JP4051833B2 - 永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置に関するものであり、永久磁石式同期電動機(以下「PMモータ」と称する)のうちインダクタンスの小さい電気角位相を正確にしかも短時間で推定し、ひいてはロータに張りつけた磁石の位置を正確にしかも短時間で推定することができるように工夫したものである。
【0002】
【従来の技術】
ベクトル制御を利用してインバータで駆動されるPMモータは、各種の産業分野で使用されている。PMモータは、永久磁石により界磁磁束が作られるため、高精度のq軸制御及び電流制御を行うためには、ロータに張りつけられた磁石の位置(以降「磁極位置」と称する)を正確に検出することが必要となる。
【0003】
ここで、PMモータの初期磁極位置の検出手法についての説明に先立ち、ベクトル制御を利用してPMモータをインバータ駆動する制御装置を図10を参照して説明する。
【0004】
図10に示すようにインバータ1からPMモータ2に等価三相電流(または等価三相電圧)を供給することによりPMモータ2が回転する。速度検出器(パルスジェネレータ)3は、PMモータ2の回転子と共に回転してパルス信号Pを出力する。位置検出部4は、パルス信号Pを基に、PMモータ2の回転子位置(位相)即ち磁極位置を示す位相検出値θを求め、速度検出部5は、パルス信号Pを基に、PMモータ2の回転子速度を示す速度検出値ωrを求める。角速度検出部6は、PMモータ2の極数pと速度検出値ωrとから角速度検出値ωを求める。
【0005】
電流検出部7,8はu相及びw相の電流検出値Iu ,Iw を求める。第1の座標変換部9は、電流検出値Iu ,Iw からv相の電流検出値Iv を求め、更に三相の電流検出値Iu ,Iv ,Iw を三相/二相変換し、位相検出値θを用いて回転座標系のq軸電流検出値Iq 及びd軸電流検出値Id を求める。
【0006】
トルク制御部10は、トルク指令T* が入力されると速度検出値ωrを用いて、回転座標系のd軸電流指令I d * 及びq軸電流指令I q * を求める。
【0007】
電流制御部11は、回転座標系のq軸電流指令I q * 及びd軸電流指令I d * と、q軸電流検出値Iq 及びd軸電流検出値Id との偏差(I q * −Iq ,I d * −Id )を比例・積分演算し且つ角速度検出値ωを用いることにより、回転座標系のq軸電圧指令Vq * 及びd軸電圧指令Vd * を求める。
【0008】
第2の座標変換部12は、位相検出値θを用いて回転座標系のq軸電圧指令Vq * 及びd軸電圧指令Vd * を座標変換して、静止座標系の三相の電圧指令Vu * , Vv * , Vw * を求める。
【0009】
インバータ1は、電圧指令Vu * , Vv * , Vw * を基に制御され、等価三相電力をPMモータ2に供給する。なお図10において点線で囲んだ部分は、ソフトウェアで処理している。
【0010】
上述したような、ベクトル制御を利用してPMモータをインバータ駆動する場合、ロータに張りつけられた磁石の位置(磁極位置)に応じた電流制御が必要となる。そのため、PMモータのベクトル制御では、ロータ磁極位置を検出することが必要となる。そこで、現状のPMモータのベクトル制御装置では、絶対値エンコーダをモータに取り付ける場合が多い。
【0011】
一方、絶対値エンコーダを取り付けない場合は、停止中に、高周波電流や高周波電圧を用いて初期磁極位置推定を行い、モータ回転中にはオブザーバや誘起電圧を利用して磁極位置を推定して運転する方式がとられている。
【0012】
初期磁極位置推定は、PMモータの固定子巻線のインダクタンスがロータの磁極位置によって変化することを利用して行われる。具体的には、電気角位相(図10では位置検出値θの値)を変えながらインダクタンスを測定し、インダクタンスが一番小さくなる電気角位相(θ)を制御軸(D軸)とする。そのため、精度よくインダクタンスを測定することが必要になる。
【0013】
インダクタンスの測定には、パルス状の電圧を出力してその電流応答によりインダクタンスを測定する方法や、パルス状の電流指令に対して電流制御を行いそのときの出力電圧指令の大きさによってインダクタンスを測定する方法が知られている。このような方法を採った場合、ベクトル制御装置の主回路部分(図10ではインバータ1の主回路)でのデッドタイムの影響や主回路での電圧降下によって出力電圧(モータに供給する三相電圧)が指令値どうりに出力できないことが問題となる。
【0014】
これら主回路での電圧誤差の影響を低減するために様々な方法が提案されている。ここで、図11及び図12を参照して、主回路での電圧誤差の影響を受けないインダクタンスの測定方法の従来手法を示す。
【0015】
図11に示す電気角位相設定部101は、位相角(値)の異なる電気角位相θを出力する。電流指令設定部102は、後述するような値とした、q軸電流指令Iq * とd軸電流指令Id * を出力する。演算部103は、メモリ部103aと減算部103bと電圧積分部103cとで構成されている。判定部104は、詳細は後述するが、インダクタンスLが最小となる電気角位相θを判定する。
【0016】
次に、インダクタンスLを測定して初期磁極位置を判定する従来手法を説明する。
【0017】
まず、電気角位相設定部101は、電気角位相θを初期値(例えば0°)に設定する。設定した電気角位相θの値(例えば0°)は、判定部104に転送される。
【0018】
このように電気角位相θを例えばθ=0°とした状態にしたら、電流指令設定部102は、図12に示すように、
▲1▼休止期間では、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0とし、
▲2▼第1指令出力期間では、d軸電流指令Id * を予め決めた第1設定値Id * (1) とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとし、
▲3▼第2指令出力期間では、d軸電流指令Id * を予め決めた第2設定値Id * (2) とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとする。なお、第2設定値Id * (2) は第1設定値Id * (1) よりも値を大きくしている。
【0019】
演算部103のメモリ部103aは、第1指令出力期間の終了時のd軸電圧指令Vd * の値を取り込んでメモリする。また演算部103は、第2指令出力期間になると、d軸電圧指令Vd * の値を一定のサンプリングタイミング毎に取り込み、サンプリングタイミング毎に取り込んだ値とメモリ部103aにメモリした値との偏差を減算部103bにより求め、この偏差を電圧積分部103cにより積分する。このように第2指令出力期間の間にわたり積分して得た偏差積分値は、判定部104に転送される。転送されたら、メモリ103aにメモリした値及び電圧積分部103cにて積分した値が消去される。
【0020】
判定部104は、電気角位相θ=0°と、このときの偏差積分値とを対にして記憶する。
【0021】
次に、電気角位相設定部101は、電気角位相θを次の値(例えば1°)に設定する。設定した電気角位相θの値(例えば1°)は、判定部104に転送される。
【0022】
このように電気角位相θを例えばθ=1°とした状態にしたら、電流指令設定部102は、θ=0°のときと同じ動作をする。
【0023】
演算部103も、θ=0°のときと同じ動作をし、これにより、θ=1°とした状態での偏差積分値が得られ、この偏差積分値が判定部104に転送される。
【0024】
この結果、判定部104は、電気角位相θ=1°と、このときの偏差積分値とを対にして記憶することができる。
【0025】
以降は、電気角位相θの値を360°まで順次段階的に増加(例えば1°づつ増加)していき、各電気角位相毎に上述したのと同様な動作を繰り返す。これにより、判定部104には、各電気角位相と、このときの偏差積分値とを対にした対照データが蓄積される。
【0026】
判定部104では、蓄積した対照データを判定・検査することにより、偏差積分値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスLが最小であると判定する。そして、この偏差積分値が最小となっている電気角位相θが初期磁極位置であると判定(推定)する。なぜならば、インダクタンスは磁極位置にて最小となるからである。
【0027】
上記従来手法では、d軸電流指令Id * の値を、第1指令出力期間では第1設定値Id * (1) とし、第2指令出力期間では、第1設定値Id * (1) よりも値が大きな第2設定値Id * (2) として偏差演算をしているため、主回路でのデッドタイムの影響(零クランプや電圧誤差)の影響をキャンセルすることができる。
【0028】
その理由は、第1指令出力期間が終了した時点では動作が安定しており、しかも、第2指令出力期間の各サンプル値と第1指令出力期間の終了時の値との偏差をとることにより、第2指令出力期間の各サンプル値に含まれていたデッドタイムの要素が、第1指令出力期間の終了時の値に含まれていたデッドタイムの要素により減殺(減算)され、デッドタイムの影響が無くなるからである。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、図11及び図12に示した従来の初期磁極位置の推定手法では、精度よく磁極推定を行うためには、長い時間がかかっていた。これは、第1指令出力期間と第2指令出力期間という2つの指令出力期間を設定する必要があるからであり、また、第1指令出力期間における電流制御部11での演算と、第2指令出力期間における電流制御部11での演算とが必要であるため、電流制御部11での演算が2回になり演算時間が長くなるからである。
【0030】
本発明は、上記従来技術に鑑み、PMモータのうちインダクタンスの小さい電気角位相を正確にしかも短時間で推定することができ、ひいては、初期磁極位置を正確にしかも短時間で推定することができるベクトル制御装置を提供することを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の構成は、永久磁石式同期電動機に供給される三相電流の検出値を三相/二相変換してなるd軸電流検出値及びq軸電流検出値と、d軸電流指令及びq軸電流指令との偏差を基に演算をして、d軸電圧指令及びq軸電圧指令を出力する電流制御部と、
d軸電圧指令及びq軸電圧指令を、前記永久磁石式同期電動機の回転子位相を示す電気角位相に応じて三相の電圧指令に変換する座標変換部と、
三相の電圧指令に応じて等価三相電力を前記永久磁石式同期電動機に供給するインバータとを有する永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置において、
前記座標変換器に入力する電気角位相の値を初期値から順次段階的に増加していく電気角位相設定部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間と休止期間とを交互に設定し、指令出力期間では値を予め決めた設定値としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送ると共に、休止期間では値を0としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送る電流指令設定部と、
電気角位相が異なっていても前記永久磁石式同期電動機に印加される三相電圧のうちd軸成分電圧を同一とするように、電気角位相に応じて値が変化する補正d軸電圧指令を発生する補正計算部と、
指令出力期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令を前記座標変換部に送り、休止期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令に代わり前記補正計算部で発生した補正d軸電圧指令を前記座標変換部に送る切換部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値の値を検出するd軸電流検出部と、
各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により検出したd軸電流検出値の値とを対にして記憶し、d軸電流検出値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定する判定部とを備えていることを特徴とする。
【0032】
また本発明の構成は、前記補正計算部は、補正d軸電圧指令の値Vd を下式により求めることを特徴とする。
Vd =−abs (Vq ERR)×(sin θ−1/tan θ) ・・・(1)
但し、abs は絶対値を意味し、Vq ERRは、q軸電流指令が0のときに前記電流制御部から出力されるq軸電圧指令の値であり、θは電気角位相である。
【0033】
また本発明の構成は、前記d軸電流検出部は、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点までの間にて、d軸電流検出値を積分して積分値を求め、
前記判定部は、各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により積分した積分値とを対にして記憶し、積分値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定することを特徴とする。
【0034】
また本発明の構成は、永久磁石式同期電動機に供給される三相電流の検出値を三相/二相変換してなるd軸電流検出値及びq軸電流検出値と、d軸電流指令及びq軸電流指令との偏差を基に演算をして、d軸電圧指令及びq軸電圧指令を出力する電流制御部と、
d軸電圧指令及びq軸電圧指令を、前記永久磁石式同期電動機の回転子位相を示す電気角位相に応じて三相の電圧指令に変換する座標変換部と、
三相の電圧指令に応じて等価三相電力を前記永久磁石式同期電動機に供給するインバータとを有する永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置において、
前記座標変換器に入力する電気角位相の値を初期値から順次段階的に増加していく電気角位相設定部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間と休止期間とを交互に設定し、指令出力期間では値を予め決めた設定値としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送ると共に、休止期間では値を0としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送る電流指令設定部と、
電気角位相を初期値とした際に、前記電流制御部から出力される指令出力期間終了時点のd軸電圧指令をメモリする第1のメモリ部と、電気角位相を初期値以降の値とした際のそれぞれの状態にて、前記電流制御部から出力される指令出力期間終了時点のd軸電圧指令をそれぞれメモリする第2のメモリ部と、
電気角位相を初期値以降の値とした際のそれぞれの状態にて、第2のメモリ部にメモリしたd軸電圧指令の値から第1のメモリ部にメモリしたd軸電圧指令の値を減算して偏差d軸電圧指令を発生する減算部と、
指令出力期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令を前記座標変換部に送り、休止期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令に代わり前記減算部で発生した偏差d軸電圧指令を前記座標変換部に送る切換部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値の値を検出するd軸電流検出部と、
各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により検出したd軸電流検出値の値とを対にして記憶し、d軸電流検出値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定する判定部とを備えていることを特徴とする。
【0035】
また本発明の構成は、前記d軸電流検出部は、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点までの間にて、d軸電流検出値を積分して積分値を求め、
前記判定部は、各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により積分した積分値とを対にして記憶し、積分値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定することを特徴とする。
【0036】
また本発明の構成は、第1のメモリ部は、電気角位相を初期値とした際に、指令出力期間終了時点よりも一定期間前の時点から指令出力期間終了時点までの期間において、前記設定電流制御部から出力されるd軸電圧指令の値の平均値をメモリし、第2のメモリ部は、電気角位相を初期値以降の値とした際のそれぞれの状態にて、指令出力期間終了時点よりも一定期間前の時点から指令出力期間終了時点までの期間において、前記設定電流制御部から出力されるd軸電圧指令の値の平均値をメモリすることを特徴とする。
【0037】
また本発明の構成は、前記判定部は、インダクタンスが最小であると判定した電気角位相が、回転子磁極が位置する初期磁極位置であると推定することを特徴とする。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0039】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を、図1及び図2を参照しつつ説明する。ここでは、インダクタンスLを測定して初期磁極位置を判定する手法と共に、装置構成も併せて説明していく。なお、従来技術と同一機能を果たす部分には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0040】
まず、電気角位相設定部201は、電気角位相θを初期値(例えば0°)に設定する。設定した電気角位相θの値(例えば0°)は、判定部204に転送される。
【0041】
このように電気角位相θを例えばθ=0°とした状態にしたら、電流指令設定部202は、図2(a)に示すように、
▲1▼休止期間では、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0とし、
▲2▼指令出力期間では、d軸電流指令Id * を予め決めた設定値Id * (s) とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとし、
▲3▼次の休止期間では、再び、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとする、という電流指令を繰り返し出力する。
【0042】
切換部203では、指令出力期間ではスイッチ部203aが接点部203b側に投入され、休止期間ではスイッチ部203aが接点部203c側に投入されるようになっている。このため、指令出力期間では、電流制御部11から出力されたd軸電圧指令Vd * が第2の座標変換部12に送られ、休止期間では、後述する補正計算部205から出力された補正d軸電圧指令Vd が座標変換部12に送られる。
【0043】
補正計算部205は、休止期間において、下式(1)の補正計算式により求めた補正d軸電圧指令Vd を出力する。
Vd =−abs (Vq ERR)×(sin θ−1/tan θ) ・・・(1)
但し、abs は絶対値を意味し、Vq ERRは、q軸電流指令Iq * が零のときに電流制御部11から出力されるq軸電圧指令Vq * の値であり、θは電気角位相である。
【0044】
詳細は後述するが、休止期間においては、(1)式により求めた補正d軸電圧指令Vd を出力することにより、電気角位相θの値が異なっていても、PMモータ2に実際に印加される三相電圧に含まれるd軸成分電圧が同一になる。つまり、インバータ1の出力電圧には、デッドタイムや主回路の電圧降下の影響による電圧誤差があり、しかも、この電圧誤差はd軸電圧指令Vd * が同一であっても電気角位相によって変化するが、(1)式で示すように電気角位相θに応じて値の異なる補正d軸電圧指令Vd を出力することにより、電気角位相が異なっていても、PMモータに実際に印加される三相電圧に含まれるd軸成分電圧を同一にすることができるのである。この結果、後述するd軸電流検出部206における電流応答検出時の条件が、各電気角位相で同一となり、磁極位置の検出が可能になるのである。
【0045】
d軸電流検出値Id は、図2(b)に示すように、指令出力期間では、d軸電流指令Id * の設定値Id * (s) と略等しくなり、休止期間ではその値が漸減して零になる。この休止期間におけるd軸電流検出値Id の減少割合は、PMモータ2のリアクタンスの値(この値は電気角位相θの値によって異なってくる)によって決定される。
【0046】
そこで、d軸電流検出部206は、指令出力期間の終了時点から、予め決めた電流検出設定時間が経過した時点での、d軸電流検出値Id の値を検出する。この検出したd軸電流検出値Id の値は判定部204に転送される。なお、図2に示すように指令出力期間は繰り返し多数回設定されているので、複数の各指令出力期間の終了時点から電流検出設定時間が経過した複数の時点において、d軸電流検出部206はd軸電流検出値Id の値を検出し、その積算値や平均値を判定部204に転送するようにしてもよい。
【0047】
このため、判定部204には、電気角位相θ=0°と、θ=0°とした場合における電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値とが対となって記憶される。
【0048】
次に、電気角位相設定部201は、電気角位相θを次の値(例えば1°)に設定する。設定した電気角位相θの値(例えば1°)は、判定部204に転送される。
【0049】
このように電気角位相θを例えばθ=1°とした状態にしたら、電流指令設定部202は、θ=0°のときと同じ動作をする。
【0050】
切換部203,補正計算部205,d軸電流検出部206も、θ=0°のときと同じ動作をし、これにより、θ=1°とした場合における、電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値が得られ、このd軸電流検出値Id の値が判定部204に転送される。
【0051】
この結果、判定部204は、電気角位相θ=1°と、θ=1°とした場合における電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値とが対となって記憶される。
【0052】
以降は、電気角位相θの値を360°まで順次段階的に増加(例えば1°づつ増加)していき、各電気角位相毎に上述したのと同様な動作を繰り返す。これにより、判定部204には、各電気角位相と、各電気角位相とした場合における電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値とを対にした対照データが蓄積される。
【0053】
判定部204では、蓄積した対照データを判定・検査することにより、d軸電流検出値Id の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスLが最小であると判定する。なお、d軸電流検出値Id の積算値や平均値を使用した場合には、積算値や平均値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスLが最小であると判定する。そして、このd軸電流検出値Id の値が最小となっている電気角位相θが初期磁極位置であると判定(推定)する。なぜならば、インダクタンスは磁極位置にて最小となるからである。
【0054】
本実施の形態では、指令出力期間が1つであり、電流制御部11での演算が1回でよいため、初期磁極位置の推定に要する時間は短くなる。
【0055】
<第1の実施の形態の変形例>
なお、図1の実施の形態では、d軸電流検出部206は、指令出力期間の終了時点から、予め決めた電流検出設定時間が経過した時点での、d軸電流検出値Id の値を検出していたが、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点までの間において、d軸電流検出値Id を積分し、この積分値を検出するようにしてもよい。そして、判定部204では、各電気角位相と、各電気角位相にした場合の積分値とを対にした対照データを蓄積し、この対照データのうち積分値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定し、この電気角位相を初期磁極位置と判定するようにしてもよい。
【0056】
このようにd軸電流検出値Id の積分値を用いるようにすると、電流検出ノイズが乗ってきても、ノイズの影響を受けにくくなり、正確に磁極位置検出ができる。つまり、ノイズが乗ってきても、積分をしているため積分値が大きく変化することはないからである。
【0057】
<補正d軸電圧指令の説明>
ここで、休止期間においては、(1)式により求めた補正d軸電圧指令Vd を出力することにより、電気角位相θの値が異なっていても、PMモータ2に実際に印加される三相電圧に含まれるd軸成分電圧が同一になる理由を、図3〜図7を参照して説明する。
【0058】
PMモータ2には、図3に示すようにPWM制御された等価三相電圧がインバータ1から入力される。なお、図3は一相分の電圧を示している。
【0059】
また、インバータ1の主回路では、デッドタイムの影響やVce(コレクタ−エミッタ間電圧)の影響は各相の電流方向によって決まる。具体的には、電流方向が正の時にはインバータ1の出力電圧を減少させるように前記影響が作用し、電流方向が負の時にはインバータ1の出力電圧を増加させるように前記影響が作用する。
【0060】
更に、インバータ1の主回路の一相分を示す図4及び、PWM出力電圧の1パルス分を示す図5を基に説明すると、次のようなことである。即ち、図4に示すように、デッドタイム期間において、電流方向が正であるときには、スイッチング素子(IGBT等)SW1,SW2が共にOFFになっているため、電流はダイオードD2を通して流れる。このため、デッドタイムの影響等が無ければPWM出力電圧は図5(a)の期間のパルス幅となるのに対し、電流方向が正であるときにはデッドタイム等の影響によりこのときのPWM出力電圧は図5(b)に示すようにパルス幅が短くなり、インバータ1からPMモータ2に送る電圧値が減少するのである。
【0061】
一方、図4に示すように、デッドタイム期間において、電流方向が負であるときには、スイッチング素子(IGBT等)SW1,SW2が共にOFFになっているため、電流はダイオードD1を通して流れる。このため、デッドタイムの影響等が無ければPWM出力電圧は図5(a)の期間のパルス幅となるのに対し、電流方向が負であるときにはデッドタイム等の影響によりこのときのPWM出力電圧は図5(b)に示すようにパルス幅が長くなり、インバータ1からPMモータ2に送る電圧値が増加するのである。
【0062】
結局、d軸電圧指令Vd * (ひいては三相電圧指令Vu * ,Vv * ,Vw * )の値が同一であっても、電流方向によってPMモータ2に実際に印加される三相電圧の値が異なっている。つまり、d軸電圧指令Vd * と、PMモータ2に実際に印加される三相電圧のうちd軸成分の電圧との間に電圧誤差が生じるのである。
【0063】
磁極位置推定検出時における、電流の向きと電気角位相θとを考慮して、デッドタイム等の影響によるd−q軸上での電圧誤差をベクトル的に検討すると、図6、図7のようになる。
【0064】
図6では、電気角位相θが0°であり、U相電流Iu が正、V相電流Iv が負、W相電流Iw が負のときの状態である。このときには、図4及び図5にて検討したことから、このベクトル図にも示すように、U相の電圧誤差Vu Eは負であり、V相の電圧誤差Vv Eは正であり、W相の電圧誤差Vw Eは正である。誤差Vu E,Vv E,Vw Eをベクトル的に合成した三相電圧誤差V ERRは、d軸上での電圧誤差Vd ERRと等しくなる。
【0065】
図7では、電気角位相θが30°であり、U相電流Iu が正、V相電流Iv が負、W相電流Iw が負のときの状態である。このときには、図4及び図5にて検討したことから、このベクトル図にも示すように、U相の電圧誤差Vu Eは負であり、V相の電圧誤差Vv Eは正であり、W相の電圧誤差Vw Eは正である。誤差Vu E,Vv E,Vw Eをベクトル的に合成した三相電圧誤差V ERRと、d軸上での電圧誤差Vd ERR及びd軸上での電圧誤差Vq ERRとの関係は、図7のベクトル図から下式(2)(3)のようになる。
【0066】
Vd ERR=abs ( Vq ERR)/tan θ・・(2)
V ERR=Vq ERR×sin θ・・・・・・(3)
【0067】
上記三相電圧誤差V ERRは、各相の素子の特性のバラツキを無視すれば、電気角位相θが異なっていても同一となる。そこで、ここでは、電気角位相θが異なっていても、三相電圧誤差V ERRは同一であるとする。
【0068】
ところで、電気角位相θが0°であるときには、図6から分かるようにVq ERRが無いため、d軸上での電圧誤差Vd ERRは、値が0のVq ERRを(2)(3)式に代入しても求めることができない。
【0069】
そこで、q軸電流指令Iq * が零のときに電流制御部11から出力されるq軸電圧指令Vq * の値をVq ERRの値として(1)式に代入し求めた補正d軸電圧指令Vd をd軸電圧指令とすることにより、PMモータに実際に印加される三相電圧に含まれるd軸成分電圧Vd OUTは、各電気角位相で(θ=0°の時も含めて)同一の値(−V ERR)となる。つまり、Vd OUT=−V ERRとなる。この結果、Vd OUTは0にはならないが、各電気角位相でVd OUT=−V ERRと同一の値となり、d軸電流検出部206における電流応答検出時の条件が、各電気角位相で同一となり、磁極位置の検出が可能になるのである。
【0070】
<第2の実施の形態>
次に本発明の第2の実施の形態を図8及び図9を参照しつつ説明する。具体的説明は後述するが、この第2の実施の形態においても、デッドタイムや主回路の電圧降下の影響による電圧誤差を補正して初期磁極位置の検出が短時間でできるように工夫したものである。
【0071】
まず、電気角位相設定部301は、電気角位相θを初期値(例えば0°)に設定する。
【0072】
このように電気角位相θを例えばθ=0°とした状態にしたら、電流指令設定部302は、図9(a)に示すように、
▲1▼休止期間では、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0とし、
▲2▼指令出力期間では、d軸電流指令Id * を予め決めた設定値Id * (s) とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとし、
▲3▼次の休止期間では、再び、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとするという、電流指令を繰り返し出力する。
【0073】
切換部303では、指令出力期間ではスイッチ部303aが接点部303b側に投入され、休止期間ではスイッチ部303aが接点部303c側に投入されるようになっている。
【0074】
メモリ部305aは、磁極位置推定開始位相時、即ち、θ=0°のときにおける、指令出力期間終了時点のd軸電圧指令Vd * の値Vd * (θ=0°)をサンプルしてメモリする。ここまでは準備動作である。
【0075】
次に、電気角位相設定部301は、電気角位相θを次の値(例えば1°)に設定する。設定した電気角位相θの値(例えば1°)は、判定部304に転送される。
【0076】
このように電気角位相θを例えばθ=1°とした状態にしたら、電流指令設定部302は、図9(a)に示すように、
▲1▼休止期間では、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0とし、
▲2▼指令出力期間では、d軸電流指令Id * を予め決めた設定値Id * (s) とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとし、
▲3▼次の休止期間では、再び、d軸電流指令Id * を0とすると共にq軸電流指令Iq * を0のままとするという、電流指令を繰り返し出力する。
【0077】
切換部303では、指令出力期間ではスイッチ部303aが接点部303b側に投入され、休止期間ではスイッチ部303aが接点部303c側に投入されるようになっている。このため、指令出力期間では、電流制御部11から出力されたd軸電圧指令Vd * が第2の座標変換部12に送られ、休止期間では、後述する減算部307から出力される偏差d軸電圧指令ΔVd が座標変換部12に送られる。
【0078】
メモリ部305bは、θ=1°のときにおける、指令出力期間終了時点のd軸電圧指令Vd * の値Vd * (θ=1°)をサンプルしてメモリする。
【0079】
減算部307は、メモリ部305bにメモリした値Vd * (θ=1°)から、メモリ部305aにメモリした値Vd * (θ=0°)を減算して偏差d軸電圧指令ΔVd を求める。この偏差d軸電圧指令ΔVd が、休止期間において、切換部303を介して座標変換部12に送られる。
【0080】
偏差d軸電圧指令ΔVd を座標変換部12に送ることにより、電気角位相θの値が異なっていても、PMモータ2に実際に印加される三相電圧に含まれるd軸成分電圧が同一になる。つまり、初期値であるVd * (θ=0°)には、モータに電流を流すのに必要な電圧(この電圧はモータ特性に依存し電気角位相には関係がない)とd軸電圧誤差(この誤差電圧は電気角位相に依存して変化する)が含まれており、同様に検出値Vd * (θ=1°)にも、モータに電流を流すのに必要な電圧(この電圧はモータ特性に依存し電気角位相には関係がない)とd軸電圧誤差(この誤差電圧は電気角位相に依存して変化する)が含まれている。
【0081】
偏差d軸電圧指令ΔVd は、値Vd * (θ=1°)から、初期値Vd * (θ=0°)を減算して求めたものであるため、電気角位相θが異なっていても、偏差d軸電圧指令ΔVd には、θ=0°のときのd軸電圧誤差のみが含まれることになる。したがって、この偏差d軸電圧指令ΔVd を座標変換部12に送れば、電気角位相θの値が異なっていても、発生する電圧誤差は、常にθ=0°のときのものと同じになり、各電気角位相での電流応答検出時の条件が同一となり、磁極位置検出が可能となるのである。
【0082】
d軸電流検出値Id は、図9(b)に示すように、指令出力期間では、d軸電流指令Id * の設定値Id * (s) と略等しくなり、休止期間ではその値が漸減して零になる。この休止期間におけるd軸電流検出値Id の減少割合は、PMモータ2のリアクタンスの値(この値は電気角位相θの値によって異なってくる)によって決定される。しかも、この休止期間では、偏差d軸電圧指令ΔVd が座標変換部2に入力されているため、電気角位相θの値が異なっていても、発生する電圧誤差はθ=0°の時と同じ値となっており、全ての電気角位相で電流応答検出時の検出条件が同一となる。
【0083】
d軸電流検出部306は、指令出力期間の終了時点から、予め決めた電流検出設定時間が経過した時点での、d軸電流検出値Id の値を検出する。この検出したd軸電流検出値Id の値は判定部304に転送される。なお、図9に示すように指令出力期間は繰り返し多数回設定されているので、複数の各指令出力期間の終了時点から電流検出設定時間が経過した複数の時点において、d軸電流検出部306はd軸電流検出値Id の値を検出し、その積算値や平均値を判定部304に転送するようにしてもよい。
【0084】
このため、判定部304には、電気角位相θ=1°と、θ=1°とした場合における電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値とが対となって記憶される。
【0085】
次に、電気角位相設定部301は、電気角位相θを次の値(例えば2°)に設定する。設定した電気角位相θの値(例えば2°)は、判定部304に転送される。
【0086】
このように電気角位相θを例えばθ=2°とした状態にしたら、電流指令設定部302は、θ=1°のときと同じ動作をする。
【0087】
切換部303,メモリ部305b,減算部307,d軸電流検出部306も、θ=1°のときと同様な動作をする。即ち、メモリ部305bは、θ=2°のときにおける、指令出力期間終了時点のd軸電圧指令Vd * の値Vd * (θ=2°)をサンプルしてメモリし、減算部307は、メモリ部305bにメモリした値Vd * (θ=2°)から、メモリ部305aにメモリした値Vd * (θ=0°)を減算して偏差d軸電圧指令ΔVd を求め、d軸電流検出部306は電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値を得て、このd軸電流検出値Id の値が判定部304に転送される。
【0088】
この結果、判定部304は、電気角位相θ=2°と、θ=2°とした場合における電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値とが対となって記憶される。
【0089】
以降は、電気角位相θの値を360°まで順次段階的に増加(例えば1°づつ増加)していき、各電気角位相毎に上述したのと同様な動作を繰り返す。これにより、判定部304には、各電気角位相と、各電気角位相とした場合における電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値Id の値とを対にした対照データが蓄積される。
【0090】
判定部304では、蓄積した対照データを判定・検査することにより、d軸電流検出値Id の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスLが最小であると判定する。なお、d軸電流検出値Id の積算値や平均値を使用した場合には、積算値や平均値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスLが最小であると判定する。そして、このd軸電流検出値Id の値が最小となっている電気角位相θが初期磁極位置であると判定(推定)する。なぜならば、インダクタンスは磁極位置にて最小となるからである。
【0091】
本実施の形態では、指令出力期間が1つであり、電流制御部11での演算が1回でよいため、初期磁極位置の推定に要する時間は短くなる。
【0092】
<第2の実施の形態の変形例>
なお、図8に示す実施の形態では、d軸電流検出部306は、指令出力期間の終了時点から、予め決めた電流検出時間が経過した時点での、d軸電流検出値Id の値を検出していたが、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点までの間において、d軸電流検出値Id を積分し、この積分値を検出するようにしてもよい。そして、判定部304では、各電気角位相と、各電気角位相にした場合の積分値とを対にした対照データを蓄積し、この対照データのうち積分値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定し、この電気角位相を初期磁極位置と判定するようにしてもよい。
【0093】
このようにd軸電流検出値Id の積分値を用いるようにすると、電流検出ノイズが乗ってきても、ノイズの影響を受けにくくなり、正確に磁極位置検出ができる。つまり、ノイズが乗ってきても、積分をしているため積分値が大きく変化することはないからである。
【0094】
また、図8の実施の形態では、メモリ部305a,305bは、指令出力期間終了時点のd軸電圧指令Vd * の値をメモリしていたが、指令出力期間終了時点よりも一定期間前の時点から指令出力期間終了時点までの間の期間におけるd軸電圧指令Vd * の値の平均値をメモリするようにしてもよい。このようにすることによっても、ノイズによる検出誤差を低減することができる。
【0095】
なお上記各実施の形態では、インダクタンスを測定して初期磁極位置の推定を行っているが、インダクタンスの測定結果を利用して、電流制御系(例えば電流制御部11)のゲインの調整等にも利用することができる。
【0096】
【発明の効果】
以上、各実施の形態と共に具体的に説明したように、本発明では、ベクトル制御装置の主回路部分でのデッドタイムの影響や主回路での電圧降下の影響を受けることなく、永久磁石式同期電動機のインダクタンス測定を、短時間で正確に行うことができる。そして、インダクタンス測定により、回転子磁極が位置する初期磁極位置の推定をすることができる。また、インダクタンス測定結果を利用して、電流制御系のゲインの調整等にも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかるベクトル制御装置を示すブロック図。
【図2】第1の実施の形態におけるd軸電流指令及びd軸電流検出値を示す特性図。
【図3】等価三相電圧を示す波形図。
【図4】インバータの主回路の一相分を示す回路図。
【図5】PWM出力電圧の1パルス分のパルス幅状態を示す特性図。
【図6】電気角位相が0°のときの電圧状態を示すベクトル図。
【図7】電気角位相が30°のときの電圧状態を示すベクトル図。
【図8】本発明の第2の実施の形態にかかるベクトル制御装置を示すブロック図。
【図9】第2の実施の形態におけるd軸電流指令及びd軸電流検出値を示す特性図。
【図10】従来のベクトル制御装置を示すブロック図。
【図11】従来のベクトル制御装置を示すブロック図。
【図12】従来技術におけるd軸電流指令を示す特性図。
【符号の説明】
1 インバータ
2 PMモータ
3 速度検出器
4 位置検出部
5 速度検出部
6 角速度検出部
7,8 電流検出部
9 座標変換部
10 トルク制御部
11 電流制御部
12 座標変換部
201,301 電気角位相設定部
202,302 電流指令設定部
203,303 切換部
204,304 判定部
205 補正計算部
206,306 d軸電流検出部
305a,305b メモリ部
Iu ,Iw 電流検出値
Id d軸電流検出値
Iq q軸電流検出値
T* トルク指令
I d * d軸電流指令
I q * q軸電流指令
Vd * d軸電圧指令
Vq * q軸電圧指令
Vu * , Vv * , Vw * 三相電圧指令
Vd 補正d軸電圧指令
ΔVd 偏差d軸電圧指令
θ 電気角位相
Claims (7)
- 永久磁石式同期電動機に供給される三相電流の検出値を三相/二相変換してなるd軸電流検出値及びq軸電流検出値と、d軸電流指令及びq軸電流指令との偏差を基に演算をして、d軸電圧指令及びq軸電圧指令を出力する電流制御部と、
d軸電圧指令及びq軸電圧指令を、前記永久磁石式同期電動機の回転子位相を示す電気角位相に応じて三相の電圧指令に変換する座標変換部と、
三相の電圧指令に応じて等価三相電力を前記永久磁石式同期電動機に供給するインバータとを有する永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置において、
前記座標変換器に入力する電気角位相の値を初期値から順次段階的に増加していく電気角位相設定部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間と休止期間とを交互に設定し、指令出力期間では値を予め決めた設定値としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送ると共に、休止期間では値を0としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送る電流指令設定部と、
電気角位相が異なっていても前記永久磁石式同期電動機に印加される三相電圧のうちd軸成分電圧を同一とするように、電気角位相に応じて値が変化する補正d軸電圧指令を発生する補正計算部と、
指令出力期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令を前記座標変換部に送り、休止期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令に代わり前記補正計算部で発生した補正d軸電圧指令を前記座標変換部に送る切換部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値の値を検出するd軸電流検出部と、
各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により検出したd軸電流検出値の値とを対にして記憶し、d軸電流検出値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定する判定部とを備えていることを特徴とする永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。 - 前記補正計算部は、補正d軸電圧指令の値Vd を下式により求めることを特徴とする請求項1の永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。
Vd =−abs (Vq ERR)×(sin θ−1/tan θ) ・・・(1)
但し、abs は絶対値を意味し、Vq ERRは、q軸電流指令が0のときに前記電流制御部から出力されるq軸電圧指令の値であり、θは電気角位相である。 - 前記d軸電流検出部は、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点までの間にて、d軸電流検出値を積分して積分値を求め、
前記判定部は、各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により積分した積分値とを対にして記憶し、積分値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定することを特徴とする請求項1または請求項2の永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。 - 永久磁石式同期電動機に供給される三相電流の検出値を三相/二相変換してなるd軸電流検出値及びq軸電流検出値と、d軸電流指令及びq軸電流指令との偏差を基に演算をして、d軸電圧指令及びq軸電圧指令を出力する電流制御部と、
d軸電圧指令及びq軸電圧指令を、前記永久磁石式同期電動機の回転子位相を示す電気角位相に応じて三相の電圧指令に変換する座標変換部と、
三相の電圧指令に応じて等価三相電力を前記永久磁石式同期電動機に供給するインバータとを有する永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置において、
前記座標変換器に入力する電気角位相の値を初期値から順次段階的に増加していく電気角位相設定部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間と休止期間とを交互に設定し、指令出力期間では値を予め決めた設定値としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送ると共に、休止期間では値を0としたd軸電流指令と値を0としたq軸電流指令を前記電流制御部に送る電流指令設定部と、
電気角位相を初期値とした際に、前記電流制御部から出力される指令出力期間終了時点のd軸電圧指令をメモリする第1のメモリ部と、電気角位相を初期値以降の値とした際のそれぞれの状態にて、前記電流制御部から出力される指令出力期間終了時点のd軸電圧指令をそれぞれメモリする第2のメモリ部と、
電気角位相を初期値以降の値とした際のそれぞれの状態にて、第2のメモリ部にメモリしたd軸電圧指令の値から第1のメモリ部にメモリしたd軸電圧指令の値を減算して偏差d軸電圧指令を発生する減算部と、
指令出力期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令を前記座標変換部に送り、休止期間では前記電流制御部から出力されるd軸電圧指令に代わり前記減算部で発生した偏差d軸電圧指令を前記座標変換部に送る切換部と、
電気角位相を各値としたそれぞれの状態にて、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点でのd軸電流検出値の値を検出するd軸電流検出部と、
各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により検出したd軸電流検出値の値とを対にして記憶し、d軸電流検出値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定する判定部とを備えていることを特徴とする永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。 - 前記d軸電流検出部は、指令出力期間の終了時点から予め決めた電流検出設定時間が経過した時点までの間にて、d軸電流検出値を積分して積分値を求め、
前記判定部は、各電気角位相と、各電気角位相にて前記d軸電流検出部により積分した積分値とを対にして記憶し、積分値の値が最小となっている電気角位相におけるインダクタンスが最小であると判定することを特徴とする請求項4の永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。 - 第1のメモリ部は、電気角位相を初期値とした際に、指令出力期間終了時点よりも一定期間前の時点から指令出力期間終了時点までの期間において、前記設定電流制御部から出力されるd軸電圧指令の値の平均値をメモリし、第2のメモリ部は、電気角位相を初期値以降の値とした際のそれぞれの状態にて、指令出力期間終了時点よりも一定期間前の時点から指令出力期間終了時点までの期間において、前記設定電流制御部から出力されるd軸電圧指令の値の平均値をメモリすることを特徴とする請求項4または請求項5の永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。
- 前記判定部は、インダクタンスが最小であると判定した電気角位相が、回転子磁極が位置する初期磁極位置であると推定することを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5または請求項6の永久磁石式同期電動機のベクトル制御装置。
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