JP7433113B2 - モータ制御装置、モータシステム及びモータ制御方法 - Google Patents

モータ制御装置、モータシステム及びモータ制御方法 Download PDF

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本開示は、モータ制御装置、モータシステム及びモータ制御方法に関する。
従来、定電流制御状態において同期電動機の各相のスイッチング素子のゲートを遮断した後に同期電動機の各相に流れる減衰中の電流を検出し、検出された減衰中の電流に基づいて、回転子の初期磁極位置を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2016-19454号公報
しかしながら、従来の技術は、同期電動機の各相に流れる電流を検出するタイプのため、いわゆる1シャント電流検出方式には適用できない。また、減衰中の電流のみに基づいて初期磁極位置を推定するため、その推定精度を確保することが難しいことがある。
本開示は、1シャント電流検出方式において、磁極位置の推定精度を確保可能なモータ制御装置、モータシステム及びモータ制御方法を提供する。
本開示の一実施の形態に係るモータ制御装置は、
全アームのうち通電パターン毎に異なる一部のアームをオンすることで、ロータが停止又は極低速の状態のモータを通電させるインバータと、
前記インバータの直流側に接続される電流検出器と、
前記状態での前記ロータの磁極位置である初期位置を推定する初期位置推定部と、を備え、
第1電流閾値よりも高い閾値を第2電流閾値とするとき、
前記初期位置推定部は、
前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第1電流閾値に到達するまでの第1時間を通電パターン毎に計測し、
前記第1時間が最長の通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第1方向を含む角度範囲を第1角度範囲とし、前記第1時間が最長の通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から負方向に90度ずらした第2方向を含む角度範囲、又は前記第1時間が二番目に長い通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第2方向を含む角度範囲を第2角度範囲とするとき、
前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第2電流閾値に到達するまでの第2時間を、前記第1角度範囲に含まれる第1中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第1通電パターンと前記第2角度範囲に含まれる第2中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第2通電パターンとで計測し、
前記第1角度範囲と前記第2角度範囲とのうち前記第2時間が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲を第3角度範囲とし、前記第3角度範囲の一方の端の角度方向を第1端方向とし、前記第3角度範囲の他方の端の角度方向を第2端方向とし、前記第1電流閾値よりも高い閾値を第3電流閾値とするとき、
前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第3電流閾値に到達するまでの第3時間を、前記第1端方向に電圧ベクトルが生じる第3通電パターンと前記第2端方向に電圧ベクトルが生じる第4通電パターンとで計測し、
前記第3角度範囲のうち前記第1端方向を含む角度範囲を第4角度範囲とし、前記第3角度範囲のうち前記第2端方向を含む角度範囲を第5角度範囲とするとき、
前記第4角度範囲と前記第5角度範囲とのうち、前記第3時間が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲に、前記初期位置があると推定する。
本開示によれば、1シャント電流検出方式において、磁極位置の推定精度を確保できる。
本開示の実施の形態1に係るモータシステムの構成例を示す図である。 電圧ベクトルの一例を示す図である。 2相通電パターンに対して印加される電圧の位相を示す表である。 3相通電パターンに対して印加される電圧の位相を示す表である。 通電パターン毎の電圧ベクトル方向のイメージ図である。 ステップ電圧印加時の電流応答特性の一例を示す図である。 初期位置推定部の構成及び動作の一例を示す図である。 磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。 磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。 突極性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。 突極性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。 本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する静止性重視方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。 本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する静止性重視方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。 本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する静止性重視方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。 本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。 本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。 本開示の実施の形態2に係るモータシステムの構成例を示す図である。 インダクティブ後のモータ始動方法を説明するためのベクトル図である。 始動時にγ軸電流を流してモータを始動させる方法(引き込み型始動方法)でモータの回転速度を上昇させる場合のタイミングチャートである。 始動時にモータを回転させ始める方法(初期回転型始動方法)でモータの回転速度を上昇させる場合のタイミングチャートである。 引き込み時の誘起電圧を利用してセンサレスベクトル制御に移行する方法(始動時センサレスベクトル制御型始動方法)でモータの回転速度を上昇させる場合のタイミングチャートである。 オープンループ制御がある場合(図20)のモータ始動時の実波形である。 オープンループ制御がない場合(図22)のモータ始動時の実波形である。
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態に係るモータ制御装置、モータシステム及びモータ制御方法について詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態1に係るモータシステム1-1の構成例を示す図である。図1に示されるモータシステム1-1は、モータ4の回転動作を制御する。モータシステム1-1が搭載される機器は、例えば、コピー機、パーソナルコンピュータ、冷蔵庫、ポンプ等であるが、当該機器は、これらに限られない。モータシステム1-1は、モータ4と、モータ制御装置100-1とを少なくとも備える。
モータ4は、複数のコイルを有する永久磁石同期モータである。モータ4は、例えば、U相コイルとV相コイルとW相コイルとを含む3相コイルを有する。モータ4の具体例として、3相のブラシレス直流モータなどが挙げられる。モータ4は、少なくとも一つの永久磁石が配置されるロータと、ステータとを有する。モータ4は、ロータの磁石の角度位置(磁極位置)を検出する位置センサを使用しないセンサレス型のモータである。モータ4は、例えば、送風用のファンを回すファンモータである。
モータ制御装置100-1は、3相ブリッジ接続された複数のスイッチング素子を3相のPWM信号を含む通電パターンに従いオンオフ(ON、OFF)制御することで、直流を3相交流に変換するインバータを介してモータを駆動する。モータ制御装置100-1は、インバータ23、電流検出部27、電流検出タイミング調整部34、駆動回路33、通電パターン生成部35、キャリア発生部37、及びクロック発生部36を備える。
インバータ23は、直流電源21から供給される直流を複数のスイッチング素子のスイッチングによって3相交流に変換し、3相交流の駆動電流をモータ4に流すことによって、モータ4のロータを回転させる回路である。インバータ23は、通電パターン生成部35によって生成される複数の通電パターン(より具体的には、通電パターン生成部35内のPWM信号生成部32によって生成される3相のPWM信号)に基づいて、モータ4を駆動する。PWMとは、Pulse Width Modulation(パルス幅変調)を意味する。
インバータ23は、3相ブリッジ接続された複数のアームUp,Vp,Wp,Un,Vn,Wnを有する。上アームUp,Vp,Wpは、それぞれ、直流電源21の正極側に正側母線22aを介して接続されるハイサイドスイッチング素子である。下アームUn,Vn,Wnは、それぞれ、直流電源21の負極側(具体的には、グランド側)に接続されるローサイドスイッチング素子である。複数のアームUp,Vp,Wp,Un,Vn,Wnは、それぞれ、上述の通電パターンに含まれるPWM信号に基づいて駆動回路33から供給される複数の駆動信号のうち、対応する駆動信号に従って、オン又はオフとなる。以下では、複数のアームUp,Vp,Wp,Un,Vn,Wnを、特に区別しない場合には、単にアームと称する場合がある。
U相上アームUpとU相下アームUnとの接続点は、モータ4のU相コイルの一端に接続される。V相上アームVpとV相下アームVnとの接続点は、モータ4のV相コイルの一端に接続される。W相上アームWpとW相下アームWnとの接続点は、モータ4のW相コイルの一端に接続される。U相コイルとV相コイルとW相コイルとのそれぞれの他端は、互いに接続されている。
アームの具体例として、Nチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などが挙げられる。しかしながら、アームは、これらに限られない。
電流検出器24は、インバータ23の直流側に接続され、インバータ23の直流側に流れる電流の電流値に対応する検出信号Sdを出力する。図1に示される電流検出器24は、負側母線22bに流れる電流の電流値に対応する検出信号Sdを発生させる。電流検出器24は、例えば、負側母線22bに配置される電流検出素子であり、より具体的には、負側母線22bに挿入されるシャント抵抗である。シャント抵抗等の電流検出素子は、自身に流れる電流の電流値に対応する電圧信号を検出信号Sdとして発生する。
電流検出部27は、通電パターン生成部35によって生成される複数の通電パターン(より具体的には、3相のPWM信号)に基づいて、検出信号Sdを取得することによって、モータ4に流れるU,V,W各相の相電流Iu,Iv,Iwを検出する。より詳細には、電流検出部27は、複数の通電パターン(より具体的には、3相のPWM信号)に同期する取得タイミングで検出信号Sdを取得することによって、モータ4に流れるU,V,W各相の相電流Iu,Iv,Iwを検出する。検出信号Sdの取得タイミングは、電流検出タイミング調整部34により設定される。
例えば、電流検出部27は、電流検出器24で発生するアナログ電圧の検出信号Sdを、電流検出タイミング調整部34により設定される取得タイミングでAD(Analog to Digital)変換器に取り込む。当該AD変換器は、電流検出部27に設けられている。そして、電流検出部27は、取り込んだアナログの検出信号Sdをデジタルの検出信号SdにAD変換し、AD変換後のデジタルの検出信号Sdをデジタル処理することによって、モータ4のU,V,W各相の相電流Iu,Iv,Iwを検出する。電流検出部27により検出された各相の相電流Iu,Iv,Iwの検出値は、通電パターン生成部35に供給される。
クロック発生部36は、内蔵する発振回路により所定周波数のクロックを生成し、生成したクロックをキャリア発生部37へ出力する回路である。なお、クロック発生部36は、例えば、モータ制御装置100-1の電源が投入されると同時に、動作を開始する。
キャリア発生部37は、クロック発生部36により生成されるクロックに基づいて、キャリアCを生成する。キャリアCは、レベルが周期的に増減する搬送波信号である。
通電パターン生成部35は、インバータ23を通電させるパターン(インバータ23の通電パターン)を生成する。インバータ23の通電パターンは、モータ4を通電させるパターン(モータ4の通電パターン)と言い換えてもよい。インバータ23の通電パターンには、インバータ23を通電させる3相のPWM信号が含まれる。通電パターン生成部35は、電流検出部27により検出されるモータ4の相電流Iu,Iv,Iwの検出値に基づいて、モータ4が回転するようにインバータ23を通電させる3相のPWM信号を生成するPWM信号生成部32を有する。
通電パターン生成部35は、インバータ23の通電パターンをベクトル制御により生成する場合、ベクトル制御部30を更に有する。なお、本実施の形態においてはベクトル制御によってインバータの通電パターンを生成しているが、これに限らず、vf制御等を用いて各相の相電圧を求めてもよい。
ベクトル制御部30は、外部からモータ4の回転速度指令ωrefが与えられると、モータ4の回転速度の測定値又は推定値と、回転速度指令ωrefとの差分に基づいて、トルク電流指令Iqrefと励磁電流指令Idrefを生成する。ベクトル制御部30は、モータ4のU,V,W各相の相電流Iu,Iv,Iwに基づいて、ロータ位置θを用いたベクトル制御演算により、トルク電流Iq及び励磁電流Idを算出する。ベクトル制御部30は、トルク電流指令Iqrefとトルク電流Iqとの差分に対して例えばPI制御演算を行い、電圧指令Vqを生成する。ベクトル制御部30は、励磁電流指令Idrefと励磁電流Idとの差分に対して例えばPI制御演算を行い、電圧指令Vdを生成する。ベクトル制御部30は、電圧指令Vq,Vdを上記のロータ位置θを用いてU,V,W各相の相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換する。ロータ位置θは、モータ4のロータの磁極位置を表す。
PWM信号生成部32は、ベクトル制御部30により生成される相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*を、キャリア発生部37により生成されるキャリアCのレベルと比較することによって、3相のPWM信号を含む通電パターンを生成する。PWM信号生成部32は、上アーム駆動用の3相のPWM信号を反転させた下アーム駆動用のPWM信号も生成し、必要に応じてデッドタイムを付加した後、生成したPWM信号を含む通電パターンを駆動回路33に出力する。
駆動回路33は、与えられたPWM信号を含む通電パターンに従い、インバータ23に含まれる6つのアームUp,Vp,Wp,Un,Vn,Wnをスイッチングさせる駆動信号を出力する。これにより、3相交流の駆動電流がモータ4に供給され、モータ4のロータが回転する。
電流検出タイミング調整部34は、キャリア発生部37から供給されるキャリアCと、PWM信号生成部32により生成されるPWM信号を含む通電パターンとに基づいて、電流検出部27がキャリアCの1周期内で3つ相の相電流のうちのいずれかの相の相電流を検出するための取得タイミングを決定する。
電流検出部27は、電流検出タイミング調整部34により決定される複数の取得タイミングで検出信号Sdを取得することによって、相電流Iu,Iv,Iwを検出する。電流検出部27は、一つの電流検出器24から複数の相電流を検出する方式(いわゆる、1シャント電流検出方式)で、相電流Iu,Iv,Iwを検出する。
ところで、センサレス型の永久磁石同期電動機が停止しているときにロータの磁極位置(初期位置)を推定する方法として、インダクティブセンシングと呼ばれる手法がある。インダクティブセンシングとは、永久磁石同期モータのロータ磁石の磁極位置をインダクタンスのロータ位置依存性を利用して検出する手法である。この位置検出手法は、モータの誘起電圧を使用しないため、モータのロータが停止又は極低速の状態でもロータ磁石の磁極位置を検出できる。ロータが極低速の状態とは、モータ制御装置が誘起電圧を検出できない程度にロータが低速で回転している状態をいう。本明細書では、説明の便宜上、"ロータが停止又は極低速の状態"を、単に、"ロータの停止状態"という。
本実施の形態1に係るモータ制御装置100-1は、インダクティブセンシングによって、モータのロータの停止状態での磁極位置である初期位置θsを推定する初期位置推定部38を備える。通電パターン生成部35は、初期位置推定部38により推定された初期位置θsを用いて、モータ4のロータを回転させるPWM信号を含む通電パターンを駆動回路33に出力する。ベクトル制御部30は、初期位置推定部38により推定された初期位置θsをロータ位置θの初期値として用いて、電圧指令Vδ,Vγを相電圧指令Vu*,Vv*,Vw*に変換する。なお、本開示において、初期位置θsは一例として30度の幅を持った値となる。このような場合、初期位置θsに基づき定めた所定の値を用いて、モータ4の制御が行われる。
インダクティブセンシングは、インダクタンスの違いを検出することによって磁極の初期位置を検出するが、インダクタンスそのものを直接求めて磁極位置情報を取り出す手法ではない。インダクティブセンシングは、停止中のモータをRL直列回路とみなし、モータに所望の位相に対しステップ形状の電圧を印加したときにモータに流れる電流の応答から磁極位置情報を取り出す手法である。
所望の位相に対し電圧を印加するとは、モータに印加する電圧をベクトルで考え、その方向を所望の位相に合わせることである。例えば3相インバータのW相上アームWpとU相下アームUnをオンすると、図2のような電圧ベクトルが印加される。すなわち、30度方向に電圧が印加されたことになる。この時に発生する電流ベクトル(W相コイルに流れる電流とU相コイルに流れる電流との合成電流のベクトル)及び磁束ベクトル(W相コイルで発生した磁束とU相コイルで発生した磁束との合成磁束のベクトル)も、電圧ベクトルとほぼ同じ位相に発生する。ただし、磁束ベクトルは、コイルの巻き方向によっては、180度逆方向の場合もある。
したがって、初期位置推定部38は、図3及び図4に示す12個の通電パターンp1~p12に従って各アームをオン又はオフにする駆動信号を駆動回路33に順番に出力させることによって、30度毎の12種類の位相に電圧を印加できる(図5参照)。図3は、2相通電パターンp1~p6に対して印加される電圧の位相を示す表である。図4は、3相通電パターンp7~p12に対して印加される電圧の位相を示す表である。図5は、通電パターン毎の電圧ベクトル方向のイメージ図である。
例えば図3において、初期位置推定部38は、通電パターンp2に従って、上アームWp及び下アームVnをオンし且つ残りの4つのアームをオフする駆動信号を駆動回路33に出力させると、U相コイルに対して90度の方向に電圧を印加できる(図5参照)。図3に示す他の2相通電パターンも同様に、各方向に電圧を印加できる。
例えば図4において、初期位置推定部38は、通電パターンp9に従って、上アームUp,Wp及び下アームVnをオンし且つ残りの3つのアームをオフする駆動信号を駆動回路33に出力させると、U相コイルに対して120度の方向に電圧を印加できる(図5参照)。図4に示す他の3相通電パターンも同様に、各方向に電圧を印加できる。
なお、マイコンの汎用ポートを使ってオン又はオフのみの出力の場合、通電パターンは上述の12種類であるが、マイコンのPWM機能を用いると、PWMタイマの分解能を許す限り、より細かい位相に電圧を印加できる。
次に、インダクティブセンシングにおいて、ステップ形状の電圧(ステップ電圧)を印加したときにモータに流れる電流の応答から磁極位置情報を取り出すことについて図6を参照して説明する。
図6は、ステップ電圧印加時の電流応答特性の一例を示す図である。RL直列回路の電流の過渡現象より、モータに流れる電流iは、印加された5Vのステップ電圧Eに対して、図6のように応答する。Rはコイルの抵抗値、Lはコイルのインダクタンスを表す。
この時の電流の立ち上がり時間は、コイルの抵抗値RとインダクタンスLに依存し、ロータ位置が変わると、ロータ位置に応じて異なる値となるインダクタンスLのみに応じて変化する。つまり、インダクタンスが大になるほど(磁気抵抗が小になるほど)、時定数L/Rは大になるので、電流iはゆっくり応答する。逆に、インダクタンスが小になるほど(磁気抵抗が大になるほど)、時定数L/Rは小になるので、電流iは素早く応答する。
以上のようなインダクタンスと電流応答の関係を利用して、初期位置推定部38は、磁極の初期位置を推定する。まず、初期位置推定部38は、所望の位相に対してステップ形状の電圧を印加してから、モータ4(電流検出器24)に流れる電流iが所定の電流値(電流閾値)に到達するまでの立ち上がり時間Trを計測する。そして、初期位置推定部38は、その立ち上がり時間Trの通電パターン毎の計測値の違いを少なくとも利用することで、ロータ位置に依存したインダクタンスの大小関係や分布を読み取り、磁極位置情報を取り出す。
なお、初期位置推定部38は、2相通電パターンで計測された立ち上がり時間Tr同士を比較し、3相通電パターンで計測された立ち上がり時間Tr同士を比較する。2相通電と3相通電との間では、時定数はほとんど変わらないものの、立ち上がってから収束する電流値は変わるため、立ち上がり時間Trを単純に比較できないからである。
上述のように、インダクティブセンシングは、所望の位相に対し電圧をステップ形状に印加した時の電流の応答(立ち上がり時間Tr)から磁極位置情報を取り出す。インダクティブセンシングには、複数のセンシング方式がある。その一例として、磁気飽和特性によるインダクタンスの変化から磁極位置情報を取り出す方式(ここでは、磁気飽和特性利用方式と称する)がある。また、他の一例として、磁石埋込型同期モータなどの突極性のあるモータにおけるインダクタンスのロータ位置依存性から磁極位置情報を取り出す方式(ここでは、突極性利用方式と称する)がある。
磁気飽和特性利用方式と突極性利用方式とでは、電流閾値の設定方法や取り出す情報が異なる。次に、電流閾値の設定方法や取り出す情報について、方式毎にその手順も含めて説明する。
図8は、磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。図9は、磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。磁気飽和特性利用方式では、6種類の2相通電パターン(図3参照)について順に電圧を印加していく。インバータ23の一部のアームをオンしてモータ4に電圧を印加すると、モータ4内の2相のコイルに電流が流れて、その合成磁束が発生する(図8参照)。図8には、通電パターンp2に従って、上アームWp及び下アームVnをオンし且つ残りの4つのアームをオフする場合に発生する合成磁束が例示されている。電流検出器24に流れる電流iが電流閾値Ith2に到達すると電圧の印加を停止し、電圧を印加してから電流iが電流閾値Ith1に到達するまでの立ち上がり時間Tr2を計測することを、6種類の通電パターンのそれぞれについて順に実施する(図9参照)。本方式は、モータの磁気飽和特性を利用することから、磁気飽和を起こすだけの電流をモータ4に流すため、電流閾値Ith2は、磁気飽和特性が顕在化する程度に大きく設定される。
初期位置推定部38は、6種類の通電パターンp1~p6のうち立ち上がり時間Tr2が最短の通電パターンを特定する。電流の応答が速い(つまり、立ち上がり時間Tr2が短い)ということは、磁気飽和特性の顕在化(インダクタンスLの低下)が起こっているとみなすことができる。一部の特定の通電パターンで立ち上がり時間Tr2が短縮(インダクタンスLが低下)している理由は、コイルにより発生した磁束の方向が、ロータの磁石により発生した磁束の方向と同じだからである。したがって、初期位置推定部38は、複数の通電パターンのうち立ち上がり時間Tr2の計測値が最短の通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向を中心とする角度範囲に、ロータの磁極位置が存在すると推定できる。ここで、通電パターンがn種類ある場合、n個の角度範囲候補があり、各々の角度範囲候補の中心角は、(360/n)度である。
図9に示す例では、90度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp2のときの立ち上がり時間Tr2の計測値が最短である。したがって、初期位置推定部38は、90度方向を中心とする角度範囲(60度方向から120度方向)に、磁極位置が存在すると推定する(図8参照)。
図10は、突極性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。図11は、突極性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。突極性利用方式でも、6種類の2相通電パターン(図3参照)について順に電圧を印加していく。インバータ23の一部のアームをオンしてモータ4に電圧を印加すると、モータ4内の2相のコイルに電流が流れて、その合成磁束が発生する(図10参照)。電流検出器24に流れる電流iが電流閾値Ith1に到達すると電圧の印加を停止し、電圧を印加してから電流iが電流閾値Ith1に到達するまでの立ち上がり時間Tr1を計測することを、6種類の通電パターンのそれぞれについて順に実施する(図11参照)。本方式は、モータの磁気飽和特性を利用しないことから、磁気飽和を起こさない程度の電流をモータ4に流すため、電流閾値Ith1は、磁気飽和特性が顕在化しない程度に小さく設定される。つまり、電流閾値Ith1は、電流閾値Ith2よりも小さい。
電流閾値Ith1は、第1電流閾値の一例であり、電流閾値Ith2は、第1電流閾値よりも高い第2電流閾値の一例である。立ち上がり時間Tr1は、一部のアームをオンさせてから電流検出器24に流れる電流が第1電流閾値に到達するまでの第1時間の一例である。立ち上がり時間Tr2は、一部のアームをオンさせてから電流検出器24に流れる電流が第2電流閾値に到達するまでの第2時間の一例である。
初期位置推定部38は、6種類の通電パターンp1~p6のうち、立ち上がり時間Tr1が最長の通電パターンと立ち上がり時間Tr1が二番目に長い通電パターンとの少なくとも一方の通電パターンを特定する。電流の応答が遅い(つまり、立ち上がり時間Tr1が長い)ということは、磁気抵抗の低い場所(方向)(インダクタンスLが大きい場所(方向))であるとみなすことができる。一部の特定の通電パターンで立ち上がり時間Tr1が長くなっている(インダクタンスLが大きい)理由は、コイルにより発生した磁束の方向が、ロータの磁石により発生した磁束の方向と異なるからである。つまり、コイルにより発生した磁束と同じ方向にロータの磁石が存在しない。
したがって、初期位置推定部38は、複数の通電パターンのうち立ち上がり時間Tr1の計測値が最長の通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正負の方向にそれぞれ90度ずらした方向を中心とする角度範囲に、ロータの磁極位置が存在すると推定できる。もしくは、初期位置推定部38は、複数の通電パターンのうち立ち上がり時間Tr1の計測値が二番目に長い通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正負の方向にそれぞれ90度ずらした方向を中心とする角度範囲に、ロータの磁極位置が存在すると推定できる。もしくは、初期位置推定部38は、複数の通電パターンのうち立ち上がり時間Tr1の計測値が最長及び二番目に長い通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向又は負方向に90度ずらした方向を中心とする角度範囲に、ロータの磁極位置が存在すると推定できる。
なお、理論上、2種類の通電パターンで同程度に応答が遅くなる。図11に示す例では、通電パターンp1,p4で電流の応答が遅くなり、通電パターンp1の方が電流の応答は僅かに遅い。しかしながら、実機では、様々なばらつき要素が想定される。よって、初期位置推定部38は、6種類の通電パターンp1~p6のうち立ち上がり時間Tr1が最長の通電パターンを特定し、最長の通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルから180度向きが異なる方向に電圧ベクトルを生じさせる通電パターンを二番目に長い通電パターンとして特定してもよい。
図11に示す例では、30度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp1の立ち上がり時間Tr1の計測値が最長であり、210度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp4の立ち上がり時間Tr1の計測値が二番目に長い。したがって、初期位置推定部38は、30度方向から正方向に90度ずらした120度方向を中心とする角度範囲(90度方向から150度方向)に、もしくは、30度方向から負方向に90度ずらした300度方向又は210度方向から正方向に90度ずらした300度方向を中心とする角度範囲(270度方向から330度方向)に、磁極位置が存在すると推定する(図10参照)。
初期位置推定部38は、上記の2方式のインダクティブセンシングを組み合わせて、モータのロータの停止状態での磁極位置である初期位置θsを高精度に推定する"高精度インダクティブセンシング"を実行する。本開示に係る高精度インダクティブセンシングは、ロータの静止性を重視した方式(ここでは、静止性重視方式と称する)と、上述の磁気飽和特性利用方式とを組み合わせて、初期位置θsを高精度に推定する手法である。次に、本開示に係る高精度インダクティブセンシングについて説明する。
図12は、本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する静止性重視方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。図13は、本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する静止性重視方式における磁極位置情報の検出例を説明するための図表である。静止性重視手法は、突極性利用方式と磁気飽和特性利用方式とを組み合わせた方式であり、突極性利用方式による磁極位置推定の後に、磁気飽和特性利用方式による磁極位置推定を行う。
なお、ファンモータなど、摩擦が小さく、低い電流(小さいトルク)で回転するようなアプリケーションの場合、アプリケーションの状態に与える影響をできる限り小さくするため、インダクティブセンシングのためにモータに流す電流の値は小さい方が好ましい。本開示に係る高精度インダクティブセンシングの静止性重視方式は、比較的大きな電流を必要とする磁気飽和特性利用方式だけで初期位置θsを絞り込むのではなく、突極性利用方式で絞り込んだ角度範囲の中から磁気飽和特性利用方式で初期位置を絞り込む。これにより、アプリケーションに与える影響(例えば、モータに流す電流の大きさや期間)を最小限とすることができる。
最初に、初期位置推定部38は、突極性利用方式により、磁極位置が存在する範囲を2つの角度範囲に絞り込む。初期位置推定部38は、突極性利用方式を用いて、一部のアームをオンさせてから電流検出器24に流れる電流が電流閾値Ith1に到達するまでの第1立ち上がり時間Tr1を通電パターン毎に計測する。例えば図12に示す例では、初期位置推定部38は、120度方向を含む第1角度範囲(この例では、90度方向から150度方向)に、又は、300度方向を含む第2角度範囲(この例では、270度方向から330度方向)に、磁極位置が存在すると推定したとする。この例における120度方向は、立ち上がり時間Tr1が最長の通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第1方向の一例である。この例における300度方向は、立ち上がり時間Tr1が最長の通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から負方向に90度ずらした第2方向の一例、又は、立ち上がり時間Tr1が二番目に長い通電パターンで一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第2方向の一例である。
次に、初期位置推定部38は、第1角度範囲の中間位相である第1中間角度方向(この例では、120度方向)と、第2角度範囲の中間位相である第2中間角度方向(この例では、300度方向)とに、ステップ形状の電圧を印加する。初期位置推定部38は、磁気飽和特性利用方式により、第1中間角度方向と第2中間角度方向のそれぞれに位置する磁石の極性がN極かS極かを判定する。
具体的には、初期位置推定部38は、第1中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第1通電パターンと第2中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第2通電パターンとのうち、立ち上がり時間Tr2が短い方の通電パターンを特定する。電流の応答が速い(つまり、立ち上がり時間Tr2が短い)ということは、磁気飽和特性の顕在化(インダクタンスLの低下)が起こっているとみなすことができる。2つの通電パターンのうち一方の通電パターンで立ち上がり時間Tr2が短縮(インダクタンスLが低下)している理由は、コイルにより発生した磁束の方向が、ロータの磁石により発生した磁束の方向と同じだからである。したがって、初期位置推定部38は、第1角度範囲と第2角度範囲とのうち立ち上がり時間Tr2が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む第3角度範囲に、ロータの磁極位置が存在すると推定できる。
図13に示す例では、120度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp9のときの立ち上がり時間Tr2の計測値が、300度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp12のときの立ち上がり時間Tr2の計測値よりも短い。したがって、初期位置推定部38は、第3角度範囲(この例では、120度方向を中心とする、90度方向から150度方向の範囲)に、磁極位置が存在すると推定する(図14参照)。
なお、この例では、第1中間角度方向は、上述の第1方向と同じ方向であるが、第1角度範囲にあれば、第1方向からずれた方向でもよく、第2中間角度方向は、上述の第2方向と同じ方向であるが、第2角度範囲にあれば、第2方向からずれた方向でもよい。
次に、初期位置推定部38は、第3角度範囲の一方の端の角度方向である第1端方向と第3角度範囲の他方の端の角度方向である第2端方向のそれぞれに、ステップ形状の電圧を印加する。初期位置推定部38は、磁気飽和特性利用方式を用いて、第3角度範囲を第4角度範囲と第5角度範囲とに分けた場合のどちらの角度範囲に磁極位置が存在するかを絞り込む(図15参照)。
図15は、本開示に係る高精度インダクティブセンシングで使用する磁気飽和特性利用方式における磁極位置情報の検出例を説明するためのベクトル図である。この例において、90度方向は、第1端方向の一例であり、150度方向は、第2端方向の一例であり、90度方向から120度方向までの角度範囲は、第4角度範囲の一例であり、120度から150度までの角度範囲は、第5角度範囲の一例である。
初期位置推定部38は、第1端方向に電圧ベクトルが生じる第3通電パターンと第2端方向に電圧ベクトルが生じる第4通電パターンのうち、電流閾値Ith3(図16参照)までの立ち上がり時間Tr3が短い方の通電パターンを特定する。立ち上がり時間Tr3とは、一部のアームをオンさせてから電流検出器24に流れる電流が第3電流閾値に到達するまでの第3時間の一例である。第3電流閾値は、第1電流閾値よりも高い閾値であり、磁気飽和特性が顕在化する程度に大きく設定される。電流閾値Ith3は、第3電流閾値の一例である。電流閾値Ith3は、磁気飽和特性が顕在化する程度に大きく設定されていれば、電流閾値Ith2と同じ値でもよい。
電流の応答が速い(つまり、立ち上がり時間Tr3が短い)ということは、磁気飽和特性の顕在化(インダクタンスLの低下)が起こっているとみなすことができる。2つの通電パターンのうち一方の通電パターンで立ち上がり時間Tr3が短縮(インダクタンスLが低下)している理由は、コイルにより発生した磁束の方向が、ロータの磁石により発生した磁束の方向と同じだからである。したがって、初期位置推定部38は、第4角度範囲と第5角度範囲とのうち、立ち上がり時間Tr3が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲に、ロータの磁極位置が存在すると推定できる。
図16に示す例では、90度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp2のときの立ち上がり時間Tr3の計測値が、150度方向の電圧ベクトルを生じさせる通電パターンp3のときの立ち上がり時間Tr3の計測値よりも短い。したがって、初期位置推定部38は、第4角度範囲(この例では、90度方向を端方向とする、90度方向から120度方向の範囲)に、磁極位置が存在すると推定する(図15参照)。
したがって、本開示に係る高精度インダクティブセンシングによれば、磁極位置情報を30度範囲まで絞り込めるので、停止状態でのロータの磁極位置である初期位置の推定精度を高めることができる。また、突極性利用方式により2つの角度範囲に絞った上で、これらの2つの角度範囲の中間角度方向に磁気飽和させる電流を流している。この2つの中間角度方向は、磁極位置が向いている方向に近いので、この2つの中間角度方向に、磁気飽和させる比較的大きな電流を流しても、モータにトルクが発生しにくい。よって、初期位置検出用の電流を流しても、停止状態のモータが不用意に動くことを抑制できる。
図7は、初期位置推定部の構成及び動作の一例を示す図である。初期位置推定部38は、モータ4にステップ電圧を印加させてから(一部のアームをオンさせてから)、電流検出器24に流れる電流iが電流閾値に到達するまでの立ち上がり時間Trを表すタイマカウント値をメモリに記録する。
初期位置推定部38は、例えば、閾値電圧生成回路39、コンパレータ40及びタイマカウンタ41を有する。閾値電圧生成回路39は、メモリに予め記憶されたデジタルの電流閾値IthをD/A(Digital to Analog)変換することで、電流閾値Ithに対応するアナログの電圧閾値Vthを生成する。コンパレータ40は、電流検出器24に接続される電流検出部27(図1参照)のAD変換器と並列に接続されている。コンパレータ40は、負側母線22bに直列に挿入される電流検出器24に流れる電流iに応じて発生する電圧vを、電圧閾値Vthと比較し、その比較結果を出力する。コンパレータ40は、電圧vが電圧閾値Vthに到達すると、その出力を反転させる。タイマカウンタ41は、12個の通電パターンのうち一の通電パターン(例えば、通電パターンp1)でパルス状のステップ電圧を一部のアームに印加し始めるタイミングでカウントを開始し、コンパレータ40の出力が反転するまでカウントを継続する。初期位置推定部38は、コンパレータ40の出力反転時(カウント停止時)のタイマカウント値をメモリに記録し、他の通電パターンで順次計測されたタイマカウント値もメモリに記録する。これにより、初期位置推定部38は、立ち上がり時間Trを測定できる。
なお、電流検出部27、通電パターン生成部35、電流検出タイミング調整部34及び初期位置推定部38の各機能は、不図示の記憶装置に読み出し可能に記憶されるプログラムによってCPU(Central Processing Unit)が動作することにより実現される。例えば、これらの各機能は、CPUを含むマイクロコンピュータにおけるハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される。
図17は、本開示の実施の形態2に係るモータシステム1-2の構成例を示す図である。実施の形態1と同様の構成についての説明は、上述の説明を援用することで省略する。図17に示すモータシステム1-2は、モータ4と、モータ制御装置100-2とを備える。モータ制御装置100-2は、通電パターン生成部35が位置・速度推定部45を有する点で、実施の形態1におけるモータ制御装置100-1と異なる。
上述の又は公知のインダクティブセンシングにより、位置センサレスであっても、停止中のロータ磁極位置(初期磁極位置)を推定することが可能である。従来の多くのセンサレス制御では、初期磁極位置の推定後、誘起電圧が位置情報を得るのに十分な大きさになる速度まで、モータを速度オープンループ制御で起動及び加速させる。しかしながら、速度オープンループ制御では、外部要因によって出力を変化させることができないため、モータの負荷が外乱等により変化すると、モータの回転速度を滑らかに立ち上げることが難しい。インダクティブセンシングを駆動中にまで拡張し、モータを速度クローズド制御で起動及び加速する方法もあるが、静音性が比較的低く、実用的でない場合が多い。
本開示に係るベクトル制御部30は、上述の又は公知のインダクティブセンシングにより推定された初期磁極位置から正方向に角度αずらした方向に電圧ベクトルを生じさせる通電パターンでインバータ23を動作させる。これにより、停止状態のモータを滑らかに立ち上げることができる。角度αは、0度よりも大きく180度よりも小さい角度であるが、好ましくは45度から135度、より好ましくは60度から120度、さらに好ましいのは90度である。磁極位置に対して90度ずれた方向に電流を流すことで、モータに最もトルクを発生させることができるからである。
例えば、例えば図18のように、30度から90度の角度範囲にロータ磁石の磁極位置が存在すると、初期位置推定部38により推定されたとする。ベクトル制御部30は、ロータを正方向CWに回転させる場合、まず、150(=60+90)度方向に電流ベクトルを生成する。すると、ロータはその150度方向の電流ベクトルに引き込まれるように起動する。そして、そのまま何もしなければ、ロータ磁極位置は凡そ150度方向を向いて停止状態もしくは150度方向を中心とした振動状態となる。しかし、そのような状態になる前に、位置・速度推定部45は、モータの誘起電圧を検出又は推定する。位置・速度推定部45は、その誘起電圧から位置・速度情報を抽出し、速度クローズド制御に移行させることで、極低速を除くほぼ全ての速度領域において速度クローズド制御を実現する。これにより、外乱等の負荷の変動による影響を最小限に抑えることができる。
位置・速度推定部45での位置・速度の検知方式は、特に限定されない。AD変換等を用いて"検出"してもよいし、拡張誘起電圧オブザーバなどを用いて"推定"してもよい。また、ロータの引き込み時に十分な速度、すなわち位置・速度情報を得るのに十分な誘起電圧を発生させるために電流ベクトルの大きさや方向を、モータの動作環境やモータ自体の特性に合わせて調整することが好ましい。
図19は、始動時にγ軸電流を流してモータを始動させる方法(引き込み型始動方法)でモータの回転速度を上昇させる場合のタイミングチャートである。図20は、始動時にモータを回転させ始める方法(初期回転型始動方法)でモータの回転速度を上昇させる場合のタイミングチャートである。図21は、引き込み時の誘起電圧を利用してセンサレスベクトル制御に移行する方法(始動時センサレスベクトル制御型始動方法)でモータの回転速度を上昇させる場合のタイミングチャートである。γ軸は、推定した磁極位置を表す推定角度方向の軸であり、モータの基準コイル(例えば、U相コイル)の方向から推定角度θmずれている。δ軸は、γ軸から電気角で90度ずれた方向の軸である。γ-δ座標系は、基準コイルから推定角度θmずれている。
始動時センサレスベクトル制御型始動方法の場合、γ軸電流による引き込みで発生する誘起電圧を使用してモータを回転させ始める。そのため、起動後にベクトル制御で駆動できる、起動時間が短い、ダンピングが発生しない、使用可能な加速度範囲が広いなどのメリットがある。
図22は、オープンループ制御がある場合(図19)のモータ始動時の実波形である。図23は、オープンループ制御がない場合(図21)のモータ始動時の実波形である。図23に示すように、オープンループ制御がない場合でも、モータの回転速度を滑らかに立ち上げできる。
以上、モータ制御装置、モータシステム及びモータ制御方法を実施形態により説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
例えば、インバータの直流側に流れる電流の電流値に対応する検出信号を出力する電流検出器は、正側母線に流れる電流の電流値に対応する検出信号を出力するものでもよい。また、電流検出器は、CT(Current Transformer)等のセンサでもよい。
1-1,1-2 モータシステム
4 モータ
21 直流電源
22a 正側母線
22b 負側母線
23 インバータ
24 電流検出器
27 電流検出部
30 ベクトル制御部
32 PWM信号生成部
33 駆動回路
34 電流検出タイミング調整部
35 通電パターン生成部
36 クロック発生部
37 キャリア発生部
38 初期位置推定部
45 位置・速度推定部
100-1,100-2 モータ制御装置
Up,Vp,Wp,Un,Vn,Wn アーム

Claims (6)

  1. 全アームのうち通電パターン毎に異なる一部のアームをオンすることで、ロータが停止又は極低速の状態のモータを通電させるインバータと、
    前記インバータの直流側に接続される電流検出器と、
    前記状態での前記ロータの磁極位置である初期位置を推定する初期位置推定部と、を備え、
    第1電流閾値よりも高い閾値を第2電流閾値とするとき、
    前記初期位置推定部は、
    前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第1電流閾値に到達するまでの第1時間を通電パターン毎に計測し、
    前記第1時間が最長の通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第1方向を含む角度範囲を第1角度範囲とし、前記第1時間が最長の通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から負方向に90度ずらした第2方向を含む角度範囲、又は前記第1時間が二番目に長い通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第2方向を含む角度範囲を第2角度範囲とするとき、
    前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第2電流閾値に到達するまでの第2時間を、前記第1角度範囲に含まれる第1中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第1通電パターンと前記第2角度範囲に含まれる第2中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第2通電パターンとで計測し、
    前記第1角度範囲と前記第2角度範囲とのうち前記第2時間が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲を第3角度範囲とし、前記第3角度範囲の一方の端の角度方向を第1端方向とし、前記第3角度範囲の他方の端の角度方向を第2端方向とし、前記第1電流閾値よりも高い閾値を第3電流閾値とするとき、
    前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第3電流閾値に到達するまでの第3時間を、前記第1端方向に電圧ベクトルが生じる第3通電パターンと前記第2端方向に電圧ベクトルが生じる第4通電パターンとで計測し、
    前記第3角度範囲のうち前記第1端方向を含む角度範囲を第4角度範囲とし、前記第3角度範囲のうち前記第2端方向を含む角度範囲を第5角度範囲とするとき、
    前記第4角度範囲と前記第5角度範囲とのうち、前記第3時間が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲に、前記初期位置があると推定する、モータ制御装置。
  2. 前記第1中間角度方向は、前記第1方向と同じ方向である、又は、前記第2中間角度方向は、前記第2方向と同じ方向である、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記第3電流閾値は、前記第2電流閾値と同じ値である、請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記インバータは、推定された前記初期位置から、正方向に、0度よりも大きく180度よりも小さい角度ずらした方向に電圧ベクトルを生じさせて前記モータを起動させる、請求項1から3のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載のモータ制御装置と、
    前記モータと、を備える、モータシステム。
  6. インバータの全アームのうち通電パターン毎に異なる一部のアームをオンすることで、ロータが停止又は極低速の状態のモータを通電させるモータ制御装置が行うモータ制御方法であって、
    第1電流閾値よりも高い閾値を第2電流閾値とするとき、
    前記一部のアームをオンさせてから、前記インバータの直流側に接続される電流検出器に流れる電流が前記第1電流閾値に到達するまでの第1時間を通電パターン毎に計測し、
    前記第1時間が最長の通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第1方向を含む角度範囲を第1角度範囲とし、前記第1時間が最長の通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から負方向に90度ずらした第2方向を含む角度範囲、又は前記第1時間が二番目に長い通電パターンで前記一部のアームをオンすることで生じる電圧ベクトルの方向から正方向に90度ずらした第2方向を含む角度範囲を第2角度範囲とするとき、
    前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第2電流閾値に到達するまでの第2時間を、前記第1角度範囲に含まれる第1中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第1通電パターンと前記第2角度範囲に含まれる第2中間角度方向に電圧ベクトルが生じる第2通電パターンとで計測し、
    前記第1角度範囲と前記第2角度範囲とのうち前記第2時間が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲を第3角度範囲とし、前記第3角度範囲の一方の端の角度方向を第1端方向とし、前記第3角度範囲の他方の端の角度方向を第2端方向とし、前記第1電流閾値よりも高い閾値を第3電流閾値とするとき、
    前記一部のアームをオンさせてから前記電流検出器に流れる電流が前記第3電流閾値に到達するまでの第3時間を、前記第1端方向に電圧ベクトルが生じる第3通電パターンと前記第2端方向に電圧ベクトルが生じる第4通電パターンとで計測し、
    前記第3角度範囲のうち前記第1端方向を含む角度範囲を第4角度範囲とし、前記第3角度範囲のうち前記第2端方向を含む角度範囲を第5角度範囲とするとき、
    前記第4角度範囲と前記第5角度範囲とのうち、前記第3時間が短い方の通電パターンで生じる電圧ベクトルの方向を含む角度範囲に、前記状態での前記ロータの磁極位置である初期位置があると推定する、モータ制御方法。
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