JP3682822B2 - 平版印刷版 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は平版印刷版およびその製造方法に関するものであり、特に好適な使用形態として多色印刷装置に用いられる平版印刷用捨版に関するものである。捨版システムについては特開平3−175090号公報に詳述されている。
【0002】
【従来の技術】
特開平3−175090号公報には、PS版の感光層を全面除去し、捨版とした場合、感光層を完全には除去することが出来ず印刷汚れが起きたと記述されている。更に、これを解決する方法として、感光層が塗布されていなかったベース上にインキ付着防止用の保護膜が設けてなる捨版が提案されている。
しかしながら、このように前もって保護膜が設けられた捨版では印刷開始時、不必要なインキが付着したものが完全に除去されるのに必要な印版枚数(通常黒損と称される)が増大してしまう欠点を有しており、市場に全く受け入れられていない。黒損が増大してしまう理由は長期保管しても印刷汚れが発生しないように保護膜が通常PS版のガム引き量よりも非常に多いこと、および長期保管により、印刷時の湿し水への溶解性が劣化することによる。
このため市場には保護膜も全く設けられていないベースをPS版メーカーより供給され、これを印刷寸前にPS版と同様の親水化、ガム引きがなされて使用されている。このような捨版用未塗布板の欠点としては長期保管時に種々の汚染により、印刷汚れが発生しやすいことである。更にガム引きが完了するまでの取り扱いにより、キズつきやすいことである。
また、平版印刷用捨版として改善が要求される印刷汚れには、裁断辺部分に付着したインクで印刷紙面を汚してしまうという、いわゆる額縁汚れがあるが従来からの平版印刷用捨版には、全く対応されておらず、汚れの非常に劣るものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は長期保管しても印刷汚れが発生せず、額縁汚れを防止し、ガム引きが完了するまでの取り扱いによるキズがつきにくい白灯下で取扱うことが出来る平版印刷版およびその製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の前記目的は、下記の発明によって達成された。
1.二つ以上の版胴を有する多色印刷装置を用いて一部の版胴に画像を有する版を取り付け、残りの版胴に画像を有さない多色印刷用捨版を取り付けて印刷する平版印刷方法であって、該捨版が、親水性表面を有する金属支持体上に水溶性化合物からなる下塗層および水不溶性樹脂からなる非感光性樹脂層が設けられ、支持体の対向する2辺若しくは4辺の端部が20μmから100μmの裁断だれ高さを有する平版印刷版であることを特徴とする平版印刷方法。
本発明は、平版印刷版の端部の裁断だれ高さを20μm〜100μmとすることにより、印刷時の湿し水が端部まで均一に供給されること、および、端部においてインキローラーとの間隔が広がることにより本来非画像部でありインキが付着してはいけない端部への不必要なインキ付着を防止することになり額縁汚れが効果的に防止することができるものと考える。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の下塗層について説明する。
親水性表面に有する支持体には水溶性化合物の下塗を施す。
下塗りに用いられる水溶性化合物としては例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸およびエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸およびグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸およびグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、およびトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩、スルホン酸基を有する水溶性重合体等が好ましく用いられ、中でもスルホン酸基を有する水溶性重合体が特に好ましい。
【0006】
スルホン酸基を有する水溶性重合体は、スルホン酸基を有するモノマー単位の少なくとも一種を繰り返し単位として分子中に含む水溶性高分子化合物であり、例えば特公平4−9296号公報(第3欄22行〜第4欄41行)に記載のものが挙げられる。スルホン酸基を有するモノマー単位としては、例えばp−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、エチレンスルホン酸等か好ましく、これらを適宜1つまたは2つ以上が選択され重合されるかあるいは他のモノマーと共重合される。他のモノマーと共重合される場合、相手のモノマーはスルホン酸基を有するモノマーと共重合可能であればどの様なモノマーでもよい。具体例としては、例えばメチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、メチルメタクリレート/メチルアクリレート/p−スチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明の水溶性化合物の分子量範囲は、水可溶性である限り制限はないが、一般的な目安を示せば重量平均分子量約1000〜1000000の範囲が適当であり、好ましくは2000〜100000、最も好ましくは10000〜100000の範囲である。
【0007】
この下塗層は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなどもしくはそれらの混合溶剤に上記の化合物を溶解させ、支持体上に塗布、乾燥して設けることができる。
下塗層の乾燥後の被覆量は、10〜500mg/m2が適当であり、好ましくは50〜200mg/m2である。
下塗層が10mg/m2より少ないと印刷汚れ防止能力が不足する。下塗層が500mg/m2より多いと後で塗布される非感光性樹脂層の膜強度が低下し、取り扱いによるキズつき防止能力が低下する。
【0008】
下塗層に引き続いて、水不溶性の非感光性樹脂層が設けられる。樹脂として好ましいものは、酸含量0.1〜3.0meq/g、好ましくは0.2〜2.0meq/gであり、実質的に水不溶性(すなわち、中性または酸性水溶液に不溶性)で、皮膜形成性を有する有機高分子化合物であるが、アルカリ水溶液に溶解または膨潤することができるものが好ましい。尚、酸含量0.1meq/g未満では溶解が困難であり、3.0meq/gを超えると特に高温高湿保管時の膜強度が著しく弱くなる。非感光性樹脂の分子量は、塗布溶媒に溶解およびアルカリ水溶液に溶解または膨潤する限り制限はないが、重量平均分子量で1000〜1000000、好ましくは10000〜500000である。分子量が低いと膜強度が弱く、分子量が高いと溶解性が劣化する。
【0009】
特に好適な非感光性樹脂としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば特開昭50−118802号公報に記載されている様な2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリル、アクリル酸またはメタクリル酸および必要に応じて他の共重合可能なモノマーとの多元共重合体、特開昭53−120903号公報に記載されている様な末端がヒドロキシ基であり、かつジカルボン酸エステル残基を含む基でエステル化されたアクリル酸またはメタクリル酸、アクリル酸、またはメタクリル酸及び必要に応じて他の共重合可能なモノマーとの多元共重合体、特開昭54−98614号公報に記載されている様な芳香族性水酸基を末端に有する単量体(例えばN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドなど)、アクリル酸またはメタクリル酸および必要に応じて他の共重合可能なモノマーとの多元共重合体、特開昭56−4144号公報に記載されている様なアルキルアクリレート、アクリロニトリルまたはメタクリロニトリルおよび不飽和カルボン酸よりなる多元共重合体をあげることが出来る。この他、酸性ポリビニルアルコール誘導体や酸性セルロース誘導体も有用である。またポリビニルアセタールやポリウレタンをアルカリ可溶化した特開昭54−19773号、特開昭57−94747号、同60−182437号、同62−58242号、同62−123453号記載の結合剤も有用であり、ポリウレタンをアルカリ可溶化した樹脂が膜強度が高く特に好ましい。
【0010】
非感光性樹脂層組成物は公知の種々の塗布溶剤に溶解し、親水性表面及び下塗層を有するアルミニウム支持体上に乾燥塗布重量が0.2〜3.0g/m2となる様に、好ましくは0.3〜1.5g/m2となる様に塗布し乾燥して、平版印刷用捨版を得ることができる。塗布量が0.2g/m2より少ないとキズつき防止能力が不足し、逆に3.0g/m2以上ではキズつき防止能力として十分であり、溶解除去時の溶解スピードが低下したり溶解液の処理能力を低下させてしまう。塗布する際の樹脂層組成物の固形分濃度は1.0〜50重量%が適当であり、好ましくは2.0〜30重量%が適当である。支持体上に樹脂組成物を塗布する方法としては従来公知の方法、たとえばロールコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、回転塗布等の方法を用いることができる。塗布された樹脂層組成物溶液は50〜150℃で乾燥させるのが好ましい。乾燥方法は、始め温度を低くして予備乾燥した後、高温で乾燥させても良いし、直接高温度で乾燥させても良い。
【0011】
非感光性樹脂層には種々の添加剤、例えば、塗布層を判別するための色素、溶解促進のための可塑剤または低分子酸化合物、フッ素系界面活性剤等の塗布面質改良剤、表面マット化のためのマット剤などを添加することが出来る。
特に、ジピコリン酸、リンゴ酸、スルホサリチル酸、スルホフタル酸、トリカルバニル酸等のカルボン酸基またはスルホン酸基を含有する低分子酸化合物は、溶解促進作用と共に、長期保管時の印刷汚れ防止作用があり好ましい。また、フッ素系界面活性剤は、塗布面質改良効果のみならず、キズつきにくさ向上効果があり好ましい。低分子酸化合物は、非感光性樹脂層に対して、1〜20wt%、フッ素系界面活性剤は0.1〜5wt%添加される。
【0012】
非感光層上には相互に独立して設けられた突起物により構成されるマット層を設けることが好ましい。マット層の目的はキズつきにくさ向上効果及び版材保管時版材どうしが密着してしまうことを防止することである。
マット層の塗布方法としては、特開昭55−12974号公報に記載されているパウダリングされた固体粉末を熱融着する方法、特開昭58−182636号公報に記載されているポリマー含有水をスプレーし乾燥させる方法などがあり、いずれの方法をも用いうる。マット層は樹脂層を除去するためのアルカリ水溶液に溶解するか、あるいはこれにより除去可能な物質から構成されることが望ましい。
【0013】
このように作成される平版印刷用捨版は裁断辺に付着したインクで印刷紙面を汚すという額縁汚れを防止する目的で支持体の対向する2辺若しくは4辺の端部の裁断だれ高さが20μmから100μmであり、その裁断面の粗さが最大高さ平均が1.2μmから12μmであるように裁断する。ここでいう裁断面の粗さの最大高さ平均値とは、裁断面に現れる2つの面(刃で剪断される剪断面、亀裂が進展してできる破断面)の各々の粗さの最大高さをその裁断面における割合で加重平均したものである。この平均値をSとすると、
S=剪断面の粗さ×(剪断面/裁断面)+破断面の粗さ×(破断面/剪断面)の式で表すことができる。このような裁断は処理前のアルミ板、表面処理後の支持体、下塗層および樹脂層を設けた後いずれの段階で行なってもよい。
【0014】
また、陽極酸化皮膜を設け後に裁断する場合、裁断によって陽極酸化皮膜にクラックを生じてしまうが、この際に発生するクラックが該平版印刷用捨版の端部から内側に25μm以上離れた位置で発生するようにするのが好ましい。さらに、クラック等の表面欠陥部に不感脂化処理を行うことで、インキ付着を防止あるいは抑制する。このクラックにより現れた新生面は経時とともに表面が汚染され親油性を増し、インクが付着しやすくなる。実験によって種々のインクを用いて印刷を行ったところ、インクがクラック汚れとして発生することが確認された。特にクラック汚れは、クラックの位置に左右され、版の端部にクラックが集中している場合に汚れやすくなる。一方、刃の形状、隙間を最適化することで、だれ形状による変形が一部に集中せず分散し、かつ、クラックの最大開口幅が0.5μm以上、好ましくは0.5μm以上10μm以下のものが端部から内側に25μm以内になく、25μmより内側の版面に分布している場合は、この汚れが軽減されることが判明した。さらに好ましくは、この25μm以内の部分を不感脂化或いは経時による汚染防止の処理を行うことによりクラック汚れの出やすいインクを用いた印刷でもクラック汚れが出ないことが判明した。だれ形状で得られる線状汚れに加えて、このクラック汚れを防止することにより額縁汚れを大幅に減少させることができる。
【0015】
このような裁断形状を設けるには、該平版印刷用捨版を所定サイズに裁断する上刃と下刃との隙間を、30μmから100μmの間に設定するのがよい。
【0016】
このような条件で裁断すれば、平版印刷用捨版の裁断辺に発生するだれを0.1mmから0.3mmの巾で20μmから100μmのだれ高さとし、また下面(印刷しない面)に発生するバリを50μm以下にすることが出来る。また、裁断面の粗さを最大高さ平均1.2〜12μmにすることも出来、親水性が向上し額縁汚れ減少に効果がある。
【0017】
だれ高さを高くするに従い、額縁汚れ減少に効果があるが、だれ高さが100μmを超えてしまうと、下面のバリ高さが50μmを超えてしまうので、この平版印刷用捨版を輪転機に固着した時の平版印刷用捨版の平坦度が悪化する。したがって、印刷に悪影響を与えてしまう。また、裁断面の粗さの最大高さが0.1μm程度であると、良好な親水性を得ることができず、額縁汚れを減少させることはできない。また、粗さを粗くするにはクリアランスを拡げたり、切刃先の表面粗さを粗くしたりすることがあげられるが、過度に条件を変更するとクリアランスが100μmを超えると前述のように、大きなバリが発生したり、切刃先の表面粗さが3S以上になると切り粉が発生したりする等、その他の弊害が発生する。
【0018】
良好な裁断面を得るための手段として、回転平刃によるスリッタ装置で、上刃と下刃との軸方向隙間(クリアランス)を通常最適条件と言われている板厚の5〜10%よりも広げた値(例えば、板厚0.3mmなら30μmから100μm)とする。刃先の表面仕上げは0.4S程度が好ましい。また、上刃と下刃とをバネで押し付け通常ゼロクリアランスと言われているゲーベルタイプのスリッタを使用しても、どちらかの刃先に30μmから100μmの切り欠きを設けることで前記裁断面が得られる。
【0019】
親水性表面を有する金属支持体としては、アルミニウム及びアルミニウム被覆された複合支持体が好ましく、さらに鉄を0.1〜0.5重量%、ケイ素を0.03〜0.3重量%、銅を0.001〜0.03重量%、更にチタンを0.002〜0.1重量%含有する1Sアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム材の表面は、保水性を高める目的で表面処理されていることが望ましい。アルカリ好ましくは、1〜30重量%の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等の水溶液に、20〜80℃の温度で5秒〜250秒間浸漬してエッチングするのもよい。エッチング浴には、アルミニウムイオンをアルカリの5分の1程度加えても良い。ついで、10〜30重量%硝酸または硫酸水溶液に20〜70℃の温度で5秒〜25秒間浸漬して、アルカリエッチング後の中和及びマット除去を行う。例えば、粗面化方法として、一般に公知のブラシ研磨法、ボール研磨法、電解エッチング、化学的エッチング、液体ホーニング、サンドブラスト等の方法およびこれらの組合せが挙げられ、好ましくはブラシ研磨法、電解エッチング、化学的エッチングおよび液体ホーニングが挙げられ、これらのうちで、特に電解エッチングの使用を含む粗面化方法が好ましい。さらに、特開昭54−63902号公報に記載されているようにブラシ研磨した後、電解エッチングする方法も好ましい。
【0020】
また、電解エッチングの際に用いられる電解浴としては、酸、アルカリまたはそれらの塩を含む水溶液あるいは有機溶剤を含む水性溶液が用いられ、これらのうちで、特に塩酸、硝酸またはそれらの塩を含む電解液が好ましい。
ブラシ研磨はパミストン−水懸濁液とナイロンブラシとを用いるのが好ましく、平均表面粗さを0.25〜0.9μmとすることが好ましい。
【0021】
電解エッチング処理に使用される電解液は塩酸、または硝酸の水溶液であり、濃度は0.01〜3重量%の範囲で使用することが好ましく、0.05〜2.5重量%であれば更に好ましい。
また、この電解液には必要に応じて硝酸塩、塩化物、モノアミン類、ジアミン類、アルデヒド類、リン酸、クロム酸、ホウ酸、シュウ酸アンモニウム塩等の腐蝕抑制材(または安定化剤)、砂目の均一化剤などを加えることが出来る。また、電解液中には、適当量(1〜10g/リットル)のアルミニウムイオンを含んでいてもよい。
【0022】
電解エッチング処理は、通常10〜60℃の電解液の温度で行なわれる。この際に使用される交流電流は、正負の極性が交互に交換されたものであれば、矩形波、台形波、正弦波いずれのものも用いることができ、通常の適用交流の単相及び三相交流電流を用いることができる。また電流密度は、5〜100A/dm2で、10〜300秒間処理することが望ましい。
【0023】
本発明におけるアルミニウム合金支持体の表面粗さは、電気量によって調整し、0.2〜0.8μmとする。
さらに、粗面化処理の施されたアルミニウム板は、必要に応じて酸またはアルカリの水溶液にてデスマット処理される。
このように砂目立てされたアルミニウム合金は、10〜50重量%の熱硫酸(40〜60℃)や希薄なアルカリ(水酸化ナトリウム等)により、表面に付着したスマットの除去及びエッチング(好ましくは0.01〜2.0g/m2の範囲で)されるのが好ましい。アルカリでスマットの除去及びエッチングした場合は、引き続いて洗浄のため酸(硝酸または硫酸)に浸漬して中和する。
【0024】
表面のスマット除去を行った後、陽極酸化皮膜が設けられる。陽極酸化法は、従来よりよく知られている方法を用いることが出来るが、硫酸が最も有用な電解液として用いられる。それに次いで、リン酸もまた有用な電解液である。さらに特開昭55−28400号公報に開示されている硫酸とリン酸の混酸もまた有用である。
【0025】
硫酸法は通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。硫酸の濃度5〜30重量%、20〜60℃の温度範囲で5〜250秒間電解処理されて、表面に1〜10g/m2の酸化皮膜が設けられる。この電解液には、アルミニウムイオンが含まれていることが好ましい。さらにこのとき電流密度は1〜20A/dm2 が好ましい。
リン酸法の場合には、5〜50重量%のリン酸濃度、30〜60℃の温度で10〜300秒間、1〜15A/dm2の電流密度で処理される。
【0026】
また、更に必要に応じて米国特許第2,714,066号明細書や米国特許第3,181,461号明細書に記載されている珪酸塩(ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム)処理、米国特許第2,946,638号明細書に記載されている弗化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号明細書に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書や英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号や特開昭58−18291号の各公報に記載されている親水性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理によって親水化処理を行うことが出来る。珪酸塩処理は親水化能力が高くかつ処理も簡便であるため、特に好ましい。
【0027】
その他の親水化処理方法としては米国特許第3,658,662号明細書に記載されているシリケート電着をも挙げることが出来る。
また、砂目立て処理及び陽極酸化後、封孔処理を施すことが出来る。かかる封孔処理は熱水及び無機塩または有機塩を含む熱水溶液への浸漬ならびに水蒸気浴などによって行われる。
【0028】
親水性表面層及び下塗層を有する支持体上に塗布され乾燥された非感光性樹脂層を有する平版印刷用捨版は、アルカリ水溶液で溶解することにより捨版が得られる。
【0029】
アルカリ水溶液としては、特開昭51−77401号、同51−80228号、同53−44202号や同55−52054号の各公報に記載されているような感光性平版印刷版用現像液であって、pH=8〜13、水が75重量%以上含まれるものが好ましい。必要により水に対する溶解度が常温で10重量%以下の有機溶媒(ベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アルカリ剤(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム)、アニオン性界面活性剤(芳香族スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩)、ノニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー)、汚れ防止剤(亜硫酸ナトリウム、スルホピラゾロンのナトリウム塩)や硬水軟化剤(エチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム塩、ニトリル三酢酸三ナトリウム塩)を加えることができる。
【0030】
しかし、有機溶媒等を含有すると、作業時の毒性、臭気等の衛生上の問題、火炎、ガス爆発等の安全性の問題、泡の発生等の作業性の問題、廃液による公害等の問題、コストの問題等が発生するため、実質上有機溶媒を含まないものが更に好ましい。
このような、実質上有機溶媒を含まない水性アルカリ現像液として、例えば特開昭59−84241号、特開昭57−192952号及び特開昭62−24263号公報等に記載されている。現像液組成物を使用することが出来る。
【0031】
本発明の平版印刷用捨版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、同59−58431号の各公報に記載されている方法で製版処理しても良い。即ち、現像処理後、水洗してから不感脂化処理、またはそのまま不感脂化処理、または酸を含む水溶液での処理、または酸を含む水溶液で処理後、不感脂化処理を施してもよい。
【0032】
さらに、この種の平版印刷用捨版の現像工程では処理量に応じてアルカリ水溶液が消費されアルカリ濃度が減少したり、あるいは、自動現像機の長期間運転により空気によってアルカリ濃度が減少するため処理能力が低下するが、その際、特開昭54−62004号公報に記載のように補充液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。
【0033】
また、上記のような製版処理は、特開昭2−7054号、同2−32357号の各公報に記載されているような自動現像機で行うことが好ましい。
なお製版工程の最終工程で所望により塗布される不感脂化ガムとしては特公昭62−16834号、同62−25118号、同63−52600号、特開昭62−7595号、同62−11693号、同62−83194号の各公報に記載されているものが好ましい。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3)
評価材として以下の平版印刷用捨版を作成、使用した。
99.5重量%アルミニウムに、銅を0.01重量%、チタンを0.03重量%、鉄を0.3重量%、ケイ素を0.1重量%含有するJISA1050アルミニウム材の厚み0.30mm圧延板を、400メッシュのパミストン(共立窯業製)の20重量%水性懸濁液と、回転ナイロンブラシ(6,10−ナイロン)とを用いてその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。
【0035】
これを15重量%水酸化ナトリウム水溶液(アルミニウム4.5重量%含有)に浸漬してアルミニウムの溶解量が5g/m2になるようにエッチングした後、流水で水洗した。さらに、1重量%硝酸で中和し、次に0.7重量%硝酸水溶液(アルミニウム0.5重量%含有)中で、陽極時電圧10.5ボルト、陰極時電圧9.3ボルトの矩形波交番波形電圧(電流比r=0.90、特公昭58−5796号公報実施例に記載されている電流波形)を用いて160クーロン/dm2の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。水洗後、35℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、アルミニウム溶解量が1g/m2になるようにエッチングした後、水洗した。次に、50℃30重量%の硫酸水溶液中に浸漬し、デスマットした後、水洗した。
【0036】
さらに、35℃の硫酸20重量%水溶液(アルミニウム0.8重量%含有)中で直流電流を用いて、多孔性陽極酸化皮膜形成処理を行った。すなわち電流密度13A/dm2 で電解を行い、電解時間の調節により陽極酸化皮膜重量2.7gとした。この支持体を水洗後、70℃のケイ酸ナトリウムの3重量%水溶液に30秒間浸漬処理し、水洗乾燥した。
【0037】
以上のようにして得られたアルミニウム支持体はマクベスRD920反射濃度計で測定した反射濃度は0.30で中心線平均粗さは0.58μmであった。
次に、メチルメタクリレート/エチルアクリレート/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(仕込重量比65/20/15)共重合体の一部をナトリウム塩としたものを1.0重量%メタノール/水=90/10溶液とし、バーコーターにより乾燥後の塗布量が0.1g/m2になるように塗布した。
【0038】
更に下記に示す組成物をバーコーターを用いて塗布し、110℃で45秒間乾燥させた。乾燥塗布量は0.7g/m2であった。
(組成物1)
・アルカリ可溶性ウレタンバインダー 5.0g
(重量平均分子量85,000、酸含量1.64meq/g )
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート 37.5モル%
ヘキサメチレンジイソシアネート 12.5
2,2ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸 32.5
テトラエチレングリコール 17.5
・ビクトリアピュアブルーBOH 0.05g
・スルホフタル酸 0.3g
・FC−430(3M社製フッ素系界面活性剤) 0.05g
・メタノール 30g
・メチルエチルケトン 30g
・1−メトキシ−2−プロパノール 25g
・乳酸メチル 12g
【0039】
更にマット層形成用樹脂液として、先に下塗層に使用した共重合体を12重量%水溶液とし回転霧化静電塗装材で回転数25000rpm 、送液量4ml/ 分、印加電圧−90kV周囲環境25℃50%RHとし、塗布後2.5秒で塗布面に蒸気を吹き付けて湿潤させついで湿潤した3秒後に温度60℃湿度10%RHの温風を5秒間吹き付けて乾燥させたマットの高さは平均6μm、大きさは平均約30μm、塗布量は150mg/m2 であった。かくして得られた板厚0.3mm、幅820mmのコイル状の版を幅400mmとなるようにスリッター装置にて裁断したのち、カット長1100mmのシートに切断した。
【0040】
下刃は、各刃先角が90度の平刃を用いた。上刃は耳屑を保持するためのスペーサとの干渉を防ぐ為、先端0.5mmを残し60度で逃げを設けてある。また、耳保持スペーサは刃と略同径で角部にC0.5の面取りを施してある。スペーサと刃との隙間は3mmとし、耳が狭い場合でも保持できるようにしている。
【0041】
刃径はφ160mmを用いた。裁断面のだれ形状はクリアランスに影響され、ひいては額縁汚れに影響する為、クリアランスを変更して裁断した。その条件は表1に示す。上下刃の上下方向ラップ量は板厚の30%〜150%に変化させても形状に大きな差異がみられなかったので100%一定で加工した。
捨版として印刷評価を行なうために、製作したシートを800H(富士写真フイルム(株)製自動現像機)で、DN−3C(富士写真フイルム(株)製ネガ型PS版用アルカリ水溶液系現像液)を水で1:1に稀釈した液にて溶出し、ただちにFN−2(富士写真フイルム(株)製ガム)を水で1:1に稀釈した液を塗り、乾燥した。この捨版をオフセット輪転印刷材にて、坂田インキ(株)の新聞用インキと東洋インキ(株)の東洋アルキー湿し水を用いて100,000枚/時のスピードで20,000枚印刷し、汚れ状況を評価した。更に比較のための版も作成した。
【0042】
(比較例1)
塗布層を全く設けなかったもので、塗布層以外は実施例1と同様にした。印刷したところ、ガム処理にするまでの取り扱いでついたと思われるキズ汚れが一部の版で発生した。又、合紙を重ねて長期(6ヶ月)保管及び40℃80%RH6日間保管の版材で合紙のシワ状汚れが発生した。
(比較例2)
比較例1においてアラビアゴムを0.5g/m2塗布乾燥後実施例1と同様の裁断を行ない、後処理することなく、捨版として印刷した。長期(6ヶ月)保管及び40℃80%RH6日間保管後の版材で印刷スタート時の黒損が300枚と劣る結果であった。なお実施例1同様800Hで溶出、ガム引きを行なった版材の黒損は約100枚であった。
(比較例3、4)
クリアランス幅を変更した以外はすべて実施例1と同様とした。印刷した結果、取り扱い等によるキズ、汚れは全く発生がなかった。長期(6ヶ月)保管及び40℃80%RH6日間保管後の印刷を含め、黒損が約100枚、地汚れの発生がなく、非常に良好な結果であった。
【0043】
更に額縁汚れについて表1に示すが、比較例3、4では額縁汚れが非常に劣る(×)、又は劣る(△×)のに対して、実施例1〜3は額縁汚れが全く発生がなく(○)、又はほとんど(○△)発生がなく、捨版として非常に良好な結果を得た。
本発明は、非感光性であるため、白灯下で取扱い、保管しても全く問題が出なかった。
【0044】
【表1】
Figure 0003682822
【0045】
【発明の効果】
本発明により、長期間保管しても印刷汚れが発生せず、額縁汚れを防止し、ガム引きが完了するまでの取り扱いによるキズがつきにくい白灯火で取り扱うことができる平版印刷版を提供することができる。

Claims (1)

  1. 二つ以上の版胴を有する多色印刷装置を用いて一部の版胴に画像を有する版を取り付け、残りの版胴に画像を有さない多色印刷用捨版を取り付けて印刷する平版印刷方法であって、該捨版が、親水性表面を有する金属支持体上に水溶性化合物からなる下塗層および水不溶性樹脂からなる非感光性樹脂層が設けられ、支持体の対向する2辺若しくは4辺の端部が20μmから100μmの裁断だれ高さを有する平版印刷版であることを特徴とする平版印刷方法。
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