JP2004104935A - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】各相コイルの電流位相がロータ位置に同期している場合は、ロータ位置によって変化する巻線インダクタンスと電流位相とが同期しているため、各相の電流振幅値は同じである。しかし、脱調してロータが停止した状態では、巻線インダクタンスと電流位相とが同期していないため、各相コイルの電流振幅値が異なってくる。そこで、少なくとも2つの相間で互いの電流振幅値を比較し、両者の差(絶対値)が所定値以上であれば脱調(ロータが停止状態)と判定することができる。この方法によれば、脱調判定に複雑な計算負荷を必要とすることなく、簡単な判定ロジックによって脱調判定を行うことができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、位置センサを用いることなく同期モータを制御するモータ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ロータの電気角位置を位置センサで検出することなく駆動する方法、いわゆる位置センサレス駆動法が知られている。しかし、この位置センサレス駆動法では、駆動装置の不具合や負荷変動等によって同期モータが脱調し、所望のトルクを発生できなくなることがある。
これに対し、同期モータの脱調を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1には、モータ電流の周期とモータ電圧の周期との比較により脱調を判定する方法、及び励磁電流成分が所定値を超えた場合に脱調と判定する方法が記載されている。
また、特許文献2には、モータで消費される電力とモータ出力とを比較して脱調を判定する方法が記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開2001−25282公報
【特許文献2】
特開2001−197769 公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献1に記載された方法では、電流周期の計算や励磁電流成分を求めるdq座標変換の計算が必要であり、また、特許文献2に記載された方法では、モータで消費される電力やモータ出力を電流と電圧の掛け算によって求めなければならず、両者とも複雑な計算を要するという問題があった。
また、両文献とも同期モータの脱調を判定するだけであり、脱調から再び同期運転させる方法については明記されていない。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、同期モータが脱調した時に計算負荷をかけることなく脱調を検出できること、更に脱調から再び同期運転へ復帰させることのできるモータ制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、複数相のコイルを有するステータと突極性を有するロータとを備えた同期モータを制御する制御装置であって、
複数相のうち少なくとも2つの相のコイル電流を検出する電流検出手段と、検出された電流値より少なくとも2つの相の電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段と、少なくとも2つの相間で電流振幅値の差が所定値以上の場合に脱調と判定する脱調判定手段とを有している。
【0007】
各コイルの電流位相がロータ位置に同期している場合は、ロータ位置によって変化するインダクタンスと電流とが同期しているため、各相の電流振幅値は同じである。
しかし、脱調してロータが停止した状態では、インダクタンスと電流とが同期していないため、各相の電流振幅値が異なってくる。そこで、少なくとも2つの相間で互いの電流振幅値を比較し、両者の差が所定値以上であれば脱調(ロータが停止状態)と判定することができる。
【0008】
(請求項2の発明)
本発明は、複数相のコイルを有するステータと突極性を有するロータとを備えた同期モータを制御する制御装置であって、
複数相のうち少なくとも1つの相(特定相)のコイル電流を検出する電流検出手段と、検出された電流値より特定相の電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段と、この電流振幅値算出手段にて算出された少なくとも2つの電流振幅値の差が所定値以上の場合に脱調と判定する脱調判定手段とを有している。
【0009】
各コイルの電流がロータ位置に同期している場合は、ロータ位置によって変化するインダクタンスと電流とが同期しているため、時系列で特定相の電流振幅値を比較すると同じである。
しかし、電流に対しロータが非同期で回転している状態では、時系列で特定相の電流振幅値を比較すると、その値が異なっている。そこで、少なくとも2つの電流振幅値の差が所定値以上であれば脱調(ロータが非同期で回転している状態)と判定することができる。
【0010】
(請求項3の発明)
請求項1または2に記載したモータ制御装置において、
電流振幅値算出手段は、コイル電流を所定周期でサンプリングし、そのサンプリングした電流値の極性が2回以上連続して同一極性となる期間、またはサンプリングした電流値の極性が反転してから再度反転するまでの期間にサンプリングした電流値を積算して電流振幅値を算出することを特徴とする。
この構成では、サンプリングした電流値を積分することにより、コイルに電流ノイズが混入した場合に、その影響を減らすことができるので、精度良く電流振幅値を算出できる。
【0011】
(請求項4の発明)
請求項1または2に記載したモータ制御装置において、
ロータの回転速度を推定するロータ速度推定手段と、
同期モータを駆動するインバータ回路の出力周波数をロータの推定速度から決まる周波数以下に設定して同期運転に復帰させる同期運転復帰手段とを有することを特徴とする。
これにより、脱調した後、速やかに同期運転に復帰させることができる。
【0012】
(請求項5の発明)
請求項1または2に記載した脱調判定手段にて脱調と判定された後、請求項4に記載した同期運転復帰手段により同期運転に復帰させることを特徴とする。
これにより、外乱トルクなどの要因で脱調した場合でも、自動的に同期運転に復帰させることが可能である。
【0013】
(請求項6の発明)
請求項1または2に記載した脱調判定手段にて脱調と判定された後、同期モータを駆動するインバータ回路の出力周波数を所定割合で低下させ、脱調判定手段にて脱調判定が回避された時点でインバータ回路の出力周波数を維持させて同期運転に復帰させることを特徴とする。
これにより、外乱トルクなどの要因で脱調した場合でも、自動的に同期運転に復帰させることが可能である。
また、同期運転に復帰させるためにロータの回転速度を推定する必要がないので、制御装置の計算負荷を軽減できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図2はモータ制御装置の基本的な構成を示すブロック図である。
本実施形態のモータ制御装置1は、図2に示す様に、三相(U相、V相、W相)のコイルU、V、Wを有するステータ(図示しない)と突極性を有するロータ(図示しない)とで構成される同期モータ2を制御するもので、以下に説明する各実施例に共通する基本的な構成として、複数のスイッチング素子から成るインバータ回路3と、交流電圧を直流に変換してインバータ回路3に印加するための整流回路4と、インバータ回路3の各スイッチング素子をON/OFF制御する制御部5等を有している。
【0015】
(第1実施例)
本実施例のモータ制御装置1は、上記の基本構成に加えて、同期モータ2の脱調(ロータの停止状態)を検出する脱調検出手段6を有している。
この脱調検出手段6は、図1に示す様に、電流センサ7で検出された各相のコイル電流(相電流)を取り込んでA/D変換する電流検出手段8と、検出された電流値より各相の電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段9と、各相間で電流振幅値の差(絶対値)を算出する電流振幅値差算出手段10と、算出された各相間の電流振幅値の差(絶対値)を所定値Aと比較する比較器11と、この比較器11の結果に基づいて脱調判定を行う脱調判定手段12とを有している。
【0016】
同期モータ2の脱調は、以下の論理に基づいて検出することが可能である。
各相コイルU、V、Wの電流位相がロータ位置に同期している場合は、ロータ位置によって変化する巻線インダクタンスと電流位相とが同期しているため、図3(a)に示す様に、各相の電流振幅値は同じである。
しかし、脱調してロータが停止した状態では、巻線インダクタンスと電流位相とが同期していないため、図3(b)に示す様に、各相コイルU、V、Wの電流振幅値が異なってくる。そこで、少なくとも2つの相間で互いの電流振幅値を比較し、両者の差(絶対値)が所定値以上であれば脱調(ロータが停止状態)と判定することができる。
【0017】
次に、実際の脱調検出方法について図4に示す脱調判定サブルーチンに基づいて説明する。なお、本処理は、同期モータ2をセンサレス駆動する通常の同期運転サブルーチンに対し所定時間毎に割り込み実行される。
Step101 …各相(U相、V相、W相)の電流振幅値Iu 、Iv 、Iw をメモリから読み出し、各相間で電流振幅値の差を求めた後、その差の絶対値を所定値Aと比較する(式▲1▼)。
|Iu −Iv |>A、|Iv −Iw |>A、|Iw −Iu |>A …▲1▼
この式▲1▼が成立する場合(判定結果:YES )は、Step102 へ進み、式▲1▼が成立しない場合(判定結果:NO)は、Step103 へ進む。
Step102 …脱調判定のフラグをONにして、本処理を終了する。
Step103 …脱調判定のフラグをOFF にして、本処理を終了する。
【0018】
以上の様に、第1実施例では、各相間の電流振幅値の差(絶対値)を所定値Aと比較し、差の方が所定値Aより大きい時に脱調(ロータの停止状態)と判定することができる。この方法によれば、脱調判定に複雑な計算負荷を必要とすることなく、簡単な判定ロジックによって脱調判定を行うことができる。
なお、第1実施例では、三相間でそれぞれ電流振幅値の差を所定値Aと比較して脱調判定を行っているが、少なくとも二相間での電流振幅値の差を所定値Aと比較するだけでも脱調判定を行うことができる。
【0019】
(第2実施例)
本実施例のモータ制御装置1は、上記の基本構成に加えて、同期モータ2の脱調(特にロータが非同期で回転している状態)を検出する脱調検出手段6を有している。
この脱調検出手段6は、図5に示す様に、電流センサ7で検出された少なくとも1つの相(特定相)のコイル電流を取り込んでA/D変換する電流検出手段8と、検出された電流値より特定相の電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段9と、算出された電流振幅値を記憶するメモリMと、このメモリMに記憶された少なくとも2つの電流振幅値の差(絶対値)を算出する電流振幅値差算出手段10と、算出された2つの電流振幅値の差(絶対値)を所定値Bと比較する比較器11と、この比較器11の結果に基づいて脱調判定を行う脱調判定手段12とを有している。
【0020】
同期モータ2の脱調は、以下の論理に基づいて検出することが可能である。
各相コイルU、V、Wの電流位相がロータ位置に同期している場合は、ロータ位置によって変化する巻線インダクタンスと電流位相とが同期しているため、図6(a)に示す様に、時系列で特定相の電流振幅値を比較すると同じである。
しかし、電流位相に対しロータが非同期で回転している状態では、時系列で特定相の電流振幅値を比較すると、図6(b)に示す様に、その値が異なっている。そこで、少なくとも2つの電流振幅値を比較して、その差(絶対値)が所定値以上であれば脱調(ロータが非同期で回転している状態)と判定することができる。
【0021】
次に、実際の脱調検出方法について図7に示す脱調判定サブルーチンに基づいて説明する。なお、本処理は、同期モータ2をセンサレス駆動する通常の同期運転サブルーチン中において所定時間毎に割り込み実行される。
Step201 …特定相(例えばU相)の最新の電流振幅値を少なくとも2つ(2つ以上であれば良い)Iu0、Iu1をメモリMから読み出し、その差の絶対値を所定値Bと比較する(式▲2▼)。
|Iu0−Iu1|>B ………………………………………………………▲2▼
この式▲2▼が成立する場合(判定結果:YES )は、Step202 へ進み、式▲2▼が成立しない場合(判定結果:NO)は、Step203 へ進む。
Step202 …脱調判定のフラグをONにして、本処理を終了する。
Step203 …脱調判定のフラグをOFF にして、本処理を終了する。
【0022】
以上の様に、第2実施例では、特定相の少なくとも2つの電流振幅値の差(絶対値)を所定値Bと比較し、差の方が所定値Bより大きい時に脱調(ロータが非同期で回転している状態)と判定することができる。この方法によれば、脱調判定に複雑な計算負荷を必要とすることなく、簡単な判定ロジックによって脱調判定を行うことができる。
なお、第2実施例では、三相のうち何れか1つの相(特定相)について電流振幅値の差(絶対値)を所定値Bと比較して脱調判定を行っているが、2つ以上の相(三相全部でも良い)でそれぞれ同様の脱調判定を行っても良い。
【0023】
(第3実施例)
本実施例では、第1及び2実施例に記載した電流振幅値算出手段9の一例を説明する。
この電流振幅値算出手段9は、何れか1つの相のコイル電流を所定周期でサンプリングし、そのサンプリングした電流値の極性が2回以上連続して同一極性となる期間、またはサンプリングした電流値の極性が反転してから再度反転するまでの期間、サンプリングした電流値を積算して電流振幅値を算出する。
【0024】
次に、電流振幅値の算出方法を図8に示す電流振幅値算出サブルーチンに基づいて説明する。
Step301 …メモリSをクリアする(S←0)。
Step302 …電流振幅値を保存するためのメモリをシフトする(I1 ←I0 )。
Step303 …電流検出手段8(A/D変換器)により所定周期で電流値をサンプリングし、メモリI0 に保存する。
Step304 …サンプリングした電流値の極性を比較する。極性が同じであれば(判定結果:YES )Step305 へ進み、極性が異なる時(判定結果:NO)はStep306 へ進む。
Step305 …メモリI0 に保存された電流値(絶対値)をメモリSに積算した後、Step302 へ戻る。
Step306 …メモリSに積算された値を電流振幅値とする。
【0025】
この方法によれば、図9に示す様に、所定周期でサンプリングした電流値の極性が同じであれば(t1 〜t2 の区間、t2 〜t3 の区間)、サンプリングした電流値(絶対値)をメモリSに加算していき、サンプリングした電流値の極性が替わるタイミング(t2 、t3 )で、それまでメモリSに累積された電流値(絶対値)の合計を電流振幅値として使用するので、コイルU、V、Wに電流ノイズが混入した場合に、その影響を減らすことができ、精度良く電流振幅値を算出できる。
【0026】
(第4実施例)
本実施例は、脱調した同期モータ2を同期運転に復帰させる同期運転復帰手段(図示しない)について説明する。
この同期運転復帰手段は、脱調状態にあるロータの回転速度(ロータ速度)を推定した後、インバータ回路3の出力周波数をロータの推定速度から決まる周波数以下に設定して同期運転に復帰させるものである。
【0027】
次に、同期運転に復帰させるための処理手順を図10に示す同期運転復帰サブルーチンに基づいて説明する。
Step401 …ロータ速度推定サブルーチン(後述する)を実行してロータ速度を推定する。
Step402 …推定したロータ速度より低い回転速度(ロータの推定速度−所定量a)からインバータ回路3の出力周波数を決定する。
【0028】
Step403 …インバータ回路3の印加電圧位相を所定値に設定する。ここでは、ロータ速度を推定する際に算出される電流振幅値の変化よりロータの回転位置(ロータ位置)を推定し、そのロータ位置から印加電圧位相を決定する。
本実施例によれば、同期モータ2が脱調しても同期運転に復帰させることができ、且つ同期運転に復帰させる時に、ロータ位相とインバータ回路3の印加電圧位相とを合わせることができるので、所望の回転トルクを維持できる。
【0029】
ここで、ロータ速度の推定方法について説明する。
ロータ速度は、以下の論理に基づいて推定することが可能である。
各相の巻線インダクタンスは、ロータ位置に同期している。ここで、図11に示す様に、特定相のコイルに対し、巻線インダクタンスの周期より高い所定周波数の電圧(b)を印加すると、特定相のコイルに流れる電流値(c)が巻線インダクタンスの変化(a)に影響を受けるため、電流値の包絡線である電流振幅値は、ロータ位置に同期した波形(d)となる。従って、電流振幅値の変化周期からロータ速度を推定することが可能である。
【0030】
次に、ロータ速度の推定方法を図12に示すロータ速度推定サブルーチンに基づいて説明する。
Step501 …特定相のコイルに印加する指令電圧の周波数を変更する。
Step502 …指令電圧の周波数を変更してから経過した時間tを判定する(このStep502 を実施する理由については後述する)。この判定結果がYES (t>t1 )の時はStep503 へ進み、判定結果がNO(t≦t1 )の時は再びStep502 を実行する。
Step503 …第3実施例に記載した電流振幅値算出サブルーチンを実行し、算出された電流振幅値をメモリに格納する。
【0031】
Step504 …メモリに格納された電流振幅値がn個(n≧3)になったか否かを判定する。この判定結果がYES (メモリに格納された電流振幅値=n個)の時はStep505 へ進み、判定結果がNOの時はStep503 へ戻る。
Step505 …特定相の電流振幅値の変化周期を求め、その変化周期からロータ速度を推定する。なお、図11(d)では、n=40個の電流振幅値を使い、電流振幅値が最大になる時間t1 及びt2 を計測して周期を求めている。
【0032】
次に、Step502 の処理について説明する。
ロータ速度を推定する際に、少なくとも1つの相(特定相)のコイルに所定周波数の電圧を印加して、その特定相のコイルに流れる電流を検出しているが、図13に示す様に、電圧を印加した直後は、電流が安定していないため、その間(電流が安定しない間)に算出される電流振幅値を使用して変化周期を求めても、正確なロータ速度を算出できない。
そこで、電流が安定しない間は、電流振幅値を変化周期の算出に使用しない。即ち、電流が安定してから(特定相のコイルに所定周波数の電圧を印加した後、所定期間t1 経過してから)、電流振幅値の変化周期を算出してロータ速度を推定することにより、精度良くロータ速度を求めることができる。
【0033】
(第5実施例)
本実施例では、第1実施例または第2実施例に記載した脱調判定手段12により脱調と判定された場合に、第4実施例に記載した同期運転復帰手段にて同期運転に復帰させる方法を示す。
具体的な手順を図14に示す同期運転復帰サブルーチンに基づいて説明する。
Step601 …同期モータ2をセンサレス駆動するための同期運転サブルーチンを実行する。
【0034】
Step602 …第1実施例に記載した脱調判定サブルーチン(図4参照)を実行する。
Step603 …脱調判定の結果、脱調判定フラグがONになっているか否かを判定する。判定結果がYES (脱調判定フラグ:ON)の時はStep604 へ進み、判定結果がNO(脱調判定フラグ:OFF )の時はStep601 へ戻る。
Step604 …第4実施例に記載した同期運転復帰サブルーチン(図10参照)を実行する。
【0035】
なお、Step602 の処理は、図15に示す様に、第2実施例に記載した脱調判定サブルーチン(図7参照)を実行しても良い。
あるいは、図16に示す様に、第1実施例に記載した脱調判定サブルーチン(Step602A)に続いて第2実施例に記載した脱調判定サブルーチン(Step602B)を実行しても良い。
本実施例によれば、外乱トルクなどの要因で同期モータ2が脱調した場合でも、自動的に同期運転に復帰させることができる。
【0036】
(第6実施例)
本実施例では、第1実施例または第2実施例に記載した脱調判定手段12により脱調と判定された場合に、インバータ回路3の出力周波数を所定割合で低下させ、脱調判定手段12にて脱調判定が回避された時点(脱調と判定されなくなった時点)でインバータ回路3の出力周波数を維持させて同期運転に復帰させる方法を示す。
具体的な手順を図17に示す同期運転復帰サブルーチンに基づいて説明する。
【0037】
Step701 …同期モータ2をセンサレス駆動するための同期運転サブルーチンを実行する。
Step702 …第1実施例に記載した脱調判定サブルーチン(図4参照)を実行する。
Step703 …脱調判定の結果、脱調判定フラグがONになっているか否かを判定する。判定結果がYES (脱調判定フラグ:ON)の時はStep704 へ進み、判定結果がNO(脱調判定フラグ:OFF )の時はStep701 へ戻る。
Step704 …インバータ回路3の出力周波数を所定値b引いた値とする。
以後、脱調判定フラグがOFF になるまでインバータ回路3の出力周波数を下げる。
【0038】
なお、Step702 の処理は、第5実施例の場合と同様に、第2実施例に記載した脱調判定サブルーチン(図7参照)を実行しても良い。あるいは、第1実施例に記載した脱調判定サブルーチンに続いて第2実施例に記載した脱調判定サブルーチンを実行しても良い。
本実施例によれば、外乱トルクなどの要因で脱調した場合でも、自動的に同期運転に復帰させることが可能である。
また、同期運転に復帰させるためにロータ速度を推定する必要がないので、モータ制御装置1の計算負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脱調検出手段の構成を示すブロック図である(第1実施例)。
【図2】モータ制御装置の基本構成を示すブロック図である。
【図3】同期時(a)と停止時(b)とで各相の電流波形図と電流振幅値を示す図である(第1実施例)。
【図4】脱調判定サブルーチンである(第1実施例)。
【図5】脱調検出手段の構成を示すブロック図である(第2実施例)。
【図6】同期時(a)と脱調時(b)とで特定相の電流波形図と電流振幅値を示す図である(第2実施例)。
【図7】脱調判定サブルーチンである(第2実施例)。
【図8】電流振幅値算出サブルーチンである(第3実施例)。
【図9】電流振幅値の算出方法を示す説明図である(第3実施例)。
【図10】同期運転復帰サブルーチンである(第4実施例)。
【図11】特定相での巻線インダクタンス波形図(a)、電圧波形図(b)、電流波形図(c)、電流振幅値(d)の変化を示す図面である(第4実施例)。
【図12】ロータ速度推定サブルーチンである(第4実施例)。
【図13】印加電圧に対する電流値の変化を示す波形図である(第4実施例)。
【図14】脱調から同期運転に自動復帰させるサブルーチンである(第5実施例)。
【図15】脱調から同期運転に自動復帰させるサブルーチンである(第5実施例)。
【図16】脱調から同期運転に自動復帰させるサブルーチンである(第5実施例)。
【図17】脱調から同期運転に自動復帰させるサブルーチンである(第6実施例)。
【符号の説明】
1 モータ制御装置
2 同期モータ
3 インバータ回路
8 電流検出手段
9 電流振幅値算出手段
12 脱調判定手段
U、V、W コイル
Claims (6)
- 複数相のコイルを有するステータと突極性を有するロータとを備えた同期モータを制御するモータ制御装置であって、
前記複数相のうち少なくとも2つの相のコイル電流を検出する電流検出手段と、
検出された電流値より前記少なくとも2つの相の電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段と、
前記少なくとも2つの相間で電流振幅値の差が所定値以上の場合に脱調と判定する脱調判定手段とを有するモータ制御装置。 - 複数相のコイルを有するステータと突極性を有するロータとを備えた同期モータを制御するモータ制御装置であって、
前記複数相のうち少なくとも1つの相(特定相)のコイル電流を検出する電流検出手段と、
検出された電流値より前記特定相の電流振幅値を算出する電流振幅値算出手段と、
この電流振幅値算出手段にて算出された少なくとも2つの電流振幅値の差が所定値以上の場合に脱調と判定する脱調判定手段とを有するモータ制御装置。 - 請求項1または2に記載したモータ制御装置において、
前記電流振幅値算出手段は、前記コイル電流を所定周期でサンプリングし、そのサンプリングした電流値の極性が2回以上連続して同一極性となる期間、またはサンプリングした電流値の極性が反転してから再度反転するまでの期間にサンプリングした電流値を積算して電流振幅値を算出することを特徴とするモータ制御装置。 - 請求項1または2に記載したモータ制御装置において、
前記ロータの回転速度を推定するロータ速度推定手段と、
前記同期モータを駆動するインバータ回路の出力周波数を前記ロータの推定速度から決まる周波数以下に設定して同期運転に復帰させる同期運転復帰手段とを有することを特徴とするモータ制御装置。 - 請求項1または2に記載した脱調判定手段にて脱調と判定された後、請求項4に記載した同期運転復帰手段により同期運転に復帰させることを特徴とするモータ制御装置。
- 請求項1または2に記載した脱調判定手段にて脱調と判定された後、前記同期モータを駆動するインバータ回路の出力周波数を所定割合で低下させ、前記脱調判定手段にて脱調判定が回避された時点で前記インバータ回路の出力周波数を維持させて同期運転に復帰させることを特徴とするモータ制御装置。
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