JP2004101892A - 感光性平版印刷版 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】粗面化処理、陽極酸化処理、及び親水化処理がこの順に施されておりかつ白色度が0.28以下である感光性平版印刷版用アルミニウム支持体上に、アルカリ性現像液で現像可能なジアゾ樹脂含有感光層を設けた感光性平版印刷版、及び前記感光性平版印刷弁を画像露光及び現像した後、大豆油を原料に使用したインキを用いて印刷することを特徴とする平版印刷版の印刷方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性平版印刷版に関し、特に新聞印刷に好適な感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム板を支持体とする平版印刷版は市販され広く用いられている。この平版印刷版を製造する方法としては、一般にシート状あるいはコイル状のアルミニウム支持体表面を処理し、次いで酸性水素原子をもつ置換基を有するポリウレタン樹脂などを溶剤に溶かした液を塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させたあと、所望のサイズに裁断する方法が取られている。
このような平版印刷版を画像露光、現像、不感脂化して得られた印刷版を用いて印刷する場合、印刷版のサイズより小さい紙に印刷するときのように、印刷物の端部に相当する部分が印刷面とならない場合には問題はないが、新聞印刷のように印刷版の端部に相当する部分も印刷面となる場合は、端部に付着したインクが紙に印刷されて汚れとなり、印刷物の商品価値を著しく損ねてしまう。
また近年では印刷分野でも環境問題に対する関心が高まっており、VOC(揮発性有機化合物)を含まず大豆油を原料に使用したインキが、各インキメーカーから発売されている。しかしこれらのインキは従来のインキに比べて汚れやすいため、印刷版として更なる汚れにくさ向上が求められている。
そこで印刷版の端部の汚れを防止する方法として種々の試みがなされている。
従来、アルミニウム支持体の端部を削り取るかないしは押さえつけて切り欠け部を形成する方法が提案されているが、この方法では角部に施された陽極酸化皮膜が破壊されてしまうため、印刷枚数を増やすと徐々に汚れてくるという問題がある(例えば、特許文献1参照)。また、アルミニウム支持体の親水性層を有する表面と端部端面とで形成される角部が凸曲面で構成されることを特徴とする平版印刷版も報告されているが、角部全体が親水化されておらず、汚れ防止が不十分であった(例えば、特許文献2参照)。
更に、陽極酸化処理した上に感光層を設けたアルミニウム支持体を、刃に特定の隙間を設けたスリッターで裁断することにより、切り欠け部の裁断面が陽極酸化皮膜で覆われた印刷版を作成する方法が開示されているが、切り欠け部の表面が陽極酸化皮膜であるため、経時した場合に種々の汚れが付着し、露光、現像、不感脂化後でもその汚れが除去できないためインクが付着しやすく、やはり端部が汚れるという問題がある(例えば、特許文献3参照)。
また従来の印刷版は、検版性が不十分という問題もあった。
【0003】
【特許文献1】
特公昭57−467514号公報
【特許文献2】
特開平9−52466号公報
【特許文献3】
特許第2910950号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、良好な性能を有する感光性平版印刷版を提供することにある。より詳しくは、検版性に優れかつ印刷時の端部に汚れが発生しない、特に新聞印刷に好適な感光性平版印刷版を提供することにある。また、印刷時の端部に汚れが発生しない、特に新聞印刷に好適な平版印刷版の印刷方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、アルミニウム板を粗面化処理、陽極酸化処理、並びに親水化処理を順に施して処理する際に、粗面化処理として機械的粗面化および電気化学的粗面化処理をした後に化学的エッチングを行って、白色度が0.28以下となるように処理し、その上に特定の化合物を用いた感光層を設けることで上記目的が達成されることを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち本発明は、粗面化処理、陽極酸化処理、及び親水化処理がこの順に施されておりかつ白色度が0.28以下であるアルミニウム支持体上に、アルカリ性現像液で現像可能なジアゾ樹脂含有感光層を有する感光性平版印刷版に関する。また、本発明はさらに、対向する少なくとも二方のへりの樹脂層側角部に切り欠け部が存在する、上記感光性平版印刷版に関する。
また本発明は、粗面化処理、陽極酸化処理、及び親水化処理がこの順に施されておりかつ白色度が0.28以下であるアルミニウム支持体上に、アルカリ性現像液で現像可能なジアゾ樹脂含有感光層を有する感光性平版印刷版を、画像露光及び現像した後、大豆油インキを用いて印刷することを特徴とする平版印刷版の印刷方法、に関する。
上記の技術により、印刷版の端部ヘインキが付着しにくくなり、その結果印刷版の端部に対応する印刷面に汚れが生じない感光性平版印刷版を提供することが可能となった。また、インキとして従来のものより汚れやすい大豆油を原料に使用したインキを使用しても印刷面に汚れが生じない感光性平版印刷版を提供するものである。また支持体の白色度が低いことにより、検版性も良くなったと考えられる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性平版印刷版に使用するアルミニウム支持体について以下に説明する。
[支持体]
本発明ではアルミニウム板を支持体として用いる。本発明に適したアルミニウム板としては、アルミニウム以外に鉄を0.1〜0.5質量%、ケイ素を0.03〜0.3質量%、銅を0.001〜0.03質量%、チタンを0.002〜0.1質量%含有する、JIS規格で定めるところのJIS A 1050のアルミニウム板が好ましい。また、JIS A 3003やJIS A 3103のアルミニウム板も好適に用いられる。アルミニウム板はシートで供給してもよく、またコイル状のアルミニウム板を連続的に供給してもよい。
【0007】
[粗面化処理]
本発明では上記のアルミニウム板にまず粗面化処理を行う。本発明において粗面化処理は、機械的粗面化、電気化学的粗面化または機械的粗面化及び電気化学的粗面化を組み合わせて行い、前記機械的粗面化及び電気化学的粗面化処理後にスマット除去をかねた化学的エッチングを行うこと、すなわち、機械的粗面化と化学的エッチングおよび/または電気化学的粗面化と化学的エッチングにより行うことが好ましい。このような処理を順に行い、さらに処理条件を変えることにより、粗面化処理、陽極酸化処理、及び親水化処理を順に施したアルミニウム支持体表面の白色度を0.28以下に調整することができるからである。
【0008】
機械的粗面化の方法としては、ブラシ研磨法、ボール研磨法、ブラスト研磨法を挙げることができる。これらの中で好ましいのはブラシ研磨法であり、例えばパミストン−水懸濁液を表面に供給しながらナイロンブラシを擦りつける方法を挙げることができる。
【0009】
電気化学的粗面化の方法としては、アルミニウム板を電解液に浸漬し、そこに電気を流すことにより行われる。電解液としては、酸、アルカリ、無機塩の水溶液、あるいはこれらの水溶液に有機溶剤を添加した水性溶液があげられるが、これらのうちで好ましいのは、硝酸、塩酸の水溶液である。またこの電解液には必要に応じ、硝酸塩、塩化物、モノアミン類、ジアミン類、アルデヒド類、リン酸、クロム酸、ホウ酸、シュウ酸、シュウ酸アンモニウム塩等の化合物を、腐食抑制剤、安定剤あるいは砂目の均一化剤として加えることができる。更にこの電解液はアルミニウムイオンを含んでいても良い。アルミニウムイオンの量としては1〜10g/Lが適当である。
この電解液を通常10〜60℃にして電気を流すことで、電気化学的粗面化を行う。交流電流を用いることが好ましく、正負の極性が交互に交換されるものであれば、矩形波、台形波、正弦波のいずれを用いても良い。電流密度は5〜100A/dm2が適当であり、時間は5〜200秒が適当である。その結果50〜300c/dm2の電気量がアルミ表面に与えられ、電気化学的粗面化が行われる。
【0010】
このように機械的粗面化および/または電気化学的粗面化処理をしたアルミニウム板は、それぞれの粗面化処理の後、化学的エッチング処理を施す。このエッチングによる支持体表面の溶解量により、支持体の白色度を制御することが可能である。また、エッチングにより表面に付着したスマットの除去も行われる。エッチングのための処理液は通常アルミニウムを溶解するアルカリあるいは酸の水溶液より選ばれ、アルカリ性物質としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸二カリウムといった化合物の水溶液を、また酸性物質としては硫酸、過硫酸、リン酸、塩酸といった化合物の水溶液をあげることができる。またこれらの塩も用いられるが、アルミニウムよりイオン化傾向の低い金属、例えば亜鉛、クロム、コバルト、ニッケル、銅等の塩は表面に不必要な皮膜を形成するため好ましくない。スマットの除去性の観点から好ましいエッチング処理液はアルカリ性物質の水溶液である。
【0011】
上述したように化学的エッチングによる支持体表面の溶解量(以下エッチング量と称する)により、支持体の白色度を制御することが可能である。エッチング量が多いほど支持体表面の凹凸が少なくなるため、白色度が低くなる。しかし多すぎると凹凸がなくなりすぎて密着力が低下してしまう。適当なエッチング量は粗面化の状況によって変わるため一律には定められないが、機械的粗面化後のエッチング量としては0.5〜30g/m2、電気化学的粗面化後のエッチング量としては0.2〜3g/m2が好適である。
なおアルカリ性水溶液でエッチングした後は、洗浄のため硝酸あるいは硫酸といった酸で中和することが好ましい。
【0012】
[陽極酸化処理]
本発明では支持体の粗面化処理を行った後に陽極酸化処理を行う。陽極酸化処理は従来よりよく知られている方法を用いることができる。好ましい電解液としては硫酸、リン酸があげられ、また特開昭55−28400号公報に記載されている硫酸とリン酸の混酸も使用することができる。この中でも好ましいのは硫酸である。
また電解液にアルミニウムイオンが含まれていてもよい。電流は直流、交流どちらも使用することができるが、直流の方が好ましい。
【0013】
硫酸で陽極酸化する場合、硫酸濃度5〜30質量%の液を20〜60℃にして、電流密度1〜20A/dm2で5〜250秒間電解処理を行うことで、表面に1〜10g/m2の酸化皮膜が設けられるまたリン酸の場合は、リン酸濃度5〜50質量%の液を30〜60℃にして、電流密度1〜15A/dm2で10〜300秒間電解処理を行う。
陽極酸化処理を行った後、熱水や無機塩または有機塩を含む熱水溶液への浸漬、あるいは水蒸気浴などにより封孔処理を行っても良い。
【0014】
[親水化処理]
本発明では支持体の粗面化処理、陽極酸化処理を行った後に親水化処理を行う。
親水化処理としては、米国特許第2,714,066号明細書や米国特許第3,181,461号明細書に記載されているケイ酸塩(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、独国特許第1,134,093号明細書や英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、米国特許第2,946,638号明細書に記載されている弗化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号明細書に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号や特開昭58−18291号の各公報に記載されている親水性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホン酸基を有する水溶性重合体の下塗りによる親水化処理、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているシリケート電着処理、をあげることができ、2種以上の処理を組み合わせて実施しても良い。この中で好ましいのは、ケイ酸塩、ホスホン酸、ポリビニルホスホン酸のうち少なくとも1種の化合物による処理である。
【0015】
ケイ酸塩、ホスホン酸、ポリビニルホスホン酸のうち少なくとも1種の化合物による処理方法としては、これらの化合物を水溶液にして、水溶液に支持体を浸漬する、水溶液を支持体に塗布する、水溶液を支持体にスプレー等で吹き付ける、といった方法が挙げられる。水溶液の濃度としては0.01〜30質量%が適当であり、ケイ酸塩の場合pHを9〜13の範囲にすることが好ましい。また浸漬法の場合、液温を10〜90℃にし、0.5〜100秒間浸漬することで行われる。
【0016】
[支持体物性]
以上のように、支持体はその表面の白色度が0.28以下となるように処理される。白色度が0.28より大きい場合、印刷時に特に版の端部へのインキ付着が多く、印刷物の端部の汚れが著しく劣化し、また検版性も不十分である。支持体白色度とは、Macbeth反射濃度計を用い、白黒モードにより測定される値である。白色度が0.25以下がより好ましく、0.21以下である場合は特に好ましい。
本発明の効果の点からは白色度の下限値は特に限定されないが、通常のアルミニウム支持体では0.07程度より高い白色度を示す。
また支持体の表面粗さとしては0.2〜0.8μmの範囲である。
【0017】
[下塗り]
さらに、本発明において、アルミニウム支持体には下塗りを施してもよい。下塗りに用いられる化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニル、ホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホン酸基を有する水溶性重合体、および特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料等が好ましく用いられる。
【0018】
この下塗層は、水、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどもしくはそれらの混合溶剤に上記の化合物を溶解させ、支持体上に塗布、乾燥して設けることができる。また、感光性平版印刷版の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。下塗層の乾燥後の被覆量は0.2〜200mq/m2が適当であり、好ましくは1〜100mq/m2である。
【0019】
[ジアゾ樹脂含有感光層]
本発明の感光性平版印刷版はジアゾ樹脂を含むものである。ジアゾ樹脂としては米国特許第3,867,147号記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,632,703号明細書記載のジアゾニウム化合物などが挙げられるが、特に芳香族ジアゾニウム塩と例えば活性なカルボニル基含有化合物(例えばホルムアルデヒド)との縮合物で代表されるジアゾ樹脂が有用である。好ましいジアゾ樹脂には、例えばp−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒド又はアセトアルデヒドの縮合物のヘキサフルオロ燐酸塩、テトラフルオロホウ酸塩が含まれる。また、米国特許第3,300,309号に記載されているようなp−ジアゾジフェニルアミンとホルムアルデヒドとの縮合物のスルホン酸塩(例えばp−トルエンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、2−メトキシ−4−ジヒドロキシ−5−ベンゾイルベンゼンスルホン酸塩など)、ホスフィン酸塩(例えばベンゼンホスフィン酸塩など)、ヒドロキシ基含有化合物塩(例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン塩など)、有機カルボン酸塩なども好ましい。
【0020】
更に、特開昭58−27141号に示されているような3−メトキシ−4−ジアゾ−ジフェニルアミンを4,4’−ビス−メトキシ−メチル−ジフェニルエーテルで縮合させ、メシチレンスルホン酸塩としたものなども適当である。この他、特開平1−102456号、同1−102457号、同1−254949号、同1−255246号、及び同2−66号公報に示されているようなジアゾ樹脂なども使用することができる。これらジアゾ樹脂の感光性層に対する含有量は、1〜50質量%、好ましくは3〜20質量%である。また、必要に応じてジアゾ樹脂を2種以上併用してもよい。
【0021】
[バインダー]
本発明の感光層においては種々のバインダーを使用することができ、好適なバインダーとしては酸性水素原子を有するポリウレタン樹脂を挙げることができる。使用できるポリウレタン樹脂としては、例えば特開平5−281718号、特開2001−174999号の各公報記載のポリウレタン樹脂を挙げることができる。
またこの他に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば特開昭50−118802号公報に記載されている様な2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、アクリル酸またはメタクリル酸および必要に応じて他の共重合可能なモノマーとの多元共重合体、特開昭53−120903号公報に記載されている様な末端がヒドロキシ基であり、かつジカルボン酸エステル残基を含む基でエステル化されたアクリル酸またはメタクリル酸、アクリル酸、またはメタクリル酸および必要に応じて他の共重合可能なモノマーとの多元共重合体、特開昭54−98614号公報に記載されている様な芳香性水酸基を末端に有する単量体(例えばN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドなど)、アクリル酸またはメタクリル酸および必要に応じて他の共重合可能なモノマーとの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されている様なアルキルアクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸よりなる多元共重合体をあげることが出来る。またこの他、酸性ポリビニルアルコール誘導体や酸性セルロース誘導体も有用である。またポリビニルアセタールやポリウレタンをアルカリ可溶化した特公昭54−19773号、特開昭57−94747号、同60−182437号、同62−58242号、同62−123453号記載のバインダーも有用である。
【0022】
本発明において感光層を形成する感光性組成物には更に種々の添加剤を加えることができる。例えば塗布性を改良するためのアルキルエーテル類(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース)、界面活性剤類(例えは、フッ素系界面活性剤)、膜の柔軟性、耐摩耗性を付与するための可塑剤(例えば、トリクレジルホスフェート、ジメチルフタレート、ジブチルフタレート、燐酸トリオクチル、燐酸トリブチル、クエン酸トリブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)、現像後の画像部を可視画化するための着色物質としてはアクリジン染料、シアニン染料、スチリル染料、トリフェニルメタン染料やフタロシアニンなどの顔料やその他ジアゾ樹脂の一般的な安定化剤(燐酸、亜燐酸、ピロ燐酸、修酸、ホウ酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、リンゴ酸、酒石酸、ジピコリン酸、ポリアクリル酸及びその共重合体、ポリビニルホスホン酸及びその共重合体、ポリビニルスルホン酸及びその共重合量体、5−ニトロナフタレン−1−ホスホン酸、4−クロロフェノキシメチルホスホン酸、ナトリウムフェニル−メチル−ピラゾロンスルホネート、2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4,1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2,2,1−ヒドロキシエタン−1,1−ジスルホン酸など)、特公昭62−60701号、特開昭63−262642号などに記載されている着肉性を向上させるための感脂化剤などを添加することが出来る。これらの添加剤の添加量はその使用対象目的によって異なるが、一般には感光性層の全固形分に対して0.5〜30質量%である。
【0023】
上記感光性組成物を適当な有機溶媒に溶解し、上述した処理を施した支持体上に乾燥塗布重量が0.5〜5g/m2となるように塗布して、本発明の感光性平版印刷版(PS版)を得ることができる。塗布する際の感光性組成物の固形分濃度は1〜50質量%の範囲とすることが望ましい。使用される塗布溶媒としてはメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルセロソルブアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキサイド、エチレンジクロライド、乳酸メチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。こられの混合溶媒又はこれらの溶媒や混合溶媒に少量の水やトルエン等のジアゾ樹脂や高分子化合物を溶解させない溶媒を添加した混合溶媒も適当である。これらの溶媒に感光性組成物を溶解させて得られる塗布液を塗布し、乾燥させる場合、50〜150℃で乾燥させることが望ましい。乾燥方法は始め温度を低くして予備乾燥した後、高温で乾燥させてもよいが、適当な溶媒と濃度を選ぶことによって直接高温で乾燥させてもよい。
【0024】
感光性組成物を含む感光層を設けた場合には、感光層上には相互に独立して設けられた突起物により構成されるマット層を設けることが好ましい。マット層の目的は密着露光におけるネガ画像フィルムと感光性平版印刷版との真空密着性を改良することにより、真空引き時間を短縮し、さらに密着不良による露光時の微小綱点のつぶれを防止することである。マット層の塗布方法としては、特開昭55−12974号公報に記載されているパウダリングされた固体粉末を熱融着する方法、特開昭58−182636号公報に記載されているポリマー含有水をスプレーし乾燥させる方法などがあり、いずれの方法をも用いうる。マット層は実質的に有機溶剤を含まない水性現像液に溶解するか、あるいはこれにより除去可能な物質から構成されることが望ましい。
【0025】
[切り欠け部の形状及びその製造方法]
上述のように得られた感光性平版印刷版で、対向する少なくとも二方のへりの樹脂層側角部に切り欠け部が存在するようにするために、対向する2辺をスリッターで裁断し切り欠け部を形成することが好ましい。このように端部に切り欠け部が存在すると、さらに印刷時の端部の汚れが軽減されるからである。
【0026】
図4は上記切り欠け部を有する感光性平版印刷版の端部の断面図である。なお、図4において樹脂層等は省略されている。図4に示されるように、形成された切欠部の樹脂層側表面は上方に向かって凸型に湾曲しているか、または平面であってもよい。好ましくは屈曲部を有さない凸型湾曲である。屈曲部を有する場合には屈曲部にインキが付着して汚れが発生する場合がある。凸型湾曲の場合における、支持体の樹脂層表面(処理表面)に対する切欠部の角度とは、図4に示すように、支持体の処理表面での湾曲開始部と、裁断面の湾曲終了部とを結んだ線と、支持体の処理表面の延長線とのなす角度θをいう。切欠部の角度θは5〜45度、好ましくは10〜40度である。5度より小さくても45度より大きくても端部の汚れが発生しやすくなる。
【0027】
支持体端部断面における切欠部の形状は、裁断ダレ高さ(X)(図4参照)が好ましくは30〜100μm、より好ましくは40〜80μmである。ダレ高さ(X)が30μm未満の場合は、端部に汚れが発生しやすくなる。また、ダレ高さ(X)が100μmより大きい場合には、バリ高さ(下面部への突出)が大きくなり、切り粉の発生という問題が生じる。
【0028】
切欠部の面積は好ましくは500〜20000μm2、好ましくは2000〜15000μm2である。切欠部(Y)(図4参照)の面積が500μm2より小さい場合には、端部に汚れが発生する。また切欠部の面積(Y)が20000μm2より大きい場合には、バリ高さが大きくなり、切り粉の発生が生じ、また端部付近の画像部の耐刷性が低下するという問題が生じる。
【0029】
上記切欠部を形成するためのスリッター裁断部の刃の隙間は30〜100μm、好ましくは35〜80μmである。30μmより狭いと、切欠面が形成されないか、形成しても45度より角度が大きくなってしまい端部の汚れが発生する。100μmより広いと、切欠面が形成されないか、形成しても5度より角度が小さくなり、端部の汚れが発生しやすくなる。また裁断自体が困難になる場合もある。
【0030】
図1は、スリッタ装置の裁断部を示す断面図である。スリッタ装置には、上下一対の裁断刃10,20が左右に配置されている。これらの裁断刃10,20は円板状の丸刃からなり、上側裁断刃10aおよび10bは回転軸11に、下側裁断刃20、および20bは回転軸21に、それぞれ同軸上に支持されている。そして、上側裁断刃10aおよび10bと下側裁断刃20aおよび20bとは、相反する方向に回転される。アルミニウムのシート30は、上側裁断刃10a,10bと下側裁断刃20a,20bとの間を通されて所定の幅に裁断される。
【0031】
更に具体的には、図1のスリッタ装置の裁断部の上側裁断刃10aと下側裁断刃20aとの隙間および上側裁断刃10bと下側裁断刃20bとの隙間を、好ましくは30〜100μmに設定して図4に示すような形状の端部を形成させる。図2は、上側裁断刃10aと下側裁断刃20aの形状を示すものである。また、図3は、図2のA部の拡大図であって、上側裁断へ刃10aの先端形状と下側裁断刃20aの先端形状および上側裁断刃と下側裁断刃の隙間を示す。
【0032】
[露光、現像]
上述したように処理された支持体上にジアゾ樹脂含有感光層を有する本発明の感光性平版印刷版は、その後、画像処理露光後アルカリ水溶性系現像液で現像されて、レリーフ像を得る。露光に好適な光源としては、カーボンアーク灯、水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ストロボ、紫外線、レーザ光線などが挙げられる。
【0033】
本発明の感光性平版印刷版の現像は、いずれの公知の現像液で行ってもよいが、特開昭51−77401号、同51−80228号、同53−44202号や同55−52054号の各公報に記載されているような現像液であって、pH=8〜13、水が75質量%以上含まれるものが好ましい。必要により水に対する溶解度が常温で10質量%以下の有機溶媒(ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アルカリ剤(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム)、アニオン界面活性剤(芳香族スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩)、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)、汚れ防止剤(亜硫酸ナトリウム、スルホピラゾロンのナトリウム塩)や硬水軟化剤(エチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム塩、ニトロ三酢酸三ナトリウム塩)を加えることができる。
【0034】
しかし、有機溶媒等を含有すると、作業時の毒性、臭気等の衛生上の問題、火災、ガス爆発等の安全性の問題、泡の発生等の作業性の問題、廃液による公害等の問題、コストの問題等が発生するため、実質上有機溶媒を含まないものが更に好ましい。このような実質上有機溶媒を含まない水性アルカリ現像液として、例えば特開昭59−84241号、特開昭57−192952号及び特開昭62−24263号公報等に記載されている、ポジ型平版印刷版を画像露光後、現像する際に用いられる現像液組成物を使用することが出来る。
【0035】
本発明の感光性平版印刷版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号の各公報に記載されている方法で製版処理しても良い。即ち、現像処理後、水洗してから版面保護処理、またはそのまま版面保護処理、または酸を含む水溶液での処理、または酸を含む水溶液で処理後、版面保護処理を施しても良い。
【0036】
さらに、この種の感光性平版印刷版の現像工程では処理量に応じてアルカリ水溶液が消費されアルカリ濃度が減少したり、あるいは、自動現像機の長時間運転により空気によってアルカリ濃度が減少するため処理能力が低下するが、その際、特開昭54−62004号公報に記載のように補充液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、上記のような製版処理は、特開平2−7054号、同2−32357号の各公報に記載されているような自動現像機で行うことが好ましい。
【0037】
なお製版工程の最終工程で所望により塗布される版面保護剤としては特公昭62−16834号、同62−25118号、同63−52600号、特開昭62−7959号、同62−11693号、同62−83194号の各公報に記載されているものが好ましい。なお現像液処理後、必要であれば画像部の不要部分を市版のネガ用消去液で消去するか石棒で擦りとることもできる。
このようにして得られた印刷版は、VOC(揮発性有機化合物)を含まない大豆油インキ(大豆油を原料に使用したインキ)を用いて印刷しても、(特に端部の)汚れにくさに優れている。VOCを含まない大豆油インキとしては、例えば、Vantean Eco(東洋インキ製造(株)製)、News King Eco(東洋インキ製造(株)製)、NEWS WEBMASTERエコピュア(サカタインクス(株)製)、SOYBI(ザ・インテック(株)製)などを挙げることができる。
【0038】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらによって限定されるものではない。
〔感光性平版印刷版作成例1〕
99.5%アルミニウムに銅を0.02%、チタンを0.03%、鉄を0.3%、ケイ素を0.07%含有するJIS A 1050アルミニウム材を厚さ0.30mmに圧延したアルミニウム板を、まず3号回転ナイロンブラシと400メッシュのパミストンの20%水性懸濁液とを用いてその表面を砂目立て(機械的粗面化)した後、よく水で洗浄した。これを65℃にしたアルミニウムを5%含有する15%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して、アルミニウムの溶解量が5g/m2になるようにエッチングしたあと流水で水洗し、更に10%硝酸で中和洗浄し水洗した。続いて、アルミニウムを0.5%含有する1%硝酸水溶液中で、陽極時電圧10.5V、陰極時電圧9.3Vの正弦波交番波形電流(電流比r=0.90、特公昭58−5796号公報実施例に記載されている電流波形)を用い、170クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。これを水洗後、35℃にした15%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してアルミニウムの溶解量が1.3g/m2になるようにエッチングし、流水で水洗したあと引き続き30%硝酸水溶液に浸漬し55℃で2分間デスマットしたあと、再度水洗した。更にアルミニウムを0.8%含有する10%硫酸水溶液中を35℃にした液中で、直流電流を用いて電流密度13A/dm2で電解を行い、陽極酸化被覆量が2.3g/m2になるように多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。その後水洗し、70℃のケイ酸ナトリウム3%水溶液に1分問浸漬処理したあと、再度水洗し、140℃で30秒間乾燥した。このようにして表面を親水化処理したアルミニウム板を得た。
【0039】
得られたアルミニウム板をMacbeth反射濃度計を用い、白黒モードで支持体白色度を測定したところ、0.25であった。また表面粗さを、東京精密(株)製サーフコムを用い触針先端径2μmで測定したところ、Ra表示で0.50μmであった。
このように処理されたアルミニウム板に、まず次の中間層液(1)をバーコーターを用いて塗布したあと80℃で20秒間乾燥した。乾燥後の中間層塗布重量は0.005g/m2であった。
【0040】
中間層液(1)
・メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=75/10/15(モル比)の共重合体(重量平均分子量60000) 0.1g
・純水 10.0g
・メタノール 90.0g
この上に下記組成の感光液(1)をバーコーターを用いて塗布したあと140℃で40秒乾燥した。乾燥後の感光層塗布重量は1.5g/m2であった。
【0041】
感光液(1)
・4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート/ヘキサメチレンジイソシアネート/2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸/テトラエチレングリコール−80/20/60/40(モル比)のポリウレタン樹脂(重量平均分子量10.0万) 5.0g
・4−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物(ジアゾ樹脂)のドデシルベンゼンスルホン酸塩 1.2g
・スチレン/マレイン酸モノ−4−メチル−2−ペンチルエステル=50/50(モル比)の共重合体(重量平均分子量10.0万) 0.3g
・トリクレジルホスフェート 0.5g
・4−スルホフタル酸 0.1g
・85%リン酸 0.05g
・ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学製)の対アニオンをナフタレンスルホン酸に変えたもの 0.15g
・メガファックF−176(大日本インキ化学(株)製フッ素系界面活性剤) 0.3g
・メチルエチルケトン 35.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0g
・乳酸メチル 8.0g
・メタノール 35.0g
・純水 2.0g
【0042】
更にこの上に、下記に示すマット液を回転霧化静電塗装機を用いて霧状塗布し、蒸気を吹き付けた後、60℃の温風を吹き付けて乾燥させ、マット層を得た。マット層の塗布量は150mg/m2であり、付着したマットの数は70〜150個/mm2、高さは3〜8μm、直径は30〜180μmであった。
【0043】
マット液
・メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム=70/15/15(モル比)の共重合体(重量平均分子量20000) 15.0g
・純水 85.0g
・タートラゾン 0.1g
このようにして得られた感光性平版印刷版を、感光性平版印刷版[A]とする。
【0044】
〔感光性平版印刷版作成例2〕
作成例1において、機械的粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で10g/m2になるように、電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で2.0g/m2になるように、それぞれ実施した以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[B]を得た。
【0045】
〔感光性平版印刷版作成例3〕
作成例1において、電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で3.0g/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[C]を得た。
【0046】
〔感光性平版印刷版作成例4〕
作成例1において、電解粗面化を、アルミニウムを0.5%含有する1%塩酸水溶液を用いて実施し、電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で0.8g/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[D]を得た。
【0047】
〔感光性平版印刷版作成例5〕
作成例4において、機械的粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で10g/m2になるように、電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で1.5g/m2になるように、それぞれ実施した以外は作成例4と同様にし、感光性平版印刷版[E]を得た。
【0048】
〔感光性平版印刷版作成例6〕
作成例1において、硝酸水溶液で電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で0.8g/m2になるように実施し、その後引き続きアルミニウムを0.5%含有する1%塩酸水溶液を用いて作成例1と、同様に電解粗面化を行い、その後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で0.6g/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[F]を得た。
【0049】
〔感光性平版印刷版作成例7〕
作成例1において、ナイロンブラシとパミストンによる機械的粗面化処理を行わなかったことと、電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で2.0g/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[G]を得た。
【0050】
〔感光性平版印刷版作成例8〕
作成例4において、ナイロンブラシとパミストンによる機械的粗面化処理を行わなかったことと、塩酸水溶液で電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で2.0g/m2になるように、それぞれ実施した以外は作成例4と同様にし、感光性平版印刷版[H]を得た。
【0051】
〔感光性平版印刷版作成例9〕
作成例1において、機械的粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で30g/m2になるように実施したことと、硝酸水溶液による電解粗面化処理を行わなかったこと以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[I]を得た。
【0052】
〔感光性平版印刷版作成例10〕
作成例1において、感光液として下記組成の感光液(2)を使用し、乾燥を110℃で60秒、乾燥後の感光層塗布重量を1.0g/m2とした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[J]を得た。
【0053】
感光液(2)
・メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/アクリロニトリル/メタクリル酸/p−ヒドロキシスチレン=10/10/30/30/15/5(モル比)の共重合体(重量平均分量10.0万) 5.0g
・4−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物(ジアゾ樹脂)のドデシルベンゼンスルホン酸塩 0.8g
・4−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物(ジアゾ樹脂)のヘキサフルオロリン酸塩 0.5g
・スチレン/マレイン酸モノ−4−メチル−2−ペンチルエステル=50/50(モル比)の共重合体(重量平均分子量10.0万) 0.3g
・トリクレジルホスフェート 0.5g
・4−スルホフタル酸 0.1g
・85%リン酸 0.05g
・ビクトリアピュアブルーBOH(保土ヶ谷化学製)の対アニオンをナフタレンスルホン酸に変えたもの 0.15g
・メガファックF−176(大日本インキ化学(株)製フッ素系界面活性剤) 0.3g
・メチルエチルケン 35.0g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 20.0g
・乳酸メチル 8.0g
・メタノール 35.0g
・純水 2.0g
【0054】
〔感光性平版印刷作成比較例1〕
作成例1において電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で0.4g/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[K]を得た。
【0055】
〔感光性平版印刷作成比較例2〕
作成例4において塩酸水溶液で電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で0.3/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[L]を得た。
【0056】
〔感光性平版印刷作成比較例3〕
作成例7において電解粗面化した後の水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング量をアルミニウムの溶解量で0.8g/m2になるようにした以外は作成例1と同様にし、感光性平版印刷版[M]を得た。
【0057】
〔裁断例1〕
作成例、比較作成例で得られた厚さ0.30mm、幅840mmのコイル状の感光性平版印刷版を、図1のスリッターと図2の裁断刀を用いて、上側裁断刃と下側裁断刃の隙間(D)を0μmに、かみ込み量(S)を300μmに設定して、幅800mm、長さ1100mmになるように裁断した。この裁断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、切り欠け部の発生はなかった。
これらの裁断した感光性平版印刷版を、次に示す方法で露光、現像、不感脂化処理を行うことで、印刷版を得た。
【0058】
感光性平版印刷版の上に網点ネガフィルムを重ね米国ヌアーク社製プリンタ、FT26V2UPNS(光源:2kwメタルハライドランプ)で100カウント露光した。次に富士写真フイルム(株)社製自動現像機STABLON90NSに、富士写真フイルム(株)社製現像液DN−6および富士写真フイルム(株)社製ガム液GN−2、水道水を用い自動現像機に定められた割合で希釈した液を入れ準備し、露光した感光性平版印刷版をこの自動現像機に通すことで現像処理と不感脂化処理を同時に行い、印刷版を得た。
【0059】
ここで得られた印刷版の検版性を測定した。Macbeth反射濃度計を用い白黒モードで画像部分と非画像部分の濃度を測定し、その値の差を検版性とした。数値が大きいほど検版性が良好であることを示す。
また目視での見やすさを、見やすい=3、普通=2、見にくい=1で表現した。
この印刷版をオフセット輪転印刷機に取り付け、インキとしてVantean Eco(東洋インキ(株)製、大豆油を使用した新聞用インキ)を、湿し水としてLRH−中性湿し水NP(東洋インキ製造(株)製)をそれぞれ使用して、100000枚/時の速度で印刷した。
ここで、20000枚印刷した段階で印刷版の端部に対応する印刷紙面の汚れを確認した。印刷版の端部に対応する印刷紙面の汚れが発生していなかったものを「なし」、汚れがわずかに発生していたものを「わずか」、汚れが明らかに発生していたものを「あり」、著しい汚れが発生したものを「著しい」と判定した。
【0060】
〔裁断例2〕
裁断例1において、上側裁断刃と下側裁断刃の隙間(D)を30μmに、かみ込み量(S)を500μmに設定して裁断した以外は裁断例1と同様に印刷物の評価まで実施した。この裁断方法の裁断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、裁断例1とは異なり上に凸の切り欠け部ができているのが確認された。
【0061】
〔裁断例3〕
裁断例1において、上側裁断刃と下側裁断刃の隙間(D)を50μmに、かみ込み量(S)を250μmに設定して裁断した以外は裁断例1と同様に印刷物の評価まで実施した。この裁断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、裁断例2と同様に上に凸の切り欠け部ができているのが確認された。
感光性平版印刷版[A]〜[M]の支持体物性値、および裁断例1〜3での印刷物評価の結果を表1に示した。
【0062】
支持体白色度が0.28以下である感光性平版印刷版[A]〜[J]は、良好な検版性を示した。また印刷した時の端部に相当する部分の汚れについては、裁断面に切り欠け部がない場合でも汚れの発生が軽度であり、切り欠け部が存在する場合は汚れが発生しなかった。
それに対し、支持体白色度が0.28より大きい感光性平版印刷版[K]〜[M]は、検版性が劣っている。また印刷した時の端部に相当する部分の汚れについては、切り欠け部が存在する場合でも汚れが発生しており、裁断面に切り欠け部がない場合では著しく汚れが発生した。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、検版性に優れかつ印刷時の端部に汚れが発生しない、特に新聞印刷に好適な感光性平版印刷版が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】スリッター装置を示す図である。
【図2】スリッター装置の裁断部の断面図である。
【図3】図2のA部の拡大図を示す。
【図4】裁断された支持体断面を示す。
【符号の説明】
10a,10b:上側裁断刃
11:回転軸
20a,20b:下側裁断刃
21:回転軸
30:裁断する平版印刷版
Claims (3)
- 粗面化処理、陽極酸化処理、及び親水化処理がこの順に施されておりかつ白色度が0.28以下であるアルミニウム支持体上に、アルカリ性現像液で現像可能なジアゾ樹脂含有感光層を有する感光性平版印刷版。
- 対向する少なくとも二方のへりの感光層側角部に切り欠け部が存在する請求項1記載の感光性平版印刷版。
- 粗面化処理、陽極酸化処理、及び親水化処理がこの順に施されておりかつ白色度が0.28以下であるアルミニウム支持体上に、アルカリ性現像液で現像可能なジアゾ樹脂含有感光層を有する感光性平版印刷版を、画像露光及び現像した後、大豆油インキを用いて印刷することを特徴とする平版印刷版の印刷方法。
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