発振する照準用レーザ発振手段と、前記治療用レーザ光の光路と前記照準用レーザ光の光路とを偏光カップリングにより合成させるための合成手段と、を有し、
    前記治療用レーザ発振手段と前記照準用レーザ発振手段とは、同系色のレーザ光を発振することを特徴とする眼科用光凝固装置。
  2. 前記治療用レーザ発振手段により発振される前記治療用レーザ光の波長と、前記照準用レーザ発振手段により発振される前記照準用レーザ光の波長とは、30nm以内の差異であることを特徴とする請求項1記載の眼科用光凝固装置。
  3. 前記治療用レーザ発振手段が所望の出力を発振しているか否かを監視するために前記治療用レーザ光の一部を受光する受光手段をさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の眼科用光凝固装置。
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