JP2004099491A - ジアルキルペルオキシドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高選択率、高収率かつ生産性に優れたジアルキルペルオキシドの製造方法を提供する。
【解決手段】アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法。アルコール化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法。アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物又は過酸化水素の合計モル流量に対するゼオライト系固体酸触媒の重量の比が10〜1000g・hr/molの範囲にあるジアルキルペルオキシドの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法。アルコール化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法。アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物又は過酸化水素の合計モル流量に対するゼオライト系固体酸触媒の重量の比が10〜1000g・hr/molの範囲にあるジアルキルペルオキシドの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高選択率、高収率かつ生産性に優れたジアルキルペルオキシドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物、またはアルコール化合物と過酸化水素とを反応させるジアルキルペルオキシドの工業的な製造方法においては、硫酸が触媒として用いられてきた。しかし、その硫酸はステンレス反応器材の腐食を引き起こすこと、また反応後にそのまま廃液中に残るため、その廃液処理が必要であることが問題となっていた。
近年、これらの問題点を解決する方法としてゼオライト系固体酸触媒やスルホン酸系イオン交換樹脂を用いる製造方法が開示された。
【0003】
例えば、tert−ブチルアルコールとtert−ブチルヒドロペルオキシドとを反応させることによりジ−(tert−ブチル)ペルオキシドを製造する際、Y型ゼオライト固体酸触媒の存在下に、バッチ反応システム等で行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、tert−ブチルアルコールとtert−ブチルヒドロペルオキシドとを反応させることによりジ−(tert−ブチル)ペルオキシドを製造する際、SiO2/Al2O3のモル比が23〜26であるβ型ゼオライト固体酸触媒の存在下に、バッチ反応システム等で行う方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−149715号公報(第3頁)
【特許文献2】
米国特許5488179号明細書(第4頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に開示された方法では、いずれもバッチ反応システムであり、また触媒と基質との接触効率が悪いため、ジアルキルペルオキシドの収率が低く、また長時間の反応を必要とするため生産性が低いという問題点があった。
また、流通反応による連続製造の可能性が示唆されているものの高選択率、高収率かつ生産性に優れる具体的な反応方法については開示されていない。
また、イオン交換樹脂は副生する水による触媒作用の失活や劣化という問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、高選択率、高収率かつ生産性に優れたジアルキルペルオキシドの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物とを反応させるジアルキルペルオキシドの製造方法において、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法である。
第2の発明は、アルコール化合物と過酸化水素とを反応させるジアルキルペルオキシドの製造方法において、アルコール化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法である。
【0008】
第3の発明は、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物又は過酸化水素の合計モル流量に対するゼオライト系固体酸触媒の重量の比が10〜1000g・hr/molの範囲にある第1又は第2の発明のジアルキルペルオキシドの製造方法である。
第4の発明は、反応温度が30〜120℃の範囲にある第1〜3のいずれかの発明のジアルキルペルオキシドの製造方法である。
第5の発明は、ゼオライト系固体酸触媒がβ型であり、かつのSiO2/Al2O3モル比が30〜280の範囲にあるゼオライト系固体酸触媒である第1〜4のいずれかの発明のジアルキルペルオキシドの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物、またはアルコール化合物と過酸化水素とをゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法である。
【0010】
本発明において、製造されるジアルキルペルオキシドは、置換基として芳香族基を有するジアルキルペルオキシドを含めた公知のジアルキルペルオキシドの全てである。
【0011】
その具体例としては、例えばジ(tert−ブチル)ペルオキシド、ジ(tert−アミル)ペルオキシド、ビス(2−メチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(3−メチル−3−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2,4,4−トリメチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2−シクロヘキシル−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−メチル−2−ウンデシル)ペルオキシド、ビス(2−フェニル−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(4−メチルフェニル)−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(4−イソプロピルフェニル)−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(3−クロロフェニル)−2−プロピル)ペルオキシド、tert−ブチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−(4−メチルフェニル)−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−(4−イソプロピルフェニル)−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−(3−クロロフェニル)−2−プロピルペルオキド、tert−アミル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、2−メチル−2ペンチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−メチル−2−ペンチルペルオキド、tert−ブチル−3−メチル−3−ペンチルペルオキド、tert−ブチル−(2,4,4−トリメチル−2ペンチル)ペルオキシド、tert−アミル−2−メチル−2−ペンチルペルオキド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0012】
これらの中で、製造原料調達の容易さの点から、ジ(tert−ブチル)ペルオキド、ジ(t−アミル)ペルオキシド、ビス(2−メチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2,4,4−トリメチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2−シクロヘキシル−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−フェニル−2−プロピル)ペルオキシド、tert−ブチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、tert−アミル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、2−メチル−2−ペンチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼンが本発明の製造方法により適している。
【0013】
本発明で原料とするアルコール化合物としては、具体的には、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンチルアルコール、2,4,4−トリメチル−2−ペンチルアルコール、2−シクロヘキシル−2−プロピルアルコール、2−メチル−2−ウンデシルアルコール、2−フェニル−2−プロピルアルコール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキシンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンなどが好ましく挙げられる。
【0014】
これらの中で、原料調達の容易さの点から、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンチルアルコール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキシンジオール及び1,3−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンがより好ましい。
【0015】
本発明で原料とする有機ヒドロペルオキシド化合物としては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2−メチル−2−ペンチルヒドロペルオキシド、2,4,4−トリメチル−2−ペンチルヒドロペルオキシド、2−シクロヘキシル−2−プロピルヒドロペルオキシド、2−メチル−2−ウンデシルヒドロペルオキシド、2−フェニル−2−プロピルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(2−ヒドロペルオキシ−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−ヒドロペルオキシ−2−プロピル)ベンゼンなどが好ましく挙げられる。
【0016】
これらの中で、原料調達の容易さの点から、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2−メチル−2−ペンチルヒドロペルオキシド、2−フェニル−2−プロピルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)−3−ヘキシン及び1,3−ビス(2−ヒドロペルオキシ−2−プロピル)ベンゼンがより好ましい。
【0017】
本発明において、有機ヒドロペルオキシド化合物とアルコール化合物を含む原料混合液を、ゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させるとき、原料混合液中有機ヒドロペルオキシド化合物に対するアルコール化合物の配合比率(アルコール化合物/有機ヒドロペルオキシド化合物、モル比)は0.5〜4が好ましく、より好ましくは0.8〜2の範囲である。
配合比率が0.5未満では、有機ヒドロペルオキシド化合物に対する収率が低下し、また、配合比率が4を超える場合には過剰分のアルコール系化合物を除去する操作に長時間を要する傾向にあるため好ましくない。
【0018】
さらに、安全性の観点からは、原料混合液にさらに水分を含有させた方が好ましい。即ち、原料混合液中に占める水の量は、50重量%以下が好ましく、原料混合液が触媒層に接触する段階で混合液の組成が均一な状態である点から、1〜30重量%がより好ましい。
原料混合液中に占める水の量が50重量%を超える場合には、安全性という点では優れるものの製造効率が低下する傾向にある。
【0019】
本発明において、有機ヒドロペルオキシド化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させるとき、原料混合液中、過酸化水素に対するアルコール化合物の配合比率(アルコール化合物/過酸化水素、モル比)は0.1〜6が好ましく、より好ましくは0.3〜3の範囲である。
配合比率が0.1未満では、アルコール系化合物に対する収率が低下し、また、配合比率が6を超える場合には過剰分のアルコール系化合物を除去する操作に長時間を要する傾向にあるため好ましくない。
【0020】
本発明において過酸化水素は安全性の観点から水溶液として使用するのが好ましく、その濃度は10〜80%で、さらに好ましくは30〜60%である。
【0021】
また、本発明において、安全性の観点から、原料混合液に水をさらに添加することができる。原料混合液中に占める水の量は、50重量%以下が好ましく、原料混合液が触媒層に接触する段階で混合液の組成が均一な状態である点から、1〜30重量%がより好ましい。
原料混合液中に占める水の量が50重量%を超える場合には、安全性という点では優れるものの製造効率が低下する傾向にある。
【0022】
本発明において使用されるゼオライト系固体酸触媒は、少なくとも部分的に酸型である天然あるいは合成ゼオライト、及びその類似品であり、β型、モルデナイト型、MFI型、FAU型、Y型、X型、A型、モンモリロナイト型、フェリエライト型、VFI型などのゼオライト系固体酸触媒が挙げられる。これらの群から選択される1種または2種以上の組み合わせで使用される。
これらの中で、反応を促進する触媒活性の高さの点から、β型ゼオライト系固体酸触媒が好ましく、さらにSiO2/Al2O3のモル比が30〜280であるβ型ゼオライト系固体酸触媒がより好ましい。
【0023】
本発明において使用されるゼオライト系固体酸触媒の形状は特に制限されず、粉末、顆粒、ペレット、フレーク状等に成形したものが使用されるが、ゼオライト系固体酸触媒と原材料混合液との接触効率と、流通の容易さとのバランスの点から顆粒状あるいはペレット状のものが特に好適に使用される。
【0024】
その粒径は、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜5mmである。大きさが0.1mm未満の場合、原料混合液の流通が円滑に行われず反応器に過大な圧力差を生じて反応の継続が不能となる。一方、大きさが10mmを超える場合には、ゼオライト系固体酸触媒と原料混合液との接触効率が低下して十分な転化率が得られないという問題が生じる傾向にある。
【0025】
本発明において、ゼオライト系固体酸触媒はそのまま管型反応器中に充填しても良いし、溶融アルミナ、海砂等の不活性粒子を混合してから充填しても良い。不活性粒子の添加割合は反応器の除熱能力に応じて任意に設定される。
【0026】
本発明の反応器は、ゼオライト系固体酸触媒と原料混合液との接触効率の点から固定床流通装置が好適に使用される。装置の簡便さの点から触媒層外部に熱交換用のジャケット等を備えた管型反応器がとくに好適に使用される。また、流動床流通装置も適宜使用できる。
【0027】
本発明において、原料化合物であるアルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物、またはアルコール化合物と過酸化水素はゼオライト系固体酸触媒と接触し反応する。本発明の製造方法は、連続的にそれらの原料混合液をゼオライト系固体酸触媒を充填した管型反応器中を流通させることを特徴とする。そのため、原料混合液とゼオライト系固体酸触媒との接触時間は、高選択率、高収率かつ生産性に優れた製造方法とする上で重要な因子となる。
【0028】
即ち、原料混合液とゼオライト系固体酸触媒との接触時間は、原料化合物のモル流量(F、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物の合計モル流量、またはアルコール化合物と過酸化水素の合計モル流量)に対するゼオライト系固体酸触媒の重量(W)の比率(W/F(g・hr/mol))で表される。
【0029】
本発明においては、接触時間(W/F)は、通常10〜1000g・hr/mol、好ましくは20〜600g・hr/mol、より好ましくは30〜300g・hr/mol範囲で実施される。
接触時間(W/F)が10g・hr/mol未満では接触時間が十分でないため反応効率が著しく低下し、経済的に不利である。また、接触時間(W/F)が1000g・hr/molを超えると単位時間当たりの原料供給量が低下するため生産性が低下し好ましくない。
【0030】
本発明のジアルキルペルオキシドを合成する際の反応温度は0〜150℃、好ましくは30〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃である。
反応温度が0℃未満では触媒活性が低下するため、反応効率が著しく低下し、一方、150℃を超える場合には有機ヒドロペルオキシド化合物及び生成したジアルキルペルオキシドが分解を起こす傾向にあるため好ましくない。
【0031】
本発明において、触媒層である管型反応器を通過した反応物はジアシルペルオキシドを含む有機層と水層とに分離させることができる。有機層中のジアシルペルオキドは高い純度となり、そのままでも使用できるが、さらに水洗工程、脱水工程、蒸留工程等の通常の精製工程を行うことでより高純度のジアシルペルオキシドを得ることができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0033】
実施例1
外部にジャケットを備えた内径10mm、長さ400mmのガラス製管型流通反応器にゼオライト系固体酸触媒(粒径:0.5〜1.0mm、顆粒状、β型、SiO2/Al2O3モル比=100)14gを充填した。反応器の外部ジャケットには75℃の温水を循環させた。
反応器の一方からtert−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)とtert−ブチルヒドロペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルH−69、69重量%水溶液)の原料混合液(tert−ブチルアルコール/tert−ブチルヒドロペルオキシド:1.0/1.0(モル比))をポンプにより約20g/hrの流速で導入した。
定常状態に到達するまでに流通反応を4時間継続した後、その時点から3時間の間に反応器に供給した原料混合液とゼオライト系固体酸触媒層を経て流出し回収された反応液の重量を秤量した。この間に供給された原料混合液の重量は57.40g、回収された反応液は56.31gであった。
回収された反応液は上層の有機層と下層の水層に分離して、上層の有機層38.92gを得た。
【0034】
得られた有機層をガスクロマトグラフィー(カラム:信和化工(株)製、商品名:HR−1、キャリアーガス:He)によって定量分析したところ、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は94.9重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は36.94gであり、収率は90.1%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール0.5%、tert−ブチルペルオキシド0.2%及び副生したイソブチレン1.5%が含まれていた。
さらに反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化はなかった。これらの結果を表1に示す。
【0035】
実施例2
ゼオライト系固体酸触媒としてゼオライト系固体酸触媒(粒径:0.5〜1.0mm、顆粒状、β型、SiO2/Al2O3モル比=75)を用いること以外は実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は57.83gであり、回収された反応液は56.67gであり、そして有機層は39.21gであった。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は88.7重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は34.78gであり、収率は84.2%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール4.2%、tert−ブチルペルオキシド2.4%及び副生したイソブチレン1.2%が含まれていた。
さらに反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化はなかった。これらの結果を表1に示す。
【0036】
実施例3
水分を除去し純度95.1%に濃縮したtert−ブチルヒドロペルオキシドを使用し、原料混合液の供給量を16g/hrとした以外は実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は48.50gであり、回収された反応液は44.12gであり、そして有機層は37.02gであった。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は92.9重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は34.39gであり、収率は81.9%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール0.4%、tert−ブチルペルオキシド0.1%及び副生したイソブチレン3.7%が含まれていた。
さらに反応を120時間継続した後も触媒の活性に変化はなかったが、240時間継続した後では触媒の活性が若干低下した。
【0037】
実施例4
tert−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)と過酸化水素水(純度:60重量%)の原料混合液(モル比(過酸化水素/tert−ブチルアルコール):1.0/1.0)の供給量を約16g/hrとした以外は、実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は48.12gであり、回収された反応液は47.01gであり、そして有機層は23.38gであった。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は92.6重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は21.65gであり、tert−ブチルアルコールに対する収率は80.5%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール0.2%及び副生したtert−ブチルペルオキシド2.7%、イソブチレン1.9%が含まれていた。
さらに反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化はなかった。これらの結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
ゼオライト固体酸触媒の代わりにスルホン酸系陽イオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:K2641)を同量用いること以外は実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は57.14gであり、回収された反応液は53.46gであり、そして有機層47.98gを得た。なお、静置分離した反応液の有機層は黄色に、水層は褐色に着色していた。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドの純度は8.6重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は4.13gであり、収率は10.2%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール26.6%、tert−ブチルペルオキシド44.2%及び副生したイソブチレン6.2%が含まれていた。
【0039】
さらに反応を12時間継続したのち、同様の方法で反応液を回収し分析した。3時間で供給された原料混合液は56.98gであり、回収された反応液は53.67gであり、そして有機層の重量は48.49gであった。
定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は3.8%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収率は4.6%であり、流通反応開始4〜7時間後に比べ明らかに触媒の活性が低下していた。これらの結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(注)触媒活性の持続性は、◎:反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化なし、○:反応を120〜240時間継続した時に触媒の活性に変化あり、×:反応を120時間継続する間に触媒の活性が低下するの3段階で評価した。
表中の略語は、TBHP:tert−ブチルヒドロペルオキシド、TBA:tert−ブチルアルコールである。
【0042】
実施例1〜4のように、有機ヒドロペルオキシドとアルコール化合物、あるいはアルコール化合物と過酸化水素との原料混合液をゼオライト系固体酸触媒中に管型流通式させることで、触媒の活性を長時間にわたって維持しながら、高収率で高純度のジアルキルペルオキシドを合成できた。
それに対して、比較例1のように管型流通反応において触媒としてイオン交換樹脂を使用した場合、ジアルキルペルオキシドの純度、収率が低いだけでなく、触媒活性が持続しないため生産性が著しく悪化することが明らかとなった。
【0043】
【発明の効果】
有機ヒドロペルオキシドとアルコール化合物、あるいはアルコール化合物と過酸化水素とを含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒を充填した管型に流通させることで、高選択率、高収率で生産性よくジアルキルペルオキシドを製造することができる。したがって、連続生産としての工業的利用価値が高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高選択率、高収率かつ生産性に優れたジアルキルペルオキシドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物、またはアルコール化合物と過酸化水素とを反応させるジアルキルペルオキシドの工業的な製造方法においては、硫酸が触媒として用いられてきた。しかし、その硫酸はステンレス反応器材の腐食を引き起こすこと、また反応後にそのまま廃液中に残るため、その廃液処理が必要であることが問題となっていた。
近年、これらの問題点を解決する方法としてゼオライト系固体酸触媒やスルホン酸系イオン交換樹脂を用いる製造方法が開示された。
【0003】
例えば、tert−ブチルアルコールとtert−ブチルヒドロペルオキシドとを反応させることによりジ−(tert−ブチル)ペルオキシドを製造する際、Y型ゼオライト固体酸触媒の存在下に、バッチ反応システム等で行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、tert−ブチルアルコールとtert−ブチルヒドロペルオキシドとを反応させることによりジ−(tert−ブチル)ペルオキシドを製造する際、SiO2/Al2O3のモル比が23〜26であるβ型ゼオライト固体酸触媒の存在下に、バッチ反応システム等で行う方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−149715号公報(第3頁)
【特許文献2】
米国特許5488179号明細書(第4頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に開示された方法では、いずれもバッチ反応システムであり、また触媒と基質との接触効率が悪いため、ジアルキルペルオキシドの収率が低く、また長時間の反応を必要とするため生産性が低いという問題点があった。
また、流通反応による連続製造の可能性が示唆されているものの高選択率、高収率かつ生産性に優れる具体的な反応方法については開示されていない。
また、イオン交換樹脂は副生する水による触媒作用の失活や劣化という問題点があった。
【0006】
本発明の目的は、高選択率、高収率かつ生産性に優れたジアルキルペルオキシドの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物とを反応させるジアルキルペルオキシドの製造方法において、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法である。
第2の発明は、アルコール化合物と過酸化水素とを反応させるジアルキルペルオキシドの製造方法において、アルコール化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法である。
【0008】
第3の発明は、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物又は過酸化水素の合計モル流量に対するゼオライト系固体酸触媒の重量の比が10〜1000g・hr/molの範囲にある第1又は第2の発明のジアルキルペルオキシドの製造方法である。
第4の発明は、反応温度が30〜120℃の範囲にある第1〜3のいずれかの発明のジアルキルペルオキシドの製造方法である。
第5の発明は、ゼオライト系固体酸触媒がβ型であり、かつのSiO2/Al2O3モル比が30〜280の範囲にあるゼオライト系固体酸触媒である第1〜4のいずれかの発明のジアルキルペルオキシドの製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物、またはアルコール化合物と過酸化水素とをゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法である。
【0010】
本発明において、製造されるジアルキルペルオキシドは、置換基として芳香族基を有するジアルキルペルオキシドを含めた公知のジアルキルペルオキシドの全てである。
【0011】
その具体例としては、例えばジ(tert−ブチル)ペルオキシド、ジ(tert−アミル)ペルオキシド、ビス(2−メチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(3−メチル−3−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2,4,4−トリメチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2−シクロヘキシル−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(4−メチルシクロヘキシル)−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−メチル−2−ウンデシル)ペルオキシド、ビス(2−フェニル−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(4−メチルフェニル)−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(4−イソプロピルフェニル)−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−(3−クロロフェニル)−2−プロピル)ペルオキシド、tert−ブチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−(4−メチルフェニル)−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−(4−イソプロピルフェニル)−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−(3−クロロフェニル)−2−プロピルペルオキド、tert−アミル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、2−メチル−2ペンチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、tert−ブチル−2−メチル−2−ペンチルペルオキド、tert−ブチル−3−メチル−3−ペンチルペルオキド、tert−ブチル−(2,4,4−トリメチル−2ペンチル)ペルオキシド、tert−アミル−2−メチル−2−ペンチルペルオキド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0012】
これらの中で、製造原料調達の容易さの点から、ジ(tert−ブチル)ペルオキド、ジ(t−アミル)ペルオキシド、ビス(2−メチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2,4,4−トリメチル−2−ペンチル)ペルオキシド、ビス(2−シクロヘキシル−2−プロピル)ペルオキシド、ビス(2−フェニル−2−プロピル)ペルオキシド、tert−ブチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、tert−アミル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、2−メチル−2−ペンチル−2−フェニル−2−プロピルペルオキド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−(tert−ブチルペルオキシ)−2−プロピル)ベンゼンが本発明の製造方法により適している。
【0013】
本発明で原料とするアルコール化合物としては、具体的には、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンチルアルコール、2,4,4−トリメチル−2−ペンチルアルコール、2−シクロヘキシル−2−プロピルアルコール、2−メチル−2−ウンデシルアルコール、2−フェニル−2−プロピルアルコール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキシンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンなどが好ましく挙げられる。
【0014】
これらの中で、原料調達の容易さの点から、tert−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、2−メチル−2−ペンチルアルコール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキシンジオール及び1,3−ビス(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ベンゼンがより好ましい。
【0015】
本発明で原料とする有機ヒドロペルオキシド化合物としては、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2−メチル−2−ペンチルヒドロペルオキシド、2,4,4−トリメチル−2−ペンチルヒドロペルオキシド、2−シクロヘキシル−2−プロピルヒドロペルオキシド、2−メチル−2−ウンデシルヒドロペルオキシド、2−フェニル−2−プロピルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(2−ヒドロペルオキシ−2−プロピル)ベンゼン及び1,4−ビス(2−ヒドロペルオキシ−2−プロピル)ベンゼンなどが好ましく挙げられる。
【0016】
これらの中で、原料調達の容易さの点から、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、2−メチル−2−ペンチルヒドロペルオキシド、2−フェニル−2−プロピルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ヒドロペルオキシ)−3−ヘキシン及び1,3−ビス(2−ヒドロペルオキシ−2−プロピル)ベンゼンがより好ましい。
【0017】
本発明において、有機ヒドロペルオキシド化合物とアルコール化合物を含む原料混合液を、ゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させるとき、原料混合液中有機ヒドロペルオキシド化合物に対するアルコール化合物の配合比率(アルコール化合物/有機ヒドロペルオキシド化合物、モル比)は0.5〜4が好ましく、より好ましくは0.8〜2の範囲である。
配合比率が0.5未満では、有機ヒドロペルオキシド化合物に対する収率が低下し、また、配合比率が4を超える場合には過剰分のアルコール系化合物を除去する操作に長時間を要する傾向にあるため好ましくない。
【0018】
さらに、安全性の観点からは、原料混合液にさらに水分を含有させた方が好ましい。即ち、原料混合液中に占める水の量は、50重量%以下が好ましく、原料混合液が触媒層に接触する段階で混合液の組成が均一な状態である点から、1〜30重量%がより好ましい。
原料混合液中に占める水の量が50重量%を超える場合には、安全性という点では優れるものの製造効率が低下する傾向にある。
【0019】
本発明において、有機ヒドロペルオキシド化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させるとき、原料混合液中、過酸化水素に対するアルコール化合物の配合比率(アルコール化合物/過酸化水素、モル比)は0.1〜6が好ましく、より好ましくは0.3〜3の範囲である。
配合比率が0.1未満では、アルコール系化合物に対する収率が低下し、また、配合比率が6を超える場合には過剰分のアルコール系化合物を除去する操作に長時間を要する傾向にあるため好ましくない。
【0020】
本発明において過酸化水素は安全性の観点から水溶液として使用するのが好ましく、その濃度は10〜80%で、さらに好ましくは30〜60%である。
【0021】
また、本発明において、安全性の観点から、原料混合液に水をさらに添加することができる。原料混合液中に占める水の量は、50重量%以下が好ましく、原料混合液が触媒層に接触する段階で混合液の組成が均一な状態である点から、1〜30重量%がより好ましい。
原料混合液中に占める水の量が50重量%を超える場合には、安全性という点では優れるものの製造効率が低下する傾向にある。
【0022】
本発明において使用されるゼオライト系固体酸触媒は、少なくとも部分的に酸型である天然あるいは合成ゼオライト、及びその類似品であり、β型、モルデナイト型、MFI型、FAU型、Y型、X型、A型、モンモリロナイト型、フェリエライト型、VFI型などのゼオライト系固体酸触媒が挙げられる。これらの群から選択される1種または2種以上の組み合わせで使用される。
これらの中で、反応を促進する触媒活性の高さの点から、β型ゼオライト系固体酸触媒が好ましく、さらにSiO2/Al2O3のモル比が30〜280であるβ型ゼオライト系固体酸触媒がより好ましい。
【0023】
本発明において使用されるゼオライト系固体酸触媒の形状は特に制限されず、粉末、顆粒、ペレット、フレーク状等に成形したものが使用されるが、ゼオライト系固体酸触媒と原材料混合液との接触効率と、流通の容易さとのバランスの点から顆粒状あるいはペレット状のものが特に好適に使用される。
【0024】
その粒径は、通常0.1〜10mm、好ましくは0.2〜5mmである。大きさが0.1mm未満の場合、原料混合液の流通が円滑に行われず反応器に過大な圧力差を生じて反応の継続が不能となる。一方、大きさが10mmを超える場合には、ゼオライト系固体酸触媒と原料混合液との接触効率が低下して十分な転化率が得られないという問題が生じる傾向にある。
【0025】
本発明において、ゼオライト系固体酸触媒はそのまま管型反応器中に充填しても良いし、溶融アルミナ、海砂等の不活性粒子を混合してから充填しても良い。不活性粒子の添加割合は反応器の除熱能力に応じて任意に設定される。
【0026】
本発明の反応器は、ゼオライト系固体酸触媒と原料混合液との接触効率の点から固定床流通装置が好適に使用される。装置の簡便さの点から触媒層外部に熱交換用のジャケット等を備えた管型反応器がとくに好適に使用される。また、流動床流通装置も適宜使用できる。
【0027】
本発明において、原料化合物であるアルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物、またはアルコール化合物と過酸化水素はゼオライト系固体酸触媒と接触し反応する。本発明の製造方法は、連続的にそれらの原料混合液をゼオライト系固体酸触媒を充填した管型反応器中を流通させることを特徴とする。そのため、原料混合液とゼオライト系固体酸触媒との接触時間は、高選択率、高収率かつ生産性に優れた製造方法とする上で重要な因子となる。
【0028】
即ち、原料混合液とゼオライト系固体酸触媒との接触時間は、原料化合物のモル流量(F、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物の合計モル流量、またはアルコール化合物と過酸化水素の合計モル流量)に対するゼオライト系固体酸触媒の重量(W)の比率(W/F(g・hr/mol))で表される。
【0029】
本発明においては、接触時間(W/F)は、通常10〜1000g・hr/mol、好ましくは20〜600g・hr/mol、より好ましくは30〜300g・hr/mol範囲で実施される。
接触時間(W/F)が10g・hr/mol未満では接触時間が十分でないため反応効率が著しく低下し、経済的に不利である。また、接触時間(W/F)が1000g・hr/molを超えると単位時間当たりの原料供給量が低下するため生産性が低下し好ましくない。
【0030】
本発明のジアルキルペルオキシドを合成する際の反応温度は0〜150℃、好ましくは30〜120℃であり、さらに好ましくは50〜100℃である。
反応温度が0℃未満では触媒活性が低下するため、反応効率が著しく低下し、一方、150℃を超える場合には有機ヒドロペルオキシド化合物及び生成したジアルキルペルオキシドが分解を起こす傾向にあるため好ましくない。
【0031】
本発明において、触媒層である管型反応器を通過した反応物はジアシルペルオキシドを含む有機層と水層とに分離させることができる。有機層中のジアシルペルオキドは高い純度となり、そのままでも使用できるが、さらに水洗工程、脱水工程、蒸留工程等の通常の精製工程を行うことでより高純度のジアシルペルオキシドを得ることができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0033】
実施例1
外部にジャケットを備えた内径10mm、長さ400mmのガラス製管型流通反応器にゼオライト系固体酸触媒(粒径:0.5〜1.0mm、顆粒状、β型、SiO2/Al2O3モル比=100)14gを充填した。反応器の外部ジャケットには75℃の温水を循環させた。
反応器の一方からtert−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)とtert−ブチルヒドロペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルH−69、69重量%水溶液)の原料混合液(tert−ブチルアルコール/tert−ブチルヒドロペルオキシド:1.0/1.0(モル比))をポンプにより約20g/hrの流速で導入した。
定常状態に到達するまでに流通反応を4時間継続した後、その時点から3時間の間に反応器に供給した原料混合液とゼオライト系固体酸触媒層を経て流出し回収された反応液の重量を秤量した。この間に供給された原料混合液の重量は57.40g、回収された反応液は56.31gであった。
回収された反応液は上層の有機層と下層の水層に分離して、上層の有機層38.92gを得た。
【0034】
得られた有機層をガスクロマトグラフィー(カラム:信和化工(株)製、商品名:HR−1、キャリアーガス:He)によって定量分析したところ、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は94.9重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は36.94gであり、収率は90.1%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール0.5%、tert−ブチルペルオキシド0.2%及び副生したイソブチレン1.5%が含まれていた。
さらに反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化はなかった。これらの結果を表1に示す。
【0035】
実施例2
ゼオライト系固体酸触媒としてゼオライト系固体酸触媒(粒径:0.5〜1.0mm、顆粒状、β型、SiO2/Al2O3モル比=75)を用いること以外は実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は57.83gであり、回収された反応液は56.67gであり、そして有機層は39.21gであった。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は88.7重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は34.78gであり、収率は84.2%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール4.2%、tert−ブチルペルオキシド2.4%及び副生したイソブチレン1.2%が含まれていた。
さらに反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化はなかった。これらの結果を表1に示す。
【0036】
実施例3
水分を除去し純度95.1%に濃縮したtert−ブチルヒドロペルオキシドを使用し、原料混合液の供給量を16g/hrとした以外は実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は48.50gであり、回収された反応液は44.12gであり、そして有機層は37.02gであった。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は92.9重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は34.39gであり、収率は81.9%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール0.4%、tert−ブチルペルオキシド0.1%及び副生したイソブチレン3.7%が含まれていた。
さらに反応を120時間継続した後も触媒の活性に変化はなかったが、240時間継続した後では触媒の活性が若干低下した。
【0037】
実施例4
tert−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製、試薬特級)と過酸化水素水(純度:60重量%)の原料混合液(モル比(過酸化水素/tert−ブチルアルコール):1.0/1.0)の供給量を約16g/hrとした以外は、実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は48.12gであり、回収された反応液は47.01gであり、そして有機層は23.38gであった。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は92.6重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は21.65gであり、tert−ブチルアルコールに対する収率は80.5%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール0.2%及び副生したtert−ブチルペルオキシド2.7%、イソブチレン1.9%が含まれていた。
さらに反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化はなかった。これらの結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
ゼオライト固体酸触媒の代わりにスルホン酸系陽イオン交換樹脂(バイエル社製、商品名:K2641)を同量用いること以外は実施例1に準じて実施した。
供給された原料混合液は57.14gであり、回収された反応液は53.46gであり、そして有機層47.98gを得た。なお、静置分離した反応液の有機層は黄色に、水層は褐色に着色していた。
ガスクロマトグラフィーによる定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドの純度は8.6重量%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収量は4.13gであり、収率は10.2%であった。
有機層中の不純物としては未反応のtert−ブチルアルコール26.6%、tert−ブチルペルオキシド44.2%及び副生したイソブチレン6.2%が含まれていた。
【0039】
さらに反応を12時間継続したのち、同様の方法で反応液を回収し分析した。3時間で供給された原料混合液は56.98gであり、回収された反応液は53.67gであり、そして有機層の重量は48.49gであった。
定量分析の結果、有機層中のジ(tert−ブチル)ペルオキシドとしての純度は3.8%であった。したがって、ジ(tert−ブチル)ペルオキシドの収率は4.6%であり、流通反応開始4〜7時間後に比べ明らかに触媒の活性が低下していた。これらの結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(注)触媒活性の持続性は、◎:反応を240時間継続した後も触媒の活性に変化なし、○:反応を120〜240時間継続した時に触媒の活性に変化あり、×:反応を120時間継続する間に触媒の活性が低下するの3段階で評価した。
表中の略語は、TBHP:tert−ブチルヒドロペルオキシド、TBA:tert−ブチルアルコールである。
【0042】
実施例1〜4のように、有機ヒドロペルオキシドとアルコール化合物、あるいはアルコール化合物と過酸化水素との原料混合液をゼオライト系固体酸触媒中に管型流通式させることで、触媒の活性を長時間にわたって維持しながら、高収率で高純度のジアルキルペルオキシドを合成できた。
それに対して、比較例1のように管型流通反応において触媒としてイオン交換樹脂を使用した場合、ジアルキルペルオキシドの純度、収率が低いだけでなく、触媒活性が持続しないため生産性が著しく悪化することが明らかとなった。
【0043】
【発明の効果】
有機ヒドロペルオキシドとアルコール化合物、あるいはアルコール化合物と過酸化水素とを含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒を充填した管型に流通させることで、高選択率、高収率で生産性よくジアルキルペルオキシドを製造することができる。したがって、連続生産としての工業的利用価値が高い。
Claims (5)
- アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物とを反応させるジアルキルペルオキシドの製造方法において、アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法。
- アルコール化合物と過酸化水素とを反応させるジアルキルペルオキシドの製造方法において、アルコール化合物と過酸化水素を含む原料混合液をゼオライト系固体酸触媒が充填された管型反応器に連続的に流通させることを特徴とするジアルキルペルオキシドの製造方法。
- アルコール化合物と有機ヒドロペルオキシド化合物又は過酸化水素の合計モル流量に対するゼオライト系固体酸触媒の重量の比が10〜1000g・hr/molの範囲にある請求項1又は2のジアルキルペルオキシドの製造方法。
- 反応温度が30〜120℃の範囲にある請求項1〜3のいずれか1項に記載のジアルキルペルオキシドの製造方法。
- ゼオライト系固体酸触媒がβ型であり、かつSiO2/Al2O3モル比が30〜280の範囲にあるゼオライト系固体酸触媒である請求項1〜4のいずれか1項に記載のジアルキルペルオキシドの製造方法。
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JP2006089472A (ja) * | 2004-08-27 | 2006-04-06 | Asahi Glass Co Ltd | 有機ペルオキシドの製造方法 |
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2002
- 2002-09-06 JP JP2002262021A patent/JP2004099491A/ja active Pending
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